特許第6804095号(P6804095)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6804095セラノスティクス用のバブル製剤(TB)及びその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6804095
(24)【登録日】2020年12月4日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】セラノスティクス用のバブル製剤(TB)及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/02 20060101AFI20201214BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20201214BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20201214BHJP
   A61K 49/22 20060101ALI20201214BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20201214BHJP
   A61K 9/19 20060101ALN20201214BHJP
   A61K 47/36 20060101ALN20201214BHJP
   A61K 47/42 20170101ALN20201214BHJP
   A61K 47/26 20060101ALN20201214BHJP
【FI】
   A61K31/02
   A61K47/24
   A61P35/00
   A61K49/22
   A61K9/127
   !A61K9/19
   !A61K47/36
   !A61K47/42
   !A61K47/26
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-523117(P2017-523117)
(86)(22)【出願日】2016年6月10日
(86)【国際出願番号】JP2016002810
(87)【国際公開番号】WO2016199430
(87)【国際公開日】20161215
【審査請求日】2019年4月24日
(31)【優先権主張番号】特願2015-117793(P2015-117793)
(32)【優先日】2015年6月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】399086263
【氏名又は名称】学校法人帝京大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 一雄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 亮
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン ミカエル ウンガ
(72)【発明者】
【氏名】小俣 大樹
(72)【発明者】
【氏名】小田 雄介
【審査官】 六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−057591(JP,A)
【文献】 特開2001−205061(JP,A)
【文献】 特開2003−048826(JP,A)
【文献】 特表2007−516957(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/030601(WO,A1)
【文献】 Pharmaceutical Research,2013年,30(1),p.218-224
【文献】 Drug Delivery System,2014年,29-4,p.285-293
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
A61K 47/00−47/69
A61K 49/00−49/22
WPI
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂質からなる被膜と、前記被膜の内腔に封入されたガスとからなり、診断用超音波と低強度治療用超音波を作用させることにより、対象組織の診断(Diagnostics)及び治療(Therapeutics)を可能とするセラノスティクス用のバブル製剤であって、
前記被膜は、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、及び、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトオキシ(ポリエチレングリコール)](DSPE-PEG)を、30〜45:45〜60:4〜12のモル比にて形成されたアニオニック脂質であり、
前記ガスは、パーフルオロプロパン、パーフルオロブタン、パーフルオロペンタン、及び、パーフルオロヘキサンの少なくとも何れか又は混合ガスを含有することを特徴とするセラノスティクス用のバブル製剤。
【請求項2】
前記被膜は、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)とジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、及び、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトオキシ(ポリエチレングリコール)](DSPE-PEG)を、30:60:10の重量比にて形成されたアニオニック脂質であり、
