特許第6803941号(P6803941)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6803941撮像システム、撮像装置、レンズ装置、撮像システムの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6803941
(24)【登録日】2020年12月3日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】撮像システム、撮像装置、レンズ装置、撮像システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/28 20060101AFI20201214BHJP
   G03B 17/14 20060101ALI20201214BHJP
   G03B 13/36 20060101ALI20201214BHJP
   H04N 5/232 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   G02B7/28 N
   G03B17/14
   G03B13/36
   H04N5/232 030
   H04N5/232 120
【請求項の数】19
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2019-62953(P2019-62953)
(22)【出願日】2019年3月28日
(62)【分割の表示】特願2015-161604(P2015-161604)の分割
【原出願日】2015年8月19日
(65)【公開番号】特開2019-109549(P2019-109549A)
(43)【公開日】2019年7月4日
【審査請求日】2019年5月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】高梨 豪也
(72)【発明者】
【氏名】杉田 淳
【審査官】 越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−146062(JP,A)
【文献】 特開2015−079158(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/28−7/40
G03B 13/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焦点調節用のレンズを有するレンズ装置と通信する通信手段と、
複数の領域における焦点検出信号を検出する検出手段と、
前記複数の領域の中から領域を選択し、選択した領域に対応する焦点検出信号に基づいて前記レンズの駆動量を算出する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記通信手段を介して第1の情報および第2の情報を取得し、前記通信手段を介して前記第1の情報および前記第2の情報に基づく、前記レンズの駆動量に対応する第3の情報を送信し、
前記第1の情報は、前記焦点検出信号を前記レンズの駆動量に換算する換算情報であり、前記第2の情報は、像高に対応した前記換算情報の変化を示す、前記換算情報の補正情報であり、前記第3の情報は、前記レンズの駆動量の情報である
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記複数の領域を複数のグループに分け、グループ単位で、前記第2の情報の取得を繰り返す
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記第2の情報の取得を繰り返している間に、前記レンズの位置が移動している
ことを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記検出手段は、撮像面内に設定された複数の焦点検出領域における焦点検出信号を取得する
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記焦点検出信号、前記第1の情報および前記第2の情報に基づくデフォーカス量が、設定された実施範囲内である場合に、前記第3の情報は送信される
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記制御手段は、像高から算出した敏感度の補正比率を用いて前記実施範囲を設定する
ことを特徴とする請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記複数の領域について異なるタイミングで焦点検出を行う制御モードにおいて、焦点検出のタイミングごとに前記レンズ装置から前記第1の情報を取得する
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記制御手段は異なるタイミングで取得された焦点検出信号と、取得した前記第1の情報と前記第2の情報とを対応づけて記憶手段に記憶し、前記複数の領域から選択した領域に対応する敏感度情報を前記記憶手段から取得する
ことを特徴とする請求項7に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記グループは、撮像面の領域を格子状に分割されており、前記制御手段は、分割された領域ごとに焦点検出を実行する
ことを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項10】
撮像装置の制御方法であって、
焦点調節用のレンズを有するレンズ装置と通信する工程と、
複数の領域における焦点検出信号を検出する工程と、
前記レンズ装置から第1の情報および第2の情報を取得する工程と、
前記複数の領域の中から領域を選択する工程と、
選択した領域に対応する焦点検出信号に基づいて前記レンズの駆動量を算出する工程と、
前記レンズ装置に、前記第1の情報および前記第2の情報に基づく、前記レンズの駆動量に対応する第3の情報を送信する工程と、を有し、
前記第1の情報は、前記焦点検出信号を前記レンズの駆動量に換算する換算情報であり、前記第2の情報は、像高に対応した前記換算情報の変化を示す、前記換算情報の補正情報であり、前記第3の情報は、前記レンズの駆動量の情報である
ことを特徴とする制御方法。
【請求項11】
撮像装置に装着可能なレンズ装置であって、
焦点調節用のレンズと、
前記焦点調節用のレンズの駆動を制御する駆動制御手段と、
前記撮像装置と通信する通信手段と、を備え、
前記通信手段は、第1の情報および前記第1の情報の変化を示す第2の情報を送信し、前記第1の情報および第2の情報に基づく第3の情報を取得し、
前記駆動制御手段は、前記第3の情報に基づいて前記焦点調節用のレンズの駆動を制御し、
前記第1の情報は、焦点検出信号を前記レンズの駆動量に換算する換算情報であり、前記第2の情報は、像高に対応した前記換算情報の変化を示す、前記換算情報の補正情報であり、前記第3の情報は、前記レンズの駆動量の情報である
ことを特徴とするレンズ装置。
【請求項12】
前記通信手段は、複数の領域に対応するグループ単位で、前記第2の情報の送信を繰り返す
ことを特徴とする請求項11に記載のレンズ装置。
【請求項13】
前記第2の情報の送信を繰り返している間に、前記レンズの位置が移動している
ことを特徴とする請求項12に記載のレンズ装置。
【請求項14】
焦点検出信号、前記第1の情報および前記第2の情報に基づくデフォーカス量が、設定された実施範囲内である場合に、前記第3の情報は取得される
ことを特徴とする請求項11乃至13のいずれか1項に記載のレンズ装置。
【請求項15】
