特許第6804045号(P6804045)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6804045
(24)【登録日】2020年12月4日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】廃棄物供給装置及び廃棄物供給方法
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/50 20060101AFI20201214BHJP
   F23G 5/44 20060101ALI20201214BHJP
   F23G 5/02 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   F23G5/50 QZAB
   F23G5/44 B
   F23G5/02 D
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-69139(P2017-69139)
(22)【出願日】2017年3月30日
(65)【公開番号】特開2018-169141(P2018-169141A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2019年8月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084180
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100138140
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 努
(72)【発明者】
【氏名】奥山 契一
(72)【発明者】
【氏名】内山 武
(72)【発明者】
【氏名】前田 健次
【審査官】 古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−185835(JP,A)
【文献】 特開2016−216228(JP,A)
【文献】 特開平08−303732(JP,A)
【文献】 特開2010−230185(JP,A)
【文献】 特開2006−046680(JP,A)
【文献】 特開2015−210043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/00−5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を受け入れて一時貯留する貯留ピットから廃棄物を取り出し焼却炉へ搬送供給する廃棄物供給装置において、
貯留ピット内の廃棄物の水分率分布を測定する水分率分布測定装置と、貯留ピット内の一部に形成された攪拌区画における廃棄物の水分率を調整する水分率調整装置と、貯留ピットの攪拌区画から廃棄物をバケットで掴んで焼却炉へ搬送供給するクレーン装置とを備え、
水分率分布測定装置は、貯留ピット内の全領域の廃棄物を撮影し画像情報を取得する貯留ピット撮影装置と、該貯留ピット撮影装置により得られた画像情報から廃棄物の明度分布を求め、予め設定された廃棄物の明度と廃棄物の水分率との関係にもとづき、貯留ピット内を区分した複数の細領域の各領域に存在する廃棄物の水分率を示す貯留ピット内の廃棄物の水分率分布を導出する貯留ピット画像処理装置とを有し、
水分率調整装置は、細領域の隣接する複数分を集めて一つの取出領域とし、水分率分布測定装置により導出された貯留ピット内の廃棄物の水分率分布を参照して、所定範囲の水分率より低い低水分率廃棄物の存在する取出領域から低水分率廃棄物を、所定範囲の水分率より高い高水分率廃棄物の存在する取出領域から高水分率廃棄物を取り出して、小さくともバケットを開いたときの長さの1.5倍以上の縦横の長さをもつ攪拌区画に移送して混合するときに、上記攪拌区画における低水分率廃棄物と高水分率廃棄物とが混合された廃棄物の水分率を所定範囲とするように、低水分率廃棄物と高水分率廃棄物との混合比率を算出する混合比率算出装置と、混合比率算出装置で算出された混合比率にもとづき各取出領域から廃棄物をクレーン装置により攪拌区画へ移送する移送手順を計画しクレーン装置に運転指令を発信する移送計画装置とを有し、
クレーン装置は、移送計画装置からの運転指令にもとづき、貯留ピットの各取出領域から廃棄物を攪拌区画へ移送し、攪拌混合し、さらに所定範囲の水分率とされた廃棄物を焼却炉へ搬送供給する、ことを特徴とする廃棄物供給装置。
【請求項2】
廃棄物供給装置は、さらにバケット水分率測定装置を有し、
バケット水分率測定装置は、クレーン装置のバケットが掴む廃棄物を撮影し画像情報を取得するバケット撮影装置と、該バケット撮影装置により得られた画像情報からバケットが掴む廃棄物の明度を求め、予め設定された廃棄物の明度と廃棄物の水分率との関係にもとづき、バケットが掴む廃棄物の水分率を導出するバケット画像処理装置とを有し、
混合比率算出装置は、水分率分布測定装置により導出された貯留ピット内の廃棄物の水分率分布と、バケット水分率測定装置により導出されたバケットが掴む廃棄物の水分率とにもとづき、低水分率廃棄物と高水分率廃棄物との混合比率を算出することとする請求項1に記載の廃棄物供給装置。
【請求項3】
