(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
重量%で、炭素(C):0.08〜0.16%、ケイ素(Si):0.1〜0.7%、マンガン(Mn):0.8〜1.6%、リン(P):0.05%以下(0を除く)、硫黄(S):0.02%以下(0を除く)、アルミニウム(Al):0.07%以下(0を除く)、クロム(Cr):0.1〜1.0%、ニッケル(Ni):0.01〜0.1%、モリブデン(Mo):0.01〜0.2%、ホウ素(B):50ppm以下(0を除く)、コバルト(Co):0.04%以下(0を除く)を含み、銅(Cu):0.1%以下(0を除く)、チタン(Ti):0.02%以下(0を除く)、ニオブ(Nb):0.05%以下(0を除く)、バナジウム(V):0.02%以下(0を除く)、及びカルシウム(Ca):2〜100ppmのうち1種以上をさらに含み、残部Fe及びその他の不可避不純物からなり、且つ下記関係式1を満たし、
微細組織が、面積分率で、97%以上のマルテンサイト及び3%以下のベイナイトを含むことを特徴とする高硬度耐摩耗鋼。
[関係式1]
360≦(869×[C])+295≦440
ここで、[C]は重量含有量を意味する。
前記耐摩耗鋼は、ヒ素(As):0.05%以下(0を除く)、スズ(Sn):0.05%以下(0を除く)、及びタングステン(W):0.05%以下(0を除く)のうち1種以上をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の高硬度耐摩耗鋼。
重量%で、炭素(C):0.08〜0.16%、ケイ素(Si):0.1〜0.7%、マンガン(Mn):0.8〜1.6%、リン(P):0.05%以下(0を除く)、硫黄(S):0.02%以下(0を除く)、アルミニウム(Al):0.07%以下(0を除く)、クロム(Cr):0.1〜1.0%、ニッケル(Ni):0.01〜0.1%、モリブデン(Mo):0.01〜0.2%、ホウ素(B):50ppm以下(0を除く)、コバルト(Co):0.04%以下(0を除く)を含み、銅(Cu):0.1%以下(0を除く)、チタン(Ti):0.02%以下(0を除く)、ニオブ(Nb):0.05%以下(0を除く)、バナジウム(V):0.02%以下(0を除く)、及びカルシウム(Ca):2〜100ppmのうち1種以上をさらに含み、残部Fe及びその他の不可避不純物からなり、且つ下記関係式1を満たす鋼スラブを設ける段階と、
前記鋼スラブを1050〜1250℃の温度範囲で加熱する段階と、
前記加熱された鋼スラブを950〜1050℃の温度範囲で粗圧延する段階と、
前記粗圧延後、750〜950℃の温度範囲で仕上げ圧延して熱延鋼板を製造する段階と、
前記熱延鋼板を常温まで空冷した後、850〜950℃の温度範囲で在炉時間20分以上再加熱熱処理する段階と、
前記再加熱熱処理後、前記熱延鋼板を下記関係式2を満たす冷却速度で100℃以下まで冷却する段階と、を含み、
前記100℃以下まで冷却された熱延鋼板の微細組織が、面積分率で、97%以上のマルテンサイト及び3%以下のベイナイトを含むことを特徴とする高硬度耐摩耗鋼の製造方法。
[関係式1]
360≦(869×[C])+295≦440
ここで、[C]は重量含有量を意味する。
[関係式2]
CR≧0.2/[C]
ここで、CRは再加熱熱処理後の冷却時の冷却速度を意味し、[C]は重量含有量を意味する。
前記鋼スラブは、ヒ素(As):0.05%以下(0を除く)、スズ(Sn):0.05%以下(0を除く)、及びタングステン(W):0.05%以下(0を除く)のうち1種以上をさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の高硬度耐摩耗鋼の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明者らは、建設機械などに好適に適用することができる材料について深く研究した。特に、核心的に要求される物性である耐摩耗性を確保するために、高硬度に加えて、高強度及び高靭性を有する鋼材を提供すべく、合金組成としての硬化能元素の含有量、及び製造条件を最適化することにより、上記のような物性確保に有利な微細組織を有する耐摩耗鋼を提供できることを確認し、本発明を完成させた。
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0016】
