(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6804088
(24)【登録日】2020年12月4日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】口腔ケア用指保護具
(51)【国際特許分類】
A61C 17/10 20060101AFI20201214BHJP
【FI】
A61C17/10
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-76434(P2017-76434)
(22)【出願日】2017年4月7日
(65)【公開番号】特開2018-175133(P2018-175133A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】313017528
【氏名又は名称】日商産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120396
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】小島 隆行
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 由香
【審査官】
細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】
特表2014−524804(JP,A)
【文献】
特開2014−090891(JP,A)
【文献】
特許第5813843(JP,B2)
【文献】
特開2012−055670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 17/00
A61C 17/06
A61C 17/10
A61C 19/00
A61B 42/20
A61M 1/00
A61M 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端開口部から指が差し込み可能な筒状部と、
前記筒状部の先端開口部を覆う先端部と、
前記筒状部の基端部に形成され外方に拡がったフランジ部とを備え、
前記先端部に、唾液を吸引するための吸引管が挿通可能な管用孔部が形成され、
前記筒状部の軸線に直交する断面形状が、互いに直交した長軸と短軸とを有した形状とされ、
前記管用孔部が、前記筒状部の長軸方向に並んで2つ形成されていることを特徴とする口腔ケア用指保護具。
【請求項2】
請求項1に記載の口腔ケア用指保護具において、
少なくとも前記筒状部が、内周面側に形成された第1層と、
外周面側に形成された第2層とを有し、
前記第2層が、前記第1層よりも柔らかい材料で形成されていることを特徴とする口腔ケア用指保護具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の口腔ケア用指保護具において、
前記筒状部の表面が、シリコーンゴムで形成されていることを特徴とする口腔ケア用指保護具。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の口腔ケア用指保護具において、
前記フランジ部に、紐を挿通可能な紐用孔部が形成されていることを特徴とする口腔ケア用指保護具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラッシング等の口腔ケア時に従事者や介護者の指を保護するために用いる口腔ケア用指保護具である。
【背景技術】
【0002】
従来、歯科医等の介護者やケア従事者が、開口障害や開口困難の被ケア者に対してブラッシング等の口腔ケアを行う際に、噛み癖等による誤咬から介護者等の指を守るため、介護者等の指に装着する口腔ケア用の指保護具が用いられている(例えば、特許文献1参照)。この指保護具は、指に装着した状態で被ケア者の口に挿入することで、被ケア者の開口を維持し、噛まれても介護者等の指が保護されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】意匠登録第1337452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
すなわち、従来の口腔ケア用指保護具では、口腔ケア時に被ケア者の開口を保持すると共に介護者等の指を守ることができるものの、口腔ケア用指保護具が邪魔になって被ケア者の口腔内の唾液を吸い出すために吸引管を口腔内に挿入することが難しいという不都合があった。そのため、唾液を吸い出すために、口腔ケア用指保護具を一旦、被ケア者の口腔から抜き出し、吸引管で唾液吸い出した後に、再び口腔ケア用指保護具を被ケア者の口腔内に差し込む必要があり、迅速な口腔ケア及び唾液の吸い出しを行うことができなかった。
