(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の押釦装置において、前記第1のフィルタ及び前記第2のフィルタは、前記頭部の移動に応じて変形した後、変形前の形状に復元し、かつ多数の連続する気泡を備えた多孔質素材であることを特徴とする押釦装置。
請求項1または請求項2に記載の押釦装置において、前記第1のフィルタは、前記収納部内に設けられて前記頭部の前記外周凸部が挿入する環状の第1溝部と前記頭部の前記外周凸部とによって囲われる第1空間に配置され、
前記第2のフィルタは、前記頭部に設けられて前記第1溝部の内周に位置する前記収納部の前記内周凸部が挿入する環状の第2溝部と前記収納部の前記内周凸部とによって囲われる第2空間に配置されていることを特徴とする押釦装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、
図1〜
図5を参照して、この発明を腕時計に適用した一実施形態について説明する。
この腕時計は、
図1〜
図3に示すように、腕時計ケース1を備えている。この腕時計ケース1は、本体ケース2と外装ケース3とを備えている。
【0011】
本体ケース2は、
図1〜
図3に示すように、硬質の合成樹脂で形成され、内部に金属製の補強部2aが埋め込まれた構造になっている。外装ケース3は、ウレタン樹脂などの軟質の合成樹脂で形成された第1外装部材3aと、ステンレスなどの金属で形成された第2外装部材3bと、を備え、これらが本体ケース2の外周にこれを覆った状態でビス3cによって取り付けられている。
【0012】
この腕時計ケース1の上部開口部、つまり本体ケース2の上部開口部には、
図1〜
図3に示すように、時計ガラス4がガラスパッキン4aを介して取り付けられている。また、この腕時計ケース1の下部、つまり本体ケース2の下部には、裏蓋5が防水リング5aを介して取り付けられている。
【0013】
この腕時計ケース1の内部、つまり本体ケース2の内部には、
図2および
図3に示すように、時計モジュール6が配置されている。この時計モジュール6は、図示しないが、指針の運針により時刻を指示する時計ムーブメントや、時刻などの情報を表示する表示部、後述するスイッチ素子20、これらを電気的に駆動して制御する回路部など、時計機能に必要な各種の部品を備えている。
【0014】
また、この腕時計ケース1の12時側と6時側とには、
図1に示すように、時計バンド(図示せず)が取り付けられるバンド取付部7がそれぞれ設けられている。さらに、この腕時計ケース1の2時側、3時側、4時側、6時側、8時側、10時側には、それぞれ押釦装置8が設けられている。
【0015】
これら複数の押釦装置8のうち、例えば、4時側に位置する押釦装置8は、
図2および
図3に示すように、支持部材である腕時計ケース1の本体ケース2に設けられた貫通孔10にスライド可能に挿入された操作部材11と、この操作部材11を腕時計ケース1の外部に向けて付勢するばね部材12と、を備えている。
【0016】
この場合、本体ケース2の貫通孔10は、
図2および
図3に示すように、その外端部に座ぐり部10aが貫通孔10の内径よりも少し大きく形成されている。この本体ケース2の外面には、貫通孔10の内径よりも十分に大きい円筒形状の筒状部13が貫通孔10と同一軸上に対応して設けられている。
【0017】
この筒状部13は、
図2および
図3に示すように、その外径が本体ケース2内の時計モジュール6の厚み、つまり時計モジュール6の上下方向の長さよりも大きく、かつ時計ガラス4の下面と裏蓋の下面との間の長さよりも小さく形成されている。また、この筒状部13は、その内径が筒状部13の外径よりも小さく、かつ本体ケース2内の時計モジュール6の厚み、つまり時計モジュール6の上下方向の長さよりも少し大きく形成されている。この筒状部13の内部には、収納部14が設けられている。
【0018】
操作部材11は、
図2および
図3に示すように、本体ケース2の貫通孔10内にスライド可能で且つ回転可能に挿入される軸部15と、この軸部15の外端部に設けられて、筒状部13の収納部14内にスライド可能で且つ回転可能に配置される頭部16と、を備えている。
