【文献】
日本家政学雑誌,2008年,Vol. 59, No. 12,pp. 999-1004 (55-60)
【文献】
堀江秀樹 等,茶主要成分の茶浸出液への溶出特性,茶研報,2001年,Vol. 91,pp. 29-33
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
原料緑茶抽出物と茶殻を接触させる工程における、茶殻の乾燥重量(A)と、原料緑茶抽出物中のガレート型カテキン類及び非ガレート型カテキン類の合計重量(B)との比率(A)/(B)が1〜100である、請求項1記載の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜12に記載の方法では、渋味低減のためにコラーゲン等の食品添加物等を使用する。しかしながら、このような緑茶に緑茶以外の食品添加物等を用いる方法では、渋味低減と同時に食品添加物等由来の香味を呈し、緑茶本来の香味を損なってしまう。また、原材料表示において食品添加物等を使用している旨を明記する必要があり、緑茶の健康イメージに相応しくない。特許文献1〜12では、緑茶抽出液中のガレート型カテキン類を低減させることについて検討されていない。
特許文献13に記載のタンナーゼ処理では、没食子酸含量が増加して酸味が強くなるという欠点がある。特許文献14に記載の活性炭処理では、渋味成分以外にも多様な成分を吸着し、緑茶としての風味が損なわれるという欠点がある。特許文献15に記載の方法は、合成樹脂であるポリビニルピロリドン(PVPP)を使用することから、より安全に緑茶抽出液の渋味を低減する改善の余地があった。
【0006】
本発明は、緑茶抽出物中のガレート型カテキン類を低減させる方法を提供することを目的とする。本発明はまた、ガレート型カテキン類を低減させることによって渋味が低減された飲みやすい緑茶飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、抹茶(おうす)において渋味が感じられにくい点に着目した。抹茶(おうす)のカテキン類を分析したところ、非ガレート型カテキン類は7割が茶抽出液に、3割が茶葉内に分布しているのに対して、ガレート型カテキン類は3割が茶抽出液に、7割が茶葉内に分布していることがわかった。この知見に基づき、抽出後の茶殻を茶抽出液に戻すことでガレート型カテキン類が茶殻に吸着される可能性を推察し、鋭意検討したところ、驚くことに、茶殻を緑茶抽出物と接触させることにより、緑茶抽出物中のガレート型カテキン類が確かに低減されることを見出し、本発明を完成させた。緑茶成分は茶葉から抽出されるものであるというのがこれまでの常識であり、茶殻が緑茶成分を吸着するという現象は到底予測できるものではない。
【0008】
本発明は、以下に限定されるものではないが、次の発明を包含する。
本発明の緑茶抽出物の製造方法は、原料緑茶抽出物と茶殻を接触させる工程を含むことを特徴とする。
原料緑茶抽出物と茶殻を接触させることにより、茶殻を接触させる前と比較して、緑茶抽出物中のガレート型カテキン類が低減される。このため渋味が低減された緑茶抽出物を得ることができる。ガレート型カテキン類が低減される理由としては、上述したように茶殻にガレート型カテキン類が吸着されるためと推測される。本発明の製造方法によれば、人体や環境への安全性が高い茶殻を用いて、簡便な操作で緑茶抽出物の渋味を低減させることができる。また本発明は、廃棄物である茶殻を有効利用することができるという利点も有する。
【0009】
本発明においては、後述するように、使用する茶殻を選択することにより、緑茶抽出物中の非ガレート型カテキン類を低減させることもできるが、非ガレート型カテキン類が低減される場合にも、ガレート型カテキン類の方をより低減することができる。
本発明の緑茶抽出物の製造方法は、ガレート型カテキン類が低減された緑茶抽出物の製造方法ともいえる。本発明により得られる緑茶抽出物は、茶殻処理緑茶抽出物ということもできる。なお、原料緑茶抽出物と茶殻を接触させても、緑茶抽出物中のカフェインはあまり低減されない。
【0010】
本発明の製造方法においては、茶殻が抽出率20%以上の茶殻であることが好ましい。また、茶殻のタンニン含量が、乾燥重量中に1〜10重量%であることが好ましい。
本発明における茶殻として、上記の茶殻が好ましい。このような茶殻を使用すると、緑茶抽出物中のガレート型カテキン類がより低減され、緑茶抽出物の渋味をより低減させることができる。
【0011】
本発明の製造方法においては、茶殻と接触させる原料緑茶抽出物の温度が0〜50℃であることが好ましい。原料緑茶抽出物の温度が0〜50℃であると、緑茶抽出物中のガレート型カテキン類をより低減させることができるため好ましい。
【0012】
本発明の製造方法においては、原料緑茶抽出物と茶殻を接触させる工程における、茶殻の乾燥重量(A)と、原料緑茶抽出物中のガレート型カテキン類及び非ガレート型カテキン類の合計重量(B)との比率(A)/(B)が1〜100であることが好ましい。
上記比率(A)/(B)が上記範囲であると、茶殻により緑茶抽出物中のガレート型カテキン類をより充分に低減させることができる。
【0013】
本発明の製造方法においては、原料緑茶抽出物と茶殻を接触させる工程の時間が1〜180分であることが好ましい。緑茶抽出物と茶殻を上記時間接触させると、緑茶抽出物中のガレート型カテキン類をより低減させることができる。
