特許第6803903号(P6803903)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴの特許一覧

特許6803903複数の高温電解(SOEC)又は共電解反応器を含むパワーツーガスユニットの始動モード又は待機モード運転の方法
<>
  • 特許6803903-複数の高温電解(SOEC)又は共電解反応器を含むパワーツーガスユニットの始動モード又は待機モード運転の方法 図000004
  • 特許6803903-複数の高温電解(SOEC)又は共電解反応器を含むパワーツーガスユニットの始動モード又は待機モード運転の方法 図000005
  • 特許6803903-複数の高温電解(SOEC)又は共電解反応器を含むパワーツーガスユニットの始動モード又は待機モード運転の方法 図000006
  • 特許6803903-複数の高温電解(SOEC)又は共電解反応器を含むパワーツーガスユニットの始動モード又は待機モード運転の方法 図000007
  • 特許6803903-複数の高温電解(SOEC)又は共電解反応器を含むパワーツーガスユニットの始動モード又は待機モード運転の方法 図000008
  • 特許6803903-複数の高温電解(SOEC)又は共電解反応器を含むパワーツーガスユニットの始動モード又は待機モード運転の方法 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6803903
(24)【登録日】2020年12月3日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】複数の高温電解(SOEC)又は共電解反応器を含むパワーツーガスユニットの始動モード又は待機モード運転の方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 15/02 20060101AFI20201214BHJP
   C25B 1/04 20060101ALI20201214BHJP
   C25B 3/04 20060101ALI20201214BHJP
   C25B 15/08 20060101ALI20201214BHJP
   C01B 3/02 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   C25B15/02 302
   C25B1/04
   C25B3/04
   C25B15/08 302
   C01B3/02 H
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-239587(P2018-239587)
(22)【出願日】2018年12月21日
(65)【公開番号】特開2019-112717(P2019-112717A)
(43)【公開日】2019年7月11日
【審査請求日】2019年1月31日
(31)【優先権主張番号】1762904
(32)【優先日】2017年12月22日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アイメリク・ブリュノ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンサン・ラクロワ
【審査官】 ▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】 特表2017−507239(JP,A)
【文献】 特表2015−513531(JP,A)
【文献】 特表2016−524034(JP,A)
【文献】 特表2016−540897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/00 − 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体酸化物(SOEC)型の基本電解セルのスタックを有するN個の反応器を含むパワーツーガスユニットと呼ばれるユニットの、始動モード又は待機モードでの運転方法であって、そのカソードは、メタン化反応触媒材料から作られ、
N個の反応器又はその一部の温度上昇を実施することが望ましい場合、又は利用可能な電力レベルがN個の反応器全ての中で高温電解(HTE)又はHO及びCOの共電解を実施するのに不十分である場合、以下のステップ:
a)P個の反応器に電力が供給され、必要ならば熱が供給され、また、水蒸気HO、又は水蒸気と二酸化炭素COとの混合物の何れかがP個の反応器のカソードに供給及び分配されて、P個の反応器の各カソードにおいて、水蒸気HOの高温電解、又は水蒸気及び二酸化炭素の高温共電解の何れかが行われる;
b)一酸化炭素(CO)又は二酸化炭素(CO)と、水素Hとを含む、電解から得られるガス又は共電解から得られるガスの少なくとも一部が回収され、電力が供給されていないX個の反応器の各カソードに供給及び分配され、数XはN−P以下であり、X個の反応器の各カソードで不均一触媒作用によるメタン化が行われる;
を含む、方法。
【請求項2】
前記二酸化炭素は、生産拠点から、生産源によって放出される、請求項1に記載の運転方法。
【請求項3】
始動モード又は待機モードにおいて、反応器(SOEC)を含む前記ユニットの熱要件は、生産拠点の生産源の廃熱によって供給される、請求項1に記載の運転方法。
【請求項4】
