【実施例1】
【0014】
始めに、
図1の概略図を用いて、実施例1の飛行作業体10を用いた点検システム1の概要を説明する。なお、
図1では、下水管路の平坦な天井面の点検作業を例示するが、雨水貯留管、共同溝、トンネル、橋梁下等の他の構造物の天井面の点検に、本発明の飛行作業体を用いても良い。また、本発明における天井面とは、構造物内部の上側の面であって、重力ベクトルが面外を向いている面のことである。例えば、下水管路のような円管の場合、重力方向に対して垂直な面より上部の円管上半面全てを天井面とする。また、該天井面の形状は、平坦に限らず、傾斜面、湾曲面や凹凸面を含み、不連続面が含まれていても良い。さらに、飛行作業体に、天井面等の補修に用いる補修装置を付加した構成としても良い。
【0015】
図1に示すように、本実施例の点検システム1は、主に、飛行作業体10とコントローラ5からなる。飛行作業体10は、φ600mm程度のマンホールを通過できる小型のものである。小型化を実現するための構成の詳細は後述する。また、コントローラ5は、飛行作業体10との間で信号を送受信する通信アンテナ7と、この通信アンテナ7を介して受信した飛行作業体10からの管内映像、環境データを表示する表示部(モニタ6)と、を有しており、点検作業員はモニタ6を見ながら飛行作業体10を操作できる。
【0016】
この点検システム1を用いて下水管路2を点検するには、例えば、
図1の黒塗り矢印で示すように、飛行作業体10を、第1マンホール3から下水管路2内に侵入させ、天井面を接触移動させながら下水管路2の内壁や下水管路2内の環境をモニタリング(調査)し、第2マンホール4を通り地上へ帰還させる経路が考えられる。このように、天井面を接触移動させながらモニタリングするのは、飛行作業体10が下水に浸かるのを避けるためだけではなく、自身が発生させた風による飛行の不安定化を抑制し、安定移動中のモニタリングを可能とするためである。
【0017】
また、他の経路として、点線矢印で示すように、第1マンホール3から下水管路2内に侵入し、下水管路2内の所望範囲をモニタリング(調査)した後、折り返し、第1マンホール3を通り地上へ帰還する経路を用いても良い。この経路の場合、第2マンホール4の蓋を開ける必要がなくなり、第2マンホール4上の交通規制作業が省かれるため、交通規制を最小限にすることができるだけではなく、点検作業員による作業負荷が低減される。
【0018】
なお、
図1では、第1マンホール3より下水管路2内に下ろした通信アンテナ7を介して、飛行作業体10を点検作業員がコントローラ5により遠隔操作する場合を示したが、飛行作業体10に周辺環境を認識するセンサを搭載し、点検作業員の操作がない場合であっても、自動で点検作業できる構成としても良い。また、
図1では、接触移動に関し、天井面に連続して接触し、水平方向に移動する例を示したが、当然のことながら、飛行作業体は、常に天井面に接触し続けなければならないというものではない。例えば、天井面にひび割れや破損、不連続面や突起物がある場合、飛行作業体がそれらへの接触を回避するために間欠的に接触と非接触を繰り返しながら移動する方法が有効である。
【0019】
次に、実施例1の飛行作業体10について、
図2から
図4を用いて説明する。まず、
図2に示す飛行作業体の基本構成について述べる。ここに示すように、飛行作業体10は、天井面と接触しながら移動するための天井面接触ユニット11と、天井面接触ユニット11の下方に設けられ、飛行のための推進部を備えた飛行ユニット12から構成され、両者は、少なくとも1軸方向以上の回転自由度を有する接続部13で接続されている。この構成によって、通常は天井面接触ユニット11と略平行に保たれた飛行ユニット12を、適当な操作によって、前傾または後傾させることができるため、天井面に天井面接触ユニット11を接触させたまま、飛行作業体10を前進または後進させることができる。
【0020】
飛行作業体10は、上述の基本構成に加えて、下水管路2内を点検するための機器として、下水管路2内を照らす照明器21と、動画及び/又は静止画を撮像可能なカメラ22と、撮影した画像を地上の作業者が確認するモニタ6へリアルタイムで送信する映像送信器23と、下水管路2内の温度、湿度、ガス濃度等を測定する環境センサ24を搭載している。なお、
図2では、照明器21、カメラ22、映像送信器23、環境センサ24を、天井面接触ユニット11に設けた構成を例示しているが、これらの一部または全部を飛行ユニット12に設ける構成としても良い。