貯留ピット内を区分した複数の細領域の各領域と攪拌区画の少なくとも一方にて、クレーン装置のバケットが掴んだ廃棄物の落下状況を撮影し画像情報を取得する落下状況撮影装置と、該落下状況撮影装置により得られた画像情報から廃棄物の形状を導出する廃棄物形状測定装置と、攪拌区画に貯留される廃棄物の形状を所定範囲とするように上記クレーン装置のバケットによる廃棄物の掴み操作と落下操作を繰り返すように該クレーン装置を制御する廃棄物形状制御装置を、さらに有していることとする請求項1又は請求項2に記載の廃棄物供給装置。
【請求項4】
廃棄物を受け入れて一時貯留する貯留ピットから廃棄物をクレーン装置で取り出し焼却炉へ搬送供給する廃棄物供給方法において、
貯留ピット内の廃棄物の水分率分布を測定する水分率分布測定工程と、貯留ピット内の一部に形成された攪拌区画における廃棄物の水分率を調整する水分率調整工程と、貯留ピットの攪拌区画から廃棄物をバケットで掴んで焼却炉へクレーン装置により搬送供給する搬送供給工程とを備え、
水分率分布測定工程は、貯留ピット内の全領域の廃棄物を撮影して画像情報を取得し、画像情報から廃棄物の明度分布を求め、予め設定された廃棄物の明度と廃棄物の水分率と
の関係にもとづき、貯留ピット内を区分した複数の細領域の各領域に存在する廃棄物の水分率を示す貯留ピット内の廃棄物の水分率分布を導出する貯留ピット画像処理を行い、
水分率調整工程は、細領域の隣接する複数分を集めて一つの取出領域とし、水分率分布測定工程により導出された貯留ピット内の廃棄物の水分率分布を参照して、所定範囲の水分率より低い低水分率廃棄物の存在する取出領域から低水分率廃棄物を、所定範囲の水分率より高い高水分率廃棄物の存在する取出領域から高水分率廃棄物を取り出して、小さくともバケットを開いたときの長さの1.5倍以上の縦横の長さをもつ攪拌区画に移送して混合するときに、上記攪拌区画における低水分率廃棄物と高水分率廃棄物とが混合された廃棄物の水分率を所定範囲とするように、低水分率廃棄物と高水分率廃棄物との混合比率を算出する混合比率算出工程と、算出された混合比率にもとづき各取出領域から廃棄物をクレーン装置により攪拌区画へ移送する移送手順を計画しクレーン装置に運転指令を発信する移送計画工程と、
クレーン装置が、移送計画工程からの運転指令にもとづき、貯留ピットの各取出領域から廃棄物を攪拌区画へ移送し、攪拌混合し、さらに所定範囲の水分率とされた廃棄物を焼却炉へ搬送供給する移送・搬送工程とを有する、
ことを特徴とする廃棄物供給方法。
【請求項5】
さらにバケット水分率測定工程を有し、
バケット水分率測定工程は、クレーン装置のバケットが掴む廃棄物を撮影し画像情報を取得するバケット撮影工程と、該バケット撮影工程により得られた画像情報からバケットが掴む廃棄物の明度を求め、予め設定された廃棄物の明度と廃棄物の水分率との関係にもとづき、バケットが掴む廃棄物の水分率を導出するバケット画像処理工程とを有し、
混合比率算出工程は、水分率分布測定工程により導出された貯留ピット内の廃棄物の水分率分布と、バケット水分率測定工程により導出されたバケットが掴む廃棄物の水分率とにもとづき、低水分率廃棄物と高水分率廃棄物との混合比率を算出することとする請求項に記載の廃棄物供給方法。
【請求項6】
貯留ピット内を区分した複数の細領域の各領域と攪拌区画の少なくとも一方にて、クレーン装置のバケットが掴んだ廃棄物の落下状況を撮影し画像情報を取得し、得られた画像情報から廃棄物の形状を導出する廃棄物形状測定工程と、攪拌区画に貯留される廃棄物の形状を所定範囲とするようにクレーン装置のバケットによる廃棄物の掴み操作と落下操作を繰り返すように該クレーン装置を制御する廃棄物形状調整工程を、さらに有していることとする請求項4又は請求項5に記載の廃棄物供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物を貯留ピットから焼却炉へ供給する廃棄物供給装置及び廃棄物供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃棄物焼却施設においては、廃棄物焼却炉(以下、「焼却炉」)へ廃棄物を投入する前に廃棄物の性状を把握することは行わずに、焼却炉に廃棄物が投入された後に炉内での燃焼中の操業データ(炉内温度、排ガス中酸素濃度等)により、焼却炉での熱バランスを求め、廃棄物の発熱量を演算し、焼却炉に供給する燃焼空気量を調整するフィードバック制御を行うことが一般的である。したがって、焼却炉へ供給される廃棄物の性状が時々刻々変化する実際の操業では制御に遅れが生じ、ときには焼却炉で発生した可燃性ガスが完全に燃焼されず、燃焼排ガス中に未燃ガスが残存することがあった。
【0003】
焼却炉を安定に運転し、さらに、廃棄物の燃焼における熱回収により蒸気を発生させ発電を行う際に高い発電効率を得るためには、投入する廃棄物の性状を所定範囲内にすることが必要である。
【0004】
焼却炉への供給に備え、搬入された廃棄物が一時貯留される貯留ピットでは、クレーンのバケットにより廃棄物の混合と焼却炉への投入が行われるが、現在のところ貯留ピット内の一部の領域の廃棄物を混合するだけであって、十分な混合が得られず、また次々と性状の異なる廃棄物が貯留ピットへ搬入され生じる変動に対応できなかった。
【0005】
このため、廃棄物焼却炉の運転が不安定となり、炉内温度の変動、発生ガス量の変動が生じ、その結果、排ガスから熱回収して発生させるボイラ蒸気量の変動が生じ、さらにNOx,SOx,HCl,COなどの有害ガス成分排出量の増加が生じていた。
【0006】