【0005】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、口腔ケア時に指保護具を使用した状態でも、容易に唾液の吸引管を被ケア者の口腔内に挿入可能な口腔ケア用指保護具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係る口腔ケア用指保護具は、基端開口部から指が差し込み可能な筒状部と、前記筒状部の先端開口部を覆う先端部と、前記筒状部の基端部に形成され外方に拡がったフランジ部とを備え、前記先端部に、唾液を吸引するための吸引管が挿通可能な管用孔部が形成されていることを特徴とする。
すなわち、この口腔ケア用指保護具では、先端部に、唾液を吸引するための吸引管が挿通可能な管用孔部が形成されているので、筒状部を口腔内に差し込んだ状態でも、筒状部内に通した吸引管を管用孔部から被ケア者の口腔内に差し込むことができ、唾液を吸引することが可能になる。
【0007】
第2の発明に係る口腔ケア用指保護具は、第1の発明において、前記筒状部の軸線に直交する断面形状が、互いに直交した長軸と短軸とを有した形状とされ、前記管用孔部が、前記筒状部の長軸方向に並んで2つ形成されていることを特徴とする。
すなわち、この口腔ケア用指保護具では、管用孔部が、筒状部の長軸方向に並んで2つ形成されているので、吸引管を挿入する際に、2つの管用孔部のいずれかを筒状部内の指の位置に応じて選択することができる。例えば、筒状部を口腔内に差し込む際に、長軸方向を上下方向にした場合、指が筒状部の上部に配されて上部側の管用孔部が塞がっても、筒状部の下部側の管用孔部に吸引管を挿通させることができる。
【0008】
第3の発明に係る口腔ケア用指保護具は、第1又は第2の発明において、少なくとも前記筒状部が、内周面側に形成された第1層と、外周面側に形成された第2層とを有し、前記第2層が、前記第1層よりも柔らかい材料で形成されていることを特徴とする。
すなわち、この口腔ケア用指保護具では、外周面側の第2層が、第1層よりも柔らかい材料で形成されているので、被ケア者が噛んだ際に柔らかい第2層に歯が当接することで、歯を痛めることがない。また、内周面側の第1層が、第2層よりも硬い材料で形成されるため、筒状部全体の強度を保持することができ、被ケア者が強く噛んでも指を保護することができる。
【0009】
第4の発明に係る口腔ケア用指保護具は、第1から第3の発明のいずれかにおいて、前記筒状部の表面が、シリコーンゴムで形成されていることを特徴とする。
すなわち、この口腔ケア用指保護具では、筒状部の表面が、シリコーンゴムで形成されているので、筒状部の表面が柔らかく、被ケア者が噛んだ際に歯を痛めることがない。
【0010】
第5の発明に係る口腔ケア用指保護具は、第1から第4の発明のいずれかにおいて、前記フランジ部に、紐を挿通可能な紐用孔部が形成されていることを特徴とする。
すなわち、この口腔ケア用指保護具では、フランジ部に、紐を挿通可能な紐用孔部が形成されているので、紐用孔部に誤飲防止用の紐を通しておくことで、被ケア者が口腔ケア中に指保護具を誤飲しそうになっても繋がった紐によって誤飲を防止することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係る口腔ケア用指保護具によれば、先端部に、唾液を吸引するための吸引管が挿通可能な管用孔部が形成されているので、筒状部を口腔内に差し込んだ状態でも、筒状部内に通した吸引管を管用孔部から被ケア者の口腔内に差し込むことができ、唾液を吸引することが可能になる。
したがって、ブラッシング等の口腔ケア中に、指保護具を口腔内に差し込んだまま唾液を容易に吸引することができ、指保護具の抜き差しを何度も行う必要がなく、口腔ケアを迅速に行うことができる共に被ケア者及び従事者等の両者の負担を低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る口腔ケア用指保護具において、指に装着した状態で吸引管を差し込んだ状態を示す斜視図である。
【
図2】本実施形態において、長軸方向を上下方向に向けた場合で、指に口腔ケア用指保護具を装着し、吸引管を差し込んだ状態を示す右側面図である。
【
図3】本実施形態において、口腔ケア用指保護具を示す先端側から視た斜視図である。
【
図4】本実施形態において、口腔ケア用指保護具を示す基端側から視た斜視図である。
【
図5】本実施形態において、口腔ケア用指保護具を示す平面図である。
【
図6】本実施形態において、口腔ケア用指保護具を示す正面図である。
【
図7】本実施形態において、管用孔部を通る切断面での筒状部を示す縦断面図である。
【
図8】本実施形態において、口腔ケア用指保護具を示す右側面図である。
【
図9】本実施形態において、口腔ケア用指保護具を示す左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る口腔ケア用指保護具の一実施形態を、
図1から
図9を参照しながら説明する。
【0014】
本実施形態の口腔ケア用指保護具1は、
図1から
図9に示すように、基端開口部2aから指Fが差し込み可能な筒状部2と、筒状部2の先端開口部を覆う先端部3と、筒状部2の基端部に形成され外方に拡がったフランジ部4とを備えている。
