特許第6804023号(P6804023)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6804023光学用感光性樹脂組成物およびそれを用いた光学材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6804023
(24)【登録日】2020年12月4日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】光学用感光性樹脂組成物およびそれを用いた光学材料
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/24 20060101AFI20201214BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20201214BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20201214BHJP
   G02B 6/12 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   C08G59/24
   C09J163/00
   G02B1/04
   G02B6/12 371
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-23535(P2016-23535)
(22)【出願日】2016年2月10日
(65)【公開番号】特開2017-141357(P2017-141357A)
(43)【公開日】2017年8月17日
【審査請求日】2018年12月18日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】田中 友紀子
【審査官】 中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−105286(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/017524(WO,A1)
【文献】 特開2007−284550(JP,A)
【文献】 特開2012−116989(JP,A)
【文献】 特開2007−031288(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/002177(WO,A1)
【文献】 特開2014−001367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00
C08L 63/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学用感光性樹脂組成物であって、その樹脂成分が、下記(A)、(B)、(D1)、(D2)および(D3)成分を含む、芳香環を有しない化学構造の樹脂(但し、ラジカル重合性有機化合物を除く。)であり、かつ上記樹脂成分とともに下記(C)成分を含有し、上記樹脂成分全量に対する(A)成分の含有量が10〜60重量%、(B)成分の含有量が10〜60重量%、(D1)成分の含有量が0〜25重量%、(D2)成分の含有量が3〜30重量%、(D3)成分の含有量が17〜20重量%であることを特徴とする光学用感光性樹脂組成物。
(A)芳香環を有しない脂環式エポキシ樹脂(但し、(B)成分を除く。)。
(B)芳香環を有しないジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂。
(C)光酸発生剤。
(D1)芳香環を有しない脂肪族エポキシ樹脂。
(D2)芳香環を有しない多官能オキセタン樹脂。
(D3)芳香環を有しない単官能オキセタン樹脂。
【請求項2】
上記樹脂成分全量に対する(A)成分の含有量が20〜60重量%、(B)成分の含有量が10〜50重量%であり、上記樹脂成分全量100重量部に対する(C)成分の含有量が0.3〜3重量部である、請求項1記載の光学用感光性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2記載の光学用感光性樹脂組成物を硬化させることにより得られてなることを特徴とする光学材料。
【請求項4】
屈折率が1.500〜1.520であり、かつアッベ数が54〜57である、請求項記載の光学材料。
【請求項5】
請求項または記載の光学材料からなることを特徴とする光学レンズ。
【請求項6】
請求項または記載の光学材料からなることを特徴とする光導波路。
【請求項7】
請求項1または2記載の光学用感光性樹脂組成物からなることを特徴とする光学レンズ固定用光硬化型接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的応用を目的とする透明樹脂において光信号を低損失で通す高い透明性を有し、かつ高い光硬化性を有する、光学用感光性樹脂組成物およびそれを用いた光学材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、光学部品用の接着剤、シーリング材、フィルター、光学レンズの材料として、種々の材料が検討されている。このような材料において、アッベ数が高く、透明性に優れたエポキシ樹脂を主成分とする光硬化性樹脂組成物が注目されている。
