特許第6803927号(P6803927)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6803927セパレータ構造体、ニッケル亜鉛二次電池及び亜鉛空気二次電池
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6803927
(24)【登録日】2020年12月3日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】セパレータ構造体、ニッケル亜鉛二次電池及び亜鉛空気二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/16 20060101AFI20201214BHJP
   H01M 10/28 20060101ALI20201214BHJP
   H01M 12/08 20060101ALI20201214BHJP
   H01M 10/30 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   H01M2/16 L
   H01M2/16 M
   H01M2/16 P
   H01M10/28 Z
   H01M12/08 K
   H01M10/30 Z
【請求項の数】11
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-562900(P2018-562900)
(86)(22)【出願日】2017年11月15日
(86)【国際出願番号】JP2017041082
(87)【国際公開番号】WO2018135117
(87)【国際公開日】20180726
【審査請求日】2019年4月26日
(31)【優先権主張番号】特願2017-7984(P2017-7984)
(32)【優先日】2017年1月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113365
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 雅晴
(74)【代理人】
【識別番号】100131842
【弁理士】
【氏名又は名称】加島 広基
(74)【代理人】
【識別番号】100209336
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 悠
(72)【発明者】
【氏名】橋本 直美
(72)【発明者】
【氏名】梶田 雅晴
(72)【発明者】
【氏名】浅野 恵里
【審査官】 冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/039349(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/051934(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/16
H01M 10/28
H01M 10/30
H01M 12/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛二次電池用セパレータ構造体であって、
層状複水酸化物(LDH)セパレータ、及び前記LDHセパレータの片側に設けられる多孔質基材を含む複合板と、
前記複合板が嵌合される開口部を備えた樹脂製外枠と、
を備え、
前記樹脂製外枠が、その内周に沿って前記複合板の前記多孔質基材側を係止する凹部を有し、前記凹部と前記複合板が接着剤で封止接合されており、
前記多孔質基材が100μm以上の厚さを有し、かつ、前記多孔質基材の前記凹部と対向する部分が前記多孔質基材の表面から100μm以上の深さにわたって前記接着剤が染み込んでいる、セパレータ構造体。
【請求項2】
前記多孔質基材の厚さが100〜600μmであり、かつ、前記多孔質材における前記接着剤が染み込んでいる部分の深さが100〜600μmである、請求項1に記載のセパレータ構造体。
【請求項3】
前記接着剤が耐アルカリ性を有する樹脂を含む、請求項1又は2に記載のセパレータ構造体。
【請求項4】
前記接着剤が、エポキシ樹脂系接着剤、天然樹脂系接着剤、変性オレフィン樹脂系接着剤及び変成シリコーン樹脂系接着剤からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のセパレータ構造体。
【請求項5】
前記樹脂製外枠が、ABS樹脂、変性ポリフェニレンエーテル、及びポリプロピレン樹脂からなる群から選択される少なくともいずれか1種で構成される、請求項1〜4のいずれか一項に記載のセパレータ構造体。
【請求項6】
前記多孔質基材が、セラミックス材料、金属材料、及び高分子材料からなる群から選択される少なくとも1種で構成される、請求項1〜5のいずれか一項に記載のセパレータ構造体。
【請求項7】
前記LDHセパレータがガス不透過性及び/又は水不透過性を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のセパレータ構造体。
【請求項8】
前記セパレータ構造体が全体としてガス不透過性及び/又は水不透過性を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載のセパレータ構造体。
【請求項9】
前記LDHセパレータが、複数のLDH板状粒子の集合体で構成されるLDH膜を有し、前記複数のLDH板状粒子がそれらの板面が前記多孔質基材の表面と垂直に又は斜めに交差するような向きに配向している、請求項1〜8のいずれか一項に記載のセパレータ構造体。
【請求項10】
水酸化ニッケル及び/又はオキシ水酸化ニッケルを含む正極と、
亜鉛、亜鉛合金及び/又は酸化亜鉛を含む負極と、
アルカリ金属水酸化物水溶液を含む電解液と、
前記正極と前記負極とを水酸化物イオン伝導可能に隔離する、請求項1〜9のいずれか一項に記載のセパレータ構造体と、
を備えた、ニッケル亜鉛二次電池。
【請求項11】
空気極と、
亜鉛、亜鉛合金及び/又は酸化亜鉛を含む負極と、
アルカリ金属水酸化物水溶液を含む電解液と、
前記空気極と前記負極とを水酸化物イオン伝導可能に隔離する、請求項1〜9のいずれか一項に記載のセパレータ構造体と、
を備えた、亜鉛空気二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セパレータ構造体、ニッケル亜鉛二次電池及び亜鉛空気二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
ニッケル亜鉛二次電池、空気亜鉛二次電池等の亜鉛二次電池では、充電時に負極から金属亜鉛がデンドライト状に析出し、不織布等のセパレータの空隙を貫通して正極に到達し、その結果、短絡を引き起こすことが知られている。このような亜鉛デンドライトに起因する短絡は繰り返し充放電寿命の短縮を招く。
【0003】
上記問題に対処すべく、水酸化物イオンを選択的に透過させながら、亜鉛デンドライトの貫通を阻止する、層状複水酸化物(LDH)セパレータを備えた電池が提案されている。例えば、特許文献1(国際公開第2013/118561号)には、ニッケル亜鉛二次電池においてLDHセパレータを正極及び負極間に設けることが開示されている。また、特許文献2(国際公開第2016/076047号)には、樹脂製外枠に嵌合又は接合されたLDHセパレータを備えたセパレータ構造体が開示されており、LDHセパレータがガス不透過性及び/又は水不透過性を有する程の高い緻密性を有することが開示されている。また、この文献にはLDHセパレータが多孔質基材と複合化された複合板の形で用いられることも開示されている。
