特許第6803910号(P6803910)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6803910車両用エアバッグ装置、及びエアバッグ装置のエアバッグクッション
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6803910
(24)【登録日】2020年12月3日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】車両用エアバッグ装置、及びエアバッグ装置のエアバッグクッション
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/207 20060101AFI20201214BHJP
   B60N 2/42 20060101ALI20201214BHJP
   B60R 21/216 20110101ALI20201214BHJP
【FI】
   B60R21/207
   B60N2/42
   B60R21/216
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-526886(P2018-526886)
(86)(22)【出願日】2016年12月16日
(65)【公表番号】特表2018-537342(P2018-537342A)
(43)【公表日】2018年12月20日
(86)【国際出願番号】EP2016081389
(87)【国際公開番号】WO2017103076
(87)【国際公開日】20170622
【審査請求日】2018年5月31日
【審判番号】不服2019-13693(P2019-13693/J1)
【審判請求日】2019年10月11日
(31)【優先権主張番号】102015016346.9
(32)【優先日】2015年12月17日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100098143
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 雄二
(72)【発明者】
【氏名】バーントソン、マッツ
(72)【発明者】
【氏名】サンディンギ、パール
(72)【発明者】
【氏名】ラーソン、パトリック
【合議体】
【審判長】 氏原 康宏
【審判官】 島田 信一
【審判官】 藤井 昇
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/168401(WO,A1)
【文献】 特開2014−51138(JP,A)
【文献】 特開2006−35988(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R21/16-21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートフレーム(64)に固定され、側面衝突又は車両の横転の際に、乗員の頭部及び胸部を保護するように構成された車両用エアバッグ装置であって、
エアバッグクッション(30)と、
前記エアバッグクッション(30)の内部に配置され、前記シートフレーム(64)に連結されるスタッドボルト(22)を備えたガス発生器(20)と、
前記エアバッグクッション(30)の下縁部(32)に連結された第1の端部(52)と、前記スタッドボルト(22)に対して固定された第2の端部(54)とを有する引張部材(50)とを備えたことを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
前記引張部材(50)は、ストラップ(50)であり、該ストラップ(50)は、前記第2の端部(54)に第1の固定孔(58)を有し、該第1の固定孔(58)は、前記スタッドボルト(22)に取り付けられるように形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記エアバッグクッション(30)は、第2の固定孔(36)を有し、該第2の固定孔(36)は、前記スタッドボルト(22)に取り付けられるように形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記エアバッグ装置(10)は、前記シートフレーム(64)の隣接するシート(60)の方を向く側に配置されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記エアバッグクッション(30)の大部分は、前記エアバッグ装置(10)の作動後、前記エアバッグ装置(10)の上方に配置され、
前記引張部材(50)によって、前記エアバッグクッション(30)の膨張時に下向きの力が発生し、これによって当該エアバッグクッション(30)は下方に引っ張られ、当該エアバッグクッション(30)が後方にねじれるのが抑制されるように構成されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
