(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記準備工程の後、前記面外補強糸挿入工程の前に、前記母材に、前記平面に沿う方向と交差する方向に、前記面外補強糸を挿入するための孔を明ける孔明け工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の面外補強糸の挿入方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図16は、従来のシート状の複合材料100の概略構成図である。
図17は、従来のシート状の複合材料100の概略断面図である。
図18は、
図16の領域Aの拡大断面図である。シート状の複合材料100は、
図16、
図17及び
図18に示すように、強化繊維100fに樹脂を含浸させたものである。複合材料100は、
図16、
図17及び
図18では、4層の複合材料の層が積層されたものが例示されている。複合材料100は、
図17に示すように、4本の繊維層の中心軸100a、100b、100c及び100dを有する。4本の繊維層の中心軸100a、100b、100c及び100dは、面内方向に沿って延びている。複合材料100は、面内方向には強化繊維100fにより強度が高められているが、面外方向には強度が高められていない。そのため、複合材料100は、
図16及び
図18に示すように、層間に層間破壊部100xが形成される可能性があるという問題があった。この問題に対応するため、特許文献1に記載の方法が知られている。
【0005】
図19は、改良した従来のシート状の複合材料200の概略構成図である。
図20は、
図19の領域Bの拡大断面図である。改良した従来のシート状の複合材料200は、シート状の複合材料100を特許文献1の方法で改良したものである。複合材料200は、
図19及び
図20に示すように、強化繊維200fに樹脂を含浸させたものを、補強糸202で縫ったものである。複合材料200は、
図19及び
図20では、4層の複合材料の層が積層されたものが例示されている。複合材料200は、
図20に示すように、4本の繊維層の中心軸200a、200b、200c及び200dを有する。4本の繊維層の中心軸200a、200b、200c及び200dは、面内方向に沿って延びている。複合材料200は、面外方向には補強糸202により強化されている。しかし、4本の繊維層の中心軸200a、200b、200c及び200dは、補強糸202により蛇行が生じている。そのため、複合材料200は、補強糸202によって面内方向の強度が複合材料100と比較して低下する可能性があるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、面内方向の強度を低下させることなく、面外方向の強度を向上させた繊維含有材料、面外補強糸の挿入方法及び繊維含有材料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、面外補強糸の挿入方法は、平面に沿う方向に延びる強化繊維を含む母材を準備する準備工程と、準備した前記母材の内部に、前記平面に沿う方向と交差する方向に面外補強糸を挿入する面外補強糸挿入工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、面内補強糸を形成することなく面外補強糸を挿入するため、繊維含有材料において、面内方向の強度を高める強化繊維と、面外方向の強度を高める面外補強糸とを共存させることができるので、繊維含有材料の面内方向の強度を低下させることなく、面外方向の強度を向上させることができる。
【0009】
この構成において、前記準備工程の後、前記面外補強糸挿入工程の前に、前記母材に、前記平面に沿う方向と交差する方向に、前記面外補強糸を挿入するための孔を明ける孔明け工程をさらに含むことが好ましい。この構成によれば、面外補強糸挿入工程で、孔明け工程で明けられた孔に面外補強糸が挿入されるため、面外補強糸を円滑に挿入することができる。
【0010】
孔明け工程を含む構成において、前記孔明け工程は、前記母材に対し、前記平面に沿う方向と交差する方向にレーザを照射する孔明け部によって行われ、前記面外補強糸挿入工程は、前記母材に対し、前記平面に沿う方向と交差する方向に、前記面外補強糸となる繊維片を射出する繊維片射出部によって行われることが好ましい。この構成によれば、孔明け部を母材に対して非接触で孔明け工程を施し、繊維片射出部を母材に対して非接触で面外補強糸挿入工程を施すことができるので、孔明け工程及び面外補強糸挿入工程を素早くかつ正確に施すことができる。また、繊維片射出部で射出する繊維片の長さを制御することで、面外補強糸の長さを制御することができる。
【0011】
あるいは、孔明け工程を含む構成において、前記孔明け工程は、前記母材に挿入される挿入針によって行われ、前記面外補強糸挿入工程は、前記母材に挿入される挿入繊維が穴に通された前記挿入針によって行われ、前記面外補強糸挿入工程の後に、前記母材に挿入された前記挿入繊維を前記母材の両面側において切断して、切断後の前記挿入繊維を前記面外補強糸とする切断工程をさらに含むことが好ましい。この構成によれば、挿入針で孔明け工程と面外補強糸挿入工程とを連続して施すことができるので、孔明け工程及び面外補強糸挿入工程を素早くかつ正確に施すことができる。また、切断工程で面外補強糸の切断位置を制御することで、面外補強糸の長さを制御することができる。
【0012】
これらの構成において、前記準備工程では、前記母材の少なくとも一方の面に保護シートを設け、前記面外補強糸挿入工程では、前記母材及び前記保護シートの内部に、前記平面に沿う方向と交差する方向に前記面外補強糸を挿入することが好ましい。この構成によれば、母材の平面に沿う方向と交差する方向の厚さよりも長く、母材から厚さの方向の少なくとも一方に突き出した面外補強糸を容易に挿入することができるので、面外補強糸が突き出している側に別の部材と接着する場合に、突き出した面外補強糸により接着強度を向上させることができる。
【0013】
準備工程で母材の少なくとも一方の面に保護シートを設ける構成において、前記面外補強糸挿入工程の後に、前記保護シートを除去するシート除去工程をさらに含むことが好ましい。この構成によれば、シート除去工程により、繊維含有材料を使用する直前まで保護シートで保護された、繊維含有材料の面外補強糸が突き出している側の表面に、別の部材を接着することができる。
【0014】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、繊維含有材料の製造方法は、上記のいずれかの面外補強糸の挿入方法により、前記強化繊維を含む母材の内部に前記面外補強糸が形成された繊維含有材料を製造することを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、面内方向の強度を高める強化繊維と、面外方向の強度を高める面外補強糸とを共存させた繊維含有材料を製造することができるので、面内方向の強度を低下させることなく、面外方向の強度を向上させた繊維含有材料を製造することができる。
【0016】
この構成において、前記強化繊維に樹脂を含浸させる含浸工程をさらに含むことが好ましい。この構成によれば、さらに軽量性及び高い強度を有する繊維含有材料を製造することができる。
【0017】