【0004】
また、特許文献3(国際公開第2016/039349号)には、LDHセパレータが接着剤を介して樹脂製外枠に接着された構成が開示されている。この文献では、接着性及び耐アルカリ性の観点から、ABS樹脂、変性ポリフェニレンエーテル、及びポリプロピレン樹脂で構成される樹脂製外枠に対して、エポキシ樹脂系接着剤、天然樹脂系接着剤、変性オレフィン樹脂系接着剤及び変成シリコーン樹脂系接着剤から選択される接着剤が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2013/118561号
【特許文献2】国際公開第2016/076047号
【特許文献3】国際公開第2016/039349号
【発明の概要】
【0006】
上述したようなLDHセパレータは、ニッケル亜鉛電池において、亜鉛デンドライトによる正負極間の短絡を効果的に防止することができるが、ニッケル亜鉛電池の性能の更なる改善が望まれる。特に、亜鉛デンドライトによる正負極間の短絡をより効果的に回避するためには、電解液を正負極間で完全に遮断することが望まれる。この点、特許文献2及び3に開示されるようなセパレータ構造体においても、信頼性向上の観点から、LDHセパレータ及び多孔質基材を含む複合板と樹脂製外枠との間の接着部分の気密性ないし液密性の改善が望まれる。また、アルカリ電解液中での電池の充放電運転を伴う長期使用における、接着部分の耐久性の改善も望まれる。
【0007】
本発明者らは、今般、LDHセパレータ及び多孔質基材を含む複合板を樹脂製外枠に接着剤で封止接合するに際し、複合板の多孔質基材側を樹脂製外枠の凹部と対向させ、かつ、接着剤を多孔質基材に深く染み込ませることで、信頼性及び耐久性に優れたLDHセパレータ構造体を提供できるとの知見を得た。
【0008】
したがって、本発明の目的は、多孔質基材付きLDHセパレータを樹脂製外枠内に備えたセパレータ構造体において、信頼性及び耐久性を改善することにある。
【0009】
本発明の一態様によれば、亜鉛二次電池用セパレータ構造体であって、
層状複水酸化物(LDH)セパレータ、及び前記LDHセパレータの片側に設けられる多孔質基材を含む複合板と、
前記複合板が嵌合される開口部を備えた樹脂製外枠と、
を備え、
前記樹脂製外枠が、その内周に沿って前記複合板の前記多孔質基材側を係止する凹部を有し、前記凹部と前記複合板が接着剤で封止接合されており、
前記多孔質基材が100μm以上の厚さを有し、かつ、前記多孔質基材の前記凹部と対向する部分が前記多孔質基材の表面から100μm以上の深さにわたって前記接着剤が染み込んでいる、セパレータ構造体が提供される。
【0010】
本発明の他の一態様によれば、水酸化ニッケル及び/又はオキシ水酸化ニッケルを含む正極と、
亜鉛、亜鉛合金及び/又は酸化亜鉛を含む負極と、
アルカリ金属水酸化物水溶液を含む電解液と、
前記正極と前記負極とを水酸化物イオン伝導可能に隔離する、前記セパレータ構造体と、
を備えた、ニッケル亜鉛二次電池が提供される。
【0011】
本発明の他の一態様によれば、空気極と、
亜鉛、亜鉛合金及び/又は酸化亜鉛を含む負極と、
アルカリ金属水酸化物水溶液を含む電解液と、
前記空気極と前記負極とを水酸化物イオン伝導可能に隔離する、前記セパレータ構造体と、
を備えた、亜鉛空気二次電池が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】本発明のセパレータ構造体を模式的に示す断面図である。
図1B図1に示されるセパレータ構造体の接着部分を微視的に描いた拡大図である。
図2A】例A1において作製された機能層の表面微構造を示すSEM画像である。
図2B】例A1において作製された機能層の断面微構造を示すSEM画像である。
図3A】例B1で作製された、接着剤を染み込ませた多孔質基材の断面SEM像である。
図3B図3Aにおいて示される染み込み界面部分を拡大観察した断面SEM像である。
図3C】例B1で作製された、接着剤を染み込ませた多孔質基材を真上から撮影した写真である。
図4A】例B5(比較例)で作製された、接着剤を染み込ませた多孔質基材の断面SEM像である。
図4B図4Aにおいて示される染み込み界面部分を拡大観察した断面SEM像である。
図4C】例B5(比較例)で作製された、接着剤を染み込ませた多孔質基材を真上から撮影した写真である。
図5A】例B1〜B5の緻密性判定試験で使用された測定用密閉容器の分解斜視図である。
図5B】例B1〜B5の緻密性判定試験で使用された測定系の模式断面図である。
図6A】例B1〜B5で使用されたHe透過度測定系の一例を示す概念図である。
図6B図6Aに示される測定系に用いられる試料ホルダ及びその周辺構成の模式断面図である。
図7】例B1〜B6の引張強度試験において作製されたサンプルの構成を示す図である。
図8A】従来のセパレータ構造体を示す模式断面図である。
図8B図8Aに示されるセパレータ構造体の接着部分の拡大図である。
図9A図8Aに示されるセパレータ構造体において、LDHセパレータ及び多孔質基材の向きを逆にしたセパレータ構造体を示す模式断面図である。
図9B図9Aに示されるセパレータ構造体の接合部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
セパレータ構造体
本発明のセパレータ構造体は、亜鉛二次電池に用いられるものである。本明細書において、亜鉛二次電池は、ニッケル亜鉛二次電池、酸化銀亜鉛二次電池、酸化マンガン亜鉛二次電池、亜鉛空気二次電池、及びその他各種のアルカリ亜鉛二次電池等、LDHセパレータを適用可能な各種亜鉛二次電池であることができる。特に、ニッケル亜鉛二次電池及び亜鉛空気二次電池が好ましく、特に好ましくはニッケル亜鉛電池である。セパレータ構造体を適用可能な電池は正極及び負極の対が1つの単位電池であってもよいし、正極及び負極の対を2つ以上、すなわち2つ以上の単位電池を備えた積層電池であってもよい。また、積層電池は直列型積層電池であってもよいし、並列型積層電池であってもよい。
【0014】
本発明のセパレータ構造体が組み込まれた亜鉛二次電池は、正極と、負極と、電解液と、セパレータ構造体とを備えることになる。正極及び負極は二次電池の種類に応じてそれぞれ適宜選択すればよい。例えば、ニッケル亜鉛二次電池の場合、正極は水酸化ニッケル及び/又はオキシ水酸化ニッケルを含み、負極は亜鉛、亜鉛合金及び/又は酸化亜鉛を含む。亜鉛空気二次電池の場合、正極は空気極であり、負極は亜鉛、亜鉛合金及び/又は酸化亜鉛を含む。セパレータ構造体は、LDHセパレータを備えた構造体であって、正極と負極とを水酸化物イオン伝導可能に隔離するように設けられる。典型的な電解液はアルカリ金属水酸化物水溶液を含む。
【0015】