請求項1に記載のエアバッグ装置に採用されるエアバッグクッション(30)。
【請求項7】
前記引張部材(50)は、ストラップ(50)であり、該ストラップ(50)は、前記第2の端部(54)に第1の固定凹部(58)を有し、該第1の固定凹部(58)は、前記スタッドボルト(22)に取り付けられるように形成されていることを特徴とする、請求項6に記載のエアバッグクッション。
【請求項8】
前記エアバッグクッション(30)は、第2の固定凹部(36)を有し、該第2の固定凹部(36)は、前記スタッドボルト(22)に取り付けられるように形成されていることを特徴とする、請求項6又は7に記載の装置。
【請求項9】
前記ストラップ(50)の前記第2の端部(54)における前記第1の固定凹部(58)と、前記ストラップ(50)の前記第1の端部(52)における取付け点(56)との間の距離(D)は、前記エアバッグクッション(30)における前記第2の固定凹部(36)と、前記ストラップ(50)の前記第1の端部(52)における前記取付け点(56)との間の距離(E)よりも小さいことを特徴とする、請求項8に記載のエアバッグクッション。
【請求項10】
前記ストラップ(50)は、前記エアバッグクッション(30)と一体に形成されることを特徴とする、請求項6〜9のいずれか1項に記載のエアバッグクッション。
【請求項11】
前記ストラップ(50)は、前記エアバッグクッション(30)とは別個の部材であり、前記取付け点(56)によって、前記エアバッグクッション(30)の前記下縁部(32)の前記第1の端部(52)に取り付けられる、特に、縫い付けられることを特徴とする、請求項6〜9のいずれか1項に記載のエアバッグクッション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートフレームに配置及び固定することができ、側面衝突又は車両の横転の際に、乗員の頭部及び胸部を保護するように構成されている、車両用エアバッグ装置に関する。さらに、本発明は、上述のエアバッグ装置のエアバッグクッションに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用エアバッグ装置は、目下、現行の車両において補助的な保護システムとして広く用いられている。例えば、エアバッグ装置は、車両の運転者に対する保護システムして用いられ、そのために、好ましくは、車両の運転者の直前のステアリングホイールに配置される。さらに、エアバッグ装置は、助手席乗員に対する保護システムとしても用いられ、この場合、好ましくは、助手席の前のダッシュボードにおけるグローブボックスの領域に配置される。また、事故の際に運転者及び助手席乗員の膝及び膝下を保護するように、運転席及び助手席の前のダッシュボードの下部領域にエアバッグ装置を設けることも知られている。
【0003】
更なる補足的な保護システムとして、車両の乗員の側面保護にもエアバッグ装置が用いられる。このために、エアバッグ装置は、例えば、事故の際に、カーテンとして膨張するエアバッグクッションによって車両の乗員を保護するために、運転席若しくは助手席の背もたれの外方に向く側面領域に設けられるか、又は、内部空間の天井領域においてサイドウィンドウの上方に配置される。
【0004】
これらの既知のエアバッグ装置は、車両の内部空間におけるそれぞれの意図された取付け位置又は用途に適合するように、様々なサイズ及び実施形態で与えられる。
【0005】
例えば、特許文献1から、シートフレームの所定の部分に設けられる、車両の乗員の側面保護のためのエアバッグ装置が既知である。この既知のエアバッグ装置は、エアバッグモジュールと、エアバッグモジュール内に折り畳まれて配置されるエアバッグクッションとを備える。エアバッグモジュールは、ボルトを用いてシートフレームに固定され、第1の端部がエアバッグクッションの所定の部分に結合されるとともに、第2の端部がボルトに結合される吊具を更に備える。吊具を用いると、エアバッグクッションが膨張する際、エアバッグクッションが、所定の位置に所定の長さで展開されることが可能になる。
【0006】
しかしながら、近年、特に、車両の安全を管轄する当局のより厳しい安全規制によって、車両の安全システムに対する要求が大幅に高まっている。車両の安全を管轄する当局による車両の最高評価を達成するには、現在、車両が、いわゆる「FCA」(フロントセンターエアバッグ(Front
Center Airbag))を装備することが必須である。このFCAは、運転席と客席との間の車両の中央、好ましくは、運転席又は助手席の背もたれの、隣接するシートの方を向く側の領域に配置され、側面衝突時に、エアバッグクッションが展開される場合、これらのシートにいる人物の体側部又は頭部を保護する。
