特許第6804093号(P6804093)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6804093円すいころ移動方法および円すいころ移動装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6804093
(24)【登録日】2020年12月4日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】円すいころ移動方法および円すいころ移動装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 43/06 20060101AFI20201214BHJP
   F16C 33/36 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   F16C43/06
   F16C33/36
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-244272(P2017-244272)
(22)【出願日】2017年12月20日
(65)【公開番号】特開2019-108967(P2019-108967A)
(43)【公開日】2019年7月4日
【審査請求日】2019年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】596066024
【氏名又は名称】西部自動機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】越智 研二
【審査官】 渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第104089960(CN,A)
【文献】 特開2017−187139(JP,A)
【文献】 特開2016−98099(JP,A)
【文献】 特開2013−107161(JP,A)
【文献】 特開昭52−151441(JP,A)
【文献】 特開2017−100229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 35/00− 39/06
F16C 43/00− 43/08
F16C 19/00− 19/56
F16C 33/30− 33/66
B23P 19/00− 21/00
B23Q 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動元と移動先との高低差を利用して円すいころを移動させる円すいころ移動方法であって、
前記円すいころの移動方向に真っ直ぐに伸び前記円すいころの両端近傍をこれらの下方で支持するための転路を用意し、
その軸心を前記移動方向に直交させて前記転路に支持されたときの前記円すいころにおける前記軸心の大底面側が小底面側よりも低くなるように、前記転路における幅方向の一方の端側を他方の端側に比べて低い位置とし、
前記転路における低い位置となった前記一方の端側に前記大底面が位置するように前記円すいころを前記転路に載せ、前記転路に沿って設けられた係止部に前記大底面を係止させることにより、
前記円すいころが前記軸心および前記軸心に直交する水平線のいずれにも直交する上方から見たときに前記転路の幅方向に対して前記軸心を大きく傾けることなく前記高低差によりその回転を持続し、前記円すいころに前記転路上での移動を継続させる
ことを特徴とする円すいころ移動方法。
【請求項2】
前記転路を別々の異なる2つの部材で形成し、
前記2つの部材における一方に前記小底面側を支持させ、他方に前記大底面側を支持させる
請求項1に記載の円すいころ移動方法。
【請求項3】
移動元と移動先との高低差を利用して円すいころを移動させる方法であって、
前記円すいころの移動方向に伸び前記円すいころの両端近傍をこれらの下方で別々に支持するための転路を用意し、
前記転路における幅方向の一方の端側を他方の端側に比べて低くし、
前記一方の端側にその大底面が支持され前記他方の端側にその小底面が支持されて前記円すいころが前記転路に載せられたときの前記円すいころにおける軸心の前記大底面側が前記小底面側よりも一層低くなるように、前記転路の全体を前記軸心方向に傾斜させ、
前記転路における低くなった側に前記大底面を位置させて前記円すいころを転路に載せ、前記転路に沿って設けられた係止部に前記大底面を係止させることで前記円すいころが前記幅方向における一層低い位置に移動するのを防止しながら前記高低差を利用して前記円すいころをその回転により移動させる
ことを特徴とする円すいころ移動方法。
【請求項4】
円すいころを移動させる円すいころ移動装置であって、
前記円すいころの両端近傍を支持して前記円すいころの移動の経路となる真っ直ぐに伸びた転路を備え、
前記転路は、
前記円すいころの大底面側をその下方で支持する第一の転路と、
前記円すいころの小底面側をその下方で支持する第二の転路と、
鉛直方向において前記第二の転路に対して前記第一の転路を低くするための高低差形成
手段と、を有し、