本発明の一側面による高硬度耐摩耗鋼は、重量%で、炭素(C):0.08〜0.16%、ケイ素(Si):0.1〜0.7%、マンガン(Mn):0.8〜1.6%、リン(P):0.05%以下(0を除く)、硫黄(S):0.02%以下(0を除く)、アルミニウム(Al):0.07%以下(0を除く)、クロム(Cr):0.1〜1.0%、ニッケル(Ni):0.01〜0.1%、モリブデン(Mo):0.01〜0.2%、ホウ素(B):50ppm以下(0を除く)、コバルト(Co):0.04%以下(0を除く)を含むことが好ましい。
【0017】
以下では、本発明で提供される高硬度耐摩耗鋼の合金組成を上記のように制御した理由について詳細に説明する。このとき、特別な記載がない限り、各成分の含有量は重量%を意味する。
【0018】
C:0.08〜0.16%
炭素(C)は、マルテンサイト組織を有する鋼において強度及び硬度を増加させるのに効果的であり、硬化能向上のために有効な元素である。
上述した効果を十分に確保するためには、Cを0.08%以上添加することが好ましいが、Cの含有量が0.16%を超えると、溶接性及び靭性を阻害するという問題がある。
従って、本発明では、上記Cの含有量を0.08〜0.16%に制御することが好ましく、より有利には、上記Cを0.10〜0.14%含有することができる。
【0019】
Si:0.1〜0.7%
ケイ素(Si)は、脱酸及び固溶強化による強度向上に有効な元素である。
上記のような効果を有効に得るためにはSiを0.1%以上添加することが好ましいが、Siの含有量が0.7%を超えると、溶接性が劣化するため好ましくない。
従って、本発明では、上記Siの含有量を0.1〜0.7%に制御することが好ましい。より有利には、上記Siを0.2〜0.5%含むことができる。
【0020】
Mn:0.8〜1.6%
マンガン(Mn)は、フェライトの生成を抑制し、Ar3温度を下げることで、焼入性を効果的に上昇させて鋼の強度及び靭性を向上させる元素である。 本発明では、厚さ40mm以下の鋼材の硬度を確保するために、上記Mnを0.8%以上含有することが好ましい。但し、Mnの含有量が1.6%を超えると、中心部にMnSのような偏析帯が助長されて、切断作業時にクラック(crack)が発生する可能性が高くなるだけでなく、溶接性を低下させるという問題がある。
従って、本発明では、上記Mnの含有量を0.8〜1.6%に制御することが好ましい。
【0021】
P:0.05%以下(0を除く)
リン(P)は、鋼中に必然的に含有される元素でありながら、鋼の靭性を阻害する元素である。従って、上記Pの含有量をできる限り減少させることで、0.05%以下に制御することが好ましい。但し、必然的に含有されるレベルを考慮して0%は除く。
【0022】
S:0.02%以下(0を除く)
硫黄(S)は、鋼中MnS介在物を形成して鋼の靭性を阻害する元素である。従って、上記Sの含有量をできる限り減少させて、0.02%以下、より好ましくは0.01%以下に制御することが好ましい。但し、必然的に含有されるレベルを考慮して0%は除く。
【0023】
Al:0.07%以下(0を除く)
アルミニウム(Al)は、鋼の脱酸剤として溶鋼中の酸素含有量を減少させるのに効果的な元素である。かかるAlの含有量が0.07%を超えると、鋼の清浄性が阻害されるという問題があるため好ましくない。
従って、本発明では、上記Alの含有量を0.07%以下に制御することが好ましい。但し、製鋼工程時の負荷や製造コストの上昇などを考慮して0%は除く。
【0024】
Cr:0.1〜1.0%
クロム(Cr)は、焼入性を増加させて鋼の強度を増加させ、硬度の確保にも有利な元素である。
上述した効果のためにはCrを0.1%以上添加することが好ましいが、Crの含有量が1.0%を超えると、溶接性が劣化して製造コストを上昇させる原因となる。
従って、本発明では、上記Crの含有量を0.1〜1.0%に制御することが好ましい。
【0025】
Ni:0.01〜0.1%
ニッケル(Ni)は、上記Crとともに焼入性を増加させて鋼の強度及び靭性を向上させるのに有効な元素である。
上述した効果のためにはNiを0.01%以上添加することが好ましいが、Niの含有量が0.1%を超えると、高価な元素であるため製造コストを上昇させる原因となる。
従って、本発明では、上記Niの含有量を0.01〜0.1%に制御することが好ましい。
【0026】
Mo:0.01〜0.2%
モリブデン(Mo)は、鋼の焼入性を増加させ、特に鋼の硬度向上に有効な元素である。
