特許第6804174号(P6804174)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6804174
(24)【登録日】2020年12月4日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】タイヤ検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/02 20060101AFI20201214BHJP
【FI】
   G01M17/02
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-541608(P2019-541608)
(86)(22)【出願日】2017年9月15日
(86)【国際出願番号】JP2017033570
(87)【国際公開番号】WO2019053893
(87)【国際公開日】20190321
【審査請求日】2020年3月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208444
【氏名又は名称】大和製衡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090310
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 正俊
(72)【発明者】
【氏名】伊東 孝明
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 晋一
(72)【発明者】
【氏名】北本 雅人
【審査官】 川瀬 正巳
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/135100(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/054466(WO,A1)
【文献】 特開平6−23865(JP,A)
【文献】 特開平11−118655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤを回転させて検査するタイヤ検査装置であって、間隔を開けて位置する上リム及び下リムによって挟持された前記タイヤ内に空気を旋回させながら供給する空気旋回供給部と、前記上リムと前記下リムとの間に挿入されたシャフトとを、有し、
前記空気旋回供給部は、前記上リムまたは下リムに、前記シャフトの周りの仮想曲線に沿って形成され前記間隔側に開口した溝内に、前記仮想曲線の接線方向に概ね沿って前記空気を噴射する噴射部を有する
タイヤ検査装置。
【請求項2】
請求項1記載のタイヤ検査装置において、
前記下リムは、穴を有し、
前記上リムは、前記シャフトを有し、前記シャフトが前記穴に挿入され、前記穴と前記シャフトとの間に空隙があり、
前記穴は、前記下リムを貫通した貫通孔であり、
前記下リムは、支持回転装置に取り付けられ、
前記シャフトは、前記貫通孔を介して前記支持回転装置内に進入し、
前記下リムと前記上リムとの位置関係を固定するチャック機構が、前記シャフトと前記支持回転装置との間に設けられている
タイヤ検査装置。
【請求項3】
請求項2記載のタイヤ検査装置において、
前記下リムは、前記支持回転装置が有するハウジングに取り付けられ、
前記ハウジングは、前記貫通孔に連なる穴を有し、この穴に前記シャフトが挿入され、
前記チャック機構は、前記ハウジングと前記シャフトとの間に設けられている
タイヤ検査装置。
【請求項4】
請求項1記載のタイヤ検査装置において、前記噴射部は、前記噴射部が設けられた上リムまたは下リムに設けられた空気通路に接続されているパイプを有し、前記パイプは、その周壁に前記接線方向に概ね沿って開口を有するタイヤ検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ検査装置に関し、特に検査のためにタイヤに空気を供給する際にタイヤ内に存在することがある粉塵、例えばゴムくず対策に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤ検査装置としては、例えば特許文献1に開示されているようなものがある。