【0019】
この場合、操作部材11の軸部15は、
図2および
図3に示すように、ステンレスやチタンなどの金属、または硬質の合成樹脂によって丸棒状に形成され、その外径が本体ケース2の貫通孔10の内径とほぼ同じ大きさに形成されている。また、この軸部15は、軸方向の長さが貫通孔10の軸方向の長さよりも長く、かつ貫通孔10と筒状部13との両方を足した長さよりも短く形成されている。
【0020】
これにより、操作部材11の軸部15は、
図2および
図3に示すように、本体ケース2の貫通孔10内に挿入された際に、外端部が筒状部13の収納部14内に突出した状態で、内端部が本体ケース2の内部に突出し、この突出した内端部にEリングなどの抜止め部材17が取り付けられている。このため、この軸部15は、抜止め部材17が本体ケース2の内周面に接離可能に当接することにより、貫通孔10から腕時計ケース1の外部に抜け出さない構造になっている。
【0021】
さらに、この操作部材11の軸部15の外周面には、
図2および
図3に示すように、複数のパッキン部材18がそれぞれ環状に設けられている。これら複数のパッキン部材18は、その外周部が貫通孔10の内周面に摺動可能に圧接することにより、軸部15の外周面と貫通孔10の内周面との間の防水を図る構造になっている。
【0022】
一方、操作部材11の頭部16は、
図2および
図3に示すように、軸部15と同様、ステンレスやチタンなどの金属、または硬質の合成樹脂によって円柱状に形成されている。この頭部16は、その内面の中心部に軸部15の外端部が一体に設けられている。この頭部16は、外径が筒状部13の内径とほぼ同じ大きさで、軸方向の長さが筒状部13内の収納部14の軸方向の長さとほぼ同じ長さに形成されている。これにより、頭部16は、筒状部13の収納部14内に出没可能に配置される構造になっている。
【0023】
ばね部材12は、
図2および
図3に示すように、コイルばねであり、操作部材11の頭部16を腕時計ケース1の外部に向けて付勢する構造になっている。すなわち、このばね部材12は、筒状部13の収納部14内に位置する軸部15の外周にその軸方向に沿って配置された状態で、内端部が貫通孔10の座ぐり部10a内に配置され、外端部が操作部材11の頭部16の内面に弾接して配置された構造になっている。
【0024】
これにより、ばね部材12は、
図2および
図3に示すように、ばね力によって操作部材11の頭部16を腕時計ケース1の外部に向けて付勢し、軸部15の内端部を時計モジュール6のスイッチ素子20から引き離してスイッチ素子20をオフ状態にして、軸部15の内端部の抜止め部材17を本体ケース2の内周面に当接させる構造になっている。
【0025】
また、このばね部材12は、
図2および
図3に示すように、ばね力に抗して操作部材11の頭部16が押圧操作された際に、軸部15をその軸方向にスライドさせて、軸部15の内端部を本体ケース2内に突出させ、この突出した軸部15の内端部によって時計モジュール6のスイッチ素子20をスイッチ動作させる構造になっている。
【0026】
この場合、スイッチ素子20は、
図2および
図3に示すように、頭部16がばね部材12のばね力に抗して押圧されて、操作部材11の軸部15が本体ケース2の内部に向けてスライドした際に、本体ケース2の内部に押し込まれた軸部15の内端部によって押されて、スイッチ動作してスイッチ信号を出力する構造になっている。
【0027】
ところで、筒状部13内の収納部14と操作部材11の頭部16との間には、第1空間部23と第2空間部24とが形成されている。
図2および
図3においては、第1空間部23に第1のフィルタ25、第2空間部24に第2のフィルタ26が配置された状態で図示している。
【0028】
第1のフィルタ25および第2のフィルタ26は、多数の気泡を備えた多孔質素材であり、操作部材11の頭部16のスライド動作に応じて変形すると共に復元するスポンジ状の構造になっている。この場合、多孔質素材の多数の気泡は、連続する多数の気泡であっても良く、または多数のうちの一部が連続しない多数の気泡であっても良い。
