(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記標準制御棒、前記第1の高性能制御棒、前記グレイロッド及び前記第2の高性能制御棒は、それぞれ原子炉の内部において、水平面において、燃料集合体を配置する領域の中心を軸として、180度回転対称で配置されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の制御棒ユニット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、緊急停止時に挿入される第1の制御棒には、中性子吸収材として比重が軽い材料であるB
4Cが用いられている。そのため、第1の制御棒は、中性子吸収性能を大きくすることを優先した場合、B
4Cの量が多くなるので、第1の制御棒自体の質量が軽くなり、緊急停止時の挿入速度が十分に速くならない。この場合、第1の制御棒を用いた緊急停止に時間がかかるおそれがある。一方、緊急停止時の挿入速度を早くすることを優先した場合、B
4Cの量が少なくなるので、中性子吸収性能が十分に大きくならない。この場合、第1の制御棒を用いて適切に低温停止に移行することができない。
【0005】
また、近年では、高出力運転よりも、通常運転時、並びに、電力需要の日負荷変動に対応した、いわゆる負荷追従運転時における中性子吸収度と出力分布との調整が要求されている。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、負荷追従運転時における運用性能と、通常運転時及び緊急停止時における制御保護性能と、低温停止に移行する時における停止性能とがいずれも高い制御棒ユニット、原子炉、燃料位置決定システム及び燃料位置決定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の制御棒ユニットは、標準制御棒及び前記標準制御棒よりも中性子吸収性能が高い第1の高性能制御棒のうち少なくとも一方と、前記標準制御棒よりも中性子吸収性能が低いグレイロッドと、前記第1の高性能制御棒よりも中性子吸収性能が高い第2の高性能制御棒と、を含むことを特徴とする。
【0008】
制御棒ユニットは、グレイロッドの運用性能が高く、標準制御棒及び第1の高性能制御棒のうち少なくとも一方の制御保護性能が高く、第2の高性能制御棒の停止性能が高いので、負荷追従運転時における運用性能と、緊急停止時における制御保護性能と、低温停止に移行する時における停止性能とをいずれも高くすることができる。
【0009】
この構成において、前記標準制御棒及び前記第1の高性能制御棒は、合計本数が、全ての制御棒の合計本数の22%以上88%以下であり、前記グレイロッドは、合計本数が、全ての制御棒の合計本数の6%以上17%以下であり、前記第2の高性能制御棒は、合計本数が、全ての制御棒の合計本数の6%以上72%以下であることが好ましい。これにより、特に原子炉が蒸気管破断(SLB:Steam Line Break)となった時に未臨界状態を維持する性能が向上する。
【0010】
あるいは、この構成において、前記標準制御棒及び前記第1の高性能制御棒は、合計本数が、全ての制御棒の合計本数の22%以上55%以下であり、前記グレイロッドは、合計本数が、全ての制御棒の合計本数の6%以上11%以下であり、前記第2の高性能制御棒は、合計本数が、全ての制御棒の合計本数の39%以上72%以下であることが好ましい。これにより、特に原子炉が全交流電源喪失(SBO:Station Black Out)となった時に未臨界状態を維持する性能が向上する。
【0011】
あるいは、この構成において、前記標準制御棒及び前記第1の高性能制御棒は、合計本数が、全ての制御棒の合計本数の11%であり、前記グレイロッドは、合計本数が、全ての制御棒の合計本数の6%であり、前記第2の高性能制御棒は、合計本数が、全ての制御棒の合計本数の83%であることが好ましい。これにより、特に原子炉が低温停止状態へ移行する性能が向上する。