【0003】
このような光硬化性樹脂組成物としては、例えば、脂環式エポキシ樹脂、水添エポキシ樹脂、芳香族エポキシ樹脂、オキセタン樹脂といった樹脂を適宜併用した、感光性樹脂組成物が提案されている(特許文献1)。
【0004】
また、下記の一般式(i)に示される、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂を用いた、光硬化性樹脂組成物も提案されている(特許文献2)。
【0005】
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015−61929号公報
【特許文献2】特開2014−1367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、光学用の感光性樹脂組成物における技術分野では、従来、高屈折率仕様にする要望が高かったが、例えば、光学レンズ分野においては、高屈折率レンズと低屈折率レンズとを重ねて組み合わせることが多い。そのため、アッベ数が高く、透明性に優れ、さらに高い光硬化性を有する、低屈折率仕様の(特に、屈折率が1.52以下の)光学用感光性樹脂組成物およびそれを用いた光学材料に対するニーズも、近年増えつつある。特に色収差低減の観点からは、アッベ数ができるだけ高い方が好ましい。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に示される感光性樹脂組成物は、光硬化性に劣る問題があり、上記ニーズに充分応え得るものではない。
【0009】
また、上記特許文献2に示される光硬化性樹脂組成物は、上記ニーズに応え得るような屈折率やアッベ数を示すものではなく、さらに、オキセタン樹脂を併用する示唆もないことから、高透明性と光硬化性の両立も難しい。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、アッベ数が高く、透明性に優れ、さらに高い光硬化性を有する、光学材料として好適な、低屈折率の光学用感光性樹脂組成物およびそれを用いた光学材料の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明は、光学用感光性樹脂組成物であって、その樹脂成分が、下記(A)および(B)成分を含む、芳香環を有しない化学構造の樹脂であり、かつ上記樹脂成分とともに下記(C)成分を含有する光学用感光性樹脂組成物を第1の要旨とする。
(A)芳香環を有しない脂環式エポキシ樹脂。
(B)芳香環を有しないジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂。
(C)光酸発生剤。
【0012】
また、本発明は、上記第1の要旨の光学用感光性樹脂組成物を硬化させることにより得られてなる光学材料を第2の要旨とする。
【0013】
すなわち、本発明者は、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その研究の過程で、光学用感光性樹脂組成物における樹脂成分として、例えば前記一般式(i)に示されるような、芳香環を有する化学構造の樹脂を用いないようにしたところ、所望の低屈折率を達成することが可能となるとの知見を得た。そして、この知見のもと、光酸発生剤により光硬化し得る、高アッベ数の樹脂の検討を各種行ったところ、芳香環を有しない脂環式エポキシ樹脂と、芳香環を有しないジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂とを併用したときに、高い光硬化性と高透明性の両立がなされ、その結果、所期の目的が達成できることを見いだしたことから、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明は、その樹脂成分が、芳香環を有しない脂環式エポキシ樹脂(A)および芳香環を有しないジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(B)を含む、芳香環を有しない化学構造の樹脂であり、かつ上記樹脂成分とともに光酸発生剤(C)を含有する光学用感光性樹脂組成物である。このため、アッベ数が高く、透明性に優れ、さらに高い光硬化性を有する、光学材料として好適な、低屈折率の光学用感光性樹脂組成物およびそれを用いた光学材料を提供することができる。
また、この光学用感光性樹脂組成物はガラス板等の透明基板上で光硬化させることができることから、上記透明基板と一体化させることにより高品質なハイブリッドレンズを製造することも可能である。したがって、本発明の光学用感光性樹脂組成物を、レンズ等の光学部品用の成形材料および光学部品固定用光硬化型接着剤等に用いる場合、高い信頼性を有する光学材料を得ることができるため、有用である。
【0015】
特に、上記樹脂成分全量に対する(A)成分の含有量が20〜60重量%、(B)成分の含有量が10〜50重量%であり、上記樹脂成分全量100重量部に対する(C)成分の含有量が0.3〜3重量部であると、より一層低屈折率とともに高アッベ数を有するようになる。