前記第二の転路に対して前記第一の転路が低い前記転路上を移動元と移動先との高低差により前記円すいころが回転するときに前記大底面を係止して前記円すいころの軸心および前記軸心に直交する水平線のいずれにも直交する上方から見たときに前記転路の幅方向に対して前記軸心が大きく傾くことなく前記円すいころの回転を持続させ前記転路上での移動を継続させるための係止部が前記第一の転路に沿って設けられた
ことを特徴とする円すいころ移動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円すいころを特定の場所から他の場所に移動させる移動方法および移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
円すいころは、エネルギーロスが少ない円すいころ軸受に使用される。円すいころは、その表面粗さが小さいほどエネルギーロスが少なくかつ長寿命である。そのため、円すいころは、円錐台の形状に成形された後、その表面が超仕上等されるのが好ましい(特許文献1)。
ところで、円すいころは、円筒および球体とは異なる特異な形状(円錐台)であることから、例えば傾斜する搬路上を単に軸周りに回転させるだけでは目的とする場所例えば研磨装置における加工位置近くまで移動させることができない。
【0003】
そこで、動力を使用しない円すいころの移動は、専らその軸を移動方向に一致させて行われる。例えば、特許文献2に開示された円すいころ軸受の組立に関する技術では、円すいころは、上下に伸びた断面が円形のチューブ内を、上方から下方の軸受組立装置に向けて移動する。また、特許文献3に開示された円すいころ軸受の組立に関する技術では、円すいころは、ガイド孔内をその小底面側から落下させて組立場所に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−094415号公報
【特許文献2】特開2013−249891号公報
【特許文献3】特開2008−223976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来行われたような(移動方向に対して)搬路を傾斜させて円すいころをその軸方向に
移動させる方法では、(円すいころが軸方向に長いことから)搬路が長くなりがちであり、かつ確実に移動させる(滑らせる)ために搬路の傾斜を大きくしなければならず、搬路を含む装置全体の設計が制約される。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたもので、移動距離が短く(移動元と移動先との)かつ高低差が少なくても確実に円すいころを移動させことができる円すいころ移動方法および円すいころ移動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る円すいころ移動方法は、移動元と移動先との高低差を利用して円すいころを回転させて移動させるものである。円すいころ移動方法では、円すいころの移動方向に真っ直ぐに伸び円すいころの両端近傍をこれらの下方で支持するための転路が用意される。
転路は、その軸心を移動方向に直交させて円すいころを支持したとき、円すいころにおける軸心の大底面側が小底面側よりも低くなるように、その(転路の)幅方向の一方の端側を他方の端側に比べて低くなるよう調整される。そして、低くなった一方の端側に大底面が位置するようにして転路に載せられた円すいころの大底面を、転路に沿って設けられた係止部に係止させる。
本円すいころ移動方法は、このようにすることで、転路の高低差により転路の幅方向に対して軸心を大きく傾けることなく円すいころが回転を持続し、転路上での移動が継続される。
【0007】
ここで円すいころが転路を移動するときの「転路の幅方向に対して軸心を大きく傾けることなく」における転路の幅方向」とは、移動する円すいころの軸心およびこの軸心に直交する水平線のいずれにも直交する上方から見たときの転路の幅方向である。
転路は別々の異なる2つの部材とするのが好ましい。
本発明に係る他の円すいころ移動方法は、円すいころの移動方向に伸び円すいころの両端近傍をこれらの下方で別々に支持するための転路が用意される。転路における幅方向の一方の端側は他方の端側に比べて低い位置とする。これに加えて、この一方の側に小底面、他方の側に大底面を位置させて円すいころが転路に載せられたときの円すいころにおける軸心の大底面側が小底面側よりも一層低くなるように、転路の全体を軸心方向に傾ける。
【0008】
この円すいころ移動方法においても、円すいころが高低差を利用して転路を移動するとき、回転しながら絶えずずり落ちようとするのが転路に沿って設けられた係止部により大底面が係止されることで防止され、同時に移動時の円すいころの不安定な姿勢が係止部により是正される。
本発明に係る円すいころ移動装置は、円すいころの両端近傍を支持して円すいころの移動の経路となる真っ直ぐに伸びた転路を備える。転路は、円すいころの大底面側をその下方で支持する第一の転路、円すいころの小底面側をその下方で支持する第二の転路、および鉛直方向において第二の転路に対して第一の転路を低くするための高低差形成手段を有する。
【0009】
円すいころ移動装置には、転路における移動元と移動先との高低差により円すいころが転路上を回転するときに大底面を係止して円すいころがその軸心方向の大底面側に移動するのを防止するための係止部が第一の転路に沿って設けられる。