本発明の製造方法で使用される茶殻は、緑茶の茶殻であることが好ましい。緑茶の茶殻を使用すると、緑茶本来の香味を損なわずに渋味を低減させることができる。このため得られる緑茶抽出物の香味が良好となる。
本発明の製造方法は、緑茶抽出物から茶殻を除去する工程を含むことが好ましい。
【0014】
本発明の容器詰め緑茶飲料は、本発明の製造方法により製造される緑茶抽出物を含むことを特徴とする。
本発明の製造方法により製造される緑茶抽出物は、ガレート型カテキン類が低減されていることにより、渋味が少なく飲みやすいものである。
【0015】
本発明の緑茶抽出物中のガレート型カテキン類の低減方法は、原料緑茶抽出物に茶殻を接触させる工程を含むことを特徴とする。本発明の緑茶抽出物の渋味低減方法は、原料緑茶抽出物に茶殻を接触させる工程を含むことを特徴とする。
本発明の方法によれば、人体や環境に対して安全性が高い茶殻を用いて、簡便な操作で緑茶抽出物中のガレート型カテキン類量を低減することができる。また、緑茶抽出物の渋味を低減させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ガレート型カテキン類が低減され、渋味が低減された緑茶抽出物を製造することができる。また、簡便な操作で、安全に緑茶抽出物のガレート型カテキン類を低減させることができる。本発明の製造方法により得られる緑茶抽出物は、渋味が低減されて、飲みやすい緑茶飲料の原料として有用である。本発明によれば、ガレート型カテキン類が低減されたことにより、渋味が低減されて飲みやすい容器詰め緑茶飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書中、ガレート型カテキン類とは、(−)−エピガロカテキンガレート、(−)−ガロカテキンガレート、(−)−エピカテキンガレート及び(−)−カテキンガレートの4種のガレート型カテキンの総称である。ガレート型カテキン類の含量をいうときは、上記4種の合計量を指す。
非ガレート型カテキン類とは、(−)−エピガロカテキン、(−)−ガロカテキン、(−)−エピカテキン及び(+)−カテキンの4種の非ガレート型カテキンの総称である。非ガレート型カテキン類の含量をいうときは、上記4種の合計量を指す。
さらに、カテキン類とは、ガレート型カテキン類及び非ガレート型カテキン類の8種を併せての総称である。カテキン類の含量は、ガレート型カテキン類及び非ガレート型カテキン類の8種の合計量である。
ガレート型カテキン類及び非ガレート型カテキン類の含量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、実施例に記載の方法によって測定される。
【0019】
<緑茶抽出物の製造方法>
本発明の緑茶抽出物の製造方法は、原料緑茶抽出物と茶殻を接触させる工程を含むことを特徴とする。
本発明の製造方法では、原料緑茶抽出物と茶殻を接触させることにより、該緑茶抽出物中のガレート型カテキン類が低減される。このため、簡便な操作で渋味が低減された緑茶抽出物を得ることができる。また茶殻は人体や環境に対して安全性が高いため、飲食品の製造に好適に使用される。後述するようにポリビニルピロリドンもガレート型カテキン類を吸着するが、茶殻の使用は、合成樹脂を使用するよりも安全性に優れることから好ましい。さらに、廃棄物である茶殻の使用は、資源の有効利用にもつながるため好ましい。
【0020】
本発明の製造方法は、原料緑茶抽出物と茶殻を接触させる工程以外の工程を有していてもよい。例えば、茶殻と接触させる原料緑茶抽出物を調製する工程、茶殻を調製する工程、茶殻と接触させた緑茶抽出物から茶殻を除去する工程等の1又は2以上の工程を有していてもよい。
【0021】
(原料緑茶抽出物)
本発明において、原料緑茶抽出物とは、茶殻と接触させる緑茶抽出物をいう。
本発明で使用される原料緑茶抽出物としては、緑茶の茶葉の抽出物が挙げられる。例えば、緑茶の茶葉を水系溶媒で抽出することにより得られる緑茶抽出液をそのまま原料緑茶抽出物として使用することができる。抽出に使用される水系溶媒としては、水、アルコール水溶液(例えば、エタノール水溶液)等が挙げられ、好ましくは水である。抽出の際の温度は特に限定されず、適宜設定すればよい。また、緑茶抽出液を濃縮した濃縮物も原料緑茶抽出物として使用できる。緑茶抽出液の濃縮物とは、緑茶抽出液から溶媒の一部を除去し、カテキン類等の濃度を高めたものである。茶葉から抽出する代わりに、緑茶抽出液の濃縮物又は乾燥物を水に溶解又は希釈して原料緑茶抽出物として用いてもよい。さらに、茶葉からの抽出液と緑茶抽出液の濃縮物又は乾燥物とを併用してもよい。原料緑茶抽出物の形態としては、液体又はスラリー状が好ましく、より好ましくは液体である。
【0022】
原料緑茶抽出物の一例として、緑茶抽出液の調製方法の一例を以下に説明する。
緑茶の茶葉としては、ツバキ科に属するチャノキ(学名:Camellia sinensis)の葉を原料として、収穫後に速やかに酵素失活させた後に乾燥させる工程によって製造される荒茶、仕上茶等の製茶された茶葉が好適に使用される。緑茶の茶葉として、より好ましくは仕上茶を使用する。本発明に用いることのできる茶葉は緑茶であればその品種、産地、栽培方法、茶期などは特に限定されない。
【0023】