前記通信手段は、複数の領域について異なるタイミングで焦点検出を行う制御モードにおいて、前記撮像装置による焦点検出のタイミングごとに前記撮像装置に前記第1の情報を送信する
ことを特徴とする請求項11に記載のレンズ装置。
【請求項16】
撮像装置に装着可能なレンズ装置の制御方法であって、
前記撮像装置と通信する工程と、
前記撮像装置に、第1の情報および前記第1の情報の変化を示す第2の情報を送信する工程と、
前記撮像装置から、前記第1の情報および第2の情報に基づく第3の情報を取得する工程と、
前記第3の情報に基づいて焦点調節用のレンズの駆動を制御する工程と、を有し、
前記第1の情報は、焦点検出信号を前記レンズの駆動量に換算する換算情報であり、前記第2の情報は、像高に対応した前記換算情報の変化を示す、前記換算情報の補正情報であり、前記第3の情報は、前記レンズの駆動量の情報である
ことを特徴とする制御方法。
【請求項17】
レンズ装置および該レンズ装置を装着可能なカメラ本体部を備える撮像システムであって、
前記レンズ装置は、
焦点調節用のレンズと、
前記焦点調節用のレンズの駆動を制御する駆動制御手段と、
前記カメラ本体部と通信する第1の通信手段と、を備え、
前記カメラ本体部は、
前記レンズ装置と通信する第2の通信手段と、
複数の領域における焦点検出信号を検出する検出手段と、
前記複数の領域の中から領域を選択し、選択した領域に対応する焦点検出信号に基づいて前記レンズの駆動量を算出する制御手段と、を備え、
前記第1の通信手段は、第1の情報および前記第1の情報の変化を示す第2の情報を前記第2の通信手段に送信し、
前記カメラ本体部の前記制御手段は、前記第2の通信手段を介して前記第1の情報および前記第2の情報を取得し、
前記制御手段は、前記第1の情報および前記第2の情報を取得した後に、前記複数の領域の中から前記レンズの駆動の制御に用いる領域を選択し、
前記制御手段は、前記第2の通信手段を介して、前記第1の情報および前記第2の情報に基づく、前記レンズの駆動量に対応する第3の情報を送信し、
前記第1の通信手段は、前記第2の通信手段から、前記第3の情報を取得し、
前記駆動制御手段は、前記第3の情報に基づいて前記レンズの駆動を制御し、
前記第1の情報は、前記焦点検出信号を前記レンズの駆動量に換算する換算情報であり、前記第2の情報は、像高に対応した前記換算情報の変化を示す、前記換算情報の補正情報であり、前記第3の情報は、前記レンズの駆動量の情報である
ことを特徴とする撮像システム。
【請求項18】
前記カメラ本体部の前記制御手段は、中心の像高における前記レンズの敏感度の特性に対し、多項式近似または直線近似により前記敏感度を算出する
ことを特徴とする請求項17に記載の撮像システム。
【請求項19】
焦点調整用のレンズを有するレンズ装置および該レンズ装置を装着可能なカメラ本体部を備える撮像システムの制御方法であって、
検出手段により、複数の領域における焦点検出信号を生成する工程と、
前記カメラ本体部の制御部により、前記レンズ装置の通信手段を介して、前記焦点検出信号を前記レンズの駆動量に変換するための第1の情報および像高に対応した前記第1の情報の変化を示す第2の情報を取得する工程と、
前記第1の情報および前記第2の情報を取得した後に、前記複数の領域の中から前記レンズの駆動の制御に用いる領域を選択する工程と、
当該選択した領域の像高に対応させて、前記第1の情報および前記第2の情報から、前記レンズの駆動量に対応する第3の情報を制御信号として生成する工程と、を有し、
前記第1の情報は、前記焦点検出信号を前記レンズの駆動量に換算する換算情報であり、前記第2の情報は、像高に対応した前記換算情報の変化を示す、前記換算情報の補正情報であり、前記第3の情報は、前記レンズの駆動量の情報である
ことを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ装置をカメラ本体部に装着可能な撮像システムにおける自動焦点調節(AF)の制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像装置でフォーカスレンズを駆動する際には、フォーカス敏感度に基づいてレンズの駆動量が決定される。フォーカス敏感度とは、撮像装置が検出したデフォーカス量を、フォーカスレンズの駆動量に変換するための係数であり、交換レンズ式のカメラシステムでは、交換レンズの光学情報に基づいて決定される。
【0003】
特許文献1には、レンズの焦点距離情報に応じてフォーカス敏感度を可変とするカメラシステムが開示されている。特許文献1の装置によれば、焦点距離に応じてフォーカス敏感度を適切に設定することができ、合焦時間を短縮できる。また特許文献2には、空間周波数等のカメラの状態に応じてピント補正データを決定することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59−151116号公報
【特許文献2】特開2014−29353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで実際のフォーカス敏感度は、レンズの焦点距離情報だけでなく、焦点検出の位置(像高)に起因して変化する。特許文献1に開示の従来技術では、像高に起因したフォーカス敏感度の変化を考慮していない。このため、周辺像高での焦点合わせに適切なフォーカス敏感度を設定することができず、ハンチング等が発生した場合に正確な合焦制御を行えない。より正確なフォーカス敏感度を得るためには、像高ごとにフォーカス敏感度を取得する必要がある。
【0006】
一方、フォーカス敏感度情報については、カメラ本体部と交換レンズとの間でマウント端子を経由した通信により、受け渡しが行われる。特許文献2に開示の従来技術では、像高に応じて通信すべきデータが変化することを考慮していない。像高ごとに異なるデータを通信する場合には、周辺像高での焦点合わせの補正精度を高めるために通信データ量が増加する。この場合、カメラ本体部と交換レンズとの間では、限られた通信帯域内で必要なデータを送受する必要がある。
本発明の目的は、レンズ装置とカメラ本体部との通信により敏感度情報およびその補正情報を取得して焦点合わせの補正精度を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る撮像装置は、焦点調節用のレンズを有するレンズ装置と通信する通信手段と、複数の領域における焦点検出信号を検出する検出手段と、前記複数の領域の中から領域を選択し、選択した領域に対応する焦点検出信号に基づいて前記レンズの駆動量を算出する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記通信手段を介して第1の情報および第2の情報を取得し、前記通信手段を介して前記第1の情報および前記第2の情報に基づく、前記レンズの駆動量に対応する第3の情報を送信する。前記第1の情報は、前記焦点検出信号を前記レンズの駆動量に換算する換算情報であり、前記第2の情報は、像高に対応した前記換算情報の変化を示す、前記換算情報の補正情報であり、前記第3の情報は、前記レンズの駆動量の情報である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、レンズ装置とカメラ本体部との通信により敏感度情報およびその補正情報を取得して焦点合わせの補正精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る撮像システムを示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態に係る撮像素子の構成を示す概略図である。
