【実施例】
【0023】
実施例1.トウガラシで生存する酵母菌株の分離
【0024】
トウガラシの葉で生存しつつトウガラシに有用な役割をする酵母菌を分離するために、韓国の忠南、全羅道地域のトウガラシ畑から葉を採集した。2013年9月から11月まで、全羅道、巨済、固城、咸陽、鎭安、南海、順天などの地域で収穫終わりのトウガラシの中間部分の葉を採取して準備した。直径10mmのコルクボーラーを用いて円形ディスクに切り出し、滅菌水1mlが入った1.5mlチューブにトウガラシ葉ディスクを3枚ずつ入れ、ビーズ(Zirconia Beads;直径1mmの小さい玉)を入れて葉表面に付着された微生物がさらによく分離されるようにして十分な時間でボルテックスをした。葉ディスクが入ったものを原液とみなし、それを1/10、1/100に順次薄めて各々100μlずつ寒天プレート培地に塗抹した。この時、用いた寒天培地は、酵母菌のみを分離するために酵母菌専用培地であるYPD培地に、細菌が育たないようにする抗生剤であるリファンピシン(リファンピンカプセル;Yuhan Corporation)を最終濃度が100μg/mlになるように添加して作った寒天培地を用いた。薄められて塗抹されたプレートから出た酵母菌コロニーを別に継代培養して純粋な単一細胞(single cell)に育て、それを直接ITSシークエンシングを任せて(Xenotech)分析して確認した。用いられたITSシークエンシングプライマーの配列は以下のとおりである(ITS1(順方向):5’−TCC GTA GGT GAA CCT TGC GG−3’(配列番号1)、ITS4(逆方向):5’−TCC TCC GCT TAT TGA TAT GC−3’(配列番号2))。
【0025】
その後、全羅道(鎭安−咸陽−固城−統營−巨済−南海−順天)地域のトウガラシ畑から葉を採取し、分離された酵母菌のシークエンシングを通じて同定された。様々な酵母菌がトウガラシの葉で生存しており、その中でもシュードザイマ(Pseudozyma)属の酵母菌が若干優占して多量が生存していることが確認された(
図1)。
【0026】
実施例2.トウガラシで生存する酵母菌株に対する誘導抵抗性の1次分析
【0027】
分離された酵母菌のトウガラシに誘導抵抗性能力を確認するために温室で1次菌株選抜実験を行った。播種してから7日になったトウガラシ(新しいPRトウガラシ;フンノン種苗)を50穴ポットに移植し、3週後に子葉を除いて本葉が4葉まで出てきた時、分離された酵母菌株をトウガラシ苗の地上部にスプレー処理した。この時、処理した微生物は固体培地で3日ほど育てた酵母菌を滅菌水に懸濁してO.D.600=1(10
6CFU/ml)に合わせて、トウガラシ苗一つ当たりに50mlずつスプレーした。微生物を処理してから7日後にトウガラシのキサントモナス・アクソノポディス病原型ベシカトリア(Xanthomonas axonopodis pv.vesicatoria)をO.D.600=0.01に合わせて、トウガラシの葉裏面に注射器で刺して直接注入して接種した。トウガラシ苗一つ当たりに3枚の葉に病原菌を接種し、その後5〜7日の間病徴が表れ始まると、病徴を調査して病原菌に対する抵抗性を確認した。病徴調査は、病を接種した葉部分における病気の激しい程度(disease severity)を0〜5まで任意に分けて調査をした(0:病徴が全く表れない、1:葉が本来の色より少し濁った黄緑色に変わる、2:葉が黄色くなる黄変現象が見られる、3:黄色くなった部分に黒い部分が少しずつ見られる、4:葉の1/3以上が黒く変わる、5:葉が全部黒色に変わってふにゃふにゃする)。トウガラシ苗一つ当たりに4個の葉を別に調査し、総5繰り返しによって20個の病徴程度を調査して確認した。
【0028】
病原菌を接種してから7日後に病徴を調査した結果、巨済で分離された酵母菌であるシュードザイマ・チュラシマエンシスRGJ1(Pseudozyma churashimaensis RGJ1)酵母菌が最も優れた病害抵抗性の効果を示した。水処理群と比較して病徴が70%減少し、これは、陽性対照群(positive control)である化学物質BTHの処理群と同様な有意性を示した(
図2)。
【0029】
実施例3.トウガラシから分離した酵母菌株に対する誘導抵抗性の2次分析
【0030】
