特許第6804150号(P6804150)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6804150-パワープラント 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6804150
(24)【登録日】2020年12月4日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】パワープラント
(51)【国際特許分類】
   B60K 17/08 20060101AFI20201214BHJP
   F16H 9/12 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   B60K17/08 M
   F16H9/12 B
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-252466(P2016-252466)
(22)【出願日】2016年12月27日
(65)【公開番号】特開2018-103820(P2018-103820A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129643
【弁理士】
【氏名又は名称】皆川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】田中 正広
(72)【発明者】
【氏名】米本 真也
(72)【発明者】
【氏名】穴井 稔
【審査官】 小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−280868(JP,A)
【文献】 特開平02−286432(JP,A)
【文献】 特開2006−123624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 17/08
F16H 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦置きで搭載される内燃機関と、
前記内燃機関からの動力が入力されるプライマリ軸、前記プライマリ軸と平行に設けられたセカンダリ軸、および前記プライマリ軸と前記セカンダリ軸との間に巻き掛けられたベルトを有する無段変速機と、
前記プライマリ軸に対して前記内燃機関と反対側に設けられたドライブピニオン軸と、
前記セカンダリ軸に対して前記内燃機関と反対側に設けられ、前記セカンダリ軸と同軸上に配置されて、前記セカンダリ軸に一体回転可能に連結された中間軸と、
前記中間軸から前記ドライブピニオン軸に動力を伝達する伝達機構と、
前記ドライブピニオン軸が結合されて、前記ドライブピニオン軸から伝達される動力を左右の駆動輪に分配する差動装置とを含
前記ドライブピニオン軸は、前記プライマリ軸と同軸上に配置されている、パワープラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦置きの内燃機関(エンジン)を含むパワープラントに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車におけるエンジンの搭載方式には、クランクシャフトが車体の前後方向(車両の進行方向)に対して縦向きになる縦置きと横向きになる横置きとがある。普通車、とくに6気筒以上の多気筒エンジンが搭載される普通車では、縦置きが採用され、3気筒や4気筒の少気筒エンジンが搭載される小型車(軽自動車を含む。)では、エンジンコンパートメントの前後方向のサイズの小型化による車室長の拡大のため、横置きが採用されるのが一般的である。しかしながら、小型車においても、たとえば、FF(Front-engine Front-wheel-drive:フロントエンジン・フロントドライブ)車と4WD(four-wheel drive:四輪駆動)車とが用意される車種では、変速機を含むユニットの共通化のため、エンジンの縦置き(縦置きエンジン)を採用することが考えられる。
【0003】
一方、自動車に搭載される変速機として、CVT(Continuously Variable Transmission:無段変速機)が広く知られている。縦置きエンジンおよびCVTを採用した駆動装置(パワープラント)が普通車用として開発されており(たとえば、特許文献1,2参照)、それを搭載した普通車が市販されているが、その普通車用のパワープラントを小型車に搭載するのはスペースの制限から困難である。そのため、縦置きエンジンおよびCVTを小型車に採用するには、それらを含むパワープラントを新たに設計しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−150539号公報