【0012】
これらの構成において、前記第2の高性能制御棒は、新燃料の周囲に配置され、前記グレイロッドは、原子炉のうち、中央と外周との中間に配置され、前記標準制御棒及び前記第1の高性能制御棒は、前記原子炉における前記グレイロッドよりも外周側の領域及び前記グレイロッドよりも中央側の領域に分散して配置されることが好ましい。これにより、制御棒ユニット全体の各性能が向上する。
【0013】
これらの構成において、前記標準制御棒、前記第1の高性能制御棒、前記グレイロッド及び前記第2の高性能制御棒は、それぞれ原子炉の内部において、水平面において、燃料を配置する領域の中心を軸として、180度回転対称で配置されることが好ましい。これにより、制御棒ユニット全体の各性能のバランスが向上する。
【0014】
本発明の原子炉は、上記のいずれかの制御棒ユニットと、新燃料と、使用済み燃料と、を含む燃料集合体と、を有し、前記新燃料は、前記第2の高性能制御棒に隣接して配置されることを特徴とする。また、本発明の燃料位置決定システムは、上記のいずれかの制御棒ユニットを含む原子炉の燃料集合体の位置を決定する燃料位置決定システムであって、前記第2の高性能制御棒の周囲に新燃料を配置することを特徴とする。また、本発明の燃料位置決定方法は、上記のいずれかの制御棒ユニットを含む原子炉の燃料集合体の位置を決定する燃料位置決定方法であって、前記第2の高性能制御棒の周囲に新燃料を配置することを特徴とする。
【0015】
これらの構成によれば、中性子が最もたくさん放出される新燃料の周囲に第2の高性能制御棒がある状態となるため、第2の高性能制御棒を効率よく機能させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、負荷追従運転時における運用性能と、通常運転時及び緊急停止時における制御保護性能と、低温停止に移行する時における停止性能とがいずれも高い制御棒ユニット、原子炉、燃料位置決定システム及び燃料位置決定方法を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施形態に係る制御棒ユニット、原子炉、燃料位置決定システム及び燃料位置決定方法を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施の形態の説明は、本発明を限定するものではなく、適宜変更して実施可能である。
【0019】
[実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係る制御棒ユニットが用いられている原子力発電プラントの一例の概略構成図である。
【0020】
本実施形態の原子炉は、加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)である。本実施形態の原子炉は、軽水を原子炉冷却材及び中性子減速材として使用する。本実施形態の原子炉は、軽水を炉心全体にわたって沸騰しない高温高圧水とし、この高温高圧水を蒸気発生器に送って熱交換により蒸気を発生させ、この蒸気をタービン発電機へ送って発電する。
【0021】
本実施形態の加圧水型原子炉を有する原子力発電プラントは、
図1に示すように、原子炉格納容器11と、加圧水型原子炉12と、蒸気発生器13とを有する。原子炉格納容器11は、内部に加圧水型原子炉12及び蒸気発生器13が格納されている。加圧水型原子炉12と蒸気発生器13とは、高温側送給配管14と低温側送給配管15とを介してそれぞれ連結されている。高温側送給配管14は、加圧器16が設けられており、低温側送給配管15は、一次冷却水ポンプ17が設けられている。この原子力発電プラントは、減速材及び一次冷却水(冷却材)として軽水を用い、炉心部における一次冷却水の沸騰を抑制するために、一次冷却系統は加圧器16により150〜160気圧程度の高圧状態を維持するように制御している。