前記ガスはパーフルオロプロパンであることを特徴とする請求項1に記載のセラノスティクス用のバブル製剤。
【請求項3】
前記低強度治療用超音波は0.03〜50W/cm2のエネルギー強度であることを特徴とする請求項1又は2に記載のセラノスティクス用のバブル製剤。
【請求項4】
直径が500nm〜5μmである請求項1乃至3の何れか1項に記載のセラノスティクス用のバブル製剤。
【請求項5】
前記被膜は、DSPC、DSPG及びDSPE-PEG誘導体であり、
前記DSPE-PEG誘導体は、DSPE-PEG-MAL、DSPE-PEG-COOH、DSPE-PEG-NHS又はDSPE-PEG-NH2であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のセラノスティクス用のバブル製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象組織の診断(Diagnostics)及び治療(Therapeutics)を可能とするセラノスティクス用のバブル製剤(TB)、及び、そのセラノスティクス用のバブル製剤の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波造影剤は微小気泡の懸濁液であり、国内で使用されている超音波造影剤には主としてレボビスト(登録商標)とソナゾイド(登録商標)とがある。レボビストは心血管造影の診断として使用されており、ソナゾイドはクッパー細胞造影による肝癌の診断及び乳腺腫瘍の診断に使用されている。レボビストの被膜は糖質であるガラクトースで構成され、内部には空気が封入されている。ソナゾイドの被膜はリン脂質であるホスファチジルセリンナトリウムで構成され、内部にはペルフルブタンが封入されている。
【0003】
しかしながら、これらの超音波造影剤には治療を行う機能を有しておらず、臨床現場等からは更なる機能の充実性が要求されている。また、近年、診断(Diagnosis)と治療(Therapeutics)を融合したセラノスティクス(Theranostics)が注目を集めている。これは診断と治療を同時に行うシステムを示しており、DDSの分野においてもTheranostics製剤として高機能なナノキャリアー開発に注目が注がれている。
【0004】
臨床応用されている診断法のなかで、超音波は、非侵襲的、簡便、比較的低コスト、かつリアルタイムでの診断イメージングが取得可能という利点を有する。それゆえ超音波診断装置は、幅広い臨床領域で必要不可欠な診断手法となっている。超音波の物理的エネルギーは、すでに臨床現場において、診断のみならず治療にも適用されている。
【0005】
例えば、血管造影等の目的で臨床応用されている超音波造影剤であるマイクロバブルと超音波照射の併用により細胞内へ薬物や遺伝子を送達する方法が報告されている(非特許文献1,2)。この方法は、体外からの超音波照射によるマイクロバブルの圧壊(キャビテーション)を時間的・空間的に制御することで、超音波照射した部位にのみ効率良く導入可能であり、臓器・組織特異的に遺伝子・核酸を導入する方法として期待され、種々の組織でのin vitro、in vivoにおける遺伝子導入が報告されている。
【0006】
体にメスを入れること無く癌細胞を破壊するとして普及しつつある高強度焦点式超音波(HIGH INTENSITY FOCUSED ULTRASOUND:HIFU)治療は、高強度の超音波(例えば3000〜5000W/cm2のエネルギー強度)を体外から体内の癌組織の一点に集めることにより、熱エネルギー(熱的作用)及びキャビテーション(非熱的作用)で癌組織を焼灼壊死させるというものである(特許文献1)。この作用は、焦点部位の約80〜90℃になる熱エネルギーによる癌細胞の焼灼による癌細胞の破壊によるものである。
【0007】
しかしながら、HIFUでは1回に照射して焼灼できる範囲が例えば3mm×3mm×10mmであるため、焦点をずらしながら繰返し照射する必要がある。HIFUでは、焦点のズレは非常に危険を伴うため、MRIや超音波画像のガイド下で行われる。また皮膚や周辺部位が高温になるため、絶えず精密なコントロールと冷却時間を確保する必要がある。そのため通常2時間から4時間の治療時間が必要である。
【0008】
このようにHIFUは非侵襲的な治療法で理想的であるが、治療機能を有するバブル製剤を癌組織に存在させることができれば、HIFUで使用される高強度超音波よりも例えば1/100〜1/500程度弱い低強度超音波で、バブルの存在する部位でのみキャビテーションによる癌治療が可能となりうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2009−533188号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Mitragotri S, Healing sound: the use of ultrasound in drug delivery and other therapeutic applications. Nature Rev. Drug Discov. 2005; 4: 255-259.
