特許第6804310号(P6804310)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6804310光学用粘着シート、粘着剤層付偏光フィルム、および液晶表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6804310
(24)【登録日】2020年12月4日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】光学用粘着シート、粘着剤層付偏光フィルム、および液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20201214BHJP
   C09J 7/20 20180101ALI20201214BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20201214BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20201214BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20201214BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20201214BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   C09J7/38
   C09J7/20
   C09J201/00
   C09J133/00
   B32B27/00 M
   G02B5/30
   G09F9/00 366A
   G09F9/00 302
   G09F9/00 313
   G09F9/00 324
【請求項の数】11
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2017-5027(P2017-5027)
(22)【出願日】2017年1月16日
(65)【公開番号】特開2017-160416(P2017-160416A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2019年11月7日
(31)【優先権主張番号】特願2016-43315(P2016-43315)
(32)【優先日】2016年3月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三井 数馬
(72)【発明者】
【氏名】藤田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】野中 崇弘
(72)【発明者】
【氏名】江原 正浩
【審査官】 田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−152198(JP,A)
【文献】 特開2007−238853(JP,A)
【文献】 特開2013−181088(JP,A)
【文献】 特開2014−058686(JP,A)
【文献】 特開2009−275231(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0186604(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
B32B 27/00
G02B 5/30
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さが30μm以上であり、且つ、95℃での貯蔵弾性率が1.0×104Pa以上である、第1粘着剤層と、
95℃での損失正接が0.08以上である第2粘着剤層と、
前記第1粘着剤層および前記第2粘着剤層の間に位置し、且つ、厚さが15〜150μmである、基材と、を含む積層構造を有する、光学用粘着シート。
【請求項2】
ポリカーボネートに対する前記第1粘着剤層のせん断粘着力は10N/cm2以上である、請求項1に記載の光学用粘着シート。
【請求項3】
前記第1粘着剤層の厚さは500μm以下である、請求項1または2に記載の光学用粘着シート。
【請求項4】
前記第2粘着剤層の厚さは100μm以上である、請求項1から3のいずれか一つに記載の光学用粘着シート。
【請求項5】
前記第2粘着剤層の厚さは1000μm以下である、請求項1から4のいずれか一つに記載の光学用粘着シート。
【請求項6】
前記第1粘着剤層および/または前記第2粘着剤層は、主剤としてアクリル系ポリマーを含有する、請求項1から5のいずれか一つに記載の光学用粘着シート。
【請求項7】
前記第1粘着剤層および/または前記第2粘着剤層は、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物の硬化物である、請求項1から6のいずれか一つに記載の光学用粘着シート。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一つに記載の光学用粘着シートと偏光フィルムとの積層構造を有する、粘着剤層付偏光フィルム。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか一つに記載の光学用粘着シートを含む、液晶表示装置。
【請求項10】
樹脂製カバーと、
偏光フィルムを表面に有する液晶パネルと、
前記樹脂製カバーおよび前記液晶パネルの間に位置する請求項1から7のいずれか一つに記載の光学用粘着シートであって、前記第1粘着剤層の側にて前記樹脂製カバーに貼着し且つ前記第2粘着剤層の側にて前記液晶パネルの前記偏光フィルムに貼着している光学用粘着シートと、の積層構造を含む、液晶表示装置。
【請求項11】
前記液晶パネルは、オンセル型タッチセンサーまたはインセル型タッチセンサーを備える、請求項10に記載の液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光透過性を有する光学用途の両面粘着シート、並びに、そのような光学用粘着シートを伴う偏光フィルムおよび液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ等の表示装置やタッチパネル等の入力装置は、各種の基板や膜体を含む積層構造部を有する。これら装置においては、当該積層構造内で隣り合う所定の部品間を接合するために、或いは、隣り合う部品間のエアギャップを充填するために、光透過性を有する両面粘着シートが用いられる場合がある。そのような光学用粘着シートについては、例えば、下記の特許文献1〜4に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−78431号公報
【特許文献2】特開2012−188595号公報
【特許文献3】特開2015−200698号公報
【特許文献4】特開2016−26321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば車載用の液晶ディスプレイないし液晶表示装置においては、表示画面の最前面をなす透明カバーとして、安全性や軽量性の観点からポリカーボネート製カバー等の樹脂製カバーが採用されることがある。樹脂製カバーは、高温環境下や高湿環境下では、いわゆるアウトガスを生じることがあり、樹脂製カバーからのアウトガスは、当該カバーに粘着シートが貼着されている場合において、当該粘着シートの部分的な浮きや剥がれ等の欠陥を生じさせる原因となり得る。また、液晶ディスプレイ用途の透明カバーにおける液晶パネル側表面には、カバー周縁に沿って印刷が施されることが多い。この印刷は、所定の厚さを有し、透明カバーの液晶パネル側表面に段差を生じさせる。この印刷段差は、透明カバーの液晶パネル側表面に粘着シートが貼着されている場合において、当該粘着シートの部分的な浮き等の欠陥を生じさせる原因となり得る。
【0005】
一方、液晶ディスプレイないし液晶表示装置においては、タッチパネル機能が液晶パネルに組み込まれたオンセル型タッチセンサー付き液晶パネルやインセル型タッチセンサー付き液晶パネルが採用される場合がある。これらタッチパネル内蔵タイプの液晶パネルでは、いわゆる液晶シャッター機能を実現するための液晶パネルの一要素たる偏光フィルムが、当該パネルの積層構成上、最表層に位置することが多い。液晶パネル用途の偏光フィルムには、室温から昇温する過程で収縮し且つ室温へ降温する過程で膨張するという特性を示す傾向がある。そして、このような偏光フィルムにおける、温度変化に基づく面広がり方向の寸法変化は、比較的に大きい。
【0006】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、液晶表示装置における偏光フィルムと樹脂製カバーとの間を充填するのに適した光学用粘着シート、並びにそのような粘着シートを伴う偏光フィルムおよび液晶表示装置を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面によると、光学用粘着シートが提供される。この光学用粘着シートは、第1粘着剤層と、第2粘着剤層と、基材とを含む積層構造を有する。第1粘着剤層は、厚さが30μm以上であり、且つ、95℃での貯蔵弾性率が1.0×104Pa以上である。第2粘着剤層は、95℃での損失正接(= 損失弾性率/貯蔵弾性率)が0.08以上である。基材は、第1粘着剤層と第2粘着剤層との間に位置し、且つ、厚さが15〜150μmである。液晶表示装置における液晶パネルの偏光フィルムと透明カバーたる樹脂製カバーとが対向する配置をとる設計においては、本光学用粘着シートは、第1粘着剤層の側で樹脂製カバーに貼着し且つ第2粘着剤層の側で液晶パネルの偏光フィルムに貼着する態様で、偏光フィルムと樹脂製カバーとの間に充填され得る。
【0008】
本光学用粘着シートの第1粘着剤層は、上述のように、95℃での貯蔵弾性率が1.0×104Pa以上である。このような構成は、液晶表示装置用途の透明樹脂製カバーに本光学用粘着シートが第1粘着剤層側で貼着している状態において、樹脂製カバーからのアウトガスに起因して第1粘着剤層ないし本光学用粘着シートの部分的な浮きや剥がれ等の欠陥が生ずるのを抑制するのに適する。すなわち、当該構成は、第1粘着剤層において高温状態での硬さを確保して、前記の貼着状態においてアウトガス起因の欠陥が生ずるのを抑制するのに適するのである。
【0009】
また、本光学用粘着シートの第1粘着剤層の厚さは、上述のように30μm以上である。このような構成は、液晶表示装置用途の透明樹脂製カバーに本光学用粘着シートが第1粘着剤層側で貼着している状態において、樹脂製カバー表面の印刷段差に起因して第1粘着剤層ないし本光学用粘着シートの部分的な浮き等の欠陥が生ずるのを抑制するのに適する。すなわち、当該構成は、第1粘着剤層において段差追従性を確保して、前記の貼着状態において印刷段差起因の欠陥が生ずるのを抑制するのに適するのである。
【0010】
加えて、本光学用粘着シートの第2粘着剤層は、上述のように、95℃での損失正接が0.08以上である。このような構成は、液晶パネルの偏光フィルムに本光学用粘着シートが第2粘着剤層側で貼着している状態において、温度変化に基づく偏光フィルムの面広がり方向の寸法変化に第2粘着剤層ないし粘着シートが追従して偏光フィルムと第2粘着剤層との接着界面での応力を緩和するのに適する。偏光フィルムと第2粘着剤層との接着界面でのこのような応力緩和は、偏光フィルムに対する第2粘着剤層ないし本光学用粘着シートの接着信頼性を確保するのに資する。
【0011】
更に加えて、本光学用粘着シートの基材の厚さは、上述のように15〜150μmである。基材の厚さが15μm以上であるという構成は、基材について本光学用粘着シートにおける支持体としての機能を確保して、本光学用粘着シートの貼り合せ作業時などの取り扱い時に本光学用粘着シートにシワが生ずるのを抑制するのに適する。基材の厚さが150μm以下であるという構成は、液晶表示装置用途の透明樹脂製カバーに本光学用粘着シートが第1粘着剤層側で貼着している状態において例えば、樹脂製カバー表面の印刷段差に起因して本光学用粘着シートの部分的な浮き等の欠陥が生ずるのを抑制するのに適する。すなわち、当該構成は、本光学用粘着シートにおいて段差追従性を確保して、例えば前記の貼着状態において、印刷段差起因の欠陥が生ずるのを抑制するのに適するのである。基材の厚さが150μmを超える場合、当該基材の剛性、ひいては、これを含む光学用粘着シートの剛性が過大となりやすい。光学用粘着シートの剛性が過大であると、当該光学用粘着シートにおいて良好な段差追従性を確保できない場合がある。
【0012】
以上のような、本発明の第1の側面に係る光学用粘着シートは、液晶表示装置における偏光フィルムと樹脂製カバーとの間を充填するのに適する。
【0013】
好ましくは、ポリカーボネートに対する第1粘着剤層のせん断粘着力は10N/cm2以上である。このような構成は、樹脂製カバーに対する第1粘着剤層ないし本光学用粘着シートの接着信頼性を確保するうえで好適である。このような構成は、高温環境下や高湿環境下でアウトガスを生じやすいポリカーボネート製の透明カバーが液晶表示装置の樹脂製カバーとして採用される場合において、当該ポリカーボネート製カバーに対する第1粘着剤層ないし本光学用粘着シートの接着信頼性を確保するうえで好適である。
【0014】
好ましくは、第1粘着剤層の厚さは500μm以下である。このような構成は、第1粘着剤層において樹脂製カバーに対する高いせん断粘着力を確保するうえで好適である。
【0015】
好ましくは、第2粘着剤層の厚さは100μm以上である。このような構成は、第2粘着剤層において、それに対する被着体たる偏光フィルムの寸法変化に対する上述の追従性を確保するうえで好適であり、従って、当該第2粘着剤層と当該偏光フィルムとの接着界面での応力を緩和するうえで好適である。
【0016】
好ましくは、第2粘着剤層の厚さは1000μm以下である。このような構成は、第2粘着剤層において偏光フィルムに対する高いせん断粘着力を確保するうえで好適である。
【0017】
好ましくは、第1粘着剤層および/または第2粘着剤層は、主剤としてアクリル系粘着剤を含有する。このような構成は、光学用粘着シートの粘着剤層に求められる程度の粘着力を実現するうえで好適である。
【0018】