前記生産拠点は、エネルギー生産拠点、工業生産拠点、サービス産業の建物から選択される、請求項3に記載の運転方法。
【請求項5】
ステップb)によって生成される前記SOEC反応器中でのメタン化によって生成されたガスが、前記パワーツーガスユニットのN個の専用メタン化反応器に導入される、ステップc)を含む、請求項1に記載の運転方法。
【請求項6】
ステップa)は、600〜1000℃の間の温度で行われる、請求項1に記載の運転方法。
【請求項7】
ステップb)は、400℃〜800℃の間の温度で行われる、請求項1に記載の運転方法。
【請求項8】
ステップa)及びb)は、0〜100barの間の圧力で行われる、請求項1に記載の運転方法。
【請求項9】
前記N個の反応器は全て、それぞれがカソードと、アノードと、前記カソードと前記アノードとの間に挿入された電解質とから形成されたSOEC型の基本電解セルのスタックと、それぞれが2つの隣接する基本セルの間に配置され、一面が2つの基本セルのうちの一方のアノードと電気的に接触し他面が2つの基本セルのうちの他方のカソードと電気的に接触している複数の電気的及び流体的相互接続体とを有する反応器である、請求項1に記載の運転方法。
【請求項10】
ステップa)は、水蒸気HO、又は水蒸気と二酸化炭素COとの混合物の何れかをP個の反応器の各カソードに供給及び分配すること、又はP個の反応器の2つの隣接する基本セルのうちの一方の各カソードに水蒸気を供給及び分配し、P個の反応器の2つの隣接する基本セルのうちの他方のカソードに二酸化炭素を供給及び分配することによって行われ、P個の反応器の各カソードにおいて、水蒸気HOの高温電解、又は水蒸気及び二酸化炭素の高温共電解の何れかが行われる、請求項9に記載の運転方法。
【請求項11】
請求項1に記載のパワーツーガスユニットの待機モードでの運転方法を実行する、「断続的な」エネルギー源からメタンCHを生成する方法であって、ステップb)は、前記断続的な源がN個の反応器全てに十分なレベルの電力を生産することがもはやできない場合に行われる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、「パワーツーガス(power to gas)」変換としてより良く知られている、電力(electricity)からガスへの変換の分野に関する。
【0002】
パワーツーガス変換は、再生可能エネルギーの余剰生産の貯蔵に基づき、それらを合成メタン又は水素に変換することによる。既存の天然ガスネットワークは、このようにして生成された水素又はメタンを受け取り、それらを貯蔵し、それらを輸送し、そして天然ガスと混合することによってそれらを利用することを可能にし得る。
【0003】
本発明は、ガスがメタンの形態であるパワーツーガスユニットに関し、それは、SOEC型(「固体酸化物電解セル(Solid Oxide Electrolyzer Cell)」の頭字語)の複数の電解セルスタック反応器内で電力とともに供給される水の高温電解(「高温電解(High−Temperature Electrolysis)」の場合はHTE、あるいは「高温水蒸気電解(High−Temperature Steam Electrolysis)」の場合はHTSE)のステップ、又は水及び二酸化炭素COの高温共電解として知られるステップを実行する。
【0004】
本発明は、より具体的には、始動中又は待機モードにより利用可能な電力が低レベルである場合の、ユニットの電解又は共電解反応器を用いたメタンの生成に関する。
【背景技術】
【0005】
既に想定されている大量エネルギー貯蔵解決策の中で、油圧貯蔵(hydraulic storage)は既に非常に普及している。このタイプの貯蔵リスクの残りの容量は急速に飽和している。加えて、油圧システムは特定の地理的及び地質学的条件を必要とし、その結果、かなり高価であり限られた拡張可能性を有すると判明する可能性がある。将来の貯蔵問題に対して、油圧貯蔵は故に、部分的な解決策に過ぎない可能性がある。
【0006】
代替の貯蔵解決策もまた想定されてきた:これは、圧縮空気貯蔵(CAESは「圧縮空気エネルギー貯蔵(Compressed Air Energy Storage)」の頭字語)である。この技術によれば、電力とともに生成された圧縮空気を地下空洞に貯蔵することが想定されている。これらの空洞自体もまた、塩水空洞などの特定の地質学的特徴を必要とする。しかしながら、この貯蔵解決策の収率は、満足できるものではない。
【0007】
最後に、特定の構成で電力を大量に貯蔵できる可能性があるエネルギーベクトルとして、水素が発表されている:ここでは、出願人が参加している、頭字語MYRTE(電気ネットワークに統合するための再生可能な水素に関するミッション(Mission relating to renewable hydrogen for integration in the electrical network))の名前でコルシカ島において既に行われたプロジェクトについて言及することができる。
【0008】
しかしながら、これらの全ての大量エネルギー貯蔵解決策は、大規模なインフラストラクチャ(油圧、地下空洞、水素貯蔵システムに適した場所)の開発を必要とする。これが、最近になって、合成燃料ガスの生成を介して再生可能電力を化学エネルギーに変換することによる、既存のインフラストラクチャに貯蔵することができる大量エネルギー貯蔵がかなりの浸透をもたらし、多大な可能性を有する貯蔵代替物を代表している理由である。ここでは、技術的変換解決策について言及している特許文献1について言及することができる。