【非特許文献2】Lawrie A, Brisken AF, Francis SE, Cumberland DC, Crossman DC, Newman CM, Microbubble-enhanced ultrasound for vascular gene delivery. Gene Ther., 2000; 7: 2023-2027.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、低強度超音波照射による対象組織の診断及び治療を可能とする、セラノスティクス用のバブル製剤、及び、そのセラノスティクス用のバブル製剤の使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明にかかるセラノスティクス用のバブル製剤(TB)は、脂質からなる被膜と前記被膜の内腔に封入されたガスとからなり、低強度治療用超音波を作用させることにより、対象組織の診断(Diagnostics)及び治療(Therapeutics)を可能とするセラノスティクス用のバブル製剤であって、前記被膜は、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、及び、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトオキシ(ポリエチレングリコール)](DSPE-PEG)を、22〜60:30〜68:4〜12のモル比にて被覆され形成されたアニオニック脂質であり、前記ガスは、パーフルオロプロパン、パーフルオロブタン、パーフルオロペンタン、及び、パーフルオロヘキサンの少なくとも何れか又は混合ガスを含有することを特徴とする。
【0013】
本発明にかかるセラノスティクス用のバブル製剤(TB)の使用方法は、本発明にかかるセラノスティクス用のバブル製剤が注射用水に懸濁されている懸濁液を対象組織に導入し、第1の周波数からなる診断用超音波を対象組織に作用させることにより対象組織の造影による診断(Diagnostics)を行い、第2の周波数からなる低強度治療用超音波を対象組織に作用させることによりキャビテーション現象による対象組織の治療(Therapeutics)を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかるセラノスティクス用のバブル製剤は、従来のマイクロバブルに比べて、診断用超音波照射により壊れること無く長時間の共振・共鳴が可能であるため、長時間の連続超音波造影が可能である。また、本発明によれば、低強度治療超音波照射による対象組織の診断及び治療が可能となる。低強度の集束治療超音波(Low Intensity Focused Ultrasound, LOFU)を用いれば、焦点部位の温度は上がらず安全性が高い。これにより安全性の高い血栓の早期診断・治療、脳機能疾患や腎臓疾患の低侵襲的な治療に向けた超音波セラノスティクスシステムの構築が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明にかかるセラノスティクス用のバブル製剤の製造工程を示す図である。
図2】被膜成分割合を種々変更した場合におけるバブル製剤の持続性を示す図である。
図3】ソナゾイド(比較例)、パーフルオロプロパンガス封入バブル製剤、及び、パーフルオロブタンガス封入バブル製剤において、時間経過の場合の超音波イメージング画像を示す図である。
図4】ソナゾイド(比較例)、及び、パーフルオロプロパンガス封入バブル製剤において、腫瘍部位を拡大した場合における超音波イメージング画像を示す図である。
図5】in vivo 肝臓へのルシフェラーゼ遺伝子導入におけるルシフェラーゼ活性の上昇を示す図である。
図6】in vivo 肝臓へのルシフェラーゼ遺伝子導入における発光イメージングの結果を示す図である。
図7】in vitro colon26 培養細胞に対するルシフェラーゼ遺伝子導入におけるルシフェラーゼ活性の上昇を示す図である。
図8】シェイキングにより作成したバブル製剤の写真図である。
図9】ホモジナイザーにより調製したcRGD 5モル%修飾バブルのHUVEC細胞への結合性を示す図である。
図10】シェイキングにより調製したcRGD 5モル%修飾バブルのHUVEC細胞への結合性を示す図である。
図11】シェイキングにより調製したcRGD 10モル%修飾バブルのHUVEC細胞への結合性を示す図である。
図12】本実施例にかかるバブル製剤の抗腫瘍効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明するが、当該実施形態は本発明の原理の理解を容易にするためのものであり、本発明の範囲は、下記の実施形態に限られるものではなく、当業者が以下の実施形態の構成を適宜置換した他の実施形態も、本発明の範囲に含まれる。
【0017】
1.<セラノスティクス用のバブル製剤>
本実施形態にかかるセラノスティクス用のバブル製剤は、脂質からなる被膜と、この被膜の内腔に封入されたガスとからなる。
【0018】
被膜は、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、及び、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトオキシ(ポリエチレングリコール)](DSPE-PEG)を、22〜60:30〜68:4〜12のモル比にて形成されたアニオニック脂質である。
【0019】
ガスはパーフルオロ炭化水素ガスであり、具体的にはパーフロオロプロパン、パーフロオロイソブタン、及び、パーフロオロノルマルブタンの少なくとも何れか又はこれらの混合ガスを含有する。特に好ましいパーフルオロ炭化水素ガスは、日本では医療用として購入できるため、パーフルオロプロパンである。なお、これら以外のパーフルオロ炭化水素を包含することも可能で有り、具体的には例えばパーフルオロメタン、パーフルオロエタン、パーフルオロイソオクタン、パーフルオロノルマルオクタン、及び六フッ化イオウである。充填されるガスの圧力としては、例えば0.1〜1.0MPa程度である。
【0020】