【0021】
次に、
図3の上面図を用いて、天井面接触ユニット11の詳細を説明する。天井面接触ユニット11は、飛行作業体10が天井面に接触したときに安定した接触移動を実現するためのものであり、天井面接触ユニットフレーム15で形成したシャーシに、二本の車軸31に車輪14を取り付けた、二軸四輪の台車構造である。車輪14の各々には、自走用アクチュエータを設けていないため、自走用アクチュエータの回転制御による進行方向制御には対応していないが、サーボモータ52とステアリング機構30からなる操舵装置によって、一方の車軸31の向きを制御し、進行方向を制御することができる。なお、サーボモータ52としては、自走用アクチュエータよりも軽い、20g程度のものの使用を想定している。また、常時駆動が必要な自走用アクチュエータと異なり、サーボモータ52は、進行方向を変更するときのみ駆動すれば良い。これらの理由により、本実施例の操舵装置を用いることで、自走用アクチュエータを用いる構成に比べ、総重量と消費電力の両方を大きく抑制することができる。
【0022】
なお、
図3の天井面接触ユニット11では、センタピボット方式のステアリング機構30を図示しているが、従来の自動車に用いられているようなアッカーマン方式のリンク機構を用いても良い。また、ステアリング機構30は、前輪、後輪の一方に備えれば良いが、両方に備えてもよい。
【0023】
次に、
図2の側面図を用いて、飛行ユニット12の詳細を説明する。飛行ユニット12は、飛行ユニットフレーム18、プロペラ16及びモータ17からなる推力部、飛行制御部19、バッテリー等の動力源20より構成される。本実施例では、4組のプロペラ16とモータ17から成る、従来のマルチコプタ型の推進部を用いた制御方式を取っている。すなわち、各プロペラ16の回転数を変化させることで、飛行ユニット12自体を傾け、前後左右、上下へ移動させることができ、飛行制御部19に搭載されているIMU(Inertial Measurement Unit)センサの加速度、角速度、方位情報をフィードバックし、空中での姿勢制御を行っている。なお、十分な飛行推力を発生させ、推力方向を任意に制御できるのであれば、他の構成の推力発生部を用いても良い。
【0024】
次に、
図2の側面図を用いて、接続部13の詳細を説明する。本実施例では、天井面接触ユニット11と飛行ユニット12を接続する接続部13として、天井面接触ユニット11の主たる進行方向(管軸方向、
図2では左方向)と垂直に円柱状の固定ピン32を配置しており、これにより両ユニットを回動自在に連結している。本構成により、
図4に示すように、固定ピン32を回転軸として、天井面接触ユニット11に対して飛行ユニット12を前後に傾けることができるので、天井面接触ユニット11の車輪14を天井壁面40に押し付けながら、飛行作業体10を安定して接触移動させることが可能となる。
【0025】
以上で説明したように、本実施例の飛行作業体10を用いた点検システム1によれば、天井面接触ユニット11に自走用アクチュエータを用いなくとも、安定した接触移動と進行方向制御ができるので、飛行作業体の重量や消費エネルギーを抑制しつつ、天井面等に対し安定した点検、調査、補修等の作業を実現することができる。また、小型化が容易な構成であるため、下水管内のような狭い空間内でも安定したモニタリングを行うことができる。
(変形例1)
次に、
図5を用いて、実施例1の飛行作業体10の変形例1を説明する。
図3では、天井と接した飛行作業体10の進行方向を制御するために、ステアリング機構30を用いたが、本変形例では、ステアリング機構の代替構成として、
図5に示すような車輪14にブレーキパッド50をリンク機構51を介してサーボモータ52に取り付けた。すなわち、本変形例で用いられるのは、サーボモータ52の駆動によりブレーキパッド50を車輪14に押し当て、左右の車輪14で回転差を生じさせ、進行方向を制御する方式である。ステアリング方式のように前輪の車軸31を左右に大きく可動させなくて済むため、実施例1の効果に加え、車輪可動部と天井面接触ユニットフレーム15との干渉の問題を解決することが可能となる。
(変形例2)
次に、
図6を用いて、実施例1の飛行作業体10の変形例1を説明する。