通常の廃棄物焼却施設の貯留ピットは最小限の敷地面積で設けられるため、廃棄物の混合調整に利用できる領域の大きさは限定される。クレーンおよび焼却炉の廃棄物投入ホッパ容量は1時間に数回の投入を前提に設計されているため、廃棄物の移動や混合のできる時間は限定されている。性状の異なる廃棄物が貯留ピットへ搬入され生じる変動に対応するための対策として、特許文献1に、貯留ピット内で性状の異なる廃棄物に分け貯留する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015−210043
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1では、貯留ピット内に、廃棄物の混合のための領域に加え、混合前に該廃棄物を異なる性状毎に区分するための複数の他の領域を用意することとしているので、貯留ピット全体として広い面積が必要となり、実施は困難で、実状にそぐわない。
【0009】
本発明はかかる事情に鑑み、限定された現状の貯留ピット敷地面積で、焼却炉へ燃焼に適した性状の廃棄物を供給することができるようにする廃棄物供給装置及び廃棄物供給方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、上述の課題は、次のように構成される廃棄物供給装置もしくは廃棄物供給方法によって解決される。
【0011】
[廃棄物供給装置]
本発明の廃棄物供給装置は、次の第一ないし第三発明のごとく構成される。
【0012】
<第一発明>
第一発明に係る廃棄物供給装置は、廃棄物を受け入れて一時貯留する貯留ピットから廃棄物を取り出し焼却炉へ搬送供給する。
【0013】
かかる廃棄物供給装置において、第一発明では、貯留ピット内の廃棄物の水分率分布を測定する水分率分布測定装置と、貯留ピット内の一部に形成された攪拌区画における廃棄物の水分率を調整する水分率調整装置と、貯留ピットの攪拌区画から廃棄物を焼却炉へ搬送供給するクレーン装置とを備え、
水分率分布測定装置は、貯留ピット内の全領域の廃棄物を撮影し画像情報を取得する貯留ピット撮影装置と、該貯留ピット撮影装置により得られた画像情報から廃棄物の明度分布を求め、予め設定された廃棄物の明度と廃棄物の水分率との関係にもとづき、貯留ピット内を区分した複数領域の各領域に存在する廃棄物の水分率を示す貯留ピット内の廃棄物の水分率分布を導出する貯留ピット画像処理装置とを有し、
水分率調整装置は、水分率分布測定装置により導出された貯留ピット内の廃棄物の水分率分布を参照して、所定範囲の水分率より低い低水分率廃棄物の存在する領域から低水分率廃棄物を、所定範囲の水分率より高い高水分率廃棄物の存在する領域から高水分率廃棄物を取り出して攪拌区画に移送して混合するときに、上記攪拌区画における低水分率廃棄物と高水分率廃棄物とが混合された廃棄物の水分率を所定範囲とするように、低水分率廃棄物と高水分率廃棄物との混合比率を算出する混合比率算出装置と、混合比率算出装置で算出された混合比率にもとづき各領域から廃棄物をクレーン装置により攪拌区画へ移送する移送手順を計画しクレーン装置に運転指令を発信する移送計画装置とを有し、
クレーン装置は、移送計画装置からの運転指令にもとづき、貯留ピットの各領域から廃棄物を攪拌区画へ移送し、攪拌混合し、さらに所定範囲の水分率とされた廃棄物を焼却炉へ搬送供給する、
ことを特徴としている。
【0014】
<第二発明>
第二発明に係る廃棄物供給装置は、第一発明の廃棄物供給装置に加えて、さらにバケット水分率測定装置を有し、
バケット水分率測定装置は、クレーン装置のバケットが掴む廃棄物を撮影し画像情報を取得するバケット撮影装置と、該バケット撮影装置により得られた画像情報からバケットが掴む廃棄物の明度を求め、予め設定された廃棄物の明度と廃棄物の水分率との関係にもとづき、バケットが掴む廃棄物の水分率を導出するバケット画像処理装置とを有し、
混合比率算出装置は、水分率分布測定装置により導出された貯留ピット内の廃棄物の水分率分布と、バケット水分率測定装置により導出されたバケットが掴む廃棄物の水分率とにもとづき、低水分率廃棄物と高水分率廃棄物との混合比率を算出するように構成される。
【0015】
<第三発明>
第三発明に係る廃棄物供給装置は、第一又は第二発明の廃棄物供給装置に加えて、貯留ピット内を区分した複数領域の各領域と攪拌区画の少なくとも一方にて、クレーン装置のバケットが掴んだ廃棄物の落下状況を撮影し画像情報を取得する落下状況撮影装置と、該落下状況撮影装置により得られた画像情報から廃棄物の形状を導出する廃棄物形状測定装置と、攪拌区画に貯留される廃棄物の形状を所定のものとするように上記クレーン装置のバケットによる廃棄物の掴み操作と落下操作を繰り返すように該クレーン装置を制御する廃棄物形状制御装置を、さらに有していることにより構成される。
【0016】
[廃棄物供給方法]
本発明の廃棄物供給方法は、次の第四ないし第六発明のごとく構成される。
【0017】
<第四発明>
第四発明に係る廃棄物供給方法では、廃棄物を受け入れて一時貯留する貯留ピットから廃棄物をクレーン装置で取り出し焼却炉へ搬送供給する。
【0018】
かかる廃棄物供給方法において、第四発明では、貯留ピット内の廃棄物の水分率分布を測定する水分率分布測定工程と、貯留ピット内の一部に形成された攪拌区画における廃棄物の水分率を調整する水分率調整工程と、貯留ピットの攪拌区画から廃棄物を焼却炉へクレーン装置により搬送供給する搬送供給工程とを備え、