好ましくは、第1粘着剤層および/または第2粘着剤層は、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物の硬化物である。粘着剤層形成用の硬化性粘着剤組成物の硬化手法として紫外線照射等の活性エネルギー線照射を採用すると、当該粘着剤組成物の塗膜が比較的に厚い場合であっても、適切に硬化した粘着剤層を得やすい。したがって、第1粘着剤層が活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物の硬化物であるという構成は、比較的に厚くても充分に硬化した第1粘着剤層を実現するうえで好適である。また、第2粘着剤層が活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物の硬化物であるという構成は、比較的に厚くても充分に硬化した第2粘着剤層を実現するうえで好適である。
【0019】
本発明の第2の側面によると、粘着剤層付偏光フィルムが提供される。この偏光フィルムは、本発明の第1の側面に係る光学用粘着シートと偏光フィルムとの積層構造を有する。このような構成によると、液晶表示装置における偏光フィルムと樹脂製カバーとの間を充填するのに適する光学用粘着シートが既に貼り合わされた液晶パネル用偏光フィルムを提供することができる。
【0020】
本発明の第3の側面によると、液晶表示装置が提供される。この液晶表示装置は、本発明の第1の側面に係る光学用粘着シートを含む。液晶表示装置は、例えば、樹脂製カバーと、偏光フィルムを表面に有する液晶パネルと、これらの間に位置する上述の第1の側面に係る光学用粘着シートとの積層構造を含む。光学用粘着シートは、第1粘着剤層の側にて樹脂製カバーに貼着し、且つ、第2粘着剤層の側にて液晶パネルの偏光フィルムに貼着している。このような構成によると、液晶パネルの偏光フィルムと樹脂製カバーとの間を充填する光学用粘着シートにおいて、本発明の第1の側面に関して上述した技術的効果を享受することができる。
【0021】
本発明の第3の側面において、好ましくは、液晶パネルは、オンセル型タッチセンサーまたはインセル型タッチセンサーを備える。タッチパネル機能が液晶パネルに組み込まれたオンセル型タッチセンサー付き液晶パネルやインセル型タッチセンサー付き液晶パネルは、タッチパネル機能と液晶シャッター機能とを共に備えるユニット全体について、厚さや、重量、製造コストを低減するうえで、好適である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一の実施形態に係る光学用粘着シートの部分断面図である。
図2】本発明の一の実施形態に係る偏光フィルムの部分断面図である。
図3】本発明の一の実施形態に係る液晶表示装置における部分的な積層構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明の一の実施形態に係る光学用粘着シートたる粘着シートXの部分断面図である。粘着シートXは、第1粘着剤層たる粘着剤層11と、第2粘着剤層たる粘着剤層12と、これらの間に位置する基材13とを含む積層構造を有する。粘着シートXは、透明カバーたる樹脂製カバーと液晶パネルの偏光フィルムとが近接して対向する設計の液晶表示装置において、樹脂製カバーと偏光フィルムとの間を充填するための透明な光学用粘着シートとして使用され得るものである。具体的には、粘着シートXは、前記のような設計の液晶表示装置において、粘着剤層11側で樹脂製カバーに貼着し且つ粘着剤層12側で液晶パネルの偏光フィルムに貼着する態様で、これら樹脂製カバーと偏光フィルムとの間を充填するための透明な光学用粘着シートとして、使用され得るものである。
【0024】
粘着シートXの粘着剤層11,12は、それぞれ、例えば、アクリル系粘着剤たるアクリル系ポリマーを主剤として含有する。主剤とは、構成成分中で最も大きな質量割合を占める成分とする。また、粘着剤層11は、被着体に貼着し得る粘着面11aを有し、粘着剤層12は、被着体に貼着し得る粘着面12aを有する。このような粘着剤層11,12は、それぞれ、例えば、アクリル系粘着剤組成物の硬化物である。粘着剤層11を形成するための粘着剤組成物と、粘着剤層12を形成するための粘着剤組成物とは、同一の組成を有してもよいし、異なる組成を有してもよい。当該アクリル系粘着剤組成物は、例えば、アクリル系ポリマーを形成するためのモノマー、および/または、そのようなモノマーの混合物を部分的に重合させて得られる重合物(部分重合物)、並びに、共重合性の架橋剤たる多官能(メタ)アクリレートを、含有する。「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」および/または「メタクリレート」を意味するものとする。
【0025】
粘着剤層11や粘着剤層12に含有されるアクリル系ポリマーは、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル、および/または、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル、に由来するモノマーユニットを、質量比で最も多い主たるモノマーユニットとして含む重合体である。以下では、「(メタ)アクリル」をもって、「アクリル」および/または「メタクリル」を表す。
【0026】
上記アクリル系ポリマーのモノマーユニットをなすための、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、即ち、上記アクリル系ポリマーを形成するためのモノマーたる、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、および(メタ)アクリル酸エイコシルなど、炭素数が1〜20の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。アクリル系ポリマーのための当該(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、一種類の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いてもよいし、二種類以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いてもよい。本実施形態では、アクリル系ポリマーのための当該(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、好ましくは、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、およびアクリル酸イソステアリルからなる群より選択される少なくとも一種が用いられる。
【0027】
上記アクリル系ポリマーにおける、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来のモノマーユニットの含有率は、例えば50重量%以上であり、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。すなわち、当該アクリル系ポリマーを形成するための原料のモノマー成分組成における(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有率は、例えば50重量%以上であり、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。このような(メタ)アクリル酸アルキルエステル含有率を伴うモノマー成分組成に由来するモノマーユニット構成を、上記アクリル系ポリマーは有することとなる。(メタ)アクリル酸アルキルエステル含有率に関するこのような構成は、アクリル系粘着剤の接着性等の基本特性を粘着剤層11,12にて適切に発現させるうえで好適である。
【0028】
粘着剤層11や粘着剤層12に含有されるアクリル系ポリマーは、脂環式モノマーに由来するモノマーユニットを含んでもよい。アクリル系ポリマーのモノマーユニットをなすための脂環式モノマー、即ち、当該アクリル系ポリマーを形成するための共重合性モノマーたる脂環式モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、二環式炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステル、および、三環以上の炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘプチル、および(メタ)アクリル酸シクロオクチルが挙げられる。二環式炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ボルニルおよび(メタ)アクリル酸イソボルニルが挙げられる。三環以上の炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロペンタニル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、および2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレートが挙げられる。アクリル系ポリマーのための脂環式モノマーとしては、一種類の脂環式モノマーを用いてもよいし、二種類以上の脂環式モノマーを用いてもよい。本実施形態では、アクリル系ポリマーのための脂環式モノマーとして、好ましくは、アクリル酸シクロヘキシル(CHA)、メタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)、アクリル酸イソボルニル、およびメタクリル酸イソボルニルからなる群より選択される少なくとも一種が用いられる。
【0029】
粘着剤層11や粘着剤層12に含有されるアクリル系ポリマーは、水酸基含有モノマーに由来するモノマーユニットを含んでもよい。水酸基含有モノマーは、モノマーユニット内に少なくとも一つの水酸基を有することとなるモノマーである。粘着剤層11,12内のアクリル系ポリマーが水酸基含有モノマーユニットを含む場合、粘着剤層11,12において接着性や適度な凝集力が得られやすい。
【0030】
アクリル系ポリマーのモノマーユニットをなすための水酸基含有モノマー、即ち、当該アクリル系ポリマーを形成するための共重合性モノマーたる水酸基含有モノマーとしては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、ビニルアルコール、およびアリルアルコールが挙げられる。水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシラウリル、および(メタ)アクリル酸(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)が挙げられる。アクリル系ポリマーのための水酸基含有モノマーとしては、一種類の水酸基含有モノマーを用いてもよいし、二種類以上の水酸基含有モノマーを用いてもよい。本実施形態では、アクリル系ポリマーのための水酸基含有モノマーとして、好ましくは、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸4-ヒドロキシブチル、およびメタクリル酸4-ヒドロキシブチルからなる群より選択される少なくとも一種が用いられる。
【0031】
上記アクリル系ポリマーにおける、水酸基含有モノマー由来のモノマーユニットの含有率は、例えば1重量%以上であり、より好ましくは2重量%以上、より好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上、より好ましくは7重量%以上、より好ましくは10重量%以上である。また、同含有率は、例えば20重量%以下であり、好ましくは18重量%以下である。同含有率が1〜20重量%である場合、粘着剤層11,12において接着性や適度な凝集力が得られやすい。
【0032】
粘着剤層11や粘着剤層12に含有されるアクリル系ポリマーは、窒素原子含有モノマーに由来するモノマーユニットを含んでもよい。窒素原子含有モノマーは、モノマーユニット内に少なくとも一つの窒素原子を有することとなるモノマーである。粘着剤層11,12内のアクリル系ポリマーが窒素原子含有モノマーユニットを含む場合、粘着剤層11,12において硬さや良好な接着信頼性が得られやすい。
【0033】
アクリル系ポリマーのモノマーユニットをなすための窒素原子含有モノマー、即ち、当該アクリル系ポリマーを形成するための共重合性モノマーたる窒素原子含有モノマーとしては、例えば、N-ビニル環状アミドおよび(メタ)アクリルアミド類が挙げられる。窒素原子含有モノマーたるN-ビニル環状アミドとしては、例えば、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピペリドン、N-ビニル-3-モルホリノン、N-ビニル-2-カプロラクタム、N-ビニル-1,3-オキサジン-2-オン、およびN-ビニル-3,5-モルホリンジオンが挙げられる。窒素原子含有モノマーたる(メタ)アクリルアミド類としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-オクチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピル(メタ)アクリルアミド、およびN,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。アクリル系ポリマーのための窒素原子含有モノマーとしては、一種類の窒素原子含有モノマーを用いてもよいし、二種類以上の窒素原子含有モノマーを用いてもよい。本実施形態では、アクリル系ポリマーのための窒素原子含有モノマーとして、好ましくはN-ビニル-2-ピロリドンが用いられる。
【0034】
上記アクリル系ポリマーにおける、窒素原子含有モノマー由来のモノマーユニットの含有率は、粘着剤層11,12において、適度な硬さや、接着性、透明性を得る観点から、好ましくは1重量%以上、より好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上である。また、同含有率は、粘着剤層11,12にて充分な透明性を得る観点や、粘着剤層11,12が硬くなり過ぎることを抑制して粘着剤層11,12にて良好な接着信頼性を得る観点から、好ましくは30重量%以下、より好ましくは25重量%以下である。
【0035】
