(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6804114
(24)【登録日】2020年12月4日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】変形爪矯正具
(51)【国際特許分類】
A61F 5/11 20060101AFI20201214BHJP
【FI】
A61F5/11
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-100921(P2019-100921)
(22)【出願日】2019年5月30日
(65)【公開番号】特開2020-192221(P2020-192221A)
(43)【公開日】2020年12月3日
【審査請求日】2019年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】519195420
【氏名又は名称】加藤 康成
(74)【代理人】
【識別番号】100176256
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 隆敬
(72)【発明者】
【氏名】加藤 康成
【審査官】
望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−113322(JP,A)
【文献】
実開昭50−015058(JP,U)
【文献】
特開2003−010218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略平板形状を有する本体部と、
爪の幅方向における一方の爪端部に係止される第1端部と、
前記爪の幅方向における中央部よりも前記第1端部側に配置される第2端部と、
を備え、
前記第2端部には、前記爪から離れるように隆起して前記爪に当接しないトンネル部が形成されており、
前記トンネル部の前記第1端部側の端部には、貫通孔が形成されており、
前記トンネル部内及び前記貫通孔には、前記爪の幅方向における他方側に配置された他
方側係止部に係止される線状係止部材が挿通可能であることを特徴とする変形爪矯正具。
【請求項2】
前記本体部は、前記爪の幅方向と略直交する方向において、前記第2端部の方が前記第1端部よりも長いことを特徴とする請求項1に記載の変形爪矯正具。
【請求項3】
前記線状係止部材とトンネル部は、挿通された前記線状係止部材が前記トンネル部の内
部でゆとりを有するようなサイズ関係を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の変形爪矯正具。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の前記変形爪矯正具は、前記第1端部が上底、前
記第2端部が下底とする略台形形状を有しており、
隣接する前記変形爪矯正具の上底と下底が連続するように複数の前記変形爪矯正具が配
列されており、各変形爪矯正具の脚に相当する位置に切り離し用の切り込みが入れられた
変形爪矯正具組。
【請求項5】
請求項4に記載の変形爪矯正具組の製造方法であって、
前記変形爪矯正具の脚と同一の高さを有する平板を準備する工程と、
隣接する前記変形爪矯正具の上底と下底が連続するように、前記平板の各変形爪矯正具
の脚に相当する位置に切り離し用の切り込みを入れる工程と、
前記平板に前記トンネル部及び貫通孔を形成する工程と、
を備えたことを特徴とする変形爪矯正具組の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻爪等の変形爪を矯正するための変形爪矯正具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、爪に装着されたプレートに設けられた引っ掛け金具と、フックと、を糸で緊縛する陥入爪治療用の溝付プレート装具が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、爪の幅方向における両端部に線材をそれぞれ係止し、両線材の近接する端部に設けられたフック同士を矯正作動部で接続する矯正具が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−104231号公報
【特許文献2】特開2001−276104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、変形爪の矯正に堪え得るほどの強度で引っ掛け金具を形成することが困難であり、また、引っ掛け金具が靴下や靴に引っかかってしまうという問題がある。
【0006】
また、特許文献2に開示された技術では、全体が線材で形成されているので、矯正作動部を作動させると線材が爪に押しつけられる形となり、ユーザに強い痛みを伴わせてしまう。また、皮膚や衣類を傷つけることなく、かつ、変形爪の矯正に堪え得るほどの強度のフックを線材で形成することも困難である。
【0007】
そこで、本発明は、ユーザに与える痛みを抑制し、かつ、矯正に堪え得る高い強度を有する変形爪矯正具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、略平板形状を有する本体部と、爪の幅方向における一方の爪端部に係止される第1端部と、前記爪の幅方向における中央部よりも前記第1端部側に配置される第2端部と、を備え、前記第2端部には、前記爪から離れるように隆起したトンネル部が形成されており、前記トンネル部の前記第1端部側の端部には、貫通孔が形成されており、前記トンネル部内及び前記貫通孔には、前記爪の幅方向における他方側に配置された他方側係止部に係止される線状係止部材が挿通可能であることを特徴とする変形爪矯正具を提供している。