水分率分布測定工程は、貯留ピット内の全領域の廃棄物を撮影して画像情報を取得し、画像情報から廃棄物の明度分布を求め、予め設定された廃棄物の明度と廃棄物の水分率との関係にもとづき、貯留ピット内を区分した複数領域の各領域に存在する廃棄物の水分率を示す貯留ピット内の廃棄物の水分率分布を導出する貯留ピット画像処理を行い、
水分率調整工程は、水分率分布測定工程により導出された貯留ピット内の廃棄物の水分率分布を参照して、所定範囲の水分率より低い低水分率廃棄物の存在する領域から低水分率廃棄物を、所定範囲の水分率より高い高水分率廃棄物の存在する領域から高水分率廃棄物を取り出して攪拌区画に移送して混合するときに、上記攪拌区画における低水分率廃棄物と高水分率廃棄物とが混合された廃棄物の水分率を所定範囲とするように、低水分率廃棄物と高水分率廃棄物との混合比率を算出する混合比率算出工程と、算出された混合比率にもとづき各領域から廃棄物をクレーン装置により攪拌区画へ移送する移送手順を計画しクレーン装置に運転指令を発信する移送計画工程と、
クレーン装置が、移送計画工程からの運転指令にもとづき、貯留ピットの各領域から廃棄物を攪拌区画へ移送し、攪拌混合し、さらに所定範囲の水分率とされた廃棄物を焼却炉へ搬送供給する移送・搬送工程とを有する、
ことを特徴としている。
【0019】
<第五発明>
第五発明に係る廃棄物供給方法は、第四発明の工程に加え、さらにバケット水分率測定工程を有し、
バケット水分率測定工程は、クレーン装置のバケットが掴む廃棄物を撮影し画像情報を取得するバケット撮影工程と、該バケット撮影工程により得られた画像情報からバケットが掴む廃棄物の明度を求め、予め設定された廃棄物の明度と廃棄物の水分率との関係にもとづき、バケットが掴む廃棄物の水分率を導出するバケット画像処理工程とを有し、
混合比率算出工程は、水分率分布測定工程により導出された貯留ピット内の廃棄物の水分率分布と、バケット水分率測定工程により導出されたバケットが掴む廃棄物の水分率とにもとづき、低水分率廃棄物と高水分率廃棄物との混合比率を算出することにより構成される。
【0020】
<第六発明>
第六発明に係る廃棄物供給方法は、第四又は第五発明のいずれかの工程に加え、貯留ピット内を区分した複数領域の各領域と攪拌区画の少なくとも一方にて、クレーン装置のバケットが掴んだ廃棄物の落下状況を撮影し画像情報を取得し、得られた画像情報から廃棄物の形状を導出する廃棄物形状測定工程と、攪拌区画に貯留される廃棄物の形状を所定のものとするようにクレーン装置のバケットによる廃棄物の掴み操作と落下操作を繰り返すように該クレーン装置を制御する廃棄物形状調整工程を、さらに有していることにより構成される。
【0021】
<発明の原理>
このような構成の本発明の廃棄物供給装置そして廃棄物供給方法では、貯留ピットの廃棄物は、次の手順で混合・攪拌されて所定範囲の水分率のもとで焼却炉へ供給される。
【0022】
本発明では、貯留ピットの一部に、廃棄物を攪拌混合するための攪拌区画が設けられている。該攪拌区画以外は貯留ピットの大部分を占めていて貯留区画をなしており、廃棄物収集車により搬入された廃棄物は、この貯留区画に投入そして貯留される。
【0023】
本発明では、水分率分布測定装置により貯留ピット内の廃棄物の水分率分布が測定される。水分率分布測定装置は撮影装置と画像処理装置とを有している。撮影装置は貯留ピット内の全領域の廃棄物を撮影していてその画像情報を画像処理装置へ送信する。画像処理装置は、廃棄物についての画像の明度と水分率との関係をデータとして有していて、撮影装置から受けた画像情報からこの関係を参照して、貯留ピット内を区分した複数領域の各領域について廃棄物の水分率を得て貯留ピット内の廃棄物の水分率分布を導出する。
【0024】
次に、上記水分率分布にもとづき、低水分率廃棄物の存在する領域から低水分率廃棄物を、そして高水分率廃棄物の存在する領域から高水分率廃棄物を攪拌区画へ移送し、これらをこの攪拌区画で攪拌混合する。上記攪拌区画における低水分率廃棄物と高水分率廃棄物とが混合された廃棄物の水分率を所定範囲とするように、混合比率算出装置により、低水分率廃棄物と高水分率廃棄物との混合比率が算出されて上記攪拌区画へ移送され、移送された低水分率廃棄物と高水分率廃棄物とが攪拌区画で攪拌混合され、所定範囲の水分率の廃棄物を生成する。
【0025】
かくして、所定範囲の水分率となった攪拌区画の廃棄物はクレーン装置のバケットにより掴まれて焼却炉へ搬送供給される。また、水分率調整装置において、攪拌区画における低水分率廃棄物と高水分率廃棄物とが混合された廃棄物の水分率を所定範囲とするように調整する代わりに、所定範囲の水分率に対応する所定範囲の明度を導出しておき、混合された廃棄物の明度を所定範囲とするように制御することとしてもよい。
【0026】
本発明において、廃棄物供給装置はさらにバケット水分率測定装置を有しているとき、バケット水分率測定装置のバケット撮影装置は、クレーン装置のバケットが掴む廃棄物を撮影し画像情報を取得し、バケット画像処理装置は得られた画像情報から廃棄物の明度を求め、予め記憶された廃棄物の明度と廃棄物の水分率との関係にもとづき、バケットが掴む廃棄物の水分率を導出して、混合比率算出装置が、水分率分布測定装置により導出された貯留ピット内の廃棄物の水分率分布にもとづき、低水分率廃棄物と高水分率廃棄物との混合比率を算出する際に、バケット水分率測定装置により導出されたバケットが掴む廃棄物の水分率とにももとづき、攪拌区画における低水分率廃棄物と高水分率廃棄物とが混合された廃棄物の水分率を所定範囲とするように、低水分率廃棄物と高水分率廃棄物との混合比率を算出する。