1次誘導抵抗性の分析実験で用いられた種々の酵母分離菌のうち最も優れた効果を示した選抜菌株であるシュードザイマ・チュラシマエンシス(Pseudozyma churashimaensis RGJ1)を対象に処理方法の変化に応じた誘導抵抗性の差を確認した。酵母菌RGJ1を培養した培養液をO.D.600=1に合わせて、1次誘導抵抗性実験と同様な条件でトウガラシの地上部の葉面にスプレー処理した時、培養液を土壌に直接灌注をした時の差を比較し、陽性対照群として誘導抵抗性を引き起こす化学物質であるBTHと対照群として水処理群を用いて温室で行った。また、この酵母菌RGJ1による直接的な殺菌作用があるか否かを確認するために、直径90mmのプレートにトウガラシキサントモナス・アクソノポディス病原型ベシカトリアであるXav.をO.D.600=0.5に合わせて予め塗抹した後、その上に直径10mmのペーパーディスクを置いておき、順に酵母菌RGJ1(O.D.600=1に合わせて20マイクロリットル)、BTH(1mM)、抗生剤カナマイシン25、そして水処理を同じ量で処理し、30℃で培養して殺菌効果が表れるクリア・ゾーンが現れることによって比較をした(
図3)。
【0031】
1次抵抗性確認実験と類似した結果として、病害抵抗性が誘導され、葉にスプレー処理する時と土壌に直接灌注処理する時の差は見られなかった。また、対峙培養の結果、酵母菌RGJ1の周辺に透明環が発生しないことから、病原菌を直接殺す殺菌効果はなく、抵抗性を誘導することが確認された(
図3)。
【0032】
実施例4.フィールドで本発明の酵母菌RGJ1を処理したトウガラシのキサントモナス・アクソノポディス病原型ベシカトリアに対する誘導抵抗性の確認
【0033】
実験室内と温室で確認して選抜された酵母菌株を対象にトウガラシ畑圃場において誘導抵抗性能力を検証した。忠清南道 錦山郡 郡北面 外釜里(36° 8’ 50.81’’ N, 127° 29’ 29.20’’ E)に位置した面積200坪のトウガラシ畑で行われた。2014年6月、畑に移植してから一ヶ月になったトウガラシの地上部に酵母菌RGJ1培養液を温室実験の時と同様の条件でO.D.600=1(10
7CFU/ml)の濃度でスプレー処理した。陽性対照群としては誘導抵抗性の効果のあるBTHを1mMの濃度でスプレーし、対照群としては水処理をした。ランダムに分けられた処理区域に一つの処理群の畝長さは8メートルであり、トウガラシとトウガラシ間の間隔は40cmであって一つの処理群当たりにトウガラシを20株ずつ含む。一つの処理群当たりに培養液および対照群物質を2リットルずつ処理し、ランダムに分けられた処理群をもって4繰り返しに実行した。処理してから10日後に、キサントモナス・アクソノポディス病原型ベシカトリア(Xanthomonas axonopodis pv.vesicatoria)をO.D.600=0.01に薄めてトウガラシの葉に半分程度入るように注射器を用いて葉の裏面に刺して接種をした。トウガラシ一つの個体当たりに5枚の葉に接種をして、一つの処理群当たりに総10個のトウガラシに接種をし、その後、7日後から病徴を観察した。病徴調査は、前述の温室内の確認実験と同様の方法により病徴の程度を0〜5に分けて病気の激しい程度を確認した。
【0034】
フィールド実験の結果、温室内の実験と同様に酵母菌のスプレー処理によって抵抗性が誘導され、キサントモナス・アクソノポディス病原型ベシカトリアの病徴が50%減少したことを確認した(
図4)。
【0035】
実施例5.フィールドで本発明の酵母菌RGJ1を処理したトウガラシのウイルスに対する誘導抵抗性の確認
【0036】
野外フィールド実験で酵母菌を処理してから60日が経過したトウガラシの新しく出た若葉を処理群当たりに5枚ずつ採取し、液体窒素に直ちに入れて急速冷凍をした後、乳鉢を用いて粉砕し、RNA抽出キット(RNeasy kit;QIAGEN)を用いて抽出した。抽出されたRNAをcDNAに合成し、合成されたcDNAを用いてqPCR(CFX connect Real−Time System;BIO−RAD)でウイルス量を定量する方法であるRT−qPCRを行った。自然発生したキュウリモザイクウイルス(CMV:Cucumber Mosaic Virus)とソラマメウイルトウイルス(BBWV:Broad Bean Wilt Virus)の特異的プライマーを用いて感染程度を定量だった。qPCRと用いられたプライマーの条件は以下のとおりである。CMV外皮(coat)タンパク質順方向:5’−CGTTGCCGCTATCTCTGCTAT−3’(配列番号3)、CMV外皮(coat)タンパク質逆方向:5’−GGATGCTGCATACTGACAAACA−3’(配列番号4)、BBWV順方向:5’−AATGAAGTGGTGCTCAACTACACA−3’(配列番号5)、BBWV逆方向:5’−TTTTGGAGCATTCAACCATTTGGA−3’(配列番号6)。また、ドウガラシモットルウイルス(PepMoV、Pepper mottle virus)とトウガラシマイルドモットルウイルス(PMMoV、Pepper mild mottle virus)の特異的プライマーを用いて感染程度を定量した。qPCRと用いられたプライマーの条件は以下のとおりである。PepMoV順方向:5’−AAGATCAGACACATGGA−3’(配列番号7)、PepMoV逆方向:5’−CAAGCAAGGGTATGCATGT−3’(配列番号8)、PMMoV順方向:5’−ACAGTTTCCAGTGCCAATCA−3’(配列番号9)、PMMoV逆方向:5’−AAGCGTCTCGGCAGTTG−3’(配列番号10)。