チャノキの品種としては、例えば、やぶきた、ゆたかみどり、おくみどり、さやまかおり、かなやみどり、さえみどり、あさつゆ等が挙げられる。産地としては、例えば、京都、奈良、滋賀、静岡、鹿児島、三重、熊本、福岡、宮崎、埼玉等が挙げられる。栽培方法としては露地、かぶせ、玉露等が挙げられる。茶期としては、例えば、一番茶、二番茶、三番茶、四番茶、冬春秋番茶、刈番等を挙げることができる。本発明で使用される緑茶の茶葉は、これらのいずれであってもよい。また、茶葉は1種用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。生葉の収穫(摘採)は、通常実施される態様でよく、摘採方法としては、手摘み、鋏摘み、機械摘みなどその方法には限定されず、いずれの方法でも良い。
【0024】
生葉を加工して荒茶が得られる。荒茶を得るための加工方法は特に限定されない。普通煎茶の荒茶加工工程は一般的に、蒸熱、粗揉、揉捻、中揉、精揉及び乾燥などの工程を含む。本発明においては、普通煎茶の他、深蒸し茶、釜炒り茶、玉緑茶、手揉み茶、かぶせ茶、玉露、碾茶等で行われるいずれの荒茶加工方法であってもよい。普通煎茶の製造方法から精揉を省略して中揉後に乾燥させても良い。また、碾茶に加工してもよい。すなわち、生葉を蒸した後、散茶機、碾茶炉、乾燥機を経て、碾茶の荒茶を得ることもできる。そして、碾茶の荒茶から抹茶を製造することができる。
【0025】
荒茶を加工して仕上茶が得られる。荒茶から仕上茶を得る仕上げ加工工程は一般的に、荒茶の篩い分け、大きい茶の切断、粉や木茎の分離、火入れ、合組などの工程からなるが、本発明においてはその仕上げ加工方法は特に限定されない。
緑茶の茶葉は、煎茶の他、深蒸し茶、釜炒り茶、玉緑茶、手揉み茶、かぶせ茶、玉露、碾茶等のいずれでもよい。好ましくは煎茶及び碾茶である。
【0026】
緑茶の茶葉を水系溶媒で抽出する際の抽出方法及び抽出条件は特に限定されず、公知の方法及び条件を採用することができる。例えば抽出温度は、5〜95℃が好ましい。水系溶媒は、例えば、緑茶の茶葉に対して重量で5〜200倍使用することが好ましい。緑茶抽出液の調製においては、抽出により得られる緑茶抽出液から抽出残渣である茶殻を取り除く工程を行うことが好ましい。本発明で使用される緑茶抽出液等の原料緑茶抽出物としては、茶殻が取り除かれた緑茶抽出物が好ましい。茶殻を取り除く方法は特に限定されず、濾過等の方法が挙げられる。
このようにして得られた緑茶抽出液は、そのままでも、濃縮等しても本発明における原料緑茶抽出物として使用できる。所望により、緑茶抽出液を冷却する工程、緑茶抽出液から細かな固形分を取り除く工程(例えば、濾過、遠心分離等)、緑茶抽出液に水や緑茶抽出物、酸化防止剤、pH調整剤等を添加する工程、緑茶抽出液を濃縮する工程、緑茶抽出液を殺菌する工程等の1又は2以上の工程を行ってもよい。ただし、これらの工程はあくまで一例であり、これに限定するものではなく、例えば、工程の順序も特に限定されない。また、さらに別工程を行ってもよい。
【0027】
原料緑茶抽出物のpHは、5〜7が好ましい。また、原料緑茶抽出物のBrixは、0.05〜2%が好ましい。Brixは濃度計(例えば、デジタル示唆濃度計、型式DD−7,ATAGO社製等)にて測定することができる。Brixは、20℃で測定した値を使用する。
【0028】
(茶殻)
本発明で使用される茶殻は、チャノキの葉や茎又はそれらを加工して得られたものを原料(茶殻原料)とし、この茶殻原料を水系溶媒で抽出した後の固形分(抽出残渣)を意味する。好ましくは、茶葉を水系溶媒で抽出した抽出残渣(茶葉抽出残渣)である。茶殻原料としては、緑茶、ほうじ茶、ウーロン茶の茶葉;茎茶が挙げられ、1種又は2種以上を使用することができ、好ましくは緑茶の茶葉である。緑茶の茶葉は特に限定されず、上述した緑茶の茶葉を使用することができ、好ましくは煎茶、碾茶の茶葉である。本発明の茶殻として、緑茶の茶葉を原料とする緑茶の茶殻が好ましい。緑茶の茶殻を使用すると、緑茶本来の香味を損なわずに緑茶抽出物の渋味を低減させることができる。
茶殻原料の形態は特に限定されず、リーフでもよく、ティーパックや粉末等であってもよい。
【0029】
茶殻を得るための茶殻原料の抽出回数は特に限定されず、水系溶媒による抽出を少なくとも1回行えばよく、抽出を複数回行ってもよい。水系溶媒としては、上述した水系溶媒が挙げられ、水が好ましい。抽出方法も特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、茶殻原料(例えば、緑茶の茶葉)と水系溶媒とを容器に入れて抽出し、次いで濾過、遠心分離等の方法により茶殻と抽出液とを分離し、茶殻を回収すればよい。
【0030】
茶殻を得るための抽出の際の水系溶媒の温度としては、例えば、5〜95℃が好ましく、50〜90℃がより好ましい。抽出時間は、1.5〜60分が好ましく、2〜30分がより好ましい。抽出を複数回行う場合は、抽出時間の合計が上記範囲となるようにすることが好ましい。茶殻原料の抽出に使用する水系溶媒の使用量は、重量で茶葉の5〜200倍が好ましく、20〜150倍がより好ましい。抽出を複数回行う場合は、抽出に使用した水系溶媒の1回あたりの量が上記範囲内であることが好ましい。
抽出後、茶抽出液から回収した茶殻は、そのまま本発明の製造方法で使用できる。所望により、茶殻を乾燥させて使用することもできる。茶殻を乾燥させる場合、茶殻の乾燥条件は特に限定されないが、圧搾した後40〜100℃で乾燥させることが好ましい。乾燥時間は、60〜300分が好ましい。
茶殻の水分量は、例えば、3〜6重量%が好ましい。水分量は、赤外線水分計により測定される。茶殻の形状は特に限定されず、所望により粉砕して使用してもよい。