【0022】
この原子力発電プラントは、原子燃料(燃料)としてウラン、ガドリニア入りウラン、またはウラン・プルトニウム混合酸化物燃料(MOX:Mixed Oxide Fuel)が用いられている。加圧水型原子炉12は、原子燃料により一次冷却水として用いられている軽水を加熱する。加圧器16は、加圧水型原子炉12により加熱された軽水、すなわち高温の一次冷却水を、所定の高圧に維持する。加圧器16により所定の高圧に維持された高温高圧の一次冷却水は、高温側送給配管14を通って、蒸気発生器13に送られる。蒸気発生器13では、高温側送給配管14から送られた高温高圧の一次冷却水は、二次冷却水との間で熱交換が行われる。蒸気発生器13で二次冷却水によって冷やされた一次冷却水は、低温側送給配管15を通って加圧水型原子炉12に戻される。
【0023】
蒸気発生器13は、一次冷却水によって加熱された二次冷却水、つまり、蒸気を送給する配管21を介して蒸気タービン22と連結されている。配管21は、主蒸気隔離弁23が設けられている。蒸気タービン22は、高圧タービン24と低圧タービン25を有すると共に、発電機(発電装置)26が接続されている。高圧タービン24は、配管21が連結されている。高圧タービン24と低圧タービン25は、その間に湿分分離加熱器27が設けられている。湿分分離加熱器27は、配管21から分岐した冷却水分岐配管28が連結されている。高圧タービン24と湿分分離加熱器27とは、低温再熱管29により連結されている。湿分分離加熱器27と低圧タービン25とは、高温再熱管30により連結されている。
【0024】
蒸気タービン22の低圧タービン25は、復水器31を有する。復水器31は、配管21から分岐した、バイパス弁32を有するタービンバイパス配管33が接続されると共に、冷却水(例えば、海水)を供給する取水管34及び冷却水(例えば、海水)を排出する排水管35が連結されている。取水管34は、循環水ポンプ36を有し、排水管35と共に他端部が海中に配置されている。
【0025】
復水器31は、配管37が接続されている。配管37は、復水ポンプ38、グランドコンデンサ39、復水脱塩装置40、復水ブースタポンプ41、低圧給水加熱器42、脱気器43、主給水ポンプ44、高圧給水加熱器45及び主給水制御弁46がこの順番に設けられている。配管37は、他端部が蒸気発生器13に接続されている。
【0026】
蒸気発生器13で、高温高圧の一次冷却水と熱交換を行って生成された蒸気は、配管21を通って蒸気タービン22、すなわち高圧タービン24から低圧タービン25に送られる。蒸気タービン22に送られた蒸気は、蒸気タービン22を駆動して、発電機26により発電を行う。具体的には、蒸気発生器13からの蒸気は、高圧タービン24を駆動した後、湿分分離加熱器27で蒸気に含まれる湿分が除去されると共に加熱されてから低圧タービン25を駆動する。そして、蒸気タービン22を駆動した蒸気は、復水器31で海水を用いて冷却されて復水となり、グランドコンデンサ39、復水脱塩装置40、低圧給水加熱器42、脱気器43及び高圧給水加熱器45等を通って蒸気発生器13に戻される。
【0027】
図2は、
図1の原子力発電プラントに含まれる加圧水型原子炉12を表す縦断面図である。
図2に示すように、加圧水型原子炉12において、原子炉容器51は、その内部に炉内構造物が挿入できるように、原子炉容器本体52とその上部に装着される原子炉容器蓋(上鏡)53により構成されており、この原子炉容器本体52に対して原子炉容器蓋53が複数のスタッドボルト54及びナット55により開閉可能に固定されている。
【0028】
原子炉容器本体52は、原子炉容器蓋53を取り外すことで上部が開口可能であり、下部が半球形状をなす下鏡56により閉塞された円筒形状をなしている。原子炉容器本体52は、上部に一次冷却水としての軽水(冷却材)を供給する入口ノズル(入口管台)57と、軽水を排出する出口ノズル(出口管台)58が形成されている。入口ノズル(入口管台)57は、高温側送給配管14が連結されている。出口ノズル(出口管台)58は、低温側送給配管15が連結されている。