図3】本発明の実施形態に係る撮像素子の画素部の概略図である。
図4】撮影レンズの射出瞳から出た光束が撮像素子に入射する様子を示す概念図である。
図5】本発明の実施形態における多点AF(オートフォーカス)枠の説明図である。
図6】本発明の実施形態における多点AF枠の選択処理を説明する図である。
図7】本発明の実施形態における多点AF枠のタイミング制御を説明するタイムチャートである。
図8】第1実施形態における多点AF時のAF枠の選択および敏感度補正処理を説明するフローチャートである。
図9】第2実施形態における多点AF時のAF枠の選択および敏感度補正処理を説明するフローチャートである。
図10】第2実施形態における敏感度比率および敏感度補正比率を説明するグラフである。
図11】第2実施形態における敏感度補正実施範囲の設定処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の各実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。各実施形態では、本発明に係る撮像システムの一例として交換式カメラ-レンズシステムを説明する。交換式カメラ-レンズシステムは、レンズ装置と、当該レンズ装置を装着可能なカメラ本体部から成る。焦点検出機能を有するカメラ本体部は、レンズ装置からフォーカスレンズの駆動特性情報を取得し、フォーカスレンズの駆動制御を行うための制御信号を生成してレンズ装置に送信する。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に関わるカメラ本体部1および交換レンズ2を含む交換式カメラ-レンズシステムの構成例を示すブロック図である。カメラ本体部1は、着脱可能な交換レンズ2と通信可能である。
カメラ本体部1内の電気回路部3は撮像素子4を備え、交換レンズ2を通過した光により形成された被写体像を電気信号に光電変換する。撮像素子4はCCD(電荷結合素子)センサやCMOS(相補型金属酸化膜半導体)センサ等であり、像高が異なる複数の焦点検出用画素を有している。
【0012】
測光部5は、撮像素子4からの出力を用いて交換レンズ2を通過した光の量(輝度)を測定し、測光結果を出力する。焦点検出部6は,撮像素子4に設けられた像高が異なる複数の焦点検出用画素の各出力を用いて、交換レンズ2の焦点外れ量(デフォーカス量)を算出する。焦点検出処理の周期は、撮像の周期(以下、VDと記す)に対応するフレームレートと同期しており、カメラ本体部1と交換レンズ2との通信処理はVD信号に同期して行われる。
【0013】
シャッタ制御部7は、撮像素子4の露光量を制御するために開閉動作する不図示のシャッタの動作を制御する。画像処理部8は、撮像素子4に設けられた所定画素数の撮像用画素からの出力に対して各種処理を行って画像データを生成する.各種処理には、交換レンズ2の記憶情報およびカメラ本体部1の記憶情報を用いる処理が含まれる。
【0014】
カメラ制御部9はCPU(中央演算処理装置)やメモリ等を備える撮像装置の制御中枢部である。カメラ制御部9は撮像装置の各構成部の動作を制御する。カメラ本体部1にはカメラ通信部11が設けられ、交換レンズ2にはレンズ通信部25が設けられており、カメラ制御部9は、これらの通信部を介してレンズ制御部26との通信が可能である。カメラ制御部9は、測光部5から得た輝度に基づいて撮像時の絞り値やシャッタ秒時を算出し、絞り値を含む絞り駆動命令をレンズ制御部26に送信する。さらにカメラ制御部9は、焦点検出情報とレンズ制御部26から取得した情報に基づいて交換レンズ2内のフォーカスレンズ22の合焦位置への駆動方向と駆動量を算出する。焦点検出情報とは、焦点検出部6が算出したデフォーカス量である。またレンズ制御部26から取得される情報は、中心の像高におけるフォーカス敏感度情報およびフォーカス敏感度の像高変化係数の情報である。カメラ制御部9は、算出した駆動方向および駆動量を指示するフォーカス駆動命令の制御信号をレンズ制御部26に送信し、撮像光学系の焦点調節制御を行う。カメラ本体部1側でのAF(オートフォーカス)処理は、焦点検出動作にてデフォーカス量の演算が行われ、カメラ制御部9がフォーカス駆動命令の制御信号をレンズ制御部26へ送信する処理である。後述する撮像面AFの機能は撮像のフレームレートのタイミングで1Vごとに行われる。このため、フォーカス敏感度やフォーカス位置、駆動状態等の情報の通信は1Vごとに実行される。1Vは1垂直周期を表し、垂直同期信号の周期に相当する。
【0015】
レンズ装着検出部10はスイッチや光検出器等を備え、カメラ本体部1に交換レンズ2が装着されたことを検出する。レンズ装着検出部10は検出信号をカメラ制御部9に出力する。カメラ通信部11はレンズ通信部25と対をなしており、カメラ制御部9は、レンズ制御部26が記憶している各種情報を取得する。各種情報とは、例えばフォーカス敏感度情報、および敏感度補正情報である。敏感度補正情報とは、像高によって変化するフォーカス敏感度を補正するための敏感度像高補正係数である。以下ではこれらの情報を敏感度関連情報という。カメラ制御部9は取得した情報を不図示の揮発性メモリに記憶する。
【0016】
カメラ本体部1内の制御系電源12は、撮像素子4、測光部5、焦点検出部6、画像処理部8および表示部33、交換レンズ2の制御系回路等に電力をそれぞれ供給する。またカメラ本体部1内の駆動系電源13は、シャッタ制御部7、交換レンズ2の駆動系回路等に電力を供給する。
【0017】
撮像準備スイッチ(SW1)14と、撮像開始スイッチ(SW2)15はユーザが撮影時に使用する操作スイッチである。SW1はレリーズボタンの半押し操作によってオンとなり、SW2はレリーズボタンの全押し操作でオンとなる。AF制御ではSW1およびSW2の各信号をトリガーとして、それぞれ対応する処理が開始する。
【0018】
画像記録部16は撮像された画像データを所定のフォーマット形式で記録媒体に記録する制御を行う。操作部は各種操作部材およびスイッチを備える。図1には本実施形態に関連する操作部材として、焦点検出点の選択を行うための焦点検出点変更操作部材32を示す。表示部33は撮像された画像の表示やカメラの各種情報の表示を行う。各種情報には、撮像面内に設定された複数の焦点検出領域を表示する表示枠等がある。
【0019】
交換レンズ2の撮像光学系は、変倍レンズ21、フォーカスレンズ22、像振れ補正レンズ23および絞り24を備える。変倍レンズ21は撮像光学系の光軸方向に移動して焦点距離を変化させる。フォーカスレンズ22は撮像光学系に光軸方向に移動する焦点調節用レンズである。像振れ補正レンズ23は撮像光学系の光軸方向に対して直交する方向に移動して手振れ等のカメラの振れによる像振れを補正する。絞り24は、その開口径(絞り値)の可変制御により、開口径に応じて撮影光量を変化させる。
【0020】
電気回路部20はレンズ通信部25およびレンズ制御部26と各駆動部を備える。各駆動部はズーム駆動部27、フォーカス駆動部28、振れ補正駆動部29、絞り駆動部30である。レンズ制御部26は、カメラ通信部11およびレンズ通信部25を介してカメラ本体部1の撮影情報や撮影状況に基づくフォーカス敏感度情報、フォーカス駆動命令等を受信する。レンズ制御部26はフォーカス駆動命令にしたがってフォーカス駆動部28にフォーカス駆動信号を出力する。
【0021】
フォーカス駆動部28はステッピングモータ、振動型モータまたはボイスコイルモータ等のアクチュエータを有し、レンズ制御部26からのフォーカス駆動信号にしたがってフォーカスレンズ22を合焦位置へ移動させる。つまり交換レンズ2側のAF処理では、フォーカス駆動命令を受信してフォーカスレンズ22を合焦位置へ移動させるまでの処理が実行される。