【0031】
本発明における茶殻として、抽出率20%以上の茶殻が好ましい。抽出率が20%以上の茶殻を使用すると、緑茶抽出物中のガレート型カテキン類がより低減され、緑茶抽出物の渋味をより低減させることができる。
本発明における抽出率は、茶殻の調製において、抽出した茶殻原料(茶殻の調製に使用した茶殻原料)の重量、該茶殻原料を抽出して得た茶抽出液の重量及び該茶抽出液のBrixから、以下の方法で算出される値である。
抽出率(%)=(茶抽出液の重量(g))×(茶抽出液のBrix(%))/(抽出した茶殻原料の重量(g))
茶抽出液のBrixは濃度計にて測定することができる。Brixは、20℃で測定した値を使用する。
茶殻原料を複数回抽出して得られた茶殻の抽出率は、抽出1回ごとに抽出率を算出し、それらの抽出率の合計として求める。
【0032】
茶殻の抽出率は、ガレート型カテキン類の低減効果がより高くなることから、25%以上がより好ましく、30%以上がさらに好ましく、35%以上が特に好ましい。また、本発明における茶殻は、ガレート型カテキン類吸着の選択性の点からは、抽出率が50%以下のものが好ましく、より好ましくは45%以下である。
【0033】
また、例えば緑茶抽出物中のガレート型カテキン類をより低減させる場合には、抽出率が30〜50%の茶殻が好ましく、抽出率が32〜45%の茶殻がより好ましい。また、ガレート型カテキン類及び非ガレート型カテキン類を低減させる場合には、例えば、抽出率が37%を超えて45%以下の茶殻が好ましく、抽出率が38〜45%の茶殻がより好ましい。
緑茶抽出物中のガレート型カテキン類を選択的に低減させる場合には、抽出率が20〜37%の茶殻が好ましく、抽出率が30〜36%の茶殻がより好ましく、抽出率31〜36%がさらに好ましい。
【0034】
また、例えば抽出率が20%以上30%未満(抽出率は、より好ましくは21〜29%、さらに好ましくは22〜28%)の茶殻は、緑茶抽出物中のガレート型カテキン類を低減させ、かつ非ガレート型カテキン類を増加させることができるため好ましい。このような茶殻を使用すると、緑茶抽出物の渋味を低減させるとともに、非ガレート型カテキン類による爽快な香味を向上させることができる。
【0035】
本発明における茶殻として、そのタンニン含量が、乾燥重量中に1〜10重量%の茶殻が好ましい。本発明における茶殻のタンニン含量は、通常、実施例に記載の方法(酒石酸鉄比色定量法)で測定される。タンニン含量を酒石酸鉄比色定量法により測定できない場合には、フォーリンデニス法により測定してもよい。茶殻の乾燥重量は、茶殻の水分量を測定し、茶殻の重量から水分量を引くことによって求められる。水分量は、赤外線水分計により測定される。タンニン含量が乾燥重量中に1〜10重量%の茶殻を使用すると、緑茶抽出物中のガレート型カテキン類がより低減され、緑茶抽出物の渋味をより低減させることができる。
【0036】
茶殻のタンニン含量は、例えば緑茶抽出物中のガレート型カテキン類をより低減させる場合には、乾燥重量中2〜7重量%がより好ましい。また、ガレート型カテキン類及び非ガレート型カテキン類を低減させる場合には、茶殻のタンニン含量は、例えば、乾燥重量中2重量%以上4重量%未満が好ましく、2.5〜3.9重量%がより好ましい。
また、例えば緑茶抽出物中のガレート型カテキン類を選択的に低減させる場合には、茶殻のタンニン含量は乾燥重量中に4〜10重量%が好ましく、4〜7重量%がより好ましく、4〜6重量%がさらに好ましい。
【0037】
また、タンニン含量が乾燥重量中に7重量%を超えて10重量%以下(より好ましくは7.2〜9.5重量%)の茶殻は、緑茶抽出物中のガレート型カテキン類を低減させ、かつ非ガレート型カテキン類を増加させることができるため好ましい。このような茶殻を使用すると、緑茶抽出物の渋味を低減させるとともに、非ガレート型カテキン類による爽快な香味を向上させることができる。
【0038】
本発明における茶殻は、ガレート型カテキン類含量と非ガレート型カテキン類含量との重量比(以下、ガレート型/非ガレート型の重量比ともいう)が、1.6以上であることが好ましい。茶殻のガレート型/非ガレート型の重量比が1.6以上であると、緑茶抽出物中のガレート型カテキン類がより低減され、緑茶抽出物の渋味をより低減させることができる。茶殻のガレート型/非ガレート型の重量比は、1.65〜15がより好ましい。茶殻のガレート型カテキン類含量及び非ガレート型カテキン類含量は、実施例に記載の方法により測定される。
【0039】
また、例えば、緑茶抽出物中のガレート型カテキン類をより低減させる場合には、茶殻のガレート型/非ガレート型の重量比は3〜15が好ましく、3.2〜14がより好ましい。また、例えば緑茶抽出物中のガレート型カテキン類を選択的に低減させる場合には、茶殻のガレート型/非ガレート型の重量比は1.65〜5が好ましく、3〜5がより好ましい。
例えば、緑茶抽出物中のガレート型カテキン類を低減させ、かつ非ガレート型カテキン類を増加させる場合は、茶殻のガレート型/非ガレート型の重量比は1.65〜3が好ましく、1.65〜2.5がより好ましい。
【0040】
茶殻のカテキン類含量(ガレート型カテキン類及び非ガレート型カテキン類の合計含量)は、乾燥重量中に10重量%以下が好ましく、例えば、2〜10重量%がより好ましい。カテキン類含量が上記範囲の茶殻を使用すると、ガレート型カテキン類をより低減させることができ、緑茶抽出物の渋味をより低減させることができる。