含浸工程を含む構成において、前記面外補強糸挿入工程より後、かつ、前記含浸工程より後に、前記樹脂を硬化させる硬化工程をさらに含むことが好ましい。この構成によれば、軽量性及び高い強度に合わせて安定した構造を有する繊維含有材料を製造することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、面内方向の強度を低下させることなく、面外方向の強度を向上させた繊維含有材料、面外補強糸の挿入方法及び繊維含有材料の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0021】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る繊維含有材料の一例である繊維含有材料10を示す概略断面図である。繊維含有材料10は、
図1で概略断面図が示されているが、面外方向から見た平面図における形状は、いかなる形状でもよい。繊維含有材料10は、
図1に示すように、母材12と、面外補強糸14と、を含む。母材12は、平面に沿う方向である面内方向に延びる材料であり、面内方向に延びる強化繊維12fを含む。母材12は、これに限定されず、母材12の平面に沿う方向と交差する方向である面外方向に湾曲部を有していても良く、段差部を有していてもよい。面外補強糸14は、母材12の内部に、母材12の平面に沿う方向と交差する方向である面外方向に沿って延びて形成されている。面外補強糸14は、母材12の平面に沿う方向と交差する方向の厚さと同じ長さである。繊維含有材料10は、
図1では、面外補強糸14が母材12の平面に沿う方向において均一に分布しているが、本発明はこれに限定されることなく、面外補強糸14が不均一に分布していてもよい。繊維含有材料10は、例えば、母材12に湾曲部又は段差部がある場合、母材12の応力のかかる場所である湾曲部又は段差部に面外補強糸14が高密度に分布していることが好ましい。面外補強糸14は、母材12の平面に沿う方向と直交することが好ましい。繊維含有材料10は、母材12の平面に沿う方向と交差する面外補強糸14のみを有し、母材12の平面に沿う方向、すなわち母材12の平面に平行な方向の補強糸を有さないことが好ましい。
【0022】
強化繊維12fは、5μm以上7μm以下の範囲内の基本繊維を数100本から数1000本程度束ねたものが例示される。強化繊維12fを構成する基本繊維は、いずれも炭素繊維が例示される。強化繊維12fを構成する基本繊維は、これに限定されず、その他のプラスチック繊維、ガラス繊維又は金属繊維でもよい。
【0023】
母材12は、強化繊維12fを含むプリフォーム、及び強化繊維12fに樹脂を含浸させた複合材料が例示される。強化繊維12fに含浸される樹脂は、熱硬化性樹脂が好ましいが、熱可塑性樹脂でもよい。熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂が例示される。熱可塑性樹脂は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、及びポリフェニレンサルファイド(PPS)等が例示される。ただし、強化繊維12fに含浸される樹脂は、これに限定されず、その他の樹脂でもよい。
【0024】
強化繊維12fに含浸される樹脂が熱硬化性樹脂の場合、熱硬化性樹脂は、軟化状態と、硬化状態と、半硬化状態となることができる。軟化状態は、熱硬化性樹脂を熱硬化させる前の状態である。軟化状態は、自己支持性を有さない状態であり、支持体に支持されていない場合に形状を保持できない状態である。軟化状態は、加熱されて、熱硬化性樹脂が熱硬化反応をすることができる状態である。硬化状態は、熱硬化性樹脂を熱硬化させた後の状態である。硬化状態は、自己支持性を有する状態であり、支持体に支持されていない場合でも形状を保持できる状態である。硬化状態は、加熱されても、熱硬化樹脂が熱硬化反応をすることができない状態である。半硬化状態は、軟化状態と硬化状態との間の状態である。半硬化状態は、硬化状態よりも弱い程度の熱硬化を熱硬化性樹脂にさせた状態である。半硬化状態は、自己支持性を有する状態であり、支持体に支持されていない場合でも形状を保持できる状態である。半硬化状態は、加熱されて、熱硬化性樹脂が熱硬化反応をすることができる状態である。強化繊維12fが熱硬化性樹脂に含浸された複合材料は、熱硬化性樹脂が半硬化状態であるプリプレグであるか、又は熱硬化性樹脂が硬化状態であることが好ましい。
【0025】
面外補強糸14は、5μm以上7μm以下の範囲内の基本繊維を数100本から数1000本程度束ねたものが例示される。面外補強糸14を構成する基本繊維は、いずれもナイロン繊維が例示される。面外補強糸14を構成する基本繊維は、これに限定されず、その他のプラスチック繊維、炭素繊維、ガラス繊維又は金属繊維でもよい。
【0026】
繊維含有材料10は、面内方向の強度を高める強化繊維12fと、面外方向の強度を高める面外補強糸14とが、繊維層の中心軸を蛇行させることなく共存できるので、面内方向の強度を低下させることなく、面外方向の強度を向上させることができる。
【0027】
繊維含有材料10は、面外補強糸14が母材12の平面に沿う方向と交差する方向の厚さと同じ長さであるので、繊維含有材料10の形状が変更されることなく、面外方向の強度が向上する。
【0028】
繊維含有材料10は、母材12が強化繊維12fに樹脂を含浸させた複合材料である場合、さらに軽量性及び高い強度を有することができる。
【0029】
第1の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法に含まれる第1の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法の処理について以下に説明する。
図2は、本発明の第1の実施形態、第2の実施形態、第3の実施形態及び第4の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法に含まれる本発明の第1の実施形態、第2の実施形態、第3の実施形態及び第4の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法の処理の一例を示すフローチャートである。第1の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、
図2に示すように、準備工程S12と、孔明け工程S14と、面外補強糸挿入工程S16と、を含む。
【0030】
図2に示す準備工程S12は、強化繊維12fを含む母材12を準備する工程である。詳細には、準備工程S12は、孔明け工程S14を施す
図3に示す孔明け部22に母材12を準備する工程である。なお、後述するように、孔明け工程S14が省略される場合、準備工程S12は、面外補強糸挿入工程S16を施す
図4に示す繊維片射出部24に母材12を準備する工程である。
【0031】
図3は、第1の実施形態において、母材12が孔明けされている状態の概略断面図である。母材12は、
図3では、孔明け部22により母材12の一方の面、すなわち
図3における上側から、平面に沿う方向と交差する方向に沿って、貫通した孔16が形成されている。貫通した孔16は、後述する面外補強糸挿入工程S16で面外補強糸14が挿入されるための孔である。孔明け部22は、
図3に示すように、母材12に対して、母材12の一方の面から、平面に沿う方向と交差する方向に沿って孔を明けて、貫通した孔16を形成する。孔明け部22は、
図3では、母材12に対して、母材12の一方の面から、平面に沿う方向と交差する方向に沿ってレーザLを照射するレーザ照射部が例示されている。
【0032】
図2における孔明け工程S14は、準備工程S12の後、面外補強糸挿入工程S16の前に、母材12に、平面に沿う方向と交差する方向に沿って、面外補強糸14を挿入するための孔16を明ける工程である。詳細には、孔明け工程S14は、孔明け部22により、母材12に対し、平面に沿う方向と交差する方向にレーザLを照射して行われる。孔明け部22は、レーザLの照射面積及び照射強度を制御することで、孔16の平面に沿う方向の大きさを制御して、その後の面外補強糸挿入工程S16で挿入される繊維片18が貫通して抜け出さない位置となるように挿入され、貫通して抜け出してしまわないように制御することができる。なお、母材12に孔16を形成しなくても、母材12の内部に