【0009】
このような構成によれば、本体部が略平板形状を有していること、及び、トンネル部を有していることにより、爪に加わる圧力が分散されるので、ユーザに与える痛みが抑制される。また、トンネル部はフック形状を有していないため、靴下や靴に引っかかってしまうという問題も生じない。更に、一対の変形爪矯正具を線状係止部材で係止する構造なので、爪の形状、硬さに関わらず装着可能であり、また、接着剤等を使用せずに済むので装着が容易となる。
【0010】
また、前記トンネル部は、前記本体部と一体的に形成されていることが好ましい。
【0011】
このような構成によれば、強い矯正力が働いても、一対の変形爪矯正具間の係止が外れたり、変形爪矯正具が破損してしまうことが防止される。
【0012】
また、前記線状係止部材とトンネル部は、挿通された前記線状係止部材が前記トンネル部の内部でゆとりを有するようなサイズ関係を有していることが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、線状係止部材が爪にほぼ接触しないので、線状係止部材による痛みを完全に防止することができると共に、線状係止部材が爪側に飛び出さないので、変形爪矯正具の面と爪との密着度を高めることが可能となる。
【0014】
また、本発明別の観点によれば、前記変形爪矯正具は、前記第1端部が上底、前記第2端部が下底とする略台形形状を有しており、隣接する前記変形爪矯正具の上底と下底が連続するように複数の前記変形爪矯正具が配列されており、各変形爪矯正具の脚に相当する位置に切り離し用の切り込みが入れられた変形爪矯正具組を提供している。
【0015】
このような構成によれば、変形爪矯正具を切り離して使用可能な変形爪矯正具組を提供することが可能となる。
【0016】
また、本発明の別の観点によれば、前記変形爪矯正具の脚と同一の高さを有する平板を準備する工程と、隣接する前記変形爪矯正具の上底と下底が連続するように、前記平板の各変形爪矯正具の脚に相当する位置に切り離し用の切り込みを入れる工程と、前記平板に前記トンネル部及び貫通孔を形成する工程と、を備えたことを特徴とする変形爪矯正具組の製造方法を提供している。
【0017】
このような構成によれば、変形爪矯正具を切り離して使用可能な変形爪矯正具組を容易に製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の変形爪矯正具によれば、ユーザに与える痛みを抑制し、かつ、矯正に堪え得る高い強度を有することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態による変形爪矯正具の斜視図
【
図2】本発明の実施の形態による変形爪矯正具の断面図
【
図3】本発明の実施の形態による変形爪矯正具の側面図
【
図4】本発明の変形例による変形爪矯正具組の説明図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態による変形爪矯正具1について、
図1−
図3を参照して説明する。
【0021】
本実施の形態による変形爪矯正具1は、
図1及び
図2に示すように、例えば、足の親指の爪Aの幅方向における略中心に関して互いに略鏡像となるように一対の変形爪矯正具1を配置した上で、一対の変形爪矯正具1を線状係止部材2で係止して使用するものである。以下では、一方の変形爪矯正具1に着目して説明を行う。
【0022】
変形爪矯正具1は、金属により形成され、爪Aの幅方向に延びる略平板形状を有する本体部3を備えている。本体部3の幅方向の長さは、爪Aの幅方向の長さの半分未満であることが好ましい。
【0023】
本実施の形態では、本体部3は、脚の長い略台形形状を有しており、長さの短い上底側が、爪Aの幅方向における一方の爪端部Bに係止される第1端部4に相当し、長さの長い下底側が、爪Aの幅方向における中央部Cよりも第1端部4側に配置される第2端部5に相当する。
【0024】
第1端部4は、使用前には、
図3(a)に示すように、フラット形状を有しているが、使用の際には、ユーザにより、ペンチ等を用いて、
図3(b)に示すようなフック形状に変形された上で、爪Aの一方の爪端部B(の爪切りで切られる白い部分)に係止される。このように、第1端部4は、ユーザの爪のサイズ、形状等に応じて自由に調整可能であるように、フラット形状であることが好ましい。
【0025】
第2端部5には、爪Aから離れるように隆起したトンネル部6が本体部3と一体的に形成されており、トンネル部6の第1端部4側の端部には、
図1に示すように、貫通孔7が形成されている。
【0026】
このような構成の下、
図1及び
図2に示すように、金属等により形成された線状係止部材2を一対の変形爪矯正具1のトンネル部6内及び貫通孔7に挿通した上で、両端部側をねじる、結ぶ等の行為を行う。これにより、爪端部Bに対して、変形爪矯正具1の第2端部5付近を支点とした持ち上げ力(矯正力)が働くことになり、巻爪等の変形爪が矯正されることとなる。なお、他方の変形爪矯正具1のトンネル部6及び貫通孔7が、本発明の“他方側係止部”に相当する。
【0027】
この際、変形爪矯正具1は、略平板形状を有しているため、支点となる第2端部5付近から爪Aに加わる圧力は分散され、ユーザに与える痛みも抑制されることとなる。特に、本実施の形態では、第2端部5の方が第1端部4よりも長い台形形状を有していることで、圧力がより分散される。また、本来、最も圧力が加わるトンネル部6に相当する部分は爪Aに当接しないので、トンネル部6の両脇に圧力が分散されることとなる。また、爪端部Bも第1端部4により面で持ち上げられることとなるので、これによっても、ユーザに与える痛みが抑制されることとなる。特に、薄い爪には効果的である。