粘着剤層11や粘着剤層12を形成するためのアクリル系粘着剤組成物に含有される共重合性の架橋剤としての上記の多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、およびウレタンアクリレートが挙げられる。当該多官能(メタ)アクリレートとしては、一種類の多官能(メタ)アクリレートを用いてもよいし、二種類以上の多官能(メタ)アクリレートを用いてもよい。本実施形態では、アクリル系ポリマーのための多官能(メタ)アクリレートとして、好ましくは、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、およびトリメチロールプロパントリアクリレートからなる群より選択される少なくとも一種が用いられる。
【0036】
上記アクリル系ポリマーにおける、多官能(メタ)アクリレート由来のモノマーユニットの含有率は、粘着剤層11,12において適度な硬さや接着性を得る観点から、例えば0.01重量%以上であり、好ましくは0.03重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上である。また、同含有率は、粘着剤層11,12において適度な硬さや接着性を得る観点から、例えば1重量%以下であり、好ましくは0.5重量%以下である。
【0037】
上記アクリル系ポリマーは、原料モノマー成分を重合して得ることができる。重合手法としては、例えば、溶液重合、乳化重合、および塊状重合が挙げられる。溶液重合を行うに際しては、溶媒として、例えば、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、脂環式炭化水素類、エステル類、およびケトン類を用いることができる。芳香族炭化水素類の溶媒としては、例えば、トルエンおよびベンゼンが挙げられる。脂肪族炭化水素類の溶媒としては、例えば、n-ヘキサンおよびn-ヘプタンが挙げられる。脂環式炭化水素類の溶媒としては、例えば、シクロヘキサンおよびメチルシクロヘキサンが挙げられる。エステル類の溶媒としては、例えば、酢酸エチルおよび酢酸n-ブチルが挙げられる。ケトン類の溶媒としては、例えば、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトンが挙げられる。溶液重合においては、一種類の溶媒を用いてもよいし、二種類以上の溶媒を用いてもよい。
【0038】
アクリル系ポリマーを得るために原料モノマー成分を重合する際には、重合開始剤を用いることができる。重合反応の種類に応じて、例えば、光重合開始剤や熱重合開始剤を用いることができる。重合の際には、一種類の重合開始剤を用いてもよいし、二種類以上の重合開始剤を用いてもよい。
【0039】
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α-ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、およびチオキサントン系光重合開始剤が挙げられる。ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、および2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンが挙げられる。アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、および4-(t-ブチル)ジクロロアセトフェノンが挙げられる。α-ケトール系光重合開始剤としては、例えば、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、および1-[4-(2-ヒドロキシエチル)フェニル]-2-メチルプロパン-1-オンが挙げられる。芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、例えば2-ナフタレンスルホニルクロリドが挙げられる。光活性オキシム系光重合開始剤としては、例えば1-フェニル-1,1-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)-オキシムが挙げられる。ベンゾイン系光重合開始剤としては、例えばベンゾインが挙げられる。ベンジル系光重合開始剤としては、例えばベンジルが挙げられる。ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3'-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、およびポリビニルベンゾフェノンが挙げられる。ケタール系光重合開始剤としては、例えばベンジルジメチルケタールが挙げられる。チオキサントン系光重合開始剤としては、例えば、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、およびドデシルチオキサントンが挙げられる。光重合開始剤の使用量は、例えば、モノマー成分全量(100重量部)に対して0.01〜3重量部である。
【0040】
熱重合開始剤としては、例えば、アゾ系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤、およびレドックス系重合開始剤が挙げられる。アゾ系重合開始剤としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル、および4,4'-アゾビス-4-シアノバレリアン酸が挙げられる。過酸化物系重合開始剤としては、例えば、ジベンゾイルペルオキシドおよびtert-ブチルペルマレエートが挙げられる。熱重合開始剤の使用量は、例えば、モノマー成分全量(100重量部)に対して0.05〜0.3重量部である。
【0041】
上記アクリル系ポリマーを得るための重合に際しては、アクリル系ポリマーの分子量を調整するために、連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤としては、例えば、α-チオグリセロール、2-メルカプトエタノール、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール、オクチルメルカプタン、t-ノニルメルカプタン、ドデシルメルカプタン(ラウリルメルカプタン)、t-ドデシルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、チオグリコール酸、チオグリコール酸メチル、チオグリコール酸エチル、チオグリコール酸プロピル、チオグリコール酸ブチル、チオグリコール酸t-ブチル、チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸2-エチルヘキシル、チオグリコール酸イソオクチル、チオグリコール酸デシル、およびチオグリコール酸ドデシルが挙げられる。連鎖移動剤としては、一種類の連鎖移動剤を用いてもよいし、二種類以上の連鎖移動剤を用いてもよい。本実施形態では、連鎖移動剤として、好ましくはα-チオグリセロールが用いられる。連鎖移動剤の使用量は、例えば、アクリル系ポリマーを得るためのモノマー成分全量(100重量部)に対して0.01〜0.5重量部である。
【0042】
以上のようなアクリル系ポリマーの粘着剤層(粘着剤層11,12)における含有率は、例えば85〜100重量%である。
【0043】
粘着剤層11や粘着剤層12を形成するための上記のアクリル系粘着剤組成物は、各粘着剤層における例えば室温での粘着性の向上の観点から、オリゴマーを含有してもよい。当該オリゴマーは、上述のアクリル系ポリマーおよび上記の部分重合物とはモノマーユニットの組成が一致しない重合体である。
【0044】
上記のオリゴマーは、好ましくは、分子内に環状構造を有する(メタ)アクリル酸エステル(環含有(メタ)アクリル酸エステル)に由来するモノマーユニットと、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来するモノマーユニットとを含む重合体である。
【0045】
上記オリゴマーのモノマーユニットをなすための環含有(メタ)アクリル酸エステル、即ち、上記オリゴマーを形成するためのモノマーたる環含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、二環式炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステル、三環以上の炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステル、および、芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘプチル、および(メタ)アクリル酸シクロオクチルが挙げられる。二環式炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ボルニルおよび(メタ)アクリル酸イソボルニルが挙げられる。三環以上の炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロペンタニル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、および2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレートが挙げられる。芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、および(メタ)アクリル酸ベンジルが挙げられる。上記オリゴマーのための環含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、一種類の環含有(メタ)アクリル酸エステルを用いてもよいし、二種類以上の環含有(メタ)アクリル酸エステルを用いてもよい。本実施形態では、上記オリゴマーのための環含有(メタ)アクリル酸エステルとして、好ましくは、ジシクロペンタニルメタクリレートおよびジシクロペンタニルアクリレートからなる群より選択される少なくとも一種が用いられる。
【0046】
上記オリゴマーにおける、環含有(メタ)アクリル酸エステル由来のモノマーユニットの含有率は、当該オリゴマーを含有するアクリル系粘着剤組成物から形成される粘着剤層において適度な柔軟性を実現するという観点から、上記オリゴマーを形成するためのモノマー成分全量(100重量%)に対して、例えば10〜90重量%であり、好ましくは20〜80重量%、より好ましくは35〜80重量%である。
【0047】
上記オリゴマーのモノマーユニットをなすための、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、即ち、上記オリゴマーを形成するためのモノマーたる、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、および(メタ)アクリル酸エイコシルなど、炭素数が1〜20の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。上記オリゴマーのための当該(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、一種類の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いてもよいし、二種類以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いてもよい。本実施形態では、上記オリゴマーのための当該(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、好ましくはメタクリル酸メチルが用いられる。
【0048】
上記オリゴマーにおける、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来のモノマーユニットの含有率は、当該オリゴマーを含有するアクリル系粘着剤組成物から形成される粘着剤層において適度な弾性率を実現するという観点から、上記オリゴマーを形成するためのモノマー成分全量(100重量%)に対して、例えば10〜90重量%であり、好ましくは20〜80重量%、より好ましくは20〜60重量%である。
【0049】
また、上記オリゴマーは、カルボキシ基含有モノマーや、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、イソシアネート基含有モノマー、イミド基含有モノマーに由来するモノマーユニットを含んでいてもよい。
【0050】
上記オリゴマーは、原料モノマー成分を重合して得ることができる。重合手法としては、例えば、溶液重合、乳化重合、および塊状重合が挙げられる。溶液重合を行うに際して用いることのできる溶媒としては、アクリル系ポリマーを得るための溶液重合を行うに際して用いることのできる溶媒として上記したものが挙げられる。当該溶液重合においては、一種類の溶媒を用いてもよいし、二種類以上の溶媒を用いてもよい。また、上記オリゴマーを得るために原料モノマー成分を重合する際には、重合開始剤を用いることができる。重合反応の種類に応じて、例えば、光重合開始剤や熱重合開始剤を用いることができる。上記オリゴマーを得るための光重合開始剤や熱重合開始剤としては、アクリル系ポリマーを得るための光重合開始剤や熱重合開始剤として上記したものが挙げられる。重合の際には、一種類の重合開始剤を用いてもよいし、二種類以上の重合開始剤を用いてもよい。
【0051】
上記オリゴマーの重量平均分子量(Mw)は、例えば1000〜30000であり、好ましくは1000〜20000、より好ましくは1500〜10000である。当該オリゴマーを含有するアクリル系粘着剤組成物から形成される粘着剤層において良好な粘着力を確保するという観点からは、上記オリゴマーの重量平均分子量は1000以上であるのが好ましい。一方、当該オリゴマーを含有するアクリル系粘着剤組成物から形成される粘着剤層において特に室温での粘着力を確保するという観点からは、上記オリゴマーの重量平均分子量は30000以下であるのが好ましい。
【0052】
上記オリゴマーの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により測定することができる。例えば、GPC測定装置(商品名「HLC−8120GPC」,東ソー株式会社製)を使用して、下記の測定条件の下、標準ポリスチレン換算値として重量平均分子量(Mw)を求めることができる。