図4に示す繊維片18の挿入が可能な場合には、孔明け工程S14を省略することができる。孔明け工程S14を省略した場合、後述する面外補強糸挿入工程S16で挿入される繊維片18が、実質的に孔明け工程S14を施すこととなる。
【0033】
図4は、第1の実施形態において、母材12に繊維片18が射出されている状態の概略断面図である。母材12は、
図4では、繊維片射出部24により母材12の一方の面、すなわち
図4における上側から、平面に沿う方向と交差する方向に沿って、孔明け工程S14で形成された孔16に繊維片18が射出されて挿入されている。繊維片射出部24は、
図4に示すように、母材12に形成された孔16に対して、母材12の一方の面から、平面に沿う方向と交差する方向に沿って、面外補強糸14となる繊維片18を射出して挿入する。繊維片射出部24は、エアで繊維片18を射出する装置が例示される。繊維片射出部24は、繊維片18の射出速度を制御することで、孔16に貫通して抜け出さない位置となるように挿入され、貫通して抜け出してしまわないように制御することができる。
【0034】
図5は、
図4の繊維片18の一例である繊維片18aを示す概略図である。
図6は、
図4の繊維片18の別の一例である繊維片18bを示す概略図である。繊維片18aは、
図5に示すように、基本繊維の束18fと、基本繊維の束18fを覆う樹脂18rと、を含む。繊維片18bは、
図6に示すように、基本繊維の束18fと、基本繊維の束18fを覆う樹脂18rと、を含む。基本繊維の束18fは、面外補強糸14と同様の基本繊維を束ねたものが例示される。基本繊維の束18fは、基本繊維の本数を減少させることで、細くすることができ、基本繊維の本数を増加させることで、太くすることができる。また、基本繊維の束18fは、基本繊維の本数を減少させることで、形成される面外補強糸14を細くすることができ、基本繊維の本数を増加させることで、形成される面外補強糸14を太くすることができる。樹脂18rは、強化繊維12fに含浸させる樹脂と同様のものが例示される。繊維片18aと繊維片18bとは、樹脂18rの量が異なるため、全体の形状が異なる。このように、繊維片18は、樹脂18rの量を制御することで、基本繊維の束18fに束ねられた基本繊維の本数を変更することなく、全体の形状を制御することができる。繊維片18は、全体の形状を制御することで、孔16に貫通して抜け出さない位置となるように挿入され、貫通して抜け出してしまわない形状に制御することができる。ただし、樹脂18rは、硬化した状態であっても、未硬化の状態であっても、どちらでもよい。また、繊維片18は、樹脂18rを含まなくても良い。その場合、繊維片18は、基本繊維の束18fのみとなる。
【0035】
図2における面外補強糸挿入工程S16は、準備した母材12の内部に、平面に沿う方向と交差する方向に面外補強糸14を挿入する工程である。面外補強糸挿入工程S16では、準備した母材12の内部に、平面に沿う方向と交差する方向にのみ面外補強糸14を挿入することが好ましい。詳細には、面外補強糸挿入工程S16は、繊維片射出部24により、母材12に対し、平面に沿う方向と交差する方向に沿って、繊維片18を射出して行われる。母材12は、面外補強糸挿入工程S16を経て、繊維含有材料10となる。また、母材12に挿入された繊維片18は、面外補強糸14となる。
【0036】
第1の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、面外補強糸挿入工程S16で面内補強糸を形成することなく面外補強糸14を挿入する。そのため、第1の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、繊維含有材料10において、面内方向の強度を高める強化繊維12fと、面外方向の強度を高める面外補強糸14とを共存させることができるので、繊維含有材料10の面内方向の強度を低下させることなく、面外方向の強度を向上させることができる。
【0037】
第1の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、面外補強糸挿入工程S16で面外補強糸14を曲げることなく挿入する。そのため、第1の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、面外補強糸14及び面外補強糸14となる繊維片18には、強化繊維12fよりも柔らかいものも、硬いものも、用いることができる。また、第1の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、面外補強糸14及び面外補強糸14となる繊維片18には、強化繊維12fよりも細いものも、太いものも、用いることができる。ここで、強化繊維12fよりも柔らかい繊維片18は、基本繊維が強化繊維12fよりも柔らかい基本繊維を含む繊維が例示される。強化繊維12fよりも硬い繊維片18は、基本繊維が強化繊維12fよりも硬い基本繊維を含む繊維が例示される。強化繊維12fよりも細い繊維片18は、基本繊維の本数が強化繊維12fより少ない繊維が例示される。強化繊維12fよりも太い繊維片18は、基本繊維の本数が強化繊維12fより多い繊維が例示される。
【0038】
第1の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、孔明け工程S14を省略しない場合、面外補強糸挿入工程S16で、孔明け工程S14で明けられた孔16に面外補強糸14が挿入されるため、面外補強糸14を円滑に挿入することができる。
【0039】
第1の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、孔明け工程S14が、母材12に対し、平面に沿う方向と交差する方向にレーザLを照射する孔明け部22によって行われ、面外補強糸挿入工程S16が、母材12に対し、平面に沿う方向と交差する方向に、面外補強糸14となる繊維片18を射出する繊維片射出部24によって行われる。そのため、第1の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、孔明け部22を母材12に対して非接触で孔明け工程S14を施し、繊維片射出部24を母材12に対して非接触で面外補強糸挿入工程S16を施すことができるので、孔明け工程S14及び面外補強糸挿入工程S16を素早くかつ正確に施すことができる。
【0040】
第1の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、繊維片射出部24で面外補強糸挿入工程S16を施す場合、繊維片射出部24で射出する繊維片18の長さを制御することで、面外補強糸14の長さを制御することができる。そのため、第1の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、母材12の厚さと同じ長さの面外補強糸14を挿入することができるので、繊維含有材料10の形状を変更することなく、面外方向の強度を向上させることができる。また、第1の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、繊維含有材料10の表面を円滑にすることができる。
【0041】