特許文献1の技術によれば、タイヤを上リムと下リムとで挟持した後に、空気をタイヤ内に供給して、タイヤを膨張させた後に、検査を行う。タイヤへの空気の供給は、上リムと下リムとを貫通し、内部に空気が供給される連通管の上リムと下リムとの間に位置する部分に、連通管の半径方向に貫通した複数の噴射口を所定角度ごとに設け、これら噴射口からタイヤ内に空気を噴射させることによって、行っていた。なお、連通管は、上リムに挿通されたシャフト内に形成され、シャフトは、上リムに嵌合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−83549号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、下リムの下方には、上リムの上下移動をロックして下リムとの上下間隔を固定するチャック機構が設けられている。チャック機構による上リムと下リムとの固定状態の変化は、タイヤ検査装置が備えるロードセルによる計測精度に影響を及ぼす。
【0005】
そのため、例えば、シャフトとチャック機構との接触部で摩耗が発生しないように、シャフトには、硬度の高い材質を使用し、またシャフトには摩耗が発生しないような表面処理が行われている。さらには、シャフト接触部には摩耗や焼き付きが起こらないように潤滑剤が塗布される。
【0006】
しかし、タイヤに空気を供給する際に、タイヤ内のゴムくずが巻き上げられ、たとえば、チャック機構のシャフトとの接触部にゴムくずが侵入すると、上記接触部が摩耗したり、接触部にゴムくずを噛み込んだまま上リムを固定したりすることがある。その結果、上リムの固定状態が変化してしまい、上記計測精度に影響を及ぼすおそれがある。チャック機構にゴムくずが侵入する原因としては、例えば、下リムとシャフトとのスキマを通じてゴムくずがチャック機構に侵入することが考えられる。
なお、上記の特許文献1は、上リムに嵌合されたシャフトを下リム下方のチャック機構に挿入する例であるが、下リムに装着されたシャフトを上リム上方のチャック機構に挿入する例もあり、その場合にも同様である。
【0007】
本発明は、タイヤに空気を供給する際に、ゴムくずがチャック機構に侵入することを防止したタイヤ検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1態様のタイヤ検査装置は、上リム及び下リムで挟持したタイヤ内に空気を供給した状態で、前記タイヤを前記上リム及び下リムと共に回転させて、前記タイヤを検査するものである。タイヤ内に空気を供給するにあたっては、空気旋回供給部が、上リム及び下リムによって挟持されたタイヤ内で、空気を旋回させる。この空気の旋回流は、次第に空気の渦を形成する。
【0009】
このように構成したタイヤ検査装置では、タイヤ内に空気を供給する際に、タイヤ内に空気の渦が発生するので、当該空気の渦が壁となり、タイヤ内に滞留しているゴムくずが、空気の渦よりも上方に巻き上がることが防止され、当該滞留状態を維持するものと考えられる。その一方で、仮に、ゴムくずが空気の渦に巻き込まれたとした場合でも、当該ゴムくずは、空気の旋回流にのって回転するのみである。その結果、インフレートによってタイヤ内のゴムくずがチャック機構に侵入することを、適切に防止することができる。
【0010】
上記の態様のタイヤ検査装置において、前記空気旋回供給部は、空気を前記タイヤ内に仮想的に描かれた仮想曲線の接線方向に概ね沿って噴射する噴射部を有している。
【0011】
このように構成されたタイヤ検査装置では、タイヤ内の仮想曲線の接線方向に空気が噴射されることによってタイヤ内で空気の渦が発生する。
【0012】
更に、複数の前記噴射部を前記仮想曲線に沿って間隔をあけて配置することができる。このように構成すると、より確実に空気の渦を発生させることができる。
【0013】
前記噴射部は、前記上リムに設けることもできるし、下リムに設けることもできるし、上リムと下リムとの間に設けることもできる。
【0014】
空気旋回供給部は、具体的には、例えば、前記上リム及び前記下リムの少なくとも一方を貫通して形成され、空気通路を有し、前記仮想曲線は、概ね前記空気通路の周囲に仮想的に描かれている構成とすることができる。