係止部は、第二の転路に対して第一の転路が低い転路上を移動元と移動先との高低差により円すいころが回転するときに大底面を係止して、円すいころの軸心および軸心に直交する水平線のいずれにも直交する上方から見たときに転路の幅方向に対して軸心が大きく傾くことなく円すいころの回転を持続させ転路上での移動を継続させる。
高低差形成手段は、第一の転路を鉛直方向に上下させる機能を有するもの、転路および
係止部を一体として円すいころの軸心方向に傾斜させる機能を有するもの、またはこれらのいずれの機能をも有するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、移動距離が短く移動元と移動先との高低差が少なくても確実に円すいころを移動させことができる円すいころ移動方法および円すいころ移動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は円すいころ移動装置の正面図である。
図2図2は円すいころ移動装置の平面図である。
図3図3は円すいころ移動装置の左側面図である。
図4図4は円すいころ移動装置の右側面図である。
図5図5は移動方向傾斜部の正面断面図である。
図6図6は転路幅の調整を説明する図である。
図7図7は右転路の上下機構を説明する図である。
図8図8は搬路部全体の傾斜の調整を説明する図である。
図9図9は移動方向傾斜部の傾斜の調整を説明する図である。
図10図10は円すいころ移動装置を移動する円すいころを説明する図である。
図11図11は左転路と右転路との高低差のみによる円すいころの移動を説明する図である。
図12図12は左転路および右転路の他の実施例を示す図である。
図13図13は左転路および右転路を一体化した実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は円すいころ移動装置1の正面図、図2は円すいころ移動装置1の平面図、図3は円すいころ移動装置1の左側面図、図4は円すいころ移動装置1の右側面図、図5は移動方向傾斜部3の正面断面図である。図5における断面は、図2のAA矢視で示される部分である。
円すいころ移動装置1は、全体基部2、移動方向傾斜部3からなる。
【0013】
全体基部2は、移動方向傾斜部3の下方に位置して、移動方向傾斜部3を揺動可能に支持する。全体基部2は、下支持部11および上支持部12からなる。
下支持部11は、いずれも板状の上部支持板13,下部支持板14が上からこの順に重ねられ、上部支持板13の上面に直交させて互いに間隔を有する一対の挟板15,15がこれらに一体化された構造である。上部支持板13は、下部支持板14上に対して一方向(図1における左右方向)に移動させることができる。
【0014】
上支持部12は、被挟板16、レール支持板17、前後移動板18、傾斜部支持板19および傾斜調整部20からなる。
被挟板16は、厚さを有する板状であって、下支持部11における一対の挟板15,15の間に挟まれて下支持部11に一体化されている。被挟板16は、下支持部11に対して上下動可能である。
【0015】
レール支持板17は、板状であって、被挟板16と直交させて被挟板16の上端面に固着されている。被挟板16の上面には、上部支持板13の移動可能な方向に直交する方向に伸びたレール21が取り付けられている。
レール21が伸びる方向、つまり図3,4における左右方向は、円すいころの移動方向である。以下この方向を「前後方向」といい、この方向に直交しかつ上下方向に直交する方向を「幅方向」ということがある。
【0016】
前後移動板18は、板状であってレール支持板17の上に重なる。前後移動板18は、下面にレール21が嵌り込む溝がその下面に設けられ、レール支持板17に一体化されたままレール21に沿って前後方向に移動可能である。
傾斜部支持板19は、厚さを有する板状であり、前後方向および上下方向に拡がる状態でその下方端面が前後移動板18に固着されている。傾斜部支持板19の上部には、断面円形の貫通する円孔22が設けられている。
【0017】
傾斜調整部20は、調整ボルト保持部23および調整ボルト24で構成される。
調整ボルト保持部23は、傾斜部支持板19よりも若干薄い板材で「L」字状に形成されている。調整ボルト保持部23は、「L」字状の直交する角を上かつ傾斜部支持板19側として、傾斜部支持板19の側面に固着されている。調整ボルト保持部23が固着された傾斜部支持板19の側面とは、前後方向における円すいころの移動元(移動の起点)側を向く面である。
【0018】
調整ボルト保持部23における移動元側に突出する部分には、上下方向に貫通するボルト孔25が設けられている。ボルト孔25の下側開口の下方には、六角ナット26が固着されている。調整ボルト24は、頭部を下にしてその雄ネジ部をボルト孔25から突出させて、六角ナット26に螺合されている。
図5を参照して、移動方向傾斜部3は、搬路基部4および幅方向傾斜部5で構成される。
【0019】
搬路基部4は、基板31、下方アーム部32および一対の上方アーム33,33からなる。
基板31は、矩形の板材で形成される。
下方アーム部32は、二股アーム34および係止板35で形成される。
二股アーム34は、正面視(図5)において「コ」字状であり、互いに離れて平行な一対の板状部分を下方に拡げて基板31の下面に固定されている。二股アーム34における一対の板状部分には、略水平な軸心を共通とする断面円形の孔36,36が設けられている。