図1A及び1Bに本発明のセパレータ構造体の模式断面図を示す。図1A及び1Bに示されるように、セパレータ構造体10は、複合板12と、樹脂製外枠18とを備える。複合板12は、LDHセパレータ14と、LDHセパレータ14の片側に設けられる多孔質基材16とを含む。樹脂製外枠18は開口部18aを備え、開口部18aに複合板12が嵌合される。樹脂製外枠18は、その内周に沿って複合板12の多孔質基材16側を係止する凹部18bを有し、凹部18bと複合板12が接着剤20で封止接合されている。多孔質基材16は100μm以上の厚さを有しており、図1Bに拡大して描かれるように、多孔質基材16の凹部18bと対向する部分が多孔質基材16の表面から100μm以上の深さDにわたって接着剤20が染み込んでいる。本明細書において接着剤20が多孔質基材16に染み込んでいるということは、多孔質基材16内の気孔が接着剤20で充填されていることを意味する。このように、LDHセパレータ14及び多孔質基材16を含む複合板12を樹脂製外枠18に接着剤20で封止接合するに際し、複合板12の多孔質基材16側を樹脂製外枠18の凹部18bと対向させ、かつ、接着剤20を多孔質基材16に深く染み込ませることで、信頼性及び耐久性を改善することができる。これらの利点は、以下のとおり説明することができる。
【0016】
前提として、図8Aに示されるように、複合板12を、LDHセパレータ14側が樹脂製外枠18の凹部18bに対向する向きで、樹脂製外枠18に封止接合させたセパレータ構造体が既に知られている(例えば特許文献2参照)。すなわち、複合板12のLDHセパレータ14側が開口部18aの狭い側に位置し、複合板12の多孔質基材16側が開口部18aの広い側に位置する構造が既に知られている。この配置の場合、LDHセパレータ14と樹脂製外枠18(特に凹部18b)が接着剤20を介して接着されることで、図8Bに示されるように、気密性ないし液密性に優れる緻密なLDHセパレータ14と接着できる面積が大きいため(図中の点線で囲まれる部分を参照)、接着部分において気密性ないし液密性を確保しやすく、それ故、接着部分の信頼性が高くなる。その反面、亜鉛デンドライトの貫通を阻止するためのLDHセパレータ14が負極24に面する配置となることで、充電中に負極24から伸展する亜鉛デンドライトが接着剤20を剥がす方向(引張方向;図8Aにおいて矢印で示される方向)にLDHセパレータ14を押すことになるため、接着部分の耐久性に問題がある。
【0017】
かかる問題に対処すべく、図9Aに示されるように、複合板12の向きを逆にすること、具体的には、多孔質基材16側が樹脂製外枠18の凹部18bに対向する向きで、樹脂製外枠18に封止接合させる構成が考えられる。すなわち、複合板12のLDHセパレータ14側が開口部18aの広い側に位置し、複合板12の多孔質基材16側が開口部18aの狭い側に位置する構造である。この配置の場合、充電中に負極24から進展する亜鉛デンドライトが接着部分を凹部18bに向かって押し付ける方向(圧縮方向;図9Aにおいて矢印で示される方向)に成長するため、接着部分の耐久性が向上する。しかしながら、図9Bに示されるように、気密性ないし液密性に優れる緻密なLDHセパレータ14と接着剤20の接触する面積が極端に小さくなるため(図中の点線で囲まれる部分を参照)、気密性ないし液密性の確保が難しくなり、接着部分の信頼性が損なわれる。このように、複合板12の向きを図8A及び8Bに示されるような従来技術の向きに対して逆にするだけでは、接着部分の気密性ないし液密性の確保による信頼性向上と、充放電に対する耐久性の向上とを両立することは難しいといえる。
【0018】
かかる技術的課題に対して、本発明のセパレータ構造体10にあっては、図1A及び1Bに示されるように、多孔質基材16の凹部18bと対向する部分が多孔質基材16の表面から100μm以上の深さDにわたって接着剤20が染み込んでいる構成を採用する。このように、複合板12の多孔質基材16側を樹脂製外枠18の凹部18bと対向させ、かつ、接着剤20を多孔質基材16に深く染み込ませることで、信頼性及び耐久性を改善することができる。すなわち、複合板12を上記のような向きに配置することで、充電中に析出する亜鉛デンドライトが接着部分を凹部18bに向かって押し付ける方向(圧縮方向)に成長するため、接着部分の耐久性が向上する。また、多孔質基材16の内部に接着剤20(好ましくはアルカリ耐性を有する樹脂)が深く染み込んだ構造のため、LDHセパレータ14と接着剤20の接触する面積が極端に小さくなっても、多孔質基材16の接着剤20で充填された部分によって気密性及び液密性の確保が可能になり、接着部分の高い信頼性が確保される。また、接着剤20が多孔質基材16に深く染み込むことで、その接着強度の向上も期待できる。この構造は、多孔質基材16の端面に接着剤20(好ましくはアルカリ耐性のある樹脂)が染み込んだ構造であるといえるが、接着剤20は接着時に複合板12(特に多孔質基材16)に染み込ませてもよいし、接着前に複合板12(特に多孔質基材16)に染み込ませてもよい。いずれにしても、本発明のセパレータ構造体10における接着界面は面と面が単なる二次元的に接着した界面ではなく、接着剤の染み込みによる、より三次元的な接着構造のため剥がれにくいといえる。
【0019】
複合板
複合板12は、LDHセパレータ14と、LDHセパレータ14の片側に設けられる多孔質基材16とを含む。
【0020】
LDHセパレータ14は層状複水酸化物(LDH)を含むセパレータであり、亜鉛二次電池に組み込まれた場合に、正極板と負極板とを水酸化物イオン伝導可能に隔離するものである。すなわち、LDHセパレータ14は水酸化物イオン伝導セパレータとしての機能を呈する。好ましいLDHセパレータ14はガス不透過性及び/又は水不透過性を有する。換言すれば、LDHセパレータ14は不透過性及び/又は水不透過性を有するほどに緻密化されているのが好ましい。なお、本明細書において「ガス不透過性を有する」とは、後述する例A1の評価4で採用される「緻密性判定試験」又はそれに準ずる手法ないし構成でガス不透過性を評価した場合に、水中で測定対象物(すなわちLDHセパレータ14)の一面側にヘリウムガスを0.5atmの差圧で接触させても他面側からヘリウムガスに起因する泡の発生がみられないことを意味する。また、本明細書において「水不透過性を有する」とは、測定対象物(例えばLDHセパレータ)の一面側に接触した水が他面側に透過しないことを意味する(例えば特許文献2を参照)。すなわち、LDHセパレータ14がガス不透過性及び/又は水不透過性を有するということは、LDHセパレータ14が気体又は水を通さない程の高度な緻密性を有することを意味し、透水性を有する多孔性フィルムやその他の多孔質材料ではないことを意味する。こうすることで、LDHセパレータ14は、その水酸化物イオン伝導性に起因して水酸化物イオンのみを選択的に通すものとなり、電池用セパレータとしての機能を呈することができる。このため、充電時に生成する亜鉛デンドライトによるセパレータの貫通を物理的に阻止して正負極間の短絡を防止するのに極めて効果的な構成となっている。LDHセパレータ14は水酸化物イオン伝導性を有するため、正極板と負極板との間で必要な水酸化物イオンの効率的な移動を可能として正極板及び負極板における充放電反応を実現することができる。
【0021】