・カラム:TSKgel SuperAWM-H(上流側,東ソー株式会社製)とTSKgel SuperAW4000(東ソー株式会社製)とTSKgel SuperAW2500(下流側,東ソー株式会社製)とを直列に接続
・カラムサイズ:各カラムとも6.0mmφ×150mm
・カラム温度(測定温度):40℃
・溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
・流量:0.4mL/分
・サンプル注入量:20μL
・サンプル濃度:約2.0g/L(テトラヒドロフラン溶液)
・標準試料:ポリスチレン
・検出器:示差屈折計(RI)
【0053】
以上のようなオリゴマーの粘着剤層(粘着剤層11,12)における含有量は、粘着剤層中のアクリル系ポリマー100重量部に対し、例えば0〜20重量部である。
【0054】
粘着剤層11や粘着剤層12を形成するための上記のアクリル系粘着剤組成物、従って粘着剤層11や粘着剤層12は、紫外線吸収剤を含有してもよい。紫外線吸収剤は、紫外線を効率よく吸収可能であり且つ吸収したエネルギーを熱や赤外線などに変えて放出可能な化学種である。そのような紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、オキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤、およびシアノアクリレート系紫外線吸収剤が挙げられる。アクリル系粘着剤組成物は、一種類の紫外線吸収剤を含有してもよいし、二種類以上の紫外線吸収剤を含有してもよい。
【0055】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール(商品名「TINUVIN PS」,BASF社製)、ベンゼンプロパン酸3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシの炭素数7〜9のアルキルエステル(商品名「TINUVIN 384-2」,BASF社製)、オクチル3-[3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル]プロピオネートおよび2-エチルヘキシル-3-[3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2イル)フェニル]プロピオネートの混合物(商品名「TINUVIN 109」,BASF社製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール(商品名「TINUVIN 900」,BASF社製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(商品名「TINUVIN 928」,BASF製)、メチル3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコール300との反応生成物(商品名「TINUVIN 1130」,BASF社製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール(商品名「TINUVIN P」,BASF社製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール(商品名「TINUVIN 234」,BASF社製)、2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチル-6-(tert-ブチル)フェノール(商品名「TINUVIN 326」,BASF社製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ペンチルフェノール(商品名「TINUVIN 328」,BASF社製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(商品名「TINUVIN 329」,BASF社製)、2,2'-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール](商品名「TINUVIN 360」,BASF社製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノール(商品名「TINUVIN 571」,BASF社製)、2-[2-ヒドロキシ-3-(3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミド-メチル)-5-メチルフェニル]ベンゾトリアゾール(商品名「Sumisorb 250」,住友化学株式会社製)、および2,2'-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール](商品名「アデカスタブ LA-31」,株式会社ADEKA製)が挙げられる。
【0056】
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヒドロキシフェニルと[(炭素数10〜16のアルキルオキシ)メチル]オキシランとの反応生成物(商品名「TINUVIN 400」,BASF社製)、2-[4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-[3-(ドデシルオキシ)-2-ヒドロキシプロポキシ]フェノール)、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ビス-(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンと(2-エチルヘキシル)-グリシド酸エステルとの反応生成物(商品名「TINUVIN 405」,BASF社製)、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン(商品名「TINUVIN 460」,BASF社製)、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール(商品名「TINUVIN 1577」,BASF社製)、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]-フェノール(商品名「アデカスタブ LA-46」,株式会社ADEKA製)、および2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン(商品名「TINUVIN 479」,BASF社製)が挙げられる。
【0057】
サリチル酸エステル系紫外線吸収剤としては、例えば、フェニル2-アクリロイルオキシベンゾエート、フェニル2-アクロリイルオキシ-3-メチルベンゾエート、フェニル2-アクリロイルオキシ-4-メチルベンゾエート、フェニル2-アクリロイルオキシ-5-メチルベンゾエート、フェニル2-アクリロイルオキシ-3-メトキシベンゾエート、フェニル2-ヒドロキシベンゾエート、フェニル2-ヒドロキシ-3-メチルベンゾエート、フェニル2-ヒドロキシ-4-メチルベンゾエート、フェニル2-ヒドロキシ-5-メチルベンゾエート、フェニル2-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート、および2,4-ジ-tert-ブチルフェニル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート(商品名「TINUVIN 120」,BASF社製)が挙げられる。
【0058】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤やオキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸、2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシベンゾフェノン、4-ドデシルオキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンジルオキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、2,2'-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン(商品名「KEMISORB 111」,ケミプロ化成株式会社製)、2,2',4,4'-テトラヒドロキシベンゾフェノン(商品名「SEESORB 106」,シプロ化成株式会社製)、および2,2'-ジヒドロキシ-4,4'-ジメトキシベンゾフェノンが挙げられる。
【0059】
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、例えば、アルキル2-シアノアクリレート、シクロアルキル2-シアノアクリレート、アルコキシアルキル2-シアノアクリレート、アルケニル2-シアノアクリレート、およびアルキニル2-シアノアクリレートが挙げられる。
【0060】
粘着剤層11や粘着剤層12に含有される紫外線吸収剤としては、高い紫外線吸収性を有するとともに高い光安定性を有するという観点や、透明性の高い粘着剤層を得やすいという観点から、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、およびベンゾフェノン系紫外線吸収剤からなる群より選ばれる少なくとも一種であるのが好ましい。より好ましくは、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤である。特に好ましくは、炭素数6以上の炭化水素基および水酸基を置換基として有するフェニル基がベンゾトリアゾール環を構成する窒素原子に結合しているベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤である。
【0061】
粘着剤層11や粘着剤層12が紫外線吸収剤を含有する場合、粘着剤層中の紫外線吸収剤の含有量は、粘着剤層における波長350nmの光の透過率を制御して高い紫外線吸収性を実現するという観点から、粘着剤層中のアクリル系ポリマー100重量部に対して好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.05重量部以上、より好ましくは0.1重量部以上である。また、粘着剤層中の紫外線吸収剤の含有量は、粘着剤層において紫外線吸収剤の添加に伴う粘着剤の黄色化現象の発生を抑制して優れた光学特性や高い透明性を得るという観点から、粘着剤層中のアクリル系ポリマー100重量部に対して好ましくは10重量部以下、より好ましくは9重量部以下、より好ましくは8重量部以下である。
【0062】
粘着剤層11や粘着剤層12を形成するための上記のアクリル系粘着剤組成物、従って粘着剤層11や粘着剤層12は、光安定剤を含有してもよい。上記アクリル系粘着剤組成物は、光安定剤を含有する場合、好ましくは紫外線吸収剤を共に含有する。光安定剤は、紫外線等の光の照射に因って生成し得るラジカルを捕捉するためのものであり、粘着剤層11や粘着剤層12が光安定剤を含有するという構成は、形成される粘着剤層において高い耐光性を実現するうえで好適である。アクリル系粘着剤組成物は、一種類の光安定剤を含有してもよいし、二種類以上の光安定剤を含有してもよい。
【0063】
上記光安定剤としては、例えば、フェノール系光安定剤、リン系光安定剤、チオエーテル系光安定剤、および、ヒンダードアミン系安定剤等のアミン系光安定剤が挙げられる。
【0064】
フェノール系光安定剤としては、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、4-ヒドロキシメチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、ブチル化ヒドロキシアニソール、n-オクタデシル3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)プロピオネート、ジステアリル(4-ヒドロキシ-3-メチル-5-tert-ブチル)ベンジルマロネート、トコフェロール、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2'-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4'-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4'-ブチリデンビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、4,4'-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、スチレン化フェノール、N,N'-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナミド、ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸エチルエステル)カルシウム、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル]メタン、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール)、2,2'-メチレンビス[6-(1-メチルシクロヘキシル)-p-クレゾール]、1,3,5-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌル酸、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌル酸、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート]、2,2'-オキサミドビス[エチル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルアニリノ)-2,4-ジオクチルチオ-1,3,5-トリアジン、ビス[2-tert-ブチル-4-メチル-6-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9-ビス{2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、および3,9-ビス{2-[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンが挙げられる。