図3の天井面接触ユニット11では、天井面接触部として二軸四輪の台車構造を示したが、必ずしもこれに限られるものではない。すなわち、天井面接触ユニット11が、安定した天井面の接触移動を達成するための接触方式として、同一直線上にない3点以上の接触点を形成できる天井面接触部であれば良く、例えば、
図6に示す天井面接触ユニット11のように、二軸三輪の台車構造を用いても良い。なお、接触点の数は、3輪(3点)以上であれば個数や種類に制限は無いが、飛行ユニット12のペイロードに余裕を持たせるため、軽量であること、すなわち、車輪14の数が少ないことが好ましい。また、壁面の状態に応じて、種類や外径の異なる車輪を組み合わせてもよい。各車輪14(接触点)の配置は、天井面接触ユニット11が天井面に接触し、移動した際に、左右前後のふらつきを抑制するため、また、各接触点に均等に接触力が加わるように接触点を飛行作業体10の主たる進行方向(管軸方向)に対して、左右対称に配置することが望ましい。
(変形例3)
次に、
図7、
図8を用いて、トンネル等の湾曲天井面との接触移動に適した、天井面接触ユニット11の変形例を説明する。湾曲天井面を接触移動する場合、平坦天井面を想定した通常形状の車輪を備える
図3の天井面接触ユニット11では、トンネル等の円弧状接触面と車輪の接触が不安定となるため、蛇行が発生し易く、直進が難しい場合がある。
【0026】
そこで、
図7の天井面接触ユニット11では、湾曲天井面60の管軸方向への直進安定性を向上させるため、湾曲天井面用車輪61の接地面を正面視したときの曲率を、湾曲天井面60の曲率に近似させることで、湾曲天井面60と湾曲天井面用車輪61が安定接触できるようにした。この構成を用いることで、飛行作業体10の重心移動により、天井面接触ユニット11の左右車輪にかかる負荷の割合が変化した場合であっても、湾曲天井面60の管軸方向への接触移動の際に生じる横揺れや蛇行を抑え、進行方向を安定化させることが可能となる。
【0027】
なお、
図7の変形例では、湾曲天井面60の形状に応じた湾曲天井面用車輪61が用いる必要があるため、異なる曲率の湾曲天井面60をモニタリングする場合は、それに対応した他の湾曲天井面用車輪61に交換すればよい。
【0028】
また、
図8の天井面接触ユニット11では、車輪14が外側に開くようにポジティブキャンバー(角)62を調整できるようにした。このように車輪14を湾曲天井面60の法線方向に傾けることで、湾曲天井面60の管軸方向への接触移動の際に、天井面接触ユニット11のステアリング機構30が左右に切り易くなり、管軸方向へ直進したい場合に進行方向を補正し易くする効果がある。尚、ポジティブキャンバー(角)62を設ける代わりにトー(トーイン)角やキャスター角を必要に応じて付けてもよい。
【実施例2】
【0029】
図9、
図10を用いて、実施例2の飛行作業体10における接続部13を説明する。なお、実施例1と共通する点は重複説明を省略するものとする。
【0030】
本実施例では、
図9に示すように、複数のバネ等の弾性体70からなる接続部13を用いる。この構成を用いることで、飛行ユニット12の傾きに応じて、弾性体70が圧縮変形することで、天井面接触ユニット11の車輪14を天井面に押し付けながら移動させることが可能となる。
【0031】
実施例1では一本の固定ピン32からなる接続部13を用いたため、接続部13の回転自由度は1軸方向であったが、本実施例のように複数弾性体からなる接続部13を用いることで、1軸方向以上の回転自由度が得られるため、天井壁面に複雑な凹凸があっても、天井面接触ユニット11を柔軟に壁面接触させながら、飛行作業体10を接触移動させることができる。
(変形例)
本実施例の接続部13を用いる場合、
図10に示すように、車輪14に代えて、互いに交差しないように配置した2本以上の低摩擦板71を天井面接触ユニット11の天井面接触部として用いても良い。なお、低摩擦体であれば、
図10に示したスキー板状の低摩擦板71に限らず、棒状のものを用いても、安定した接触移動を実現することができる。
【0032】
また、
図10の低摩擦板71に加え、サーボモータ52で方向制御される舵取り用の低摩擦板や、舵取り用の推進ファンを設けることで、本変形例の飛行作業体10の進行方向を適切に制御することができる。
【0033】
なお、以上では、実施例1の構成と、実施例2の構成を別個に説明したが、両者をともに備えた構成としても良い。すなわち、接続部13を、一方向の回転自由度を持つ固定ピンと、多方向の回転自由度を持つ弾性体70を組み合わせた構成としても良い。