LDHセパレータ14は、単位面積あたりのHe透過度が10cm/min・atm以下であるのが好ましく、より好ましくは5.0cm/min・atm以下、さらに好ましくは1.0cm/min・atm以下である。このような範囲内のHe透過度を有するLDHセパレータは緻密性が極めて高いといえる。したがって、He透過度が10cm/min・atm以下であるLDHセパレータは、亜鉛二次電池においてセパレータとして適用した場合に、水酸化物イオン以外の物質の通過を高いレベルで阻止することができる。例えば、電解液中において亜鉛イオン及び/又は亜鉛酸イオンの透過を極めて効果的に抑制することができる。こうして亜鉛イオン及び/又は亜鉛酸イオンの透過が顕著に抑制されることで、亜鉛二次電池に用いた場合に亜鉛デンドライトの成長を効果的に抑制できるものと原理的に考えられる。He透過度は、セパレータないし機能層の一方の面にHeガスを供給してセパレータないし機能層にHeガスを透過させる工程と、He透過度を算出してセパレータないし機能層の緻密性を評価する工程とを経て測定される。He透過度は、単位時間あたりのHeガスの透過量F、Heガス透過時にセパレータないし機能層に加わる差圧P、及びHeガスが透過する膜面積Sを用いて、F/(P×S)の式により算出する。このようにHeガスを用いてガス透過性の評価を行うことにより、極めて高いレベルでの緻密性の有無を評価することができ、その結果、水酸化物イオン以外の物質(特に亜鉛デンドライト成長を引き起こす亜鉛イオン及び/又は亜鉛酸イオン)を極力透過させない(極微量しか透過させない)といった高度な緻密性を効果的に評価することができる。これは、Heガスが、ガスを構成しうる多種多様な原子ないし分子の中でも最も小さい構成単位を有しており、しかも反応性が極めて低いためである。すなわち、Heは、分子を形成することなく、He原子単体でHeガスを構成する。そして、上述した式により定義されるHeガス透過度という指標を採用することで、様々な試料サイズや測定条件の相違を問わず、緻密性に関する客観的な評価を簡便に行うことができる。こうして、LDHセパレータが亜鉛二次電池用セパレータに適した十分に高い緻密性を有するのか否かを簡便、安全かつ効果的に評価することができる。He透過度の測定は、後述する例A1の評価5に示される手順に従って好ましく行うことができる。
【0022】
LDHセパレータ14は層状複水酸化物(LDH)を含むのが好ましく、より好ましくはLDHで構成される。一般的に知られているように、LDHは、複数の水酸化物基本層と、これら複数の水酸化物基本層間に介在する中間層とから構成される。水酸化物基本層は主として金属元素(典型的には金属イオン)とOH基で構成される。LDHの中間層は、陰イオン及びHOで構成される。陰イオンは1価以上の陰イオン、好ましくは1価又は2価のイオンである。好ましくは、LDH中の陰イオンはOH及び/又はCO2−を含む。また、LDHはその固有の性質に起因して優れたイオン伝導性を有する。
【0023】
一般的に、LDHは、M2+1−x3+(OH)n−x/n・mHO(式中、M2+は2価の陽イオンであり、M3+は3価の陽イオンであり、An−はn価の陰イオンであり、nは1以上の整数であり、xは0.1〜0.4であり、mは0以上である)の基本組成式で代表されるものとして知られている。上記基本組成式において、M2+は任意の2価の陽イオンでありうるが、好ましい例としてはMg2+、Ca2+及びZn2+が挙げられ、より好ましくはMg2+である。M3+は任意の3価の陽イオンでありうるが、好ましい例としてはAl3+又はCr3+が挙げられ、より好ましくはAl3+である。An−は任意の陰イオンでありうるが、好ましい例としてはOH及びCO2−が挙げられる。したがって、上記基本組成式において、M2+がMg2+を含み、M3+がAl3+を含み、An−がOH及び/又はCO2−を含むのが好ましい。nは1以上の整数であるが、好ましくは1又は2である。xは0.1〜0.4であるが、好ましくは0.2〜0.35である。mは水のモル数を意味する任意の数であり、0以上、典型的には0を超える又は1以上の実数である。もっとも、上記基本組成式は、一般にLDHに関して代表的に例示される「基本組成」の式にすぎず、構成イオンを適宜置き換え可能なものである。例えば、上記基本組成式においてM3+の一部または全部を4価またはそれ以上の価数の陽イオンで置き換えてもよく、その場合は、上記一般式における陰イオンAn−の係数x/nは適宜変更されてよい。
【0024】
例えば、LDHの水酸化物基本層は、Ni、Ti、OH基、及び場合により不可避不純物で構成されてもよい。LDHの中間層は、上述のとおり、陰イオン及びHOで構成される。水酸化物基本層と中間層の交互積層構造自体は一般的に知られるLDHの交互積層構造と基本的に同じであるが、本態様のLDHは、LDHの水酸化物基本層を主としてNi、Ti及びOH基で構成することで、優れた耐アルカリ性を呈することができる。その理由は必ずしも定かではないが、本態様のLDHにはアルカリ溶液に溶出しやすいと考えられる元素(例えばAl)が意図的又は積極的に添加されていないためと考えられる。そうでありながらも、本態様のLDHは、アルカリ二次電池用セパレータとしての使用に適した高いイオン伝導性も呈することができる。LDH中のNiはニッケルイオンの形態を採りうる。LDH中のニッケルイオンは典型的にはNi2+であると考えられるが、Ni3+等の他の価数もありうるため、特に限定されない。LDH中のTiはチタンイオンの形態を採りうる。LDH中のチタンイオンは典型的にはTi4+であると考えられるが、Ti3+等の他の価数もありうるため、特に限定されない。不可避不純物は製法上不可避的に混入されうる任意元素であり、例えば原料や基材に由来してLDH中に混入しうる。上記のとおり、Ni及びTiの価数は必ずしも定かではないため、LDHを一般式で厳密に特定することは非実際的又は不可能である。仮に水酸化物基本層が主としてNi2+、Ti4+及びOH基で構成されるものと想定した場合には、対応するLDHは、一般式:Ni2+1−xTi4+(OH)n−2x/n・mHO(式中、An−はn価の陰イオン、nは1以上の整数、好ましくは1又は2であり、0<x<1、好ましくは0.01≦x≦0.5、mは0以上、典型的には0を超える又は1以上の実数である)なる基本組成で表すことができる。もっとも、上記一般式はあくまで「基本組成」と解されるべきであり、Ni2+やTi4+等の元素がLDHの基本的特性を損なわない程度に他の元素又はイオン(同じ元素の他の価数の元素又はイオンや製法上不可避的に混入されうる元素又はイオンを含む)で置き換え可能なものとして解されるべきである。
【0025】