上述した効果を十分に得るためにはMoを0.01%以上添加することが好ましいが、上記Moも高価な元素であるためその含有量が0.2%を超えると、製造コストが上昇するだけでなく、溶接性が劣化するという問題がある。
従って、本発明では、上記Moの含有量を0.01〜0.2%に制御することが好ましい。
【0027】
B:50ppm以下(0を除く)
ホウ素(B)は、少量の添加でも鋼の焼入性を有効に上昇させ、強度を向上させるのに有効な元素である。
但し、Bの含有量が多すぎると、逆に鋼の靭性及び溶接性を阻害するという問題があるため、Bの含有量を50ppm以下に制御することが好ましい。但し、0%は除く。
【0028】
Co:0.04%以下(0を除く)
コバルト(Co)は、鋼の焼入性を増加させることで、鋼の強度に加えて硬度の確保に有利な元素である。
但し、Coの含有量が0.04%を超えると、鋼の焼入性が低下するおそれがあり、高価な元素であるため製造コストを上昇させる要因となる。
従って、本発明では、Coを0.04%以下添加することが好ましく、0%は除く。より有利には、0.005〜0.035%、さらに有利には、0.01〜0.03%含有することが好ましい。
【0029】
本発明の耐摩耗鋼は、上述した合金組成に加えて、本発明で目標とする物性の確保に有利な要素をさらに含むことができる。
【0030】
具体的には、銅(Cu):0.1%以下(0を除く)、チタン(Ti):0.02%以下(0を除く)、ニオブ(Nb):0.05%以下(0を除く)、バナジウム(V):0.02%以下(0を除く)、及びカルシウム(Ca):2〜100ppmからなる群より選択された1種以上をさらに含むことができる。
【0031】
Cu:0.1%以下(0を除く)
銅(Cu)は、鋼の焼入性を向上させ、固溶強化により鋼の強度及び硬度を向上させる元素である。
但し、かかるCuの含有量が0.1%を超えると、表面欠陥を発生させ、熱間加工性を阻害するという問題があるため、上記Cuを添加する場合には0.1%以下添加することが好ましい。
【0032】
Ti:0.02%以下(0を除く)
チタン(Ti)は、鋼の焼入性を向上するのに有効な元素であるBの効果を最大化する元素である。具体的には、上記Tiは、窒素(N)と結合してTiN析出物を形成させ、BNの形成を抑制することにより、固溶Bを増加させて焼入性向上を最大化することができる。
但し、上記Tiの含有量が0.02%を超えると、粗大な析出物が形成されて鋼の靭性を阻害するという問題がある。
従って、本発明では、上記Tiを添加する場合には0.02%以下添加することが好ましい。
【0033】
Nb:0.05%以下(0を除く)
ニオブ(Nb)は、オーステナイトに固溶されてオーステナイトの硬化能を増大させ、Nb(C、N)などの炭窒化物を形成して鋼の強度を増加させ、オーステナイト結晶粒の成長を抑制するのに有効である。
但し、上記Nbの含有量が0.05%を超えると、粗大な析出物が形成され、これは脆性破壊の起点となって靭性を阻害するという問題がある。
従って、本発明では、上記Nbを添加する場合には0.05%以下添加することが好ましい。
【0034】
V:0.02%以下(0を除く)
バナジウム(V)は、熱間圧延後の再加熱時にVC炭化物を形成することにより、オーステナイト結晶粒の成長を抑制し、鋼の焼入性を向上させることで強度及び靭性を確保するのに有利な元素である。
但し、上記Vは、高価な元素であるためその含有量が0.02%を超えると、製造コストを上昇させる要因となる。
従って、本発明では、上記Vの含有量を0.02%以下に制御することが好ましい。
【0035】
Ca:2〜100ppm
カルシウム(Ca)は、Sとの結合力が良くCaSを生成することにより、鋼材の厚さ中心部に偏析されるMnSの生成を抑制するという効果がある。また、上記Caの添加により生成されたCaSは、湿気が多い外部環境下での腐食抵抗を高めるという効果がある。
上述した効果のためには上記Caを2ppm以上添加することが好ましいが、Caの含有量が100ppmを超えると、製鋼操業時のノズル詰まりなどを誘発するという問題があるため好ましくない。
従って、本発明では、上記Caを添加する場合にはCaの含有量を2〜100ppmに制御することが好ましい。
【0036】
さらに、本発明は、ヒ素(As):0.05%以下(0を除く)、スズ(Sn):0.05%以下(0を除く)、及びタングステン(W):0.05%以下(0を除く)のうち1種以上をさらに含むことができる。