第1の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法について、以下に説明する。第1の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法は、第1の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法の処理を含む。そのため、第1の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法は、詳細には、第1の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法により、強化繊維12fを含む母材12の内部に面外補強糸14が形成された繊維含有材料10を製造することができる。したがって、第1の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法は、面内方向の強度を低下させることなく、面外方向の強度を向上させた繊維含有材料10を製造することができる。
【0042】
第1の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法は、強化繊維12fに樹脂を含浸させる含浸工程を含むことが好ましい。第1の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法は、含浸工程を含む場合、母材12が強化繊維12fに樹脂を含浸させた複合材料である繊維含有材料10を製造できるので、さらに軽量性及び高い強度を有する繊維含有材料10を製造することができる。含浸工程は、第1の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法のどのタイミングで施されてもよい。
【0043】
第1の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法は、含浸工程を含む場合、樹脂を硬化させる硬化工程を含むことが好ましい。第1の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法は、硬化工程を含む場合、母材12が強化繊維12fに樹脂を含浸させ、樹脂が半硬化状態又は硬化状態となった複合材料である繊維含有材料10を製造できるので、軽量性及び高い強度に合わせて安定した構造を有する繊維含有材料10を製造することができる。硬化工程は、面外補強糸挿入工程S16より後、かつ、含浸工程より後で施されることが好ましく、この場合、樹脂が硬化する前に面外補強糸挿入工程S16を施すので、面外補強糸挿入工程S16を円滑に施すことができる。
【0044】
[第2の実施形態]
図7は、第2の実施形態において、母材12が孔明けされる前の状態の概略断面図である。
図8は、第2の実施形態において、母材12が孔明け及び面外補強糸14となる挿入繊維28が挿入されている状態の概略断面図である。
図9は、第2の実施形態において、母材12に挿入された面外補強糸14となる挿入繊維28が切断されている状態の概略断面図である。本発明の第2の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、第1の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法と同様に、第1の実施形態に係る繊維含有材料10における面外補強糸14を挿入する方法である。本発明の第2の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、第1の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法において、孔明け部22で孔明け工程S14を施し、繊維片射出部24で面外補強糸挿入工程S16を施すことに代えて、挿入針26、切断部32a及び切断部32bで孔明け工程S14及び面外補強糸挿入工程S16を施すように変更し、さらに面外補強糸挿入工程S16の後に切断工程が追加されたものである。第2の実施形態の説明では、第1の実施形態と同様の構成に第1の実施形態と同一の符号群を用い、その詳細な説明を省略する。
【0045】
母材12は、
図7及び
図8に示すように、挿入針26により母材12の一方の面、すなわち
図7及び
図8における上側から、平面に沿う方向と交差する方向に沿って、貫通した孔16が形成される。挿入針26は、
図7及び
図8に示すように、母材12に対して、母材12の一方の面から、平面に沿う方向と交差する方向に沿って孔を明けて、貫通した孔16を形成する。挿入針26は、詳細には、
図7及び
図8では、母材12に対して、母材12の一方の面から、平面に沿う方向と交差する方向に沿って挿入されることで、貫通した孔16を形成する。孔明け工程S14は、詳細には、母材12に挿入針26を挿入することで行われる。挿入針26は、
図7及び
図8では、母材12の平面に沿う方向に複数並べられている状態が例示されているが、本実施形態は挿入針26が1つ以上の全ての形態を含む。
【0046】
母材12は、
図7及び
図8に示すように、挿入繊維28が穴に通された挿入針26により、挿入繊維28が挿入される。挿入針26は、母材12に挿入される挿入繊維28が穴に通されている。挿入針26は、
図7及び
図8に示すように、挿入繊維28が穴に通された状態で母材12に挿入されることで、母材12の内部に挿入繊維28を挿入する。面外補強糸挿入工程S16は、詳細には、母材12に挿入される挿入繊維28が穴に通された挿入針26により行われる。母材12の内部に挿入された挿入繊維28は、面外補強糸挿入工程S16により、面外補強糸14となる。
【0047】
挿入繊維28は、繊維片18に含まれる基本繊維の束18fと同様の基本繊維の束を含むものが例示される。挿入繊維28は、基本繊維の束18fと同様に、面外補強糸14と同様の基本繊維を束ねたものが例示される。挿入繊維28は、基本繊維の束18fを覆う樹脂18rと同様の樹脂をさらに含んでいてもよい。挿入繊維28に含まれる基本繊維の束は、詳細には、基本繊維の束18fと同様である。挿入繊維28に含まれる樹脂は、詳細には、樹脂18rと同様である。
【0048】
母材12は、
図9に示すように、両面側において、挿入された挿入繊維28が切断部32a及び切断部32bで切断されることで、内部に面外補強糸14が形成される。詳細には、母材12は、
図9における上側の面である一方の面において挿入繊維28が切断部32aで切断されて挿入繊維28の一方の面側の余剰繊維34aが除去され、
図9における下側の面である他方の面において挿入繊維28が切断部32bで切断されて挿入繊維28の他方の面側の余剰繊維34bが除去され、内部に挿入繊維28の一部が残され、内部に残された挿入繊維28の一部が面外補強糸14となることで、内部に面外補強糸14が形成される。母材12は、
図9に示すように、両面に沿って、挿入された挿入繊維28が切断部32a及び切断部32bで切断されることが好ましく、この場合、内部に、母材12の厚さと同じ長さの面外補強糸14が形成される。
【0049】
切断部32a及び切断部32bは、
図9に示すように、母材12の両面側において、挿入された挿入繊維28を切断して、母材12の内部に面外補強糸14を形成する。詳細には、切断部32aは、母材12の
図9における上側の面である一方の面において挿入繊維28を切断し、切断部32bは、母材12の
図9における下側の面である他方の面において挿入繊維28を切断し、母材12の内部に挿入繊維28の一部を残し、内部に残した挿入繊維28の一部を面外補強糸14とすることで、母材12の内部に面外補強糸14を形成する。切断部32a及び切断部32bは、
図9に示すように、母材12の両面に沿って、挿入された挿入繊維28を切断して、母材12の内部に、母材12の厚さと同じ長さの面外補強糸14を形成することが好ましい。切断部32a及び切断部32bは、いずれも、金属製の刃が例示される。ただし、切断部32a及び切断部32bは、これに限定されず、挿入繊維28を切断可能なものであればよい。
