(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記位置取得部は、前記マーカの、地面からの垂直方向の位置、及び/又はスポーツ打具によって打たれた対象物の移動方向と直交する方向の位置を取得する請求項1又は2に記載のスポーツ打具判定システム。
前記マーカの位置は、地面からの垂直方向の位置、及び/又はスポーツ打具によって打たれた対象物の移動方向と直交する方向の位置である請求項6又は7に記載のスポーツ打具判定方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の分析システムでは、マークがテニスラケットに付けられているため、同一のテニスラケットを使用して複数回計測を行っても、プレイヤのグリップの握りの強さや位置が毎回同一になるとは限らず、ボールに対するインパクト動作の再現性に影響を及ぼす。このため計測結果の信頼性に問題がある。また、特許文献1に記載の分析システムでは、プレイヤの嗜好といった主観的な要因や、実際のプレイにおいてどのような影響が出るかについては考慮されていなかった。
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題を解消すると共に、スポーツ打具を使用する使用者にとって好適なスポーツ打具を、信頼性の高い計測で選定又は判定することができるスポーツ打具判定システム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に従えば、スポーツ打具を使用する使用者にとって好適なスポーツ打具を判定するためのスポーツ打具判定システムであって、
複数本のスポーツ打具について、体の一部にマーカを付けた前記使用者が対象物を打つ動作を複数回観測し、各動作について、前記マーカの位置を取得する位置取得部と、
各スポーツ打具について、前記取得したマーカの位置の標準偏差を算出する標準偏差算出部と、
各スポーツ打具について、スポーツ打具が対象物に接触する前後の所定の時間における前記標準偏差の総和を算出し、前記標準偏差の総和に基づいて、各スポーツ打具の前記使用者に対する適正を判定する適正判定部とを備えるスポーツ打具判定システムが提供される。
【0008】
第1の態様において、前記所定の時間を、スポーツ打具が対象物に接触する前後の時刻T1から時刻T2までの時間とし、時刻T1と時刻T2の間の時刻tにおける前記標準偏差をVf(t)としたとき、前記標準偏差の総和であるVgは、以下の式(1)によって求め得る。
【0009】
第1の態様において、前記位置取得部は、前記マーカの、地面からの垂直方向の位置、及び/又はスポーツ打具によって打たれた対象物の移動方向と直交する方向の位置を取得してもよい。
【0010】
第1の態様において、前記マーカは、前記使用者の利き腕の手首又は肘に付けられてもよい。
【0011】
第1の態様において、前記スポーツ打具は、バドミントンラケット、ゴルフクラブ、又はテニスラケットであってもよい。
【0012】
本発明の第2の態様に従えば、スポーツ打具を使用する使用者にとって好適なスポーツ打具を判定するためのスポーツ打具判定方法であって、
複数本のスポーツ打具について、体の一部にマーカを付けた前記使用者が対象物を打つ動作を複数回観測し、各動作について、前記マーカの位置を取得することと、
各スポーツ打具について、前記取得したマーカの位置の標準偏差を算出することと、
各スポーツ打具について、スポーツ打具が対象物に接触する前後の所定の時間における前記標準偏差の総和を算出し、前記標準偏差の総和に基づいて、各スポーツ打具の前記使用者に対する適正を判定することとを含むスポーツ打具判定方法が提供される。
【0013】
第2の態様において、前記所定の時間を、スポーツ打具が対象物に接触する前後の時刻T1から時刻T2までの時間とし、時刻T1と時刻T2の間の時刻tにおける前記標準偏差をVf(t)としたとき、前記標準偏差の総和であるVgは、以下の式(2)によって求め得る。
【0014】
第2の態様において、前記位置取得部は、前記マーカの、地面からの垂直方向の位置、及び/又はスポーツ打具によって打たれた対象物の移動方向と直交する方向の位置を取得してもよい。
【0015】
第2の態様において、前記マーカは、前記使用者の利き腕の手首又は肘に付けられてもよい。
【0016】