【0016】
また、上記光学用感光性樹脂組成物を硬化させることにより得られてなる光学材料のなかでも、特に、屈折率が1.52以下であり、かつアッベ数が54以上である光学材料は、低屈折率仕様の光学材料に対するニーズに合致するものであり、有用である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
つぎに、本発明の実施の形態について詳しく説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
【0018】
《光学用感光性樹脂組成物》
本発明の光学用感光性樹脂組成物(以下、感光性樹脂組成物、もしくは、樹脂組成物という場合がある。)は、その樹脂成分が、芳香環を有しない脂環式エポキシ樹脂(A)および芳香環を有しないジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(B)を含む、芳香環を有しない化学構造の樹脂であり、かつ上記樹脂成分とともに光酸発生剤(C)を含有するものである。
以下、各種成分について順に説明する。
【0019】
<芳香環を有しない脂環式エポキシ樹脂(A)>
上記のように芳香環を有しない脂環式エポキシ樹脂(A)としては、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−1−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−1−メチルヘキサンカルボキシレート、6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、プロパン−2,2−ジイル−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロパンジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、1−エポキシエチル−3,4−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシ−2−エポキシエチルシクロヘキサン等があげられる。このような脂環式エポキシ樹脂を使用することにより、高い透明性を維持したまま反応性が向上するようになる。
【0020】
<芳香環を有しないジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(B)>
上記エポキシ樹脂(B)は、ジシクロペンタジエン骨格を有するが、芳香環は有しない化学構造のエポキシ樹脂であり、具体的には、下記の一般式(1)で表されるエポキシ樹脂、下記の一般式(2)で表されるエポキシ樹脂等があげられる。これらは単独でもしくは併せて用いられる。
【0021】
【化2】
【0022】
【化3】
【0023】
上記一般式(1)において、nは、0〜2であることが好ましい。また、上記エポキシ樹脂(A)のなかでも、特に、上記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0024】
上記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂として、市販品では、アデカレジンEP−4088S、EP−4088L(いずれもADEKA社製)等が、また上記一般式(2)で表されるエポキシ樹脂として、市販品では、ジシクロペンタジエン ジエポキシド(Synquest社製)等がそれぞれあげられる。
【0025】
<他の樹脂>
本発明においては、上記(A)および(B)とともに、芳香環を有しない他の樹脂を併用することができる。このような樹脂を併用することにより、重合速度や屈折率の調整がしやすくなるという効果を奏する。なお、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、芳香環を有するエポキシ樹脂についても、添加することは可能である。
【0026】
上記のような、芳香環を有しない他の樹脂としては、脂肪族エポキシ樹脂、単官能オキセタン樹脂、多官能オキセタン樹脂、ビニルエーテル化合物、水酸基末端化合物等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0027】
なお、上記のように芳香環を有しない脂肪族エポキシ樹脂としては、例えば、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ソルビトールのテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールのヘキサグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテルなどの多価アルコールのグリシジルエーテル、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテルやフェノール、クレゾール、ブチルフェノール、また、これらにアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシ化大豆油、エポキシ化ポリブタジエン等があげられる。
【0028】