【0037】
【表1】
【0038】
ウイルス病徴調査において、トウガラシの新しく出た葉を比較した結果、水処理群ではウイルス症状が激しいのに対し、酵母処理群では病徴が弱いことを確認することができた(
図5)。また、qPCRを介したウイルスの定量結果からも、代表的なCMVおよびBBWVウイルスの両方とも水処理群に比べて10倍程度ウイルスの量が減少したことから、酵母菌処理によってウイルスに少なく感染したことを確認した(
図6)。また、PepMoVおよびPMMoVウイルスの両方とも酵母菌処理によってウイルスに少なく感染したことを確認した(
図7)。
【0039】
実施例6.本発明の酵母菌RGJ1を処理したトウガラシの病原菌侵入時における誘導抵抗性関連遺伝子の発現量の分析
【0040】
酵母菌の作用メカニズムを研究するための遺伝子発現量を調査するために、フィールド実験進行過程中、キサントモナス・アクソノポディス病原型ベシカトリアの接種の際、(1)病原菌を接種する前(2)病原菌を接種するや否や(3)病原菌を接種してから6時間後の三つのタイムポイントにトウガラシ葉を採取して直ちに液体窒素に急速冷凍した後、ウイルス定量法のような方法によりRNA抽出をし、cDNA合成、qPCRを介してトウガラシの抵抗性関連遺伝子の発現量を調査した。代表的なトウガラシの誘導抵抗性関連遺伝子としてPR遺伝子の発現を確認した。qPCRの条件はウイルス定量と同様であり、用いられたプライマー情報は以下のとおりである。CaPR4順方向:5’−AACTGGGATTTGAGAACTGCCAGC−3’(配列番号11)、逆方向:5’−ATCCAAGGTACATATAGAGCTTCC−3’(配列番号12)、CaPR5順方向:5’−CTCCACAAGAAACAAGGCA−3’(配列番号13)、逆方向:5’−GTACGAAGCACGCACACAA−3’(配列番号14)。
【0041】
酵母菌処理群において6時間目に抵抗性遺伝子であるPR4とPR5の発現量が大幅に増加したことから、病原菌の侵入に対応する時間が速くなる抵抗性プライミング効果が誘導されたことを確認することができた(
図8)。
【0042】
実施例7.本発明の酵母菌RGJ1の処理に応じたフィールドトウガラシ収穫量の調査
【0043】
フィールドで誘導抵抗性を確認した後、各処理群の20個体におけるトウガラシ収穫量を調査して個数を確認した。総4繰り返しに行われた。酵母菌RGJ1の処理群では、その収穫量が無処理群に比べて30%程度数量が増加したことが確認された(
図9)。
【0044】
実施例8.温室内の酵母菌RGJ1の葉への定着能の確認
【0045】
トウガラシ葉から分離した酵母菌株シュードザイマ・チュラシマエンシスRGJ1の葉への定着能を再確認するために、温室内のトウガラシ苗を対象に実験を行った。発芽後移植してから3週になったトウガラシに酵母菌株をOD
600値を1と2の二つに合わせた菌懸濁液をトウガラシの地上部に50mlずつスプレー処理した後に葉をサンプリングして、直径10mmのコルクボーラーで切り出した葉ディスク3枚ずつを滅菌水1mlが入った1.5mlチューブに入れた後に十分にボルテックスをした。それを原液とし、1/10ずつ薄めて酵母菌専用培地であるYPD寒天プレートに100マイクロリットルずつ塗抹して出たコロニー数をカウントしてCFU値を測定した。スプレーの日(Day0)から10日間隔にサンプリングして調査した(
図10)。初めにスプレーしたOD
600値に応じた差は大きくなかったし、10mmの葉ディスクに定着して生きていく酵母菌株は20日目から30日目まで10
4以上に維持されることを確認した。このような結果は、分離された酵母菌株がトウガラシ葉によくついて生きていき、その密度は10
4程度が最も適正な酵母菌株の生長濃度であると考えられる。また、このような優れた葉圏定着能により、作物への散布処理時、葉でよく生存しつつ長期間作物に誘導抵抗性を引き起こして、細菌病やウイルス病によくかからない結果を示すものとして分析された。
【0046】
[受託番号]
寄託機関名:韓国生命工学研究院
受託番号:KCTC13051BP
受託日:20160624