【0022】
レンズ制御部26はカメラ制御部9から取得した絞り駆動命令にしたがって、絞り駆動部30に絞り駆動信号を出力する。絞り駆動部30はステッピングモータ等のアクチュエータを有し、レンズ制御部26からの絞り駆動信号にしたがって絞り24を駆動する。
【0023】
ユーザが交換レンズ2に設けられた不図示のズーム操作リングを操作した場合、レンズ制御部26は、操作に応じたズーム方向とズーム駆動速度で変倍レンズ21を移動させるためのズーム駆動信号をズーム駆動部27に出力する。ズーム駆動部27はステッピングモータ等のアクチュエータを有し、レンズ制御部26からのズーム駆動信号にしたがって変倍レンズ21を駆動する。
【0024】
レンズ制御部26は交換レンズ2に設けられた不図示の振れ検出センサ(角速度センサ、加速度センサ等)からの振れ検出信号に基づいて振れ補正駆動部29に振れ駆動信号を出力する。振れ補正駆動部29はボイスコイルモータ等のアクチュエータを有し、レンズ制御部26からの振れ補正駆動信号にしたがって像振れ補正レンズ23を駆動する。
【0025】
記憶部31はEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)やフラッシュROM等の記憶デバイスにより構成される。記憶部31は、焦点検出結果(デフォーカス量)を補正するために用いられる焦点位置ずれ情報、フォーカス敏感度およびフォーカス敏感度像高補正係数情報を含むデータを記憶する。なお記憶部31はレンズ制御部26の内部に配置してもよい。レンズ制御部26は記憶部31から読み出した情報をレンズ通信部25に出力し、レンズ通信部25はカメラ通信部11に送信する。
【0026】
次に、撮像装置の動作の概要を説明する。
ユーザが撮像準備スイッチ(SW1)14をオン操作すると、カメラ制御部9は測光部5に測光動作を実行させ、焦点検出部6に焦点検出動作を実行させる。本実施形態では、交換レンズ2から取得する、光軸(中心の像高)の敏感度に対して、さらに光軸からの距離(像高成分)で変化する敏感度像高補正係数を取得する処理が行われる。焦点検出を行った像高成分と敏感度像高補正係数から,補正された敏感度が取得される。焦点検出結果として得られるデフォーカス量については、補正された敏感度情報を用いて、フォーカス駆動部28へ指示すべき駆動量(パルス数)への変換処理が行われる。レンズ制御部26はカメラ制御部9から指示された駆動量にしたがい、フォーカス駆動制御を行う。焦点検出動作とレンズ駆動が繰り返し実行されることにより、焦点ずれ量が次第に小さくなっていく。この工程では、検出されたデフォーカス量が大きい場合にフォーカスレンズ駆動と焦点検出処理を折り重ねる、いわゆるオーバーラップ駆動が行われる。後述するように本実施形態ではオーバーラップ駆動中にも、カメラ本体部1と交換レンズ2との間の通信負荷および演算負荷を低減することができる。
【0027】
ユーザが撮像開始スイッチ(SW2)15をオン操作すると、カメラ制御部9はレンズ制御部26に絞り24の駆動命令を送信して撮像時の絞り値に制御し、シャッタ制御部7にシャッタ駆動を行わせて所定のシャッタ秒時で撮像素子4を露光する。またカメラ制御部9は画像処理部8に、撮像素子4の出力から記録用画像を生成させる。撮像素子4はAF専用の焦点検出画素を有するので、記録用画像と併せて焦点検出信号を取得可能である。撮像素子4を用いて行う位相差検出方式のAFを撮像面位相差AFともいう。なお撮像面位相差AFに限らず、位相差検出専用のAFセンサを用いた焦点検出を行ってもよい。
撮影後にカメラ制御部9は画像記録部16に指示し、半導体メモリ等の記録媒体(図示せず)に記録用画像信号を記録する。撮影された画像は静止画または動画である。例えばモード選択スイッチによって静止画撮影モードが選択されている場合には静止画が取得され、ライブビューモードや動画撮影モードが選択されていれば動画が取得される。動画撮影用の録画開始ボタンを備える撮像装置では当該ボタンの操作によって動画の記録動作が開始する。ユーザはカメラ本体部1に設けた記録画質設定スイッチを操作して記録画質を選択することができる。
【0028】
次に、本実施形態における焦点検出処理を行うための構成について説明する。
図2を参照して撮像素子4の構成を説明する。図2(A)は撮像素子4の全体概略図であり、図2(B)は撮像素子4における一つの画素の概略図である。図2(A)に示す撮像素子4は、二次元アレイ状に配列された複数の画素からなる画素部201を有する。垂直選択回路202は、画素部201の複数の行の画素信号を順に選択して読み出し回路203に出力する。読み出し回路203は、画素部201の画素のうち垂直選択回路202により選択される画素の信号を読み出す。読み出し回路203は、信号を蓄積するメモリ、ゲインアンプ、A/D変換器等を列ごとに有する。水平選択回路204は、読み出し回路203に読み出された複数の画素信号を列ごとに順次選択する。シリアルインターフェイス(SI/F)部205は、外部装置で決定された各回路の動作モード等の情報を取得する。なお、図2(A)に示される構成要素以外にも、垂直選択回路202,水平選択回路204,読み出し回路203等にタイミング信号を提供するタイミングジェネレータや、制御回路等が設けられている。
【0029】
図2(B)に示す画素206は、一つのマイクロレンズ207と、二つのフォトダイオード208,209を有する。二つのフォトダイオード(PDと記す)は、撮像面位相差AFを行うための光電変換部を構成する。なお、画素206は図2(B)に示される構成要素以外に、PDの信号を読み出し回路203に読み出すための画素増幅アンプや、行を選択する選択スイッチ、PDの信号をリセットするリセットスイッチ等を備える。
【0030】
図3は,撮像素子4における画素部201の概略図である。画素部201は二次元の画像を提供するため、多数の画素を二次元アレイ状に配列して構成される。画素301,302,303,304は、図2(B)に示す構成の画素である。PD301L,302L,303L,304Lはそれぞれ、図2(B)に示すPD208に相当し、PD301R,302R,303R,304Rはそれぞれ、図2(B)に示すPD209に相当する。本実施形態では2分割タイプの光電変換部を例示するが、分割方向および分割数については装置の仕様に応じて任意に変更可能である。
【0031】
図4を参照して、撮像素子4における受光の様子について説明する。図4は、撮影レンズの射出瞳から出た光束が撮像素子に入射する様子を示す概念図であり、撮像面位相差検出方式を模式的に示す。撮像素子4の一部断面401には、マイクロレンズ402(図2(B)のマイクロレンズ207に相当)と、カラーフィルタ403を示す。PD404,PD405はそれぞれ、図2(B)のPD208,PD209に相当する。
【0032】
マイクロレンズ402を有する画素に対して、撮影レンズの射出瞳406から出射した光束の中心を光軸409で示す。射出瞳406から出射した光束は、光軸409を中心として撮像素子4に入射する。瞳部分領域407,408は撮影レンズの射出瞳406の一部領域である。光線410,411は瞳部分領域407を通過する光束の最外周の光線である。光線412,413は瞳部分領域408を通過する光束の最外周の光線である。射出瞳406から出射した光束のうち、光軸409を境にして上側の光束はPD405に入射し、下側の光束はPD404に入射する。すなわち、PD404とPD405はそれぞれ、撮影レンズの射出瞳406にて異なる領域を通過した光束を受光する.