【0009】
さらに、化石エネルギーの使用に起因する二酸化炭素COの排出量を削減し、これらのエネルギーの使用に由来するCOを無期限に貯蔵するのではなく可能な限り利用し、「脱炭素」エネルギー源由来のオンデマンド電力を使用し、特に余剰生産の間は、この電力を貯蔵可能な生成物に変換し、必要に応じて高炭素エネルギーの使用に頼らずに生産不足期間中にオンデマンドで電力を生産できるようにすることが、地球規模の環境効率のために達成されるべき全ての目的である。
【0010】
「脱炭素化された」電力を用いた水蒸気及び二酸化炭素COからの可燃性合成ガスの生成は、これらの目的を満たす。
【0011】
従って、幾つかの研究は、電力を現在のガスインフラストラクチャ、特に天然ガス輸送及び分配ネットワークを用いて貯蔵及び利用することができる合成ガスへのこの余剰の変換によって、パワーツーガス解決策を潜在能力の高い解決策として特定している。既存のインフラストラクチャをこのように使用することで、貯蔵に特別な投資を必要とせずに再生可能資源からのエネルギーを貯蔵するための大容量を有することが可能になり(非特許文献1参照)、このことは、上述のポンピング又はCAESステーションなどの他の電力貯蔵解決策には当てはまらない。
【0012】
この理由により、再生可能エネルギーの浸透が中期的あるいは長期的(季節的)な電力貯蔵を有用なものとする限り、パワーツーガス解決策はエネルギー変換及び貯蔵解決策として好ましいと考えられている(非特許文献2及び非特許文献3)。
【0013】
パワーツーガスユニット内での合成メタンの生成は、天然ガスインフラストラクチャの利用に特に適している(非特許文献1)。このメタンは、典型的には、水の電解(水素生成)、そして専用反応器内での水素と外部源からのCOとの間のメタン化反応の実施によって、電力の利用可能性に基づいて生成される。
【0014】
固体酸化物電解槽内における高温での水素Hを生成するための水蒸気HOの電解、及び/又はHO+COの共電解は、メタン化に有用な試薬を生成するための可能性の1つである。水蒸気電解(I)及びHO+COの共電解(II)のための反応は、以下の式に従って行われる:
水の電解:HO→H+1/2O (I)
共電解:CO+HO→CO+H+O (II)
【0015】
固体酸化物セル(SOEC)反応器中での高温電解は、メタン化反応器により放出された熱をプロセス内で利用し得るため、アルカリ又はPEM(「プロトン交換膜(Proton Exchange Membrane)」の頭字語)電解などの低温技術と比較して特に高い電力収率を達成することを可能にする。
【0016】
合成メタンを生成するためにメタン化反応器内に次いで注入される合成ガス(H、CO及びCOの混合物)を生成するための水蒸気及びCOのSOEC共電解は、同じ利点を有する。
【0017】
さらに、水素の輸送、貯蔵、及びガスネットワークへの可能な注入を含む使用は、それを加圧することを必要とする。高価である生成された水素を圧縮する代わりに、加圧水蒸気を用いて直接水の電解を行うことは既に知られている慣例であり、従って水は予め液体状態で圧縮され、そのことは、はるかに安価である。
【0018】
HTE電解又は高温共電解による水素又は合成ガスの生成は、定義により、十分な量の利用可能な電力を必要とする。
【0019】
しかしながら、「脱炭素化」エネルギー源が本質的に断続的である場合(風力発電、太陽光発電)、そのような供給源では、1つ及び同じパワーツーガスユニットの全てのHTE電解反応器又は高温共電解反応器に同時に、又は少なくとも実施が効果的であるために十分な量で電力を供給することがもはや不可能である状況が起こり得る。
【0020】
さらに、高温電解又は共電解を可能にするそのようなHTE/SOEC反応器が一旦起動されると、その温度を維持することを確実にする必要があるが、これは、発電が断続的であり得るにもかかわらず、一方ではそれを損傷する可能性がある熱サイクルを防ぐため、他方では電力が再度利用可能になった後に迅速にそれを起動する可能性を提供するためである。換言すれば、反応器の構成要素のレベルで温度変動を制限することにより、低コストの電力が再度利用可能になった場合に、劣化リスクを低減し、パワーツーガスユニットの迅速な起動を容易にすることが可能になる。
【0021】
従って、不可避の熱損失にもかかわらず、高温電解を可能にするSOEC反応器又は共電解反応器がそれらの不活性期間中に高温に維持されることを確実にすることは有利である。
【0022】
利用可能な電力がない場合にSOEC又は共電解反応器の温度を熱損失にもかかわらず維持するというこの問題を解決するための幾つかの解決策が、既に想定されている。
【0023】
第1の解決策は、電気加熱からなる。この解決策は、ユニットの待機期間中に典型的には高い電力コストによって生じるエネルギー及び財務コストにより、実行可能ではない。
【0024】
別の解決策は、化石燃料の燃焼による熱供給を想定している。この場合もやはり、燃料のエネルギー及び財務コストにより、この解決策は実行可能ではない。
【0025】