上記Asは、鋼の靭性向上に有効であり、上記Snは、鋼の強度及び耐食性の向上に有効である。また、Wは、焼入性を増加させることで、強度向上に加えて、高温での硬度向上に有効な元素である。
但し、上記As、Sn、及びWの含有量がそれぞれ0.05%を超えると、製造コストが上昇するだけでなく、逆に鋼の物性を阻害するおそれがある。
従って、本発明では、上記As、Sn、またはWをさらに含む場合、それらの含有量をそれぞれ0.05%以下に制御することが好ましい。
【0037】
本発明の残りの成分は鉄(Fe)である。但し、通常の製造工程では原料又は周囲環境から意図しない不純物が不可避に混入するため、これを排除することはできない。これらの不純物は、当該技術分野における通常の知識を有する技術者であれば容易に理解されるものであるため、本明細書ではそのすべての内容について特に記載しない。
【0038】
一方、本発明の耐摩耗鋼は下記関係式1を満たすことが好ましい。
[関係式1]
360≦(869×[C])+295≦440
ここで、[C]は重量含有量を意味する。
【0039】
上記関係式1の値が360未満の場合には、本発明で提供される耐摩耗鋼の表面硬度HB400級(好ましくは、360〜440HB)を確保することが難しい。これに対し、上記関係式1の値が440を超えると、最終製品にともに用いられるその他の部材及び溶接材料との不調和が発生するおそれがある。
【0040】
上述した合金組成及び上記関係式1を満たす本発明の耐摩耗鋼は、微細組織として、マルテンサイト相を基地組織として含むことが好ましい。
より具体的には、本発明の耐摩耗鋼は、面積分率で、マルテンサイト相を97%以上(100%を含む)含み、その他の組織としてベイナイト相を含むことができる。上記ベイナイト相は、面積分率3%以下であることが好ましく、0%で形成されてもよい。
上記マルテンサイト相の分率が97%未満である場合には、目標レベルの強度及び硬度を確保することが難しくなるという問題がある。
【0041】
以下、本発明の他の一側面による高硬度耐摩耗鋼を製造する方法について詳細に説明する。
【0042】
簡単に説明すると、上述した合金組成を満たす鋼スラブを設けた後、上記鋼スラブを[再加熱−粗圧延−仕上げ圧延−空冷−再加熱熱処理−冷却]する工程を経ることにより製造することが好ましい。以下では、各工程の条件について詳細に説明する。
【0043】
まず、本発明で提案する合金組成及び関係式1を満たす鋼スラブを設けた後、これを1050〜1250℃の温度範囲で加熱することが好ましい。
上記加熱時の温度が1050℃未満である場合には、Nbなどの再固溶が十分ではない。これに対し、その温度が1250℃を超えると、オーステナイト結晶粒が粗大化して不均一な組織が形成されるおそれがある。
従って、本発明では、鋼スラブの加熱時に、1050〜1250℃の温度範囲で行うことが好ましい。
【0044】
上記加熱された鋼スラブを粗圧延及び仕上げ圧延を経ることにより熱延鋼板を製造することが好ましい。
まず、上記加熱された鋼スラブを950〜1050℃の温度範囲で粗圧延してバー(bar)を製造した後、これを750〜950℃の温度範囲で仕上げ熱間圧延することが好ましい。
上記粗圧延時の温度が950℃未満である場合には、圧延荷重が増加し、比較的弱圧下されることにより、スラブの厚さ方向の中心まで変形が十分に伝達できず、空隙のような欠陥が除去されないおそれがある。これに対し、その温度が1050℃を超えると、圧延とともに再結晶が発生した後、粒子が成長するようになって初期オーステナイト粒子が過度に粗大になるおそれがある。
上記仕上げ温度範囲が750℃未満である場合には、二相域圧延となって微細組織中にフェライトが生成される可能性がある。これに対し、その温度が950℃を超えると、圧延ロールの負荷が激しくなって圧延性が劣化するという問題がある。
【0045】
上記によって製造された熱延鋼板を常温まで空冷した後、850〜950℃の温度範囲で在炉時間20分以上再加熱熱処理を行うことが好ましい。
上記再加熱熱処理は、フェライト及びパーライトで構成された熱延鋼板をオーステナイト単相に逆変態させるためのものである。上記再加熱熱処理時の温度が850℃未満である場合には、オーステナイト化は十分に行われることができず、粗大な軟質フェライトが混在するようになるため、最終製品の硬度が低下するという問題がある。これに対し、その温度が950℃を超えると、オーステナイト結晶粒が粗大となり、焼入性が大きくなる効果はあるものの、鋼の低温靭性が劣化するという問題がある。