あるいは、LDHの水酸化物基本層は、Ni、Al、Ti及びOH基を含むものであってもよい。中間層は、上述のとおり、陰イオン及びHOで構成される。水酸化物基本層と中間層の交互積層構造自体は一般的に知られるLDHの交互積層構造と基本的に同じであるが、本態様のLDHは、LDHの水酸化物基本層をNi、Al、Ti及びOH基を含む所定の元素ないしイオンで構成することで、優れた耐アルカリ性を呈することができる。その理由は必ずしも定かではないが、本態様のLDHは、従来はアルカリ溶液に溶出しやすいと考えられていたAlが、Ni及びTiとの何らかの相互作用によりアルカリ溶液に溶出しにくくなるためと考えられる。そうでありながらも、本態様のLDHは、アルカリ二次電池用セパレータとしての使用に適した高いイオン伝導性も呈することができる。LDH中のNiはニッケルイオンの形態を採りうる。LDH中のニッケルイオンは典型的にはNi2+であると考えられるが、Ni3+等の他の価数もありうるため、特に限定されない。LDH中のAlはアルミニウムイオンの形態を採りうる。LDH中のアルミニウムイオンは典型的にはAl3+であると考えられるが、他の価数もありうるため、特に限定されない。LDH中のTiはチタンイオンの形態を採りうる。LDH中のチタンイオンは典型的にはTi4+であると考えられるが、Ti3+等の他の価数もありうるため、特に限定されない。水酸化物基本層は、Ni、Al、Ti及びOH基を含んでいさえすれば、他の元素ないしイオンを含んでいてもよい。もっとも、水酸化物基本層は、Ni、Al、Ti及びOH基を主要構成要素として含むのが好ましい。すなわち、水酸化物基本層は、主としてNi、Al、Ti及びOH基からなるのが好ましい。したがって、水酸化物基本層は、Ni、Al、Ti、OH基及び場合により不可避不純物で構成されるのが典型的である。不可避不純物は製法上不可避的に混入されうる任意元素であり、例えば原料や基材に由来してLDH中に混入しうる。上記のとおり、Ni、Al及びTiの価数は必ずしも定かではないため、LDHを一般式で厳密に特定することは非実際的又は不可能である。仮に水酸化物基本層が主としてNi2+、Al3+、Ti4+及びOH基で構成されるものと想定した場合には、対応するLDHは、一般式:Ni2+1−x−yAl3+Ti4+(OH)n−(x+2y)/n・mHO(式中、An−はn価の陰イオン、nは1以上の整数、好ましくは1又は2であり、0<x<1、好ましくは0.01≦x≦0.5、0<y<1、好ましくは0.01≦y≦0.5、0<x+y<1、mは0以上、典型的には0を超える又は1以上の実数である)なる基本組成で表すことができる。もっとも、上記一般式はあくまで「基本組成」と解されるべきであり、Ni2+、Al3+、Ti4+等の元素がLDHの基本的特性を損なわない程度に他の元素又はイオン(同じ元素の他の価数の元素又はイオンや製法上不可避的に混入されうる元素又はイオンを含む)で置き換え可能なものとして解されるべきである。
【0026】
LDHセパレータ14は多孔質基材16と複合化されている。すなわち、LDHセパレータ14は、LDH膜及び多孔質基材を含む複合材料であってもよいし、多孔質基材の孔内にLDHが充填された複合材料であってもよい(この場合はLDH膜が無くてもよい)。また、両者の組合せであってもよい。すなわち、LDH膜の一部が多孔質基材の孔内に組み込まれた構成であってもよい。この場合、セパレータ機能を呈する機能層は、LDH膜からなる膜状部と、LDH及び多孔質基材からなる複合部とで構成されることになる。
【0027】
多孔質基材16は透水性を有し、それ故亜鉛二次電池に組み込まれた場合に、電解液がLDHセパレータ14に到達可能となることはいうまでもないが、多孔質基材16があることでLDHセパレータ14により安定に水酸化物イオンを保持することも可能となる。また、多孔質基材16により強度を付与できるため、LDHセパレータ14を薄くして低抵抗化を図ることもできる。多孔質基材の厚さは100μm以上であり、好ましくは100〜600μm、より好ましくは100〜500μm、さらに好ましくは100〜400μm、特に好ましくは100〜350μm、最も好ましくは100〜300μmである。このような厚さであると十分な強度を付与できるととともに、接着剤20の染み込み部分をより深く確保することができ、それにより接着部分の気密性ないし液密性を向上することができる。
【0028】
多孔質基材16は、セラミックス材料、金属材料、及び高分子材料からなる群から選択される少なくとも1種で構成されるのが好ましく、より好ましくはセラミックス材料及び/又は高分子材料、さらに好ましくは高分子材料である。多孔質基材は、セラミックス材料で構成されるのがより好ましい。この場合、セラミックス材料の好ましい例としては、アルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、スピネル、カルシア、コージライト、ゼオライト、ムライト、フェライト、酸化亜鉛、炭化ケイ素、及びそれらの任意の組合せが挙げられ、より好ましくは、アルミナ、ジルコニア、チタニア、及びそれらの任意の組合せであり、特に好ましくはアルミナ及びジルコニアであり、最も好ましくはアルミナである。これらの多孔質セラミックスを用いると緻密性に優れたLDHセパレータ14を形成しやすい。金属材料の好ましい例としては、アルミニウム、亜鉛、及びニッケルが挙げられる。高分子材料の好ましい例としては、ポリスチレン、ポリエーテルサルフォン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、ポリフェニレンサルファイド、親水化したフッ素樹脂(四フッ素化樹脂:PTFE等)、セルロース、ナイロン、ポリエチレン及びそれらの任意の組合せが挙げられる。上述した各種の好ましい材料から電池の電解液に対する耐性として耐アルカリ性に優れたものを適宜選択するのが更に好ましい。
【0029】
好ましくは、LDHセパレータ14が、複数のLDH板状粒子の集合体で構成されるLDH膜を有し、複数のLDH板状粒子がそれらの板面が多孔質基材16の表面(多孔構造に起因する微細凹凸を無視できる程度に巨視的に観察した場合における多孔質基材の主面)と垂直に又は斜めに交差するような向きに配向している。なお、LDH膜は多孔質基材16の孔内に少なくとも部分的に組み込まれていてもよく、その場合、多孔質基材16の孔内にもLDH板状粒子は存在しうる。LDH結晶は層状構造を持った板状粒子の形態を有することが知られているが、上記垂直又は斜めの配向は、LDHセパレータ14にとって極めて有利な特性である。というのも、配向されたLDH含有セパレータは、LDH板状粒子が配向する方向(即ちLDHの層と平行方向)の水酸化物イオン伝導度が、これと垂直方向の伝導度よりも格段に高いという伝導度異方性があるためである。実際、LDHの配向バルク体において、配向方向における伝導度(S/cm)が配向方向と垂直な方向の伝導度(S/cm)と比べて1桁高いことが既に知られている。すなわち、上記垂直又は斜めの配向は、LDH配向体が持ちうる伝導度異方性を層厚方向(すなわちLDH膜又は多孔質基材16の表面に対して垂直方向)に最大限または有意に引き出すものであり、その結果、層厚方向への伝導度を最大限又は有意に高めることができる。その上、LDH膜は膜形態を有するため、バルク形態のLDHよりも低抵抗を実現することができる。このような配向性を備えたLDH膜は、層厚方向に水酸化物イオンを伝導させやすくなる。
【0030】
LDHセパレータ14は100μm以下の厚さを有するのが好ましく、より好ましくは75μm以下、さらに好ましくは50μm以下、特に好ましくは25μm以下、最も好ましくは5μm以下である。このように薄いことでLDHセパレータ14の低抵抗化を実現できる。上記のような厚さであると、電池用途等への実用化に適した所望の低抵抗を実現することができる。LDHセパレータ14の厚さの下限値は用途に応じて異なるため特に限定されないが、セパレータ等の機能膜として望まれるある程度の堅さを確保するためには厚さ1μm以上であるのが好ましく、より好ましくは2μm以上である。
【0031】
複合板12、すなわち多孔質基材16と複合化されたLDHセパレータ14の製造方法は特に限定されず、既に知られるLDHセパレータの製造方法(例えば特許文献1〜3)を参照することにより作製することができる。