別の解決策は、各SOEC反応器の動作を逆にして高温電解又は共電解を可能にすること、すなわち、SOFC燃料電池(「固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell)」の頭字語)として動作させて合成ガス(水素H及び一酸化炭素COの混合物)からの水素Hから又はメタンから電流を生成することで、反応器温度を維持することを可能にすることである。これは、外部電源から利用可能な電力がなくなった場合に必ずしも利用可能ではない電流を生成する、という大きな欠点を有する。さらに、別の大きな欠点は、専ら反応器温度を維持し、他の可燃性生成物ではなくその正確な瞬間に必ずしも利用可能ではない電力のみを得る目的のために、燃料、すなわちH、合成ガス又はメタンがこのようにして消費、すなわち燃焼されることである。
【0026】
最終的な解決策は、特許文献2において出願人によって構想されているものである。この解決策は、それがある温度に維持されることを確実にするために、発熱メタン化反応を触媒するSOEC反応器の能力に基づいている。この運転方式では、SOEC反応器は、第1ステップで、貯蔵される水素H又は合成ガスを生成する従来の電解槽/共電解槽として公称モードで作動する。待機モードに対応する第2ステップでは、この同じ反応器に、それ自体の先行生成物を供給し、第1ステップで電解により水素Hのみが生成された場合にはCOを添加し、これにより、熱の生成により燃料を消費することなく反応器温度を維持し、反対に進行中にはメタンを生成することが可能になる内部メタン化反応が生じる。それでもなお必要とされる場合には、メタン化を次いで、専用のメタン化反応器中で完了させることができる。この解決策は全体的に満足のいくものであるが、以下のように幾つかの欠点がある:
−同じ反応器をある温度に維持する待機モードで再使用する前の、電解/共電解での公称運転モード中に水素又は合成ガスの生成物を貯蔵するための固有の要件;
−電解/共電解段階とメタン化段階との間に温度又は圧力の変動がない場合のメタン化反応平衡のシフトであって、後続のCO試薬の添加を伴う電解のみが実際に温度を維持するための発熱メタン化を可能にする、シフト;
−メタン化熱の利用は、電解/共電解運転モードでは考慮されないため、待機モード運転は、電解/共電解の上流段階を熱的に不利にし、全体的なエネルギー消費量に影響を与え、生産性の低下を招く可能性がある熱補償の存在を必要とすること。
【0027】
従って、全ての反応器に対して利用可能な電力がない状態でそれらをある温度に維持するために、特に各反応器を逆にしてSOFC燃料電池にする必要性なしに及び/又は合成から生じ得るH又はガス燃料を燃焼させる必要性なしに及び/又は水素又は合成ガスの事前生成物を貯蔵する必要性なしに、幾つかのHTE/SOEC電解反応器又は共電解反応器を含むパワーツーガスユニットを待機モードで運転させる方法を改善する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0289227号明細書
【特許文献2】欧州特許第3,077,574号明細書
【非特許文献】
【0029】
【非特許文献1】「余剰電力を利用する方法としての水素及びメタン化に関する研究(Study relating to hydrogen and methanation as a process for exploiting excess electricity)」−ADEME,GRTgaz,GrDF;2014年9月
【非特許文献2】「最適化されたエネルギーシステム内でのパワーツーガスの感受性(Sensitivities of Power−to−Gas within an optimized Energy System)」;E.Kotter;IRES−2015
【非特許文献3】「温室効果ガス中立社会のためのエネルギー貯蔵:需要及び長期戦略(Energy Storage for a Greenhouse Gas Neutral Society: Demand and Long−term Strategy)」;M.Nowakowski;IRES−2015
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
本発明の目的は、少なくとも部分的にこの必要性を満たすことである。
【課題を解決するための手段】
【0031】
これを行うために、その態様の1つにおいて、本発明は、固体酸化物(SOEC)型の基本電解セルのスタックを有するN個の反応器(1)を含むパワーツーガスユニットと呼ばれるユニットの、始動モード又は待機モードでの運転方法に関し、そのカソードは、メタン化反応触媒材料から作られ、
本方法は、N個の反応器又はその一部の温度上昇を実施することが望ましい場合、又は利用可能な電力レベルがN個の反応器全ての中でHTE電解又はHO及びCOの共電解を実施するのに不十分である場合、以下のステップ:
a)P個の反応器に電力が供給され、必要ならば熱が供給され、また、水蒸気HO、又は水蒸気と二酸化炭素COとの混合物の何れかがP個の反応器のカソードに供給及び分配されて、P個の反応器の各カソードにおいて、水蒸気HOの高温電解、又は水蒸気及び二酸化炭素の高温共電解が行われる;
b)電解から得られるガス(水素H、水蒸気HO)又は共電解から得られるガス(H、水蒸気、一酸化炭素CO、二酸化炭素CO、メタンCH)の少なくとも一部が回収され、電力が供給されていないX個の反応器の各カソードに供給及び分配され、数XはN−P以下であり、X個の反応器の各カソードで不均一触媒作用によるメタン化が行われる;
を含む。
【0032】
