(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6804290
(24)【登録日】2020年12月4日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】プラスチックボトル
(51)【国際特許分類】
B65D 1/02 20060101AFI20201214BHJP
【FI】
B65D1/02 221
B65D1/02 220
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-254718(P2016-254718)
(22)【出願日】2016年12月28日
(65)【公開番号】特開2018-104062(P2018-104062A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年4月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 真也
(72)【発明者】
【氏名】相原 昌俊
【審査官】
長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】
意匠登録第1216757(JP,S)
【文献】
特開2015−224041(JP,A)
【文献】
特開2009−280274(JP,A)
【文献】
特開2016−132500(JP,A)
【文献】
特開2015−048114(JP,A)
【文献】
特開2010−105677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の胴部を備えるプラスチックボトルであって、
前記胴部に、軸方向の内側に向かうにつれて縮径する縮径部を前記軸方向の両側に備えるとともに、前記縮径部の間に前記軸方向と平行に延びるストレート部が形成されているくびれ部が設けられ、
前記くびれ部には径方向に窪んだパネルが前記胴部の周方向に並んで複数形成されており、
前記くびれ部の両端における径を第1径とし、前記ストレート部における径を第2径としたときに、(第1径−第2径)/第1径≧0.1を満たし、
前記縮径部は、弧状であり、且つ、各縮径部の長さは、それぞれ、0.25≦(第1径−第2径)/縮径部の長さ≦0.50を満たし、
前記ストレート部の前記軸方向における長さが、前記くびれ部の前記軸方向における長さの半分以下であるプラスチックボトル。
【請求項2】
ボトル全長に対する前記パネルの上下方向の長さの比率が0.20〜0.50である請求項1に記載のプラスチックボトル。
【請求項3】
前記くびれ部の上下それぞれに凹状の周リブが1以上設けられている請求項1又は2に記載のプラスチックボトル。
【請求項4】
前記胴部の上側に、前記軸方向の下側に向かうにつれて拡径する肩部を備え、
前記肩部には、ボトル外側に向かって突出する突出部が形成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載のプラスチックボトル。
【請求項5】
前記突出部は、弧状であり、且つ、平均曲率が10以上である請求項4に記載のプラスチックボトル。
【請求項6】
容量が200〜500ミリリットルである請求項1〜5のいずれか一項に記載のプラスチックボトル。
【請求項7】
薄肉である請求項1〜6のいずれか一項に記載のプラスチックボトル。
【請求項8】
前記くびれ部の長さは、(第1径−第2径)/くびれ部の長さ≧0.072を満たす請求項1〜7のいずれか一項に記載のプラスチックボトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状の胴部を備えるプラスチックボトルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、意匠的効果を狙って、例えば意匠登録第1216509号(特許文献1)のように、軸方向の内側に向かうにつれて縮径する縮径部が軸方向の両側に形成されるとともに、縮径部の間に軸方向と平行に延びるストレート部が形成されている形状とすることで、竹を模した形状としたくびれ部を胴部に設けたプラスチックボトルが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】意匠登録第1216509号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなくびれ部を有するボトルでは、くびれ部のくびれ率((最大径−最小径)/最大径)が大きいほど、ボトル全体として特徴的な構造となりユーザーの目を引きやすい。しかし、意匠的効果を狙ってくびれ率を大きくすると、縮径部での径の変化率が大きくなり、縮径部とストレート部との境界部分に応力が集中しやすくなってしまい、垂直荷重に対するくびれ部の強度が低下してしまう問題があった。
【0005】
また、このようなくびれ部をもつボトルは主に500mlで用いられていたが、近年、400ml以下の比較的小容量のボトルに対しても上記のようなくびれ部を設けることが試みられている。そして、このような比較的小容量のボトルでくびれ率を大きくしようとすると、容量の大きなボトルに比べ軸方向の長さが小さい分だけ、縮径部での径の変化率が容量の大きなボトルに比べ大きくなり、垂直荷重に対するくびれ部の強度が一層低下してしまう。
【0006】
そこで、小容量のボトルに対しても好適に用いることができ、且つ、くびれ部のくびれ率を大きくしながらも、垂直荷重に対する強度を高く維持することが可能なプラスチックボトルの実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るプラスチックボトルは、
円筒状の胴部を備えるプラスチックボトルであって、
前記胴部に、軸方向の内側に向かうにつれて縮径する縮径部を前記軸方向の両側に備えるとともに、前記縮径部の間に前記軸方向と平行に延びるストレート部が形成されているくびれ部が設けられ、
前記くびれ部には径方向に窪んだパネルが前記胴部の周方向に並んで複数形成されており、