【特許文献2】特開平11−157351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エンジンを横置きで搭載した小型車では、CVTが多く採用されていることから、本願発明者らは、縦置きエンジンおよびCVTを含むパワープラントの設計に際し、そのエンジンの横置きを基準に設計されたCVTを流用できれば、開発コストおよび製造コストを低減できるとを考え、本発明に至った。
【0006】
本発明の目的は、内燃機関の横置きを基準に設計された無段変速機を流用でき、かつ、小型車への搭載を可能とすべく小型化が図られた、縦置きの内燃機関および無段変速機を含むパワープラントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明に係るパワープラントは、縦置きで搭載される内燃機関と、内燃機関からの動力が入力されるプライマリ軸、プライマリ軸と平行に設けられたセカンダリ軸、およびプライマリ軸とセカンダリ軸との間に巻き掛けられたベルトを有する無段変速機と、プライマリ軸に対して内燃機関と反対側に設けられたドライブピニオン軸と、セカンダリ軸に対して内燃機関と反対側に設けられ、セカンダリ軸と同軸上に配置されて、セカンダリ軸に一体回転可能に連結された中間軸と、中間軸からドライブピニオン軸に動力を伝達する伝達機構と、ドライブピニオン軸が結合されて、ドライブピニオン軸から伝達される動力を左右の駆動輪に分配する差動装置とを含む。
【0008】
この構成によれば、無段変速機のプライマリ軸に対して内燃機関と反対側に、ドライブピニオン軸が配置されている。また、無段変速機のセカンダリ軸に対して内燃機関と反対側には、中間軸が設けられている。中間軸は、セカンダリ軸と同軸上に配置されて、セカンダリ軸に一体回転可能に連結されている。プライマリ軸からベルトを介してセカンダリ軸に動力が伝達されて、その動力によりセカンダリ軸が回転すると、セカンダリ軸と一体に中間軸が回転する。中間軸の回転(動力)は、伝達機構を介してドライブピニオン軸に伝達される。ドライブピニオン軸は、差動装置に結合されており、中間軸からドライブピニオン軸に伝達される動力は、差動装置により左右の駆動輪に分配される。
【0009】
内燃機関の横置きを基準に設計された無段変速機では、横置きされる内燃機関とともに車両に搭載されたときに、デファレンシャルギヤを車両の左右中央に寄せて、左右のドライブシャフトを等長に近づけるため、セカンダリ軸におけるベルトが巻き掛けられた部分、つまりセカンダリプーリを支持する部分に対して内燃機関側に差動装置が配置される。そのため、かかる無段変速機では、セカンダリ軸は、ベルトが巻き掛けられた部分から内燃機関側に延長されており、内燃機関と反対側には延長されていない。
【0010】
セカンダリ軸に中間軸が連結された構成では、セカンダリ軸の回転をドライブピニオン軸に伝達するためにセカンダリ軸を内燃機関と反対側に延長する必要がないので、内燃機関の横置きを基準に設計された無段変速機を流用可能である。この流用により、パワープラントの開発コストおよび製造コストの低減を図ることができる。しかも、中間軸がセカンダリ軸と同軸に配置されることにより、パワープラントの胴回り(回転径方向)のサイズを抑制して、パワープラントの小型化を図ることができる。
【0011】
また、セカンダリ軸が長く延びた構成では、セカンダリ軸の製造時の熱処理でセカンダリ軸が撓み、セカンダリ軸に支持されるセカンダリプーリの固定シーブに対する可動シーブの位置精度が悪化するおそれがある。これに対し、セカンダリ軸に中間軸が連結された構成では、セカンダリ軸を短く構成できるので、熱処理によるセカンダリ軸の撓み変形を抑制でき、セカンダリプーリの固定シーブに対して可動シーブを高精度に位置させることができ、セカンダリプーリからベルトに付与される挟圧を良好に制御することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、内燃機関の横置きを基準に設計された無段変速機が流用可能であり、その流用により、パワープラントの開発コストおよび製造コストの低減を図ることができる。また、パワープラントの胴回り(回転径方向)のサイズを抑制でき、パワープラントの小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るパワープラントの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0015】
<パワープラントの構成>
図1は、本発明の一実施形態に係るパワープラント1の構成を示す断面図である。図1では、断面を表すハッチングの付与が省略されている。
【0016】