【0028】
また、変形爪矯正具1が略平板形状を有していても、線状係止部材2が爪Aに強く接触してしまえば、ユーザに強い痛みを与えてしまうこととなる。しかしながら、本実施の形態による変形爪矯正具1では、線状係止部材2は、トンネル部6内を挿通されており、線状係止部材2をねじる等の際には、ユーザは、上方から線状係止部材2を持ってねじる等を行うこととなるため、線状係止部材2は爪Aから遠ざかるように僅かに移動することになる。これによっても、ユーザに与える痛みが抑制されることとなる。
【0029】
なお、線状係止部材2とトンネル部6は、挿通された線状係止部材2がトンネル部6の内部で多少のゆとりを有するようなサイズ関係であることが好ましく、この場合には、線状係止部材2が爪Aにほぼ接触しないので、線状係止部材2による痛みを完全に防止することができると共に、線状係止部材2が爪A側に飛び出さないので、変形爪矯正具1の面と爪Aとの密着度を高めることが可能となる。
【0030】
以上説明したように、本実施の形態による変形爪矯正具1では、本体部3が略平板形状を有しており、第2端部5には、線状係止部材2が挿通されるトンネル部6が形成されている。
【0031】
このような構成によれば、本体部3が略平板形状を有していること、及び、トンネル部6を有していることにより、爪Aに加わる圧力が分散されるので、ユーザに与える痛みが抑制される。また、トンネル部6はフック形状を有していないため、靴下や靴に引っかかってしまうという問題も生じない。更に、一対の変形爪矯正具1を線状係止部材2で係止する構造なので、爪の形状、硬さに関わらず装着可能であり、また、接着剤等を使用せずに済むので装着が容易となる。
【0032】
また、本実施の形態による変形爪矯正具1では、トンネル部6は、本体部3と一体的に形成されている。
【0033】
このような構成によれば、強い矯正力が働いても、一対の変形爪矯正具1間の係止が外れたり、変形爪矯正具1が破損してしまうことが防止される。
【0034】
また、本実施の形態による変形爪矯正具1では、線状係止部材2とトンネル部6は、挿通された線状係止部材2がトンネル部6の内部でゆとりを有するようなサイズ関係を有している。
【0035】
このような構成によれば、線状係止部材2が爪Aにほぼ接触しないので、線状係止部材2による痛みを完全に防止することができると共に、線状係止部材2が爪A側に飛び出さないので、変形爪矯正具1の面と爪Aとの密着度を高めることが可能となる。
【0036】
尚、本発明の変形爪矯正具は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
【0037】
例えば、上記実施の形態では、一対の変形爪矯正具1を例に説明したが、変形爪矯正具1単体での使用、製造、販売を除外するものではなく、例えば、他方の変形爪矯正具1の代わりに設けた他方側係止部に対して、一方の変形爪矯正具1を係止する構成であってもよい。
【0038】
また、上記実施の形態では、変形爪矯正具1の第1端部4は、使用前には、サイズ調整を可能とするためにフラット形状を有していたが、最初からフック形状を有していてもよい。なお、最初からフック形状を有している場合には、金属以外の樹脂等の素材で変形爪矯正具1を形成してもよい。
【0039】
また、本発明の変形爪矯正具1は、複数の変形爪矯正具1が配列された変形爪矯正具組10から切り離して使用する構成も考えられる。
【0040】
変形爪矯正具1が長方形状の場合には、
図4(a)に示すように、変形爪矯正具1の長辺と同一の長さを有する略長方形状の金属や樹脂の平板を準備した上で、変形爪矯正具1の長辺に相当する位置に切り離し用の切り込みを入れると共に、プレス機械や金型等を用いてトンネル部6及び貫通孔7を形成することで、変形爪矯正具組10を製造する方法が考えられる。
【0041】
一方、上記実施の形態のように、変形爪矯正具1が台形形状の場合には、
図4(b)及び(c)に示すように、隣接する変形爪矯正具1の上底と下底が連続するように(隣接する変形爪矯正具1の上下が逆になるように)、変形爪矯正具1の脚に相当する位置に切り離し用の切り込みを入れることとなる。
【0042】
詳細には、(1)変形爪矯正具1の脚と同一の高さを有する平板(本実施の形態では、略長方形状)を準備し、(2)隣接する変形爪矯正具1の上底と下底が連続するように、平板の変形爪矯正具1の脚に相当する位置に切り離し用の切り込みを入れ、(3)プレス機械や金型等を用いて平板にトンネル部6及び貫通孔7を形成することで、変形爪矯正具組10を製造することができる。工程(2)と工程(3)に関しては、順序が逆であってもよい。なお、平板が樹脂の場合には、第1端部4側をフック形状の成形する工程も含んでいることが好ましい。また、隣接する変形爪矯正具1同士は直接的に連続せずに、間接的に連続するように、隣接する変形爪矯正具1間にスクラップを設けてもよい。この場合、スクラップ部分は廃棄することとなるが、変形爪矯正具1を切り離した際のバリを少なくすることが可能となる。また、変形爪矯正具1以外の部分に搬送用のパイロットホールを形成してもよい。
【0043】
このような構成によれば、変形爪矯正具1を切り離して使用可能な変形爪矯正具組10を容易に製造することが可能となる。
【符号の説明】
【0044】
1 変形爪矯正具
2 線状係止部材
3 本体部
4 第1端部
5 第2端部
6 トンネル部
7 貫通孔
10 変形爪矯正具組
A 爪
B 爪端部
C 中央部