【0027】
バケット水分率測定装置により、バケットが掴む廃棄物の水分率を測定することができるため、低水分率廃棄物の存在する領域から低水分率廃棄物を、そして高水分率廃棄物の存在する領域から高水分率廃棄物を攪拌区画へ移送するときに、低水分率廃棄物及び高水分率廃棄物のより正確な水分率を把握することができ、攪拌区画において混合される廃棄物の水分率をより確実に所定範囲とすることができる。また、攪拌区画において混合された廃棄物をバケットで掴みバケット水分率測定装置により混合された廃棄物の水分率を測定して、水分率調整装置において設定した所定範囲の水分率と比較し、所定範囲内に至っていない場合には低水分率廃棄物と高水分率廃棄物との混合比率を修正するように混合比率算出装置を操作するようにしてもよい。
【0028】
貯留ピットに投入されるときに廃棄物は、袋体に廃棄物が収容されている袋体の状態、袋体が破袋され収容されていた廃棄物が分散している状態、廃棄物が大きな塊状となっている状態、粗大物などの形状となっている。袋体や大きな塊状や粗大物のままであるとクレーン装置での移送、攪拌区画での攪拌混合に支障が生じたり、焼却炉内への投入が困難になったり、燃焼が不安定となり不具合が生じる。そのため、袋体を破袋し収容されていた廃棄物を分散し、大きな塊状の廃棄物や粗大物を細かく破砕することが必要である。
【0029】
本発明において、落下状況撮影装置、廃棄物形状測定装置及び廃棄物形状制御装置をも、さらに備えている場合には、落下状況撮影装置によりクレーン装置のバケットが掴んだ廃棄物の落下状況を撮影し画像情報を取得して、廃棄物形状測定装置が画像情報から廃棄物の形状を導出し、廃棄物形状制御装置が攪拌区画に貯留される廃棄物の形状を所定のものとするようにクレーン装置のバケットによる廃棄物の掴み操作と落下操作を繰り返すようにクレーン装置を制御する。廃棄物の落下状況の画像情報と、廃棄物の形状について関係を記憶させておいて、この関係を参照し廃棄物の形状を導出することが好ましい。貯留ピットに貯留されている廃棄物は、廃棄物が収容されている袋体の状態、袋体が破袋され収容されていた廃棄物が分散している状態、廃棄物が大きな塊状となっている状態、粗大物などの形状となっている。バケットによる廃棄物の掴み操作と落下操作を繰り返すことにより、袋体を破袋し収容されていた廃棄物を分散し、大きな塊状の廃棄物や粗大物を細かく破砕して、廃棄物の形状を所定のものとする。廃棄物の形状の所定のものとして、袋体であるか、塊状であるか、粗大物であるか、適切に分散させること、好ましい大きさなどの観点から指標を設けて定めることが好ましい。また、廃棄物の適切な大きさは炉規模により異なり、小さい炉ほど小さい方が適切となる。廃棄物が大きいと炉内への投入が不均一になるため、燃焼が不安定になるからである。
【発明の効果】
【0030】
本発明では、以上のように、廃棄物の貯留ピット内での廃棄物の画像を撮影し明度分布を計測して、廃棄物ピット内の廃棄物の水分率分布を求め、低水分率廃棄物と高水分率廃棄物を取り出して貯留ピット内の攪拌区画へ移送して攪拌混合を行い、水分率が所定範囲の廃棄物を形成し、焼却炉に廃棄物を供給することとしたので、水分率が所定範囲である廃棄物を確実に得られ、焼却炉での廃棄物の燃焼が安定し、燃焼により熱回収して得る蒸気発生量も安定する。
【0031】
さらには、貯留ピットへ搬入される廃棄物の水分率が変動しても、焼却炉へ投入される際には、廃棄物は所定範囲の水分率とされるので、燃焼制御、例えば一次空気供給量の制御が簡単になる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施形態装置の概要構成を示し、該装置の縦断面図である。
図2図1装置における貯留ピットの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付図面の図1にもとづき、本発明の一実施形態について説明する。
【0034】
本実施形態装置は、大別すると、廃棄物供給装置Iと焼却炉IIとから成り、廃棄物供給装置Iは、廃棄物を受け入れて一時貯留する貯留ピット10から廃棄物を取り出し焼却炉IIへ搬送供給する装置である。廃棄物供給装置Iは、貯留ピット10内の廃棄物の水分率分布を測定する水分率分布測定装置20と、焼却炉IIへ供給する廃棄物の水分率を制御する水分率調整装置30と、そして貯留ピット10から廃棄物を取り出して焼却炉IIへ搬送供給するクレーン装置40とを有している。
【0035】
廃棄物Pは、廃棄物収集車(図示せず)によりもち込まれ上記貯留ピット10へ投入されるが、廃棄物が袋体に入っている状態や塊状の状態や粗大物の状態で投入され貯留される。貯留ピット10内の廃棄物Pは、焼却炉IIへ搬送供給される前に、所定範囲の水分率となるように処理されるが、そのための本実施形態における諸装置の説明に先立ち、焼却炉IIについて説明する。
【0036】
焼却炉IIは、廃棄物Pの供給を受けるホッパ51を上端に有し該ホッパ51から廃棄物Pを炉内に落下投入するシュート52が設けられている。該焼却炉IIは、例えば、火格子式焼却炉として形成することができる。火格子式焼却炉の場合、炉内底部に設けられている火格子(図示せず)の下方から燃焼用一次空気を供給するように、供給空気量調整装置(図示せず)を経て炉内の燃焼室53に燃焼用一次空気を供給する風箱(図示せず)が炉底に設けられている。上記火格子は該火格子上の廃棄物を図にて右方向に送るように作動している。