パワープラント1は、たとえば、FF車または4WD車に搭載される。パワープラント1には、エンジン(内燃機関)2、トルクコンバータ3、無段変速機4、中間軸5、ドライブピニオン軸6、デファレンシャルギヤ7およびギヤ伝達機構8が含まれる。
【0017】
エンジン2は、たとえば、3気筒4ストロークエンジンである。エンジン2は、車体の前後方向に対してクランクシャフトが縦向きになるように、車体の前部に縦置きで搭載(マウント)されている。
【0018】
トルクコンバータ3は、ポンプインペラ31、タービンランナ32およびロックアップ機構(ロックアップクラッチ)33を備えている。ポンプインペラ31には、E/G出力軸21が連結されており、ポンプインペラ31は、E/G出力軸21と同一の回転軸線を中心に一体的に回転可能に設けられている。タービンランナ32は、ポンプインペラ31と同一の回転軸線を中心に回転可能に設けられている。ロックアップ機構33は、ポンプインペラ31とタービンランナ32とを直結/分離するために設けられている。ロックアップ機構33が係合(ロックアップオン)されると、ポンプインペラ31とタービンランナ32とが直結され、ロックアップ機構33が解放(ロックアップオフ)されると、ポンプインペラ31とタービンランナ32とが分離される。
【0019】
無段変速機4は、横置きエンジン用に設計されたベルト式の無段変速機であり、入力軸(インプット軸)41、ベルト伝達機構42および前後進切替機構43を備えている。
【0020】
入力軸41は、トルクコンバータ3のタービンランナ32に連結され、タービンランナ32と同一の回転軸線を中心に一体的に回転可能に設けられている。
【0021】
ベルト伝達機構42には、プライマリ軸51およびセカンダリ軸52が含まれる。プライマリ軸51は、入力軸41と同軸上に配置されている。セカンダリ軸52は、プライマリ軸51に対して回転径方向に離間して平行に延びている。
【0022】
そして、ベルト伝達機構42は、プライマリ軸51に支持されたプライマリプーリ53とセカンダリ軸52に支持されたセカンダリプーリ54とに、無端状のベルト55が巻き掛けられた構成を有している。
【0023】
プライマリプーリ53は、プライマリ軸51に固定された固定シーブ61と、固定シーブ61にベルト55を挟んで対向配置され、プライマリ軸51にその軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持された可動シーブ62とを備えている。可動シーブ62に対して固定シーブ61と反対側には、プライマリ軸51に固定されたピストン63が設けられ、可動シーブ62とピストン63との間に、ピストン室(油室)64が形成されている。
【0024】
セカンダリプーリ54は、セカンダリ軸52に対して固定された固定シーブ65と、固定シーブ65にベルト55を挟んで対向配置され、セカンダリ軸52にその軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持された可動シーブ66とを備えている。可動シーブ66に対して固定シーブ65と反対側には、セカンダリ軸52に固定されたピストン67が設けられ、可動シーブ66とピストン67との間に、ピストン室68が形成されている。
【0025】
無段変速機4では、プライマリプーリ53のピストン室64およびセカンダリプーリ54のピストン室68にそれぞれ供給される油圧が制御されて、プライマリプーリ53およびセカンダリプーリ54の各溝幅が変更されることにより、変速比が連続的に無段階で変更される。
【0026】
前後進切替機構43は、入力軸41とベルト伝達機構42のプライマリ軸51との間に介装されている。前後進切替機構43は、遊星歯車機構71、前進クラッチC1および後進ブレーキB1を備えている。
【0027】
遊星歯車機構71には、キャリア72、サンギヤ73およびリングギヤ74が含まれる。
【0028】
キャリア72は、入力軸41に相対回転可能に外嵌されている。キャリア72は、複数のピニオンギヤ75を回転可能に支持している。複数のピニオンギヤ75は、円周上に配置されている。
【0029】
サンギヤ73は、入力軸41に相対回転不能に支持されて、複数のピニオンギヤ75により取り囲まれる空間に配置されている。サンギヤ73のギヤ歯は、各ピニオンギヤ75のギヤ歯と噛合している。
【0030】
リングギヤ74は、その回転軸線がプライマリ軸51の軸心と一致するように設けられている。リングギヤ74には、ベルト伝達機構42のプライマリ軸51が連結されている。リングギヤ74のギヤ歯は、複数のピニオンギヤ75を一括して取り囲むように形成され、各ピニオンギヤ75のギヤ歯と噛合している。
【0031】
前進クラッチC1は、油圧により、キャリア72とサンギヤ73とを直結(一体回転可能に結合)する係合状態(オン)と、その直結を解除する解放状態(オフ)とに切り替えられる。