【0065】
リン系光安定剤としては、例えば、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス[2-tert-ブチル-4-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニルチオ)-5-メチルフェニル]ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6-トリ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)-4,4'-n-ブチリデンビス(2-tert-ブチル-5-メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)-1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、9,10-ジハイドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナンスレン-10-オキサイド、およびトリス(2-[(2,4,8,10-テトラキス-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-6-イル)オキシ]エチル)アミンが挙げられる。
【0066】
チオエーテル系光安定剤としては、例えば、チオジプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジミリスチル、およびチオジプロピオン酸ジステアリル等のジアルキルチオジプロピオネート化合物、並びに、テトラキス[メチレン(3-ドデシルチオ)プロピオネート]メタン等のポリオールのβ-アルキルメルカプトプロピオン酸エステル化合物が挙げられる。
【0067】
アミン系光安定剤としては、例えば、コハク酸ジメチルと4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールとの重合物(商品名「TINUVIN 622」,BASF社製)、当該重合物とN,N',N'',N'''-テトラキス-(4,6-ビス-(ブチル-(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-トリアジン-2-イル)-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミンとの1対1反応生成物(商品名「TINUVIN 119」,BASF社製)、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2-4-ジイル}{2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル}イミノ]ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ})(商品名「TINUVIN 944」,BASF社製)、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(商品名「TINUVIN 770」,BASF社製)、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)-4-ピペリジニル)エステルと1,1-ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンとの反応生成物(商品名「TINUVIN 123」,BASF社製)、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート(商品名「TINUVIN 144」,BASF社製)、シクロヘキサンおよび過酸化N-ブチル2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジンアミン-2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジンの反応生成物と2-アミノエタノールとの反応生成物(商品名「TINUVIN 152」,BASF社製)、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケートおよびメチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケートの混合物(商品名「TINUVIN 292」,BASF社製)、並びに、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールおよび3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンとの混合エステル化物(商品名「アデカスタブ LA-63P」,株式会社ADEKA製)が挙げられる。アミン系安定剤としては、特にヒンダードアミン系安定剤が好ましい。
【0068】
粘着剤層11や粘着剤層12が光安定剤を含有する場合、粘着剤層中の光安定剤の含有量は、粘着剤層において充分な耐光性を実現するという観点から、粘着剤層中のアクリル系ポリマー100重量部に対して好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.2重量部以上である。また、粘着剤層中の光安定剤の含有量は、粘着剤層において光安定剤に因る着色を抑制して高い透明性を実現するという観点から、粘着剤層中のアクリル系ポリマー100重量部に対して好ましくは5重量部以下、より好ましくは3重量部以下である。
【0069】
粘着剤層11や粘着剤層12を形成するための上記のアクリル系粘着剤組成物、従って粘着剤層11や粘着剤層12は、アクリル系ポリマー間を架橋するための架橋剤を含有してもよい。アクリル系ポリマー間での当該架橋剤による架橋反応を利用して、粘着剤層11や粘着剤層12のゲル分率をコントロールすることができる。アクリル系粘着剤組成物は、一種類の当該架橋剤を含有してもよいし、二種類以上の当該架橋剤を含有してもよい。
【0070】
上記架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、およびアミン系架橋剤が挙げられる。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤およびエポキシ系架橋剤が好ましい。
【0071】
イソシアネート系架橋剤としては、例えば、低級脂肪族ポリイソシアネート類、脂環式ポリイソシアネート類、および芳香族ポリイソシアネート類が挙げられる。低級脂肪族ポリイソシアネート類としては、例えば、1,2-エチレンジイソシアネート、1,4-ブチレンジイソシアネート、および1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。脂環式ポリイソシアネート類としては、例えば、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、および水素添加キシレンジイソシアネートが挙げられる。芳香族ポリイソシアネート類としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、およびキシリレンジイソシアネートが挙げられる。また、イソシアネート系架橋剤としては、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物(商品名「コロネートL」,日本ポリウレタン工業株式会社製)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート付加物(商品名「コロネートHL」,日本ポリウレタン工業株式会社製)、トリメチロールプロパン/キシリレンジイソシアネート付加物(商品名「タケネートD-110N」,三井化学株式会社製)等の市販品も挙げられる。
【0072】
エポキシ系架橋剤(多官能エポキシ化合物)としては、例えば、N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o-フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル-トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、およびビスフェノール-S-ジグリシジルエーテルが挙げられる。また、エポキシ系架橋剤としては、分子内にエポキシ基を二つ以上有するエポキシ系樹脂も挙げられる。加えて、エポキシ系架橋剤としては、商品名「テトラッドC」(三菱ガス化学株式会社製)等の市販品も挙げられる。
【0073】
アクリル系ポリマー間を架橋するための上記架橋剤を粘着剤層11や粘着剤層12が含有する場合、粘着剤層中の当該架橋剤の含有量は、粘着剤層において被着体に対する充分な接着信頼性を実現するという観点から、アクリル系ポリマー100重量部に対して好ましくは0.001重量部以上、より好ましくは0.01重量部以上である。また、同含有量は、粘着剤層において適度な柔軟性を発現させて良好な粘着力を実現するという観点から、アクリル系ポリマー100重量部に対して好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下である。
【0074】
粘着剤層11や粘着剤層12を形成するための上記のアクリル系粘着剤組成物、従って粘着剤層11や粘着剤層12は、シランカップリング剤を含有してもよい。粘着剤層がシランカップリング剤を含有するという構成は、粘着剤層において加湿条件下での高い接着性、特にガラスに対する高い接着性を、実現するうえで好適である。
【0075】
シランカップリング剤としては、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、およびN-フェニル-アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。シランカップリング剤としては、商品名「KBM-403」(信越化学工業株式会社製)等の市販品も挙げられる。シランカップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0076】
粘着剤層11や粘着剤層12がシランカップリング剤を含有する場合、粘着剤層中のシランカップリング剤の含有量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.02重量部以上である。また、粘着剤層中のシランカップリング剤の含有量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して好ましくは1重量部以下、より好ましくは0.5重量部以下である。
【0077】
粘着剤層11,12は、それぞれ、必要に応じて、架橋促進剤、粘着付与樹脂、老化防止剤、充填剤、顔料や染料などの着色剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、可塑剤、軟化剤、界面活性剤、および帯電防止剤などの添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で更に含有してもよい。粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン誘導体、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、および油溶性フェノールが挙げられる。
【0078】
粘着シートXにおける粘着剤層11の95℃での貯蔵弾性率(せん断貯蔵弾性率)、即ち、粘着剤層11の構成材料の95℃での貯蔵弾性率(せん断貯蔵弾性率)は、1.0×104Pa以上であり、好ましくは5.0×104Pa以上、より好ましくは1.0×105Pa以上である。粘着剤層11の当該貯蔵弾性率の調整は、粘着剤層中のアクリル系ポリマーを形成するための各種モノマーの割合の調整や、粘着剤層形成用の粘着剤組成物における共重合性の多官能(メタ)アクリレートの含有量の調整、形成されたアクリル系ポリマー間を架橋するための架橋剤の前記組成物中の含有量の調整、重合時の粘着剤組成物層ないし粘着剤層の厚さ設定などによって、行うことができる。また、貯蔵弾性率については、例えば、動的粘弾性測定装置(商品名「ARES」,レオメトリック社製)を使用した動的粘弾性測定から求めることができる。本測定においては、測定モードをせん断モードとし、測定温度範囲を例えば−70℃〜150℃とし、昇温速度を例えば5℃/分とし、周波数を例えば1Hzとする。
【0079】
粘着剤層11の厚さは、30μm以上であり、好ましくは50μm以上、より好ましくは80μm以上である。また、粘着剤層11の厚さは、好ましくは500μm以下である。
【0080】
粘着剤層11について、ポリカーボネートに対するせん断粘着力は、10N/cm2以上であり、好ましくは15N/cm2以上、より好ましくは20N/cm2以上である。せん断粘着力は、実施例に関して後述するせん断粘着力測定の方法によって測定することができる。
【0081】
粘着シートXにおける粘着剤層12の95℃での損失正接(= 損失弾性率/貯蔵弾性率)、即ち、粘着剤層12の構成材料の95℃での損失正接は、0.08以上であり、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.12以上、より好ましくは0.15以上である。粘着剤層12の当該損失正接の調整は、粘着剤層中のアクリル系ポリマーを形成するための各種モノマーの割合の調整や、粘着剤層形成用の粘着剤組成物における共重合性の多官能(メタ)アクリレートの含有量の調整、形成されたアクリル系ポリマー間を架橋するための架橋剤の前記組成物中の含有量の調整、重合時の粘着剤組成物層ないし粘着剤層の厚さ設定などによって、行うことができる。また、損失正接については、例えば、動的粘弾性測定装置(商品名「ARES」,レオメトリック社製)を使用した動的粘弾性測定から求めることができる。本測定においては、測定モードをせん断モードとし、測定温度範囲を例えば−70℃〜150℃とし、昇温速度を例えば5℃/分とし、周波数を例えば1Hzとする。
【0082】