本発明にかかるセラノスティクス用のバブル製剤は、リン脂質とPEG-脂質によって疎水性のフルオロカーボンガスを包み込んだ微少気泡であり、液体中に直径500nm〜5μmの泡状体で存在する。セラノスティクス用のバブル製剤の直径は、例えば動的光散乱法により測定される。
【0021】
被膜は、DSPC、DSPG及びDSPE-PEGを22〜60:30〜68:4〜12のモル比にて形成されることにより、パーフルオロ炭化水素の保持性が高まり、診断用超音波の照射で崩壊すること無く持続的な共振・共鳴を示し、これにより長時間の連続超音波造影が可能となる。
【0022】
なお、被膜を構成するDSPC、DSPG及びDSPE-PEGにおいて、DSPE以外に下記に示すリン脂質とすることも可能である。即ち、ジミリストイル−ホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジアラキドイルホスファチジルエタノールアミン(DAPE)又はジリノレイルホスファチジルエタノールアミン(DLPE)等のホスファチジルエタノールアミン;ジラウロイル−ホスファチジルコリン(DLPC)、ジミリストイル−ホスファチジルコリン(DMPC)、ジパルミトイル−ホスファチジルコリン(DPPC)、ジアラキドイル−ホスファチジルコリン(DAPC)、又はジオレイル−ホスファチジルコリン(DOPC)等のホスファチジルコリン;ジミリストイルホスファチジルセリン(DMPS)、ジアラキドイルホスファチジルセリン(DAPS)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)、ジオレイルホスファチジルセリン(DOPS)等のホスファチジルセリン;ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)、ジミリストイルホスファチジン酸(DMPA)、ジステアロイルホスファチジン酸(DSPA)、ジアラキドイルホスファチジン酸(DAPA)及びそのアルカリ金属塩等のホファチジン酸誘導体;ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)及びそのアルカリ金属塩、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)及びそのアルカリ金属塩、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)及びそのアルカリ金属塩、ジオレイル−ホスファチジルグリセロール(DOPG)等のホスファチジルグリセロール;ジラウロイルホスファチジルイノシトール(DLPI)、ジアラキドイルホスファチジルイノシトール(DAPI)、ジミリストイルホスファチジルイノシトール(DMPI)、ジパルミトイルホスファチジルイノシトール(DPPI)、ジステアロイルホスファチジルイノシトール(DSPI)、ジオレイルホスファチジルイノシトール(DOPI)等のホスファチジルイノシトールが挙げられる。
【0023】
また、被膜を構成するDSPC、DSPG及びDSPE-PEGにおいて、DSPE-PEG以外にステアリルPEG、パルミトイルPEG、オレイン酸PEG、ミリスチルPEG、ラウロイルPEG等も挙げられる。
【0024】
PEGの分子量は500〜12000が挙げられる。DSPE-PEGは好ましくはDSPE-PEG2000、DSPE-PEG3000又はDSPE-PEG5000であり、特に好ましくはDSPE-PEG2000である。
【0025】
なお、被膜には、DSPC、DSPG及びDSPE-PEG以外に更に付加して下記に示すリン脂質を包含させることも可能である。即ち、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジラウロイルホスファチジルコリン(DLPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジリノレオイルホスファチジルコリン等のホスファチジルコリン;ジラウロイルホスファチジルグリセロール(DLPG)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジリノレオイルホスファチジルグリセロール等のホスファチジルグリセロール;ジラウロイルホスファチジルエタノールアミン(DLPE)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジリノレオイルホスファチジルエタノールアミン等のホスファチジルエタノールアミン;ジラウロイルホスファチジルセリン(DLPS)、ジミリストイルホスファチジルセリン(DMPS)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)、ジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)、ジリノレオイルホスファチジルセリン等のホスファチジルコリン等が挙げられる。
【0026】
また、被膜には、前述のリン脂質以外に、例えばグリセロ糖脂質やスフィンゴ糖脂質を包含させることも可能である。グリセロ糖脂質は、例えばスルホキシリボシルグリセリド、ジグリコシルジグリセリド、ジガラクトシルジグリセリド、ガラクトシルジグリセリド、グリコシルジグリセリド等が挙げられる。スフィンゴ糖脂質は、例えばガラクトシルセレブロシド、ラクトシルセレブロシド、ガングリオシド等が挙げられる。
【0027】