【0029】
第1空間部23は、操作部材11の頭部16の外周凸部16aがスライド可能に挿入する環状の第1溝部27と頭部16の外周凸部16aとによって囲われた空間である。本実施形態においては、第1空間部23は他の空間とつながっている密閉されていない空間を例示したが、それに限らず、第1溝部27と頭部16の外周凸部16aとによって密閉(独立)された空間であっても良い。
【0030】
すなわち、第1溝部27は、
図2〜
図5に示すように、第1空間部23を形成するために筒状部13の収納部14内に設けられた環状の内周凸部14aの外周側の内面と筒状部13の内周面との間に、円形のリング状に形成されている。これにより、第1溝部27は、その内部に操作部材11の頭部16の外周凸部16aが軸方向にスライド可能に挿入される構造になっている。
【0031】
また、第2空間部24は、第1空間部23を形成するための収納部14内の内周凸部14aがスライド可能に挿入する環状の第2溝部28と収納部14内の内周凸部14aとによって囲われた空間である。本実施形態においては、第2空間部24は他の空間とつながっている密閉されていない空間を例示したが、それに限らず、第2溝部28と収納部14内の内周凸部14aとによって密閉(独立)された空間であっても良い。
【0032】
すなわち、第2溝部28は、
図2〜
図5に示すように、第2空間部24を形成するために頭部16の外周凸部16aの内周側の内面と収納部14の内周凸部14aの内周面に対応する外周側の内面との間に、第1溝部27の中心径よりも小さい中心径の円形のリング状に形成されている。これにより、第2溝部28は、その内部に筒状部13の収納部14内の内周凸部14aが軸方向にスライド可能に挿入する構造になっている。
【0033】
この場合、第1溝部27と第2溝28とは、
図2〜
図5に示すように、断面形状の大きさが異なっている。すなわち、第1溝部27は、径方向の長さである溝幅が第2溝部28の径方向の長さである溝幅よりも大きく形成され、第1溝部27の断面積が第2溝部28の断面積よりも大きく形成されている。
【0034】
一方、第1空間部23内に配置された第1のフィルタ25は、
図2〜
図4に示すように、第1空間部23の第1溝部27内に配置されるリング状に形成されている。すなわち、この第1のフィルタ25は、外径が第1溝部27内の外周側の内径と同じ大きさで、内径が第1溝部27内の内周側の内径と同じ大きさに形成されている。この第1のフィルタ25は、軸方向の長さ(厚み)が第1溝部27の軸方向の深さとほぼ同じ長さで形成されている。
【0035】
これにより、第1のフィルタ25は、
図2〜
図4に示すように、操作部材11の頭部16が腕時計ケース1の外部から押されて操作部材11が腕時計ケース1の内部に向けてスライドする際に、その頭部16の外周凸部16aによって押されて潰れるように収縮変形する形状になっている。
【0036】
また、この第1のフィルタ25は、
図2〜
図4に示すように、操作部材11がばね部材12のばね力によって腕時計ケース1の外部に向けてスライドする際に、頭部16の外周凸部16aのスライド動作、つまり頭部16の外周凸部16aが第1溝部27内から抜け出す方向の動作に伴って膨張して元の形状に復元する構造になっている。
【0037】
第2空間部24内に配置された第2のフィルタ26は、
図2、
図3および
図5に示すように、第2空間部24の第2溝部28内に配置されるリング状に形成されている。すなわち、この第2のフィルタ26は、外径が第2溝部28内の外周側の内径と同じ大きさで、内径が第2溝部28内の内周側の内径と同じ大きさに形成されている。この第2のフィルタ26は、軸方向の長さ(厚み)が第2溝部28の軸方向の深さとほぼ同じ長さで形成されている。
【0038】
これにより、第2のフィルタ26は、
図2、
図3および
図5に示すように、操作部材11の頭部16が腕時計ケース1の外部から押されて操作部材11が腕時計ケース1の内部に向けてスライドする際に、その収納部14の内周凸部14aが相対的に第2溝部28内に挿入する動作に応じて押されて収縮変形する形状になっている。