【0033】
図2(B)および図3では、一つのマイクロレンズに対して二つのPDが設けられているが、これに限定されるものではない。例えば、ある画素に対しては片側のPDを使用し、その隣の画素に対しては反対側のPDを使用する構成でもよい。すなわち撮像素子の撮像面において、撮影レンズの射出瞳406における異なる領域を通過した光像が得られる構成であれば、撮像面位相差AFが可能である。
【0034】
撮像素子4は、撮影レンズにおける異なる瞳部分領域からの光束を受光するAライン画素およびBライン画素を二次元アレイ状に配列して構成されている。具体的には図3にて、行305の画素301,302,303,304のうちでPD301L,302L,303L,304Lの画素によりAライン画素が構成される。またPD301R,302R,303R,304Rの画素によりBライン画素が構成される。Aライン画素およびBライン画素の各出力に関して、二像の間隔(像間隔)は合焦状態、前ピン状態、および後ピン状態のいずれであるかに応じて異なる。像間隔に対応するデフォーカス量が算出され、合焦状態となるようにフォーカスレンズ22を移動させることによって焦点調節が行われる。すなわちフォーカスレンズ22の移動量を、二像の像ズレ量に基づいて算出することができる。本実施形態では説明の便宜上,二像(Aライン画素の像およびBライン画素の像)に関し、隣接画素の並びで説明したが、実際にはカラーフィルタが同じ画素同士でAライン画素およびBライン画素が構成される。
【0035】
焦点検出処理では撮像光学系の異なる瞳部分領域を通過する光束により形成される像を光電変換して一対の像信号が生成される。焦点検出部6は一対の像信号の位相差(像ズレ量)に基づいてデフォーカス量を検出する。検出したデフォーカス量からフォーカス駆動量が算出され、フォーカス駆動量に応じたフォーカスレンズ22の駆動制御が行われる。
【0036】
次に図5を参照して本実施形態における撮像面位相差AF制御にて、広範囲の像高での焦点検出を行う多点AF制御について説明する.図5は位相差検出方式による多点焦点検出枠の説明図である。撮像面内の画素領域500は、位相差検出方式の専用画素が配置されている撮像素子4内の画素領域であり、撮影範囲を表している。位相差検出方式の専用画素501を、横方向および縦方向に配置することにより、各方向での被写体の位相差像信号が取得可能となっている。専用画素501を有する複数のラインを組み合わせた矩形領域をAF枠領域502として定めるものとする。AF枠領域503は、破線の矩形枠で囲んで示す1グループを構成する領域である。図5に示す座標系504において、横方向の軸をX軸とし、縦方向の軸をY軸と定義する。
【0037】
ユーザが任意に指定するAF枠で焦点検出を行う場合、指定されたAF枠領域502において焦点検出処理が行われる。一方、顔検出等の被写体追尾時や多点AF時には、撮影範囲の全面を網羅するAF枠の全てにおいて焦点検出処理が行われる。図5に示す例では縦方向に6分割、横方向に6分割の合計36個のAF枠にて焦点検出処理が行われる。図5に示す1から36は、各AF枠を識別するために左上から右下にかけて付した数字である。
【0038】
ところで高画素化や、多点枠数の増加、高フレームレート化が進むにつれて、焦点検出処理を1Vの期間中に行うことが困難になると、撮影範囲の全面を一括して焦点検出することができない。そこで、撮影範囲を複数の範囲に分割して順次に焦点検出処理が実行される。具体的には図6に示すように、複数に分割した焦点検出領域ごとに、それぞれ焦点検出を行う処理が実行されることとなる。図6では、それぞれ4つの領域からなる9つのグループに区分けしてそれぞれの焦点検出が行われる。この場合、焦点検出処理の段階ではどのAF枠を採用するかについて未だ決定されていない。そのため、カメラ制御部9はレンズ制御部26からはフォーカス敏感度関連情報を取得する。フォーカス敏感度関連情報を用いた補正処理には各AF枠の像高位置情報が必要となるので、図5の座標系504を設定することで2次元の座標情報が取得される。座標系504の中心の像高を0とし、XY平面にて座標(X,Y)として位置を表現する。
【0039】
図6に示す領域510(AF枠1,2,7,8参照)は、図5における位相差検出方式の専用画素501に相当する。点線枠で示す矩形枠511は、複数のAF枠のグルーピングによって、1回で焦点検出処理が可能な領域を示している。矩形枠511から519によって撮影範囲が網羅され、4枠を1セットとしてグルーピングした焦点検出領域、つまり9フレームの各出力を使って繰り返し焦点検出処理が実行される。具体的には、最初の3V(1V〜3V目)の期間には、矩形枠511,512,513のように焦点検出領域のシフトが順次に行われ、撮像素子4の上部に相当する焦点検出が行われる。次の3V(4V〜6V目)の期間には、矩形枠514,515,516のように焦点検出領域のシフトが順次に行われ、撮像素子4の中央部に相当する焦点検出が行われる。さらに次の3V(7V〜9V目)の期間には、矩形枠517,518,519のように焦点検出領域のシフトが順次に行われ、撮像素子4の下部に相当する焦点検出が行われる。こうして1Vから9Vの期間に亘って、撮影範囲を網羅する焦点検出信号が取得される。
【0040】
次に図7を参照して多点のAF枠での焦点検出のタイミングについて説明する。図7は、図6に示した9フレームを使って繰り返し焦点検出を行う場合のタイムチャートである。信号601は、時系列に沿った撮像の信号線の振る舞いを示している。撮像処理の開始タイミングについては、フレームレートに対応した周期、すなわちVD信号の周期において、信号601の立下り時点で記している。平行四辺形602は撮像素子4の蓄積タイミングを示している。撮像素子4の蓄積制御はVD信号の周期内で実施され、撮像素子の上部での蓄積はVDの先頭付近で行われ、撮像素子の下部での読み出しになるほど、VD信号の周期の後半で蓄積が行われる。本実施形態では撮像素子4内に位相差検出用の専用画素が配置されているので、AF用画素の蓄積タイミングがAF枠の位置に左右される。以下、図6に示す9フレームの処理を、図7のタイムチャートに対応付けて説明する。