【0015】
あるいは、空気旋回供給部は、前記上リムと前記下リムとの間には、前記空気通路を兼ねるシャフトが挿入されており、前記上リムと前記下リムとの間で前記シャフトを貫通して形成された分岐空気通路が設けられており、前記仮想曲線は、概ね前記分岐空気通路の周囲に仮想的に描かれている構成とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態のタイヤ検査装置の部分省略縦断正面図である。
図2図1のタイヤ検査装置の部分省略平面図である。
図3図1のタイヤ検査装置の部分拡大縦断正面図、噴射部の平面図である。
図4】第2の実施形態のタイヤ検査装置の部分省略縦断正面図である。
図5】第3の実施形態のタイヤ検査装置の部分省略縦断正面図である。
図6】第4の実施形態に使用する噴射部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の第1の実施形態のタイヤ検査装置1を図1乃至図3に示す。このタイヤ検査装置1では、図1に示す上リム2と下リム4とがタイヤ6を挟持した状態で、タイヤ6内に空気が供給されて、タイヤ6を膨張させる。この膨張状態で、タイヤ6を所定速度で回転させて、タイヤ6の動的釣り合いを検査する。
【0018】
下リム4は支持回転装置5に取り付けられ、上リム2は破線で示す昇降装置に取り付けられ、下リム4にタイヤ6が取り付けられた状態で、上リム2が昇降装置によって降下させられて、タイヤ6を挟持する。
【0019】
上リム2の中央には貫通孔8が形成され、この貫通孔8には上リムシャフト10が挿通されており、その頭部にあるフランジ12が上リム2の上部の平坦な凹面(凹所の底面)14に接触し、ボルト(図示せず)によって凹面14に結合されている。上リムシャフト10の内部には、その長さ方向に沿って空気供給通路16が形成されている。
【0020】
上リムシャフト10は、下リム4の中央に形成されている貫通孔18を通過して、下リム4の下部に取り付けられている支持回転装置5内に進入している。昇降装置によって上リム2が降下したとき、支持回転装置5の内部にある空気供給源(図示せず)に上リムシャフト10が結合され、また、上リム2、下リム4、タイヤ6が一体化すると共に、下リム4に支持回転装置5によって与えられた回転がタイヤ6と上リムシャフト10と上リム2とに伝達され、上リム2、下リム4、タイヤ6が一体的に回転するように構成されている。上リム2と下リム4との上下の位置関係を固定するためのチャック機構が、このタイヤ検査装置1に設けられている。
【0021】
即ち、チャック機構の一部として、上リムシャフト10の下部外周面には、その長さ方向に沿って間隔をおいて複数の溝500が形成され、チャック機構の他の部分として、これら溝500の周囲の所定位置に90度の間隔をおいて4つの爪ブロック502が位置する。
【0022】
各爪ブロック502は、支持回転装置5のハウジング504に取り付けられており、ハウジング504は、下リム4に取り付けられている。爪ブロック502の上リムシャフト10側の端には、溝500に進入可能な爪506が形成されている。各爪ブロック502は、上リムシャフト10に進退可能にハウジング504に取り付けられている。各爪ブロック502の上リムシャフト10と反対側の端部は、ハウジング504から外部に突出している。
【0023】
その突出部分にガイドピン508が取り付けられ、これらガイドピン508は、ハウジング504の外部に配置されたガイドブロック510のガイド溝512に挿通されている。ガイド溝512は、上部から下方に向かう途中までは直線状に伸び、途中から外方に向かって斜め下方に傾斜して伸び、その後直線に下部まで伸びている。図示していないガイドブロック510の駆動機構によってガイドブロック510が上下動することによってガイドピン508がガイド溝512に案内されることによって爪ブロック502が進退して、爪506が溝500に進入したり後退したりする。
【0024】
図1では、その右側に示した爪ブロック502の爪506が溝500に進入した状態が示され、その左側に示した爪ブロック502の爪506が溝500から後退した状態が示されている。各爪506が1つの溝500に進入した状態で、上リム2と下リム4との上下の位置関係が固定される。爪506が溝500から後退した状態で、上リム2と下リム4との上下の位置関係の固定が解除される。