【0007】
シートの所与の幾何形状及びその結果生じる設置空間の制限に起因して、シートの上方側面領域及びヘッドレストには、FCAのエアバッグモジュールに対する十分な設置空間がない。したがって、FCAのエアバッグモジュールは、背もたれの下方側面領域にしか十分な設置空間がないため、この領域にしか妨げなく格納することができない。
【0008】
しかしながら、背もたれの下方側面領域にエアバッグモジュールを配置することは、多くの欠点を伴う。
【0009】
従来のエアバッグモジュールは、通常、対称に構成されている。すなわち、ガス発生器が中央に配置され、エアバッグクッションが中央に関して対称に折り畳まれている。したがって、エアバッグモジュールの作動時、エアバッグクッションが同じく対称的に膨張し、すなわち、エアバッグクッションは、ガス発生器の上方及び下方に同じ分だけ展開する。これにより、エアバッグクッションの安定した位置決め様式が得られる。しかし、従来のエアバッグクッションを備える従来のエアバッグモジュールをFCAに用いる場合、人物の頭部を保護するには、展開又は膨張状態において、背もたれの下方側面領域におけるエアバッグモジュールの設置位置から、シートのヘッドレストを越えて上方に達しなければならない、特大のエアバッグクッションを用いなければならない。
【0010】
一方では、この特大のエアバッグクッションは、折畳み状態でも、大きな体積を必要とする。しかしながら、背もたれの下方側面領域にモジュールを設置するための容積は制限されているため、特大のエアバッグクッションを設置する場合、特大のエアバッグクッションの増大した体積に起因して、機能性の問題が生じる。
【0011】
他方では、エアバッグクッションは、ここではガス発生器に対して対称に折り畳まれているため、特大のエアバッグクッションの大部分が下方にも展開及び膨張する。しかし、下方では、双方のシート間の空間は、トランスミッショントンネル又はセンターコンソールによって制限され、そのため、特大のエアバッグクッションの下側部分は適正に展開することができない。一方、それにより、特大のエアバッグクッションの上側部分の展開及びその頭部に対する位置決めも、この場合、確実な機能性を保証することができないような影響を受ける。
【0012】
上述の欠点を回避するために、ガス発生器が作動し、エアバッグクッションが膨張する際に、エアバッグクッションが基本的にはガス発生器の上方に非対称に展開するように、エアバッグクッションを折り畳むとともに、ガス発生器に取り付けることが知られている。
【0013】
一方では、確かにこれにより、折畳み状態においてより小さな体積しか必要としないより小さなエアバッグクッションを用いることができ、エアバッグ装置は、エアバッグ装置を格納するのに十分な容積があるシートの背もたれの下方側面領域に設けることができる。さらに、膨張したエアバッグクッションがセンターコンソール又はトランスミッショントンネルによって影響を受けることが回避される。
【0014】
しかし、他方では、この場合、エアバッグクッションの位置決め様式は安定しない。なぜなら、シートフレームにおけるエアバッグクッションの固定点からエアバッグクッションの頭部領域までは大きく離れており、エアバッグクッションが非対称に膨張するため、意図された使用位置に対してエアバッグクッションの頭部領域の捻れ又は位置ずれが起こり得るためである。特に、エアバッグクッションは、車両の長手方向において上方かつ前方に展開するため(すなわち、ガス発生器に対して非対称)、エアバッグクッションの後方への捻れが生じ、これにより、エアバッグクッションの頭部領域が、意図された使用位置から離れる可能性がある。したがって、側面衝突又は車両の横転の際、前席の搭乗者同士が頭部を打ち付けかねない危険がある。エアバッグクッションの後方への捻れは、本質的に、エアバッグクッションの爆発的な急速膨張と、それに続く、完全に膨張した後の排気とによるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】独国特許出願公開第102009044734号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、この背景から、本発明の課題は、側面衝突又は車両の横転の際に、乗員の頭部及び胸部を確実に保護する、簡単で、コスト効果的であり、確実に機能する、車両用エアバッグ装置を提供することである。さらに、本発明の課題は、側面衝突又は車両の横転の際に、乗員の頭部及び胸部を確実に保護する、車両用エアバッグクッションを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題は、請求項1に記載のエアバッグ装置、及び請求項7に記載のエアバッグクッションによって解決される。本発明の更なる有利な形態は、従属請求項の主題である。
【0018】