被膜の脂質表面に、標的細胞、標的組織、標的病巣に対するリガンドが修飾されていることも可能である。リガンドは、例えば、血栓に対するリガンドとしてArginine-Glycine-Aspartic acid(RGD)配列ペプチド、Sigma Protein等が挙げられ、癌細胞に対するリガンドとしてトランスフェリン、葉酸、ヒアルロン酸、ガラクトース又はマンノースが挙げられる。またモノクローナル抗体やポリクローナル抗体もリガンドとして使用できる。好ましくはRGDペプチドであり、RGDペプチドは、特定の細胞や血栓上に存在する細胞接着因子に特異的に結合する機能を持つ。そのため被膜の脂質表面にRGDペプチドを修飾させることにより、血栓の可視化を更に容易とすることが可能となる。
【0028】
被膜の脂質表面にリガンドを修飾させるために、被膜は、DSPC、DSPG及びDSPE-PEG誘導体とすることが好ましい。例えば、DSPE-PEG-Maleimide(MAL)、DSPE-PEG-Carboxylic Acid(COOH)、DSPE-PEG-N-Hydroxysuccinimide(NHS)又はDSPE-PEG-NH2とすることが好ましい。
【0029】
被膜には、必要に応じ他の物質を加えることもでき、例えば膜安定化剤としてシトステロール、コレステロール、ジヒドロコレステロール、コレステロールエステル、フィトステロール、スチグマステロール、カンペステロール、コレスタノール、ラノステロール、1−O−ステロールグルコシド、1−O−ステロールマルトシド、及びこれらの混合物を含有させることができる。
【0030】
本発明にかかるセラノスティクス用のバブル製剤の被膜の内部には薬物を内包又は表面吸着させることも可能である。薬物は、長期間血中濃度が維持されることが望まれる薬物又は特定の疾患部位や細胞への標的指向性を意図した投与が必要な薬物等が好ましい。薬物は、特に限定されるものではないが、例えば抗癌剤、抗生物質、抗喘息薬、抗血栓剤、抗原虫薬、免疫賦活剤、ペプチド系薬物、抗ウイルス薬である。
【0031】
抗癌剤は、特に限定されるものではないが、例えばドキソルビシン、シスプラチン、マイトマイシン、ブレオマイシン、5−フルオロウラシル、メソトレキサート、ナイトロジェンマスタード、ブスルファン、オギザリプラチン、タキソール、カンプトテシン等である。抗生物質は例えばスルファゼン、ゲンタマイシン、ストレプトマイシン等である。抗喘息薬は例えばテオフィリン等である。抗血栓剤は、例えば、tPA、ヘパリン、低分子量ヘパリン、ウロキナーゼ、トロンボモジュリン、ストレプトキナーゼ等である。抗原虫薬は例えばアンチモン酸メグルミン等である。免疫賦活剤は例えばムラミルペプチド類等である。ペプチド系薬物は例えば、天然型又は遺伝子組み換え型のα、β、γ−インターフェロン、インターロイキン、スーパーオキシドデスムターゼ等である。その他にも薬物として、例えばプロスタグランジン等の動脈硬化症治療薬、動脈閉塞症、バーチャ病に対するNFカッパーB、デコイ等が挙げられる。
【0032】
また、セラノスティクス用のバブル製剤の内部には薬物のみならず遺伝子類を内包又は表面吸着させることも可能である。遺伝子類は、例えば、DNA、RNA、アンチセンスDNA、siRNA、デコイ、治療用オリゴヌクレオチド等である。
【0033】
2.<セラノスティクス用のバブル製剤の製造方法>
本発明にかかるセラノスティクス用のバブル製剤は、図1に示されるように、脂質溶液を、懸濁液を生成するように撹拌しながらパーフルオロ炭化水素ガスに接触させ、その後、ホモジナイザー(15000 rpm, 5分)を用いて有機相を水性相に乳化することにより、ナノバブル懸濁液として製造可能である。
【0034】
また、本発明にかかるセラノスティクス用のバブル製剤は、ホモジナイザーにより調製するのみならず、例えばシェイキングにより調製することも可能である。例えば、所定比率のリポソーム溶液をバイアルに入れ、バイアルシェーカーで振とうしてナノバブル懸濁液を製造することも可能である。
【0035】
3.<凍結乾燥粉末体>
本実施形態にかかる凍結乾燥粉末体は、本発明にかかるセラノスティクス用のバブル製剤が、トレハロース又はスクロースである糖質の溶液に懸濁している懸濁液を凍結乾燥させて得られる凍結乾燥粉末体である。
【0036】
凍結乾燥の際に、凍結保護及び/又は分散保護のために凍結乾燥添加剤を含有させておくことも可能である。凍結乾燥添加剤としては、例えば、グリシンのようなアミノ酸;マンニトール、マルトース、グルコース、ラクトース、イヌリン、スクロース、トレハロース又はシクロデキストリンのような糖類;デキストラン、キトサンのような多糖;又はポリエチレングリコールのようなポリオキシアルキレングリコール等が挙げられる。
【0037】
この凍結乾燥粉末体により3ヶ月以上の長期の保存が可能となり、注射用水と、上述したパーフルオロプロパン等のパーフルオロ炭化水素ガスにより復元して使用することが可能である。
【0038】
4.<セラノスティクス用のバブル製剤(TB)の使用方法>
本発明にかかるセラノスティクス用のバブル製剤は、下記のように使用する。即ち、本発明にかかるセラノスティクス用のバブル製剤が注射用水に懸濁されている懸濁液を対象組織に導入する。対象組織は特に限定されるものではないが、例えば癌組織である。
【0039】
次に第1の周波数からなる診断用超音波を対象組織に作用させることにより対象組織の造影による診断を行う。第1の周波数は例えば3MHz〜20MHzである。第1の周波数を作用させることによりMicrostreaming現象が生じる。即ち、超音波の音圧強度によりナノバブルが拡大・縮小を繰り返して局所的に振動する。
【0040】
次に第2の周波数からなる低強度超音波を対象組織に作用させることによりキャビテーション現象による対象組織の治療を行う。第2の周波数は例えば0.5MHz〜3.0MHzである。キャビテーション現象は、ナノバブルが圧壊する時点で大きな圧力を放出し、ジェット流が生じるものである.