【0032】
後進ブレーキB1は、キャリア72とトルクコンバータ3および無段変速機4を収容するユニットケース9との間に設けられ、油圧により、キャリア72を制動する係合状態(オン)と、キャリア72の回転を許容する解放状態(オフ)とに切り替えられる。
【0033】
車室内に設けられたシフトレバーがPポジションに位置する状態では、前進クラッチC1および後進ブレーキB1の両方が解放され、パーキングロックギヤ(図示せず)が固定されることにより、無段変速機4のシフトレンジの1つであるPレンジが構成される。また、シフトレバーがNポジションに位置する状態では、前進クラッチC1および後進ブレーキB1の両方が解放されて、パーキングロックギヤが固定されないことにより、無段変速機4のシフトレンジの1つであるNレンジが構成される。前進クラッチC1および後進ブレーキB1の両方が解放された状態では、入力軸41およびサンギヤ73が空転し、エンジン2の動力は駆動輪(図示せず)に伝達されない。
【0034】
シフトレバーがDポジションに位置する状態では、後進ブレーキB1が解放されて、前進クラッチC1が係合されることにより、無段変速機4のシフトレンジの1つであるDレンジが構成される。前進レンジでは、エンジン2の動力が入力軸41に入力されると、キャリア72およびサンギヤ73が入力軸41と一体に回転する。そのため、サンギヤ73の回転は、リングギヤ74に回転方向が逆転されずに伝達される。これにより、リングギヤ74が回転し、ベルト伝達機構42のプライマリ軸51およびプライマリプーリ53がリングギヤ74と一体に回転する。プライマリプーリ53の回転は、ベルト55を介して、セカンダリプーリ54に伝達され、セカンダリプーリ54およびセカンダリ軸52を回転させる。
【0035】
シフトレバーがRポジションに位置する状態では、後進ブレーキB1が係合されて、前進クラッチC1が解放されることにより、無段変速機4のシフトレンジの1つであるRレンジが構成される。Rレンジでは、エンジン2の動力が入力軸41に入力されると、キャリア72が静止した状態で、サンギヤ73が入力軸41と一体に回転する。そのため、サンギヤ73の回転は、リングギヤ74に逆転かつ減速されて伝達される。これにより、リングギヤ74が回転し、ベルト伝達機構42のプライマリ軸51およびプライマリプーリ53がリングギヤ74と一体に回転する。プライマリプーリ53の回転は、ベルト55を介して、セカンダリプーリ54に伝達され、セカンダリプーリ54およびセカンダリ軸52を回転させる。
【0036】
中間軸5は、セカンダリ軸52に対してエンジン2と反対側(図1における左側。以下、「左側」という。)に設けられ、セカンダリ軸52と同軸上に配置されている。中間軸5は、中空軸の形態を有し、中間軸5のエンジン2側(図1における右側。以下、「右側」という。)の端部には、セカンダリ軸52の左側の端部が挿入されている。具体的には、中間軸5は、略円筒状の本体部81と、本体部81の右側の端部から回転径方向の外側に張り出したフランジ部82とを一体に有している。セカンダリ軸52の左側の端部の外周面には、左側が右側よりも回転径方向の内側に一段下がる段差が形成されており、セカンダリ軸52は、その段差よりも左側の部分が本体部81内に挿入されている。
【0037】
フランジ部82の右側の面は、セカンダリ軸52の段差により生じる面83に当接している。また、本体部81には、ベアリング84の内輪(インナレース)が外嵌されており、フランジ部82の左側の面は、ベアリング84の内輪に当接している。これにより、中間軸5は、ベアリング84に対して回転軸線方向に位置決めされている。ベアリング84の外輪(アウタレース)は、ユニットケース9に保持されており、中間軸5の右側の端部は、ベアリング84を介してユニットケース9に回転可能に保持されている。
【0038】
フランジ部82の外周端部は、右側に屈曲しており、その右側に延びる部分の内周面には、ギヤ歯85が形成されている。一方、セカンダリプーリ54の固定シーブ65には、その左側の面から膨出する扁平な略円筒状のギヤ86が一体に形成されている。ギヤ86の中心線は、セカンダリ軸52の中心線と一致し、ギヤ86の外周面には、多数のギヤ歯87が形成されている。そして、そのギヤ歯87に中間軸5のギヤ歯85が噛合することにより、中間軸5は、セカンダリ軸52と一体回転可能に連結されている。
【0039】
ドライブピニオン軸6は、プライマリ軸51に対して左側に離間して、プライマリ軸51と同軸上またはプライマリ軸51に対して回転径方向にずらして配置されている。ドライブピニオン軸6は、2個のテーパローラベアリング91,92を介してユニットケース9に回転可能に保持されている。ドライブピニオン軸6の左側の端部には、かさ歯車からなるドライブピニオンギヤ93が設けられている。