本発明に係る車両用エアバッグ装置は、シートフレームに配置及び固定することができ、側面衝突又は車両の横転の際に、乗員の頭部及び胸部を保護するように構成されている。エアバッグ装置は、ガス発生器と、エアバッグクッションと、固定機構と、引張部材とを備える。固定機構は、エアバッグ装置をシートフレームに固定するために、ガス発生器及びエアバッグクッションを互いに接続する。引張部材は、第1の端部をエアバッグクッションの所定の部分に取り付けるとともに、第2の端部を固定機構に取り付けることができる。本発明によると、有利には、引張部材の第1の端部は、エアバッグクッションの下縁部に取り付けられる。
【0019】
この本発明に係る有利な形態により、エアバッグクッションに対する更なる固定点が提供され、これにより、エアバッグクッションの安定性及び位置決めの正確性が大幅に高まる。特に、これにより、エアバッグクッションの頭部領域が、シートのヘッドレストの隣の意図された展開領域に確実に位置決めされることが達成され、したがって、本発明に係るエアバッグ装置の機能性が保証される。これにより、前席に座っている搭乗者同士が頭部を打ち付けることを確実に回避することができるため、側面衝突又は車両の横転の際にも、乗員が確実に保護されるようになる。
【0020】
ここでは、引張部材をエアバッグクッションの下縁部に取り付けることによって、エアバッグクッションの膨張時に、下向きの力が発生し、これにより、エアバッグクッションは下方に引っ張られ、したがって、エアバッグクッションの後方への捻れが阻止されることが、特に有利であるとみなされる。これにより、シートのヘッドレストの隣の意図された展開領域における、エアバッグクッションの頭部領域の正確かつ確実に機能する位置決めが保証される。
【0021】
下向きの力の即時の介入又は発生を達成するために、また、それにより、エアバッグクッションの後方への捻れのいかなる発生も回避するために、引張部材は、有利には、本発明によると、短く構成される。これにより、エアバッグの下端部は、エアバッグの膨張時にもガス発生器の近くに留まる。
【0022】
好ましい一実施形態によれば、固定機構は、固定ボルトを含み、この固定ボルトを用いて、エアバッグ装置をシートフレームに配置及び固定することができる。したがって、本発明によると、有利には、エアバッグ装置は、このためにシートフレームに設けられた凹部に、確実に機能するように導入及び固定し、これにより、迅速で、ひいてはコスト効果的な取付けに寄与することが簡単に可能である。
【0023】
また、更なる好ましい一実施形態によれば、固定ボルトは、ガス発生器に直接配置することができる。これにより、エアバッグ装置の構成、ひいては製造が、更に簡略化され、コスト効果的になる。
【0024】
固定ボルトは、固定スリーブに配置することもでき、この場合、ガス発生器は、エアバッグ装置を形成するために、固定スリーブの内部に配置される。当業者には、固定ボルトを用いてエアバッグ装置をシートフレームに固定する更なる可能性が既知であり、これらは、本開示及び本発明の範囲に包含される。
【0025】
エアバッグ装置をシートフレームに固定する、当業者に既知の更なる可能性として、接着又は張力バンドがある。
【0026】
更なる好ましい一実施形態によれば、引張部材は、ストラップとして形成され、第2の端部に第1の固定凹部を有し、第1の固定凹部は、固定ボルトに取り付けられるように形成されている。
【0027】
ストラップとしての引張部材の本発明に係る有利な形態により、引張部材は、エアバッグクッションとともに簡単に折り畳むことができるため、エアバッグ装置の体積全体が更に低減される。一方、これにより、シートの側面領域においてエアバッグクッションに必要な設置空間も低減され、そのため、クッション材、ひいてはシートの快適性を向上することができる。
【0028】
更なる有利な一実施形態によれば、第1の固定凹部は固定穴として形成され、固定穴の直径は、固定ボルトの直径と一致するため、ストラップを固定ボルトに取り付けて固定するために、固定ボルトに押し込むことができる。これにより、ストラップを固定ボルトに迅速かつ簡単に取り付けることが可能になり、これにより、エアバッグ装置の取付けが全体として容易になる。
【0029】
本発明の更なる有利な一実施形態は、ガス発生器がエアバッグクッション内に配置され、エアバッグクッションは、第2の固定凹部を有し、第2の固定凹部は、固定ボルトに取り付けられるように形成されることを意図している。
【0030】
これにより、エアバッグ装置の取付けが、本質的に、特に、更なる有利な一実施形態により、固定ボルトがガス発生器に直接配置される場合に、容易になるとともに簡略化される。この場合、エアバッグクッションは、有利には、ガス発生器が導入される一体的なバッグを備え、ガス発生器が作動すると、このバッグから外へとエアバッグクッションが膨張する。この一体的なバッグは、第2の固定凹部を有し、第2の固定凹部は、本発明によると、有利には、それぞれ固定穴として形成され、固定穴の直径は、固定ボルトの直径と一致するため、好ましくは固定ボルトに密接して押し込むことができる。