【0029】
原子炉容器本体52は、内部に炉心槽61が配置されており、上部が原子炉容器本体52の内壁面に支持されている。また、原子炉容器本体52は、内部に上部炉心支持板62が配置されており、上部炉心支持板62は、上部が炉心槽61の上部に支持されている。上部炉心支持板62は、複数の炉心支持ロッド63により上部炉心板64が吊下げ支持されている。
【0030】
炉心槽61は、下方に下部炉心支持板65が支持され、下部炉心支持板65は、外周部が位置決め部材66により原子炉容器本体52の内壁面に位置決め支持されている。炉心槽61は、下部に下部炉心板67が支持されている。炉心68は、炉心槽61における上部炉心板64と下部炉心板67により区画された領域に多数の燃料集合体69が配置されて構成されている。炉心68は、内部に多数の制御棒70が配置されており、この制御棒70は、複数がまとめられて制御棒クラスタ71を構成し、燃料集合体69に挿入可能となっている。上部炉心支持板62は、上部炉心支持板62を貫通して上下に延出する多数の制御棒クラスタ案内管72が固定されている。各制御棒クラスタ案内管72は、下端部が上部炉心板64に連結され、内部に制御棒クラスタ71が挿通可能となっている。
【0031】
原子炉容器蓋53は、上部が半球形状をなし、上部に磁気式ジャッキの制御棒駆動装置73が配置されている。複数の制御棒クラスタ案内管72は、上端部が原子炉容器蓋53の管台を通してその上方まで延出され、制御棒駆動装置73から下方に延出された制御棒クラスタ駆動軸74が、制御棒クラスタ案内管72内に挿通されている。制御棒クラスタ駆動軸74は、制御棒駆動装置73により上下方向に移動可能であり、制御棒クラスタ案内管72内を通って炉心68まで延出され、制御棒クラスタ71に連結されている。制御棒駆動装置73は、制御棒クラスタ71の各制御棒70を炉心68に対して抜き差しすることで、原子炉出力を制御する。
【0032】
原子炉容器本体52は、下鏡56を貫通する多数の計装管台75が設けられ、この各計装管台75は、炉内側の上端部に炉内計装案内管76が連結される一方、炉外側の下端部にコンジットチューブ77が連結されており、各炉内計装案内管76に複数の連接板78が取付けられている。シンブルチューブ79は、コンジットチューブ77内から計装管台75及び炉内計装案内管76内を通し、下部炉心支持板65及び下部炉心板67を貫通して炉心68(燃料集合体69)まで挿通されている。
【0033】
原子炉容器51は、炉心68の上方に上部プレナム80が設けられ、下方に下部プレナム81が設けられ、その間にダウンカマー部82が形成されている。
【0034】
図3は、本発明の実施形態に係る制御棒ユニットの一例である制御棒ユニット90を示す概略図である。
図3は、
図2の炉心68内の燃料集合体69及び制御棒クラスタ71の配置の一例を炉心68の上側から見たものである。制御棒ユニット90は、各制御棒クラスタ71を含む。燃料集合体69は、複数の新燃料91と複数の使用済み燃料92と、を含む。各制御棒クラスタ71は、標準制御棒94による制御棒クラスタ(以下、単に標準制御棒94と称する)または第1の高性能制御棒95による制御棒クラスタ(以下、単に第1の高性能制御棒95と称する)と、グレイロッド96による制御棒クラスタ(以下、単にグレイロッド96と称する)と、第2の高性能制御棒97による制御棒クラスタ(以下、単に第2の高性能制御棒97と称する)と、のいずれかである。すなわち、制御棒ユニット90は、標準制御棒94及び第1の高性能制御棒95のうち少なくとも一方と、グレイロッド96と、第2の高性能制御棒97と、を含む。
【0035】
炉心68の内部の領域は、
図3に示すように、横方向の座標を