前記くびれ部の両端における径を第1径とし、前記ストレート部における径を第2径としたときに、(第1径−第2径)/第1径≧0.1を満たし、
前記縮径部は、弧状であり、且つ、各縮径部の長さは、それぞれ、0.25≦(第1径−第2径)/縮径部の長さ≦0.50を満たし、
前記ストレート部の前記軸方向における長さが、前記くびれ部の前記軸方向における長さの半分以下である。
【0008】
この構成によれば、まず複数のパネルを周方向に形成することでパネルにより減圧を吸収するようにしてある。そして、ストレート部の軸方向における長さをくびれ部の軸方向における長さの半分以下とすることで縮径部を長くしてあるので、くびれ率((第1径−第2径)/第1径)を0.1以上と大きい値としながらも、各縮径部でくびれ度合((第1径−第2径)/縮径部の長さ)を0.25〜0.50として縮径部での径の変化を緩やかにできる。これにより縮径部とストレート部との境界部分における応力の集中を効果的に抑制できる。このように、パネルにより減圧を吸収しつつ、縮径部とストレート部との境界部分における応力の集中を効果的に抑制してあるので、くびれ部のくびれ率を大きくしながらも、全体として垂直荷重に対する強度を高く維持することができる。また、この構成によれば、軸方向の長さが小さい小容量のボトルでも縮径部を長くとることができ、縮径部での径の変化を緩やかにできるため、小容量のボトルに対しても好適に用いることができる。
【0009】
以下、本発明に係るプラスチックボトルの好適な態様について説明する。但し、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定される訳ではない。
【0010】
1つの態様として、ボトル全長に対する前記パネルの上下方向の長さの比率が0.20〜0.50であると好適である。
【0011】
この構成によれば、パネルの上下方向の長さの比率を0.20〜0.50とすることで、パネルによる減圧吸収の効果を好適に得ることができる。
【0012】
1つの態様として、前記くびれ部の上下それぞれに凹状の周リブが1以上設けられていると好適である。
【0013】
この構成によれば、パネル部による減圧吸収はパネル部が動くことによりなされるが、パネル部の上下に動きにくい周リブをそれぞれ設けることで、よりパネル部が動きやすくなる。これにより、パネル部により一層効果的に減圧を吸収させることができる。
【0014】
1つの態様として、前記胴部の上側に、前記軸方向の下側に向かうにつれて拡径する肩部を備え、前記肩部には、ボトル外側に向かって突出する突出部が形成されていると好適である。
【0015】
この構成によれば、突出部によってボトルの強度を高めることができる。
【0016】
1つの態様として、前記突出部は、弧状であり、且つ、平均曲率が10以上であると好適である。
【0017】
この構成によれば、突出部を弧状で、且つ、平均曲率が10以上とすることで、突出部の強度を効果的に高めることができる。
【0018】
1つの態様として、容量が200〜500ミリリットルであると好適である。
【0019】
容量が200〜500ミリリットルのボトルであれば、本発明により得られる意匠的効果をより効果的に得ることができる。
【0020】
1つの態様として、薄肉であると好適である。
【0021】
つまり、薄肉のプラスチックボトルでは強度の低下が問題となるところ、強度を高く維持することが可能な本発明に係るプラスチックボトルによれば、薄肉のプラスチックボトルにも好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係るプラスチックボトルの実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態に係るプラスチックボトル1は、
図1に示すように、液体の注ぎ口としての口部2と、口部2と連続し、底面方向に向かうにつれて徐々に拡径する肩部3と、肩部3と連続する円筒状の胴部4と、プラスチックボトル1の底となる底部5と、から構成されている。そして、本実施形態に係るプラスチックボトル1は、意匠的効果を図るべく、胴部4に竹を模した形状としたくびれ部6が設けられている。具体的には、くびれ部6は、軸方向(
図1における上下方向)の内側(上下方向の中間部)に向かうにつれて縮径する縮径部61を軸方向の両側に備えるとともに、縮径部61の間に軸方向と平行に延びるストレート部62が形成されている。以下、本実施形態に係るプラスチックボトル1について詳細に説明する。
【0024】
まず、本実施形態のプラスチックボトル1は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂を主材料として、二軸延伸ブロー成型等の延伸成形法によって一体的に成型することができる。プラスチックボトル1の容量は特に限定されず、一般的に流通している200ミリリットル〜2リットル程度とすることができるが、特に、200〜500ミリリットル、好ましくは200〜400ミリリットルの比較的小容量のものとすると好適であり、本実施形態では容量を350ミリリットルとしている。また、ボトル1に充填させる液体は特に限定されず、例えば、飲料水、茶、果汁、コーヒー、ココア、清涼飲料水、アルコール飲料、乳飲料、スープなどの飲料や、ソースや醤油などの液体調味料などが挙げられる。
【0025】
また、本実施形態のプラスチックボトル1は、資源・コストを節約するために、一般的な飲料用に比べて薄肉にしてある。例えば、本実施形態では、容量350ミリリットル(満注容量では367.1ミリリットル)に対して、プラスチックボトル1の樹脂量が20g以下とすることが好ましく、15g以下とするとより好ましい(言い換えると、プラスチックボトル1の満注容量(ml)に対するプラスチックボトル1の樹脂量(g)の比率が0.054(g/ml)以下であると好ましく、0.041以下であるとより好ましい)。
【0026】