【0031】
ここでは、エアバッグ装置は、僅かな部材しか備えず、それらの部材を互いに簡単に接続することができ、また、エアバッグ装置をシートフレームに迅速かつ簡単に取り付けるとともに、シートフレームに堅く接続することができることが、特に有利であるとみなされる。これにより、エアバッグ装置の組立て及び設置が簡略化されるとともに容易になり、さらに、コストも低減される。
【0032】
更なる好ましい一実施形態によれば、エアバッグ装置は、シートフレームの隣接するシートの方を向く側に配置される。これにより、車両の中央に配置され、側面衝突又は車両の横転の際に、FCAの作用領域において、シートの乗員を効果的に保護する、FCAを備える簡単かつ確実に機能するエアバッグ装置が提供される。
【0033】
更なる好ましい一実施形態によれば、エアバッグクッションの大部分は、エアバッグの作動後、エアバッグ装置の上方に配置される。したがって、有利には、側面衝突又は車両の横転の際に、乗員の頭部及び胸部の双方を確実に保護する、車両用エアバッグ装置が提供される。
【0034】
本発明に係る車両用エアバッグ装置のエアバッグクッションは、シートフレームに配置及び固定することができ、側面衝突又は車両の横転の際に、乗員の頭部及び胸部を保護するように構成されている。エアバッグ装置は、エアバッグクッションの他に、ガス発生器と、固定機構と、引張部材とを備え、固定機構は、エアバッグ装置をシートフレームに固定するために、ガス発生器及びエアバッグクッションを互いに接続する。引張部材は、第1の端部をエアバッグクッションの所定の部分に取り付けるとともに、第2の端部を固定機構に取り付けることができる。本発明によると、有利には、引張部材の第1の端部は、エアバッグクッションの下縁部に取り付けられる。
【0035】
この本発明に係る有利な形態により、エアバッグクッションに対する更なる固定点が提供され、これにより、エアバッグクッションの安定性及び位置決めの正確性が大幅に向上する。特に、これにより、エアバッグクッションの頭部領域が、シートのヘッドレストの隣の意図された展開領域に確実に位置決めされることが達成され、したがって、本発明に係るエアバッグ装置の機能性が保証される。これにより、前席に座っている搭乗者同士が頭部を打ち付けることを確実に回避することができるため、側面衝突又は車両の横転の際にも、乗員が確実に保護されるようになる。
【0036】
ここでは、引張部材をエアバッグクッションの下縁部に取り付けることにより、エアバッグクッションの膨張時に、下向きの力が発生し、これにより、エアバッグクッションが下方に引っ張られ、したがって、エアバッグクッションの後方への捻れが阻止されることが、特に有利であるとみなされる。これにより、シートのヘッドレストの隣の意図された展開領域における、エアバッグクッションの頭部領域の正確かつ確実に機能する位置決めが保証される。
【0037】
下向きの力の即時の介入又は発生を達成するために、また、それにより、エアバッグクッションの後方への捻れのいかなる発生も回避するために、引張部材は、有利には、本発明によると、短く構成される。これにより、エアバッグの下端部は、エアバッグの膨張時にもガス発生器の近くに留まる。
【0038】
更なる好ましい一実施形態によれば、引張部材は、ストラップとして形成され、第2の端部に第1の固定凹部を有し、第1の固定凹部は、固定機構に取り付けられるように形成されている。
【0039】
ストラップとしての引張部材の本発明に係る有利な形態により、引張部材は、エアバッグクッションとともに簡単に折り畳むことができ、それにより、エアバッグ装置の体積全体が更に低減される。一方、これにより、シートの側面領域においてエアバッグクッションに必要な設置空間も低減され、それにより、クッション材、ひいてはシートの快適性を向上することができる。
【0040】
本発明の更なる有利な一実施形態は、ガス発生器がエアバッグクッションの内部に配置され、エアバッグクッションは、第2の固定凹部を有し、第2の固定凹部は、固定機構に取り付けられるように形成されることを意図している。
【0041】
これにより、エアバッグ装置におけるエアバッグクッションの取付けが、本質的に、特に、更なる有利な一実施形態により、固定機構が、ガス発生器に直接配置された固定ボルトを含む場合に、容易になるとともに簡略化される。この場合、エアバッグクッションは、有利には、ガス発生器が導入される一体的なバッグを備え、ガス発生器が作動すると、このバッグから外へとエアバッグクッションが膨張する。この一体的なバッグは、第2の固定凹部を有し、第2の固定凹部は、本発明によると、有利には、それぞれ固定穴として形成され、固定穴の直径は、固定ボルトの直径に一致するため、好ましくは固定ボルトに密接して押し込むことができる。