【0041】
最初の3V(1V〜3V目)では、撮像素子4の上部の領域に存在するAF用画素を使用するため、「上部ブロックAF蓄積」のタイミング610で位相差検出用信号が得られる。次の3V(4V〜6V目)では、撮像素子4の中央部に存在するAF用画素を使用するため、「中央ブロックAF蓄積」のタイミング611で位相差検出信号が得られる。さらに次の3V(7V〜9V目)では,撮像素子の下部に存在するAF用画素を使用するため、「下部ブロックAF蓄積」のタイミング612で位相差検出用信号が得られる。
【0042】
一方、カメラ制御部9がレンズ制御部26から取得するフォーカス敏感度関連情報については、「敏感度関連情報取得(1)から(9)」で示すタイミング620〜628、すなわち信号601の立下り時点でそれぞれ取得される。カメラ制御部9は、各フレーム(1V〜9V)に対応する時刻情報を、取得したフォーカス敏感度関連情報と対応づけてメモリに記憶しておく。9フレームの焦点検出結果を得ることで全AF枠のデフォーカス状況が判明する。よって、「AF枠選択処理」で示す選択タイミング629においてAF枠の選択が可能となる。AF枠の選択基準として、例えば至近側を選択することや、焦点検出の位相差検出結果の波形信頼性が高いこと等の基準があり、必要に応じて判断される。また、焦点検出の過程においてフォーカスレンズの駆動を行う、いわゆるオーバーラップ制御を行うことも可能である。その場合、焦点検出処理を行ったタイミングからAF枠を決定したタイミングに至るまでの期間のレンズ駆動量を、空走量として考慮する必要がある。レンズの空走量を得るために、9フレームの各々のVD信号の立下り時点に対応する「時刻記憶(1)から(9)」で示すタイミング630〜638にて、各時刻t1〜t9のデータがメモリに記憶される。またAF枠の選択タイミング639では、その時点での時刻t_selが取得される。レンズの空走量の算出処理では、例えば2V目に設定した図6の矩形枠512が選択された場合、時刻t2から時刻t_selまでの期間、フォーカスレンズが等速駆動しているとみなされる。等速運動するフォーカスレンズの移動量がレンズ空走量として算出される。そして、2V目に得られた焦点検出結果は、後述する演算式(1)から求まる正確な敏感度を用いてフォーカス駆動量に変換され、さらにレンズ空走量を差し引くことにより、合焦に必要なレンズ駆動量を求めることができる。
【0043】
次に、図8のフローチャートを参照して、本実施形態にてカメラ制御部9が行う多点AF処理について説明する。S701でユーザはカメラの操作部を構成する焦点検出点変更操作部材32を用いて、焦点検出点の自動選択モードを設定する。撮像準備スイッチ(SW1)14のオン操作により、カメラ制御部9は多点AF処理を開始する。
【0044】
S702では、図6に矩形枠511で示す領域をAF枠として設定するためにカメラ制御部9が焦点検出部6に制御情報を設定する。S703でカメラ制御部9は、撮像のVD信号を検出し、VD割り込みの有無を判定する。VD割り込みはVD信号にしたがって周期的に発生する。S703にてVD信号が検出された場合、S704へ遷移し、VD信号が検出されない場合にはS703の判定処理が繰り返される。
【0045】
S704では、カメラ制御部9がレンズ通信部25およびカメラ通信部11を介して,レンズ制御部26からフォーカス敏感度関連情報を取得する。フォーカス敏感度関連情報のうちの「中心の像高における敏感度情報」はレンズ制御部26が記憶している光学情報基づいて決定された情報である。光学情報とは、変倍レンズ21、フォーカスレンズ22、および像振れ補正レンズ23の各位置情報、並びに絞り24の絞り値、不図示のアクセサリ装置(例えばエクステンダ)等に関する情報である。この敏感度情報は、撮像面の中心での値、つまり像高0(中心の像高)における値を示す情報である。またフォーカス敏感度関連情報のうちの「敏感度像高補正係数」は、レンズ制御部26から取得した「中心の像高における敏感度情報」が示すフォーカス敏感度を補正する為のフォーカス敏感度補正係数である。図5のXY平面における原点、つまり中心の像高の座標を(0,0)と表記する。像高座標(X,Y)の敏感度S(X,Y)は、下記式(1)のようにXおよびYの多項式で算出することができる。
【0046】
【数1】
式(1)においてS0は、レンズ制御部26から取得したフォーカス敏感度を表す。a0からa5はフォーカス敏感度補正係数をそれぞれ表す。このように像高に応じた敏感度の変化量を表現する係数は、レンズ制御部26からカメラ制御部9が取得するデータである。本実施形態での敏感度情報は、中心の像高におけるフォーカス敏感度の特性に対し、多項式近似により算出される情報であるが、直線近似により算出される情報でもよい。
【0047】
上記方法以外には、カメラ制御部9がレンズ制御部26へ像高情報を指示し、レンズ制御部26が指示された像高の敏感度情報をカメラ制御部9に送信する方法がある。しかし、この方法ではAF枠の多点数の増加や、フレームレートの高速化に関し、カメラ制御部9とレンズ制御部26との通信帯域が不足する可能性や、これらの制御部の演算負荷が増大する可能性が問題となる。よって本実施形態のようにカメラ制御部9がレンズ制御部26からフォーカス敏感度補正係数を取得することが演算負荷の軽減にとって好適である。
【0048】
S705は撮像素子4内のAF専用画素の蓄積が完了したか否かの判定処理である。カメラ制御部9はAF専用画素の蓄積が完了した場合、S706に処理を進め、AF専用画素の蓄積が完了していない場合には、完了まで待機する。S706では、S702で設定されたAF枠位置に相当するAF専用画素の読み出しが実行され、焦点検出部6によって位相差検出での焦点検出情報が取得される。S707でカメラ制御部9は、S706で取得した焦点検出情報と、S704で取得した敏感度関連情報とを対応づけてメモリに記憶する。