【0037】
上記焼却炉IIは、燃焼室53の後流側上部が、燃焼室53での廃棄物燃焼で発生した可燃ガスを燃焼する二次燃焼室54となっていて、その上方に排気部55が設けられている。二次燃焼室54と排気部55の排気口55Aとの間の位置には、二次燃焼で得られる熱を回収するボイラ(図示せず)が配設されている。上記排気口55Aは、後流側に設けられた集塵機や排ガス処理装置(図示せず)に接続されていて、焼却炉IIから排出される排ガスは無害化された後に、大気に放出されるようになっている。
【0038】
上記貯留ピット10は、廃棄物収集車により搬入された廃棄物を一時貯留するのに十分な容積そして床面積を有している。
【0039】
上記貯留ピット10の上方には、クレーン装置40が配設されている。本実施形態では、該クレーン装置40は、貯留ピット10内の廃棄物Pを該貯留ピット10から焼却炉IIのホッパ51の上方位置まで搬送し該ホッパ51へ投入供給する搬送供給機能と、廃棄物Pを貯留ピット10内で移送せしめる移送攪拌機能とを有している。上記クレーン装置40は、水平方向に延びる走行軌道41と、該走行軌道41に沿って走行自在な巻上機(図示せず)と、該巻上機に巻回され下方に向け延びその長さが加減されるワイヤ42と、該ワイヤ42の下端に吊下支持され昇降自在かつ開閉自在なバケット43とを有している。したがって、バケット43は、上下方向では、ワイヤ42の吊下長さの加減により昇降自在であり、水平方向では、貯留ピット10と焼却炉IIのホッパ51の間、さらには、貯留ピット10内での移動が可能である。貯留ピット10内での水平方向移動は、図1では、紙面に沿った左右方向のみならず、紙面に直角な方向でも移動可能である。したがって、昇降自在なバケット43は、水平方向では、貯留ピット10の水平面のどの部分に対してもその上方に位置することができる。
【0040】
廃棄物供給装置Iは、上記バケット43を吊下する巻上機を移動させる走行軌道41をもつクレーン装置40に加え、上記バケット43の移動、昇降、開閉等の動作を制御して貯留ピット10で該バケット43により掴まれ焼却炉IIへ供給される該廃棄物Pの水分率を制御するための水分率分布測定装置20と水分率調整装置30とを有している。
【0041】
水分率分布測定装置20は、貯留ピット撮影装置21と貯留ピット画像処理装置22とを有している。該貯留ピット撮影装置21は、貯留ピット10の側壁に設けられたカメラ11を有していて、該カメラ11で貯留ピット10内全領域の廃棄物Pを撮影して画像を形成し、その画像を画像情報として上記貯留ピット画像処理装置22へ送信するようになっている。カメラ11は2台以上設置して貯留ピット全体の廃棄物を撮影し、死角のない3次元情報、距離による誤差のない寸法情報を得ることが、貯留ピット全体の廃棄物の水分率分布を把握するのに望ましい。貯留ピット10内の廃棄物の貯留状況によっては、カメラ11を1台設けることとしてもよい。
【0042】
廃棄物は、その水分率が低いと画像における明度が高く、水分率が高いと明度が低い。そこで、本実施形態では、貯留ピット撮影装置21により得られた貯留ピット10内の廃棄物の画像情報から貯留ピット画像処理装置22により貯留ピット10内の廃棄物の明度分布を求め、さらに予め設定され記憶された廃棄物の明度と廃棄物の水分率との関係にもとづき、貯留ピット10内の廃棄物の水分率分布を導出する。
【0043】
貯留ピット画像処理装置22では、上記貯留ピット撮影装置21からの画像情報を処理するのに際し、上方から見た貯留ピット10内の水平面の全領域を、図2に見られるように区分している。この区分は、貯留ピット10の一つの隅部における一部に一つの攪拌区画Aをなし、そして残部を細かく区分して複数の細領域B1,B2,・・・を有する貯留区画Bをなすように二分している。上記貯留区画Bは、廃棄物収集車から搬入される廃棄物を貯留する区画であり、図2の例では水平面内の縦方向と横方向に細区分されて、細領域B1,B2,・・・を有し、例えば、0.5×0.5m程度に細区分することができる。攪拌区画Aは、貯留区画Bに貯留されている廃棄物のうち水分率の異なる廃棄物を移送し攪拌混合するための区画であり、該貯留領域Bの細区分された各細領域よりも広い面積を有しており、その縦横の長さは、小さくともバケット43を開いたときの長さの1.5〜2.5倍程度でよい。
【0044】
貯留ピット画像処理装置22では、導出した貯留ピット10内の廃棄物の水分率分布データを、貯留区画Bの細区分された細領域群に対応させることにより、各細領域B1,B2,・・・に貯留される廃棄物の水分率を把握することができる。例えば、細領域B1,B2,B3、B4には所定範囲の水分率より低い低水分率の廃棄物が存在し、細領域B11,B12,B13、B14には所定範囲の水分率より高い高水分率の廃棄物が存在していることを把握することができる。このように貯留ピット10の貯留区画Bの細区分された各細領域ごとに貯留される廃棄物の水分率を水分率分布情報として把握することができ、このような水分率分布情報が水分率分布測定装置20の貯留ピット画像処理装置22に保存される。
【0045】
上記貯留ピット撮影装置21と貯留ピット画像処理装置22とを有する水分率分布測定装置20は、水分率調整装置30に接続されている。該水分率調整装置30は、混合比率算出装置31と移送計画装置32とを有しており、詳しくは、水分率分布測定装置20の貯留ピット画像処理装置22が水分率調整装置30の混合比率算出装置31と接続されている。