【0042】
固定機構は、更なる有利な一実施形態によれば、固定スリーブも備えることができ、その場合、固定ボルトは、固定スリーブに配置することができ、エアバッグクッションは、エアバッグ装置を形成するために、その一体的なバッグ内に配置されたガス発生器とともに、固定スリーブの内部に配置される。当業者には、固定ボルトを用いてエアバッグクッションをシートフレームに固定する更なる可能性が既知であり、これらは、本開示及び本発明の範囲に包含される。
【0043】
本発明の更なる好ましい一実施形態によれば、ストラップの第2の端部における第1の固定凹部と、ストラップの第1の端部における取付け点との間の距離は、エアバッグクッションにおける第2の固定凹部と、ストラップの第1の端部における取付け点との間の距離よりも小さい。
【0044】
この本発明に係る有利な形態により、エアバッグクッションに対する更なる固定点が提供され、これにより、エアバッグクッションの安定性及び位置決めの正確性が大幅に向上する。特に、これにより、エアバッグクッションの頭部領域が、シートのヘッドレストの隣の意図された展開領域に確実に位置決めされることが達成され、したがって、本発明に係るエアバッグ装置の機能性が保証される。
【0045】
ここでは、エアバッグクッションのこの本発明に係る有利な形態により、エアバッグクッションの膨張時に下向きの力が発生し、これにより、エアバッグクッションは下方に引っ張られ、したがって、エアバッグクッションの後方への捻れが阻止されることが、特に有利であるとみなされる。これにより、シートのヘッドレストの隣の意図された展開領域における、エアバッグクッションの頭部領域の正確かつ確実に機能する位置決めが保証される。
【0046】
エアバッグクッションのこの本発明に係る有利な形態の更なる利点は、これにより、下向きの力の即時の介入又は発生が達成されることである。これにより、エアバッグクッションの後方への捻れのいかなる発生も回避される。さらに、引張部材は、有利には、本発明によると、エアバッグの下端部が、エアバッグの膨張時にもガス発生器の近くに留まるように短く構成される。
【0047】
ストラップは、更なる好ましい一実施形態によれば、エアバッグクッションと一体に形成することができる。これにより、エアバッグの製造時に必要とされる作業ステップが少なくなり、したがって、エアバッグの製造がより簡単、迅速かつコスト効果的になる。
【0048】
一方、別の好ましい実施形態によれば、ストラップは別個の部材であり、取付け点によって、エアバッグクッションの下縁部における第1の端部に取り付けられることを意図することもできる。ここで、有利には、ストラップは、取付け点によって、エアバッグクッションの下縁部に縫い付けられる。
【0049】
本発明の更なる利点及び特徴は、図面と併せて、以下の記載から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】シートフレーム64に配置されたエアバッグ装置10を備える、車両の運転席60の背面からの概略部分図である。
図2図1の線A−Aに沿ったシートフレーム64の断面図である。
図3】ストラップ50を伴うエアバッグクッション30の図である。
図4図3の細部Yの拡大図である。
図5】エアバッグ装置10の動作モードの概略図である。
図6】エアバッグ装置10の動作モードの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1は、シートフレーム64に配置されたエアバッグ装置10を備える、車両の運転席60の背面からの概略部分図を示している。この部分図は、図2の線B−Bに沿った断面図である。ここでは、簡略化のために、シートフレーム64のうち、エアバッグ装置10が配置されている部分のみが示されている。シートフレーム64の上端部には、ヘッドレスト62が配置され、シートフレーム64の外方に向く側には、外張り66で覆われたクッション材68が設けられている。
【0052】
エアバッグ装置10は、2つのボルト22を用いてシートフレーム64に配置及び固定され、2つのボルト22の他に、エアバッグクッション30及びガス発生器20を備える。ガス発生器20は、エアバッグクッション30の内部に配置され、この図では、ガス発生器20を囲むエアバッグクッション30の外側のみが示されている。
【0053】
図1には、下側固定ボルト22に取り付けられたストラップ50がよく示されており、ここでは、第2の端部54が固定されている。ここに固定されているストラップ50により、エアバッグクッション30の膨張時、下向きの力が発生し、これにより、エアバッグクッション30は下方に引っ張られ、したがって、エアバッグクッション30の後方への捻れが阻止される。これにより、シートのヘッドレスト62の隣の意図された展開領域における、エアバッグクッション30の頭部領域の正確かつ確実に機能する位置決めが保証される。