従って、本発明は、パワーツーガスユニットの全てのSOEC反応器の熱管理からなり、これは、全ての反応器を公称モード、すなわち典型的には800℃である電解/共電解モードで運転可能とするのに電力の供給レベルが不十分である場合に、それらのうちの幾つかのみ、すなわちP個の反応器がこのモードで運転され、反応器の他の部分、すなわち電力が供給されていないX個の反応器は、熱損失にもかかわらず、P個の反応器内での電解/共電解反応から生じるガス生成物の注入を用いたそれらの中での内部メタン化反応により、同時に典型的には600℃を超える高温範囲に留まりながらその付近又はそれより低い温度に、又は構成要素の熱サイクルの制約に適合する温度に上昇又は維持される。
【0033】
有利な一実施形態によれば、二酸化炭素は生産源によって放出される。
【0034】
有利には、始動モード又は待機モードにおいて、ユニットの必要熱量は、好ましくは二酸化炭素を放出するのと同じ生産源である生産源からの廃熱によって提供される。
【0035】
「二酸化炭素CO及び/又は廃熱を放出する生産源」との表現は、本明細書及び本発明の文脈において、任意の生産拠点、例えばエネルギー生産拠点(廃熱用の原子力発電所、CO排出及び/又は廃熱用のバイオマスメタン化又はガス化発電所)、工業生産拠点(セメント工場、CO排出及び/又は廃熱用の鉄鋼業)、熱の高い消費者であるためより多くの熱を放出する病院などのサービス産業の建物、閉鎖区域の輸送ネットワーク、あるいは廃熱処理ユニットなどの排出拠点などを意味することを意図する。
【0036】
従って、パワーツーガスユニットの全てのSOEC反応器を待機モードで典型的には600〜800℃の間の高温に維持することは、固有の熱損失にもかかわらず、典型的には200〜300℃の間の中温の外部熱、好ましくは残留/余剰熱、より好ましくはCO排出源に関連する熱を利用することによって可能になる。
【0037】
電力が供給されていないX個のSOEC反応器をそれらが一旦通過した場合、生成されたガスを、合成メタンの生成を完了させるために、パワーツーガスユニットの専用メタン化反応器に導入してもよい。
【0038】
従って、有利な一実施形態によれば、本方法は、ステップc)を含み、それに従って、ステップb)の間にSOEC反応器中でメタン化によって生成されたガスは、パワーツーガスユニットのメタン化専用反応器に導入される。
【0039】
好ましくは、ステップa)は、600〜1000℃の間の温度で行われる。
【0040】
再び好ましくは、ステップb)は、400℃〜800℃の間の温度又は構成要素の熱サイクルの制約に適合する温度で、かつステップa)の温度に対して少なくとも100℃劣る温度で行われる。
【0041】
有利には、ステップa)及びb)は、0〜100barの間、好ましくは4〜80barの間の圧力で行われる。
【0042】
N個の反応器は好ましくは、それぞれがカソードと、アノードと、カソードとアノードとの間に挿入された電解質とから形成されたSOEC型の基本電解セルのスタックと、それぞれが2つの隣接する基本セルの間に配置され、一面が2つの基本セルのうちの一方のアノードと電気的に接触し他面が2つの基本セルのうちの他方のカソードと電気的に接触している複数の電気的及び流体的相互接続体(interconnector)とを有する全ての反応器である。
【0043】
本明細書では、相互接続体あるいは相互接続プレートとも呼ばれる電気的及び流体的相互接続装置は、HTE反応器のスタック内の各電解セルの電気的観点から直列に、及び流体的観点から並列に接続を提供することで各セルの製造を組み合わせる装置であることが明記される。相互接続体はこのようにして、電流を供給及び収集する機能を果たし、ガス循環(分配及び/又は収集)区画を画定する。
【0044】
電解セルは、有利にはカソード支持型である。用語「カソード支持セル」は、本明細書及び本発明の文脈において、水の高温電解HTEの分野において既に与えられ、「カソード支持セル(Cathode−supported Cell)」の頭字語CSCで示される定義、すなわち、電解質及び酸素電極(「アノード」)が、次いで支持体として作用するより厚い水素又は一酸化炭素電極(カソード)上に配置されているセルを意味することを意図する。
【0045】
カソードは好ましくは、好ましくは酸化イットリウム(Y)で安定化された、ジルコニウム(ZrO)によって支持されたニッケル(Ni)に基づくものであるか、又はガドリニウムドープセリア(Ni−CGO)などのセリアによって支持されたNiに基づくものである。
【0046】
ステップa)について、水蒸気及び二酸化炭素の共電解は、欧州特許第2931943号明細書の教示に従って、スタック反応器中で有利に実施することができる:水蒸気HO、又は水蒸気と二酸化炭素COとの混合物の何れかがP個の反応器の各カソードに供給及び分配されるか、又はP個の反応器の2つの隣接する基本セルのうちの一方の各カソードに水蒸気が供給及び分配され、P個の反応器の2つの基本セルのうちの他方のカソードに二酸化炭素が供給及び分配されて、P個の反応器の各カソードにおいて、水蒸気HOの高温電解、又は水蒸気及び二酸化炭素の高温共電解の何れかが行われる。
【0047】
本発明の主題はまた、上述のパワーツーガスユニットの待機モードでの運転方法を実行する、「断続的な」エネルギー源からメタンCHを生成する方法であり、ステップb)は、前記断続的な源がN個の反応器全てに十分なレベルの電力を生産することがもはやできない場合に行われる。
【0048】