第2の態様において、前記スポーツ打具は、バドミントンラケット、ゴルフクラブ、又はテニスラケットであってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の第1及び第2の態様によれば、スポーツ打具を使用する使用者にとって好適なスポーツ打具を、バラツキが少ない指標に基づいて判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係るスポーツ打具適正判定システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】バドミントンのプレイヤと、プレイヤの身体の一部に取り付けられたマーカとを示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るスポーツ打具適正判定システムによる適正判定方法を示すフローチャートである。
【
図4】実験協力者1のスマッシュ動作におけるマーカMの垂直位置の標準偏差を時系列に示すグラフであり、
図4(a)はラケットAを使用した場合、
図4(b)はラケットBを使用した場合、
図4(c)はラケットCを使用した場合を示す。
【
図5】実験協力者2のスマッシュ動作におけるマーカMの垂直位置の標準偏差を時系列に示すグラフであり、
図5(a)はラケットAを使用した場合、
図5(b)はラケットBを使用した場合、
図5(c)はラケットCを使用した場合を示す。
【
図6】実験協力者3のスマッシュ動作におけるマーカMの垂直位置の標準偏差を時系列に示すグラフであり、
図6(a)はラケットAを使用した場合、
図6(b)はラケットBを使用した場合、
図6(c)はラケットCを使用した場合を示す。
【
図7】実験協力者4のスマッシュ動作におけるマーカMの垂直位置の標準偏差を時系列に示すグラフであり、
図7(a)はラケットAを使用した場合、
図7(b)はラケットBを使用した場合、
図7(c)はラケットCを使用した場合を示す。
【
図8】実験協力者5のスマッシュ動作におけるマーカMの垂直位置の標準偏差を時系列に示すグラフであり、
図8(a)はラケットAを使用した場合、
図8(b)はラケットBを使用した場合、
図8(c)はラケットCを使用した場合を示す。
【
図9】実験協力者6のスマッシュ動作におけるマーカMの垂直位置の標準偏差を時系列に示すグラフであり、
図9(a)はラケットAを使用した場合、
図9(b)はラケットBを使用した場合、
図9(c)はラケットCを使用した場合を示す。
【
図10】実験協力者7のスマッシュ動作におけるマーカMの垂直位置の標準偏差を時系列に示すグラフであり、
図10(a)はラケットAを使用した場合、
図10(b)はラケットBを使用した場合、
図10(c)はラケットCを使用した場合を示す。
【
図11】実験協力者8のスマッシュ動作におけるマーカMの垂直位置の標準偏差を時系列に示すグラフであり、
図11(a)はラケットAを使用した場合、
図11(b)はラケットBを使用した場合、
図11(c)はラケットCを使用した場合を示す。
【
図12】実験協力者9のスマッシュ動作におけるマーカMの垂直位置の標準偏差を時系列に示すグラフであり、
図12(a)はラケットAを使用した場合、
図12(b)はラケットBを使用した場合、
図12(c)はラケットCを使用した場合を示す。
【
図13】実験協力者10のスマッシュ動作におけるマーカMの垂直位置の標準偏差を時系列に示すグラフであり、
図13(a)はラケットAを使用した場合、
図13(b)はラケットBを使用した場合、
図13(c)はラケットCを使用した場合を示す。
【
図14】実験協力者11のスマッシュ動作におけるマーカMの垂直位置の標準偏差を時系列に示すグラフであり、
図14(a)はラケットAを使用した場合、
図14(b)はラケットBを使用した場合、
図14(c)はラケットCを使用した場合を示す。
【
図15】実験協力者毎に、各ラケットを使用した場合の標準偏差の総和をまとめた表である。
【
図16】各実験協力者に対して行ったアンケート調査における質問項目をまとめた表である。
【
図17】各実験協力者に対して行ったアンケート調査における評価基準を示す図である。
【
図18】実験協力者1の評価結果を示すレーダチャートである。
【
図19】実験協力者2の評価結果を示すレーダチャートである。
【
図20】実験協力者3の評価結果を示すレーダチャートである。
【
図21】実験協力者4の評価結果を示すレーダチャートである。
【
図22】実験協力者5の評価結果を示すレーダチャートである。
【
図23】実験協力者6の評価結果を示すレーダチャートである。
【
図24】実験協力者7の評価結果を示すレーダチャートである。
【
図25】実験協力者8の評価結果を示すレーダチャートである。
【
図26】実験協力者9の評価結果を示すレーダチャートである。
【
図27】実験協力者10の評価結果を示すレーダチャートである。
【
図28】実験協力者11の評価結果を示すレーダチャートである。
【
図29】実験協力者毎に各ラケットに対する評価の合計をまとめた表である。
【
図30】実験協力者毎に各ラケットを使用した場合のシャトルの命中数をまとめた表である。
【