【0050】
切断工程は、面外補強糸挿入工程S16の後に施される工程である。切断工程は、母材12に挿入された挿入繊維28を母材12の両面側において切断して、切断後の挿入繊維28を面外補強糸14とする工程である。詳細には、切断工程は、母材12に挿入された挿入繊維28を、母材12の一方の面側において切断部32aで切断して、母材12の他方の面側において切断部32bで切断して、切断後の挿入繊維28を面外補強糸14とする工程である。母材12に挿入された挿入繊維28を母材12の両面に沿って切断して、切断後の挿入繊維28を母材12の厚さと同じ長さの面外補強糸14とすることが好ましい。
【0051】
第2の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、孔明け工程S14が、母材12に挿入針26を挿入することで行われ、面外補強糸挿入工程S16が、母材12に挿入される挿入繊維28が穴に通された挿入針26により行われる。そのため、第2の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、挿入針26で孔明け工程S14及び面外補強糸挿入工程S16を連続して施すことができるので、孔明け工程S14及び面外補強糸挿入工程S16を素早くかつ正確に施すことができる。
【0052】
第2の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、母材12に挿入された挿入繊維28を母材12の両面側において切断して、切断後の挿入繊維28を面外補強糸14とする切断工程をさらに含む。そのため、第2の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、切断工程における切断位置を制御することで、面外補強糸14の長さを制御することができる。そのため、第2の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、切断工程で母材12に挿入された挿入繊維28を母材12の両面に沿って切断することで、母材12の厚さと同じ長さの面外補強糸14を形成することができるので、繊維含有材料10の形状を変更することなく、面外方向の強度を向上させることができる。また、第2の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、繊維含有材料10の表面を円滑にすることができる。
【0053】
第2の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法について、以下に説明する。第2の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法は、第2の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法の処理を含む。そのため、第2の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法は、詳細には、第2の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法により、強化繊維12fを含む母材12の内部に面外補強糸14が形成された繊維含有材料10を製造することができる。したがって、第2の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法は、面内方向の強度を低下させることなく、面外方向の強度を向上させた繊維含有材料10を製造することができる。第2の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法における含浸工程及び硬化工程は、第1の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法における含浸工程及び硬化工程と同様である。
【0054】
[第3の実施形態]
図10は、本発明の第3の実施形態に係る繊維含有材料の一例である繊維含有材料40を示す概略断面図である。第3の実施形態に係る繊維含有材料40は、
図10に示すように、母材12と、面外補強糸44と、を含む。すなわち、第3の実施形態に係る繊維含有材料40は、第1の実施形態に係る繊維含有材料10において、面外補強糸14を面外補強糸44に変更したものである。第3の実施形態の説明では、第1の実施形態と同様の構成に第1の実施形態と同一の符号群を用い、その詳細な説明を省略する。
【0055】
面外補強糸44は、母材12の平面に沿う方向と交差する方向の厚さよりも長く、母材12から厚さの方向の両面に突き出している点で、面外補強糸14と異なる。面外補強糸44は、長さ及び母材12から突き出している点を除くその他の点で、面外補強糸14と同様である。繊維含有材料40は、面外補強糸44が上記構成を有するので、面外補強糸44が突き出している両面側に別の部材と接着する場合に、突き出した面外補強糸44により接着強度を向上させることができる。詳細には、繊維含有材料40は、突き出した面外補強糸44が、接着される別の部材における面外補強糸となるので、接着強度を向上させることができる。また、繊維含有材料40は、突き出した面外補強糸44が、接着される別の部材との間でアンカー効果を生じさせるので、接着強度を向上させることができる。また、繊維含有材料40は、突き出した面外補強糸44が、接着される別の部材との間の接着層を保持することができるので、接着強度を向上させることができる。
【0056】
第3の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法に含まれる第3の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法の処理について以下に説明する。第3の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、第1の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法において、準備工程S12を以下に説明するように変更し、準備工程S12の変更に伴って孔明け工程S14及び面外補強糸挿入工程S16を以下に説明するように変更したものである。
【0057】
図11は、第3の実施形態において、保護シート52a及び保護シート52bが配置された母材12であるシート積層体50の概略断面図である。第3の実施形態にかかるシート積層体50は、
図11に示すように、母材12と、保護シート52aと、保護シート52bと、を含む。
【0058】
第3の実施形態における準備工程S12は、母材12の一方の面、すなわち
図11における上側の面に保護シート52aを配置し、母材12の他方の面、すなわち
図11における下側の面に保護シート52bを配置するという点で、第1の実施形態における準備工程S12と異なる。第3の実施形態における準備工程S12は、保護シート52a及び保護シート52bが配置される点を除くその他の点で、第1の実施形態における準備工程S12と同様である。第3の実施形態における準備工程S12は、母材12の両面に保護シート52a及び保護シート52bを設けることにより、シート積層体50を形成することで、強化繊維12fを含む母材12を準備する工程である。
【0059】
図12は、
図10の繊維含有材料40の前駆体の一例である繊維含有材料55を示す概略断面図である。第3の実施形態に係る繊維含有材料55は、
図12に示すように、母材12と、保護シート52aと、保護シート52bと、面外補強糸44と、を含む。面外補強糸44は、母材12と保護シート52a及び保護シート52bとの内部に、母材12と保護シート52a及び保護シート52bとを貫通して、平面に沿う方向と交差する方向である面外方向に沿って延びて形成されている。