今説明した本発明は多くの利点を有し、そのうち以下の点に言及することができる:
−余剰電力断続(surplus−electricity intermittence)との観点から非常に部分的であり得る負荷での運転にもかかわらず、ユニット全体を高温、典型的には600〜800℃の間に維持すること;
−高温を維持するために燃料消費がなく、それを行うためにSOFC燃料電池に切り替える必要がないこと;
−工業的なCO生産源に有利に連結された中温の残留/余剰熱源が利用可能である場合に、部分負荷での運転中にユニットの電力収率を維持すること;
−待機モードでX個のSOEC反応器をフラッシュすることによって還元雰囲気(H/CO/HO/CO)を維持し、それによって酸化の危険性及び別の還元ガス、例えば水素での不活性化又はフラッシュの必要性を制限すること;
−本発明による待機モードを使用して、最初は冷たいユニットのSOEC反応器の温度を上昇させることができること。従って、例えば外部熱源との関連で中温、典型的には約300℃で予熱した後の、電力が供給された電解槽/共電解槽からの試薬の導入は、メタン化によって他のX個の反応器の温度を徐々に増加させることを可能にし、それによって、特定の始動装置に関して節約を生じさせ、そして迅速な電気化学的始動を可能にする;
−X個の不活性SOEC反応器、すなわち電力が供給されていない反応器のそれぞれに注入される試薬の流量を制御することによって、典型的には約600〜700℃である待機温度の実施を容易にすること。
【0049】
本発明の他の利点及び特徴は、添付の図面を参照しながら例示としてかつ非限定的に与えられた本発明の実施例の詳細な説明を読むことで、より明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】高温水電解槽の動作原理を示す概略図である。
図2】相互接続体を含む高温水蒸気電解槽の一部の分解概略図である。
図3】パワーツーガスユニットの本発明による待機モードでの運転の概略図である。
図4】ユニットの活性共電解反応器の出口でのH、CO、CO及びHOの典型的な混合物に対する、ユニットの非活性反応器内の温度の低下に伴うメタンへの転化率の変化を曲線の形で示す図である。
図5】公称運転モードでのパワーツーガスユニットの一例の主要な複合曲線、すなわち、各温度範囲で交換される熱量及び電力会社から供給されるエネルギーの変動、又は外部から供給される熱エネルギーの利用を示す図である。
図6図5によるユニットの同じ例のものであるが、本発明による待機モードである、主要複合曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本出願を通して、用語「入口」、「出口」、「下流」及び「上流」は、SOEC反応器へのガスの入口からそこからのガスの出口への、ガスの循環の方向に関連して理解されるべきである。
【0052】
図1及び図2では、水蒸気HOの供給、二水素H、酸素O及び電流、及び二酸化炭素COの分配及び回収、並びに一酸化炭素CO及び酸素O及び電流、及びメタンCHの分配及び回収のための記号及び矢印が、本発明によるSOEC反応器1の動作を説明するために、明確さ及び正確さの目的で示されていることが明記される。
【0053】
記載されている方法によるプロセスのステップa)及びb)に従って運転される全ての反応器は、高温で運転される固体酸化物(SOEC、「固体酸化物電解槽セル(Solid Oxide Electrolyzer Cell)」の頭字語)型のものであることも明記される。従って、電解セルの全ての構成要素(アノード/電解質/カソード)はセラミックである。
【0054】
そのような構成要素は、SOFC燃料電池のものであってもよい。電解又は共電解中の反応器1の公称モードでの高い運転温度は、典型的には600℃〜1000℃の間である。
【0055】
典型的には、カソード支持セル(CSC)型の、本発明に適した基本SOEC電解セルの特性は、次のように以下の表1に示されるものであり得る。
【0056】
【表1】
【0057】
水電解槽は、電流の影響下で水素(及び酸素)を生成するための電気化学的装置である。
【0058】
HTE高温電解槽では、水蒸気を用いて高温での水の電解が行われる。HTE高温電解槽の機能は、以下の反応に従って水蒸気を水素と酸素に変換することである:
2HO→2H+O
【0059】
この反応は、電解槽のセル内で電気化学的に行われる。図1に図式的に示すように、各基本電解セル1は、固体電解質3の両側に配置されたカソード2及びアノード4から形成される。2つの電極(カソード及びアノード)2、4は、多孔質材料から作られた電子伝導体であり、電解質3は気密性、電子絶縁体及びイオン伝導体である。電解質は特にアニオン伝導体、より具体的にはO2−イオンのアニオン伝導体であってもよく、そして電解槽は、アニオン電解槽と呼ばれる。
【0060】
電気化学反応は、各電子伝導体とイオン伝導体との間の界面で起こる。
【0061】
カソード2において、半反応は以下の通りである:
2HO+4e→2H+2O2−
【0062】
アノード4において、半反応は以下の通りである:
2O2−→O+4e
【0063】
2つの電極2、4の間に挿入された電解質3は、アノード4とカソード2との間に印加された電位差によって作り出される電界の影響下でのO2−イオンの移動の場所である。
【0064】