【0041】
(原料緑茶抽出物に茶殻を接触させる工程)
原料緑茶抽出物と茶殻を接触させる方法は特に限定されず、例えば、容器中で原料緑茶抽出物に茶殻を浸漬させる方法、茶殻をカラム等に充填して原料緑茶抽出物を通液させる方法等が挙げられる。中でも、容器中で原料緑茶抽出物に茶殻を浸漬させる方法が好ましい。原料緑茶抽出物と茶殻を接触させる工程は、1回行えばよいが、2回以上行ってもよい。
【0042】
茶殻と接触させる原料緑茶抽出物の温度は、0〜50℃が好ましい。0〜50℃の温度の原料緑茶抽出物と茶殻を接触させると、より効率的にガレート型カテキン類を吸着でき、緑茶抽出物中のガレート型カテキン類を低減できるため好ましい。茶殻と接触させる原料緑茶抽出物の温度は、より好ましくは0〜40℃である。
【0043】
原料緑茶抽出物と茶殻を接触させる工程の時間は、1〜180分が好ましい。原料緑茶抽出物と茶殻を1〜180分接触させると、緑茶抽出物中のガレート型カテキン類を低減させることができる。安定製造、微生物リスク、エグ味の発生の観点から、原料緑茶抽出物と茶殻を接触させる工程の時間は、3〜150分がより好ましく、5〜150分がさらに好ましい。原料緑茶抽出物と茶殻を上記時間接触させると、緑茶抽出物中のガレート型カテキン類/非ガレート型カテキン類の濃度比を低減することができる。
【0044】
原料緑茶抽出物と茶殻を接触させる工程における、茶殻の乾燥重量(A)と、原料緑茶抽出物中のガレート型カテキン類及び非ガレート型カテキン類の合計重量(B)との比率(A)/(B)は、1〜100であることが好ましい。(A)/(B)の比率が上記範囲であると、緑茶抽出物中のガレート型カテキン類をより低減することができる。上記(A)/(B)の比率は、原料緑茶抽出物と茶殻を接触させる開始時点で上記範囲であればよい。(A)/(B)の比率は、より好ましくは1〜75であり、さらに好ましくは2〜50である。
【0045】
原料緑茶抽出物と茶殻を所定時間接触させた後、緑茶抽出物から茶殻を除去することが好ましい。本発明の製造方法は、緑茶抽出物から茶殻を除去する工程を含むことが好ましい。茶殻の除去方法は特に限定されず、濾過、遠心分離等の公知の方法を採用することができる。
【0046】
本発明の製造方法により製造される緑茶抽出物は、茶殻と接触させる前(原料緑茶抽出物)と比較してガレート型カテキン類が低減され、渋味が低減されている。
得られる緑茶抽出物には、所望によりL−アスコルビン酸又はその塩等の酸化防止剤、炭酸水素ナトリウム等のpH調整剤を添加してもよい。また、緑茶抽出物から溶媒の一部を除去して濃縮することもできる。濃縮方法は特に限定されず、常圧濃縮、減圧濃縮、膜濃縮等を挙げることができる。緑茶抽出物又はこれを濃縮した濃縮物を水等で希釈することにより、緑茶飲料とすることができる。さらに、緑茶抽出物を乾燥させて乾燥物(粉末)として用いることもできる。
【0047】
本発明の製造方法により得られる緑茶抽出物又はその濃縮物若しくは乾燥物は、緑茶飲料の原料として好適であるが、緑茶飲料以外の飲食品(例えば、アルコール飲料、加工食品)の原料としても好適に使用することができる。
本発明の製造方法により得られる緑茶抽出物も、本発明に包含される。
【0048】
(緑茶飲料)
本発明の製造方法により製造される緑茶抽出物を含む緑茶飲料(以下、本発明の緑茶飲料ともいう)も本発明に包含される。本発明の緑茶飲料の形態は特に限定されないが、容器詰めの緑茶飲料とすることが好ましい。
本発明の製造方法により製造される緑茶抽出物を含む容器詰め緑茶飲料も、本発明の1つである。
【0049】
緑茶飲料の製造方法は特に限定されず、本発明の製造方法により製造される緑茶抽出物をそのまま又は所望により水等で希釈して緑茶飲料とすることができる。また、本発明の製造方法により得られる緑茶抽出物と、別の緑茶抽出液とを混合して緑茶飲料を製造することもできる。さらに、本発明の製造方法により得られる緑茶抽出物の濃縮物又は乾燥物を水等で希釈することにより、本発明の緑茶飲料とすることもできる。なお、緑茶抽出物が、その製造に使用した茶殻を含む場合は、緑茶飲料から該茶殻を除去することが好ましい。
本発明の緑茶飲料は、上記製造方法により得られる緑茶抽出物を含むことにより、渋味が少なく飲みやすいものである。
【0050】
本発明の製造方法により得られる緑茶抽出物を含む緑茶飲料を得る際には、例えば、該緑茶抽出物を冷却する冷却工程、該抽出物から細かな固形分を取り除く濾過工程、該抽出物に水や緑茶抽出物、酸化防止剤(例えば、L−アスコルビン酸又はその塩)、pH調整剤(例えば、炭酸水素ナトリウム)などを加えて緑茶飲料調合液を得る調合工程、緑茶飲料調合液を殺菌する殺菌工程等の1又は2以上の工程を行ってもよい。ただし、これらの工程はあくまでも一例であり、これに限定するものではなく、例えば、工程の順序を入れ替えたり、さらに別工程を付加したりすることもできる。
【0051】
緑茶飲料には、酸化防止剤を配合することが好ましい。また、pH調整剤(例えば、炭酸水素ナトリウム)を配合することも好ましい。緑茶飲料中の酸化防止剤の配合量は特に限定されないが、例えば、L−アスコルビン酸又はその塩を使用する場合は、L−アスコルビン酸として0.01〜0.08重量%が好ましく、より好ましくは、0.02〜0.06重量%である。pH調整剤の配合量は、緑茶飲料のpHが5〜7程度になるように配合量を調整するのが好ましい。
緑茶飲料のBrixは、0.05〜2%が好ましい。