第1の周波数による診断用超音波を対象組織に作用させることにより対象組織の造影が可能となり、造影できるということはその部位に向かって第2の周波数による低強度超音波又はLOFUを照射すればキャビテーションによる治療が可能となる。更に、低強度超音波又はLOFUのみの照射では焦点部位の温度は上がらないので、安全性の高い低侵襲的な治療が可能となる。
【実施例】
【0041】
実施例1.<セラノスティクス用のバブル製剤の作成>
DSPC、DSPG及びDSPE-PEG2000-OMeを22:68:10のモル比のアニオニック脂質溶液を、懸濁液を生成するように撹拌しながらパーフルオロプロパンガス(ガス流量は12ml/分)に接触させた。その後、ホモジナイザー(15000 rpm, 5分)を用いてガスを乳化することにより、バブル懸濁液を作製した。
【0042】
続いてアニオニック脂質溶液におけるDSPC、DSPG及びDSPE-PEG2000-OMeのモル比を下記のように変更した以外は、上記と同じようにバブル懸濁液を作製した。
【0043】
DSPC:DSPG:DSPE-PEG2000-OMe=30:60:10
DSPC:DSPG:DSPE-PEG2000-OMe=36:54:10
DSPC:DSPG:DSPE-PEG2000-OMe=45:45:10
DSPC:DSPG:DSPE-PEG2000-OMe=54:36:10
DSPC:DSPG:DSPE-PEG2000-OMe=60:30:10
また比較例としてアニオニック脂質溶液におけるDSPC、DSPG及びDSPE-PEG2000-OMeのモル比を下記のように変更した以外は、上記と同じようにバブル懸濁液を作製した。
【0044】
DSPC:DSPG:DSPE-PEG2000-OMe=0:90:10
DSPC:DSPG:DSPE-PEG2000-OMe=90:0:10
このようにして被膜成分割合を種々変更させて複数のバブル製剤を作製した。図2は、被膜成分割合を種々変更した場合におけるナノバブルの持続性を示す図である。バブルには血管内及び腫瘍内での滞留性及び安定性が必要であるが、図2に示されるように、比較例にかかるバブル製剤と比べて、本発明にかかるバブル製剤は時間が経過しても滞留性が極めて良好であった。
【0045】
実施例2.<担がんマウスでの持続的造影>
次に、担がんマウスでの診断用超音波で持続的なオシレーションの可能性を観察し、血流イメージングを撮影した。
【0046】
ナノバブルは、DSPC、DSPG及びDSPE-PEG2000-OMeを22:68:10のモル比にて形成されたアニオニック脂質溶液を、懸濁液を生成するように撹拌しながらパーフルオロプロパンガスに接触させ、その後、ホモジナイザー(15000 rpm, 5分)を用いて有機相を水性相に乳化することにより作製した。次に、パーフルオロブタンガスを使用する以外は上記と同様にしてバブル製剤を作製した。
【0047】
ナノバブルが腫瘍部位に到達されているかを、診断用超音波装置を用いて超音波イメージングを行った。診断用超音波装置はGE Healthcare社のLOGIQ E9を使用した。
【0048】
図3は、ソナゾイド(比較例)、パーフルオロプロパンガス封入バブル製剤、及び、パーフルオロブタンガス封入バブル製剤において、時間経過の場合の超音波イメージング画像を示す図である。図3に示されるように、本実施例においては比較例と比べて腫瘍部位から強いエコーシグナルが観察され、本バブル製剤の安定な到達性が確認できた。また本実施例においては時間経過しても強いエコーシグナルが観察できた。
【0049】
図4は、ソナゾイド(比較例)、及び、パーフルオロプロパンガス封入バブル製剤において、腫瘍部位を拡大した場合における超音波イメージング画像を示す図である。図4に示されるように、本実施例においては比較例と比べて腫瘍部位から強いエコーシグナルが観察された。
【0050】
実施例3.<超音波遺伝子導入>
