(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6804022
(24)【登録日】2020年12月4日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】変化度合い導出装置、変化度合い導出方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/88 20060101AFI20201214BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
G01N21/88 J
G01N21/27 A
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-92705(P2016-92705)
(22)【出願日】2016年5月2日
(65)【公開番号】特開2017-201248(P2017-201248A)
(43)【公開日】2017年11月9日
【審査請求日】2019年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000039
【氏名又は名称】特許業務法人アイ・ピー・ウィン
(72)【発明者】
【氏名】笹原 慎司
(72)【発明者】
【氏名】小勝 斉
(72)【発明者】
【氏名】松野下 純一
(72)【発明者】
【氏名】荻野 賢
【審査官】
小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−270164(JP,A)
【文献】
特公平04−031308(JP,B2)
【文献】
国際公開第2015/146744(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0300780(US,A1)
【文献】
特開2015−103915(JP,A)
【文献】
特開2005−122323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 − G01N 21/01
G01N 21/17 − G01N 21/61
G01N 21/84 − G01N 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無彩色および第一の色が用いられている対象物について、前記第一の色に関する第一画像データおよび前記対象物の基準となる基準画像データを受け付ける受け付け手段と、
前記第一画像データおよび前記基準画像データについてそれぞれ明度と画素数とを軸としたヒストグラムについて前記無彩色に相当する部分を合わせたときに他の部分で発生するずれ量である第一の差分から、前記対象物の変化度合いを導出する導出手段と
を有する変化度合い導出装置。
【請求項2】
前記対象物はさらに前記第一の色とは異なる第二の色を有しており、
前記受け付け手段は前記第二の色に関する第二画像データを受付し、
前記導出手段は、前記第二画像データと前記基準画像データとについてそれぞれ明度と画素数とを軸としたヒストグラムについて前記無彩色に相当する部分を合わせたときに他の部分で発生するずれ量である第二の差分と、前記第一の差分と、の比から、前記対象物の変化度合いを導出する
ことを特徴とする、請求項1記載の変化度合い導出装置。
【請求項3】
前記第一の色は赤または緑であることを特徴とする、請求項1又は2記載の変化度合い導出装置。
【請求項4】
前記第一の色は赤または緑であり、前記第二の色は青であることを特徴とする、請求項2記載の変化度合い導出装置。
【請求項5】
無彩色および第一の色を用いられた対象物について、前記第一の色に関する第一画像データおよび前記対象物の基準となる基準画像データを受け付ける工程と、
前記第一画像データおよび前記基準画像データについてそれぞれ明度と画素数とを軸としたヒストグラムについて前記無彩色に相当する部分を合わせたときに他の部分で発生するずれ量である第一の差分から、前記対象物の変化度合いを導出する工程と
を有する変化度合い導出方法。
【請求項6】
無彩色および第一の色を用いられた対象物について、前記第一の色に関する第一画像データおよび前記対象物の基準となる基準画像データを受け付けるステップと、
前記第一画像データおよび前記基準画像データについてそれぞれ明度と画素数とを軸としたヒストグラムについて前記無彩色に相当する部分を合わせたときに他の部分で発生するずれ量である第一の差分から、前記対象物の変化度合いを導出するステップと
をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変化度合い導出装置、変化度合い導出方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、色の数値が既知の色既知面を有する色既知体を準備する準備過程と、建物における劣化判定の対象となる外装材と、当該外装材に接触させた前記色既知体の色既知面とを一緒にカラーのデジタル撮影手段で撮影する撮影過程と、この撮影されたデジタルデータの画像の色を、この画像における前記色既知面の画像の色を用いて色補正し、補正後の色を数値化する色補正過程と、この色補正された外装材の色の数値と定められた色の数値との差である、少なくとも明度差の数値を含む色差を求めてこの色差から汚れの程度の判定を行う汚れ判定過程と、この汚れ判定過程で判定された汚れの程度を用いて前記外装材の劣化を判定する劣化判定過程とを含む、外装材の劣化判定方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−196926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、対象物と色既知体とをともに撮影しなくても、対象物の変化度合いを知ることができる変化度合い導出装置、変化度合い導出方法及びプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る本発明は、無彩色および第一の色が用いられた対象物について、前記第一の色に関する第一画像データおよび前記対象物の基準となる基準画像データを受け付ける受け付け手段と、前記第一画像データと前記基準画像データとについて、前記無彩色部分に相当する部分を基準として得られる第一の差分から、前記対象物の変化度合いを導出する導出手段とを有する変化度合い導出装置である。