図31】実験協力者1のスマッシュ動作におけるマーカMの垂直方向の速度を時系列に示すグラフである。
【
図32】実験協力者2のスマッシュ動作におけるマーカMの垂直方向の速度を時系列に示すグラフである。
【
図33】実験協力者3のスマッシュ動作におけるマーカMの垂直方向の速度を時系列に示すグラフである。
【
図34】実験協力者4のスマッシュ動作におけるマーカMの垂直方向の速度を時系列に示すグラフである。
【
図35】実験協力者5のスマッシュ動作におけるマーカMの垂直方向の速度を時系列に示すグラフである。
【
図36】実験協力者6のスマッシュ動作におけるマーカMの垂直方向の速度を時系列に示すグラフである。
【
図37】実験協力者7のスマッシュ動作におけるマーカMの垂直方向の速度を時系列に示すグラフである。
【
図38】実験協力者8のスマッシュ動作におけるマーカMの垂直方向の速度を時系列に示すグラフである。
【
図39】実験協力者9のスマッシュ動作におけるマーカMの垂直方向の速度を時系列に示すグラフである。
【
図40】実験協力者10のスマッシュ動作におけるマーカMの垂直方向の速度を時系列に示すグラフである。
【
図41】実験協力者11のスマッシュ動作におけるマーカMの垂直方向の速度を時系列に示すグラフである。
【
図42】手首にマーカMを取り付けてスマッシュ動作を行った場合のマーカMの垂直位置の標準偏差を時系列に示すグラフであり、
図42(a)はラケットAを使用した場合、
図42(b)はラケットBを使用した場合、
図42(c)はラケットCを使用した場合を示す。
【
図43】グリップの上端部付近にマーカMを取り付けてスマッシュ動作を行った場合のマーカMの垂直位置の標準偏差を時系列に示すグラフであり、
図43(a)はラケットAを使用した場合、
図43(b)はラケットBを使用した場合、
図43(c)はラケットCを使用した場合を示す。
【
図44】手首にマーカMを取り付けた場合のラケット毎の標準偏差の総和と、グリップの上端部付近にマーカMを取り付けた場合のラケット毎の標準偏差の総和をまとめた表である。
【
図45】実験協力者1のゴルフスイング動作におけるマーカMの垂直位置の標準偏差を時系列に示すグラフであり、
図45(a)はドライバAを使用した場合、
図45(b)はドライバBを使用した場合を使用した場合を示す。
【
図46】実験協力者2のゴルフスイング動作におけるマーカMの垂直位置の標準偏差を時系列に示すグラフであり、
図46(a)はドライバAを使用した場合、
図46(b)はドライバBを使用した場合、
図46(c)はドライバCを使用した場合を示す。
【
図47】実験協力者3のゴルフスイング動作におけるマーカMの垂直位置の標準偏差を時系列に示すグラフであり、
図47(a)はドライバAを使用した場合、
図47(b)はドライバBを使用した場合、
図47(c)はドライバCを使用した場合を示す。
【
図48】実験協力者毎に、各ドライバを使用した場合の標準偏差の総和をまとめた表である。
【
図49】実験協力者1のゴルフスイング動作におけるマーカMの垂直位置の標準偏差を時系列に示すグラフであり、
図49(a)はアイアンAを使用した場合、
図49(b)はアイアンBを使用した場合、
図49(c)はアイアンCを使用した場合を示す。
【
図50】実験協力者2のゴルフスイング動作におけるマーカMの垂直位置の標準偏差を時系列に示すグラフであり、
図50(a)はアイアンAを使用した場合、
図50(b)はアイアンBを使用した場合、
図50(c)はアイアンCを使用した場合を示す。
【
図51】実験協力者3のゴルフスイング動作におけるマーカMの垂直位置の標準偏差を時系列に示すグラフであり、
図51(a)はアイアンAを使用した場合、
図51(b)はアイアンBを使用した場合、
図51(c)はアイアンCを使用した場合を示す。
【
図52】実験協力者毎に、各アイアンを使用した場合の標準偏差の総和をまとめた表である。
【
図53】実験協力者1のテニスストローク動作におけるマーカMの垂直位置の標準偏差を時系列に示すグラフであり、
図53(a)はテニスラケットCを使用した場合、
図53(b)はテニスラケットDを使用した場合を示す。
【
図54】実験協力者2のテニスストローク動作におけるマーカMの垂直位置の標準偏差を時系列に示すグラフであり、
図54(a)はテニスラケットCを使用した場合、
図54(b)はテニスラケットDを使用した場合を示す。
【
図55】実験協力者3のテニスストローク動作におけるマーカMの垂直位置の標準偏差を時系列に示すグラフであり、
図55(a)はテニスラケットCを使用した場合、
図55(b)はテニスラケットDを使用した場合を示す。
【
図56】実験協力者毎に、各テニスラケットを使用した場合の標準偏差の総和をまとめた表である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0020】