【0039】
また、この第2のフィルタ26は、
図2、
図3および
図5に示すように、操作部材11がばね部材12のばね力によって腕時計ケース1の外部に向けてスライドする際に、収納部14の内周凸部14aの相対的なスライド動作、つまり収納部14の内周凸部14aが第2溝部28内から抜け出す方向の動作に伴って膨張して元の形状に復元する。
【0040】
この場合、第1のフィルタ25と第2のフィルタ26とは、
図2〜
図5に示すように、断面形状の大きさが異なっている。すなわち、第1のフィルタ25は、径方向の長さ(幅)が第2のフィルタ26の径方向の長さ(幅)よりも大きく形成され、第1のフィルタ25の断面積が第2のフィルタ26の断面積よりも大きく形成されている。
【0041】
また、これら第1のフィルタ25と第2のフィルタ26とは、
図2〜
図5に示すように、それぞれ通気性が異なる構造になっている。すなわち、第1のフィルタ25は、気泡の大きさが第2のフィルタ26の気泡の大きさよりも大きく形成されている。このため、第1のフィルタ25は、腕時計ケース1の外部から第1空間部23に浸入した泥や砂などの異物のうち、粒子の粗い異物の通過を制限する構造になっている。
【0042】
また、第2のフィルタ26は、
図2〜
図5に示すように、第1のフィルタ25を通過して第2空間部24に浸入した泥や砂などの異物のうち、粒子の細かい異物の通過を制限する構造になっている。これにより、第1のフィルタ25と第2のフィルタ26とは、
図2〜
図5に示すように、操作部材11のスライド操作に伴って泥や砂などの異物が筒状部13の収納部14と頭部16との間に形成される空間に浸入しても、第1のフィルタ25と第2のフィルタ26とによって、異物が空間を通過するのを抑制する構造になっている。
【0043】
次に、このような腕時計の押釦装置8の作用について説明する。
この押釦装置8は、通常状態のときに、ばね部材12のばね力によって操作部材11の頭部16が腕時計ケース1の外部に向けて押し出されて筒状部13から外部に突出する。この状態では、操作部材11の軸部15の内端部に設けられた抜止め部材17が腕時計ケース1の本体ケース2の内周面に当接する。
【0044】
これにより、操作部材11の軸部15の内端部が時計モジュール6のスイッチ素子20から離れ、スイッチ素子20をオフ状態にする。このときには、軸部15の外周面に設けられた複数のパッキン部材18によって軸部15の外周面と本体ケース2の貫通孔10の内周面との間の防水が図られる。
【0045】
また、このときには、頭部16の外周凸部16aが筒状部13の収納部14に設けられた第1溝部27内から抜き出された位置に配置され、この状態で第1空間部23が第1溝部27と頭部16の外周凸部16aとによって囲われて形成される。この状態では、第1のフィルタ25が第1空間部23内で初期状態の形状に膨らんで復元する。
【0046】
また、このときには、筒状部13の収納部14内に設けた内周凸部14aが頭部16の第2溝部28内から抜き出された位置に配置され、この状態で第2空間部24が第2溝部28と収納部14内の内周凸部14aとによって囲われて形成される。この状態では、第2のフィルタ26が第2空間部24内で初期状態の形状に膨らんで復元する。
【0047】
この状態で、操作部材11の頭部16をばね部材12のばね力に抗して腕時計ケース1の内部側に向けて押し込むと、第1空間部23内の第1のフィルタ25が頭部16の外周凸部16aによって押されて潰れるように収縮変形する。これと同時に、第2空間部24内の第2のフィルタ26が筒状部13の収納部14内の内周凸部14aによって相対的に押されて潰れるように収縮変形する。
【0048】
これにより、操作部材11の軸部15が本体ケース2の貫通孔10内をスライドして本体ケース2内に押し込まれる。このため、軸部15の内端部が時計モジュール6のスイッチ素子20を押圧して、スイッチ素子20をスイッチ動作させる。このときにも、軸部15の外周に設けられた複数のパッキン部材18が本体ケース2の貫通孔10の内周面に圧接した状態で摺動することにより、軸部15の外周面と貫通孔10の内周面との間の防水が図られる。