【0052】
容器詰め緑茶飲料は、緑茶飲料を用いて常法により製造することができる。容器詰め緑茶飲料とする場合、緑茶飲料を容器に充填する前又は充填後に殺菌すると、長期保存が可能となるため好ましい。殺菌の方法及び条件は、緑茶飲料の殺菌に通常使用される方法や条件を適宜選択すればよい。
【0053】
緑茶飲料を充填する容器としては特に限定されず、金属製容器、樹脂製容器、紙容器、ガラス製容器等の通常用いられる容器のいずれも用いることができる。具体例を挙げると、アルミ缶、スチール缶等の金属容器;PETボトル等の樹脂製容器;紙パック等の紙容器;ガラス瓶等のガラス容器等が挙げられる。
【0054】
(ガレート型カテキン類の低減方法及び緑茶抽出物の渋味の低減方法)
本発明は、原料緑茶抽出物と茶殻を接触させる工程を含む、緑茶抽出物中のガレート型カテキン類の低減方法も包含する。本発明は、原料緑茶抽出物と茶殻を接触させる工程を含む、緑茶抽出物の渋味の低減方法も包含する。
原料緑茶抽出物と茶殻を接触させる工程及びその好ましい態様等は、上述した緑茶抽出物の製造方法と同じである。原料緑茶抽出物及び茶殻についても、上述したものと同じである。本発明の緑茶抽出物中のガレート型カテキン類の低減方法及び緑茶抽出物の渋味の低減方法は、原料緑茶抽出物を調製する工程、茶殻を調製する工程、緑茶抽出物から茶殻を除去する工程等の1又は2以上の工程を有していてもよい。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0056】
<緑茶抽出液のBrixの測定方法>
Brixの測定には、デジタル示差濃度計(型式DD−7、ATAGO社製)を使用した。Brixは、20℃で測定した値を用いた。
【0057】
<水分量の測定方法>
茶殻及び茶葉の水分量の測定には、赤外線水分計(型式FD−800、kett社製)を使用した。
【0058】
<カテキン類、カフェイン及びタンニンの分析方法>
茶殻、茶葉及び緑茶抽出液に含まれるカテキン類及びカフェインの分析は、HPLC(高速液体クロマトグラフ)法により、以下の方法で行った。ガレート型カテキン類、非ガレート型カテキン類及びカフェインは、検量線法で測定した。
【0059】
1.分析用試料の調製
1.1 茶殻及び茶葉
茶殻及び茶葉に含まれるガレート型カテキン類、非ガレート型カテキン類及びカフェインは、10gの乾燥試料からエタノール100gで抽出したものを分析用試料とした。タンニンについては、10gの乾燥試料に熱水50〜60mLを加え、80℃以上恒温水槽中で30分加熱抽出したものを、100mLに定容し、分析用試料とした。
なお、乾燥試料は、後述する調製例で調製した乾燥茶葉及び乾燥茶殻である。
1.2 緑茶抽出液
緑茶抽出液を希釈することなくそのまま試料とした。
【0060】
2.ガレート型カテキン類、非ガレート型カテキン類及びカフェインのHPLC測定条件
分析には、高速液体クロマトグラフ分析装置(システムコントローラ(CBM−20A)、PDA検出器(SPD−M20Avp)、ポンプ(LC−30AD)、デガッサー(DGU−20A5R)、カラムオーブン(CTO−20AC)、オートサンプラー(SIL−30AC)、すべて(株)島津製作所製)を使用した。
【0061】
・カラム:TSK-gel ODS-80Ts QA (4.6mmI.D.×150nm)、東ソー社製
・カラム温度:40℃
・移動相:
A液:0.1%ギ酸水溶液
B液:0.1%ギ酸アセトニトリル溶液
・グラジエント条件(体積%)
0min B液5%、19min B液20%、20min B液63%、25min B液63%、26min B液5%、36min B液5%
・流量:1.0mL/min
・試料注入量:10μL
・測定波長:280nm
・標準物質:(−)−エピガロカテキンガレート、(−)−ガロカテキンガレート、(−)−エピカテキンガレート、(−)−カテキンガレート、(−)−エピガロカテキン、(−)−ガロカテキン、(−)−エピカテキン及び(+)−カテキン、カフェイン(いずれもナカライテスク社製)
ガレート型カテキン類の量は、(−)−エピガロカテキンガレート、(−)−ガロカテキンガレート、(−)−エピカテキンガレート及び(−)−カテキンガレートの合計とした。
非ガレート型カテキン類の量は、(−)−エピガロカテキン、(−)−ガロカテキン、(−)−エピカテキン及び(+)−カテキンの合計とした。
【0062】
3.タンニンの分析方法
タンニンの分析には、阿南ら 茶業研究報告 71(1990)43-74に記載の方法(酒石酸鉄比色定量法)を用いた。
分光光度計は、UV-1700((株)島津製作所製)を使用した。
(1)試薬
酒石酸鉄試薬:硫酸第一鉄(七水塩)100mgと酒石酸カリウム・ナトリウム500mgを水に溶かして100mLとした。
緩衝液:pH7.5のセーレンゼンの緩衝液:0.066Mリン酸水素二ナトリウム溶液と0.066Mリン酸二水素カリウム溶液を混合して、pH7.5に調整した。
標準溶液:100mL中に没食子酸エチルを5mg、10mg、15mg、20mg、25mg含む水溶液を調製した。
(2)操作
分析用試料5mLと酒石酸鉄試薬5mLを25mLのメスフラスコにとり、セーレンゼンのリン酸緩衝液で25mLに定容し、よく混合して発色させた。この発色液を対照液(分析用試料を水に置き換えて同様に処理したもの)に対して波長540nmの吸光度を測定した。
(3)計算