【0060】
保護シート52aは、面外補強糸44が突き出している側の母材12の一方の面、すなわち
図12における上側の面に設けられている。保護シート52bは、面外補強糸44が突き出している側の母材12の他方の面、すなわち
図12における下側の面に設けられている。
【0061】
保護シート52a及び保護シート52bは、ナイロン製又はポリエステル製のシート、及び柔軟性を有するパネル等のいずれかを1枚又は複数枚積層させたものが例示される。保護シート52a及び保護シート52bは、これに限定されず、その他の保護シートでもよい。保護シート52a及び保護シート52bは、上記例示の材料を積層する枚数を制御することで、厚さを制御することができる。
【0062】
保護シート52a及び保護シート52bは、繊維含有材料55において、母材12の表面が傷つくこと及び汚れが付着することを抑制することができる。また、保護シート52a及び保護シート52bは、繊維含有材料55において、面外補強糸44の引張を抑制することができる。
【0063】
保護シート52aは、面外補強糸44が母材12の一方の面から突き出している長さと同じ厚さを有する。また、保護シート52bは、面外補強糸44が母材12から他方の面から突き出している長さと同じ厚さを有する。すなわち、面外補強糸44は、母材12と保護シート52a及び保護シート52bとの厚さの合計と同じ長さである。そのため、保護シート52a及び保護シート52bは、いずれも、面外補強糸44の引張をより抑制することができる。また、面外補強糸44は、保護シート52a及び保護シート52bの厚さを制御することで、長さを制御することができる。
【0064】
第3の実施形態における孔明け工程S14及び面外補強糸挿入工程S16は、孔明け工程S14及び面外補強糸挿入工程S16を施す対象が、母材12に代えてシート積層体50となる点で、第1の実施形態における孔明け工程S14及び面外補強糸挿入工程S16と異なる。詳細には、第3の実施形態における孔明け工程S14は、母材12と保護シート52a及び保護シート52bとに貫通した孔16と同様の孔を形成する。また、第3の実施形態における面外補強糸挿入工程S16は、第3の実施形態における孔明け工程S14で形成された孔に面外補強糸44を挿入する。
【0065】
第3の実施形態における孔明け工程S14及び面外補強糸挿入工程S16は、上記の異なる点を除くその他の点で、第1の実施形態における孔明け工程S14及び面外補強糸挿入工程S16と同様である。シート積層体50は、孔明け工程S14及び面外補強糸挿入工程S16が施されることで、繊維含有材料55となる。繊維含有材料55は、保護シート52a及び保護シート52bを除去するシート除去工程を経て、繊維含有材料40として使用される。
【0066】
第3の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、準備工程S12で、母材12の両面に保護シート52a及び保護シート52bを設け、面外補強糸挿入工程S16で、母材12と保護シート52a及び保護シート52bとの内部に、平面に沿う方向と交差する方向に面外補強糸44を挿入する。そのため、第3の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、母材12の平面に沿う方向と交差する方向の厚さよりも長く、母材12から厚さの方向に突き出した面外補強糸44を挿入することができる。したがって、第3の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、繊維含有材料40の面外補強糸44が突き出している側に別の部材と接着する場合に、突き出した面外補強糸44により接着強度を向上させることができる。さらに、第3の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、準備工程S12で設ける保護シート52a及び保護シート52bの厚さを制御することで、繊維含有材料40に挿入される面外補強糸44の長さを制御することができる。
【0067】
第3の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、シート除去工程で、保護シート52a及び保護シート52bを除去する。そのため、第3の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、繊維含有材料40を使用する直前まで保護シート52a及び保護シート52bで保護された、繊維含有材料40の面外補強糸44が突き出している側の表面に、別の部材を接着することができる。
【0068】
なお、第3の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、第1の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法において、準備工程S12を上記のように変更し、準備工程S12の変更に伴って孔明け工程S14及び面外補強糸挿入工程S16を上記のように変更したものに限定されず、第2の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法において、準備工程S12を上記のように変更し、準備工程S12の変更に伴って孔明け工程S14及び面外補強糸挿入工程S16を上記のように変更したものでもよい。
【0069】
また、第3の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、準備工程S12で保護シート52a及び保護シート52bを配置し、保護シート52a及び保護シート52bの厚さを制御することで、平面に沿う方向と交差する方向の面外補強糸44の位置を制御しているが、これに限定されない。第3の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、第1の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法を変更した場合、孔明け部22におけるレーザLの照射面積及び照射強度を制御すること、及び繊維片射出部24における繊維片18の射出速度を制御することで、平面に沿う方向と交差する方向の面外補強糸44の位置を制御することができる。また、第3の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、第2の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法を変更した場合、切断工程における切断位置を制御することで、平面に沿う方向と交差する方向の面外補強糸44の位置を制御することができる。すなわち、第3の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、保護シート52a及び保護シート52bを配置する以外の方法で、準備工程S12を行って、平面に沿う方向と交差する方向の面外補強糸44の位置を制御してもよい。
【0070】
