特許第6804021号(P6804021)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6804021
(24)【登録日】2020年12月4日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】梱包容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/113 20060101AFI20201214BHJP
【FI】
   B65D81/113 140A
   B65D81/113 130A
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-161095(P2015-161095)
(22)【出願日】2015年8月18日
(65)【公開番号】特開2017-39504(P2017-39504A)
(43)【公開日】2017年2月23日
【審査請求日】2018年6月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000039
【氏名又は名称】特許業務法人アイ・ピー・ウィン
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 泰輔
(72)【発明者】
【氏名】大澤 俊浩
(72)【発明者】
【氏名】小勝 則次
【審査官】 植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−255276(JP,A)
【文献】 特開2004−299713(JP,A)
【文献】 特開2005−186988(JP,A)
【文献】 実開昭54−041862(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 57/00−59/08
B65D 81/00−81/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
梱包容器本体と、
前記梱包容器本体と梱包対象物との間に配置されている緩衝材であって、前記梱包対象物と接触する面を有する一つの変形部と、前記梱包容器本体に接触する面を有する他の変形部とを有し、前記一つの変形部の前記梱包対象物と接触する面と前記他の変形部の前記梱包容器本体に接触する面とが力の加える方向に互いに重なるように前記一つの変形部と前記他の変形部が配置され、前記一つの変形部が前記梱包対象物に接触する面の合計面積が前記梱包対象物に対向して前記梱包対象物に非接触な面の合計面積よりも小さく、前記他の変形部が前記梱包容器本体に接触する面の面積が前記梱包容器本体に対向して前記梱包対象物に非接触な面の合計面積よりも小さく、前記一つの変形部と前記他の変形部とは前記方向に力が加えられたときの変形量が互いに異なる少なくとも1つの緩衝材と、
を有する梱包容器。
【請求項2】
前記一つの変形部と前記他の変形部とは、前記一つの変形部の前記梱包対象物と接触する面よりも前記他の変形部の前記梱包容器本体と接触する面の面積が小さい請求項1記載の梱包容器。
【請求項3】
前記一つの変形部と前記他の変形部とは、力が加えられる方向と交わる方向における断面積が、力が加えられる方向における前記梱包容器本体からの距離に応じて異なる請求項2記載の梱包容器。
【請求項4】
梱包容器本体と、
前記梱包容器本体と梱包対象物との間に配置されている緩衝材であって、前記梱包対象物と接触する面を有する一つの変形部と、前記梱包容器本体に接触する面を有する他の変形部とを有し、前記一つの変形部の前記梱包対象物と接触する面と前記他の変形部の前記梱包容器本体に接触する面とが力の加える方向に互いに重なるように前記一つの変形部と前記他の変形部が配置されていて、前記一つの変形部と前記他の変形部とは前記方向に力が加えられたときの変形量が互いに異なる少なくとも1つの緩衝材と、を有し、
前記一つの変形部と前記他の変形部とは、それぞれに硬さが異なる材料で形成されている梱包容器。
【請求項5】
前記一つの変形部と前記他の変形部とは、それぞれが塑性的に変形し、
前記緩衝材は、前記梱包容器本体に接触する接触部をさらに有する請求項1乃至4いずれか記載の梱包容器
【請求項6】
梱包容器本体と、