本発明の実施形態であるスポーツ打具判定システム1は、ボール等の対象物を打つ各種スポーツで使用されるスポーツ打具の使用者に対する適正を判定するために利用することができる。以下では、長さ、重量、及び重心位置の少なくとも一つが異なる複数本のバドミントンラケットについて、プレイヤに対していずれのラケットが適正かを選定する場合を例に挙げて説明する。
【0021】
図1に示されるように、スポーツ打具判定システム1は、主に、プレイヤがバドミントンのシャトルを打つ動作を撮影するモーションキャプチャカメラ2と、モーションキャプチャカメラ2で撮影した画像に基づいて、プレイヤに対するラケットの適正を判定する適正判定装置3とを備える。
【0022】
図2に示されるように、モーションキャプチャカメラ2で撮影するにあたり、プレイヤ10がラケット20を握る利き腕(
図2では右腕)の手首には、予めマーカMが取り付けられている。そして、プレイヤ10の正面上方から落下するシャトル40をプレイヤ10がラケット20でスマッシュする動作(以下、「スマッシュ動作」という。)を、モーションキャプチャカメラ2によって撮影する。本実施形態では、複数本の異なるラケット20それぞれについて、プレイヤ10に対する適正を判定するため、各ラケット20について複数回のスマッシュ動作をモーションキャプチャカメラ2で撮影する。
【0023】
適正判定装置3は、コンピュータで読取可能な記録媒体に格納された適正判定プログラムをコンピュータにインストールすることにより実現される。適正判定プログラムは、モーションキャプチャカメラ2によって撮影された画像データに基づいて、複数本のラケット20のプレイヤ10に対する適正を判定するためのソフトウェアである。適正判定プログラムは、適正判定装置に後述の動作を実行させる。
【0024】
図1に示されるように、適正判定装置3は、主に、インターフェース31、記憶部32、制御部33、入力部34、及び表示部35を備え、これらはバス36を介して互いに接続されている。インターフェース31はモーションキャプチャカメラ2等の外部機器と接続するためのインターフェースである。記憶部32は、内蔵又は外付けのハードディスク等によって構成され、適正判定プログラムやモーションキャプチャカメラ2で撮影した画像データ等が記憶される。制御部33は、CPU、ROM及びRAM等から構成されており、記憶部32から適正判定プログラムを読み出して実行することにより、位置取得部33a、標準偏差算出部33b、及び適正判定部33cとして機能する。入力部34は、適正判定装置3に対するユーザからの操作を受け付けるユーザインターフェースであり、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル等を含む。表示部35は、各種情報を表示するためのユーザインターフェースであり、液晶ディスプレイ等にし得る。
【0025】
次に、スポーツ打具判定システム1における適正判定方法について、
図3のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0026】
まず、ステップS1では、複数本のラケット20の各々について、プレイヤ10の複数回のスマッシュ動作をモーションキャプチャカメラ2で撮影する。本実施形態では、プレイヤ10がラケット20によってシャトル40を的確に捉え、プレイヤ10が意図した方向にシャトル40が飛んだ場合のスマッシュ動作を撮影対象とする。このため、シャトル40がラケット20の適切な箇所に当たらなかった場合や空振りした場合の動作は撮影対象には含まれない。また、各スマッシュ動作については、プレイヤ10がラケット20のテイクバック動作を開始した時点から、シャトル40を打ち終わった時点までを撮影対象とする。なお、複数本のラケット20の適正を公平に比較するためには、撮影対象とするスマッシュ動作の回数を複数本のラケット20の間で統一しておくことが望ましい。そして、モーションキャプチャカメラ2で撮影された画像データを、ラケット20ごとに区分けした状態で、適正判定装置3の記憶部32に記憶させる。
【0027】
ステップS2では、制御部33の位置取得部33aが、記憶部32に記憶されている画像データを解析することにより、プレイヤ10の利き腕の手首に取り付けられたマーカMの位置を取得する。具体的には、まず、一本目のラケット20を使用した一回目のスマッシュ動作について、マーカMの地面からの垂直方向の位置(以下、「マーカMのZ位置」ともいう。)をサンプリング時刻毎に取得し、記憶部32に記憶させる。ここで、マーカMのZ位置は、スマッシュ動作時におけるプレイヤ10の手首の地面からの高さを表している。そして、位置取得部33aは、一本目のラケット20を使用した二回目以降のスマッシュ動作についても、一回目のスマッシュ動作の場合と同様の処理を繰り返す。これにより、記憶部32には、一本目のラケット20を使用したスマッシュ動作におけるマーカMのZ位置のデータが、サンプリング時刻毎に複数回分記憶される。さらに、位置取得部33aは、二本目以降のラケット20についても、一本目のラケット20と同様の処理を繰り返す。これにより、記憶部32には、二本目以降のラケット20についても、スマッシュ動作におけるマーカMのZ位置のデータが、サンプリング時刻毎に複数回分記憶される。