【0020】
係止板35は、板状であって、二股アーム34における一対の板状部分の一方(図5の左側)の外表面に固定されている。係止板35は、二股アーム34よりも更に下方におよび前後方向の一方(図4では右側)に拡がる。係止板35は、幅方向において二股アーム34に重ならずかつ上下方向において孔36と略同じ位置に、その断面が孔36の中心を中心とする円弧状の、貫通する係止孔37を備える。
【0021】
上方アーム33,33は、板材で形成され、基板31の上面に固定されて互いに離れ平行に並んで上方に突出する。また、上方アーム33,33(の各板材)は、係止板35(および二股アームの板材)に直交する方向に拡がっている(上方アーム33の表面を含む平面と係止板の表面を含む平面とが直交する)。
上方アーム33,33における上端近傍には、上方アーム33,33の並び方向に伸びた軸心を共通とする断面円形の支持孔38,38が設けられている。
【0022】
幅方向傾斜部5は、搬路部6および搬路傾斜手段7で形成される。
搬路部6は、搬路本体41および幅変更手段42を有する。
搬路本体41は、左転路部43および右転路部44からなる。ここで「左」とは、図1および図5における左をいい、「右」とは「左」の反対側をいう。
左転路部43は、左基部45および側方アーム部46で構成される。
【0023】
左基部45は、その長手方向を前後方向とし略水平な矩形板状のテーブル47、この一方の長辺に直交して上方に拡がる(突出する)板状の左側壁48、および左側壁48に固定された左転路49を備える。
テーブル47には、その長手方向の両端近くに、それぞれ端に平行に(リニアガイドにおける)レール84,84が取り付けられている(図2)。なお、レール84は、幅変更手段42の一要素である。
【0024】
左側壁48は、テーブル47の長手方向(前後方向)よりも長く両側に伸びている。左側壁48は、上方に突出する中ほどに、テーブル47に平行に帯状に伸びテーブル47の表面から内方(右転路部44側)に突出する(板状の)左転路支持部52を備える。
左転路49は、断面が「L」字状の長い部材であり、一方の外面(端面以外の鈍角を形成する2つの表面の一方)を左側壁48の垂直面に、および他方の外面を左転路支持部52の上面に接して左基部45に一体化されている。左転路49は、自己潤滑性を有する材料、例えばポリオキシメチレン(ポリアセタール)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の樹脂、または複合材料等が使用される。
【0025】
側方アーム部46は、板材により平面視(図2)「コ」字状に形成され、平行に突出する部分が水平方向に並ぶようにして左基部45の外面に固定されている。側方アーム部46における「コ」字状の平行に突出する部分には、軸心を共通とする断面円形の揺動軸孔53,53が設けられている。側方アーム部46は、揺動軸孔53,53を貫通し、上方アーム33,33の支持孔38,38に支持される揺動軸54によって、揺動可能に搬路基部4(上方アーム33,33)に連結されている。
【0026】
右転路部44は、右基部56、右側壁57、右転路58および右転路上下手段59からなる。右転路部44は、正面視(図1図5)において全体として左転路部43の右側に位置する。
右基部56は、略水平な矩形板状の台61、および台61の一方の長辺の端からこれに直交して上方に拡がる(突出する)板状の右支持壁62を備える。
【0027】
右基部56は、長手方向の長さがテーブル47の長手方向の長さに略等しく、その幅がテーブル47の幅よりも小さい。
右支持壁62は、その上端面の位置が左側壁48と略同じである。
右基部56は、右支持壁62の外面(台61の一方の表面と鈍角を形成する表面)が左側壁48から離れて左側壁48側を向き、かつ右支持壁62が左側壁48と平行になるように配される。右基部56は、台61がテーブル47に平行であり、かつ上下方向において台61がテーブル47の一部に間隔を有して重なる。右支持壁62には、長手方向の両端近くおよび中央に、断面が長円の保持孔63,63,63が設けられている。
【0028】
右側壁57は、短冊状に細長く伸びた板状材であり、その一方の表面が右支持壁62の外面に接する。右側壁57は、前後方向におけるその長さが左側壁48と略同じである。右側壁57は、左転路部43側を向く面に、略前後方向に帯状に伸びて突出する右転路支持部64を備える。
右転路58は、断面形状が、左転路49の断面形状に面対称の「L」字状である。右転路58は、その一方の外面を右側壁57の左側壁48に対向する垂直面に、および他方の外面を右転路支持部64の上面に接して右側壁57に一体化されている。右転路58は、左転路49と同じ自己潤滑性を有する材料で形成される。
【0029】
右側壁57は、右支持壁62における3つの保持孔63,63,63に重なる位置にそれぞれ雌ネジが設けられる。右側壁57は、保持孔63,63,63を貫通しこの雌ネジに螺合される六角穴付きボルト65,65,65により、右基部56に一体化される。右
基部56と右側壁57との上下方向における相対位置は、六角穴付きボルト65,65,65を緩めると変更できる。
【0030】
右転路上下手段59は、脚止め部71およびアジャスタボルト72からなる。