梱包作業者によって梱包対象物に対して押し付けられるようにして、前記梱包容器本体と梱包対象物との間に配置される緩衝材であって、前記梱包対象物と接触する面を有する一つの変形部と、前記梱包容器本体に接触する面を有する他の変形部とを有し、前記一つの変形部が前記梱包対象物に接触する面の合計面積が前記梱包対象物に対向して前記梱包対象物に非接触な面の合計面積よりも小さく、前記他の変形部が前記梱包容器本体に接触する面の合計面積が前記梱包容器本体に対向して前記梱包対象物に非接触な面の合計面積よりも小さく、前記一つの変形部よりも前記他の変形部の方が変形しやすい緩衝材と、
を有する梱包容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梱包容器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、外装箱内で被梱包物の周りに配される包装用クッションにおいて、弾性を有し、少なくとも2箇所で折り曲げ自在とされた部材を有することを特徴とする包装用クッションが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−151499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
緩衝材には、衝撃を十分に吸収することができる衝撃値の許容範囲があり、その許容範囲外における衝撃値である場合、緩衝材で衝撃を十分吸収しきれず梱包対象物に衝撃を与えることになる。
本発明は、力が加えられたときに変形量が同じ複数の変形部からなる緩衝材を用いた場合と比較して、梱包可能な梱包対象物の重量の幅を広げた梱包容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る本発明は、梱包容器本体と、前記梱包容器本体と梱包対象物との間に配置されている緩衝材であって、力の加えられる方向に互いに重なるように配置されていて、前記方向に力が加えられたときの変形量が互いに異なる複数の変形部からなる少なくとも1つの緩衝材と、を有する梱包容器である。
【0006】
請求項2に係る本発明は、前記複数の変形部は、力の加えられる方向と交わる方向の面積が互いに異なる請求項1記載の梱包容器である。
【0007】
請求項3に係る本発明は、前記複数の変形部は、力が加えられる方向と交わる方向における断面積が、力が加えられる方向における前記梱包容器本体からの距離に応じて異なる請求項2記載の梱包容器である。
【0008】
請求項4に係る本発明は、前記複数の変形部は、力の加えられる方向と交わる方向の面積が最も小さい1つが、前記梱包容器本体の外側の面と交わる方向において前記梱包容器本体に最も近い位置に配置されている請求項2又は3に記載の梱包容器である。
【0009】
請求項5に係る本発明は、前記複数の変形部は、それぞれに硬さが異なる材料で形成されている請求項1記載の梱包容器である。
【0010】
請求項6に係る本発明は、前記複数の変形部は、それぞれが塑性的に変形し、前記緩衝材は、前記梱包容器本体に接触する接触部をさらに有する請求項1乃至4いずれか記載の梱包容器である。
【0011】
請求項7に係る本発明は、梱包容器本体と、梱包作業者によって梱包対象物に対して押し付けられるようにして、前記梱包容器本体と梱包対象物との間に配置される緩衝材であって、前記梱包対象物に対して押し付けられる位置の少なくとも一部の位置が他の位置よりも変形しやすい緩衝材と、を有する梱包容器である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る本発明によれば、力が加えられたときに変形量が同じ複数の変形部からなる緩衝材を用いた場合と比較して、梱包可能な梱包対象物の重量の幅を広げた梱包容器を提供することができる。
【0013】
請求項2に係る本発明によれば、同じ材料で緩衝材を生成することができる。
【0014】
請求項3に係る本発明によれば、力が加えられる方向と交わる方向における断面積が、力が加えられる方向における前記梱包容器本体からの距離に応じて異ならない場合と比較して、梱包可能な梱包対象物の重量の幅を広げた梱包容器を提供することができる。
【0015】
請求項4に係る本発明によれば、複数の変形部の中の力の加えられる面積が最も小さい1つが力の加えられる方向において梱包容器本体に最も近い位置以外の位置に配置されている梱包容器と比較して、緩衝材を変形させにくくすることができる。
【0016】
請求項5に係る本発明によれば、複数の変形部のそれぞれが同じ材料で形成されている梱包容器と比較して、緩衝材の形状の制限を少なくすることができる。
【0017】
請求項6に係る本発明によれば、接触部を有しない梱包容器と比較して、梱包容器本体中における緩衝材の移動を生じにくくすることができる。
【0018】