また、上述した温度範囲で再加熱時の在炉時間が20分未満である場合には、オーステナイト化が十分に行われることができず、後続の急速冷却による相変態、すなわち、マルテンサイト組織を十分に得ることができなくなる。これに対し、在炉時間が60分を超えると、オーステナイト結晶粒が粗大となり、鋼の低温靭性が劣化するという問題がある。
【0046】
上記再加熱熱処理を完了した後、下記関係式2を満たす冷却速度で100℃以下まで冷却することが好ましい。
[関係式2]
CR≧0.2/[C]
ここで、CRは再加熱熱処理後の冷却時の冷却速度(℃/s)を意味し、[C]は重量含有量を意味する。
【0047】
上記冷却時の冷却速度が上記関係式2の値未満であるか、または冷却終了温度が100℃を超えると、冷却中にフェライト相が形成されたり、ベイナイト相が過度に形成されたりするおそれがある。
より有利には、上記冷却時の冷却速度を1.25℃/s以上で行うことができ、さらに有利には2.5℃/s以上、最も有利には5.0℃/s以上の冷却速度で行うことができる。上記冷却速度の上限は特に限定されないが、設備仕様を考慮して適切に選択することができる。
【0048】
上述した製造条件によって製造された本発明の熱延鋼板は、微細組織として、マルテンサイト相を主相として含み、ブリネル硬度値が360〜440HBと、高硬度を有するという効果を奏する。
【実施例】
【0049】
以下、実施例を通じて本発明をより具体的に説明する。但し、下記実施例は本発明を例示してより詳細に説明するためのもので、本発明の権利範囲を限定するためのものではないことに留意する必要がある。本発明の権利範囲は、特許請求の範囲に記載された事項及びこれから合理的に類推される事項によって決定されるためである。
【0050】
(実施例)
下記表1及び表2に示す合金組成を有する鋼スラブを設けた後、上記それぞれの鋼スラブを1050〜1250℃の温度範囲で加熱した後、950〜1050℃の温度範囲で粗圧延してバー(bar)を製作した。次に、上記それぞれのバー(bar)を下記表3に示す温度で仕上げ圧延して熱延鋼板を製造した後、常温まで冷却(空却)した。その後、上記熱延鋼板を再加熱熱処理した後、100℃以下まで水冷した。このとき、上記再加熱熱処理及び冷却条件は下記表3に示した。
【0051】
その後、それぞれの熱延鋼板に対して微細組織及び機械的物性を測定し、その結果を下記表4に示した。
上記微細組織は、任意のサイズで試験片を切断して鏡面を製作した後、ナイタルエッチング液を用いて腐食させた後、光学顕微鏡及び電子走査顕微鏡を用いることで、表層から厚さ方向2mmの位置を観察した。
そして、引張強度、硬度、及び靭性はそれぞれ万能引張試験機、ブリネル硬度試験機(荷重3000kgf、10mmのタングステン圧入ボール(鋼球圧入)及びシャルピー衝撃試験機を用いて測定した。このとき、引張試験は、板の全厚さを試験板として使用し、ブリネル硬度は、表面から厚さ方向に2mmのミル加工した後、3回測定したものの平均値を使用した。また、シャルピー衝撃試験結果は、−40℃で3回測定したものの平均値を使用した。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
上記表1から4に示すように、鋼の合金組成、関係式1、及び製造条件のうち一つ以上の条件を満たさない比較例1から9の場合は、熱延鋼板の硬度(HB)値が本発明のレベルを満たすことができないことを確認できる。
特に、Cの含有量が不十分である比較鋼1を用いた比較例1から3の場合は、硬度値が低く、Cの含有量が多すぎる比較鋼2または3を用いた比較例4から9の場合は、硬度値が過度に高くなったことを確認できる。
【0057】
また、鋼の合金組成及び関係式1は満たしているものの、再加熱熱処理後の冷却時の冷却終了温度が高い比較例10の場合は、マルテンサイト相が十分に形成されず、硬度値が低下した。尚、再加熱熱処理時の在炉時間が不十分である比較例11、及び再加熱温度が低い比較例12の場合も、マルテンサイト相が十分に形成されないことが原因となって硬度値が非常に低下した。
【0058】
これに対し、鋼の合金組成、関係式1、及び製造条件をすべて満たす発明例1から9の場合は、マルテンサイト相がすべて97%以上形成されており、高強度及び高靭性(−40℃において30J以上)はもちろんのこと、硬度値が目標とするレベルに形成された。
【0059】
図1は、発明例8の中心部の微細組織を観察した結果を示したものであって、マルテンサイト相が形成されたことを肉眼でも確認することができる。