また、上記のように芳香環を有しない単官能オキセタン樹脂としては、例えば、3−メチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、イソブトキシメチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等があげられる。
【0029】
また、上記のように芳香環を有しない多官能オキセタン樹脂としては、例えば、ジ〔1−エチル(3−オキセタニル)〕メチルエーテル、3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサ−ノナン、1,2−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕エタン、1,3−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕プロパン、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等があげられる。
【0030】
また、上記のように芳香環を有しないビニルエーテル化合物としては、例えば、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、N−ブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテルオクタデシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル等があげられる。
【0031】
また、上記のように芳香環を有しない水酸基末端化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、シクロヘキサンメタノール、シクロヘキサンエタノール、2−プロパノール、ブタノール、プロパノール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン等があげられる。水酸基末端化合物の添加は、本発明の効果を阻害しない範囲で添加することが好ましい。
【0032】
<光酸発生剤(C)>
上記光酸発生剤(光カチオン重合開始剤)(C)は、感光性樹脂組成物に対して光照射(例えば、紫外線照射等)による硬化性を付与するために用いられるものである。上記光酸発生剤(C)としては、例えば、スルホニウム塩系,ヨードニウム塩系等のオニウム塩系光酸発生剤(光カチオン重合開始剤)を用いることができる。
【0033】
上記オニウム塩系におけるアニオン成分としては、例えば、PF6-、PF4(CF2CF32-等のリン酸イオン、SbF6-等のアンチモン酸イオン、トリフルオロメタンスルホナート等のフルオロアルキルスルホン酸イオン等があげられる。
【0034】
上記オニウム塩系におけるカチオン成分としては、例えば、芳香族スルホニウム等のスルホニウム、芳香族ヨードニウム等のヨードニウム、芳香族ホスホニウム等のホスホニウム、芳香族スルホキソニウム等のスルホキソニウム等があげられる。
【0035】
このようなオニウム塩としては、例えば、上記アニオン成分をカウンターアニオンとして有する、芳香族スルホニウム塩等のスルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩等のヨードニウム塩、芳香族ホスホニウム塩等のホスホニウム塩、芳香族スルホキソニウム塩等のスルホキソニウム塩等があげられる。
【0036】
このような光酸発生剤(C)は、単独でもしくは二種以上併せて用いることができる。
【0037】
そして、このような光酸発生剤(C)のなかでも、光硬化性を考慮した場合、好ましくは芳香族スルホニウム塩系の光酸発生剤が用いられる。
【0038】
ここで、本発明の光学用感光性樹脂組成物において、特に、その樹脂成分全量に対する(A)成分の含有量が20〜60重量%、(B)成分の含有量が10〜50重量%であり、上記樹脂成分全量100重量部に対する(C)成分の含有量が0.3〜3重量部であると、より一層低屈折率とともに高アッベ数を有するようになるため好ましい。より好ましくは、上記樹脂成分全量に対する(A)成分の含有量が30〜50重量%、(B)成分の含有量が20〜50重量%であり、上記樹脂成分全量100重量部に対する(C)成分の含有量が0.3〜2重量部である。なお、先に述べたような、(A)および(B)成分以外の、芳香環を有しない樹脂を配合する場合、上記樹脂成分全量に対し、3〜30重量%にすることが好ましく、より好ましくは、5〜20重量%の範囲である。
【0039】
本発明の光学用感光性樹脂組成物には、上記(A),(B),(C)成分、および芳香環を有しない他の樹脂以外に、例えば、光増感剤、酸増殖剤、シラン系あるいはチタネート系のカップリング剤、その他、目的および用途に応じて、合成ゴムやシリコーン化合物等の可撓性付与剤、酸化防止剤、消泡剤等を適宜の割合で配合することができる。また、各種顔料、染料、無機質充填剤等の無機添加剤も、必要に応じて適宜に配合することができる。
【0040】
本発明の光学用感光性樹脂組成物は、例えば、上記(A),(B),(C)成分、さらには必要に応じてその他の添加剤を、所定の割合で配合し、加熱溶融混合することにより作製することができる。