脚止め部71は、右側壁57および右転路58を併せたこれらの長手方向における重心位置近くの右基部56の上端面から、右側壁57を覆うように左側壁48側に突出する。脚止め部71における右側壁57を覆う部分には、断面が半円であってその母線が右側壁57の上面に直交するボルト溝73が設けられている。
【0031】
アジャスタボルト72は、ボルト溝73に嵌め入れられ、その雄ネジ部が、右側壁57の上面に開口する雌ネジに螺合されている。
右転路上下手段59は、六角穴付きボルト65,65,65が緩められた状態でアジャスタボルト72を回転させることにより、右基部56に対して右側壁57およびこれと一体化された右転路58を上下させる。
【0032】
幅変更手段42は、2つのリニアガイド81,81、リニアガイドクランパー82およびボールネジ83等で形成される。
リニアガイド81は、レール84およびレール84を跨いでレール84が伸びる方向に移動するブロック85からなる。
レール84,84は、テーブル47の長手方向の両端近くの上面に、それぞれ端に平行に取り付けられている。ブロック85,85は、いずれも(右転路部44における)右基部56の台61の下面に固定されている。つまり、右転路部44は、2つのリニアガイド81,81を介して、幅方向に移動可能にテーブル47(左基部45)に一体化されている。
【0033】
リニアガイドクランパー82は、2つのレール84,84の一方に、ブロック85に並べて移動可能に取り付けられ、その上面が台61の下面に固定されている。リニアガイドクランパー82は、レバー74を一方に倒すとレール84に沿ったその移動が困難となり、その結果、2つのブロック85,85が走行できず右転路部44の幅方向への移動が阻止される。
【0034】
ボールネジ83は、2つのリニアガイド81,81の略中間位置に、ネジ軸89の軸心をこれらのレール84に平行にしてテーブル47と台61との間に配される。ボールネジ83は、ネジ軸89が貫通する固定用サポート86が左転路部43のテーブル47に固定され、ナット部87が右転路部44の台61(の下面)に固定されている。ネジ軸89における固定用サポート86から突出する端には、ネジ軸89を回転させる為の幅変更ハンドル88が取り付けられている。
【0035】
上記のように構成された幅変更手段42は、ハンドルを回転させることにより、テーブル47に対して台61が幅方向に往復動し、左転路部43と右転路部44との距離が任意に変更できる。
幅変更手段42を構成するリニアガイド81、リニアガイドクランパー82およびボールネジ83等は、公知のものが使用される。
【0036】
なお、本発明における「転路」とは、搬路部6単独またはこれに搬路傾斜手段7を加えたものである。
搬路傾斜手段7は、円すいころが移動する搬路の幅方向に関し、水平に対する傾斜を調整する手段である。搬路傾斜手段7は、不動板91、下部連結板92、上部連結板93,クランプレバー付リニアブッシュ94とリニアシャフト95との組合せ2組、ボールネジ96および一対のボールベアリング97,97等からなる。広義には、上方アーム33,
33および揺動軸54も搬路傾斜手段7に含まれる。
【0037】
「搬路」とは、円すいころ移動装置1における、円すいころが接して移動する部分を言う。
不動板91は、短冊形状の板材で形成される。不動板91は、棒状の2つの支持部材98により、その長手方向を前後方向に一致させてその一方の長辺近傍が搬路基部4の基板31の下面に固定されている(後述する図8参照)。不動板91は、基板31と略平行である。不動板91は、長手方向両端近傍に貫通する孔を備え、孔にはフランジタイプのクランプレバー付リニアブッシュ94(以下「ブッシュ94」という)がフランジ部分を上方に露出させてはめ込まれている。
【0038】
ブッシュ94には、リニアシャフト95(以下「シャフト95」という)が(上下方向に)貫通している。不動板91は、その長手方向中央近くをボールネジ96のネジ軸99が貫通し、ネジ軸99は、不動板91の上面に固定されたナット部101に螺合されている。
下部連結板92は、不動板91より幅が狭い短冊形状の板材で形成され、不動板91の下方に位置する。下部連結板92は、その長手方向を不動板91の長手方向に揃えて不動板91に平行に配されている。下部連結板92は、その長手方向の両端近傍でシャフト95,95(の下端)を固着する。下部連結板92は、その長手方向中央近くをネジ軸99が貫通し、その下面にネジ軸99の固定用サポート102を有する。固定用サポート102を貫通したネジ軸99の下方の端は、傾斜調整ハンドル106に固定されている。
【0039】
上部連結板93は、下部連結板92より幅が狭い短冊形状の板材で形成され、不動板91の上方に位置する。上部連結板93は、その長手方向を不動板91の長手方向に揃えて不動板91に平行に配されている。上部連結板93の長手方向両端近傍の下面には、シャフト95,95の上端が固着されている。上部連結板93は、その上面両端にそれぞれプレート103,103を備える。
【0040】
ボールベアリング(以下「ベアリング」という)97,97は、その回転軸を前後方向(円すいころの移動方向であり、上部連結板93の長手方向でもある)に一致させて、プレート103,103の外側に回転可能に一体化されている。「プレート103,103の外側に」とは、前後方向について、ベアリング97、プレート103、プレート103、ベアリング97の順に並ぶ意である。