請求項7に係る本発明によれば、梱包対象物に対して押し付けられる部分であって他の部分よりも変形しやすい部分を有しない梱包容器と比較して、緩衝材を梱包対象物に押し付ける際に生じる虞がある梱包対象物の破損を生じにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る梱包容器の断面を示す正面図である。
図2図1に示す梱包容器で梱包対象物を梱包する方法を説明する図である。
図3図1に示す梱包容器が有する下部緩衝材を示す斜視図である。
図4図3に示す下部緩衝材を示し、図4(a)は図3に示す下部緩衝材の平面図であり、図4(b)は図3に示す下部緩衝材の底面図である。
図5図3に示す下部緩衝材が衝撃を吸収する作用を説明するグラフである。
図6図1に示す梱包容器が有する右緩衝材と左緩衝材とを示す斜視図である。
図7図6に示す右緩衝材と左緩衝材と示す正面図である。
図8図3に示す下部緩衝材の第1の変形例を示す正面図である。
図9図3に示す下部緩衝材の第2の変形例を示す正面図である。
図10図3に示す下部緩衝材の第3の変形例を示す正面図である。
図11図10に示す下部緩衝材の第3の変形例の作用を説明し、図11(a)は比較例を用いた場合に梱包対象物に加わる力を説明する図であり、図11(b)は下部緩衝材の第3の変形例を用いた場合に梱包対象物に加わる力を説明する図である。
図12図6に示す左緩衝材と右緩衝材との第1の変形例を示す正面図である。
図13図6に示す左緩衝材と右緩衝材との第2の変形例を示す平面図である。
図14図6に示す左緩衝材と右緩衝材との第3の変形例を示し、図14(a)は右緩衝材の第3の変形例を示す右側面図であり、図14(b)は左緩衝材の第3の変形例を示す右側面図であり、図14(c)は、右緩衝材及び左緩衝材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。図1には本発明の実施形態に係る梱包容器10が示されている。梱包容器10は、梱包対象物900を梱包するためのものである。梱包対象物900としては、例えば電子写真方式やインクジェット方式等で画像を形成する画像形成装置、各種通信機器、各種電化製品等を例として挙げることができる。
【0021】
梱包対象物900は、外側の形状が同じであるものの重量が異なることがある。例えば、梱包対象物900が用紙に対して画像を形成する画像形成装置である場合、画像形成装置の外側の形状が同じであるものの、画像形成装置の機能の違いにより梱包対象物900の重量が異なることがある。例えば、用紙の両面に画像を形成することができる機能を有する画像形成装置は、同じ形状であって、用紙の片面にのみ画像を形成することができる画像形成装置よりも重量が大きい。
【0022】
また、梱包容器10が有する緩衝材(例えば、後述する下部緩衝材100)には、緩衝を十分に吸収することができる衝撃値に許容範囲があり、その許容範囲外における衝撃が梱包対象物900に加えられた場合、緩衝材で衝撃を十分に吸収しきれずに梱包対象物900に衝撃が与えられることになる。このため、梱包対象物900の外形が同じであっても、重力の違いから梱包対象物900に加わる衝撃値に違いがあり、この互いに異なる衝撃値が1つの緩衝材が吸収することができる許容範囲内に収まらない場合、それぞれの重量の梱包対象物900に用いる複数の緩衝材を設計し製造することが必要となる。このため、梱包容器10が有する緩衝材は、吸収することができる緩衝値の幅が広いものであることが望ましい。
【0023】
図1に示すように、梱包容器10は、梱包容器本体30と、下部緩衝材100、右緩衝材200R及び左緩衝材200Lとを有する。そして、梱包容器本体30は、下部梱包容器本体32と、上部梱包容器本体42とを有し、下部梱包容器本体32は、例えばダンボーから作られている。すなわち、下部梱包容器本体32は、例えば波状に加工した紙の裏表にそれぞれ他の紙を接着し、波状に加工した紙を2枚の紙で挟み込むようにした構造体から作られている。下部梱包容器本体32は、載置面910に載置した状態で用いられる。
【0024】
上部梱包容器本体42は、下部梱包容器本体32と同様に例えばダンボールから作られている。また、上部梱包容器本体42は、図1に示されているように、下部梱包容器本体32を上側から覆うように、下部梱包容器本体32に対して被せるようにして用いられる。
【0025】
下部緩衝材100、右緩衝材200R及び左緩衝材200Lは、梱包容器本体30と梱包対象物900との間に配置されている。また、この実施形態においては、下部緩衝材100、右緩衝材200R及び左緩衝材200Lとの3個の緩衝材が用いられているものの、緩衝材は少なくとも1つあれば良く、緩衝材を1つとすることができ、緩衝材を2つとすることができ、緩衝材を4個以上とすることができる。