【0041】
本発明の光学用感光性樹脂組成物は、例えば、つぎのようにして使用される。すなわち、ガラス等の透明基板上に上記樹脂組成物をポッティングし、その上から所望の成形加工型を押し当てることにより、上記成形加工型内へ上記樹脂組成物を充填させ、そこへ光照射を行うことにより硬化させることができる。そして、その後、上記成形加工型を取り外すことにより、透明基板上で一体化された上記樹脂組成物の硬化体(成形加工品である光学材料)を得ることができる。あるいは、光を透過する透明型内へ樹脂組成物を充填し光硬化させることも可能である。本発明の光学用感光性樹脂組成物は、このような製法により、例えばハイブリッドレンズを作製することができる。また、本発明の光学用感光性樹脂組成物は、成形加工型内でそれ自身単独で硬化させて光学レンズ等の光学部品とすることもできる。さらに、上記光照射後の硬化体に対し、必要に応じて、所定の温度で加熱処理を行なってもよい。上記加熱により、硬化体の耐熱安定性を高めて、特に透明基板との積層物の場合には、基板と樹脂硬化物間の密着性の向上を図ることができる。
【0042】
上記光照射には、例えば、装置として紫外線(UV)ランプや特定波長のシングルバンドのランプ等を用いることができる。また、照射量としては、例えば、500〜10000mJ/cm2が好ましく、より好ましくは1000〜8000mJ/cm2である。なお、照射波長や照射量は所望の硬化体の厚み等に応じて適宜変更することが可能である。すなわち、照射量が上記範囲未満では、感光性樹脂組成物を充分に硬化させることが困難となり、得られる光学材料を透明基板上に所望の硬化物形状に成形することが困難となる傾向がみられる。また、上記範囲を超えると、過度の照射により光劣化が生じるという不具合が生起するおそれがあるからである。そして、照射量が上記範囲内であると、感光性樹脂組成物を充分に硬化させることができることから、例えば、感光性樹脂組成物を透明基板上に所望の硬化物形状に成形することができ、また、過度の照射による光劣化を防止することが可能となる。
【0043】
また、上記光照射後に必要に応じて施される加熱処理の条件としては、例えば、熱処理温度が、好ましくは60〜200℃、より好ましくは80〜170℃であり、熱処理時間が、好ましくは0.5〜3時間、より好ましくは0.5〜2時間である。
【0044】
なお、本発明の光学用感光性樹脂組成物は、上記のような成形加工型によらず、シート状に成形することもできる。
【0045】
そして、上記のようにして得られる本発明の光学用感光性樹脂組成物は、ハンダリフローによりプリント基板等に実装することにより、光学部品用成形材料(光学材料)として使用することができる。
【0046】
本発明の光学用感光性樹脂組成物は、先に述べたような製法により、光学レンズ等の光学部品用の成形材料(光学材料)として用いられる他、光導波路や光学部品固定用光硬化型接着剤等、各種用途に用いることができる。
【0047】
また、上記光学用感光性樹脂組成物を硬化させることにより得られてなる光学材料のなかでも、特に、屈折率が1.52以下であり、かつアッベ数が54以上である光学材料は、低屈折率仕様の光学材料に対するニーズに合致するものであり、有用である。なお、上記屈折率は、例えば、その光学材料の表面を、グラインダーを用いて研磨した後、屈折率計(アタゴ社製)を用いて、25℃環境下でのナトリウムd線での光学材料の屈折率を測定した値を示すものである。また、上記アッベ数は、上記屈折率計を用いて、上記条件下で同時に測定波長をナトリウムc線およびf線とし、これらの場合における屈折率の測定値より、アッベ数を求めることができる。
【実施例】
【0048】
つぎに、本発明を実施例に基づいて説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
【0049】
まず、下記に示す各材料を準備した。
【0050】
<脂環式エポキシ樹脂>
[a−1]
芳香環を有しない脂環式エポキシ樹脂(ダイセル化学社製、Cel2021P)
[a−2]
芳香環を有しない脂環式エポキシ樹脂(ダイセル化学社製、EHPE3150)
【0051】
<DCPD型エポキシ樹脂>
[b−1]
芳香環を有しないジシクロペンタジエン(DCPD)型エポキシ樹脂(ADEKA社製、EP−4088L)
[b−2]
芳香族ジシクロペンタジエン(DCPD)型エポキシ樹脂(DIC社製、HP−7200)
【0052】
<非芳香族エポキシ樹脂(1)>
水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製、YX8000)
【0053】
<非芳香族エポキシ樹脂(2)>
直鎖脂肪族エポキシ樹脂(ADEKA社製、ED−523L)
【0054】
<芳香族エポキシ樹脂(1)>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱瓦斯化学社製、YL6810)
【0055】
<非芳香族オキセタン樹脂(1)>
芳香環を有しない4官能オキセタン樹脂(東亜合成社製、OXT−191)
【0056】
<非芳香族オキセタン樹脂(2)>
芳香環を有しない2官能オキセタン樹脂(東亜合成社製、OXT−221)