【0046】
水分率調整装置30の混合比率算出装置31は、水分率分布を把握する際に用いた細領域の隣接する複数分を集めて、一つの取出領域とし、この取出領域を用いて貯留ピット10内の水分率分布を把握し、所定範囲の水分率より低い低水分率廃棄物の存在する取出領域や所定範囲の水分率より高い高水分率廃棄物の存在する取出領域として把握して、取出領域の単位で水分率調整を行うようこととしている。取出領域の大きさはクレーンのバケットが開く長さ(2〜5m)より大きく設定する。
【0047】
水分率調整装置30の混合比率算出装置31は、貯留区画Bにおける所定範囲の水分率より低い低水分率廃棄物の存在する取出領域から低水分率廃棄物を、所定範囲の水分率より高い高水分率廃棄物の存在する取出領域から高水分率廃棄物をそれぞれ取り出して攪拌区画Aに移送するときに、上記攪拌区画Aにおける攪拌混合後の廃棄物の水分率を所定範囲とするように、貯留区画Bから取り出す低水分率廃棄物と高水分率廃棄物との混合比率を算出するようになっている。
【0048】
この算出された混合比率の結果をもとに、移送計画装置32は、クレーン装置40によりどの取出領域から低水分率廃棄物と高水分率廃棄物とをどのような比率で攪拌区画Aへ移送するのかという移送手順を計画しクレーン装置40に運転指令を発信する。
【0049】
クレーン装置40は、移送計画装置32からの運転指令にもとづき、貯留区画Bの複数の取出領域のいずれかと攪拌区画Aとの間を移動し、各取出領域から廃棄物を攪拌区画Aへ移送し、かつ移送後に攪拌区画Aで該廃棄物を攪拌混合する機能を有している。
【0050】
クレーン装置40は、貯留ピット10内を移動し、貯留区画Bの指定された取出領域と攪拌区画Aとの間で移動し、バケット43の昇降動作と開閉動作により廃棄物Pを掴んで上記取出領域から攪拌区画Aへ移送する。複数の取出領域のどこから廃棄物をどれくらい移動するかは、上述した混合比率となるように定められる。バケットが一度に掴む廃棄物量はほぼ一定であるので、クレーンが移動する回数を制御することにより、廃棄物を移動する量を制御するようにする。クレーン装置40は、攪拌区画Aでは、バケット43の昇降動作と開閉動作を繰り返すことで、すなわち攪拌区画Aに移送された廃棄物を掴み上げ落下させる動作を繰り返すことで廃棄物を攪拌混合してその均一化を図る。
【0051】
このような本実施形態では、貯留ピット10内の廃棄物Pは、次の要領で所定範囲の水分率のもとで焼却炉IIへ搬送供給される。
【0052】
水分率分布測定装置20は、貯留ピット10内の貯留区画Bの全領域について、撮影された廃棄物Pの画像情報による明度分布から、貯留ピット画像処理装置22に予め記憶され設定されている廃棄物の明度と水分率との関係にもとづいて、廃棄物Pの水分率分布を導いており、貯留ピット10の貯留区画Bの細区分された各細領域ごとに貯留される廃棄物の水分率を把握している。水分率調整装置30の混合比率算出装置31は、各細領域ごとの水分率分布から取出領域ごとの水分率分布を導き、上記攪拌区画Aにおける廃棄物Pの水分率が、所定範囲となるように、貯留区画Bにおける異なる水分率の取出領域のどこからどれだけ廃棄物Pを掴んで上記攪拌区画Aへ移送すればよいか、その混合比率を算出し、移送計画装置32が混合比率算出装置31で算出された混合比率にもとづき各取出領域から廃棄物をクレーン装置40により攪拌区画へ移送する移送手順を計画しクレーン装置40に運転指令を発信する。クレーン装置40はこの指令を受けて、各取出領域から低水分率廃棄物、高水分率廃棄物を上記混合比率のもとでバケット43により掴み、攪拌区画Aへ移送し、ここで攪拌混合し、水分率が所定範囲である廃棄物を生成する。その際、高水分率廃棄物が足りない場合、ピットの下層にある廃棄物は高水分率となっている傾向にあるので、表層の廃棄物を除去してこれを用いてもよい。
【0053】
攪拌区画において攪拌混合された廃棄物の水分率を貯留ピット撮影装置21と貯留ピット画像処理装置22とにより測定して、水分率調整装置において設定した所定範囲の水分率と比較し、相違している場合には低水分率廃棄物と高水分率廃棄物との混合比率を修正するように混合比率算出装置を操作するようにしてもよい。また、水分率調整装置において、攪拌区画における低水分率廃棄物と高水分率廃棄物とが混合された廃棄物の水分率を所定範囲とするように調整する代わりに、所定範囲の水分率に対応する所定範囲の明度を導出しておき、混合された廃棄物の明度を所定範囲とするように制御することとしてもよい。
【0054】
かくして、所定範囲の水分率の廃棄物Pが、クレーン装置40により攪拌区画Aから焼却炉IIへ搬送供給される。
【0055】
貯留ピットへ続けて搬入される廃棄物と、移送された廃棄物の下から現れる廃棄物により、貯留ピット内の廃棄物の状況は変化し続ける。貯留ピット内廃棄物全体の明度分布をリアルタイムで把握し水分率分布を把握して、上述のように適切な水分率の廃棄物を選択して攪拌区画Aに移送し混合して所定範囲の水分率の廃棄物を生成することにより、焼却炉に最適燃焼可能な廃棄物を安定供給し続けることが可能になる。このとき、貯留ピット内に高水分率廃棄物や低水分率廃棄物の燃焼不適廃棄物が残留し蓄積しないように、焼却炉への供給する廃棄物を所定水分率範囲に維持しながら、燃焼不適廃棄物を減らすように移送し混合することが好ましい。そのためには、明度分布から水分率分布を導き、水分率の所定範囲からのずれの大きい廃棄物の存在状況を把握しておき、これを減少するように移送混合を行う。こうすることで、水分率が所定範囲の廃棄物の自動供給が可能になり、焼却炉の安定運転や高効率発電の実現が可能になる。