【0026】
また、下部緩衝材100、右緩衝材200R及び左緩衝材200Lは、例えば発泡スチロール(気泡を含ませたポリスチレン)から作られていて、塑性的に変形することで梱包容器本体30の外部からの衝撃や振動を和らげ、梱包容器本体30の外部からの衝撃や振動を梱包対象物900に伝わりにくくしている。
【0027】
右緩衝材200Rは、右側の部分が上部梱包容器本体42の内壁面に接触し、左側の部分が梱包対象物900の右側の側面に接触するようにして、梱包容器本体30と梱包対象物900との間の位置に配置されている。また、左緩衝材200Lは、左側の部分が上部梱包容器本体42の内壁面に接触し、右側の部分が梱包対象物900の左側の側面に接触するようにして、梱包容器本体30と梱包対象物900との間の位置に配置されている。
【0028】
また、右緩衝材200Rは変形部210Rを有する。変形部210Rは、梱包容器本体30の外部から衝撃や振動が加えられた際に主として変形する部分であり、上部梱包容器本体42の内側の面に接触している。また、左緩衝材200Lは変形部210Lを有する。変形部210Lは、梱包容器本体30の外部から衝撃や振動が加えられた際に主として変形する部分であり、上部梱包容器本体42の内側の面に接触している。
【0029】
下部緩衝材100は、下部梱包容器本体32の上に載せられるようにして用いられている。また、下部緩衝材100は、下部梱包容器本体32を介し、重力方向における下側から載置面910により支えられている。また、下部緩衝材100は、梱包対象物900の重力方向における下側に配置されていて、梱包対象物900を重力方向における下側から支えている。
【0030】
また、下部緩衝材100は、上部変形部110R及び上部変形部110Lと、下部変形部120R及び下部変形部120Lとを有する。上部変形部110R、上部変形部110L、下部変形部120R及び下部変形部120Lは、梱包容器本体30の外部から衝撃や振動が加えられた際に主として変形する部分である。
【0031】
ここで、上部変形部110Rと下部変形部120Rとは、図1に矢印aで示す方向である梱包対象物900の荷重が加えられる方向において互いに重なるように配置されている。また、上部変形部110Lと下部変形部120Lとも、図1に矢印bで示す方向である梱包対象物900の荷重が加えれる方向に互いに重なるように配置されている。
【0032】
また、上部変形部110Rの上向きの面112Rと上部変形部110Lの上向きの面112Rとは梱包対象物900の底面に接触していて、下部緩衝材100の他の部分は梱包対象物900の底面に接触していない。このため、面112Rと面112Lとに梱包対象物900の全荷重が加えられることになる。
【0033】
また、下部変形部120Rの下向きの面122Rと下部変形部120Lの下向きの面122Lとは下部梱包容器本体32を介して載置面910に支えられていて、下部緩衝材100の他の部分は載置面910に支えられていない。このため、面122Rと面122Lとに梱包対象物900の全荷重が加えられることになる。
【0034】
下部緩衝材100は、先述のように、例えば発泡スチロールから形成されていて、全体が同じ材料から形成されている。このため、上部変形部110Rと下部変形部120Rとは、それぞれに同じ材料から形成されていることになる。また、上部変形部110Lと下部変形部120Lとも、それぞれに同じ材料から形成されていることになる。
【0035】
図2には、梱包容器10で梱包対象物900を梱包する方法が説明されている。図2に示されているように、梱包対象物900を梱包容器10で梱包するには、まず、下部梱包容器本体32を載置面910に載置し、下部梱包容器本体32に対して下部梱包容器本体32の上側から下部緩衝材100を嵌め込む。そして、下部梱包容器本体32に対して嵌め込まれた下部緩衝材100に対して、梱包対象物900を重力方向における上側から載置する。次に、下部梱包容器本体32に対して載置された梱包対象物900に対して、右緩衝材200Rを右側から押し付け、左緩衝材200Lを左側から押し付ける。
【0036】
そして、右緩衝材200Rと左緩衝材200Lとを梱包対象物900に対して押し付け続けつつ、梱包対象物900、右緩衝材200R及び左緩衝材200Lが上部梱包容器本体42の内側に配置された状態となるように、梱包対象物900、右緩衝材200R及び左緩衝材200Lに対して上部梱包容器本体42を上方から被せ、下部梱包容器本体32が上部梱包容器本体42の内側に嵌り込んだ状態となるように、上部梱包容器本体42を下側へと押し込む。以上のようにして、梱包対象物900が、梱包容器10により梱包される(図1を参照)。