【0040】
デファレンシャルギヤ7は、デフケース94を備えている。デフケース94は、ドライブピニオン軸6の回転軸線と直交する方向(車体の幅方向)に延びる回転軸線を中心に回転可能に設けられている。デフケース94には、かさ歯車からなるリングギヤ(図示せず)が相対回転不能に設けられており、リングギヤには、ドライブピニオンギヤ93が噛合している。
【0041】
ギヤ伝達機構8は、互いに噛合するドライブギヤ101およびドリブンギヤ102を含む。
【0042】
ドライブギヤ101は、中間軸5の本体部81の左側の端部にスプライン係合し、中間軸5と一体回転可能に設けられている。ドライブギヤ101のボス103には、ベアリング104の内輪が外嵌されている。ベアリング104の外輪は、ユニットケース9に保持されている。これにより、中間軸5の左側の端部は、ドライブギヤ101およびベアリング104を介してユニットケース9に回転可能に保持されている。
【0043】
ドリブンギヤ102は、無段変速機4のプライマリ軸51とドライブピニオン軸6との間に設けられて、プライマリ軸51およびドライブピニオン軸6と同軸上に配置されている。ドリブンギヤ102のボス105は、ドライブピニオン軸6の外径よりも大きい外径を有する略円柱状をなしている。ボス105は、ドリブンギヤ102のリム106から左右に延出している。ボス105の左部分(リム106から左側に延びる部分)には、その端面で開放される凹部107が形成されており、ドライブピニオン軸6の右側の端部は、凹部107内に入り込み、ボス105とスプライン係合している。
【0044】
ボス105の左部分には、ベアリング108の内輪が外嵌されている。また、ボス105の左部分の外周面には、左側が右側よりも回転径方向の内側に一段下がる段差が形成されており、その段差により生じる面109には、ベアリング108の内輪が当接している。ベアリング108の外輪は、ユニットケース9に保持されている。これにより、ボス105の左部分は、ベアリング108を介してユニットケース9に回転可能に保持されている。
【0045】
ボスの右部分(リム106から右側に延びる部分)には、ベアリング110の内輪が外嵌されている。プライマリ軸51とドリブンギヤ102との間には、ユニットケース9と一体に形成される壁部111が介在されている。ベアリング110の外輪は、壁部111に保持されている。これにより、ボス105の右部分は、ベアリング110を介して壁部111に回転可能に保持されている。
【0046】
また、壁部111には、プライマリ軸51の左側の端部がベアリング112を介して回転可能に保持されている。
【0047】
<作用効果>
以上の構成により、セカンダリ軸52が回転すると、セカンダリ軸52と一体に中間軸5が回転する。中間軸5の回転(動力)は、ドライブギヤ101およびドリブンギヤ102からなるギヤ伝達機構8を介してドライブピニオン軸6に伝達される。ドライブピニオン軸6に設けられたドライブピニオンギヤ93は、デファレンシャルギヤ7のリングギヤと噛合しており、中間軸5からドライブピニオン軸6に伝達される動力は、デファレンシャルギヤ7のリングギヤに伝達されて、デフケース94を回転させる。デフケース94の回転は、デファレンシャルギヤ7に備えられているデフピニオンシャフト、デフピニオンギヤおよびデフサイドギヤ(いずれも図示せず)を経由して、デフケース94から車体の左右に延びるドライブシャフトに伝達される。これにより、ドライブシャフトが回転し、パワープラント1が搭載される車両の駆動輪が回転することにより、車両が前進または後進する。
【0048】
横置きエンジン用に設計された無段変速機4では、横置きエンジンとともに車両に搭載されたときに、デファレンシャルギヤを車両の左右中央に寄せて、左右のドライブシャフトを等長に近づけるため、セカンダリ軸52は、セカンダリプーリ54を支持する部分からエンジン2側に延長されており、エンジン2と反対側にはさほど延長されていない。
【0049】
セカンダリ軸52に中間軸5が連結された構成では、セカンダリ軸52の回転をドライブピニオン軸6に伝達するためにセカンダリ軸52をエンジン2と反対側に延長する必要がないので、横置きエンジン用に設計された無段変速機4を流用可能である。この流用により、パワープラント1の開発コストおよび製造コストの低減を図ることができる。しかも、中間軸5がセカンダリ軸52と同軸に配置されることにより、パワープラント1の胴回り(回転径方向)のサイズを抑制して、パワープラント1の小型化を図ることができる。
【0050】