【0056】
本発明は、図示した形態に限定されず、種々変形が可能である。図2のように貯留ピット10内において攪拌区画Aを定めた位置に固定して形成するのではなく、貯留ピット内で攪拌区画Aを移動させるようにしてもよい。当初に設定した位置の攪拌区画Aで周囲の貯留区画Bから廃棄物を移動し攪拌混合し、周囲の貯留区画Bに貯留されている廃棄物が少なくなったときに、他の位置に攪拌区画Aを移動して攪拌混合を行うようにしてもよい。また、攪拌区画Aを細分して複数の領域A1、A2,・・・を有するようにし、攪拌混合する領域を順次移動させるようにしてもよい。
【0057】
また、図2のように貯留ピット10内において攪拌区画Aと貯留区画Bとを別個の定めた位置に形成するのではなく、貯留ピット10内全域を貯留区画Bとしつつ、その貯留区画Bのうちの一部の区画を攪拌区画Aとすることもできる。この場合、例えば、貯留区画Bの一部である低水分率廃棄物領域から低水分率廃棄物を、貯留区画Bの他の一部である高水分率廃棄物領域へ移送し、該高水分率廃棄物領域を攪拌区画Aとして攪拌混合が行われてもよい。また、貯留区画Bの一部である高水分率廃棄物領域から高水分率廃棄物を、貯留区画Bの他の一部である低水分率廃棄物領域へ移送し、該低水分率廃棄物領域を攪拌区画Aとして攪拌混合が行われてもよい。低水分率廃棄物領域から低水分率廃棄物を高水分率廃棄物領域へ移送して該高水分率廃棄物領域で攪拌混合をする場合、該攪拌混合したことによりその領域の廃棄物が低水分率廃棄物となった場合には、水分率分布測定装置20は、高水分率廃棄物領域として記憶していたその領域を低水分率廃棄物領域として新たに記憶するようにしてもよい。
【0058】
本発明は、図示した形態に限定されず、種々変形が可能である。例えば、廃棄物供給装置Iは、さらにバケット水分率測定装置を有し、バケット水分率測定装置は、クレーン装置のバケットが掴む廃棄物を撮影し画像情報を取得するバケット撮影装置(カメラ)と、バケット撮影装置により得られた画像情報からバケットが掴む廃棄物の明度を求め、予め設定され記憶された廃棄物の明度と廃棄物の水分率との関係にもとづき、バケットが掴む廃棄物の水分率を導出するバケット画像処理装置とを有し、混合比率算出装置31は、水分率分布測定装置により導出された貯留ピット内の廃棄物の水分率分布と、バケット水分率測定装置により導出されたバケットが掴む廃棄物の水分率とにもとづき、低水分率廃棄物と高水分率廃棄物との混合比率を算出することとしてもよい。
【0059】
バケット水分率測定装置により、バケットが掴む廃棄物の水分率を測定することができるため、低水分率廃棄物の存在する領域から低水分率廃棄物を、そして高水分率廃棄物の存在する領域から高水分率廃棄物を攪拌区画へ移送するときに、低水分率廃棄物及び高水分率廃棄物のより正確な水分率を把握することができ、攪拌区画における低水分率廃棄物と高水分率廃棄物とが混合された廃棄物の水分率を所定範囲とするように、低水分率廃棄物と高水分率廃棄物との混合比率をより適正に算出することができる。かくして、攪拌区画において混合される廃棄物の水分率をより確実に所定範囲とすることができる。また、攪拌区画において混合された廃棄物をバケットで掴みバケット水分率測定装置により混合された廃棄物の水分率を測定して、水分率調整装置において設定した所定範囲の水分率と比較し、所定範囲内に至っていない場合には、低水分率廃棄物と高水分率廃棄物との混合比率を修正するように混合比率算出装置を操作するようにしてもよい。
【0060】
貯留ピットに投入され貯留されるときに、廃棄物が収容されている袋体の状態や廃棄物が大きな塊状となっている状態や粗大物などの形状となっている場合には、袋体を破袋して、塊状の廃棄物や粗大物を破砕して廃棄物を分散させておくと、クレーン装置での移送そして攪拌区画での攪拌混合がしやすいので、そのための装置として、廃棄物の形状を測定する落下状況撮影装置、廃棄物形状測定装置と、その形状を適切に分散させた形状とする廃棄物形状制御装置とを有しているようにできる。
【0061】
落下状況撮影装置によりクレーン装置のバケットが掴んだ廃棄物の落下状況を撮影し画像情報を取得して、廃棄物形状測定装置が画像情報から廃棄物の形状を導出し、廃棄物形状制御装置が攪拌区画に貯留される廃棄物の形状を所定のものとするようにクレーン装置のバケットによる廃棄物の掴み操作と落下操作を繰り返すようにクレーン装置を制御する。バケットによる廃棄物の掴み操作と落下操作を繰り返すことにより、袋体を破袋し収容されていた廃棄物を分散し、大きな塊状の廃棄物や粗大物を細かく破砕して、廃棄物の形状を所定のものとする。
【0062】
このようにして、バケットにより廃棄物を掴んでもち上げこれを落下させる動作を繰り返すことで廃棄物の形状の制御を行うが、その際の廃棄物の形状を画像から算出し、所定の形状のものになるまで落下攪拌を繰り返す。
【符号の説明】
【0063】
10 貯留ピット
20 水分率分布測定装置
21 貯留ピット撮影装置
22 貯留ピット像処理装置
30 水分率調整装置
31 混合比率算出装置
32 移送計画装置
A 攪拌区画
I 廃棄物供給装置
II 焼却炉
図1
図2