【0037】
図3及び図4には、下部緩衝材100が示されている。図3及び図4に示されているように下部緩衝材100は、それぞれが四隅に配置され、それぞれが上下方向に伸びる辺130を有する。そして、これらの4個の辺を2つの平面の間に形成する8個の鉛直な平面132が梱包容器本体30に接触する接触部として用いられている。このように、8個の鉛直な平面132が梱包容器本体30の内側の部分に接触するため、上部変形部110R、上部変形部110L、下部変形部120R及び下部変形部120Lが塑性的変形しても、梱包容器本体30内における下部緩衝材100の移動が抑制される。
【0038】
図4(a)と図4(b)とを比較すると分かるように、下部変形部120Rの面122Rは、上部変形部110Rの面112Rよりも面積が小さい。そして、先述のように下部変形部120Rと上部変形部110Rとは荷重が加えられる方向において重なるように配置されている。このため、単位面積当たりに加えられる梱包対象物900の荷重は、面122Rが面112Rよりも大きくなる。
【0039】
そして、先述のように下部変形部120Rと上部変形部110Rとは同じ材料で形成されているため、下部変形部120Rと上部変形部110Rとを比較すると、下部変形部120Rが上部変形部110Rよりも変形しやすい。同様に、下部変形部120Lと上部変形部110Lとを比較すると、下部変形部120Lが上部変形部110Lよりも変形しやすい。このように、下部緩衝材100は、変形するために加えられる力が互いに異なる複数の変形部を有している。
【0040】
換言をすると、下部緩衝材100は、力が加えられときの変形量が互いに異なる複数の変形部を有している。より具体的には、下部緩衝材100は、力の加えられる方向である矢印a(図1を参照)方向に互いに重なるように配置されていて、矢印a方向に力が加えられたときの変形量が互いに異なる下部変形部120Rと上部変形部110Rとを有し、さらには、力の加えられる方向である矢印b(図1を参照)方向に互いに重なるように配置されていて、矢印b方向に力が加えられたときの変形量が互いに異なる下部変形部120Lと上部変形部110Lとを有している。
【0041】
また、下部変形部120Rと上部変形部110Rとは、力の加えられる方向である矢印a方向における面積が互いに異なる関係にあり、さらには、矢印a方向と交わる方向における面積が、矢印a方向における梱包容器本体30からの距離に応じて異なる関係にある。また、下部変形部120Lと上部変形部110Lとは、力の加えられる方向である矢印b方向における面積が互いに異なる関係にあり、さらには、矢印b方向と交わる方向における面積が、矢印b方向における梱包容器本体30からの距離に応じて異なる関係にある。
【0042】
また、上部変形部110Rと下部変形部120Rとでは、面112Rと面122Rとの面積とを比較して面積が小さいものに相当する下部変形部120Rが、梱包容器本体30の外側の面と交わる方向において、最も梱包容器本体30に近い位置に配置されている。また、上部変形部110Lと下部変形部120Lとでは、面112Lと面122Lとの面積とを比較して面積が小さいものに相当する下部変形部120Lが、梱包容器本体30の外側の面と交わる方向において、最も梱包容器本体30に近い位置に配置されている。このため、梱包容器本体30が破損したり変形したりしても、その影響を下部緩衝材が破損したり、変形したりしにくい。
【0043】
図5は、下部緩衝材100が衝撃や振動を吸収する作用を説明するグラフである。図5における横軸は、梱包対象物900の重量を示している。また、図5における縦軸は、一定の衝撃や振動が梱包容器10の外側から加えられた場合において、下部緩衝材100により衝撃や振動が吸収された後における梱包対象物900が受ける衝撃値Gを示している。
【0044】
また、図5における線L1は、上部変形部110R及び上部変形部110Lの面積で、下部変形部120R、120Lを作った場合の衝撃を吸収する作用を示していて、図5における線L2は、下部変形部120Rと下部変形部120Lの面積で、上部変形部110R、110Lを作った場合の衝撃を吸収する作用を示している。さらには、図5における線L3は、本実施形態における下部緩衝材100を用いた場合、即ち上部変形部110R及び上部変形部110Lと、下部変形部120Rと下部変形部120Lとの双方を用いた場合の衝撃を吸収する作用を示している。