【0041】
上方アーム33,33が揺動可能に幅方向傾斜部5の幅方向の一方を支持し、ベアリング97,97は、幅方向傾斜部5が過度に傾斜しないようにテーブル47の下面に当接して、幅方向傾斜部5の幅方向の他方を下方から支持する。
移動方向傾斜部3は、全体基部2の傾斜部支持板19を貫通しその両端が搬路基部4の二股アーム34の孔36,36に保持される連結軸104により、全体基部2に保持される。移動方向傾斜部3は、全体基部2に対して連結軸104を中心に前後方向に傾斜可能であり、二股アーム34から突出して係止孔37を貫通するクランプ105の固定機能により、その設定された傾斜が維持される。クランプ105は、係止孔37から突出する雄ネジにハンドルの雌ネジを螺合させ、ネジを締めることで固定させる公知のものである。
【0042】
上述した円すいころ移動装置1は、大きさが異なる複数種の円すいころを、移動元を高く移動先を低くすることで円滑に回転させ移動させることができる。
次に、複数種の円すいころを円滑に移動させるための円すいころ移動装置1の調整について説明する。
「円すいころ移動装置1の調整」とは、搬路部6の左転路部43と右転路部44との間(「転路幅」という)の調整、左転路部43の左転路49と右転路部44の右転路58の
高低差の調整、搬路部6全体の傾斜の調整、および移動方向傾斜部3の傾斜(円すいころ移動元と移動先との高低差)の調整である。
【0043】
図6は転路幅の調整を説明する図、図7は右転路58の上下機構を説明する図、図8は搬路部6全体の傾斜の調整を説明する図、図9は移動方向傾斜部3の傾斜の調整を説明する図である。
図6を参照して、初めに、移動させる円すいころの長さに応じて、転路幅が調整される。円すいころは、具体的には左転路49と右転路58とに保持された状態で転がりながら移動する。したがって「転路幅」とは、左転路49および右転路58におけるそれぞれの対向する垂直面の距離である。
【0044】
転路幅の調整は、幅変更手段42、すなわち2つのリニアガイド81,81、リニアガイドクランパー82およびボールネジ83等の機能が利用される。最初にレバー74が操作され、リニアガイドクランパー82によるレール84との(機械的)固着が解除される。
次に、ボールネジ83のネジ軸89に一体化された幅変更ハンドル88が回される。この操作により、ナット部87はネジ軸89に沿って(幅方向に)移動する。これに伴い、ナット部87と一体化された右転路部44(右転路58)も幅方向に移動するので、左転路49および右転路58の距離が適正となったとき、幅変更ハンドル88の回転が停止される。最後に、レバー74が操作され、リニアガイドクランパー82がレール84に固着される。リニアガイドクランパー82は右転路部44に一体化されているので、リニアガイドクランパー82がレール84に固着されることにより、転路幅が固定される。以上の処理によって、円すいころ移動装置1の転路幅はD1(図6(a))からD2(図6(b))に変更される。
【0045】
円すいころ移動装置1の調整後の転路幅D2は、移動させようとする円すいころWの高さHにより変更される。
転路幅が調整されたら、次に、左転路部43の左転路49と右転路部44の右転路58の高低差の調整が行われる。図7を参照して、高低差の調整は、右転路部44の3つの六角穴付きボルト65を緩めることから始められる。六角穴付きボルト65を緩めると、右側壁57に一体化された右転路58は、六角穴付きボルト65のネジ部が保持孔63内を上下できる範囲で上下動が可能となる。そこで、右転路上下手段59のアジャスタボルト72を緩む方向に回し、右転路58を、例えば左転路49と同じ高さ(図7(a))から下方に移動させる(図7(b))。
【0046】
なお、左転路49に比べて右転路58を低くするのは、円すいころWの大底面Bbを右転路58側として円すいころを移動させることを想定しているからである。円すいころWの小底面Bsを右転路58側として移動させる場合には、左転路49に比べて右転路58を高くする。
左転路49と右転路58との高低差Dhは、移動させようとする円すいころWの形状、大きさにより異なる。定性的には、移動させようとする円すいころWの両端を左転路49および右転路58で支持したとき、円すいころWの軸心Caが水平または水平よりも大底面Bb側が低くなるように、高低差Dhが調整されるのが好ましい。
【0047】
左転路49と右転路58との高低差Dhが適切に調整されたら、六角穴付きボルト65が締められ、右側壁57は右支持壁62に固定される。
次に、搬路部6全体の傾斜の調整が行われる。図8を参照して、最初に搬路傾斜手段7における前後方向両側のブッシュ94,94のクランプが解除される。ボールネジ96に連結された傾斜調整ハンドル106が左回転され、ナット部101に対してネジ軸99が下方に移動する。ネジ軸99は下部連結板92と一体に移動するので、下部連結板92に
下端が固着されたシャフト95,95も、位置が変化しないブッシュ94,94内を下降する。これにより、シャフト95,95の上端に固着された上部連結板93および上部連結板93に一体化された2つのベアリング97,97も下降する(図8(c))。
【0048】