【0006】
請求項2に係る本発明は、前記対象物はさらに前記第一の色とは異なる第二の色を有しており、前記受け付け手段は前記第二の色に関する第二画像データを受付し、前記導出手段は、前記第二画像データと前記基準画像データとについて、前記無彩色部分に相当する部分を基準として得られる第二の差分と、前記第一の差分と、の比から、前記対象物の変化度合いを導出することを特徴とする、請求項1記載の変化度合い導出装置である。
【0007】
請求項3に係る本発明は、前記導出手段は、前記第一のデータおよび前記基準画像データについてそれぞれ明度と画素数とを軸としたヒストグラムについて前記無彩色に相当する部分を合わせたときに他の部分で発生するずれ量を前記第一の差分とする、ことを特徴とする、請求項1記載の変化度合い導出装置である。
【0008】
請求項4に係る本発明は、前記導出手段は、前記第一のデータおよび前記基準画像データについてそれぞれ明度と画素数とを軸としたヒストグラムについて前記無彩色に相当する部分を合わせたときに他の部分で発生するずれ量を前記第一の差分とし、前記導出手段は、前記第二のデータおよび前記基準画像データについてそれぞれ明度と画素数とを軸としたヒストグラムについて前記無彩色に相当する部分を合わせたときに他の部分で発生するずれ量を前記第二の差分とすることを特徴とする、請求項2記載の変化度合い導出装置である。
【0009】
請求項5に係る本発明は、前記第一の色は赤または緑であることを特徴とする、請求項1または3記載の変化度合い導出装置である。
【0010】
請求項6に係る本発明は、前記第一の色は赤または緑であり、前記第二の色は青であることを特徴とする、請求項2または4記載の変化度合い導出装置である。
【0011】
請求項7に係る本発明は、無彩色および第一の色が用いられた対象物について、前記第一の色に関する第一画像データおよび前記対象物の基準となる基準画像データを受け付ける工程と前記第一画像データと前記基準画像データとについて、前記無彩色部分に相当する部分を基準として得られる第一の差分から、前記対象物の変化度合いを導出する工程とを有する変化度合い導出方法である。
【0012】
請求項8に係る本発明は、無彩色および第一の色を用いられた対象物について、前記第一の色に関する第一画像データおよび前記対象物の基準となる基準画像データを受け付けるステップと、前記第一画像データと前記基準画像データとについて、前記無彩色部分に相当する部分を基準として得られる第一の差分から、前記対象物の変化度合いを導出するステップとをコンピュータに実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る本発明によれば、対象物と色既知体とをともに撮影しなくても、対象物の変化度合いを知ることができる。
【0014】
請求項2に係る本発明によれば、請求項1に係る発明の効果に加えて、第一の色と第二の色との変化速度を利用して、対象物の変化度合いを知ることができる。
【0015】
請求項3に係る本発明によれば、請求項1に係る発明の効果に加えて、明度と画像数とを基準にしたヒストグラムから得られる差分によって変化度合いを知ることができる。
【0016】
請求項4に係る本発明によれば、請求項2に係る本発明の効果に加えて、第一の色と第二の色との明度と画像数とを基準にしたヒストグラムから得られる差分によって変化度合いを知ることができる。
【0017】
請求項5に係る本発明によれば、請求項1又は3に係る本発明の効果に加えて、第一の色が青である場合と比べて精度良く変化度合いを知ることができる。
【0018】
請求項6に係る本発明によれば、請求項2又は4に係る本発明の効果に加えて、変化のスピードが異なる色から得られる差分について比較することで、変化の度合いを知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る劣化測定システムを示す構成図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る劣化測定装置のハードウエアを示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る劣化測定装置の新品時における処理フローを示すフローチャートである。
【
図4】本発明の実施形態に係る劣化測定装置の経年時の処理フローを示すフローチャートである。
【
図5】本発明の実施形態において看板を抽出した画像構成図である。
【
図6】本発明の実施形態において新品時に生成したRGBのヒストグラムを示すグラフである。
【
図7】本発明の実施形態において新品時と経年時に生成した補正前の赤のヒストグラムを示すグラフである。
【
図8】本発明の実施形態において新品時と経年時に生成した補正後のRGBのヒストグラムを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る変化度合い導出を示す構成図である。以下、対象物の劣化を測定するものとして説明し、変化度合い導出を「劣化測定」と置き換えて説明する。
【0022】
劣化測定をすべき対象物10は、例えば看板であり、高所に設置される等、直接測定するのが困難な場所に設置されている。この対象物10は、例えば半透明体から構成され、例えば無彩色の一例である白部分12、赤部分14、緑部分16及び青部分17を有している。また、対象物10は、白色LED等の光源が内部に配置され、この光源から発する光が対象物10を透過するようになっている。