図1の括弧内に示すように、カソード入口の水蒸気は水素Hを伴うことができ、出口で生成及び回収される水素は水蒸気を伴ってもよい。同様に、破線で示すように、生成された酸素を除去するために、空気などの排出ガスを入口に注入することもできる。排出ガスの注入は、熱調節器として作用するという追加の機能を有する。
【0065】
基本電解反応器は、カソード2と、電解質3と、アノード4とを有する上記のような基本セルと、電気的、油圧的(hydraulic)及び熱的機能を保証する2つのモノポーラ接続体とからなる。
【0066】
生成される水素及び酸素の流速を増加させるために、幾つかの基本電解セルを互いの上に積み重ね、通常は相互接続体又はバイポーラ相互接続プレートとして知られている相互接続装置でそれらを分離することが既知の慣例である。アセンブリは、電解槽(電解反応器)の電力供給及びガス供給を支持する2つの端部相互接続プレートの間に配置されている。
【0067】
従って、高温水電解槽(HTE)は、互いの上に積み重ねられた少なくとも1つの、一般的には複数の電解セルを含み、各基本セルは、電解質、カソード及びアノードから形成され、電解質はアノードとカソードとの間に挿入されている。
【0068】
1つ又は複数の電極と電気的に接触している流体的及び電気的相互接続装置は、一般に、電流を運搬及び収集する機能を果たし、1つ又は複数のガス循環区画を画定する。
【0069】
従って、「カソード」区画は、電流及び水蒸気を分配し、また接触しているカソードで水素を回収する機能を有する。
【0070】
「アノード」区画は、電流を分配し、また接触しているアノードで生成された酸素を、場合により排出ガスを使用して回収する機能を有する。
【0071】
図2は、従来技術による高温水蒸気電解槽の基本ユニットの分解図である。このHTE電解槽は、相互接続体5と交互に積み重ねられた固体酸化物(SOEC)型の複数の基本電解セルC1、C2を含む。各セルC1、C2・・・は、カソード2.1、2.2・・・と、アノード4.1、4.2・・・と、それらの間に配置された電解質3.1、3.2・・・とからなる。
【0072】
相互接続体5は、それぞれ相互接続体5と隣接するアノード4.2との間、及び相互接続体5と隣接するカソード2.1との間の容積によって画定される、カソード区画50とアノード区画51との間の分離を確実にする金属合金製の構成要素である。それはまた、セルへのガスの分配を確実にする。各基本ユニットへの水蒸気の注入は、カソード区画50内で行われる。カソード2.1、2.2・・・における生成された水素及び残留水蒸気の収集は、後者による水蒸気の解離の後、セルC1、C2・・・の下流のカソード区画50内で行われる。アノード4.2で生成された酸素の収集は、後者による水蒸気の解離の後、セルC1、C2・・・の下流のアノード区画51内で行われる。
【0073】
相互接続体5は、隣接する電極との直接接触によるセルC1とC2との間、すなわちアノード4.2とカソード2.1との間の電流の通過を確実にする。
【0074】
HTE高温共電解槽では、水蒸気及び二酸化炭素COを用いて高温共電解が行われる。SOEC高温共電解槽の機能は、以下の反応に従って水蒸気及びCOを水素、一酸化炭素及び酸素に変換することである:
CO+HO→CO+H+O
【0075】
共電解槽1は、今説明したHTE電解槽と全く同じ固体酸化物成分(SOEC)を含んでもよい。通常、水蒸気及び二酸化炭素COは、共電解槽に入る前に用途に応じて選択された比率で混合され、同時に各カソード区画50に注入される。
【0076】
図3に示すのは、複数の専用メタン化反応器6の上流に多数のX個及びP個の共電解反応器を使用するパワーツーガスユニットUである。
【0077】
この図3は、本発明による待機モードでこのユニットUを運転させる方法の一例を示す:この場合、P個の反応器1に電力が供給されて共電解モードで運転され、結果として生じる、電力が供給されていないX個の反応器には、P個の反応器の共電解から得られるガス生成物の一部が供給される。
【0078】
与えられた例は、工業用供給源、典型的にはCO及び約200℃の中温の熱を放出する鉄鋼業に結合された、公称運転において20MWeの共電解電力を有するパワーツーガスユニットに対応する。
【0079】
この20MWeの共電解力のために、そして選択されたSOEC反応器の運転条件下、すなわち1.33Vの電圧、1.1A/cmの電流密度及び10barの圧力下での熱中性運転(heat−neutral operation)で、パワーツーガスユニットUは、1855に等しい数N個のSOEC反応器1を含み、それは、それぞれが196cmである50個のセルC1、C2・・・のスタックに対応する。
【0080】
この1855の数N個の反応器は、それぞれ35個の反応器の53個のチャンバーにともにまとめられている。
【0081】
パワーツーガスユニットの公称運転、すなわち100%負荷での運転は、以下のステップを含む:
−高温(800℃)における、工業用供給源の出口の上流の捕捉物からの水蒸気及び二酸化炭素COが供給された、H、CO、HO及びCOの混合物を生成する、並列に運転される1855個のSOEC反応器全てによる20MWeの共電解のステップ;
−共電解反応器の出口での水蒸気の部分的凝縮のステップ;
−幾つかの(並列の)第1専用触媒メタン化反応器6のうちの1つの通過;
−水蒸気の中程度の凝縮のステップの後の、H、CO及びCOをメタン化してそれらからメタンCHを生成する反応を完了させる、幾つかの(並列の)第2専用触媒メタン化反応器6のうちの1つの通過;