【0054】
さらに、ここでは、エアバッグ装置10が、クッション材68の内部に配置され、エアバッグ装置10がクッション材68から出ないようにクッション材68によって囲まれるため、エアバッグ装置10によってシートの快適性が損なわれないことがよく見て取れる。
【0055】
エアバッグ装置10は、図2に関して以下に記載されるように、クッション材68の凹部に配置することができるが、別個のシース又はカバー(ここでは図示せず)を備えてもよく、それらとともにクッション材68に組み入れてもよい。エアバッグ装置10をクッション材68内に配置する多くの異なる可能性が存在するが、これらは当業者には既知であるため、これに関して更に説明する必要はない。
【0056】
図2において、図1の線A−Aに沿ったシートフレーム64の断面図が示されている。シートフレーム64は、その外側、つまり、隣接するシートの方を向く側に、凹部にエアバッグ装置10が配置されるクッション材68を備える。クッション材68には、外張り66が施されている。エアバッグ装置10は、ガス発生器20と、エアバッグクッション30と、固定ボルト22の形態の固定機構とを備える。
【0057】
固定ボルト22は、ガス発生器20に配置され、ガス発生器20は、エアバッグクッション30のチャンバー34内に配置されている。固定ボルト22によって、ガス発生器20、ひいてはエアバッグ装置10全体が、シートフレーム64に配置及び固定されている。ここでは、エアバッグ装置10が僅かな部材しか備えず、それらの部材を互いに簡単に接続することができ、また、エアバッグ装置10をシートフレーム64に迅速かつ簡単に取り付けるとともに、シートフレーム64に堅く接続することができることが、特に有利であるとみなされる。これにより、エアバッグ装置10の組立て及び設置が簡略化されるとともに容易になり、さらに、コストも低減される。
【0058】
ここでは、ストラップ50は、第2の端部54が固定ボルト22に取り付けられ、第1の端部52がエアバッグクッション30の下縁部に取り付けられることがよく見て取れる。
【0059】
ここでは、進行方向(図2の上方)前方に向いてガス発生器20の前に、エアバッグクッション30が折り畳まれたものが配置されていることもよく見て取れる。したがって、エアバッグクッション30は、ガス発生器20の作動後、簡単に前方かつ上方に展開し、そのため、FCAの機能を妨害されずに達成することができる。
【0060】
図3は、ストラップ50を伴うエアバッグクッション30の図を示している。エアバッグクッション30は、ガス発生器(図示せず)を配置することができる一体チャンバー34を有し、また、固定穴36として形成された2つの第2の固定凹部を有する。エアバッグクッション30の下縁部32には、ストラップ50が、取付け点56において取り付けられている。
【0061】
ストラップ50は、ここでは別個の部材であり、第1の端部52が、取付け点56によって、エアバッグクッション30の下縁部32に取り付けられる。第2の端部54において、ストラップ50は、第1の固定凹部58を有し、第1の固定凹部58は、固定穴58として形成され、固定穴58の寸法は、エアバッグクッション30の第2の固定凹部又は固定穴36と一致する。
【0062】
また、固定穴36及び58の寸法は、ここには図示されていない固定ボルトの寸法と一致するように選択され、それにより、固定穴36及び58は、エアバッグクッション30を固定するように、ここには図示されていない固定ボルトと協働することができる。
【0063】
図4は、図3の細部Yの拡大図を示している。ストラップ50は、第1の端部52が、取付け点56によって、エアバッグクッション30の下縁部32に縫い付けられることで取り付けられる。
【0064】
また、ストラップ50の寸法並びに取付け点56の配置及びエアバッグクッション30の下縁部32へのストラップ50の取付けは、ストラップ50の第1の端部52における取付け点56と、ストラップ50の第2の端部54における第1の固定穴58との間の距離Dが、ストラップ50の第1の端部52における取付け点56と、エアバッグクッション30のチャンバー34における第2の固定穴36との間の距離Eよりも小さくなるように選択される。
【0065】
エアバッグ装置10を組み立てるには、まず、エアバッグクッション30のチャンバー34内にガス発生器20(ここでは図示せず)を導入し、ガス発生器20に配置された固定ボルト22を、第2の固定穴36を通してチャンバー34から出す。続いて、ストラップ50を、第1の固定穴58によって、下側の第2の固定穴36から出ている下側固定ボルト22に固定する。続いて、エアバッグクッション30を、上述及び図示した方法で折り畳み、その後、そうして組み立てられたエアバッグ装置10を、同様に上述及び図示した方法で、シートフレーム64(ここでは図示せず)に配置及び固定する。