【0049】
S710は、全AF枠のAF専用画素での焦点検出が完了したか否かの判定処理である。カメラ制御部9は、図6の矩形枠511〜519に示す領域での焦点検出を繰り返し実施したかどうかを判定する。全AF枠の焦点検出が完了していない場合にカメラ制御部9はS702に処理を戻し、次の焦点検出領域をAF枠位置に再設定して処理を続行する。また全AF枠の焦点検出が完了した場合にはS711へ移行する。
【0050】
S711ではAF枠位置の選択処理が行われる。全ての焦点検出結果、具体的には図6の矩形枠511〜519に示す領域に亘って実施された9フレーム分の焦点検出結果から最適な焦点検出結果が選択される。最適な焦点検出結果は、AF枠の選択基準に合致する焦点検出信号の中から、カメラ制御部9が予め設定された判定基準にしたがって決定する。S712でカメラ制御部9は、S711で選択した焦点検出結果について、S707で記憶された焦点検出結果と対応づけられたフォーカス敏感度関連情報を取得する。つまり、取得済みの焦点検出情報とフォーカス敏感度関連情報との対応関係に基づいて、S711で選択した焦点検出結果に対するフォーカス敏感度関連情報が取得される。その際、必要に応じて補間演算等の処理が実行される。
【0051】
S713でカメラ制御部9は、S712で取得したフォーカス敏感度関連情報を使用して、S711で選択したAF枠の像高位置に対して式(1)を適用して演算処理を実行する。これにより、精度よく補正されたフォーカス敏感度情報が計算される。S714では、S713で計算されたフォーカス敏感度情報を用いて、焦点検出結果からフォーカスレンズ駆動量への算出処理が行われる。すなわちカメラ制御部9は焦点検出結果であるデフォーカス量から、フォーカスレンズ22を駆動する際のパルスカウント数を算出する。カメラ制御部9は算出したパルスカウント数を含む駆動指令をレンズ制御部26に送信して、フォーカス駆動を要求する。S715で多点AF制御でのAF枠位置選択処理が終了する。
【0052】
本実施形態では、例えば複数のVD信号のタイミングにしたがって焦点検出結果をそれぞれ取得する場合に、過去の焦点検出結果、つまり履歴データをメモリから読み出して使用する。この場合、焦点検出結果とフォーカス敏感度関連情報とを対応づけて記憶する処理が行われる。カメラ本体部はレンズ装置から、中心の像高の敏感度情報と併せて、敏感度を像高について補正する補正係数を取得し、AF枠位置を決定してからフォーカス敏感度情報を算出する。周辺像高での焦点合わせにて、AF制御に最適な方法で焦点検出の位置に応じたフォーカス敏感度の変化量を補正することができる。本実施形態によれば、多点AFの枠数が増え、フレームレートが向上した場合でも、演算処理負荷を軽減しつつ、最適な敏感度情報を適用できるので、焦点調節精度の向上を実現可能な交換式カメラ-レンズシステムを提供できる。
【0053】
なお本実施形態では、撮像面の領域を格子状に分割し、分割された焦点検出領域ごとに焦点検出を実行する制御モードとして、多点AFモードを説明した。これに限らず、前記処理を、所定のゾーンごとに焦点検出を実行するゾーン領域AFモードにも適用可能である。このことは後述する実施形態でも同じである。
【0054】
[第2実施形態]
次に本発明の第2実施形態を説明する。本実施形態ではカメラ制御部9が位相差検出方式のAF制御を行う際、フォーカスレンズ22の最終駆動に使用する、焦点検出結果(デフォーカス量)を判定するための駆動範囲を有する。この駆動範囲は、撮像素子4の許容錯乱円径に任意の比率を乗算した長さに相当する範囲であり、以下、「最終駆動範囲」と呼ぶことにする。カメラ制御部9は最終駆動範囲から敏感度補正の実施範囲を決定し、焦点検出結果(デフォーカス量)が実施範囲内であるか否かを判定する。焦点検出結果が実施範囲内である場合に当該焦点検出結果が最終駆動に使用される。これによって、ハンチング現象を伴わずにAF制御によって合焦動作を実現可能である。なお本実施形態において、第1実施形態の場合と同様の構成要素には既に使用した符号を用いることにより、それらの詳細な説明を省略し、主に相違点を説明する。
【0055】
図9のフローチャートを参照して、本実施形態におけるカメラ本体部側の多点AF処理を説明する。S801ではAF枠位置選択処理が開始し、S802、S803の処理が実行される。S802、S803の各処理は、図8のS702、S703の各処理と同じであるための説明を省略する。
【0056】
次のS804でカメラ制御部9は、レンズ通信部25およびカメラ通信部11を介して、レンズ制御部26からフォーカス敏感度関連情報を取得する。フォーカス敏感度関連情報のうちの「中心の像高における敏感度情報」が示す敏感度は、撮像面の中心での値、つまり像高0(中心の像高)における値である。S805、S806、S807、S810の各処理は、図8のS705、S706、S707、S710の各処理と同様である。ただし、S807では,S806で取得された焦点検出情報と,S804で取得された敏感度関連情報(像高0における敏感度情報)とが対応づけられてメモリに記憶される。
【0057】
S810にて、全AF枠の焦点検出が完了した場合、S811へ処理を進める。S811でカメラ制御部9は敏感度補正実施範囲を設定する。まずカメラ制御部9はレンズ通信部25およびカメラ通信部11を介して撮像光学系の焦点距離情報を取得する。次にカメラ制御部9は全ての焦点検出結果、具体的には図6の矩形枠511〜519で示す領域にて繰り返し実施した9フレーム分の焦点検出結果から、中心の像高から最も離れた位置のAF枠の像高情報に基づいて敏感度補正実施範囲を計算する。計算方法については図10を用いて後述する。
【0058】