(2)の方法により、各標準溶液を5mLとり、発色させ吸光度を求めて検量線を作成した(検量線はその都度作成した)。この検量線を基に、測定した試料の吸光度から先ず没食子酸エチル相当量(Gmg/100mL)を求め、次の計算式でタンニン含量(重量%)を求めた。
タンニン(重量%)=G×1.5×100/W
W:100mL中の乾燥試料重量(mg)
【0063】
<比較調製例1>
乾燥茶葉を調製した。煎茶茶葉(日本茶販売株式会社製)50gに90℃のイオン交換水1500gを加え、ガラス棒で1分間撹拌して抽出した後、抽出液から茶葉を取り出した。取り出した茶葉を70℃にて180分間乾燥させ、乾燥茶葉を得た。この乾燥茶葉を、茶葉1とした。
【0064】
調製例1〜5の方法により、試験に使用する茶殻を調製した。
<調製例1>
煎茶茶葉(日本茶販売株式会社製社製)50gに90℃のイオン交換水1500gを加え、ガラス棒で2分間撹拌して抽出した後、抽出液から茶殻を取り出した。取り出した茶殻を70℃にて180分間乾燥させ、乾燥茶殻を得た。この茶殻を、茶殻1とした。
【0065】
<調製例2>
調製例1において、撹拌時間を5分間とした以外は、同じ方法で乾燥茶殻を得た。この乾燥茶殻を、茶殻2とした。
【0066】
<調製例3>
煎茶茶葉(日本茶販売株式会社製社製)50gに90℃のイオン交換水1500gを加え、ガラス棒で5分間撹拌して抽出した後、抽出液から茶殻を取り出した。取り出した茶殻に、再び90℃のイオン交換水1500gを加え、同様の操作を行った(計2回抽出)。取り出した茶殻を70℃にて180分間乾燥させ、乾燥茶殻を得た。この乾燥茶殻を、茶殻3とした。
【0067】
<調製例4>
煎茶茶葉(日本茶販売株式会社製)50gに90℃のイオン交換水1500gを加え、ガラス棒で5分間撹拌して抽出した後、茶殻を取り出した。取り出した茶殻に、再び90℃のイオン交換水1500gを加え、同様の操作を2回繰り返し、計3回抽出を行った。取り出した茶殻を70℃にて180分間乾燥させ、乾燥茶殻を得た。この乾燥茶殻を、茶殻4とした。
【0068】
<調製例5>
煎茶茶葉(日本茶販売株式会社製)50gに90℃のイオン交換水1500gを加え、ガラス棒で5分間撹拌して抽出した後、抽出液から茶殻を取り出した。取り出した茶殻に、再び90℃のイオン交換水1500gを加え、同様の操作を4回繰り返し、計5回抽出を行った。取り出した茶殻を70℃にて180分間乾燥させ、乾燥茶殻を得た。この乾燥茶殻を、茶殻5とした。
【0069】
比較調製例1及び調製例1〜5で調製した茶葉1及び茶殻1〜5の回収量(g)及び水分量を測定した。また、上記の方法でガレート型カテキン類、非ガレート型カテキン類、カフェイン及びタンニン含量を測定した。結果を表1に示す。表1中、元茶葉は、茶殻の調製に使用した煎茶茶葉である。各成分(ガレート型カテキン類、非ガレート型カテキン類、カフェイン及びタンニン)の量は、茶葉又は茶殻の乾燥重量に対する重量%で示した。茶殻の乾燥重量は、茶殻回収量から水分量を引くことによって求めた。茶葉の乾燥重量は、茶葉の重量から水分量を引くことによって求めた。
【0070】
【表1】
【0071】
比較調製例1及び調製例1〜5において、茶葉又は茶殻を取り出した抽出液のBrixを測定した。抽出を複数回行った調製例3〜5では、各抽出液のBrixをそれぞれ測定した。結果を表2に示す。また、茶葉又は茶殻の抽出率を表2に示す。
抽出率は、茶殻の調製において、抽出した茶殻原料(煎茶茶葉)の重量、該茶殻原料を抽出して得た茶抽出液の重量及び該茶抽出液のBrixから、以下の方法で算出した。
抽出率(%)=(茶抽出液の重量(g))×(茶抽出液のBrix(%))/(抽出した茶殻原料の重量(g))
【0072】
【表2】
【0073】
表2中、元茶葉は、茶殻の調製に使用した煎茶茶葉である。茶殻3−1は、茶殻3の調製において、抽出を1回行って得た乾燥茶殻である。茶殻4−1〜4−2は、茶殻4の調製において、抽出を1〜2回行って得た乾燥茶殻である。茶殻5−1〜5−4は、茶殻5の調製において、抽出を1〜4回行って得た乾燥茶殻である。
【0074】
<調製例6>
煎茶茶葉(日本茶販売株式会社製)10gに90℃に熱したイオン交換水1000gを加え、5分間温度を一定に保った後、500メッシュのふるいを通過させ、その抽出液を回収した。この液を室温まで冷却した後、清澄液を100mLずつ取り分け、試験用の緑茶抽出液(原料緑茶抽出液)とした。
【0075】
<実施例1>
試験用の緑茶抽出液に対し、茶殻1〜5をそれぞれ0.6重量%加え、30分後の緑茶抽出液の上澄みを採取し、抽出液1−1〜1−5(茶殻処理緑茶抽出液)とした。
なお、茶殻を添加した緑茶抽出液の温度は、25℃に保持した。
【0076】
<比較例1>
茶殻の代わりに、茶殻の調製に使用した茶葉(元茶葉)又は茶葉1を使用した以外は、実施例1と同様にして、比較抽出液1−1〜1−2(元茶葉処理緑茶抽出液及び茶葉処理緑茶抽出液)を得た。
実施例1及び比較例1で得られた各抽出液中について、HPLCにて各成分(ガレート型カテキン類、非ガレート型カテキン類及びカフェイン)を定量した。
【0077】
実施例1及び比較例1で得られた抽出液1−1〜1−5及び比較抽出液1−1〜1−2の各成分の分析結果を表3に示す。また、各成分の変化率(%)を表3に示す。
【0078】
各成分の変化率(%)は、茶殻又は茶葉を添加前の緑茶抽出液(試験用の緑茶抽出液)中の各成分の量(A0(ppm))に対する変化率(%)である。実施例及び比較例中、各成分の変化率(%)は、各抽出液中の各成分の量(A1(ppm))及び茶殻又は茶葉(又はPVPP)を添加前の緑茶抽出液(試験用の緑茶抽出液)中の各成分の量(A0(ppm))から、下記式により求めた。