【0045】
また、図5における衝撃値G1は、梱包対象物900が許容する最大の衝撃値を示している。例えば搬送中等に梱包対象物900が衝撃値G1以上の衝撃を受けると、梱包対象物900に故障等の不具合が生じやすくなる。
【0046】
線L1に示されているように、梱包対象物900の重量が概ね32kg以下である場合、上部変形部110R及び上部変形部110Lと、その面積で作られた下部変形部120R、120Lを用いて衝撃等吸収しても、梱包対象物900が受ける衝撃は衝撃値G1よりも小さくならないことが分かる。これは、上部変形部110R及び上部変形部110Lと、その面積で作られた下部変形部120R、120Lが変形しにくいため、梱包対象物900の重量が概ね32kg以下である場合は、上部変形部110R及び上部変形部110Lが衝撃等を吸収するために十分な変形をしないためである。
【0047】
また、線L2に示されているように、梱包対象物900の重量が概ね40kg以上である場合、下部変形部120R及び下部変形部120Lと、その面積で作られた上部変形部110R、110Lを用いて衝撃等を吸収しても、梱包対象物900が受ける衝撃は、衝撃値G1よりも小さくならないことが分かる。これは、下部変形部120R及び上部変形部110Lと、その面積で作られた上部変形部110R、110Lが変形しやすいため、梱包対象物900の重量が概ね40kg以上である場合は、下部変形部120R及び下部変形部120Lが塑性変形し切ってしまい、それ以上の塑性変形をしないためである。
【0048】
これらに対して、線L3に示されているように、上部変形部110R及び上部変形部110Lと、下部変形部120Rと下部変形部120Lとの双方を用いた場合、梱包対象物900が受ける衝撃値は、梱包対象物が概ね30kg以上43kg以下の範囲で衝撃値G1以下の値となる。このように、本実施形態における下部緩衝材100を用いれば、外形が同じであり、重量が概ね30kg以上43kg以下の梱包対象物900に加えられる衝撃値を衝撃値G1以下とすることができる。即ち、下部緩衝材100が衝撃を十分に吸収することができる衝撃値の許容範囲を広げることができ、下部緩衝材100を用いて、梱包容器10で梱包することができる梱包対象物900の重力の幅を広げることができる。
【0049】
図6及び図7には、右緩衝材200R及び左緩衝材200Lが示されている。先述のように、右緩衝材200Rは、力が加えられることによって変形する変形部210Rを有する。そして変形部210Rは、塑性的変形する材料から作られていて、例えば発泡スチロール等の同じ材料で全部分が作られている。また、変形部210Rは、図7に矢印cで示す力が加えられる方向(以下、矢印c方向とする)と交わる方向における断面積が、矢印c方向における位置に応じて異なっている。
【0050】
すなわち、変形部210Rは、力が加えられる方向である矢印c方向と交わる方向における断面積が、矢印c方向における梱包容器本体30(図1を参照)からの距離に応じて異なっている。このため、変形部210Rは、単位面積あたりに加えられる力が矢印c方向における位置ごとに異なる値となり、変形のために加えられる力が矢印c方向における位置ごとに異なっている。換言すると、変形部210Rは、矢印c方向に力が加えられたときの変形量が、矢印c方向における位置毎に互いに異なっている。
【0051】
左緩衝材200Lは、先述のように力が加えられると変形する変形部210Lを有する。そして変形部210Lは、塑性的変形する材料から作られていて、例えば発泡スチロール等の同じ材料で全部分が造られている。また、変形部210Lは、図7に矢印dで示す力が加えられる方向(以下、矢印d方向とする)と交わる方向における断面積が、矢印d方向における位置に応じて異なっている。
【0052】
すなわち、変形部210Lは、力が加えられる方向である矢印d方向と交わる方向における断面積が、矢印d方向における梱包容器本体30(図1を参照)からの距離に応じて異なっている。このため、変形部210Lは、単位面積あたりに加えられる力が矢印d方向における位置ごとに異なる値となり、変形のために加えられる力が矢印d方向における位置ごとに異なっている。換言すると、変形部210Lは、矢印d方向に力が加えられたときの変形量が、矢印d方向における位置毎に互いに異なっている。
【0053】