【0049】
また、操作部材11の頭部16をばね部材12のばね力によって腕時計ケース1の外部側に向けて押し出される際には、第1空間部23内の第1のフィルタ25が頭部16のスライド動作に伴って膨らむように変形して初期状態の形状に復元する。これと同時に、第2空間部24内の第2のフィルタ26も、頭部16のスライド動作に伴って膨らむように変形して初期状態の形状に復元する。
【0050】
このように操作部材11がスライドする際には、操作部材11のスライド操作に伴って泥や砂などの異物が筒状部13の収納部14と頭部16との間に形成される空間に浸入しても、第1のフィルタ25と第2のフィルタ26とによって異物が空間を通過するのを抑制することができる。
【0051】
すなわち、第1のフィルタ25と第2のフィルタ26とは、それぞれ通気性が異なり、第1のフィルタ25の気泡の大きさが第2のフィルタ26の気泡の大きさよりも大きい。このため、腕時計ケース1の外部から第1空間部23に浸入した泥や砂などの異物のうち、粒子の粗い異物の通過を第1のフィルタ25によって制限することができる。また、第1のフィルタ25を通過して第2空間部24に浸入した泥や砂などの異物のうち、粒子の細かい異物の通過を第2のフィルタ26によって制限することができる。
【0052】
これにより、泥や砂などの異物が筒状部13の収納部14と頭部16との間に形成される空間に浸入しても、第1のフィルタ25と第2のフィルタ26とによって異物が空間を通過するのを制限する。このため、泥や砂などの異物が押釦装置8の内部側に浸入するのを確実にかつ良好に抑制することができる。
【0053】
このように、この腕時計の押釦装置8によれば、貫通孔10の外部に収納部14が設けられた腕時計ケース1の本体ケース2と、貫通孔10にスライド可能に挿入する軸部15、およびこの軸部15の外端部に設けられて収納部14にスライド可能に挿入する頭部16を備えた操作部材11と、収納部14内に設けられて頭部16の外周凸部16aが挿入する環状の第1溝部27と外周凸部16aとによって囲われる第1のフィルタ25と、頭部16に設けられて第1溝部27の内周に位置する収納部14の内周凸部14aが挿入する環状の第2溝部28と内周凸部14aとによって囲われる第2のフィルタ26と、を備えていることにより、操作部材11の軸部15近傍への異物の浸入を抑制することができる。
【0054】
すなわち、この押釦装置8では、第1のフィルタ25によって泥や砂などの異物の通過を制限することができ、また第2のフィルタ26によって泥や砂などの異物の通過を制限することができ、これにより泥や砂などの異物の通過を2段階で抑制することができるので、押釦装置8の内部側である操作部材の軸部近傍への異物の浸入を確実にかつ良好に抑制することができ、これにより異物の浸入による操作部材11の操作性の低下を防ぐことができる。
【0055】
この場合、第1のフィルタ25および第2のフィルタ26は、頭部16の移動に応じて変形した後、変形前の形状に復元し、かつ多数の連続する気泡を備えた多孔質素材であることにより、多数の気泡によって泥や砂などの異物の通過を制限することができるので、押釦装置8の内部側への異物の浸入を確実にかつ良好に抑制することができるほか、頭部16のスライド動作に応じて第1のフィルタ25および第2のフィルタ26を確実にかつ良好に変形させることができると共に、変形前の元の形状に復元させることができるので、操作部材11のスライド動作が妨げられないようにすることができる。
【0056】
また、この押釦装置8では、収納部14内に設けられて頭部16の外周凸部16aが挿入する環状の第1溝部27と頭部16の外周凸部16aとによって囲われる第1空間部23に第1のフィルタ25が配置され、頭部16に設けられて第1溝部27の内周に位置する収納部14の内周凸部14aが挿入する環状の第2溝部28と収納部14の内周凸部14aとによって囲われる第2空間部24に第2のフィルタ26が配置されていることにより、頭部16と収納部14との間に形成される空間を第1空間部23と第2空間部24とに分けることができる。