図3における右から左へAからRに分けて、縦方向の座標を
図3における上から下へ1から15に分けた格子状に区画されて、管理されている。炉心68の内部の領域の各格子状の区画には、燃料集合体69として、新燃料91と使用済み燃料92とのうちいずれかが配置されている。また、炉心68の内部の各格子状の区画の一部には、各制御棒クラスタ71として、標準制御棒94または第1の高性能制御棒95と、グレイロッド96と、第2の高性能制御棒97と、のいずれかが配置されている。なお、
図3では、標準制御棒94または第1の高性能制御棒95と、グレイロッド96と、第2の高性能制御棒97と、の位置が簡易的に示されている。
【0036】
新燃料91は、燃料集合体69のうち、原子炉に配置する前に燃料として1度も核分裂に使用されていないものである。一方、使用済み燃料92は、燃料集合体69のうち、少なくとも1度は燃料として核分裂に使用したものである。そのため、新燃料91は、使用済み燃料92と比較して、より多い量の中性子を放出し、核分裂反応を引き起こす。使用済み燃料92は、新燃料91と比較して、少ない量の中性子を放出する。加圧水型原子炉12では、炉心68内に複数の新燃料91と複数の使用済み燃料92とが混ぜて挿入され、用いられる。
【0037】
標準制御棒94は、中性子吸収材料として、例えば、銀、インジウム及びカドミウムを含む合金(AIC:Ag-In-Cd)が用いられている。AICは、中性子吸収材料として、標準的な中性子吸収性能を有する。標準制御棒94は、標準制御棒94、第1の高性能制御棒95、グレイロッド96及び第2の高性能制御棒97の中で最も標準的な制御棒である。標準制御棒94は、標準の中性子吸収性能を有する。すなわち、標準制御棒94は、中性子吸収性能が、グレイロッド96より高く、第1の高性能制御棒95より少し低く、第2の高性能制御棒97より低く、全体として中程度であり、長手方向に一様である。
【0038】
標準制御棒94は、上記のような構成を有するため、炉心68内での核分裂の反応度の安定した調整が可能なので、加圧水型原子炉12の通常運転時に加圧水型原子炉12の出力を好適に制御することができる。また、標準制御棒94は、第2の高性能制御棒97と比較して質量が高いので、第2の高性能制御棒97よりも炉心68内での落下特性が良いため、緊急に加圧水型原子炉12を停止する時、すなわち原子トリップ時に、加圧水型原子炉12が核沸騰限界(DNB:Departure of Nuclear Boiling)を超えないように好適に保護することができる。ここで、加圧水型原子炉12の通常運転時に出力を制御する機能と、原子トリップ時にDNBを超えないように保護する機能と、を合わせて制御保護性能と称する。標準制御棒94は、高い制御保護性能を有する。
【0039】
第1の高性能制御棒95は、中性子吸収材料として、例えば、AICの上部の30%以上60%未満の範囲内がB
4C(炭化ホウ素)に置換された構成のものが用いられている。B
4Cは、AICよりも中性子吸収性能が高く、AICよりも軽い材料である。そのため、第1の高性能制御棒95は、標準制御棒94よりも中性子吸収機能が高い。すなわち、第1の高性能制御棒95は、中性子吸収性能が、標準制御棒94より少し高く、グレイロッド96より高く、第2の高性能制御棒97より少し低く、全体として中程度である。また、第1の高性能制御棒95は、B
4Cの置換が30%以上60%未満の範囲内であるため、標準制御棒94よりも軽いものの、炉心68内での落下特性が大きく落ちない。そのため、第1の高性能制御棒95は、標準制御棒94と同様に、高い制御保護性能を有する。
【0040】