上記先端部3には、唾液を吸引するための吸引管Pが挿通可能な管用孔部3aが形成されている。
【0015】
上記筒状部2の軸線に直交する断面形状は、互いに直交した長軸と短軸とを有した形状とされている。すなわち、筒状部2の断面形状は、横長で両側が半円状の円弧部とされた扁平形状となっている。なお、筒状部2の断面形状を、楕円形状等の扁平形状としても構わない。
【0016】
なお、筒状部2のサイズは、差し込む指Fのサイズに対応して適宜設定されるが、例えば男性の比較的太い指用には長軸方向の内径が26mm、短軸方向の内径が16.5mmとされ、女性の比較的細い指用には長軸方向の内径が24mm、短軸方向の内径が14.5mmとされる。
【0017】
また、筒状部2は、先端部3に向けて長軸及び短軸がそれぞれ漸次小さく形成されたテーパ形状を有している。このように筒状部2を先細のテーパ形状とすることで、口腔内に差し込みし易くなると共に、抜き取りし易くなる。
筒状部2の上面は、先端側ほど下方に向けて傾斜が大きく設定されている。また、筒状部2の下面は、緩やかに上方に向けて傾斜している。
上記管用孔部3aは、筒状部2の前記長軸方向に並んで2つ形成されている。
【0018】
筒状部2は、
図7に示すように、内周面側に形成された第1層5aと、外周面側に形成された第2層5bとを有している。
また、上記第2層5bは、第1層5aよりも柔らかい材料で形成されている。
例えば、第1層5aは、ポリカーボネートで形成され、筒状部2の表面、すなわち第2層5bは、シリコーンゴムで形成されている。
【0019】
すなわち、ポリカーボネートの第1層5aの表面にシリコーンゴムをコーティングして第2層5bを形成している。なお、第2層5bをシリコーンゴムで形成することが好ましいが、他に軟質塩ビ等で形成しても構わない。このように本実施形態の口腔ケア用指保護具1では、全体をポリカーボネートで一体成形した後、筒状部2の表面にシリコーンゴムをコーティングしている。
【0020】
上記フランジ部4は、紐Sを挿通可能な紐用孔部4aが形成されている。
この紐用孔部4aは、フランジ部4の上部中央に形成されている。
フランジ部4は、口腔内に入らないように筒状部2の半径方向外方に拡がってストッパーとして機能し、本実施形態のように、例えばハート型に拡がって形成されている。
また、フランジ部4は、左右の拡がった部分に日付けや被ケア者の氏名等の文字、数字、記号等が書き込み可能な凹み部4bが一対形成されている。
【0021】
このように本実施形態の口腔ケア用指保護具1では、先端部3に、唾液を吸引するための吸引管Pが挿通可能な管用孔部3aが形成されているので、筒状部2を口腔内に差し込んだ状態でも、筒状部2内に通した吸引管Pを管用孔部3aから被ケア者の口腔内に差し込むことができ、唾液を吸引することが可能になる。
【0022】
また、管用孔部3aが、筒状部2の長軸方向に並んで2つ形成されているので、吸引管Pを挿入する際に、2つの管用孔部3aのいずれかを筒状部2内の指Fの位置に応じて選択することができる。例えば、筒状部2を口腔内に差し込む際に、
図2に示すように、長軸方向を上下方向にした場合、指Fが筒状部2の上部に配されて上部側の管用孔部3aが塞がっても、筒状部2の下部側の管用孔部3aに吸引管Pを挿通させることができる。
【0023】
また、筒状部2を構成する外周面側の第2層5bが、第1層5aよりも柔らかい材料で形成されているので、被ケア者が噛んだ際に柔らかい第2層5bに歯が当接することで、歯を痛めることがない。また、内周面側の第1層5aが、第2層5bよりも硬い材料で形成されるため、筒状部2全体の強度を保持することができ、被ケア者が強く噛んでも指を保護することができる。
【0024】
さらに、フランジ部4に、紐Sを挿通可能な紐用孔部4aが形成されているので、紐用孔部4aに誤飲防止用の紐Sを通しておくことで、被ケア者が口腔ケア中に指保護具1を誤飲しそうになっても繋がった紐Sによって誤飲を防止することができる。
【0025】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0026】
例えば、上述したように筒状部2を第1層5aと第2層5bとの2層構造で構成することが好ましいが、軟質塩ビ等の単層で全体を成形しても構わない。
また、フランジ部4をハート型に形成したが、口腔ケア時に使用のない形状であれば、他の形状としても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の口腔ケア用指保護具は、開口困難や開口障害がある介護が必要な被ケア者に対してブラッシング等の口腔ケアを行う際に、被ケア者の開口を保持すると共に、口腔ケアを行う介護者等の指を被ケア者の歯から保護するものである。特に、本発明の口腔ケア用指保護具は、指に装着したまま口腔ケア時に被ケア者の口腔内の唾液も吸引管で吸引可能としたものである。
【符号の説明】
【0028】
1…口腔ケア用指保護具、2…筒状部、2a…基端開口部、3…先端部、3a…管用孔部、4…フランジ部、4a…紐用孔部、5a…第1層、5b…第2層、F…指、P…吸引管、S…紐