【0028】
ステップS3では、制御部33の標準偏差算出部33bが、各ラケット20について、サンプリング時刻毎のマーカMのZ位置のバラツキ、即ち標準偏差を算出する。具体的には、まず、一本目のラケット20について、記憶部32に記憶されているマーカMのZ位置のデータを複数回分読み出し、サンプリング時刻毎にマーカMのZ位置の標準偏差を算出し、算出した標準偏差の値を記憶部32に記憶させる。そして、標準偏差算出部33bは、二本目以降のラケット20についても、一本目のラケット20と同様の処理を繰り返す。これにより、二本目以降のラケット20についても、マーカMのZ位置の標準偏差の値がサンプリング時刻毎に記憶される。
【0029】
ステップS4では、制御部33の適正判定部33cが、マーカMのZ位置の標準偏差の値に基づいて、各ラケット20のプレイヤ10に対する適正を判定する。具体的には、まず、一本目のラケット20について、ラケット20がシャトル40に接触するインパクト前後の所定の時間における標準偏差の総和を算出する。例えば、所定の時間を、インパクト前後のサンプリング時刻T1からサンプリング時刻T2までの時間とし、サンプリング時刻T1とサンプリング時刻T2の間のサンプリング時刻tにおける標準偏差をVf(t)としたとき、標準偏差の総和Vgは、以下の式(1)によって算出することができる。
このようにして算出された標準偏差の総和Vgは、一本目のラケット20のプレイヤ10に対する適正を判定するための材料として、記憶部32に記憶される。そして、適正判定部33cは、二本目以降のラケット20についても一本目のラケット20と同様の処理を繰り返す。これにより、二本目以降のラケット20についても、プレイヤ10に対する適正を判定するための材料としての標準偏差の総和Vgが、記憶部32に記憶される。この標準偏差の総和Vgは、サンプリング時刻T1からT2の間におけるプレイヤ10の手首の軌跡のブレ幅或いはバラツキとみなすこともできる。
【0030】
さらに、適正判定部33cは、各ラケット20について、標準偏差のVgを所定の閾値と比較することにより、プレイヤ10に対する適正を判定する。例えば、所定の閾値をTh1、Th2(Th1<Th2)としたとき、標準偏差の総和Vgが閾値Th1未満であれば、スマッシュ動作時における手首の高さ位置のブレが小さく、プレイヤ10の手首は毎回ほぼ同じ軌跡を描くため、プレイヤ10に対する適正が高いと判定する。一方、標準偏差の総和Vgが閾値Th2を超えていれば、スマッシュ動作時における手首の高さ位置のブレが大きく、プレイヤ10に対する適正が低いと判定する。標準偏差の総和Vgが閾値Th1以上閾値Th2以下の場合は、スマッシュ動作時における手首の高さ位置のブレは中程度であり、プレイヤ10に対する適正も中程度と判定する。
【0031】
そしてステップS5では、制御部33が、各ラケット20についての適正判定部33cによる判定結果を、表示部35に表示する。
【0032】
以上説明したように、本発明の実施形態であるスポーツ打具判定システム1では、各ラケット20について、プレイヤ10の複数回のスマッシュ動作をモーションキャプチャカメラ2で撮影し(S1)、撮影した画像データを解析することにより、プレイヤ10の手首につけられたマーカMのZ位置を取得する(S2)。そして、サンプリング時刻毎にマーカMのZ位置の標準偏差を算出し(S3)、算出した標準偏差の所定時間における総和Vgに基づいてプレイヤ10に対する適正を判定し(S4)、判定結果を表示部35に表示する。このため、判定結果を見たプレイヤ10は、各ラケット20について、スマッシュ動作における手首の高さ位置や軌跡のブレの大小を判断することができ、プレイヤ10にとって好適なラケット20を選択するのに役立てることができる。
【0033】
[変形例]
上記実施形態では、バドミントンラケット20の適正を判定するため、プレイヤ10の利き腕の手首にマーカMを取り付けたが、マーカMを取り付ける位置は手首に限られず、スポーツ打具の種類や分析対象とする動作に応じて、観測のし易さ、ブレの生じ易さ等を考慮し、プレイヤ10の体の適切な部位にマーカMを取り付ければよい。また、マーカMの取り付けは利き腕に限らず、逆の腕も打具を握るスポーツ、例えば、ゴルフ、野球においては、利き腕と逆の腕に取り付けてもよい。