以上のように、変形部210Rと変形部210Lとは、変形のために加えられる力が、力が加えられる方向における位置ごとに異なり、力が加えられたときの変形量が力の加えられる方向における位置ごとに異なる。このため、右緩衝材200R及び左緩衝材200Lは、変形のために加えられる力が、力の加えられる方向における全ての位置において同じであり、力の加えられる方向における変形量が全ての位置で同じである変形部をもつ緩衝材と比較して、梱包対象物900に加えられる衝撃値を許容値よりも小さくすることができる梱包対象物の重量の範囲を広くすることができる。
【0054】
図8には、下部緩衝材100の第1の変形例が示されている。先述の本発明の実施形態に係る下部緩衝材100(図4を参照)は、下部変形部120Rの面122Rの面積が上部変形部110Rの面112Rの面積よりも小さく、下部変形部120Rと上部変形部110Rとは同じ材料から形成されていて、変形するために加えられることを要する力は、上部変形部110Rが下部変形部120Rよりも大きくなっていた。これに対し、この第1の変形例では、面122Rと面112Rと面積は同じであるものの、上部変形部110Rと下部変形部120Rとは、それぞれに硬さが異なる材料から造られていて、より具体的には、上部変形部110Rが下部変形部120Rよりも固く、変形しにくい材料から造られている。
【0055】
また、この第1の変形例では、下部変形部120R及び上部変形部110Rと同様に、下部変形部120L及び上部変形部110Lとは、面積は同じであるものの、それぞれに硬さが異なる材料から造られていて、より具体的には、上部変形部110Lが下部変形部120Lよりも固く、変形しにくい材料から造られている。このため、この第1の変形例においても、下部変形部120Rは、上部変形部110Rよりも変形しやすい。
【0056】
図9には、下部緩衝材100の第2の変形例が示されている。先述の本発明の実施形態に係る下部緩衝材100は、下部変形部120Rの面122Rの面積が上部変形部110Rの面112Rの面積よりも小さく、下部変形部120Rと上部変形部110Rとは同じ材料から形成されていて、変形するために加えられる荷重は、上部変形部110Rが下部変形部120Rよりも大きくなっていた。これに対し、この第1の変形例では、面122Rと面112Rとの面積は同じであるものの、荷重が加えられる方向である矢印aの方向と交わる方向における断面積が上部変形部110Rよりも小さい部分が生じるように、下部変形部120Rに孔124Rが形成されている。このため、この第2の変形例においても、下部変形部120Rは、上部変形部110Rよりも変形しやすい。
【0057】
また、この第2の変形例においては、面122Lと面112Lとの面積は同じであるものの、荷重が加えられる方向である矢印bの方向と交わる方向における断面積が上部変形部110Lよりも小さい部分が生じるように、下部変形部120Lに孔124Lが形成されている。このため、この第2の変形例においても、下部変形部120Lは、上部変形部110Lよりも変形しやすい。
【0058】
図10には、下部緩衝材100の第3の変形例が示されている。この第3の変形例においては、下部緩衝材100は、先述の本発明の実施形態に係る下部緩衝材100(図4を参照)が有する構成を全て備え、これに加えて上部変形部110Rに切欠116Rが形成されている。切欠116Rは、上部変形部110Rの梱包対象物900に対して突き当てられる突き当て面に該当する面112Rの縁部と、荷重が加えられる方向である矢印a方向において重なるように配置されている。
【0059】
また、この第3の変形例においては、下部変形部120Rに切欠126Rが形成されている。切欠126Rは、下部変形部120Rの下部梱包容器本体32(図2を参照)を介して載置面910(図2を参照)に対して突き当てられる面である面112Rの縁部と、荷重が加えられる方向である矢印a方向において重なるように配置されている。
【0060】
また、この第3の変形例では、上部変形部110Rに切欠116Rが形成されていることと同様に上部変形部110Lに切欠116Lが形成されて、下部変形部120Rに切欠126Rが形成されていることと同様に、下部変形部120Lに切欠126Lが形成されている。
【0061】
図11は、第3の変形例における下部変形部120の作用を説明するものであり、図11(a)は比較例を用いた場合に梱包対象物900に加わる力を説明する図であり、図11(b)は、下部緩衝材100の第3の変形例を用いた場合に、梱包対象物900に加わる力を説明する図である。
【0062】