グレイロッド96は、中性子吸収材料として、例えば、AICの1/3以上1/2以下の範囲内がステンレスに置換された構成のものが用いられている。ステンレスは、AICよりも中性子吸収性能が低い。そのため、グレイロッド96は、標準制御棒94よりも中性子吸収機能が低い。すなわち、グレイロッド96は、中性子吸収性能が、標準制御棒94、第1の高性能制御棒95、第2の高性能制御棒97のいずれよりも低い。また、グレイロッド96は、中性子吸収性能が径方向に分布を有する、いわゆるハイブリッド型の制御棒である。そのため、グレイロッド96は、反応度の緻密な調整が可能なので、高い運用性能を有する。
【0041】
グレイロッド96は、加圧水型原子炉12の出力を急減させることができる。また、グレイロッド96は、電力需要の日負荷変動に応じた運転である負荷追従運転(LF:Load Follow)時の軸方向出力分布(AO:Axial Offset)への影響を抑制しつつ出力を制御することができる。ここで、加圧水型原子炉12の出力を急減させる機能と、LF時の出力調整機能と、を合わせて運用性能と称する。グレイロッド96は、運用性能を有する。
【0042】
第2の高性能制御棒97は、中性子吸収材料として、例えば、AICの上部の60%以上の範囲内がB
4C(炭化ホウ素)に置換された構成のものが用いられている。そのため、第2の高性能制御棒97は、第1の高性能制御棒95よりもさらに中性子吸収性能が高められたものである。すなわち、第2の高性能制御棒97は、中性子吸収性能が、標準制御棒94、第1の高性能制御棒95、グレイロッド96のいずれよりも高い。そのため、第2の高性能制御棒97は、反応度を急激に低減する調整をすることが可能なので、高い停止機能を有する。第2の高性能制御棒97は、高い中性子吸収性能を有するので、反応度を急激に低減することで、SLB時に加圧水型原子炉12を好適に未臨界状態に維持する場合、SBO時に加圧水型原子炉12を好適に未臨界状態に維持する場合、及び加圧水型原子炉12を低温停止状態へ移行する場合にそれぞれ要求される所望の温度まで、炉心68内の温度を低下させることができる。
【0043】
第2の高性能制御棒97は、中性子吸収性能が高く、蒸気管破断(SLB:Steam Line Break)時又は全交流電源喪失(SBO:Station Black Out)時に加圧水型原子炉12を未臨界状態に維持することができる。第2の高性能制御棒97は、ホウ酸の使用量を低減して、あるいはホウ酸を全く使用することなく制御棒のみで、加圧水型原子炉12を低温停止状態へ移行することができる。ここで、SLB時又はSBO時に加圧水型原子炉12を未臨界状態に維持する機能と、ホウ酸の使用量を低減して、あるいはホウ酸を全く使用することなく制御棒のみで、加圧水型原子炉12を低温停止状態へ移行する機能と、を合わせて停止性能と称する。第2の高性能制御棒97は、停止性能を有する。
【0044】
SLB時に加圧水型原子炉12を好適に未臨界状態に維持する場合、炉心68内の温度は、200℃強まで低下させられる。SBO時に加圧水型原子炉12を好適に未臨界状態に維持する場合、炉心68内の温度は、170℃前後まで低下させられる。加圧水型原子炉12を低温停止状態へ移行する場合、炉心68内の温度は、100℃未満または90℃前後まで低下させられる。
【0045】
第2の高性能制御棒97は、中性子吸収性能が、B
4Cの置換のされ方に応じて長手方向に分布を有する、いわゆるハイブリッド型の制御棒である。第2の高性能制御棒97は、AICとB
4Cとをゼブラ型に配置することで、停止性能を向上させることができる。
【0046】
このように、本発明の実施形態に係る制御棒ユニット90は、運用性能を担うグレイロッド96と、制御保護性能を担う標準制御棒94及び第1の高性能制御棒95のうち少なくとも一方と、停止性能を担う第2の高性能制御棒97とを含むので、負荷追従運転時における運用性能と、緊急停止時における制御保護性能と、低温停止に移行する時における停止性能とをいずれも高くすることができる。
【0047】