【0034】
また、上記実施形態では、プレイヤ10の利き腕に手首に取り付けられたマーカMの垂直方向の位置の標準偏差を算出し、その総和を使って各ラケット20の適正を判定したが、各ラケット20の適正を判定するために用いる指標はこれに限られない。例えば、マーカM垂直方向の位置データに対して微分処理を施すことにより垂直方向の速度データを取得し、垂直方向の速度の標準偏差を使って各ラケット20の適正を判定してもよい。
【0035】
上記実施形態では、スポーツ打具判定システム1を、バドミントンラケットのプレイヤに対する適正を判定するために利用したが、スポーツ打具判定システム1は、バドミントン以外のスポーツに使用される打具についても利用することができる。例えば、ゴルフクラブ、テニスラケット、バット等の打具のプレイヤに対する適正を判定するためにも利用することができる。
【0036】
上記実施形態では、利き腕の手首にマーカMを取り付けたプレイヤ10のスマッシュ動作をモーションキャプチャカメラ2で撮影し、撮影した画像を解析することにより、マーカMのZ位置を取得していたが、これには限られない。例えば、プレイヤ10の利き腕の手首に加速度センサを取り付け、スマッシュ動作時の加速度センサからの出力に積分処理等を施すことにより、プレイヤ10の手首の地面からの高さ位置を取得してもよい。この場合、スマッシュ動作を撮影する必要はないため、モーションキャプチャカメラ2やステップS1は不要となる。
【0037】
上記実施形態では、ステップS1において、プレイヤ10の利き腕の手首に取り付けられたマーカMの垂直方向の位置を取得し、ステップS2において、マーカMの垂直方向の位置の標準偏差を算出したが、これには限られない。例えば、マーカMの、垂直方向の位置ではなく、ラケット20によって打たれたシャトル40の移動方向と直交する方向の位置を取得し、この位置データを用いてステップS2以降の処理を実行してもよい。或いは、マーカMの垂直方向の位置データとシャトル40の移動方向と直交する方向の位置データの両方を取得し、両者に対してステップS2以降の処理を実行してもよい。
【0038】
上記実施形態における適正判定方法では、ステップ毎に複数本のラケット20全てについて処理を行っていたが、ラケット20毎にステップS1〜ステップS5を繰り返してもよい。
【0039】
次に、上記実施形態及びその変形例の有効性の検証結果について説明する。
【0040】
<適正判定結果とプレイヤの嗜好との相関>
上記実施形態と同様に標準偏差の総和に基づいて判定した各ラケット20の適正と、プレイヤ10の各ラケット20に対する嗜好との相関について検証した。具体的には、実験協力者11名の利き腕の肘にマーカMを取り付け、各実験協力者に、長さ、重量、及び重心位置の少なくとも一つが異なる3本のバドミントンラケットA〜Cを使ってそれぞれ5回ずつスマッシュ動作を行ってもらい、それらのスマッシュ動作をモーションキャプチャカメラ2(OptiTrack社製Flex3)で撮影した。そして、上記実施形態と同様に、サンプリング時刻毎にマーカMのZ位置の標準偏差を算出した。この結果を
図4〜14に示す。
図4〜14は、各実験協力者のマーカMのZ位置の平均値±標準偏差の時刻歴を示しており、各図において、(a)、(b)、(c)はそれぞれ、ラケットAを使用した場合、ラケットBを使用した場合、ラケットCを使用した場合を示している。そして、各ラケットについて、上記実施形態と同様に、テイクバック動作終了時(各図における1.5秒)からインパクト時(各図における2秒)までのマーカMのZ位置の標準偏差の総和を算出した。この結果を
図15に示す。
図15においては、実験協力者毎に、標準偏差の総和が最も小さかったラケット、即ち、3本のラケットのうちその実験協力者に対する適正が最も高いと判定されるラケットの標準偏差の総和値の欄にハッチングが施されている。
【0041】
さらに、各実験協力者に対して、3本のラケットA〜Cのスマッシュ動作時の打感について、アンケート調査を行った。質問項目については、評価グリッド法により導出した、
図16に示す20項目を用いた。
図17に示すように評価は7段階で行われ、ラケットAを基準にしてラケットBとラケットCをそれぞれ評価してもらった。そして、良い評価につながる方向を7としてアンケート調査結果をチャートにまとめたものが、
図18〜28に示すレーダチャートである。なお、
図18〜28の各チャートにおいて周囲に示されている数値は、
図16の質問項目番号を意味する。そして、20項目の評価の合計をラケットBとラケットCについて求めた。この結果を
図29に示す。なお、今回のアンケート調査では、ラケットAを基準としてラケットBとラケットCを評価しているため、ラケットAの評価の合計は、4×20=80となる。