【0032】
樹脂製外枠
樹脂製外枠18は開口部18aを有し、開口部18aに複合板12が嵌合される。また、樹脂製外枠18は、その内周に沿って複合板12の多孔質基材16側を係止する凹部18bを有する。従って、開口部18aのサイズは複合板12よりも若干小さいが、凹部18bの輪郭形状のサイズは複合板12と同等ないし若干大きい。樹脂製外枠18が存在することで、複合板12の端部を補強することができ、それにより複合板12の端部の損傷を防いで信頼性を向上するとともに、複合板12をハンドリングしやすくなる。したがって、亜鉛二次電池の組み立てが容易となる。また、樹脂製外枠18自体も亜鉛デンドライトの貫通及び伸展の阻止に寄与しうる。樹脂製外枠18を構成する樹脂は水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物に対する耐性を有する樹脂であるのが好ましく、より好ましくはポリオレフィン樹脂、ABS樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、又は変性ポリフェニレンエーテルであり、さらに好ましくはABS樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、又は変性ポリフェニレンエーテルであり、特に好ましくは耐アルカリ性及び接着性の観点からABS樹脂、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)、及びポリプロピレン(PP)樹脂である。変性ポリフェニレンエーテルは他のポリマー(例えばポリスチレン)と複合されたもの(例えばm−PPE/PS)であってもよい。
【0033】
接着剤
樹脂製外枠18の凹部18bと複合板12は接着剤20で封止接合されている。そして、多孔質基材16の凹部18bと対向する部分が多孔質基材16の表面から所定の深さDにわたって接着剤20が染み込んでいる。多孔質基材16への接着剤20の染み込み深さDは、多孔質基材16の表面から100μm以上であり、好ましくは100〜600μm、より好ましくは100〜500μm、さらに好ましくは100〜400μm、特に好ましくは100〜350μm、最も好ましくは100〜300μmである。このような染み込み深さを実現するためには、粘度が低い接着剤を選択することで実現することができる。粘度が低い接着剤は多孔質基材16の気孔内に浸入しやすいためである。粘度の低い接着剤は、例えば増粘剤や充填剤(例えばSi成分)を含有しないか、もしくは増粘剤や充填剤の含有量が少ない接着剤でありうる。
【0034】
接着剤20は、アルカリ電解液中での劣化を防ぐため、耐アルカリ性を有する樹脂を含むのが好ましい。かかる観点から、好ましい接着剤20は、エポキシ樹脂系接着剤、天然樹脂系接着剤、変性オレフィン樹脂系接着剤及び変成シリコーン樹脂系接着剤からなる群から選択される少なくとも1種である。これらの接着剤はいずれもセラミックスと樹脂の双方への接着性に優れる。
【0035】
エポキシ樹脂系接着剤が耐アルカリ性に特に優れる点で好ましい。エポキシ樹脂系接着剤は、エポキシ樹脂を主成分とする接着剤であれば、エポキシ接着剤と称されるものに限定されず、エポキシアミド接着剤、エポキシ変性シリコーン接着剤等のエポキシ系の各種接着剤であってもよい。また、一液型(加熱硬化型)及び二液混合型のいずれであってもよい。エポキシ樹脂は架橋密度が一般的に高いことから吸水性が低く、アルカリ電解液(例えばKOH水溶液)との反応が抑制されるものと考えられる。特に、エポキシ樹脂系接着剤は40℃以上のガラス転位温度Tgを有するのが好ましく、より好ましくは43℃以上であり、さらに好ましくは45〜95℃である。このように高いガラス転位温度Tgを有することで、耐アルカリ性(特に高温での耐アルカリ性)が更に向上する。エポキシ樹脂系接着剤の例としては、エポキシアミド接着剤、エポキシ変性シリコーン接着剤、エポキシ接着剤、エポキシ変性アミド接着剤、エポキシポリサルファイド接着剤、エポキシ酸無水物接着剤、エポキシニトリル接着剤が挙げられるが、エポキシアミド接着剤及びエポキシ接着剤が特に好ましい。
【0036】
上述したエポキシ樹脂系接着剤は熱硬化性接着剤であるが、熱可塑性樹脂系接着剤として天然樹脂系接着剤及び/又は変性オレフィン樹脂系接着剤を用いることもできる。この場合、熱可塑性樹脂系接着剤は80℃以上の軟化点(具体的にはR&B軟化点)を有するのが好ましく、より好ましくは90℃以上であり、さらに好ましくは95〜160℃である。熱可塑性樹脂の場合、軟化点が高いものほど反応しにくい傾向があるため、上記温度であると耐アルカリ性が向上する。
【0037】
上記のように樹脂製外枠18と複合板12が接着剤20で封止接合された結果、セパレータ構造体10は全体としてガス不透過性及び/又は水不透過性を有することができる。
【実施例】
【0038】
本発明を以下の例によってさらに具体的に説明する。
【0039】
例A1:LDHセパレータと多孔質基材を含む複合板の作製
LDHを含む機能層及び複合材料を以下の手順により作製し、評価した。なお、本例における機能層は「LDHセパレータ」に相当する層であり、具体的にはLDH膜と多孔質基材内のLDHとを含む層である。また、本例における複合材料は「複合板」に相当する。
【0040】
(1)多孔質基材の作製
アルミナ粉末(住友化学社製、AES−12)100重量部に対して、分散媒(キシレン:ブタノール=1:1)70重量部、バインダー(ポリビニルブチラール:積水化学工業株式会社製BM−2)11.1重量部、可塑剤(DOP:黒金化成株式会社製)5.5重量部、及び分散剤(花王株式会社製レオドールSP−O30)2.9重量部を混合し、この混合物を減圧下で攪拌して脱泡することにより、スラリーを得た。このスラリーを、テープ成型機を用いてPETフィルム上に、乾燥後膜厚が220μmとなるようにシート状に成型してシート成形体を得た。得られた成形体を2.0cm×2.0cm×厚さ0.022cmの大きさになるよう切り出し、1300℃で2時間焼成して、アルミナ製多孔質基材を得た。
【0041】
得られた多孔質基材について、多孔質基材の気孔率をアルキメデス法により測定したところ、40%であった。
【0042】
また、多孔質基材の平均気孔径を測定したところ0.3μmであった。本発明において、平均気孔径の測定は多孔質基材の表面の電子顕微鏡(SEM)画像をもとに気孔の最長距離を測長することにより行った。この測定に用いた電子顕微鏡(SEM)画像の倍率は20000倍であり、得られた全ての気孔径をサイズ順に並べて、その平均値から近い順に上位15点及び下位15点、合わせて1視野あたり30点で2視野分の平均値を算出して、平均気孔径を得た。測長には、SEMのソフトウェアの測長機能を用いた。
【0043】
(2)ポリスチレンスピンコート及びスルホン化
ポリスチレン基板0.6gをキシレン溶液10mlに溶かして、ポリスチレン濃度0.06g/mlのスピンコート液を作製した。得られたスピンコート液0.1mlをアルミナ多孔質基材上に滴下し、回転数8000rpmでスピンコートにより塗布した。このスピンコートは、滴下と乾燥を含めて200秒間行った。スピンコート液を塗布した多孔質基材を95%硫酸に25℃で4日間浸漬してスルホン化した。
【0044】
(3)原料水溶液の作製