次にパーフルオロプロパンガス封入バブル製剤(TB)と低強度超音波照射併用による遺伝子導入システムの機能評価を行った。In vivo 実験では、本実施例にかかるパーフルオロプロパンガス封入バブル製剤(50nmol)と、レポーター遺伝子(Luciferase)をコードしたpDNAとともにマウスに尾静脈投与し(100μg)、ただちに経皮的に肝臓の部分をソニトロン プローブ(12nm)を使用して治療用超音波照射(US)(1MHz, 50% duty, 1W/cm2, 60sec.)した。図5はルシフェラーゼ活性の上昇を示す図である。in vivo発光イメージングでは、イソフルラン麻酔下のマウスに対してルシフェリン基質(15 mg/mL, 200μL)を投与後、IVISイメージングシステムを用いて、発光を検出、定量化した。図6はin vivo発光イメージングの結果を示す図である。図5及び図6に示されるように、治療用超音波を照射した肝臓からのみルシフェラーゼの発現が観察された。
【0051】
In vitro実験では、Colon26培養細胞液中に本実施例にかかるパーフルオロプロパンガス封入バブル製剤(5nmol/sample)と、レポーター遺伝子(Luciferase)をコードしたpDNA(5μg/sample)をともに添加し、治療用超音波照射(2MHz, 50% duty, 2W/cm2, 60sec.)した。図7が示すように、パーフルオロプロパンガス封入バブル製剤と治療用超音波照射でのみ、顕著な遺伝子発現が観察された。
【0052】
これにより、本実施例にかかるパーフルオロプロパンガス封入バブル製剤(TB)と低強度治療用超音波照射によるデリバリーシステムは、癌の遺伝子・核酸治療においての有用性を期待できるものであることが判明した。
【0053】
実施例4.<シェイキングによるバブル製剤の作成>
実施例1ではホモジナイザーを用いてガスを乳化することにより、バブル懸濁液を作製した。実施例4ではシェイキングによるバブル懸濁液の作製を示す。
【0054】
DSPC:DSPG:DSPE-PEG2000-OMe=30:60:10(モル比)のリポソーム(脂質濃度:0.5mM)1mLをバイアルに入れ、バイアル内のヘッドスペースをパーフルオロプロパンガスで置換し、氷冷した。その後、バイアルシェーカーで45秒間振とうし、再度氷冷した。大きな気泡を除去する目的で、バイアルを逆さに15分間ほど静置し、図8に示されるように、気泡懸濁液の下部を回収した。
【0055】
実施例5.<ホモジナイザーにより調製したペプチド修飾バブルの標的細胞への結合性評価>
ペプチド修飾脂質としてcyclic RGD(cRGD)で修飾したDSPE-PEG3400を用意した。なお、cRGDはがん組織の新生血管内皮細胞の表面上に過剰発現しているαVβ3インテグリンに特異的に結合するペプチド配列であり、バブル表面に修飾することで、標的細胞に選択的に結合するターゲティング型バブルを調製できる。そしてDSPC:DSPG:DSPE-PEG2000-OMe: cRGD修飾DSPE-PEG3400=30:60:5:5(モル比)のアニオニック脂質溶液を、懸濁液を生成するように撹拌しながらパーフルオロプロパンガス(ガス流量は12ml/分)に接触させた。その後、ホモジナイザー(15000 rpm, 5分)を用いてガスを乳化することによりバブル懸濁液を作製してcRGD修飾バブルを用意した。cRGD修飾は5モル%修飾とした。
【0056】
標的細胞としてヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を用いた。このHUVECはcRGDが結合する細胞である。
【0057】
一方、HUVECに結合しないコントロールペプチドとしてcyclic RAD(cRAD)を用いた。cRAD修飾バブルは、cRGD修飾バブルと同様にして作成し、5モル%修飾とした。
【0058】