【0057】
<非芳香族オキセタン樹脂(3)>
芳香環を有しない単官能オキセタン樹脂(東亜合成社製、OXT−101)
【0058】
<芳香族オキセタン樹脂(1)>
芳香族オキセタン樹脂(東亜合成社製、OXT−211)
【0059】
<光酸発生剤(光重合開始剤)>
[c−1]
ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートとビス〔4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル〕スルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネートを主体とする混合物のプロピレンカーボネート50重量%溶液(ADEKA社製、SP−170)
[c−2]
下記構造式で示される化合物を主体とする混合物のプロピレンカーボネート50重量%溶液
【0060】
【化4】
【0061】
<酸化防止剤>
テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(堺化学工業社製、SONGNOX1010)
【0062】
〔実施例1〜12、比較例1〜6〕
上記各成分を、後記の表1および表2に示す割合で配合し、加熱溶融混合を行なうことにより、光学用感光性樹脂組成物を作製した。
【0063】
このようにして得られた実施例および比較例の光学用感光性樹脂組成物に関し、下記の基準に従って各特性評価を行なった。その結果を、後記の表1および表2に併せて示す。
【0064】
≪屈折率・アッベ数≫
光学用感光性樹脂組成物(液状)を、大きさ1×1.5×0.5cmの透明成形型に流し込み、紫外線(UV)を6000mJ/cm2照射し硬化させた後、成形型から取り出し、さらに150℃×1時間の加熱処理を行なうことにより光学材料(硬化体)を作製した。このようにして得られた光学材料の表面を、グラインダーを用いて研磨した後、屈折率計(アタゴ社製)を用いて、25℃環境下でのナトリウムd線での光学材料の屈折率を測定した。また、同時に測定波長をナトリウムc線およびf線とし、これらの場合における屈折率の測定値よりアッベ数を求めた。
また、上記測定値をもとに、以下の基準で各特性(屈折率・アッベ数)の評価を行なった。
屈折率:
× 1.52を超える。
〇 1.52以下。
アッベ数:
× 54未満。
〇 54以上。
【0065】
≪透明性・光硬化性≫
シリコーン離型処理を施したPETフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製、ダイアホイルMRF−50)上に厚さ500μmとなるよう製膜し、これに光照射(照射波長365nm単一波長、照射光量5000mJ/cm)を行い、その後150℃×1時間で加熱処理し硬化体を得た。
そして、上記硬化体の透明性は、分光光度計(日本分光株式会社製、UV−VIS)により400nmの透過率を測定し、その測定値をもとに、以下の基準で透明性の評価を行なった。
透明性:
× 90%未満。
△ 90%以上94%未満。
〇 94%以上。
また、上記光照射後の硬化体表面の硬化状態を、以下の基準で評価し、光硬化性の評価とした。
光硬化性:
△ 離型容易だが僅かにタック性が残る。
〇 硬化し離型可能、タックなし。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
上記結果から、その樹脂成分が、芳香環を有しない脂環式エポキシ樹脂(a−1,a−2)と、芳香環を有しないジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(b−1)を含む、芳香環を有しない化学構造の樹脂である、実施例の光学用感光性樹脂組成物は、低屈折率を示すとともに、高アッベ数を有するものであった。特に実施例3,10についてはアッベ数が57と高く、色収差低減の観点ではより有用である。従って、実施例の光学用感光性樹脂組成物の使用により、低屈折率および高アッベ数を備えた光学レンズ等の光学材料を提供することが可能となる。
【0069】
これに対して、比較例の光学用感光性樹脂組成物は、いずれも、芳香環を有する樹脂成分を含んでいる。そして、比較例1,5,6の光学用感光性樹脂組成物は、芳香環を有しないジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(b−1)を含んでおらず、比較例2〜4の光学用感光性樹脂組成物は、芳香環を有しない脂環式エポキシ樹脂(a−1,a−2)を含んでいない。以上のことから、比較例の光学用感光性樹脂組成物は、いずれも、本発明に要求される所望の低屈折率と高アッベ数を兼ね備えられない結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の光学用感光性樹脂組成物は、高い光硬化性を有し、高い透明性を有しながら、低屈折率および高アッベ数を有する立体造形物(硬化物)となり得るため、光学レンズ等の光学部品用の成形材料(光学材料)や、光学部品固定用光硬化型接着剤等の光学用途として有用である。また、本発明の光学用感光性樹脂組成物を用いた光学材料は、信頼性が高いため、光学レンズ等の光学製品に用いることができる。