粘着剤層12の厚さは、好ましくは100μm以上、より好ましくは150μm以上、より好ましくは200μm以上、より好ましくは250μm以上である。また、粘着剤層12の厚さは、好ましくは1000μm以下である。
【0083】
粘着シートXの基材13は、粘着シートXにおいて支持体として機能する部位であり、且つ、透明性を有する。そのような基材13をなすための材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、アクリル、ポリスチレン、アセテート、ポリエーテルスルホン、トリアセチルセルロース、およびITO(スズのドープされた酸化インジウム)が挙げられる。基材13は、一種類の材料からなってもよし、二種類以上の材料からなってもよい。また、基材13における粘着剤層11側の表面および粘着剤層12側の表面は、それぞれ、粘着剤層との密着性の向上のための表面処理が施されていてもよい。そのような表面処理としては、コロナ処理やプラズマ処理等の物理的処理、および、下塗り処理等の化学的処理が、挙げられる。このような基材13の厚さは、15〜150μmであり、好ましくは25〜125μm、より好ましくは38〜100μmである。
【0084】
以上のような構成の光学用粘着シートXについて、可視光波長領域における全光線透過率は、例えば85%以上である。全光線透過率は、JIS K 7361-1に準じて測定される値とする。また、光学用粘着シートXのヘーズは、例えば10%以下である。ヘーズは、JIS K 7136に準じて測定される値とする。
【0085】
粘着シートXは、粘着剤層11の粘着面11aを被覆するようにセパレーター(剥離ライナー)が設けられていてもよく、また、粘着剤層12の粘着面12aを被覆するようにセパレーター(剥離ライナー)が設けられていてもよい。セパレーターは、粘着シートXの粘着剤層11,12が露出しないように保護するための要素であり、粘着シートXを被着体に貼り合せる際に粘着シートXから剥がされる。セパレーターとしては、例えば、剥離処理層を有する基材、フッ素ポリマーからなる低接着性基材、および、無極性ポリマーからなる低接着性基材が挙げられる。セパレーターの表面は、離型処理、防汚処理、または帯電防止処理が施されていてもよい。セパレーターの厚さは、例えば5〜200μmである。
【0086】
以上のような構成の粘着シートXは、例えば、粘着剤層11,12をそれぞれ形成した後、粘着剤層11,12をそれぞれ基材13に対して貼り合せることによって、製造することができる。粘着剤層11は、例えば、所定の剥離ライナー上に粘着剤層11形成用の粘着剤組成物を塗布して粘着剤組成物層を形成し、当該粘着剤組成物層上に更なる剥離ライナーを積層し、当該剥離ライナー間で粘着剤組成物を硬化させることによって、形成することができる。好ましくは、粘着剤層11形成用の粘着剤組成物は、光重合開始剤を含有するアクリル系粘着剤組成物であり、且つ、当該硬化手段は紫外線照射等の活性エネルギー線照射である。すなわち、粘着剤層11は、活性エネルギー線照射硬化型のアクリル系粘着剤組成物の硬化物であるのが好ましい。一方、粘着剤層12は、例えば、所定の剥離ライナー上に粘着剤層12形成用の粘着剤組成物を塗布して粘着剤組成物層を形成し、当該粘着剤組成物層上に更なる剥離ライナーを積層し、当該剥離ライナー間で粘着剤組成物を硬化させることによって、形成することができる。好ましくは、粘着剤層12形成用の粘着剤組成物は、光重合開始剤を含有するアクリル系粘着剤組成物であり、且つ、当該硬化手段は紫外線照射等の活性エネルギー線照射である。すなわち、粘着剤層12は、活性エネルギー線照射硬化型のアクリル系粘着剤組成物の硬化物であるのが好ましい。
【0087】
粘着シートXの粘着剤層11は、上述のように、95℃での貯蔵弾性率が1.0×104Pa以上であり、好ましくは5.0×104Pa以上、より好ましくは1.0×105Pa以上である。液晶表示装置用途のポリカーボネート製カバー等の透明樹脂製カバーは、高温環境下や高湿環境下では、いわゆるアウトガスを発生する場合があるところ、粘着剤層11の貯蔵弾性率に関する当該構成は、樹脂製カバーに粘着シートXが粘着剤層11側で貼着している状態において、樹脂製カバーからのアウトガスに起因して粘着剤層11ないし粘着シートXの部分的な浮きや剥がれ等の欠陥が生ずるのを抑制するのに適する。すなわち、当該構成は、粘着剤層11において高温状態での硬さを確保して、前記の貼着状態においてアウトガス起因の欠陥が生ずるのを抑制するのに適するのである。
【0088】
粘着シートXの粘着剤層11の厚さは、上述のように、30μm以上であり、好ましくは50μm以上、より好ましくは80μm以上である。液晶表示装置用途の透明カバーにおける液晶パネル側表面には、カバー周縁に沿って印刷が施されることが多いところ、粘着剤層11の厚さに関する当該構成は、透明カバーに粘着シートXが粘着剤層11側で貼着している状態において、透明カバーの表面の印刷段差に起因して粘着剤層11ないし粘着シートXの部分的な浮き等の欠陥が生ずるのを抑制するのに適する。すなわち、当該構成は、粘着剤層11において段差追従性を確保して、前記の貼着状態において印刷段差起因の欠陥が生ずるのを抑制するのに適するのである。また、粘着剤層11の厚さは上述のように好ましくは500μm以下であるところ、このような構成は、粘着剤層11において樹脂製カバーに対する高いせん断粘着力を確保するうえで好適である。そして、上述のように、ポリカーボネートに対する粘着剤層11のせん断粘着力は、10N/cm2以上であり、好ましくは15N/cm2以上、より好ましくは20N/cm2以上である。このような構成は、樹脂製カバーに対する粘着剤層11ないし粘着シートXの接着信頼性を確保するうえで好適である。このような構成は、高温環境下や高湿環境下でアウトガスを生じやすいポリカーボネート製カバーが液晶表示装置の樹脂製カバーとして採用される場合において、当該ポリカーボネート製カバーに対する粘着剤層11ないし粘着シートXの接着信頼性を確保するうえで好適である。
【0089】
粘着シートXの粘着剤層12は、上述のように、95℃での損失正接が0.08以上であり、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.12以上、より好ましくは0.15以上である。液晶パネル用途の偏光フィルムには、室温から昇温する過程で収縮し且つ室温へ降温する過程で膨張するという特性を示す傾向があって当該寸法変化は比較的に大きいところ、粘着剤層12の損失正接に関する当該構成は、液晶パネルの偏光フィルムに粘着シートXが粘着剤層12側で貼着している状態において、温度変化に基づく偏光フィルムの面広がり方向の寸法変化に粘着剤層12ないし粘着シートXが追従して偏光フィルムと粘着剤層12との接着界面での応力を緩和するのに適する。偏光フィルムと粘着剤層12との接着界面でのこのような応力緩和は、偏光フィルムに対する粘着剤層12ないし粘着シートXの接着信頼性を確保するのに資する。また、粘着シートXの粘着剤層12の厚さは、上述のように、好ましくは100μm以上、より好ましくは150μm以上、より好ましくは200μm以上、より好ましくは250μm以上である。このような構成は、粘着剤層12において、それに対する被着体たる偏光フィルムの寸法変化に対する上述の追従性を確保するうえで好適であり、従って、粘着剤層12と偏光フィルムとの接着界面での応力を緩和するうえで好適である。粘着剤層12の厚さは上述のように好ましくは1000μm以下であるところ、このような構成は、粘着剤層12において偏光フィルムに対する高いせん断粘着力を確保するうえで好適である。
【0090】
粘着シートXの基材13の厚さは、上述のように、15〜150μmであり、好ましくは25〜125μm、より好ましくは38〜100μmである。基材13の厚さが15μm以上であるという構成は、基材13について粘着シートXにおける支持体としての機能を確保して、粘着シートXの貼り合せ作業時などの取り扱い時に粘着シートXにシワが生ずるのを抑制するのに適する。基材13の厚さが150μm以下であるという構成は、液晶パネル用途の透明カバーに粘着シートXが粘着剤層11側で貼着している状態において例えば、透明カバー表面の印刷段差に起因して粘着シートの部分的な浮き等の欠陥が生ずるのを抑制するのに適する。すなわち、当該構成は、粘着シートXにおいて段差追従性を確保して、例えば前記の貼着状態において、印刷段差起因の欠陥が生ずるのを抑制するのに適するのである。基材13の厚さが150μmを超える場合、当該基材13の剛性、ひいては、これを含む粘着シートXの剛性が過大となりやすい。粘着シートXの剛性が過大であると、粘着シートXにおいて良好な段差追従性を確保できない場合がある。
【0091】
以上のような光学用の粘着シートXは、液晶表示装置における偏光フィルムと樹脂製カバーとの間を充填するのに適する。
【0092】
図2は、本発明の一の実施形態に係る粘着剤層付偏光フィルムYの部分断面図である。粘着剤層付偏光フィルムYは、偏光フィルム21および粘着シートXを含む積層構造を有する。偏光フィルム21は、液晶パネル用途の偏光フィルムであって、例えば、偏光子の片面または両面に透明保護フィルムが設けられたものである。偏光フィルム21の厚さは、例えば30〜300μmである。粘着シートXは、図1に示すように粘着剤層11,12とこれらの間の基材13とを含む積層構造を有するところ、粘着剤層12(第2粘着剤層)の側にて偏光フィルム21に張り合わされている。粘着シートXにおける偏光フィルム21とは反対の側には、粘着剤層11の粘着面11aを被覆するようにセパレーター(剥離ライナー)が設けられていてもよい。粘着剤層付偏光フィルムYは、液晶表示装置における偏光フィルムと樹脂製カバーとの間を充填するのに適する光学用の粘着シートXが既に貼り合わされた液晶パネル用偏光フィルムを提供するものである。
【0093】
図3は、本発明の一の実施形態に係る液晶表示装置Zにおける部分的な積層構成図である。液晶表示装置Zは、液晶パネル30と、樹脂製カバー41と、これらの間の粘着シートXとを含む積層構造部を有する。
【0094】
液晶パネル30は、透明電極付のガラス基板31と、透明電極付のガラス基板32と、これらの間に位置する液晶層33と、偏光フィルム34,35とを含む積層構造を有して、いわゆる液晶シャッターとして機能するように構成されている。ガラス基板31は、液晶層33の側に、透明電極として画素電極を伴うものである。ガラス基板32は、液晶層33の側に、透明電極として対向電極を伴うものである。偏光フィルム34は、ガラス基板31の側に設けられ、液晶パネル30に係る積層方向において一方の端に位置する。偏光フィルム35は、ガラス基板32の側に設けられ、液晶パネル30に係る積層方向において、最も樹脂製カバー41側の端に位置する。偏光フィルム34,35は、それぞれ、液晶パネル用途の偏光フィルムであって、例えば、偏光子の片面または両面に透明保護フィルムが設けられたものである。偏光フィルム34,35の厚さは、それぞれ、例えば30〜300μmである。
【0095】
液晶パネル30は、好ましくは、オンセル型タッチセンサーまたはインセル型タッチセンサーを備える。オンセル型タッチセンサー(図示略)とは、タッチパネル機能を実現するためのタッチセンサーが、例えばガラス基板32における液晶層33とは反対の側に設けられたものである。インセル型タッチセンサー(図示略)とは、タッチパネル機能を実現するためのタッチセンサーが、例えばガラス基板31における液晶層33の側に設けられたものである。タッチパネル機能が液晶パネル30に組み込まれたオンセル型タッチセンサー付き液晶パネルやインセル型タッチセンサー付き液晶パネルは、タッチパネル機能と液晶シャッター機能とを共に備えるユニット全体について、厚さや、重量、製造コストを低減するうえで、好適である。
【0096】
樹脂製カバー41は、液晶表示装置用途の透明カバーであり、液晶表示装置Zの表示画面の最前面をなす。樹脂製カバー41としては、透明なポリカーボネート製カバーやポリメタクリル酸メチル製カバーが挙げられる。樹脂製の透明カバーは、安全性や軽量性の観点から、ガラス製の透明カバーよりも好ましい。特に車載用の液晶表示装置においては、そのような安全性および軽量性に対する要求が強い。
【0097】
粘着シートXは、図1に示すように粘着剤層11,12とこれらの間の基材13とを含む積層構造を有するところ、液晶表示装置Zにおいて、粘着剤層11(第1粘着剤層)の側にて樹脂製カバー41に貼着し、且つ、粘着剤層12(第2粘着剤層)の側にて液晶パネル30の偏光フィルム35に貼着している。液晶表示装置Zにおける偏光フィルム35と粘着シートXの積層構造部分については、上述の粘着剤層付偏光フィルムYによって提供されるものであってもよい。
【0098】
以上のような構成の液晶表示装置Zにおいては、液晶パネル30の偏光フィルム35と樹脂製カバー41との間を充填する光学用の粘着シートXにおいて、当該粘着シートXに関して上述した技術的効果を享受することができる。
【実施例】
【0099】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0100】
〔オリゴマーの製造例〕
反応容器内で、メタクリル酸ジシクロペンタニル(DCPMA)60重量部と、メタクリル酸メチル(MMA)40重量部と、連鎖移動剤としてのα-チオグリセロール3.5重量部と、重合溶媒としてのトルエン100重量部とを含む混合物を、70℃で1時間、窒素雰囲気下で撹拌した。次に、重合開始剤としての2,2'-アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部を反応容器内の混合物に加えて反応溶液を調製し、70℃で2時間、反応を行った。続いて、80℃で2時間、反応を行った。その後、反応容器内の反応溶液を、130℃の温度雰囲気下に置き、当該反応溶液からトルエン、連鎖移動剤、および未反応モノマーを乾燥除去した。これにより、固形状のアクリル系オリゴマーAoを得た。アクリル系オリゴマーAoの重量平均分子量(Mw)は、5.1×103であった。
【0101】
〔アクリル系粘着剤組成物C1の調製例〕
アクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)78重量部と、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)18重量部と、アクリル酸ヒドロキシエチル(HEA)4重量部とを含有するモノマー混合物に、第1の光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」,BASF社製)0.035重量部および第2の光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」,BASF社製)0.035重量部を加えた後、当該混合物に対し、粘度測定装置を使用して粘度を測定しつつ当該混合物の粘度が約20Pa・sになるまで紫外線照射装置を使用して紫外線を照射した。粘度測定において、装置のローター回転速度は10rpmとし、測定温度は30℃とした。これにより、混合物中のモノマー成分の一部が重合した部分重合物および重合反応を経ていないモノマー成分を含有するプレポリマー組成物を得た。そして、このプレポリマー組成物100重量部と、上述のアクリル系オリゴマーAo 11.8重量部と、アクリル酸ヒドロキシエチル(HEA)17.6重量部と、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)0.294重量部と、シランカップリング剤(商品名「KBM-403」,信越化学工業株式会社製)0.353重量部とを混合し、アクリル系粘着剤組成物C1を得た。
【0102】
〔アクリル系粘着剤組成物C2の調製例〕
1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)の配合量を0.294重量部に代えて0.088重量部とした以外はアクリル系粘着剤組成物C1と同様にして、アクリル系粘着剤組成物C2を得た。
【0103】
〔アクリル系粘着剤組成物C3の調製例〕
アクリル酸ブチル(BA)67重量部と、アクリル酸シクロヘキシル(CHA)14重量部と、アクリル酸ヒドロキシブチル(HBA)19重量部と含有するモノマー混合物に、第1の光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」,BASF社製)0.09重量部および第2の光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」,BASF社製)0.09重量部を加えた後、当該混合物に対し、粘度測定装置を使用して粘度を測定しつつ当該混合物の粘度が約20Pa・sになるまで紫外線照射装置を使用して紫外線を照射した。粘度測定において、装置のローター回転速度は10rpmとし、測定温度は30℃とした。これにより、混合物中のモノマー成分の一部が重合した部分重合物および重合反応を経ていないモノマー成分を含有するプレポリマー組成物を得た。そして、このプレポリマー組成物100重量部と、アクリル酸ヒドロキシエチル(HEA)9重量部と、アクリル酸ヒドロキシブチル(HBA)8重量部と、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)0.12重量部と、シランカップリング剤(商品名「KBM−403」,信越化学工業株式会社製)0.3重量部とを混合し、アクリル系粘着剤組成物C3を得た。
【0104】
〔アクリル系粘着剤組成物C4の調製例〕
アクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)40.5重量部と、アクリル酸イソステアリル(ISTA)40.5重量部と、N−ビニル−2−ピロリドン(NVP)18重量部と、アクリル酸ヒドロキシブチル(HBA)1重量部とを含有するモノマー混合物に、第1の光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」,BASF社製)0.05重量部および第2の光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」,BASF社製)0.05重量部を加えた後、当該混合物に対し、粘度測定装置を使用して粘度を測定しつつ当該混合物の粘度が約20Pa・sになるまで紫外線照射装置を使用して紫外線を照射した。粘度測定において、装置のローター回転速度は10rpmとし、測定温度は30℃とした。これにより、混合物中のモノマー成分の一部が重合した部分重合物および重合反応を経ていないモノマー成分を含有するプレポリマー組成物を得た。そして、このプレポリマー組成物100重量部と、トリメチロールプロパントリアクリレート0.15重量部と、連鎖移動剤としてのα-チオグリセロール0.15重量部と、酸化防止剤としてのトリフェニルフォスファイト(商品名「Chelex P」,堺化学工業株式会社製)1重量部と、シランカップリング剤(商品名「KBM−403」,信越化学工業株式会社製)0.3重量部とを混合し、アクリル系粘着剤組成物C4を得た。
【0105】
〔実施例1〕
〈第1粘着剤層の形成〉
ポリエチレンテレフタレート(PET)系剥離ライナー(厚さ125μm,日東電工株式会社製)上に、上記のアクリル系粘着剤組成物C1を塗布し、粘着剤組成物層を形成した。次に、この粘着剤組成物層上に更にPET系剥離ライナー(厚さ125μm,日東電工株式会社製)を積層し、当該粘着剤組成物層を被覆して酸素を遮断した。このようにして、[剥離ライナー/粘着剤組成物層/剥離ライナー]の積層構成を有する積層体(積層体L1’)を得た。次に、この積層体L1’に対し、その一方の剥離ライナーの側から、ブラックライト(株式会社東芝製)を使用して照度3mW/cm2の紫外線を300秒間照射した。これによって積層体L1’の粘着剤組成物層を硬化させて粘着剤層(第1粘着剤層)とし、[剥離ライナー/粘着剤層(第1粘着剤層)/剥離ライナー]の積層構成を有する積層体(積層体L1)を得た。積層体L1における第1粘着剤層の厚さは100μmである。
【0106】
〈第2粘着剤層の形成〉
PET系剥離ライナー(厚さ125μm,日東電工株式会社製)上に、上記のアクリル系粘着剤組成物C1を塗布し、粘着剤組成物層を形成した。次に、この粘着剤組成物層上に更にPET系剥離ライナー(厚さ125μm,日東電工株式会社製)を積層し、当該粘着剤組成物層を被覆して酸素を遮断した。このようにして、[剥離ライナー/粘着剤組成物層/剥離ライナー]の積層構成を有する積層体(積層体L2’)を得た。次に、この積層体L2’に対し、その一方の剥離ライナーの側から、ブラックライト(株式会社東芝製)を使用して照度3mW/cm2の紫外線を300秒間照射した。これによって積層体L2’の粘着剤組成物層を硬化させて粘着剤層(第2粘着剤層)とし、[剥離ライナー/粘着剤層(第2粘着剤層)/剥離ライナー]の積層構成を有する積層体(積層体L2)を得た。積層体L2における第2粘着剤層の厚さは500μmである。
【0107】
〈光学用粘着シートの作製〉
厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名「ルミラーS10」,東レ株式会社製)の両面にコロナ処理を施したもの(PETフィルムF1)を用意し、上記の積層体L1(剥離ライナー/第1粘着剤層/剥離ライナー)から一方の剥離ライナーを剥離した後、この剥離によって露出した第1粘着剤層表面を介して、片側剥離ライナー付き第1粘着剤層をPETフィルムF1の一方の面に対して貼り合せた。これにより、[剥離ライナー/第1粘着剤層/PETフィルムF1]の積層構成を有する積層体を得た。次に、上記の積層体L2(剥離ライナー/第2粘着剤層/剥離ライナー)から一方の剥離ライナーを剥離した後、この剥離によって露出した第2粘着剤層表面を介して、片側剥離ライナー付き第2粘着剤層を前記PETフィルムF1の他方の面に対して貼り合せた。以上のようにして、[剥離ライナー/第1粘着剤層(厚さ100μm)/PETフィルムF1(厚さ50μm)/第2粘着剤層(厚さ500μm)/剥離ライナー]の積層構成を有する光学用粘着シートを作製した。剥離ライナーの厚さを除く実施例1の光学用粘着シートの厚さは、650μmである。
【0108】
〔実施例2〕
光学用粘着シートの基材として、厚さ80μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名「コスモシャイン 超複屈折タイプ」,東洋紡株式会社製)の両面にコロナ処理を施したもの(PETフィルムF2)をPETフィルムF1の代わりに用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の光学用粘着シートを作製した。剥離ライナーの厚さを除く実施例2の光学用粘着シートの厚さは、680μmである。
【0109】
〔実施例3〕
光学用粘着シートの基材として厚さ50μmのPETフィルムF1に代えて厚さ80μmのPETフィルムF2を用いたこと、第2粘着剤層の形成材料としてアクリル系粘着剤組成物C1に代えてアクリル系粘着剤組成物C3を用いたこと、および、第2粘着剤層の厚さを500μmに代えて250μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3の光学用粘着シートを作製した。剥離ライナーの厚さを除く実施例3の光学用粘着シートの厚さは、430μmである。
【0110】
〔実施例4〕
光学用粘着シートの基材として厚さ100μmのポリカーボネート(PC)フィルム(商品名「ピュアエースC110」,帝人株式会社製)を厚さ50μmのPETフィルムF1の代わりに用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例4の光学用粘着シートを作製した。剥離ライナーの厚さを除く実施例4の光学用粘着シートの厚さは、700μmである。
【0111】
〔実施例5〕
光学用粘着シートの基材として厚さ50μmのPETフィルムF1に代えて厚さ100μmのPCフィルム(商品名「ピュアエースC110」,帝人株式会社製)を用いたこと、第2粘着剤層の形成材料としてアクリル系粘着剤組成物C1に代えてアクリル系粘着剤組成物C3を用いたこと、および、第2粘着剤層の厚さを500μmに代えて250μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5の光学用粘着シートを作製した。剥離ライナーの厚さを除く実施例5の光学用粘着シートの厚さは、450μmである。
【0112】
〔実施例6〕
光学用粘着シートの基材として、PETフィルムとITO層との積層構造を含む厚さ50μmの透明導電性フィルム(PET/ITOフィルム,商品名「エレクリスタ」,日東電工株式会社製)をPETフィルムF1の代わりに用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例6の光学用粘着シートを作製した。剥離ライナーの厚さを除く実施例6の光学用粘着シートの厚さは、650μmである。
【0113】
〔実施例7〕
光学用粘着シートの基材として、厚さ50μmのPET/ITOフィルム(商品名「エレクリスタ」,日東電工株式会社製)をPETフィルムF1の代わりに用いたこと、第2粘着剤層の形成材料としてアクリル系粘着剤組成物C1に代えてアクリル系粘着剤組成物C2を用いたこと、および、第2粘着剤層の厚さを500μmに代えて250μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例7の光学用粘着シートを作製した。剥離ライナーの厚さを除く実施例7の光学用粘着シートの厚さは、400μmである。
【0114】
〔実施例8〕
光学用粘着シートの基材として、厚さ50μmのPET/ITOフィルム(商品名「エレクリスタ」,日東電工株式会社製)をPETフィルムF1の代わりに用いたこと、第2粘着剤層の形成材料としてアクリル系粘着剤組成物C1に代えてアクリル系粘着剤組成物C2を用いたこと、および、第2粘着剤層の厚さを500μmに代えて100μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例8の光学用粘着シートを作製した。剥離ライナーの厚さを除く実施例8の光学用粘着シートの厚さは、250μmである。
【0115】
〔実施例9〕
第2粘着剤層の形成材料としてアクリル系粘着剤組成物C1に代えてアクリル系粘着剤組成物C3を用いたこと、および、第2粘着剤層の厚さを500μmに代えて250μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例9の光学用粘着シートを作製した。剥離ライナーの厚さを除く実施例9の光学用粘着シートの厚さは、400μmである。
【0116】
〔実施例10〕
第1粘着剤層の形成材料としてアクリル系粘着剤組成物C1に代えてアクリル系粘着剤組成物C3を用いたこと、光学用粘着シートの基材として厚さ50μmのPETフィルムF1に代えて厚さ80μmのPETフィルムF2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例10の光学用粘着シートを作製した。剥離ライナーの厚さを除く実施例10の光学用粘着シートの厚さは、680μmである。
【0117】
〔実施例11〕
第1粘着剤層の形成材料としてアクリル系粘着剤組成物C1に代えてアクリル系粘着剤組成物C2を用いたこと、第1粘着剤層の厚さを100μmに代えて175μmとしたこと、光学用粘着シートの基材として厚さ50μmのPETフィルムF1に代えて厚さ80μmのPETフィルムF2を用いたこと、第2粘着剤層の形成材料としてアクリル系粘着剤組成物C1に代えてアクリル系粘着剤組成物C4を用いたこと、および、第2粘着剤層の厚さを100μmに代えて250μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例11の光学用粘着シートを作製した。剥離ライナーの厚さを除く実施例11の光学用粘着シートの厚さは、505μmである。
【0118】
〔比較例1〕
第1粘着剤層の厚さを100μmに代えて25μmとしたこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の光学用粘着シートを作製した。剥離ライナーの厚さを除く比較例1の光学用粘着シートの厚さは、575μmである。
【0119】
〔比較例2〕
光学用粘着シートの基材として、厚さ175μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名「ルミラーS10」,東レ株式会社製)の両面にコロナ処理を施したもの(PETフィルムF3)をPETフィルムF1の代わりに用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例2の光学用粘着シートを作製した。剥離ライナーの厚さを除く比較例2の光学用粘着シートの厚さは、775μmである。