また、セカンダリ軸52が長く延びている場合、セカンダリ軸52の製造時の熱処理でセカンダリ軸52が撓み、セカンダリ軸52に支持されるセカンダリプーリ54の固定シーブ65に対する可動シーブ66の位置精度が悪化するおそれがある。これに対し、セカンダリ軸52に中間軸5が連結された構成では、セカンダリ軸52を短く構成できるので、熱処理によるセカンダリ軸52の撓み変形を抑制でき、セカンダリプーリ54の固定シーブ65に対して可動シーブ66を高精度に位置させることができ、セカンダリプーリ54からベルト55に付与される挟圧を良好に制御することができる。
【0051】
また、エンジン2のE/G出力軸21、無段変速機4の入力軸41およびプライマリ軸51ならびにドライブピニオン軸6が同軸上に配置されるので、それらを車体の幅方向の中央部に配置して、デファレンシャルギヤ7から左右に延びるドライブシャフトの長さを等しくすることができる。その結果、ドライバビリティを向上させることができる。
【0052】
<オイル供給構造>
プライマリ軸51には、回転軸線上を延びる軸心油路121および軸心油路121とプライマリ軸51の外周面との間を延びる連通油路122が形成されている。軸心油路121は、連通油路122を介して、プライマリプーリ53のピストン室64と連通している。軸心油路121は、プライマリ軸51の左側の端面で開放されている。
【0053】
壁部111には、プライマリ軸51に対して左側から対向する部分に、プライマリ軸51の回転軸線を中心とする略円筒状の突出部123が右側に突出して形成されている。突出部123の先端部(右側の端部)は、プライマリ軸51の軸心油路121内に入り込み、略円筒状のプラグ124を介してプライマリ軸51に接続されている。突出部123の内側は、シーブ油圧供給油路125であり、シーブ油圧供給油路125には、バルブボディ(図示せず)からオイル(作動油)が供給される。シーブ油圧供給油路125は、プラグ124を介して軸心油路121と連通しており、シーブ油圧供給油路125に供給されるオイルは、プラグ124を通して軸心油路121に流入し、軸心油路121から連通油路122を通してプライマリプーリ53のピストン室64に流入する。
【0054】
セカンダリ軸52には、回転軸線上を延びる軸心油路131および軸心油路131とセカンダリ軸52の外周面との間を延びる連通油路132が形成されている。軸心油路131は、連通油路132を介して、セカンダリプーリ54のピストン室68と連通している。軸心油路131は、セカンダリ軸52の左側の端面で開放されている。
【0055】
ユニットケース9には、中間軸5に対して左側から対向する部分に、中間軸5およびセカンダリ軸52の回転軸線を中心とする略円筒状の突出部133が右側に突出して形成されている。突出部133は、中間軸5の本体部81内を貫通し、その先端部(右側の端部)は、セカンダリ軸52の軸心油路131内に入り込み、略円筒状のプラグ134を介してセカンダリ軸52に接続されている。突出部133の内側は、シーブ油圧供給油路135であり、シーブ油圧供給油路135には、バルブボディからオイル(作動油)が供給される。シーブ油圧供給油路135は、プラグ134を介して軸心油路131と連通しており、シーブ油圧供給油路135に供給されるオイルは、プラグ134を通して軸心油路131に流入し、軸心油路131から連通油路132を通してセカンダリプーリ54のピストン室68に流入する。
【0056】
また、壁部111には、バルブボディからオイル(潤滑油)が供給される潤滑油路141と、潤滑油路141と連通する連通油路142とが形成されている。連通油路142は、潤滑油路141から左側に延び、壁部111の左側の面において、ベアリング110に対して右側から対向する部分で開放されている。これにより、潤滑油路141に供給されるオイルは、連通油路142を通してベアリング110に供給される。
【0057】
さらに、ドリブンギヤ102のボス105には、その右端面で開放される凹部143と、凹部143と連通する連通油路144とが形成されている。連通油路144は、凹部143からベアリング108に向けて延び、ボス105の左部分の外周面でベアリング108に向けて開放されている。これにより、潤滑油路141から連通油路142に供給されて。連通油路142から放出されるオイルの一部は、凹部143に溜まる。そして、ドリブンギヤ102の回転時の遠心力により、凹部143から連通油路144を通してベアリング108に供給される。
【0058】
<変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもでき、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1:パワープラント
2:エンジン
4:無段変速機
5:中間軸
6:ドライブピニオン軸
7:デファレンシャルギヤ
8:ギヤ伝達機構
51:プライマリ軸
52:セカンダリ軸
55:ベルト
図1