【0057】
これにより、この押釦装置では、第1空間部23に第1のフィルタ25を良好に配置させることができとると共に、第2空間部24に第2のフィルタ26を良好に配置させることができるので、第1空間部23内の第1のフィルタ25によって泥や砂などの異物の通過を制限することができ、また第2空間部24内の第2のフィルタ26によって泥や砂などの異物の通過を制限することができ、これにより泥や砂などの異物の通過を2段階で抑制できるので、異物の浸入による操作部材11の操作性の低下を防ぐことができる。
【0058】
この場合、第1空間部23は、収納部14内に設けられた環状の第1溝部27と頭部16の外周凸部16aとによって囲われることにより、第1溝部27内に第1のフィルタ25を配置して頭部16の外周凸部16aによって第1溝部27を良好に塞ぐことができるので、第1のフィルタ25を第1空間部23内に良好に配置することができる。
【0059】
また、第2空間部24は、頭部16に設けられた環状の第2溝部28と収納部14の内周凸部14aとによって囲われることにより、第2溝部28内に第2のフィルタ26を配置して収納部14の内周凸部14aによって第2溝部28を良好に塞ぐことができるので、第2のフィルタ26を第2空間部24内に良好に配置することができる。
【0060】
また、この押釦装置8では、第1のフィルタ25と第2のフィルタ26との通気性がそれぞれ異なっていることにより、第1のフィルタ25を通過する泥や砂などの異物の通過状態と、第2のフィルタ26を通過する泥や砂などの異物の通過状態と、を異ならせることができる。すなわち、第2のフィルタ26の通気性が第1のフィルタ25の通気性よりも低いことにより、第2のフィルタ26による異物の通過を第1のフィルタ25による異物の通過よりも制限することができる。
【0061】
この場合、第1のフィルタ25と第2のフィルタ26とは、気泡の大きさが異なっていることにより、第1のフィルタ25を通過する泥や砂などの異物の大きさと、第2のフィルタ26を通過する泥や砂などの異物の大きさと、を異ならせることができる。すなわち、第2のフィルタ26の気泡の大きさが第1のフィルタ25の気泡の大きさよりも小さいことにより、第2のフィルタ26を通過する異物の粒子が第1のフィルタ25を通過する異物の粒子をよりも小さく制限することができる。
【0062】
このため、この押釦装置8では、腕時計ケース1の外部から第1空間部23に浸入した泥や砂などの異物のうち、粒子の粗い異物の通過を第1のフィルタ25によって良好に制限することができ、第1のフィルタ25を通過して第2空間部24に浸入した泥や砂などの異物のうち、粒子の細かい異物の通過を第2のフィルタ26によって確実に制限することができる。
【0063】
これにより、この押釦装置8では、操作部材11のスライド操作に伴って泥や砂などの異物が筒状部13の収納部14と頭部16との間に形成される空間に浸入しても、第1のフィルタ25と第2のフィルタ26とによって、異物の通過を確実にかつ良好に抑制することができ、これにより泥や砂などの異物が押釦装置8の内部側に浸入するのを確実に抑制することができる。
【0064】
なお、上述した実施形態では、腕時計ケース1の本体ケース2を支持部材として用い、この本体ケース2に貫通孔10と筒状部13とを設け、この貫通孔10に操作部材11の軸部15を挿入させ、筒状部13内の収納部14内に頭部16を挿入させた場合について述べたが、この発明は、これに限らず、本体ケース2の貫通孔10に支持部材として筒状部材を嵌め込み、この筒状部材に操作部材11をスライド可能に設けた構造であっても良い。
【0065】
この場合、筒状部材は、本体ケース2の貫通孔に嵌め込まれて操作部材11の軸部15がスライド可能に挿入する小径筒部と、本体ケース2の外部に配置されて操作部材11の頭部16がスライド可能に挿入する収納部14が設けられた大径筒部と、を備えた構造であれば良い。この場合にも、操作部材11の頭部16と大径筒部の収納部14との間に空間が設けられた構造であれば良い。