原料として、硝酸マグネシウム六水和物(Mg(NO・6HO、関東化学株式会社製)、硝酸アルミニウム九水和物(Al(NO・9HO、関東化学株式会社製)、及び尿素((NHCO、シグマアルドリッチ製)を用意した。カチオン比(Mg2+/Al3+)が2となり且つ全金属イオンモル濃度(Mg2++Al3+)が0.320mol/Lとなるように、硝酸マグネシウム六水和物と硝酸アルミニウム九水和物を秤量してビーカーに入れ、そこにイオン交換水を加えて全量を70mlとした。得られた溶液を攪拌した後、溶液中に尿素/NO=4の割合で秤量した尿素を加え、更に攪拌して原料水溶液を得た。
【0045】
(4)水熱処理による成膜
テフロン(登録商標)製密閉容器(内容量100ml、外側がステンレス製ジャケット)に上記(3)で作製した原料水溶液と上記(2)でスルホン化した多孔質基材を共に封入した。このとき、基材はテフロン(登録商標)製密閉容器の底から浮かせて固定し、基材両面に溶液が接するように水平に設置した。その後、水熱温度70℃で168時間(7日間)水熱処理を施すことにより基材表面にLDH配向膜の形成を行った。所定時間の経過後、基材を密閉容器から取り出し、イオン交換水で洗浄し、70℃で10時間乾燥させて、LDHを含む機能層を、その一部が多孔質基材中に組み込まれた形で得た。得られた機能層の厚さは(多孔質基材に組み込まれた部分の厚さを含めて)約3μmであった。
【0046】
(5)評価結果
得られた機能層ないし複合材料に対して以下の評価を行った。
【0047】
評価1:機能層の同定
X線回折装置(リガク社製 RINT TTR III)にて、電圧:50kV、電流値:300mA、測定範囲:10〜70°の測定条件で、機能層の結晶相を測定してXRDプロファイルを得た。得られたXRDプロファイルについて、JCPDSカードNO.35−0964に記載されるLDH(ハイドロタルサイト類化合物)の回折ピークを用いて同定を行った。その結果、得られたXRDプロファイルから、機能層はLDH(ハイドロタルサイト類化合物)であることが同定された。
【0048】
評価2:微構造の観察
機能層の表面微構造を走査型電子顕微鏡(SEM、JSM−6610LV、JEOL社製)を用いて10〜20kVの加速電圧で観察した。また、イオンミリング装置(日立ハイテクノロジーズ社製、IM4000によって、機能層(LDH膜からなる膜状部とLDH及び基材からなる複合部)の断面研磨面を得た後に、この断面研磨面の微構造を表面微構造の観察と同様の条件でSEMにより観察した。その結果、機能層の表面微構造及び断面微構造のSEM画像はそれぞれ図2A及び2Bに示されるとおりであった。図2Bに示されるとおり、機能層は、LDH膜からなる膜状部と、膜状部の下に位置するLDH及び多孔質基材からなる複合部とから構成されていることが分かった。また、膜状部を構成するLDHは、複数の板状粒子の集合体で構成され、これら複数の板状粒子がそれらの板面が多孔質基材の表面(多孔構造に起因する微細凹凸を無視できる程度に巨視的に観察した場合における多孔質基材の面)と垂直に又は斜めに交差するような向きに配向していた。一方、複合部は、多孔質基材の孔内にLDHが充填されて緻密な層を構成していた。
【0049】
評価3:元素分析評価(EDS)
クロスセクションポリッシャ(CP)により、機能層(LDH膜からなる膜状部とLDH及び基材からなる複合部)の断面研磨面が観察できるように研磨した。FE−SEM(ULTRA55、カールツァイス製)により、機能層(LDH膜からなる膜状部とLDH及び基材からなる複合部)の断面イメージを10000倍の倍率で1視野取得した。この断面イメージの基材表面のLDH膜と基材内部のLDH部分(点分析)についてEDS分析装置(NORAN System SIX、サーモフィッシャーサイエンティフィック製)により、加速電圧15kVの条件にて、元素分析を行った。その結果、機能層に含まれるLDH、すなわち基材表面のLDH膜と基材内のLDH部分のいずれにおいても、LDH構成元素であるC、Mg及びAlが検出された。すなわち、Mg及びAlは水酸化物基本層の構成元素である一方、CはLDHの中間層を構成する陰イオンであるCO2−に対応する。
【0050】
例B1〜B5
(1)多孔質基材の作製
例A1と同様にしてアルミナ製多孔質基材を作製した。得られた多孔質基材の気孔率は40%であった。また、多孔質基材の平均気孔径は0.3μmであった。
【0051】
(2)接着剤の用意
表1に示されるとおり以下の5種類の接着剤A〜Eを用意した。
・接着剤A:エポキシ2液型接着剤(ヘンケルジャパン株式会社製、Hysol E30CL)
・接着剤B:エポキシ2液型接着剤(主剤としてビスフェノールA型エポキシ樹脂を、硬化剤として変性脂環式ポリアミンを用いて、粘度調整を行ったもの)
・接着剤C:エポキシ2液型接着剤(主剤としてビスフェノールA型エポキシ樹脂を、硬化剤として変性脂環式ポリアミンを用いて、粘度調整を行ったもの)
・接着剤D:エポキシ1液型接着剤(セメダイン株式会社製、セメダインEP171)
・接着剤E:エポキシ2液型接着剤(セメダイン株式会社製、セメダインEP008)
【0052】
エポキシ2液型接着剤は、主剤がエポキシ樹脂を含み、硬化剤がポリアミン系を含む。エポキシ1液型接着剤はエポキシ樹脂とエポキシ硬化剤の混合物を含む。表1に示される主剤の粘度及び硬化剤の粘度は各接着剤の製品カタログに記載される値であり、表1に示される混合後の粘度は手動で3分間混合後、5分間静置した試料を粘度計受器へ投入し、測定開始から120秒後の表示値である。また、表1に示される、混合比、可使時間及び硬化条件は、各接着剤の製品カタログに記載される値を採用したものである。
【0053】
(3)染み込み深さの測定
多孔質基材に対する各接着剤の染み込み深さを以下のようにして測定した。
【0054】
(例B1〜B3及びB5)
接着剤A、B、C又はEを表1に示される混合比になるように秤量し、ヘラで1分間混合した後、脱泡機にて2000rpmで1分間脱泡した。図1A及び1Bに示されるように、樹脂製外枠18の凹部18bにヘラで接着剤20を塗布し、そこにアルミナ多孔質基材16を載置した。樹脂製外枠18は変性ポリフェニレンエーテル(ZYRON(登録商標)EV103)製である。アルミナ多孔質基材16の端面に接着剤20を付着させるように、多孔質基材16の四隅を樹脂製外枠18に向かって軽く押した。そして、表1に示される硬化条件で静置して接着剤20を硬化させた。接着剤20の硬化後、得られたサンプルの接着部分を切り出し、断面を機械研磨した。研磨断面をSEMで観察して、接着剤20が染み込んでいる部分の多孔質基材16の表面からの深さ(すなわち染み込み深さ)を測定した。測定した染み込み深さは表1に示されるとおりであった。
【0055】
例B1において得られたサンプルの断面SEM画像を図3Aに示す一方、染み込み界面部分を拡大観察した断面SEM像を図3Bに示す。これらの図から明らかなように、アルミナ多孔質基材に深さ170μmにわたって接着剤Aが十分に染み込んでいることが分かる。また、例B1で得られたサンプルを真上から撮影した写真を図3Cに示す。図3Cに示される正方形の白い領域が多孔質基材であり、その多孔質基材の外周部分が接着剤の染み込みにより変色していることが分かる。この点からも多孔質基材への接着剤の染み込みが十分であったことが裏付けられる。
【0056】