【0025】
上リム2と下リム4との固定状態の変化は、計測精度に影響を及ぼすので、上リムシャフト10とハウジング504との接触部で摩耗が発生しないように、上リムシャフト10には、硬度の高い材質を使用し、また上リムシャフト10には摩耗が発生しないような表面処理が行われている。さらに、上リムシャフト10とハウジング504との接触部には摩耗や焼き付きが起こらないように潤滑剤が塗布されている。
【0026】
なお、下リム4と上リムシャフト10との間と、ハウジング504と上リムシャフト10との間には、微小な隙間がある。この隙間にゴムくずが侵入すると、上述したように上リム2の固定状態が変化してしまい、計測精度に影響を及ぼすおそれがある。
【0027】
上リムシャフト10のフランジ12には、支持軸20の下端に形成したフランジ22が図示していないボルトによって結合されており、支持軸20と上リムシャフト10とは同心に配置されている。支持軸20が昇降装置に結合されて、支持軸20を昇降させることによって、上リム2が上リムシャフト10と共に昇降される。
【0028】
上リムシャフト10のフランジ12の周囲には、環状体24が配置され、上リム2の凹面14にボルト(図示せず)によって固定されている。環状体24は中央に環状の環状内孔26を有している。環状内孔26は、上リムシャフト12のフランジ12の外周面に接触して、環状体24を位置決めしている。環状体24は、略フランジ状の形状をしており、その凹所が、凹面14との間で第1空気通路28を形成している。
【0029】
この第1空気通路28が上リムシャフト10の空気供給通路16と連通するように、フランジ12には、空気連絡通路30が形成されている。空気連絡通路30は、フランジ12の半径方向に沿って形成されている。空気連絡通路30は、複数、例えば図2に示すように6個設けられている。複数の空気連絡通路30は、フランジ12の中心の周りに配置され、例えば所定角度、例えば60度間隔ごとに配置されている。
【0030】
上リム2の下面には、環状の溝32が形成されている。この溝32は、環状体24の外周面に対応する位置から上リムシャフト10側に幾分よった位置までの幅を有し、下リム4側が開口している。この溝32によって仮想曲線(ここでは仮想円)が描かれており、各溝32内に、例えば複数、具体的には6個の噴射部34が、所定角度、例えば60度ごとに設けられている。この仮想円は、上リムシャフト10の外周面よりも外方の位置にある。
【0031】
ここに、仮想曲線とは、仮想的にタイヤ6内に描かれた曲線であり、本実施形態では、この種の曲線として、中心(例えば上リムシャフト10の中心軸)を持ち、上リム2側、下リム4側、および上リム2と下リム4との間のいずれかに描かれた仮想円が用いられている。この種の曲線としては、円形だけではなく、楕円形、アーモンドの断面形状などの閉曲線が考えられ、さらには、本発明の作用効果を発揮できる範囲内においては、閉曲線ではなく開曲線(円弧など)が描かれてもよい。また、本発明の作用効果を発揮できる範囲内においては、中心を持たない閉曲線が描かれてもよい。
【0032】
そのため、後述の第2〜第4実施形態にも共通するが、仮想円38上にまんべんなく等間隔で各噴射部34を配置するのではなく、本発明の作用効果を発揮できる範囲内においては、仮想の円弧や楕円などの、上記した開曲線または閉曲線上に、噴射部34を1または複数個配置することができる。
【0033】
これら噴射部34それぞれは、第1空気通路28に連通しており、第1空気通路28から供給された空気をタイヤ6内に噴出して、タイヤ6を膨張させる。ここに、噴射部34の空気圧、空気量としては、タイヤ6内で旋回流を生成し、次第に空気の渦を形成できるようなものに、予め設定されている。この空気の渦は、あたかも、少なくとも、仮想円から上方に空気流が巻き上がる竜巻状(トルネード状)の渦であると考えられる。
【0034】
図3(a)に拡大して示すように、各噴射部34では、第1空気通路28と溝32とを連通させるように、上リムシャフト10と平行に連通孔(第2空気通路)36が形成されている。第1空気通路28と連通孔36とで、本発明にいう「空気通路」が形成されている。