搬路部6は、幅方向の一方の端が揺動軸54により揺動可能に搬路基部4に連結されているので、ベアリング97,97が下降(Dm)すると、これに支持された搬路部6における幅方向の他方の側も下降する(図8(d))。搬路部6における幅方向の他方の側の下降により、搬路部6全体が、移動させようとする円すいころWの大底面Bb側が低くなるように幅方向に傾斜する。
【0049】
目標通りに搬路部6全体が幅方向に傾斜したら、ブッシュ94,94のクランプを操作して(締めて)、傾斜の程度が変化しないように固定する。
搬路部6全体の幅方向への傾斜は、移動させようとする円すいころWを搬路に載せたときに円すいころWの軸心Caが水平よりも右転路58側に傾くよう調整される。円すいころWのその周面の最上部の母線Cgが、水平または水平よりも右転路58側に傾くよう調整されるのが好ましい。
【0050】
搬路部6全体の傾斜の調整が終了すると、次に移動方向傾斜部3の傾斜の調整が行われる。移動方向傾斜部3の傾斜は、円すいころを自重で移動元から移動先に回転移動させるために行われる。移動方向傾斜部3の傾斜は、傾斜調整部20を操作して行う。
図9を参照して、移動方向傾斜部3の傾斜は、クランプ105の固定機能を解除し、傾斜部支持板19(全体基部2)に連結軸104を介して支持される移動方向傾斜部3を揺動可能にすることで開始される。
【0051】
ところで、移動方向傾斜部3は、その揺動中心つまり(二股アームの)孔36の中心(連結軸104の軸心に略一致)が、その傾斜が無く搬路部6に円すいころを載せても円すいころが移動しないときの重心Gfを含む鉛直線VLよりも円すいころの移動先側(図9(a)の左側)に位置する。そのため、クランプ105の固定機能が解除されると、移動方向傾斜部3の傾斜の程度は、傾斜調整部20における調整ボルト保持部23からの調整ボルト24の突出の程度、すなわち調整ボルト24の回転で調整できる。
【0052】
図9(b)は、調整ボルト24を右回転させて突出の程度を大きくし、移動方向傾斜部3における円すいころの移動先をその移動元より低くした図である。移動方向傾斜部3の傾斜の程度が決定されたら、クランプ105により移動方向傾斜部3の傾斜が固定化される。
以上が、寸法が異なる複数種の円すいころを円滑に移動させるための円すいころ移動装置1の調整要領である。なお、円すいころ移動装置1は、転路幅の調整および移動方向傾斜部3の傾斜の調整のみで、当然に円柱状のころ(円筒ころ)の移動が可能である。
【0053】
図10は円すいころ移動装置1を移動する円すいころWを説明する図である。図10において、(a),(c)は搬路を上方の円すいころWの軸心Caに直交する方向から見た図、(b),(d)は搬路を正面から見た図(正面図相当)であり、(a),(b)は円すいころWが搬路に載せられた直後の図である。
図10を参照して、上記調整済みの円すいころ移動装置1の搬路に円すいころWが載せられると((a),(b))、移動方向傾斜部3の傾斜により円すいころWは移動先に向け回転移動する。ここで、仮に円すいころWが滑り等無く単純に略四分の一回転して移動したとすると、円すいころWは、図10(a)のW’、(c)(d)に示されるようになる。円すいころWの軸心Caは幅方向(図(c)の上下方向)に対して傾斜し、その大底面Bbは、右転路58の直立する内面111に点Fで接する。
【0054】
円すいころWは、大底面Bb側が下になるように傾いている((d))。そのため、円すいころWの重量Wgの一部は、円すいころWの重心Gwから点Fに対して分力Wdとして作用する((d))。円すいころWの重心Gwはその軸心Caのいずれかに存在し、略四分の一程度の回転では、重心Gwは点Fよりも移動先側に位置する。重心Gwと点Fとのこの位置関係では、円すいころWは不安定な姿勢であるといえる。
【0055】
前述した分力Wdは、幅方向に向かう力Weに分解される。そこで、円すいころWには、力がWeであり、点Fを支点(回転軸)、重心Gwを力点、および前後方向における点Fと重心Gwとの距離Lを腕の長さとする力のモーメント、すなわち円すいころWをF回りに回転させようとする力が働く。
以上の理由により、仮に円すいころWが滑り等無く単純に略四分の一回転して移動(図10(c))したとしても、円すいころWは自重によりその軸心Caが幅方向に一致する姿勢に戻って回転を持続することができる。
【0056】
この円すいころWの姿勢の回復は、図10(d)を例に、例えば(c)の姿勢のまま正面視において軸心Caが水平な状態から除除に大底面Bb側が下になるように((d)を)傾けると、特定の傾斜に達したとき軸心Caが幅方向に一致するよう円すいころWの姿勢が変化する((a)の円すいころW)のと同じである。
円すいころWには、その軸心Caが幅方向に対して傾くと直ちに距離Lを腕の長さとする力のモーメントが作用する。したがって、円すいころWは、幅方向に対して大きくその軸心Caを傾けることなく見かけ上その大底面Bbが右転路58の直立する内面111に線または面で接したまま、円すいころ移動装置1の搬路を移動する。
【0057】
なお、円すいころWが小さく大底面Bb中心よりも右転路58が高い場合であっても、分力Wdの作用点F’は、右転路58の上面から大底面Bbの略半径以上に高くはならず、前後方向((c)の左右方向)においてより軸心Caから遠ざかる。つまり、大底面Bbの径の大きさが異なる円すいころに対して、取り替えることなく同じ右転路58(の直立する内面111)で対応させることができる。円すいころ移動装置1は、一組の左転路49と右転路58との組合せで異なる大きさの複数種の円すいころWを移動させることができる。