HUVEC細胞に、cRGD又はcRAD修飾バブル(DiIラベル)を添加し、37℃で10分間インキュベートした。その後、細胞を洗浄し、フローサイトメーターにてバブルの細胞への結合を評価した。図9に示されるように、ホモジナイザーにより調製したcRGD 5モル%修飾バブルは、cRAD 5モル%修飾バブルと比較してHUVEC細胞への優れた結合性を示した。
【0059】
実施例6.<シェイキングにより調製したペプチド修飾バブルの標的細胞への結合性評価>
実施例5ではホモジナイザーを用いて作製したペプチド修飾バブルのHUVEC細胞への結合性を示した。実施例6ではシェイキングで作製したペプチド修飾バブルのHUVEC細胞への結合性を示す。
【0060】
実施例5と同様に、ペプチド修飾脂質としてcyclic RGD(cRGD)で修飾したDSPE-PEG3400を用意した。そしてDSPC:DSPG:DSPE-PEG2000-OMe: cRGD修飾DSPE-PEG3400=30:60:5:5又は30:60:0:10(モル比)のリポソーム(脂質濃度:0.5mM)1mLをバイアルに入れ、バイアル内のヘッドスペースをパーフルオロプロパンガスで置換し、氷冷した。その後、バイアルシェーカーで45秒間振とうし、再度氷冷した。大きな気泡を除去する目的で、バイアルを逆さに15分間ほど静置し、気泡懸濁液の下部を回収してcRGD修飾バブルを用意した。cRGD修飾は5モル%修飾の修飾バブルと、10モル%修飾の修飾バブルとを用意した。
【0061】
実施例5と同様に、コントロールペプチドとしてcyclic RAD(cRAD)を用いた。cRAD修飾バブルは、cRGD修飾バブルと同様にシェイキングにより作成し、5モル%修飾の修飾バブルと、10モル%修飾の修飾バブルとを用意した。
【0062】
次に、HUVEC細胞に、cRGD又はcRAD修飾バブル(DiOラベル)を添加し、37℃で30分間インキュベートした。その後、細胞を洗浄し、フローサイトメーターにてバブルの細胞への結合を評価した。図10に示されるように、シェイキングにより調製したcRGD 5モル%修飾バブルは、cRAD 5モル%修飾バブルと比較してHUVEC細胞への優れた結合性を示した。また、図11に示されるように、シェイキングにより調製したcRGD 10モル%修飾バブルも、cRAD 10モル%修飾バブルと比較してHUVEC細胞への優れた結合性を示した。
【0063】
実施例7.<抗腫瘍効果の評価>
DSPC:DSPG:DSPE-PEG2000-OMe=30:60:10(モル比)のアニオニック脂質溶液を、懸濁液を生成するように撹拌しながらパーフルオロプロパンガス(ガス流量は12ml/分)に接触させた。その後、ホモジナイザー(15000 rpm, 5分)を用いてガスを乳化することによりバブル懸濁液を作製した。そしてこのバブル懸濁液を凍結乾燥させて凍結乾燥粉末体を得た。この凍結乾燥粉末体に2mLの超純水(2mL MilliQ)を添加して懸濁させた。
【0064】
次に、マウスメラノーマ細胞(B16BL6細胞)1×106 cells/50μL/匹をC57BL/6jマウス後背部皮下に移植し、担がん7日後、5μmフィルターを通したバブル25μLを腫瘍内投与し、その直後に腫瘍に向けて経皮的に超音波を照射した。
【0065】
超音波照射条件は、下記であった。
装置:sonitron2000(ネッパジーン株式会社)
Freqency:1MHz
Intensity:4W/cm2
Duty:50%
Time:120sec
Burst Rate:2Hz
腫瘍体積は、(腫瘍の長径×腫瘍の短径×腫瘍の短径)×0.5(mm3)なる計算式により算出し、腫瘍径を指標に抗腫瘍効果を評価した。図12に示されるように本実施例にかかるバブルの優れた抗腫瘍効果が判明した。
【産業上の利用可能性】
【0066】
血栓治療又は癌治療に利用できる。
図1
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図10
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図12