変化率(%)=100×(A1−A0)/A0
表3中の添加前とは、茶殻又は茶葉を添加する前の緑茶抽出液(試験用の緑茶抽出液)である。
図1は、茶殻又は茶葉添加による緑茶抽出液中の各成分の変化率(%)を示すグラフである。
図1中の比較1−1〜1−2は、比較抽出液1−1〜1−2である。
【0079】
【表3】
【0080】
元茶葉を添加すると、カテキン類、カフェイン及びBirxがいずれも増加した。茶殻1〜5の添加により、緑茶抽出液中のガレート型カテキン類を低減させることができた(抽出液1−1〜1−5)。茶殻1〜3を添加すると、緑茶抽出液中のガレート型カテキン類が選択的に低減された。また、例えば茶殻1又は2を添加すると、緑茶抽出液中の非ガレート型カテキン類が増加した。茶殻3を添加すると、緑茶抽出液中のガレート型カテキン類を特に選択的に低減させることができた(抽出液1−3)。茶殻4〜5は、ガレート型カテキン類を低減させる効果が高かった。いずれの茶殻を使用した場合も、非ガレート型/ガレート型の変化率比が、0.5以下であり、非ガレート型カテキン類よりも、ガレート型カテキン類をより低減させた。茶殻の添加によるカフェイン量の変化は、ガレート型カテキン類と比較して小さかった。茶殻添加による緑茶抽出液のBrixの変化は小さかった。
【0081】
<実施例2>
試験用の緑茶抽出液に対し、茶殻5を0.075重量%、0.15重量%、0.3重量%、0.6重量%、1.2重量%、2.4重量%又は4.8重量%加え、30分後の緑茶抽出物の上澄みを採取し、茶殻処理緑茶抽出液とした。なお、茶殻を添加した緑茶抽出液の温度は、25℃に保持した。
各茶殻処理緑茶抽出液について、HPLCにて各成分(ガレート型カテキン類、非ガレート型カテキン類及びカフェイン)を定量した。結果を表4に示す。茶殻添加量が0は、茶殻添加前の緑茶抽出液(試験用の緑茶抽出液)である。
図2は、茶殻の添加量(重量%)に対する緑茶抽出液中の各成分の変化率(%)を示すグラフである。
【0082】
【表4】
【0083】
官能評価
訓練された3名のパネルによって、実施例2の各茶殻処理緑茶抽出液について、渋味及び濃度感を、茶殻未処理抽出液(試験用の緑茶抽出液)と比較して次の基準で官能評価した。
7点:大変強く感じられる
6点:強く感じられる
5点:やや強く感じられる
4点:同程度
3点:やや弱く感じられる
2点:弱く感じられる
1点:大変弱く感じられる
【0084】
図3は、茶殻の添加量(重量%)に対する緑茶抽出液の官能評価の結果を示すグラフである。
図3の結果は、3名のパネルによる評価の平均点で示している。
茶殻添加量の増加にしたがって、渋味も低減した。その低減度合は濃度感の変化度合よりも大きく、味の濃さを保ちつつも渋味が抑えられ、結果として爽快な香味が際立つ茶殻処理緑茶抽出液が得られた。
【0085】
<実施例3>
試験用の緑茶抽出液に対し、茶殻5を0.6重量%加え、添加から3.45分、7.30分、15分、30分、60分、120分、240分後の緑茶抽出液の上澄みを採取して、茶殻処理緑茶抽出液とした。なお、茶殻を添加した緑茶抽出液の温度は、25℃に保持した。
各茶殻処理緑茶抽出液について、HPLCにて各成分(ガレート型カテキン類、非ガレート型カテキン類及びカフェイン)を定量した。結果を表5に示す。茶殻添加量が0は、茶殻添加前の緑茶抽出液(試験用の緑茶抽出液)である。
図4は、茶殻の添加時間に対する緑茶抽出液中の各成分の変化率(%)を示すグラフである。
【0086】
【表5】
【0087】
<実施例4>
試験用の緑茶抽出液に対し、茶殻5を0.6重量%加え、30分後の緑茶抽出液の上澄みを採取し、抽出液4−1(茶殻処理緑茶抽出液)とした。
【0088】
<比較例2>
実施例4において、茶殻5の代わりにポリビニルポリピロリドン(PVPP)(商品名 ダイバガンF、BASF社製)を用いて試験を行った。
試験用の緑茶抽出液に対し、PVPPを0.03重量%、0.05重量%、0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%加え、30分後の緑茶抽出液の上澄みを採取し、比較抽出液2−1〜2−5とした。
【0089】
実施例4の抽出液4−1及び比較例2の比較抽出液2−1〜2−5について、HPLCにて各成分(ガレート型カテキン類、非ガレート型カテキン類及びカフェイン)を定量した。この結果を表6に示す。また、各成分の変化率(%)、及び、ガレート型カテキン類の変化率と非ガレート型カテキン類の変化率との比(非ガレート型カテキン類の変化率/ガレート型カテキン類の変化率)を表6に示す。
図5は、茶殻又はPVPP添加による各成分の変化率(%)を示すグラフである。
図5中の比較2−1〜2−5は、比較抽出液2−1〜2−5である。
【0090】
【表6】
【0091】
表6中、添加前は、茶殻又はPVPPを添加する前の緑茶抽出液(試験用の緑茶抽出液)である。
ガレート型カテキン類の変化率と非ガレート型カテキン類の変化率との比(非ガレート型カテキン類の変化率/ガレート型カテキン類の変化率)は、茶殻を添加した実施例4では0.38であるが、PVPPを添加した比較例2では、0.70〜0.80であった。PVPPを添加した比較例2では、茶殻を添加した実施例4と比較して、非ガレート型カテキン類がより低減された。