図11(a)に示されているように、切欠126Rが形成されていない下部変形部120Rを下部梱包容器本体32に対して押し付けた場合、面112Rの縁部に相当する位置の応力は、他の位置における応力よりも大きくなっている。一方、図11(b)に示されているように、切欠126Rが形成された下部変形部120Rを下部梱包容器本体32に対して押し付けた場合、面112Rの縁部に相当する位置の応力が、他の位置における応力よりも大きくなることがなく、他の位置における応力よりも小さくなっている。これは、図11(b)の中段に示すように切欠126R近傍が変形することにより、面112Rの縁部に相当する位置の応力の上昇が抑制されるためである。
【0063】
図12には、右緩衝材200Rと左緩衝材200Lとの第1の変形例が示されている。先述の発明の実施形態に係る右緩衝材200Rと左緩衝材200Lとは、変形部210Rと変形部210Lとをそれぞれに有していた。そして、変形部210Rは、外形を先端部側(図12における右側)を尖らせるような形状にすることにより位置に応じて断面積をを異なる値とし、変形部210Lも、外形を先端部側(図12における左側)を尖らせるような形状にすることにより位置に応じて断面積を異なる値としていた(図7を参照)。
【0064】
これに対して、この第1の変形例においては、変形部210Rには、少なくとも一部分に矢印c方向と交わる方向の断面積が他の部分の断面積と異なる値となるように孔212Rが形成されている。また、この第1の変形例においては、変形部210Lには、少なくとも一部分に矢印d方向と交わる方向の断面積が他の部分の断面積と異なる値となるように孔212Lが形成されている。
【0065】
図13には、右緩衝材200Rと左緩衝材200Lとの第2の変形例が示されている。この第2の変形例においては、右緩衝材200Rは、先述の本発明の実施形態に係る右緩衝材200R(図6を参照)が有する全ての構成に加えて、梱包容器本体30内における右緩衝材200Rの移動を抑制するように、梱包容器本体30に接触する接触部220Rを例えば2つ有している。また、この第2の変形例においては、左緩衝材200Lは、先述の本発明の実施形態に係る左緩衝材200L(図6を参照)が有する全ての構成に加えて、梱包容器本体30内における左緩衝材200Lの移動を抑制するように、梱包容器本体30に接触する接触部220Lを例えば2つ有している。
【0066】
図14には、右緩衝材200Rと左緩衝材200Lとの第3の変形例が示されている。この第3の変形例においては、右緩衝材200Rは、先述の本発明の実施形態に係る右緩衝材200R(図6を参照)が有する全ての構成に加えて、作業者が右緩衝材200Rを梱包対象物900に対して押し付ける際に、梱包対象物900に対して押し付けられる位置に該当する凸部230Rが形成されている。そして、凸部230Rには、凸部230Rが右緩衝材200Rの他の部分よりも変形しやすくなるように孔232Rが形成されている。このため、凸部230Rが形成されていない右緩衝材200Rを梱包対象物900に対して押し付ける場合と比較して、梱包対象物900に傷が付くにくく、梱包対象物900が破損しにくい。
【0067】
また、この第3の変形例においては、左緩衝材200Lは、先述の本発明の実施形態に係る左緩衝材200L(図6を参照)が有する全ての構成に加えて、作業者が左緩衝材200Lを梱包対象物900に対して押し付ける際に、梱包対象物900に対して押し付けられる位置に該当する凸部230Lが取り付けられている。そして、凸部230Lには、凸部230Lが左緩衝材200Lの他の部分よりも変形しやすくなるように孔232Lが形成されている。このため、凸部230Lが形成されていない左緩衝材200Lを梱包対象物900に対して押し付ける場合と比較して、梱包対象物900に傷が付くにくく、梱包対象物900が破損しにくい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上で説明をしたように、本発明は、梱包容器に適用することができる。
【0069】
10・・・梱包容器
30・・・梱包容器本体
100・・・下部緩衝材
110R、110L・・・上部変形部
112R、112L・・・面
116R、116L・・・切欠
120R、120L・・・下部変形部
122R、122L・・・面
124R、124L・・・孔
126R、126L・・・切欠
132・・・平面
200L・・・左緩衝材
200R・・・右緩衝材
210R、210L・・・変形部
212R、212L・・・孔
220R、220L・・・接触部
230R、230L・・・凸部
232R、232L・・・孔
900・・・梱包対象物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14