一方、比較例である例B5で得られたサンプルの断面SEM像を図4Aに示す一方、染み込み界面部分を拡大観察した断面SEM像を図4Bに示す。これらの図から明らかなように、アルミナ多孔質基材への接着剤Eの染み込みは深さ50μm程度と浅いものであった。また、例B5で得られたサンプルを真上から撮影した写真を図4Cに示す。図4Cに示される正方形の白い領域が多孔質基材であるが、その多孔質基材の外周部分には接着剤Aの染み込みによる目立った変色は観察されなかった。この点からも多孔質基材への接着剤の染み込みは不十分であったといえる。
【0057】
(例B4)
図1A及び1Bに示されるように、樹脂製外枠18の凹部18bにヘラで接着剤Dを塗布し、そこにアルミナ多孔質基材16を載置した。樹脂製外枠18は変性ポリフェニレンエーテル(ZYRON(登録商標)EV103)製である。アルミナ多孔質基材16の端面に接着剤20を付着させるように、多孔質基材16の四隅を樹脂製外枠17に向かって軽く押した。そして、表1に示される硬化条件で静置して接着剤20を硬化させた。接着剤20の硬化後、得られたサンプルの接着部分を切り出し、断面を機械研磨した。研磨断面をSEMで観察して、接着剤20が染み込んでいる部分の多孔質基材16の表面からの深さ(すなわち染み込み深さ)を測定した。測定した染み込み深さは表1に示されるとおりであった。
【0058】
(4)気密性確保割合の評価
アルミナ多孔質基材の代わりに例A1で作製された複合材料(LDHセパレータと多孔質基材からなる複合板)を用いたこと以外は上記(3)と同様にして樹脂製外枠18に複合板12を接着させてセパレータ構造体10を得た。各接着剤についてセパレータ構造体サンプルを10個作製した。以下に示す緻密性判定試験とHe透過度測定を行い、各接着剤につき10個のサンプル中、気密性の確保が確認されたサンプルの割合を求めて、気密性確保割合とした。得られた気密性確保割合は表1に示されるとおりであった。
【0059】
<緻密性判定試験>
セパレータ構造体10が通気性を有しない程の緻密性を有する(すなわち気密性を有する)ことを確認すべく、緻密性判定試験を以下のとおり行った。まず、図5A及び5Bに示されるように、蓋の無いアクリル容器130と、このアクリル容器130の蓋として機能しうる形状及びサイズのセパレータ構造体10とを用意した。アクリル容器130にはその中にガスを供給するためのガス供給口130aが形成されている。そして、セパレータ構造体10を、アクリル容器130の開放部を完全に塞ぐようにシリコーン接着剤138を用いて気密かつ液密にアクリル容器130の上端に接着させて、測定用密閉容器140を得た。この測定用密閉容器140を水槽142に入れ、アクリル容器130のガス供給口130aを圧力計144及び流量計146に接続して、ヘリウムガスをアクリル容器130内に供給可能に構成した。水槽142に水143を入れて測定用密閉容器140を完全に水没させた。このとき、測定用密閉容器140の内部は気密性及び液密性が十分に確保されており、セパレータ構造体10のLDHセパレータ14側が測定用密閉容器140の内部空間に露出する一方、多孔質基材16側が水槽142内の水に接触している。この状態で、アクリル容器130内にガス供給口130aを介してヘリウムガスを測定用密閉容器140内に導入した。圧力計144及び流量計146を制御してLDHセパレータ14内外の差圧が0.5atmとなる(すなわちヘリウムガスに接する側に加わる圧力が反対側に加わる水圧よりも0.5atm高くなる)ようにして、セパレータ構造体10から水中にヘリウムガスの泡が発生するか否かを観察した。その結果、ヘリウムガスに起因する泡の発生は観察されなかった場合に、セパレータ構造体10は通気性を有しない程に高い緻密性を有する(すなわち気密性を有する)ものと判定した。
【0060】
<He透過度測定>
He透過度の観点からセパレータ構造体10の緻密性及び気密性を評価すべくHe透過試験を以下のとおり行った。まず、図6A及び図6Bに示されるHe透過度測定系310を構築した。He透過度測定系310は、Heガスを充填したガスボンベからのHeガスが圧力計312及び流量計314(デジタルフローメーター)を介して試料ホルダ316に供給され、この試料ホルダ316に保持されたセパレータ構造体10の一方の面から他方の面に透過させて排出させるように構成した。
【0061】
試料ホルダ316は、ガス供給口316a、密閉空間316b及びガス排出口316cを備えた構造を有するものであり、次のようにして組み立てた。セパレータ構造体10の上端及び下端に密封部材326a,326bとしてブチルゴム製のパッキンを配設し、さらに密封部材326a,326bの外側から、フランジからなる開口部を備えた支持部材328a,328b(PTFE製)で挟持した。こうして、セパレータ構造体10、密封部材326a及び支持部材328aにより密閉空間316bを区画した。なお、セパレータ構造体10はLDHセパレータ14側がガス供給口316aに向くように配置した。支持部材328a,328bを、ガス排出口316c以外の部分からHeガスの漏れが生じないように、ネジを用いた締結手段330で互いに堅く締め付けた。こうして組み立てられた試料ホルダ316のガス供給口316aに、継手332を介してガス供給管334を接続した。
【0062】
次いで、He透過度測定系310にガス供給管334を経てHeガスを供給し、試料ホルダ316内に保持されたセパレータ構造体10に透過させた。このとき、圧力計312及び流量計314によりガス供給圧と流量をモニタリングした。Heガスの透過を1〜30分間行った後、He透過度を算出した。He透過度の算出は、単位時間あたりのHeガスの透過量F(cm/min)、Heガス透過時にLDHセパレータ14に加わる差圧P(atm)、及びHeガスが透過する膜面積S(cm)を用いて、F/(P×S)の式により算出した。Heガスの透過量F(cm/min)は流量計314から直接読み取った。また、差圧Pは圧力計312から読み取ったゲージ圧を用いた。なお、Heガスは差圧Pが0.05〜0.90atmの範囲内となるように供給された。その結果、セパレータ構造体10のHe透過度が1.0cm/min・atm未満であった場合に、セパレータ構造体10は極めて高い緻密性及び気密性を有するものと判定した。
【0063】
<結果>
表1に示されるように、例B1〜B4については接着剤の染み込み深さが100μm以上に達し、その結果、気密性確保割合がサンプル10個中10個、すなわち100%となった。一方、比較例である例B5については接着剤の染み込み深さが100μmに達しないものであり、その結果、気密性確保割合がサンプル10個中7個、すなわち70%となった。
【0064】
(6)接着性の評価
図7に示されるように、アルミナ多孔質基材16の両面に接着剤20を塗布して樹脂棒102を接着させた。こうして得られたサンプル100を用いて引張強度試験を行った。その結果、例B1〜B5のいずれにおいても、多孔質基材16と接着剤20との界面での剥がれが生じず、他の界面(具体的には樹脂棒102と接着剤20との界面)で剥がれが生じた。なお、アルカリ水溶液に浸漬させた後のサンプルであっても同様の結果が得られた。これらの結果から、接着剤の染み込みにより高い接着強度が得られることが分かる。
【0065】
【表1】
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9A
図9B