【0066】
また、上述した実施形態では、腕時計ケース1の4時側に設けられた押釦装置8について述べたが、この発明は、これに限らず、例えば2時側、3時側、6時側、8時側、および10時側にそれぞれ設けられた押釦装置8にも適用することができる。
【0067】
さらに、上述した実施形態では、腕時計ケース1が本体ケース2と外装ケース3とを備えた構造である場合について述べたが、この発明は、これに限らず、腕時計ケースが本体ケースのみで形成された構造であっても良い。
【0068】
また、上述した実施形態では、操作部材11の頭部形状及び収納部14を円形として例示したが、それに限られず、矩形や楕円といった形状でも良い。
【0069】
なおまた、上述した実施形態では、腕時計に適用した場合について述べたが、この発明は、必ずしも腕時計である必要はなく、例えばトラベルウオッチ、目覚まし時計、置き時計、掛け時計などの各種の時計に適用することができる。また、この発明は、必ずしも時計である必要はなく、携帯電話機や携帯端末機などの電子機器にも適用することができる。
【0070】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、これに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0071】
(付記)
請求項1に記載の発明は、貫通孔が設けられ、かつ前記貫通孔の外部に収納部が設けられた支持部材と、前記貫通孔に摺動可能に挿入される軸部、および前記軸部の外端部に設けられて前記収納部に摺動可能に挿入される頭部を備えた操作部材と、前記収納部内に設けられて前記頭部の外周凸部が挿入する環状の第1溝部と前記頭部の前記外周凸部とによって囲われる位置に配置される第1のフィルタと、前記頭部に設けられて前記第1溝部の内周に位置する前記収納部の内周凸部が挿入する環状の第2溝部と前記収納部の前記内周凸部とによって囲われる位置に配置される第2のフィルタと、を備えていることを特徴とする押釦装置である。
【0072】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の押釦装置において、前記第1のフィルタ及び前記第2のフィルタは、前記頭部の移動に応じて変形した後、変形前の形状に復元し、かつ多数の連続する気泡を備えた多孔質素材であることを特徴とする押釦装置である。
【0073】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の押釦装置において、前記第1のフィルタは、前記収納部内に設けられて前記頭部の前記外周凸部が挿入する環状の第1溝部と前記頭部の前記外周凸部とによって囲われる第1空間に配置され、前記第2のフィルタは、前記頭部に設けられて前記第1溝部の内周に位置する前記収納部の前記内周凸部が挿入する環状の第2溝部と前記収納部の前記内周凸部とによって囲われる第2空間に配置されていることを特徴とする押釦装置である。
【0074】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の押釦装置において、前記第1のフィルタと前記第2のフィルタとは、それぞれ通気性が異なることを特徴とする押釦装置。
である。
【0075】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の押釦装置において、前記第1のフィルタと前記第2のフィルタとは、気泡の大きさが異なることを特徴とする押釦装置である。
【0076】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれかに記載された押釦装置において前記支持部材はケースであることを特徴とする押釦装置である。
【0077】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6のいずれかに記載された押釦装置を備えていることを特徴とする時計である。