第3の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法について、以下に説明する。第3の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法は、第3の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法の処理を含む。そのため、第3の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法は、詳細には、第3の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法により、強化繊維12fを含む母材12の内部に面外補強糸44が形成された繊維含有材料40を製造することができる。したがって、第3の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法は、面内方向の強度を低下させることなく、面外方向の強度を向上させた繊維含有材料40を製造することができる。第3の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法における含浸工程及び硬化工程は、第1の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法における含浸工程及び硬化工程と同様である。
【0071】
[第4の実施形態]
図13は、本発明の第4の実施形態に係る繊維含有材料の一例である繊維含有材料70を示す概略断面図である。第4の実施形態に係る繊維含有材料70は、
図13に示すように、母材12と、面外補強糸74と、を含む。すなわち、第4の実施形態に係る繊維含有材料70は、第1の実施形態に係る繊維含有材料10において、面外補強糸14を面外補強糸74に変更したものである。第4の実施形態の説明では、第1の実施形態と同様の構成に第1の実施形態と同一の符号群を用い、その詳細な説明を省略する。
【0072】
面外補強糸74は、母材12の平面に沿う方向と交差する方向の厚さよりも長く、母材12から厚さの方向の一方の面側に突き出している点で、面外補強糸14と異なる。面外補強糸74は、長さ及び母材12から突き出している点を除くその他の点で、面外補強糸14と同様である。すなわち、面外補強糸74は、面外補強糸14と同様に、母材12から厚さの方向の他方の面側に突き出していない。繊維含有材料70は、面外補強糸74が上記構成を有するので、面外補強糸74が突き出している一方の面側に別の部材と接着する場合に、突き出した面外補強糸74により接着強度を向上させることができる。詳細には、繊維含有材料70は、第3の実施形態に係る繊維含有材料40における突き出した面外補強糸44と同様の理由で、突き出した面外補強糸74が、接着強度を向上させることができる。また、繊維含有材料70は、面外補強糸74が上記構成を有するので、面外補強糸74が突き出していない他方の面側については、繊維含有材料10と同様に、繊維含有材料70の面外補強糸74が突き出していない他方の面側の形状が変更されることなく、面外方向の強度が向上する。
【0073】
第1の実施形態に係る繊維含有材料10は、面外補強糸14が母材12の両面から突き出しておらず、第3の実施形態に係る繊維含有材料40では、面外補強糸44が母材12の両面から突き出しており、第4の実施形態に係る繊維含有材料70では、面外補強糸74が母材12の一方の面から突き出しており、かつ、他方の面から突き出していない。本発明は、これらに限定されることなく、面外補強糸が母材の平面に沿う方向と交差する方向の厚さよりも長い場合、母材から厚さの方向の少なくとも一方に突き出している形態を含む。この場合、面外補強糸が突き出している側に別の部材と接着する場合に、突き出した面外補強糸により接着強度を向上させることができる。
【0074】
第4の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法に含まれる第4の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法の処理について以下に説明する。第4の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、第1の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法において、準備工程S12を以下に説明するように変更し、準備工程S12の変更に伴って孔明け工程S14及び面外補強糸挿入工程S16を以下に説明するように変更したものである。
【0075】
図14は、第4の実施形態において、保護シート82aが配置された母材12であるシート積層体80の概略断面図である。第4の実施形態に係るシート積層体80は、
図14に示すように、母材12と、保護シート82aと、を含む。すなわち、第4の実施形態に係るシート積層体80は、第3の実施形態に係るシート積層体50において、保護シート52aを保護シート82aに変更し、保護シート52bを無くしたものである。保護シート82aは、厚さも含めて、第3の実施形態に係る保護シート52aと同様のものが例示される。
【0076】
第4の実施形態における準備工程S12は、母材12の一方の面、すなわち
図14における上側の面に保護シート82aを配置するという点で、第1の実施形態における準備工程S12と異なる。第4の実施形態における準備工程S12は、保護シート82aが配置される点を除くその他の点で、第1の実施形態における準備工程S12と同様である。第4の実施形態における準備工程S12は、母材12の一方の面に保護シート82aを設けることにより、シート積層体80を形成することで、強化繊維12fを含む母材12を準備する工程である。
【0077】
図15は、
図13の繊維含有材料70の前駆体の一例である繊維含有材料85を示す概略断面図である。第4の実施形態に係る繊維含有材料85は、
図15に示すように、母材12と、保護シート82aと、面外補強糸74と、を含む。面外補強糸74は、母材12と保護シート82aとの内部に、母材12と保護シート82aとを貫通して、平面に沿う方向と交差する方向である面外方向に沿って延びて形成されている。
【0078】
保護シート82aは、面外補強糸74が突き出している側の母材12の一方の面、すなわち
図15における上側の面に設けられている。面外補強糸74が突き出していない側の母材12の他方の面、すなわち
図15における下側の面には、保護シートは設けられていない。
【0079】
保護シート82aは、保護シート52a及び保護シート52bと同様のものが例示される。保護シート82aは、保護シート52a及び保護シート52bと同様に、材料を積層する枚数を制御することで、厚さを制御することができる。
【0080】
保護シート82aは、保護シート52a及び保護シート52bと同様に、繊維含有材料85において、母材12の表面が傷つくこと及び汚れが付着することを抑制することができる。また、保護シート82aは、保護シート52a及び保護シート52bと同様に、繊維含有材料85において、面外補強糸74の引張を抑制することができる。
【0081】
保護シート82aは、面外補強糸74が母材12の一方の面から突き出している長さと同じ厚さを有する。すなわち、面外補強糸74は、母材12と保護シート82aとの厚さの合計と同じ長さである。そのため、保護シート82aは、いずれも、面外補強糸74の引張をより抑制することができる。また、面外補強糸74は、保護シート82aの厚さを制御することで、長さを制御することができる。
【0082】
第3の実施形態に係る繊維含有材料55では、面外補強糸44が母材12から突き出している側である両面にそれぞれ保護シート52a及び保護シート52bが設けられており、第4の実施形態に係る繊維含有材料85では、面外補強糸74が母材12から突き出している一方の面に保護シート82aが設けられており、かつ、面外補強糸74が母材12から突き出していない他方の面に保護シートが設けられていない。本発明は、これらに限定されることなく、面外補強糸が母材の少なくとも一方の面から突き出している場合、面外補強糸が突き出している側の母材の表面に保護シートが設けられている形態を含む。この場合、保護シートは、繊維含有材料に含まれる面外補強糸の引張を抑制することができ、母材の表面が傷つくこと及び汚れが付着することを低減することができる。
【0083】