S812、S813の各処理は、図8のS711、S712の各処理と同様である。ただし、S813では、S812で選択され焦点検出結果について、S807で記憶された、焦点検出結果と対応づけられたフォーカス敏感度関連情報(像高0における敏感度情報)が取得される。
【0059】
S814でカメラ制御部9は、S811で設定した敏感度補正実施範囲、およびS811で取得した焦点距離情報を使用して、敏感度補正処理を実施するか否かを判定する。S812で選択したAF枠位置での焦点検出結果、およびS813で取得したフォーカス敏感度関連情報に基づいて、デフォーカス量の算出処理が行われる。カメラ制御部9は算出したデフォーカス量が、S811で設定した敏感度補正実施範囲内である場合に敏感度補正処理を実施すると判定する。デフォーカス量がS811で設定した敏感度補正実施範囲内でない場合には、敏感度補正処理を実施しないと判定される。判定処理の詳細については図11を用いて後述する。またカメラ制御部9は、焦点距離が所定の閾値よりも大きい場合、敏感度補正処理を実施しないと判定する。敏感度補正処理を実施することが判定された場合、S815に処理を進め、敏感度補正処理を実施しないと判定された場合にはS817に遷移する。なお、敏感度補正処理の実施の判定基準に関しては、必要に応じて本実施形態の以外の判定基準を採用してもよい。
【0060】
S815でカメラ制御部9は、レンズ通信部25およびカメラ通信部11を介してレンズ制御部26から、「敏感度像高補正係数」のデータを取得する。このデータは、中心の像高のフォーカス敏感度を補正するためのフォーカス敏感度補正係数のデータである。敏感度S(X,Y)の算出は、前記式(1)を適用して行われる。S816、S817の各処理は、図8のS713、S714の各処理と同様である。S818にて多点AF処理でのAF枠位置選択処理が終了する。
【0061】
次に図10を参照して、敏感度補正実施範囲の計算方法を説明する。図10は横軸に像高(単位:mm)をとり、縦軸に比率をとって、焦点距離A,B(単位:mm)におけるそれぞれの敏感度比率および敏感度補正比率を例示したグラフである。
カメラ制御部9は、記憶している焦点距離によって変化する係数(αと記す)、および像高から敏感度補正比率を算出する。像高は、図9のS811で設定される中心の像高から最も離れたAF枠の像高座標(X,Y)から、下記式(2)によって求まる。像高と係数αを下記式(3)に代入することによって敏感度補正比率が得られる。
像高=√(X2+Y2) ・・・(2)
敏感度補正比率=1+(像高×α) ・・・(3)
【0062】
図10にて、実線で示すグラフ曲線901は焦点距離Ammにおける敏感度比率を示し、実線で示すグラフ曲線902は焦点距離Bmmにおける敏感度比率を示す。敏感度比率はいずれも像高ゼロで1であり、像高の増加につれて増加していく。焦点距離Ammにおける敏感度比率がグラフ曲線901に示す特性である場合、式(2)および式(3)から算出される敏感度補正比率を、一点鎖線のグラフ線903に示す。敏感度補正比率の値は像高ゼロで1であり、像高の増加につれて線形に増加する。また焦点距離Bmmにおける敏感度比率がグラフ曲線902に示す特性である場合、式(2)および式(3)から算出される敏感度補正比率を、一点鎖線のグラフ線904に示す。敏感度補正比率の値は像高ゼロで1であり、像高の増加につれて線形に増加し、その傾斜はグラフ線903の傾斜よりも大きい。
【0063】
カメラ制御部9は算出した敏感度補正比率、および最終駆動範囲を、下記式(4)に代入することで敏感度補正実施範囲を算出する。
敏感度補正実施範囲=敏感度補正比率×最終駆動範囲 ・・・(4)
本実施形態では、敏感度補正比率の計算式として、像高について一次補間式で表現し、敏感度補正実施範囲の計算式を敏感度補正比率の一次式として表現したが、これらは一例であって任意の補間式および計算式を適用してもよい。また、レンズ通信部25およびカメラ通信部11を介してカメラ制御部9が、係数αのデータをレンズ制御部26から取得してもよい。
【0064】
図11を参照して、敏感度補正実施範囲の設定方法、および敏感度補正処理の実施判定について説明する。図11はデフォーカス量と、最終駆動範囲1001、敏感度補正実施範囲1002、敏感度補正非実施範囲1003の関係についての説明図である。敏感度補正実施範囲1002は図9のS811で式(4)により計算され、最終駆動範囲1001を中心として設定される。最終駆動範囲1001はデフォーカス量がゼロの位置を基準とする所定の範囲であり、最終駆動範囲1001に敏感度補正比率を乗算した範囲が敏感度補正実施範囲1002である。カメラ制御部9はS812で選択した焦点検出結果およびS813で取得したフォーカス敏感度関連情報に基づいて算出したデフォーカス量が、敏感度補正実施範囲1002内であるか、敏感度補正非実施範囲1003内であるかを判定する。デフォーカス量が敏感度補正実施範囲1002内である場合、図9のS814にて敏感度補正処理を実行すると判定され、またデフォーカス量が敏感度補正非実施範囲1003である場合、S814にて敏感度補正処理を実行しないと判定される。
【0065】
本実施形態では、最終駆動範囲の付近に設定される、像高に起因したフォーカス敏感度の変化が加味された敏感度補正実施範囲においてのみ、フォーカス敏感度補正処理が実行される。本実施形態によれば、カメラ本体部とレンズ装置との通信負荷およびカメラ本体部の演算負荷をさらに軽減しつつ、焦点調節精度の向上を実現することができ、多点AFの枠数の増加、およびフレームレートの高速化に対して有効である。
【符号の説明】
【0066】
1 カメラ本体部
2 交換レンズ
4 撮像素子
6 焦点検出部
9 カメラ制御部
22 フォーカスレンズ
26 レンズ制御部
28 フォーカス駆動部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11