−天然ガスネットワーク用の注入仕様を有する合成メタンを得るための、水をより徹底的に凝縮するステップ。
【0082】
加えて、公称運転において、パワーツーガスユニットUは熱的統合を有し、それに従って、メタン化反応器6からの熱は、共電解反応器1の入口で水を蒸発させるために特に十分に使用される。
【0083】
ユニットUへの電力の供給は、再生可能エネルギーからの余剰の電力生産によって確保される。この余剰は、10年間の予測で1800h/年と推定されている。
【0084】
ユニットの公称運転の仮説を余剰時間中にのみ取り扱うことで、電力ネットワークからの購入によって電力需要が供給されている年間にわたる長期間の待機をこうして想定すべきである。
【0085】
図3に示すように、本発明による待機モードでの運転は、以下のステップを実行することからなる:
a)ユニットUのP個の反応器に電力が供給され、また、水蒸気HO、又は水蒸気と二酸化炭素COとの混合物の何れかがP個の反応器のカソードに供給及び分配されて、P個の反応器の各カソードにおいて、水蒸気HOの高温電解、又は水蒸気及び二酸化炭素の高温共電解の何れかが行われる;
b)電解から得られるガス(水素H、水蒸気HO)又は共電解から得られるガス(H、水蒸気、一酸化炭素CO、二酸化炭素CO、メタンCH)の少なくとも一部が回収され、電力が供給されていないユニットUのX個の反応器の各カソードに供給及び分配され、数XはN−P以下であり、X個の反応器の各カソードで不均一触媒作用によるメタン化が行われる。
【0086】
本発明によるステップを適用することによって、待機モードでの熱管理戦略が以下のように行われる:
−待機における35個の反応器を含むチャンバー毎の4.64kWthでの熱損失の評価;
−P個の反応器からの生成物を他のX個のSOEC反応器内に注入し、温度の低下によって熱力学的に促進される以下の発熱反応による内部メタン化を可能にする:
CO+4H→CH+2HO。
CO+3H→CH+HO。
5barの圧力下でのメタン生成の変化の例を図4に示す;
−P個の活性反応器(800℃)とX個の不活性反応器(600℃)との間のメタン化反応平衡におけるシフトの熱力学的計算は、10barの圧力下で800℃において活性共電解反応器が電力を供給することなく7つのSOEC反応器の温度を600℃に維持することを可能にすること、すなわち、わずか12.5%の負荷でのユニットUの運転を可能にすることを示している。
【0087】
従って、本発明による待機モードでのこの運転戦略は明らかに、公称運転のわずか12.5%の電力の消費である、すなわち、X=N−PでP=数Nの12.5%であることと引き換えに、N個のSOEC反応器全てを高温に維持することを可能にする。
【0088】
図3に示すように、一旦X個の不活性SOEC反応器を高温に保つために使用されると、公称運転に関して、試薬は専用メタン化反応器6でそれらのメタン化を完了させる。
【0089】
従って、本発明によるパワーツーガスユニットUは、少ない負荷で、電力を利用してメタンを合成することを実施し続ける。
【0090】
本発明者らは、「ProSimPlus」市販モデリングソフトウェアを用いて、2つの運転モード、すなわち公称運転及び本発明による待機モードでの運転において全体的な熱バランスを行うために、ユニットUの熱統合を行った。
【0091】
このバランスを、図5(公称運転モード)及び図6(本発明による待機モード)にそれぞれ示す。それらの通常の定義によれば、低温ユーティリティは、典型的には低温でユニットから余剰熱を放出するために使用される冷却流体であり、一方で、高温ユーティリティは、典型的には中温又は高温でユニットの熱要件を満たすために使用される加熱添加物であることが明記される。
【0092】
図5及び6に示す曲線から、熱バランスは、以下を示す:
−仮説により、例えば空冷式熱交換器又はヒートポンプから電力の消費を通じて供給される、ユニットに対する低温ユーティリティの必要性;
−・正常である公称運転での運転のための;
・同様に、高温に維持されるにもかかわらず電力が供給されていないX個のSOEC反応器において熱損失が存在する、展開された熱戦略による待機モードでの運転のための、〜200℃付近の温度に制限される高温ユーティリティの必要性。
【0093】
ユニットが、中温でCO及び残留/余剰熱の両方を放出する工業用供給源と結合される場合、中温でのこの高温ユーティリティの要件は、ユニットの電気バランスに適合されている必要はない。
【0094】
ProSimPlusソフトウェアによる熱計算の結果、及びパワーツーガスユニットの電力収率の結果を、公称運転モード及び公称の12.5%の負荷を有する本発明による待機運転モードに対して、以下の表2に示す。
【0095】
【表2】
【0096】
この表2から、電力が供給されていないX個の反応器を高温に維持するための熱要件にもかかわらず、ユニットUの電力収率が部分負荷で維持されることが明らかになっている。
【0097】
本発明は、今説明した実施例に限定されない;図示されていない変形例に示される実施例の特徴は、特に互いに組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0098】
1 基本電解セル
2 カソード
3 電解質
4 アノード
5 相互接続体
6 専用メタン化反応器
50 カソード区画
51 アノード区画
図1
図2
図3
図4
図5
図6