【0023】
撮影装置18は、デジタルカメラ、スマートフォン、タブレット等であり、対象物10を周辺も含めて撮影する。
【0024】
例えばパーソナルコンピュータである劣化測定装置20は、撮影装置18で撮影された対象物10を撮影した画像データを受け付け、この画像データを処理するようになっている。
【0025】
図2は、劣化測定装置20を示すブロック図である。
劣化測定装置20は、CPU22、メモリ24、入力インターフェイス26及び出力インターフェイス28を有し、これらが制御バス30を介して接続されている。
【0026】
CPU22は、メモリ24に格納された制御プログラムに基づいて予め定められた処理を実行する。入力インターフェイス26には、入力装置32が接続されている。入力装置32としては、前述した撮影装置18に直接接続して入力するコネクタであったり、通信を用いて無線入力したりするものが含まれる。また、出力インターフェイス28には出力装置34が接続されている。この出力装置34は、ディスプレイやプリンタであり、処理されたデータ等の結果が出力される。
【0027】
次に劣化想定装置20による対象物10の劣化測定方法について説明する。
一般的に言って、色によって劣化速度が異なる。例えば黄色は、光(主に紫外線)によりが経年変化して抜け、最も早く劣化すると考えられる。この実施形態においては、このように、色によって劣化速度が異なることを利用して対象物10の劣化を測定しようとするものである。なお無彩色も厳密に言えば劣化をするが、本願発明者は鋭意研究を進め、有彩色に比べて劣化しづらいことに着目し、色既知体を利用せずとも、デバイス依存である撮像データからの劣化判断に想到している。特に本実施形態では、対象物の無彩色な部分を色既知体の代用とすることにより、撮影条件や環境光による色の変化を補正して、対象物上の対象色の変化度合いを計測している。
【0028】
図3は、劣化測定装置20の新品時における処理フローを示すフローチャートである。
まずステップS10において、撮影装置18で撮影した新品時の対象物10及びその周辺の画像データを受け付ける。
【0029】
次のステップS12においては、対象物10である看板を抽出する。例えば夜に撮影した場合は、対象物12は、周辺とは輝度が異なるので、輝度が高い部分を抽出すれば良い。
【0030】
次のステップS14においては、対象物10の歪みを補正する。歪みの補正は、例えば対象物10の正確な原画像と撮影した対象物10の画像とを比較し、対象物10の画像をアフィン変換等をすることにより原画像と重なり合うようにする。
【0031】
次のステップ16においては、ステップS14で補正した対象物10の画像の解像度を予め定められた解像度まで落ちるように変更する。なお解像度の調整は利用形態により、実施しないことや、逆に解像度を上げる処理をすることも考えられる。
【0032】
次のステップS18においては、R,G、B毎に階調(明度)のヒストグラムを生成する。即ち、それぞれの色でそれぞれの階調に属するピクセル数をカウントし、
図6に示すヒストグラムを生成する。
【0033】
次のステップS20においては、ステップS18で生成したヒストグラムをメモリ24に記憶させて処理を終了する。
【0034】
図4は、劣化測定装置20の経年時における処理フローを示すフローチャートである。
ステップS30、ステップS32、ステップS34、ステップS36及びステップS38までの処理は、前述した新品時の処理フローにおけるステップS10〜ステップS18と同様である。
【0035】
次のステップS40においては、メモリ24に記憶させておいた新品時のヒストグラムを読み出す。そして、次のステップS42において、
図7に示すように、新品時のヒストグラムと経年時のヒストグラムとを比較する。
【0036】
ここで、新品時と経年時では撮影環境が異なるので、単に両者のヒストグラムを比較しても不正確な劣化計測となることがある。
【0037】
そこで、次のステップS44においては、
図8に示すように、ヒストグラムの白のピーク位置を基準として両者を合わせるように階調補正を行う。このように補正したヒストグラムを比較したものが
図8に示されている。
この実施形態においては、白を基準として階調補正を行うにしたが、他の無彩色(黒やグレー)であっても同様である。
【0038】
図8からも解るように、新品時と経年時とのピークのずれ量は、青と比較すると、緑及び赤は大きい。
【0039】
そこで、次のステップS46においては、劣化度合いとしては、次に示す式(1)又は式(2)に示すように、青のピークのずれ量(l
B)と緑又は赤のピークのずれ量(l
G)、(l
R)として算出される。ここで得られる緑のピークのずれ量(l
G)、緑のピークのずれ量(l
R)、青のピークのずれ量(l
B)は、対象物の劣化が進むに連れて大きくなるため、これらのうちの少なくとも1つを、劣化の度合いとして利用する。このとき、比較的劣化しやすい色である黄成分が含まれている赤や緑についてのずれ量を利用することが好適である。
さらに、赤よりも緑の方が多く黄成分が含まれているので、式(1)で算出する方が好ましい。
また、式(3)で示すように、黄成分が比較的多く含まれる赤や緑についてのずれ量の平均を、黄成分を比較的含まない青についてのずれ量と比較しても良い。
【0041】
そして、次のステップS48において、劣化度合いを出力装置34に出力して処理を終了する。劣化度合いは、ステップS46で算出したデータをそのまま出力しても良いが、劣化度合いが閾値を超えた場合に修復すべき旨を表示したり、劣化レベル、例えばレベル1、レベル2等として出力するようにしても良い。
【0042】
なお、上記実施形態においては、劣化測定装置20をパーソナルコンピュータから構成したが、本発明は、これに限定されるものでは無い。例えば撮影装置18に劣化測定装置20の機能の全部又は一部を持たせても良い。
【符号の説明】
【0043】
10 :対象物
18 :撮影装置
20 :劣化測定装置