【0058】
図11は搬路部6を傾斜させず左転路49と右転路58との高低差のみによる円すいころWの移動を説明する図である。図11において(a)は搬路を上方かつ円すいころWの軸心Caに直交する方向から見た図、(b)は搬路を正面から見た図である。
搬路部6を傾斜させず左転路49と右転路58とに高低差のみ設けた場合であっても、円すいころWには右転路58の方に滑って移動する力Wdが働く。この力Wdは右転路58に接する点Fに作用する。点Fは、左転路49と右転路58との高低差に起因して円すいころWが幅方向(図における右方向)に移動しようとする力が働く点である。点Fは、前後方向において重心Gwよりも左に位置する。円すいころWの重量Wgにおける幅方向の分力Weは、重心Gwを力点、点Fを支点(回転軸)、および前後方向における点Fと重心Gwとの距離Lを腕の長さとする力のモーメントを生じさせる。
【0059】
以上のことから、搬路部6を傾斜させない場合であっても、円すいころWは回転を継続できる姿勢を維持できる。その結果、円すいころ移動装置1は、移動方向(前後方向)に傾斜する搬路を円すいころWの自重のみで円滑に移動させることができる。
左転路49と右転路58との高低差Dhは、移動させようとする円すいころWを搬路に載せたときに円すいころWの軸心Caが水平よりも右転路58側に傾くよう調整される。円すいころWのその周面の最上部の母線Cgが、水平または水平よりも右転路58側に傾くよう調整されるのが好ましい。
【0060】
円すいころ移動装置1において、搬路部6を傾斜させずに円すいころWを移動させる場合、正面視(図11(b))における円すいころWの最下部の母線Cuと右転路58の上面とがなす角度θが大きいと、円すいころWの移動に障害が生ずることに注意を要する。
円すいころ移動装置1は、従来のように円すいころをその軸方向に滑らせて移動させるのではなく、回転させて軸方向に直交する方向に移動させる。円すいころ移動装置1は、円すいころの回転を利用するため、円すいころを滑らせ(落下させ)て移動させる従来の方法に比べて移動元と移動先との大きな高低差を必要とせず、設計への制約が少ない。また、円すいころWの幅はその高さに比べて小さいので、同じ滞留量(数)では搬路を短くすることができる。
【0061】
上述の実施形態において、搬路部6は、その左転路49が円すいころWの小底面Bsの端近傍を支持することができ、その右転路58が円すいころWの大底面Bbの端近傍を支持しかつ円すいころWの幅方向への移動を阻止できれば、これら(左転路49、右転路58)は上記の形態に限られない。
例えば、円すいころWの小底面Bs側を転動させる左転路49を、断面「L」字状でなく、単なる平板状の左転路49Bとしてもよい。
【0062】
搬路部6を円すいころWが移動するとき、小底面Bsは左転路49の略直立し内方を向く表面112に接することがないからである。
同じ理由から、図12に示される左転路49C,49Dおよび右転路58C,58Dであっても、上述した搬路部6における左転路49および右転路58と同じ機能を発揮する。また、右転路58,58C,58Dにおける大底面Bb側下方を支持する部分と大底面Bbに当接して幅方向への移動を阻止する部分とが切り離された構造としてもよい(図12(d),(e))。円すいころWの大底面Bbに当接して幅方向への移動を阻止する部分(例えば図10,11における内面111)は、搬路の全行程で「幅方向への移動を阻止」できるように、全体として右転路58F,58Gに沿っていれば移動元から移動先まで連続していなくともよい(一定間隔で設置されていてもよい)。
【0063】
図13(a),(b)に示されるように、円すいころ移動装置1は、一種類の円すいころ専用の場合、左転路49および右転路58を一体の転路115とすることができる。円すいころWの小底面Bs側と大底面Bb側とに高低差を設けないときは、一体化された転路115を大底面Bb側に傾ければ((b))、円すいころWは円滑に移動する。一体化された転路115Eの幅を変更可能とすれば大きさが異なる複数種の円すいころの移動に利用できる(図13(c),(d))。
【0064】
その他、円すいころ移動装置1、および円すいころ移動装置1の各構成または全体の構造、形状、寸法、個数、材質などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、設置場所に制約から円すいころの移動距離が短くその移動元と移動先との高低差が少ない条件において、動力を使用せずに確実に円すいころを移動させる必要がある場合に利用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 円すいころ移動装置
6 搬路部(転路)
7 搬路傾斜手段(高低差形成手段)
49,49B,49C,49D 左転路(第二の経路)
58,58C,58D 右転路(第一の経路)
59 右転路上下手段(第一の転路を鉛直方向に上下させる手段(高低差形成手段))
111 右転路における直立する内面(係止部)
115E 転路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13