制御棒ユニット90は、標準制御棒94及び第1の高性能制御棒95の合計本数が、全ての制御棒クラスタ71の合計本数の22%以上88%以下であり、グレイロッド96の合計本数が、全ての制御棒クラスタ71の合計本数の6%以上17%以下であり、第2の高性能制御棒97の合計本数が、全ての制御棒クラスタ71の合計本数の6%以上72%以下であることが好ましい。これにより、特に加圧水型原子炉12がSLB時に未臨界状態を維持する性能が向上する。
【0048】
あるいは、制御棒ユニット90は、標準制御棒94及び第1の高性能制御棒95の合計本数が、全ての制御棒クラスタ71の合計本数の22%以上55%以下であり、グレイロッド96の合計本数が、全ての制御棒クラスタ71の合計本数の6%以上11%以下であり、第2の高性能制御棒97の合計本数が、全ての制御棒クラスタ71の合計本数の39%以上72%以下であることが好ましい。これにより、特に加圧水型原子炉12がSBO時に未臨界状態を維持する性能が向上する。
【0049】
あるいは、制御棒ユニット90は、標準制御棒94及び第1の高性能制御棒95の合計本数が、全ての制御棒クラスタ71の合計本数の11%であり、グレイロッド96の合計本数が、全ての制御棒クラスタ71の合計本数の6%であり、第2の高性能制御棒97の合計本数が制御棒クラスタ71の合計本数の83%であることが好ましい。これにより、特に加圧水型原子炉12が低温停止状態へ移行する性能が向上する。さらに、制御棒ユニット90は、この場合、ホウ酸の使用量を大幅に低減して、あるいはホウ酸を全く使用することなく制御棒のみで、加圧水型原子炉12を低温停止状態へ移行することができるので、廃棄物量を低減することができる、すなわち環境への負荷を低減することができる。
【0050】
図3に示す制御棒ユニット90の例は、ホウ酸の使用量を大幅に低減して、あるいはホウ酸を全く使用することなく制御棒のみで、加圧水型原子炉12を低温停止状態へ移行する場合に最適な構成である。具体的には、
図3に示す制御棒ユニット90の例は、制御棒クラスタ71の合計本数が72体であり、標準制御棒94及び第1の高性能制御棒95の合計本数が8体であり、全ての制御棒クラスタ71の合計本数の11%であり、グレイロッド96の合計本数が4体であり、全ての制御棒クラスタ71の合計本数の6%であり、第2の高性能制御棒97の合計本数が60体であり、全ての制御棒クラスタ71の合計本数の83%である。
【0051】
第2の高性能制御棒97は、中性子吸収性能が最も高いので、より多い量の中性子を放出し、核分裂反応を引き起こす新燃料91の周囲に配置されることが好ましい。また、第2の高性能制御棒97は、新燃料91に近接して配置されることが好ましく、新燃料91の直上に配置されることが好ましい。これにより、第2の高性能制御棒97の高い中性子吸収性能が効率よく活用されるため、制御棒ユニット90において第2の高性能制御棒97が担う停止性能が向上する。
図3に示す制御棒ユニット90の例は、60体の第2の高性能制御棒97が、全て、新燃料91に近接して配置されているか、または、新燃料91の直上に配置されているため、第2の高性能制御棒97が担う停止性能が好適に引き出されている。
【0052】
グレイロッド96は、炉心68内のうち、程よく中間に配置されることが好ましい。具体的には、グレイロッド96は、炉心68内のうち、中央と外周との中間付近に配置されることが好ましい。また、グレイロッド96は、炉心68内において、1/4の対称位置または1/8の対称位置に配置することがより好ましい。ここで、1/4の対称位置は、概ね水平面において90度回転対称となる4つの対象位置であり、1/8の対称位置は、概ね水平面において45度回転対称となる8つの対象位置である。これにより、グレイロッド96の反応度の緻密な調整機能が効率よく活用されるため、制御棒ユニット90においてグレイロッド96が担う運用性能が向上する。
図3に示す制御棒ユニット90の例は、4体のグレイロッド96が、全て、炉心68内のうち、中央と外周との中間付近の1/4の対称位置に配置されているため、グレイロッド96が担う運用性能が好適に引き出されている。