図29においても、実験協力者毎に、評価の合計が最も高かったラケットの評価の合計値の欄にハッチングが施されている。
【0042】
図15と
図29とを比較すると、11名の全ての実験協力者において、適正が最も高いと判定されたラケットとアンケート調査による評価が最も高かったラケットとが一致していた。つまり、上記実施形態における適正判定方法によって判定されたラケットの適正と、ラケットを使用する使用者の嗜好とは相関が非常に高いことが認められた。
【0043】
<適正判定結果と実際のプレイへの影響との相関>
次に、上記実施形態と同様に標準偏差の総和に基づいて判定した各ラケット20の適正と、実際のプレイへの影響との相関について検証した。具体的には、上記の検証と同じラケットA〜Cを使って、同じ実験協力者11名に、各ラケットにつき18回ずつ的を狙ってスマッシュ動作を行ってもらい、的に命中した回数を測定した。なお、的は、バドミントン競技規則に従い、ネットと同じ高さである1.55mの場所に設置した。各実験協力者の的への命中数をラケット毎にまとめたものが、
図30である。
図30に示されるように、実験協力者1、実験協力者4、及び実験協力者7については、いずれのラケットを使用した場合でも18回命中しており、命中数に違いは生じなかったが、他の実験協力者については、
図15においてハッチングが施されている欄のラケット、即ち、その実験協力者に対する適正が最も高いと判定されたラケットを使用した場合、命中数が最も多くなっていることが確認された。つまり、上記実施形態における適正判定方法によって判定された適正と、的への命中数とは相関が高いことが認められた。
【0044】
さらに、上記の検証と同じラケットA〜Cを使って、同じ実験協力者11名に、各ラケットにつき1回ずつスマッシュ動作を行ってもらい、各実験協力者の手首に取り付けられたマーカMの垂直方向の速度を算出した。なお、マーカMの垂直方向の速度は、上記の実施形態と同様にスマッシュ動作の画像を解析し、サンプリング時刻毎に取得したマーカMのZ位置に基づいて算出した。この結果を
図31〜41に示す。
図31〜41から、全ての実験協力者において、インパクト後(2秒〜2.1秒の間)に、3本のラケットA〜Cの間でマーカMの垂直方向の速度に違いが生じていることが確認できた。そして、実験協力者3及び実験協力者8を除き、
図15においてハッチングが施されている欄のラケット、即ち、その実験協力者に対する適正が最も高いと判定されたラケットを使用した場合に、マーカMの垂直方向の最大速度が得られていることが確認できた。このことから、上記実施形態における適正判定方法によって適正が高いと判定されたラケットでは、スイングスピードが速く、より鋭いスマッシュが打てていると考えられる。
【0045】
<マーカMの取り付け位置>
さらに、マーカMをプレイヤ10の体の一部に取り付けた場合と、プレイヤ10が使用するラケット20に取り付けた場合とで、マーカMのZ位置の標準偏差の総和にどのような相違が生じるか検証した。具体的には、長さ、重量、及び重心位置の少なくとも一つが異なる3本のバドミントンラケットA〜Cを用意し、各ラケットを使って1名の実験協力者にスマッシュ動作を行ってもらった。そして、各ラケットについて、上記実施形態と同様にマーカMを実験協力者の手首に取り付けた場合のスマッシュ動作と、マーカMをラケットのグリップの上端部付近に取り付けた場合のスマッシュ動作とをそれぞれ5回ずつ、モーションキャプチャカメラ2(OptiTrack社製Flex3)で撮影した。そして、上記実施形態と同様に、サンプリング時刻毎にマーカMのZ位置の標準偏差を算出した。この結果を
図42及び
図43に示す。
図42は、マーカMを手首に取り付けた場合のマーカMのZ位置の平均値±標準偏差の時刻歴を示しており、
図43は、マーカMをグリップの上端部付近に取り付けた場合のマーカMのZ位置の平均値±標準偏差の時刻歴を示している。また、
図42及び
図43において、(a)、(b)、(c)はそれぞれ、ラケットAを使用した場合、ラケットBを使用した場合、ラケットCを使用した場合を示している。そしてさらに、テイクバック動作終了時(
図42、43の各図における1.5秒)からインパクト時(
図42、43の各図における2秒)までの標準偏差の総和を上記実施形態と同様に算出した。この結果を
図44に示す。
【0046】