【0120】
〔比較例3〕
光学用粘着シートの基材として、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名「ルミラーS10」,東レ株式会社製)の両面にコロナ処理を施したもの(PETフィルムF4)をPETフィルムF1の代わりに用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例3の光学用粘着シートを作製した。剥離ライナーの厚さを除く比較例3の光学用粘着シートの厚さは、612μmである。基材としてのPETフィルムF4が薄いため、比較例3の光学用粘着シートの作製過程では当該粘着シートにシワが入りやすかった。
【0121】
〔比較例4〕
第2粘着剤層の厚さを500μmに代えて50μmとしたこと以外は実施例1と同様にして、比較例4の光学用粘着シートを作製した。剥離ライナーの厚さを除く比較例4の光学用粘着シートの厚さは、200μmである。
【0122】
〔比較例5〕
第1粘着剤層の形成材料としてアクリル系粘着剤組成物C1に代えてアクリル系粘着剤組成物C4を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例5の光学用粘着シートを作製した。剥離ライナーの厚さを除く比較例5の光学用粘着シートの厚さは、650μmである。
【0123】
〔比較例6〕
PET系剥離ライナー(厚さ125μm,日東電工株式会社製)上に、アクリル系粘着剤組成物C1を塗布し、粘着剤組成物層を形成した。次に、この粘着剤組成物層上に更にPET系剥離ライナー(厚さ125μm,日東電工株式会社製)を積層し、当該粘着剤組成物層を被覆して酸素を遮断した。このようにして、[剥離ライナー/粘着剤組成物層/剥離ライナー]の積層構成を有する積層体を得た。次に、この積層体に対し、その一方の剥離ライナーの側から、ブラックライト(株式会社東芝製)を使用して照度3mW/cm2の紫外線を300秒間照射した。これによって積層体の粘着剤組成物層を硬化させて粘着剤層とし、[剥離ライナー/粘着剤層/剥離ライナー]の積層構成を有する積層体を得た。この積層体における粘着剤層の厚さは500μmである。以上のようにして、厚さ500μmの単一のアクリル系粘着剤層よりなる比較例6の光学用粘着シートを作製した。
【0124】
〔比較例7〕
実施例1の光学用粘着シートの作製方法において上述した積層体L1と同様の積層体L1(剥離ライナー/第1粘着剤層(厚さ100μm)/剥離ライナー)を用意した。一方、PET系剥離ライナー(厚さ125μm,日東電工株式会社製)上に、アクリル系粘着剤組成物C3を塗布して粘着剤組成物層を形成し、この粘着剤組成物層上に更にPET系剥離ライナー(厚さ125μm,日東電工株式会社製)を積層して当該粘着剤組成物層を被覆して酸素を遮断した。このようにして、[剥離ライナー/粘着剤組成物層/剥離ライナー]の積層構成を有する積層体(積層体L3’)を得た。次に、この積層体L3’に対し、その一方の剥離ライナーの側から、ブラックライト(株式会社東芝製)を使用して照度3mW/cm2の紫外線を300秒間照射した。これによって積層体L3’の粘着剤組成物層を硬化させて粘着剤層とし、[剥離ライナー/粘着剤層(第2粘着剤層)/剥離ライナー]の積層構成を有する積層体(積層体L3)を得た。積層体L3における粘着剤層(第2粘着剤層)の厚さは250μmである。そして、積層体L1(剥離ライナー/第1粘着剤層(厚さ100μm)/剥離ライナー)から一方の剥離ライナーを剥離し、且つ、積層体L3(剥離ライナー/第2粘着剤層(厚さ250μm)/剥離ライナー)から一方の剥離ライナーを剥離した後、露出した第1粘着剤層表面と第2粘着剤層表面とを介して、片側剥離ライナー付き第1粘着剤層と片側剥離ライナー付き第2粘着剤層とを貼り合せた。以上のようにして、[剥離ライナー/第1粘着剤層(厚さ100μm)/第2粘着剤層(厚さ250μm)/剥離ライナー]の積層構成を有する比較例7の光学用粘着シートを作製した。剥離ライナーの厚さを除く比較例7の光学用粘着シートの厚さは、350μmである。
【0125】
〈第1粘着剤層の貯蔵弾性率と第2粘着剤層の損失正接〉
動的粘弾性測定により、実施例1〜11および比較例1〜5の各光学用粘着シートにおける第1粘着剤層に関する貯蔵弾性率および第2粘着剤層に関する損失正接を求めた。第1粘着剤層の貯蔵弾性率を求めるための動的粘弾性測定に供される測定用サンプルの作製においては、まず、光学用粘着シートごとに、その第1粘着剤層の構成材料たるアクリル系粘着剤組成物を粘着剤層形成材料として用いて、[剥離ライナー/粘着剤層(厚さ100μmの第1粘着剤層)/剥離ライナー]の積層構成を有する必要数の積層体(積層体L1)を、実施例1の積層体L1と同様にして、作製した。次に、作製した各積層体L1から剥離ライナーを剥離し、粘着剤層どうしを順次に貼り合わせて、約2mmの厚さの積層粘着剤層シートを作製した。次に、この積層粘着剤層シートを打抜いて円柱状のペレット(直径7.9mm)を得て、これを測定用サンプルとした。第2粘着剤層の貯蔵弾性率を求めるための動的粘弾性測定に供される測定用サンプルの作製においては、まず、光学用粘着シートごとに、その第2粘着剤層の構成材料たるアクリル系粘着剤組成物を粘着剤層形成材料として用いて、[剥離ライナー/粘着剤層(厚さ500μmの第2粘着剤層)/剥離ライナー]の積層構成を有する必要数の積層体(積層体L2)を、実施例1の積層体L2と同様にして、作製した。次に、作製した各積層体L2から剥離ライナーを剥離し、粘着剤層どうしを順次に貼り合わせて、約2mmの厚さの積層粘着剤層シートを作製した。次に、この積層粘着剤層シートを打抜いて円柱状のペレット(直径7.9mm)を得て、これを測定用サンプルとした。作製された各測定用サンプルについて、動的粘弾性測定装置(商品名「ARES」,レオメトリック社製)を使用して、直径7.9mmパラレルプレートの治具に固定した後に動的粘弾性測定を行った。本測定において、測定モードをせん断モードとし、測定温度範囲を−70℃〜150℃とし、昇温速度を5℃/分とし、周波数を1Hzとした。これにより、各測定用サンプルの貯蔵弾性率G’、損失弾性率G”、および損失正接tanδ(= 損失弾性率G”/貯蔵弾性率G’)の温度依存性を測定した。実施例1〜11および比較例1〜5の各光学用粘着シートにおける第1粘着剤層の95℃での貯蔵弾性率G’および第2粘着剤層の95℃での損失正接tanδの値を表1,2に掲げる。
【0126】
〈せん断粘着力〉
引張りせん断試験により、実施例1〜11および比較例1〜5,7の各光学用粘着シートの第1粘着剤層および比較例6の光学用粘着シート(単一の粘着剤層よりなる)について、ポリカーボネートに対するせん断粘着力を測定した。引張りせん断試験に供される測定用サンプルの作製においては、まず、実施例1の積層体L1に関して上述したのと同様にして、実施例1〜11および比較例1〜5,7の各光学用粘着シートの第1粘着剤層を含む積層体(剥離ライナー/粘着剤層(第1粘着剤層)/剥離ライナー)または比較例6の光学用粘着シート(単一の粘着剤層よりなる)を作製した。次に、各粘着剤層から粘着剤片(10mm×10mm)を切り出した。次に、各粘着剤片の一方の面をアクリル板(50mm×100mm)に貼り合わせ、且つ、他方の面を、ポリカーボネート層とポリメタクリル酸メチル層との二層構造を有する複合シート(商品名「ユーピロン・シート HMRS51T」,三菱ガス化学株式会社製,90mm×160mm)のポリカーボネート面に貼り合わせた。このようにして得られた構造体を、測定用サンプルとした。そして、測定用サンプルを95℃の環境下に30分間放置した後、95℃の環境下で、測定用サンプルにおいて粘着剤片を介して接合しているアクリル板と複合シートとを、引張り力を測定しつつ、引張り速度2mm/分で反対方向に引っ張った。その時に測定された最大値をせん断粘着力(N/cm2)とした。その結果を表1,2に掲げる。
【0127】
〈段差追従性〉
実施例および比較例の各光学用粘着シートについて、いわゆる印刷ガラスを用いて段差追従性を調べた。用いた印刷ガラスの表面には、ガラス表面に対して45μmの印刷段差を生じさせる印刷層がパターン形成されおり、このような印刷ガラスの印刷パターン形成面に対し、ハンドローラーを使用して、室温にて光学用粘着シートをその第1粘着剤層側にて貼り合せた。そして、印刷ガラスに貼り合わされた光学用粘着シートにおいて、ガラス表面の印刷パターンの縁端(印刷段差の部分)に沿って幅1mm以上の浮きを生じなかった場合を、段差追従性は良好(○)と評価し、そのような幅1mm以上の浮きを生じた場合を、段差追従性は不良(×)と評価した。その結果を表1,2に掲げる。
【0128】
〈95℃接着信頼性〉
実施例および比較例の各光学用粘着シートについて、次のようにして、偏光フィルムに対する接着信頼性を調べた。接着信頼性試験に供されるサンプル構造体の作製においては、まず、ガラス板(120mm×180mm)に対してハンドローラーを使用して偏光フィルム(商品名「SEG1425DU」,日東電工株式会社製)を貼り合わせた偏光フィルム付ガラスを用意した。次に、光学用粘着シートから一方の剥離ライナー(光学用粘着シートが第1粘着剤層を有する場合には第1粘着剤層側の剥離ライナー)を剥離した後、ポリカーボネート層とポリメタクリル酸メチル層との二層構造を有する複合シート(商品名「ユーピロン・シート HMRS51T」,三菱ガス化学株式会社製,90mm×160mm)のポリカーボネート面に対し、当該光学用粘着シートをその第1粘着剤層側にて貼り合わせた。次に、このようにしてポリカーボネート面に貼り合わされた光学用粘着シートから他方の剥離ライナーを剥離した後、当該複合シート付光学用粘着シートをその第2粘着剤層側にて前記の偏光フィルム付ガラスの偏光フィルム面に対して貼り合わせた。光学用粘着シートが構成要素として基材を含む場合には、その基材の流れ方向(MD方向)と偏光フィルムの透過容易軸の方向とが45度をなす配向で、複合シート付光学用粘着シートと偏光フィルム付ガラスとを貼り合わせた。その後、真空プレスにより、複合シート付光学用粘着シートと偏光フィルム付ガラスとの間の圧着を行った。この真空プレスにおいては、圧力を0.3MPaとし、真空度を100Paとし、プレス時間を5秒間とした。以上のようにして、95℃接着信頼性試験に供されるサンプル構造体を光学用粘着シートごとに作製した。そして、サンプル構造体をオートクレーブに投入し、温度50℃および圧力0.5MPaの条件で、15分間のオートクレーブ処理を行った。オートクレーブ処理後のサンプル構造体について、95℃の環境下に24時間放置した後、目視による観察を行った。各サンプル構造体については、その厚さ方向に透過観察が可能であるところ、観察において、発泡がなく且つ剥がれもない場合を、95℃接着信頼性は良好(○)と評価し、発泡または剥がれがある場合を、95℃接着信頼性は不良(×)と評価した。その結果を表1,2に掲げる。
【0129】
[評価]
本発明の構成を具備する実施例1〜11の光学用粘着シートにおいては、いずれも、良好な段差追従性が実現され、且つ、良好な95℃接着信頼性が実現された。これに対し、比較例1〜7の光学用粘着シートにおいては、いずれも、良好な段差追従性および/または良好な95℃接着信頼性が実現されなかった。具体的には、以下のとおりである。
【0130】
比較例1の光学用粘着シートは、第1粘着剤層の厚さが25μmと小さすぎるため、良好な段差追従性が得られなかった。第1粘着剤層の厚さが25μmと小さすぎる比較例1の光学用粘着シートでは、第1粘着剤層粘着面とこれに対する被着体との間において微小な異物の影響を受けやすく、良好な95℃接着信頼性も得られなかった。比較例2の光学用粘着シートは、基材の厚さが175μmと大きすぎて基材の剛性が過大であるため、良好な段差追従性が得られなかった。良好な段差追従性が得られない比較例2の光学用粘着シートでは、第1粘着剤層粘着面とこれに対する被着体との間において微小な異物の影響を受けやすく、良好な95℃接着信頼性も得られなかった。比較例3の光学用粘着シートは、基材の厚さが12μmと小さすぎて基材の剛性が過小であるため、基材に対する貼り合せ作業時に光学用粘着シートにシワが生じやすい。そのような比較例3の光学用粘着シートでは、当該シワに因って基材と粘着シートの間に特に高温条件下で気泡を生じやすく、良好な95℃接着信頼性が得られなかった。比較例4の光学用粘着シートは、第2粘着剤層の厚さが50μmと小さすぎ、当該第2粘着剤層が上記の接着信頼性試験での偏光フィルムの寸法変化に追従できないため、良好な95℃接着信頼性が得られなかった。比較例4の光学用粘着シートが良好な段差追従性を得られなかったのは、第2粘着剤層の厚さが50μmと小さすぎて粘着シート全体の厚みが段差を吸収するうえで不足しているためであると考えられる。比較例5の光学用粘着シートは、第1粘着剤層の95℃での貯蔵弾性率が小さすぎ、上記の接着信頼性試験での複合シートのポリカーボネート層からのアウトガスの圧力に第1粘着剤層が耐えられずに第1粘着剤層とポリカーボネート層との界面に発泡が生じ、良好な95℃接着信頼性が得られなかった。単一の粘着剤層よりなる比較例6の光学用粘着シートは、良好な95℃接着信頼性が得られなかった。ポリカーボネート製カバー等の樹脂製カバーは、室温から昇温する過程で膨張し且つ室温へ降温する過程で収縮するという特性を示す傾向があり、この変形特性は、偏光フィルムのそれと逆である。単一の粘着剤層よりなる比較例6の光学用粘着シートにおいて良好な95℃接着信頼性が得られなかったのは、上記の接着信頼性試験において逆方向に変形する傾向にあるポリカーボネート層および偏光フィルムの各寸法変化に単一粘着剤層が追従できなかったためであると考えられる。比較例7の光学用粘着シートは、上記の接着信頼性試験において、基材を介さずに直接に接合されている第1粘着剤層と第2粘着剤層との間の界面にて剥がれが生じてしまい、良好な95℃接着信頼性が得られなかった。
【0131】
【表1】
【0132】
【表2】
【符号の説明】
【0133】
X 粘着シート(光学用粘着シート)
Y 粘着剤層付偏光フィルム
Z 液晶表示装置
11 粘着剤層(第1粘着剤層)
12 粘着剤層(第2粘着剤層)
13 基材
21 偏光フィルム
30 液晶パネル
31,32 ガラス板
34,35 偏光フィルム
41 樹脂製カバー
図1
図2
図3