【0035】
各連通孔36は、平面視した場合、上リムシャフト10の中心軸を中心として描いた仮想円38上に位置している。これら連通孔36それぞれには、噴射部34の一構成部材であるパイプ40が、挿通されている。連通孔36とパイプ40との間は、これら連通孔36とパイプ40との間に空気が流入しないように、シーリングなどにより密着状態を保持している。これらパイプ40は、連通孔36側に一端が位置し、他端部は、環状の溝32内に位置している。パイプ40は、連通孔36側の端部が開口し、溝32側の端部は閉塞されているが、溝32側の周壁には、噴出孔42が形成されている。これら噴出孔42は、図2に矢印で示すように、仮想円38のそれぞれ異なる位置における接線方向に沿い、かつ同一方向を向いている。各パイプ40は、図3(b)に示す扇形のフランジ46に溶接等、種々可能な方法で取り付けられ、このフランジ46は、当該フランジ46に形成された長孔48に挿通されたボルト49によって溝32の底33に固定されている。これら噴出孔42から同じ速度、同じ流量で空気が噴出される。これら空気連絡通路30、第1空気通路28、連通孔36及び噴射部34が、空気旋回供給部を構成している。
【0036】
このタイヤ検査装置1では、上リム2と下リム4とでタイヤを挟持し、支持回転装置5内の空気供給源から空気供給通路16に空気を供給すると、空気は、各空気連絡通路30、第1空気通路28、連通孔36を介して噴射部34の噴出孔42から噴出され、タイヤ6を膨張させる。このとき、各噴出孔42は、図2に示す仮想円38の接線方向に沿って同一方向を向いているので、タイヤ6内に上リムシャフト10の周りを回る旋回流が形成される。この旋回流は次第に空気の渦となる。
【0037】
当該空気の渦が壁となり、タイヤ内に滞留しているゴムくずが、空気の渦よりも上方に巻き上がることが防止され、当該滞留状態を維持するものと考えられる。その一方で、仮に、ゴムくずが空気の渦に巻き込まれたとした場合でも、当該ゴムくずは、空気の旋回流にのって回転するのみである。その結果、インフレートによってタイヤ内のゴムくずがチャック機構に侵入することを、適切に防止することができる。
【0038】
本発明の第2の実施形態のタイヤ検査装置1aを図4に示す。第1の実施形態では、上リム4に噴射部34を設け、上リムシャフト10のフランジ12の周囲に環状体24を設けたが、第2の実施形態のタイヤ検査装置1aでは、これらが除去されている。下リム4の上面側に、第1の実施形態のタイヤ検査装置1の上リム2に形成した環状の溝32と同様な溝32aが形成されている。この第2実施形態のタイヤ検査装置1aでは、環状の溝32aが上リム2側に開口している。この溝32a内に第1の実施形態の噴射部34と同様に構成された噴射部34aが噴射部34と上下が逆の状態で設けられている。
【0039】
この第2実施形態のタイヤ検査装置1aでは、第1実施形態のタイヤ検査装置1と同様に、仮想円上に各噴射部34aが位置し、それらそれぞれの噴出孔は、仮想円の接線方向に沿って同一方向に設けられている。
【0040】
しかしながら、第2実施形態のタイヤ検査装置1aでは、仮想円は、下リム4側に描かれており、この仮想円上に、各噴射部34aが設けられている。また、この第2実施形態では、上リム2の上下移動に影響を与えない空気路として、例えば、パイプ50が、上リムシャフト10の外周面よりも外方の位置で、下リム4を貫通し、噴射部32aに向けて直線的に設けられている。このパイプ50は、ハウジング504の外部に出て、空気供給源(不図示)に接続されている。
【0041】
この第2実施形態では、上リムシャフト10の上部ではなく、下部、たとえば、概ね、空気供給のためのパイプ50の周囲に仮想的に形成された仮想円のそれぞれ異なる位置における接線方向に沿って、各噴射部34aから空気が噴射される。なお、この第2実施形態においても、仮想の円弧上に各噴射部34aを配置してもよいことはいうまでもない。
【0042】
他の構成は、第1の実施形態のタイヤ検査装置と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0043】