【0066】
この本発明に係る有利な形態により、エアバッグクッション30に対する更なる固定点が提供され、これにより、エアバッグクッション30の安定性及び位置決めの正確性が大幅に向上する。特に、これにより、エアバッグクッション30の頭部領域が、シートのヘッドレスト62の隣の意図された展開領域に確実に位置決めされることが達成され、したがって、本発明に係るエアバッグ装置10の機能性が保証される。
【0067】
ここでは、エアバッグクッション30のこの本発明に係る有利な形態により、エアバッグクッション30の膨張時、下向きの力が発生し、これにより、エアバッグクッション30が下方に引っ張られ、したがって、エアバッグクッション30の後方への捻れが阻止されることが、特に有利であるとみなされる。これにより、シートのヘッドレスト62の隣の意図された展開領域における、エアバッグクッション30の頭部領域の正確かつ確実に機能する位置決めが保証される。
【0068】
エアバッグクッション30のこの本発明に係る有利な形態の更なる利点は、下向きの力の即時の介入又は発生が達成されることである。これにより、エアバッグクッション30の後方への捻れのいかなる発生も回避される。さらに、ストラップ50は、有利には、本発明によると、エアバッグ30の下端部が、エアバッグ30の膨張時にもガス発生器20の近くに留まるように短く構成される。
【0069】
以下、エアバッグ装置10の動作モードを、図5及び図6に関して概略的に示す。
【0070】
図5は、車両の車体80を、正面から概略的な図で示している。車体80には、2つのシート60が並んで配置され、これらのシート60は、運転席又は助手席を表している。各シート60には、衝突試験用ダミー70が配置され、衝突試験用ダミー70は、車体80に固定されたシートベルト82によって、衝突試験用ダミー70の頭部がシート60のヘッドレスト62に当接するように、シート60にしっかりと保持されている。
【0071】
ここで、この試験装置において、車体80に側方からの力Fをもたらすことにより、側面衝突がシミュレートされる。
【0072】
図5には、側方からの力Fをもたらした直後の瞬間が示されている。側面衝突により、エアバッグ装置10(ここでは図示せず)が作動し、それにより、同じくここには図示されていないガス発生器20が起動して、FCA又はエアバッグクッション30が完全に膨張する。助手席乗員又は衝突試験用ダミー70(図5の左側)は、側面衝突による影響をまだ受けておらず、座席60に変わらず着座しており、頭部がヘッドレスト62に接するように、シートベルト82によって座席60に保持されている。
【0073】
それに対して、運転者又は衝突試験用ダミー70(図5の右側)は、既に、側面衝突によって引き起こされた右側への動きを、側面衝突の反対方向に開始しているが、シートベルト82によってシート60にしっかりと保持されている。
【0074】
エアバッグクッション30は、双方の乗員又は衝突試験用ダミー70間で完全に膨張して、衝突試験用ダミー70の頭部の高さを越えて、車体の天井の方向に拡大している。ここでよく見て取れるように、エアバッグクッション30の頭部領域は、双方のシート間の意図された展開領域にあり、頭部の高さを越えて、車両内の天井の方向に拡大している。これにより、図6に関して以下で明らかとなるように、側面衝突時のFCAの確実な機能が保証される。
【0075】
図6において、側面衝突から更に経過した瞬間が示されている。ここでは、助手席乗員又は左側の衝突試験用ダミー70も、側面衝突によって引き起こされた右側への動きを、側面衝突の反対方向に行うが、エアバッグクッション30によって停止されている。シートベルト82は、前方への動きしか停止又は抑制しないため、衝突試験用ダミー70のこの側方の動きを停止又は抑制することができない。しかし、エアバッグクッション30の形成及び位置決めにより、衝突試験用ダミー70の動きが抑制又は捕捉され、助手席乗員(左側の衝突試験用ダミー70)の頭部及び上体も、運転者(右側の衝突試験用ダミー70)の頭部及び上体も、側面衝突時に保護される。これについてこれ以上説明することはない。
【符号の説明】
【0076】
10 エアバッグ装置
20 ガス発生器
22 固定ボルト
30 エアバッグクッション
32 エアバッグクッションの下縁部
34 チャンバー
36 第2の固定凹部
50 引張部材/ストラップ
52 引張部材の第1の端部
54 引張部材の第2の端部
56 取付け点
58 第1の固定凹部
60 シート
62 ヘッドレスト
64 シートフレーム
66 外張り
67 空洞部
68 クッション材
70 衝突試験用ダミー
80 車体
82 シートベルト
A 視点A−A
B 視点B−B
D 距離D
E 距離E
F 側方からの力
Y エアバッグクッションの細部
図1
図2
図3
図4
図5
図6