【0053】
標準制御棒94及び第1の高性能制御棒95は、炉心68内におけるグレイロッド96よりも外周側の領域と、グレイロッド96よりも中央側の領域とに分散して配置されることが好ましい。これにより、制御棒ユニット90において標準制御棒94及び第1の高性能制御棒95が担う制御保護性能が向上する。
図3に示す制御棒ユニット90の例は、標準制御棒94及び第1の高性能制御棒95のうち、4体が、炉心68内におけるグレイロッド96よりも外周側の領域に配置され、残りの4体が、炉心68内におけるグレイロッド96よりも中央側の領域に配置されている。そのため、
図3に示す制御棒ユニット90の例は、標準制御棒94及び第1の高性能制御棒95が担う制御保護性能が好適に引き出されている。
【0054】
標準制御棒94及び第1の高性能制御棒95と、グレイロッド96と、第2の高性能制御棒97と、は、いずれも炉心68内において、水平面において180度回転対象となるように配置されることが好ましい。これにより、制御棒ユニット90全体の各性能のバランスが向上する。
【0055】
標準制御棒94及び第1の高性能制御棒95と、グレイロッド96と、第2の高性能制御棒97と、が、いずれも炉心68内における上記好ましい位置に配置された場合、制御棒ユニット90は、全体として、運用性能、制御保護性能及び停止性能を最大に機能させることができる。すなわち、制御棒ユニット90全体の性能の価値が最大となる。
【0056】
制御棒ユニット90は、
図3に示すように、第2の高性能制御棒97の周囲に新燃料91を配置することで、中性子が最もたくさん放出される新燃料91の周囲に、中性子吸収性能が最も高い第2の高性能制御棒97がある状態を実現することができるため、第2の高性能制御棒97の停止性能を効率よく機能させることができる。
【0057】
図1に示すように、加圧水型原子炉12には、本発明の実施形態に係る燃料位置決定システムの一例である燃料位置決定システム48が接続されている。燃料位置決定システム48は、制御棒ユニット90を含む加圧水型原子炉12に燃料集合体69を配置する位置を決定する。燃料位置決定システム48は、本発明の実施形態に係る燃料位置決定方法を実施する。配置部は、燃料集合体69のうち、新燃料91を、第2の高性能制御棒97の周囲に配置する。具体的には、燃料位置決定システム48は、炉心68の定期点検の際に、第2の高性能制御棒97の周囲に配置され、使用されることで使用済み燃料92となった燃料を、第2の高性能制御棒97の周囲とは異なる位置に移動させるとともに、新たに第2の高性能制御棒97の周囲に新燃料91を投入する。これにより、燃料位置決定システム48は、中性子が最もたくさん放出される新燃料91の周囲に、中性子吸収性能が最も高い第2の高性能制御棒97がある状態を実現することができるため、第2の高性能制御棒97の停止性能を効率よく機能させることができる。
【0058】
また、燃料位置決定システム48は、制御棒クラスタ71の配置に応じて燃料集合体69の配置を決定する代わりに、燃料集合体69の配置に応じて制御棒クラスタ71の配置を決めても良い。具体的には、燃料位置決定システム48は、炉心68の定期点検の際に、使用できなくなった使用済み燃料92を除去してその場所に新燃料91を投入し、まだ使用可能な使用済み燃料92をそのまま配置して、その際の新燃料91と使用済み燃料92との配置に応じて、制御棒クラスタ71の配置を変更する。この場合、例えば、燃料位置決定システム48は、新燃料91の周囲に優先的に第2の高性能制御棒97を配置させ、これに応じて、標準制御棒94及び第1の高性能制御棒95と、グレイロッド96と、をそれぞれ配置する。この場合でも、燃料位置決定システム48は、中性子が最もたくさん放出される新燃料91の周囲に、中性子吸収性能が最も高い第2の高性能制御棒97がある状態を実現することができるため、第2の高性能制御棒97の停止性能を効率よく機能させることができる。