このように構成されたタイヤ検査装置1aにおいても、上リム2と下リム4とでタイヤを挟持し、支持回転装置内の空気供給源から空気供給通路16に空気を供給すると、空気は、パイプ50を介して噴射部34aに供給されて噴出され、タイヤ6を膨張させる。このとき、噴出孔は仮想円の接線方向に沿って同一方向を向いているので、タイヤ6内に空気の旋回流が形成される。この旋回流が次第に空気の渦となる。
【0044】
当該空気の渦が壁となり、タイヤ内に存在するゴムくずが、空気の渦よりも上方に巻き上がることが防止され、タイヤ内で滞留しているゴムくずが滞留状態を維持するものと考えられる。その一方で、仮に、ゴムくずが空気の渦に巻き込まれたとした場合でも、当該ゴムくずは、空気の旋回流にのって回転するのみである。その結果、インフレートによってタイヤ内のゴムくずがチャック機構に侵入することを、適切に防止することができる。
【0045】
また、第2実施形態では、空気供給路としてのパイプ50を、空気供給源(不図示)から、上リムシャフト10の外周面よりも外方の位置で、下リム4を貫通し、噴射部32aに向けて直線的に設けているので、上リムシャフト12を貫通し、且つ、タイヤ6内を横切り、上リムシャフト10の空気供給通路18と連通する空気流路となるパイプを設ける場合とは異なり、チャック機構を調整して上リム2の上下位置を調節する際に、パイプ50が下リム4に引っかからず、上リム2の上下位置の調節が、阻害されることがない。
【0046】
第3の実施形態のタイヤ検査装置1bを図5に示す。第1、2の実施形態では、上リム2または下リム4に噴射部34、34aを設けたが、第3の実施形態のタイヤ検査装置1bでは、上リムシャフト10における上リム2と下リム4との間に位置する部分に、噴射部34bが設けられている。この実施形態では、上リム2と下リム4との間に、仮想円が描かれており、その仮想円上に噴射部34bが位置している。なお、この第3実施形態においても、第1実施形態と同様に、仮想の開曲線または閉曲線が描かれていてもよく、これら開曲線または閉曲線上に1または複数の噴射部34bを設けてもよい。
【0047】
第3実施形態では、上リムシャフト10の中心軸を中心として描いた仮想円上の異なる位置に複数の噴射部34bが位置し、それらそれぞれの噴出孔42aは、仮想円のそれぞれ異なる位置における接線方向に沿って同一方向に設けられている。これら噴射部34bそれぞれは、上リムシャフト10内の空気供給通路16を貫通されてタイヤ6側に突出させたパイプ54の先端部を下リム4側に折り曲げて、噴出孔42aを第1の実施形態の噴出孔42と同様に形成したものである。他の構成は、第1の実施形態のタイヤ検査装置1と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0048】
このように構成されたタイヤ検査装置1bにおいても、上リム2と下リム4とでタイヤを挟持し、支持回転装置内の空気供給源から空気供給通路16に空気を供給すると、空気は、パイプ54を介して各噴射部34bに供給されて噴出され、タイヤ6を膨張させる。このとき、噴出孔42aは仮想円のそれぞれ異なる位置における接線方向に沿って同一方向を向いているので、タイヤ6内に空気の旋回流が形成される。その旋回流は次第に竜巻状の空気の渦となると考えられる。
【0049】
当該空気の渦が壁となり、タイヤ内に滞留しているゴムくずが、空気の渦よりも上方に巻き上がることが防止され、当該滞留状態を維持するものと考えられる。その一方で、仮に、ゴムくずが空気の渦に巻き込まれたとした場合でも、当該ゴムくずは、空気の旋回流にのって回転するのみである。その結果、インフレートによってタイヤ内のゴムくずがチャック機構に侵入することを、適切に防止することができる。
【0050】
第4の実施形態のタイヤ検査装置の噴射部34cを図6に示す。この噴射部34cは、角形のパイプの端部の近傍の側壁に噴出孔42bを形成し、この噴出孔42bと対向するように、傾斜壁56をパイプの内部に設けたものである。他の構成は、第1乃至第3の実施形態のいずれかと同様である。
【0051】
このように傾斜壁56を設けることによっても、仮想円の接線方向に良好に空気を噴射することができる。なお、円形のパイプを利用して、内部に傾斜壁を設けることも無論可能である。