第4の実施形態における孔明け工程S14及び面外補強糸挿入工程S16は、孔明け工程S14及び面外補強糸挿入工程S16を施す対象が、母材12に代えてシート積層体80となる点で、第1の実施形態における孔明け工程S14及び面外補強糸挿入工程S16と異なる。詳細には、第4の実施形態における孔明け工程S14は、母材12と保護シート82aとに貫通した孔16と同様の孔を形成する。また、第4の実施形態における面外補強糸挿入工程S16は、第4の実施形態における孔明け工程S14で形成された孔に面外補強糸74を挿入する。
【0084】
第4の実施形態における孔明け工程S14及び面外補強糸挿入工程S16は、上記の異なる点を除くその他の点で、第1の実施形態における孔明け工程S14及び面外補強糸挿入工程S16と同様である。シート積層体80は、孔明け工程S14及び面外補強糸挿入工程S16が施されることで、繊維含有材料85となる。繊維含有材料85は、保護シート82aを除去するシート除去工程を経て、繊維含有材料70として使用される。
【0085】
第4の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、準備工程S12で、母材12の一方の面に保護シート82aを設け、面外補強糸挿入工程S16で、母材12と保護シート82aとの内部に、平面に沿う方向と交差する方向に面外補強糸74を挿入する。そのため、第4の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、母材12の平面に沿う方向と交差する方向の厚さよりも長く、母材12から厚さ方向に突き出した面外補強糸74を挿入することができる。したがって、第4の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、繊維含有材料70の面外補強糸74が突き出している側に別の部材と接着する場合に、突き出した面外補強糸74により接着強度を向上させることができる。さらに、第4の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、準備工程S12で設ける保護シート82aの厚さを制御することで、繊維含有材料70に挿入される面外補強糸74の長さを制御することができる。
【0086】
第4の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、シート除去工程で、保護シート82aを除去する。そのため、第4の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、繊維含有材料70を使用する直前まで保護シート82aで保護された、繊維含有材料70の面外補強糸74が突き出している側の表面に、別の部材を接着することができる。
【0087】
なお、第4の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、第1の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法において、準備工程S12を上記のように変更し、準備工程S12の変更に伴って孔明け工程S14及び面外補強糸挿入工程S16を上記のように変更したものに限定されず、第2の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法において、準備工程S12を上記のように変更し、準備工程S12の変更に伴って孔明け工程S14及び面外補強糸挿入工程S16を上記のように変更したものでもよい。
【0088】
また、第4の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、準備工程S12で保護シート82aを配置し、保護シート82aの厚さを制御することで、平面に沿う方向と交差する方向の面外補強糸74の位置を制御しているが、これに限定されない。第4の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、第1の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法を変更した場合、孔明け部22におけるレーザLの照射面積及び照射強度を制御すること、及び繊維片射出部24における繊維片18の射出速度を制御することで、平面に沿う方向と交差する方向の面外補強糸74の位置を制御することができる。また、第4の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、第2の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法を変更した場合、切断工程における切断位置を制御することで、平面に沿う方向と交差する方向の面外補強糸74の位置を制御することができる。すなわち、第4の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、保護シート82aを配置する以外の方法で、準備工程S12を行って、平面に沿う方向と交差する方向の面外補強糸74の位置を制御してもよい。
【0089】
第3の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、準備工程S12で、母材12の両面側において保護シート52a及び保護シート52bをそれぞれ設け、面外補強糸挿入工程S16で母材12と保護シート52a及び保護シート52bとの内部に、母材12の平面に沿う方向と交差する方向に面外補強糸44を挿入する。第4の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法は、準備工程S12で、母材12の一方の面側において保護シート82aを設け、面外補強糸挿入工程S16で母材12と保護シート82aとの内部に、母材12の平面に沿う方向と交差する方向に面外補強糸74を挿入する。本発明は、これらに限定されることなく、準備工程で、母材の少なくとも一方に保護シートを設け、面外補強糸挿入工程で母材と母材の少なくとも一方に設けられた保護シートとの内部に、母材の平面に沿う方向と交差する方向に面外補強糸を挿入する場合も含まれる。この場合、母材の平面に沿う方向と交差する方向の厚さよりも長く、母材から厚さの方向の少なくとも一方に突き出した面外補強糸を挿入することができるので、面外補強糸が突き出している側に別の部材と接着する場合に、突き出した面外補強糸により接着強度を向上させることができる。
【0090】
第4の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法について、以下に説明する。第4の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法は、第4の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法の処理を含む。そのため、第4の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法は、詳細には、第4の実施形態に係る面外補強糸の挿入方法により、強化繊維12fを含む母材12の内部に面外補強糸74が形成された繊維含有材料70を製造することができる。したがって、第4の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法は、面内方向の強度を低下させることなく、面外方向の強度を向上させた繊維含有材料70を製造することができる。第4の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法における含浸工程及び硬化工程は、第1の実施形態に係る繊維含有材料の製造方法における含浸工程及び硬化工程と同様である。