次に、本実施形態に係るプラスチックボトル1のくびれ部6について説明する。まず、本実施形態では、くびれ部6には径方向に窪んだパネル63が胴部4の周方向に並んで複数(本実施形態では8個)等間隔で形成されており、パネル63により減圧を吸収するようにしてある。さらに、各パネル63の周方向の中央部には、パネル63の強度を高めるべく、軸方向に延びる凹状溝63aが設けられている。また、ボトル全長に対するパネル63の上下方向の長さの比率は0.20〜0.50としてある(例えば、本実施形態では、パネル63の長さは50mmで、ボトル全長は159mmであり、かかる比率がおよそ0.31となっている)。この比率が0.20を下回ると、パネルが短すぎて十分な減圧吸収の効果を得ることができず、また、この比率が0.50を超えると、パネル63が長すぎてくびれ部6の強度が低下してしまうからである。
【0027】
また、本実施形態では、くびれ部6が、くびれ部6の両端における径(つまり、くびれ部6における最大径)を第1径とし、ストレート部62における径を第2径としたときに、(第1径−第2径)/第1径≧0.1を満たすようになっている。例えば、本実施形態では、第1径を67.5mmとし、第2径を60.7mmとしてあり、(第1径−第2径)/第1径がおよそ0.101となっている。
【0028】
そして、本実施形態では、ストレート部62の軸方向における長さが、くびれ部6の軸方向における長さの半分以下としてある(例えば、本実施形態では、くびれ部6の長さが約67mmであり、ストレート部62の長さがその半分以下の約20mmとなっている)。
【0029】
さらに、本実施形態では、縮径部61は、弧状であり、且つ、ストレート部62の軸方向における長さをくびれ部6の長さの半分以下とすることで、各縮径部61の軸方向の長さは、それぞれ、0.25≦(第1径−第2径)/縮径部の長さ≦0.50を満たすようになっている。なお、縮径部61の長さは18mm〜35mmであり、好ましくは20mm〜30mmであるが、例えば、本実施形態では、下側の縮径部61の軸方向の長さは約21mmで、上側の縮径部61の軸方向の長さは約26mmとなっている。そして、この場合、(第1径−第2径)/縮径部の長さは、下側の縮径部61においておよそ0.32、上側の縮径部61においておよそ0.26となっている。
【0030】
このように、ストレート部62の軸方向における長さをくびれ部6の軸方向における長さの半分以下として縮径部61を長くしてあるので、くびれ率((第1径−第2径)/第1径)を0.1以上と大きい値としながらも、各縮径部61でくびれ度合((第1径−第2径)/縮径部の長さ)を0.25〜0.50として縮径部61での径の変化を緩やかにしてある。これにより、くびれ部6のくびれ率を大きくしながらも、縮径部61とストレート部62との境界部分における応力の集中を効果的に抑制できる。
【0031】
以上のように、本実施形態のプラスチックボトル1によれば、パネル63により減圧を吸収しつつ、縮径部61とストレート部62との境界部分における応力の集中を効果的に抑制してあるので、くびれ部6のくびれ率を大きくしながらも、全体として垂直荷重に対する強度を高く維持することができる。特に、軸方向の長さが小さい小容量のボトルでも縮径部61を長くとることができ、縮径部61での径の変化を緩やかにできるため、小容量のボトルに対してきわめて有効である。
【0032】
次に、本実施形態のプラスチックボトル1におけるくびれ部6以外の特徴について説明する。まず、本実施形態では、くびれ部6の上下それぞれに凹状の周リブ7が1以上(本実施形態では上側に1つ、下側に2つ)設けられている。パネル63による減圧吸収はパネル63が動くことによりなされるのであるが、くびれ部6の上下に動きにくい周リブ7をそれぞれ設けることで、よりパネル63が動きやすくなる。これにより、パネル63により一層効果的に減圧を吸収させられる。なお、本実施形態では、周リブ7は、それぞれ深さ1.2mmとなっている。
【0033】
また、肩部3には、ボトル外側に向かって突出する突出部31が周方向にわたって形成されている。そして、本実施形態では、突出部31は、弧状であり、且つ、平均曲率が10以上となっている。また、突出部31の平均曲率は20以上であるとより好ましく、本実施形態では、平均曲率を20としてある。このような突出部31を設けることにより、ボトル1の強度を高めてある。
【0034】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係るプラスチックボトルのその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0035】
(1)上述の実施形態で示したボトル全長に対するパネル63の上下方向の長さの比率はあくまでも例示であり、適宜変更可能である。
【0036】
(2)上述の実施形態では、くびれ部6の上下それぞれに凹状の周リブ7を1以上設けた構成を例に説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されず、周リブ7を設けなくともよい。
【0037】
(3)上述の実施形態では、肩部3に突出部31を設けた構成を例に説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されず、突出部31を設けなくともよい。また、突出部31の形状は、上述の実施形態のものに限られず、適宜変更可能である。
【0038】
(4)縮径部61の形状は、上述の実施形態のものに限られず、全体的に見て弧状の形状を呈していればよく、縮径部61の一部を直線状としたり、異なる曲率を有する複数の曲線状のものを組み合わせたものとするなど、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0039】
(5)その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。従って、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、例えば薄肉のプラスチックボトルに利用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 プラスチックボトル
3 肩部
31 突出部
4 胴部
6 くびれ部
61 縮径部
62 ストレート部
63 パネル
7 周リブ