【0052】
第1乃至第3の実施形態では、噴出孔42、42a、42bは、仮想円の接線方向を向くように配置したが、接線方向からずれて配置することもできる。例えば接線方向を挟んで、上リムシャフト10側またはタイヤ6側にずれて噴出孔42、42a、42bを配置することもでき、例えば上リムシャフト10側またはタイヤ6側に30度程度ずれて配置することもできる。
【0053】
第1乃至第3の実施形態では、噴射部34、34a、34bの数を6個としたが、これに限ったものではなく、例えば最低限度1個だけ設けることもできる。また、第1乃至第3の実施形態では、噴射部34、34a、34bは、1つの仮想円の各接線方向にそって設けたが、仮想曲線(仮想の開曲線や閉曲線など)を同心状に複数設け、各仮想曲線の接線方向にそれぞれ少なくとも1つ設けることもできる。
【0054】
第1の実施形態では、環状体24内に空気通路を形成したが、これを除去し、例えばパイプによって空気連絡通路30と噴射部34のパイプ40とを結合するように構成することもできる。同様に第2の実施形態では、空気供給源(不図示)と噴射部34aとをパイプ50で接続したが、第1実施形態のように、下リム4内に、空気連絡通路30と同様構成の空気連絡通路と、空気通路(第1空気通路28及び連通孔36)とを形成し、これらによって空気供給通路16と噴射部34aとを接続してもよい。
【0055】
このように、第2実施形態を第1実施形態と同様の空気供給経路とした場合には、シャフトを貫通し、且つ、タイヤ6内を横切る空気流路となるパイプを設ける場合とは異なり、チャック機構を調整して上リムの上下位置を調節する際に、その上下位置の調節が、パイプが下リムに引っかからず阻害されることがない。
【0056】
第1〜第3実施形態では、仮想円38は、上リムシャフト10の中心軸を中心として描かれていたが、旋回流を生成し、タイヤ内に空気の渦を形成できる範囲内であれば、上リムシャフト10の中心軸から水平方向にずれた位置を中心とした仮想円であってもよい。
【0057】
なお、本発明における空気流路の構成は、第1〜第3実施形態の例には限られない。タイヤ6の外部からタイヤ6内の噴射部34a〜34cに空気を供給できる構成であれば、どのような構成であってもよい。例えば、第1〜第3実施形態では、空気流路が上リム2と下リム4との間の対向領域に開口しているが、特にこれには限られない。これは、噴射部34a〜34cが設けられる場所にもよるが、これら噴射部が上リム2または下リム4の外周面の外方に設置されているような特殊な場合が考えられる。このような場合、空気流路は、最終的に噴射部34a〜34c方向に開口していればよいので、特に、前記対向領域に開口する必要はない。
【0058】
また、空気流路の構造も、第1〜第3実施形態で例示したものには限られず、たとえば、メイン空気流路の先端から複数の分岐流路を持つ空気路の1または複数を、タイヤ6の外部から上リム2または下リム4を貫通させ、各分岐流路を噴射部34a〜34c方向に開口させてもよい。要するに、噴射部34a〜34cによって旋回流を形成することができればよい。
【0059】
あるいは、第3実施形態(図5参照)のように、上リムシャフト12の空気供給通路18から空気流路を分岐するように形成するのではなく、上リムシャフト12の機能を持たない空気供給専用の部材を、上リム2または下リム4を貫通させずに、設け、噴射部34a〜34c方向に開口させてもよい。
【0060】
さらに、仮想円38の直径も、第1〜第3実施形態では、上リム2または下リム4の直径とほぼ同じかそれよりも小さく描かれているが、本発明の作用効果に影響を与えない範囲内であれば、上リム2または下リム4の直径よりも大きくてもよい。
【0061】
本発明の第1〜第3実施形態では、空気の渦は、仮想円よりも上方に空気が巻き上がるあたかもトルネード状であるため、特に、仮想円よりも下方に存在するゴムくず(例えば、タイヤ底のたまり屑)が、空気の渦に阻害されてタイヤ6内で巻き上がらないので、仮想円よりも下のゴムくず対策に特に有益である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6