図44に示されるように、ラケットA〜ラケットCのいずれのラケットにおいても、マーカMを手首に取り付けた場合の方が、マーカMをラケットのグリップの上端部付近に取り付けた場合よりも標準偏差の総和の値が小さかった。つまり、マーカMのZ位置のバラツキが少なかった。また、マーカMを手首に取り付けた場合には、ラケットA〜Cの標準偏差の和で最大0.7程度の差が生じている(ラケットAとラケットB)のに対して、マーカMをラケットに取り付けた場合には、ラケットA〜Cの標準偏差の和で最大でも0.1程度の差しか生じていない。それ故、マーカMをラケットに取り付けた場合には、ラケットA〜Cの適正の判定が容易ではない。これは、マーカMをグリップの上端部付近に取り付けた場合、手首に取り付けた場合よりも、グリップの握り方の強弱、握り位置の違いによるインパクト時の衝撃の相違による影響が加わったためと考えられる。この結果から、上記実施形態のようにマーカMを手首に取り付けた場合の方が、マーカMをラケットのグリップの上端部付近に取り付けた場合よりも、ラケットの適正を判断し易いと言える。さらに、上記1名の実験協力者に対して上記20項目についてのアンケート調査を行い、各質問項目について7段階で評価してもらったところ、評価の高い順にラケットA、ラケットC、ラケットBとなった。この順位は、マーカMを手首に取り付けた場合の標準偏差の総和の小さい順(ラケットA<ラケットC<ラケットB)、即ち、上記1名の実験協力者に対する適正が高いと判定される順位と一致したが、マーカMをラケットのグリップの上端部付近に取り付けた場合の標準偏差の総和の小さい順(ラケットC<ラケットB<ラケットA)とは一致しなかった。
【0047】
<ゴルフクラブへの適用性>
実験協力者3名の利き腕の肘にマーカMを取り付け、各実験協力者に、異なる3本のドライバ(ゴルフクラブ)A〜Cを使ってそれぞれ5回ずつスイング動作を行ってもらい、モーションキャプチャカメラ2(OptiTrack社製Flex3)で撮影した。そして、上記実施形態と同様に、サンプリング時刻毎にマーカMのZ位置の標準偏差を算出した。この結果を
図45〜47に示す。
図45〜47は、各実験協力者のマーカMのZ位置の平均値±標準偏差の時刻歴を示しており、各図において、(a)、(b)、(c)はそれぞれ、ドライバAを使用した場合、ドライバBを使用した場合、ドライバCを使用した場合を示している。そして、各ドライバについて、上記実施形態と同様に、テイクバック動作終了時(各図における1.6秒)からインパクト時(各図における2秒)までのマーカMのZ位置の標準偏差の総和を算出した。この結果を
図48に示す。さらに、同じ実験協力者3名に、異なる3本の6番アイアン(ゴルフクラブ)A〜Cを使って、ドライバA〜Cと同様のスイング動作を行ってもらい、マーカMのZ位置の標準偏差を算出した。この結果を
図49〜51に示す。また、マーカMのZ位置の標準偏差の総和を算出した。この結果を
図52に示す。
図48及び52においては、実験協力者毎に、標準偏差の総和が最も小さかったゴルフクラブ、即ち、その実験協力者に対する適正が最も高いと判定されるゴルフクラブの標準偏差の総和値の欄にハッチングが施されている。そして、各実験協力者に対して上記のバドミントンラケットの場合と同様のアンケート調査を行い、各ゴルフクラブについて評価してもらったところ、適正が最も高いと判定されたゴルフクラブとアンケート調査による評価が最も高かったゴルフクラブとが一致していることが確認された。つまり、ゴルフクラブにおいても、上記実施形態における適正判定方法によって判定された適正と、使用者の嗜好とは相関が非常に高いことが認められた。
【0048】
<テニスラケットへの適用性>
実験協力者3名の利き腕の手首にマーカMを取り付け、各実験協力者に、異なる2本のテニスラケットC、Dを使ってそれぞれ5回ずつストローク動作を行ってもらい、モーションキャプチャカメラ2(OptiTrack社製Flex3)で撮影した。そして、上記実施形態と同様に、サンプリング時刻毎にマーカMのZ位置の標準偏差を算出した。この結果を
図53〜55に示す。
図53〜55は、各実験協力者のマーカMのZ位置の平均値±標準偏差の時刻歴を示しており、各図において、(a)、(b)はそれぞれ、テニスラケットCを使用した場合、テニスラケットDを使用した場合を示している。そして、各テニスラケットについて、インパクト前後の0.2秒間(各図の0.4秒から0.6秒まで)におけるマーカMのZ位置の標準偏差の総和を算出した。この結果、
図56に示すように、いずれの実験協力者においても、テニスラケットCの標準偏差の総和がテニスラケットDよりも小さかった。そして、各実験協力者に対して上記のバドミントンラケットの場合と同様のアンケート調査を行い、テニスラケットCとテニスラケットDについて評価してもらったところ、いずれの実験協力者においてもテニスラケットCの方がテニスラケットDよりも評価が高いことが確認された。つまり、適正が高いと判定されたテニスラケットとアンケート調査による評価が高かったテニスラケットとが一致していることが確認された。このことから、テニスラケットにおいても、上記実施形態における適正判定方法によって判定された適正と、使用者の嗜好とは相関が非常に高いことが認められた。