特許第6804321号(P6804321)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6804321
(24)【登録日】2020年12月4日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】眼科装置及びその作動方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20201214BHJP
【FI】
   A61B3/10
【請求項の数】12
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2017-21527(P2017-21527)
(22)【出願日】2017年2月8日
(65)【公開番号】特開2018-126326(P2018-126326A)
(43)【公開日】2018年8月16日
【審査請求日】2020年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 亮輔
【審査官】 増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開平5−302868(JP,A)
【文献】 特開2001−178677(JP,A)
【文献】 特開平8−10222(JP,A)
【文献】 特開2015−211781(JP,A)
【文献】 特開2009−66258(JP,A)
【文献】 特開2014−207976(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0113485(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00−3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の眼特性の取得動作を行う装置本体と、
前記取得動作に含まれる複数の動作段階と、前記複数の動作段階にそれぞれ対応した前記装置本体の動作制御と、の対応関係を取得する対応関係取得部と、
前記動作制御の開始操作であって且つ前記複数の動作段階で共通の前記開始操作を検出する操作検出部と、
前記操作検出部で前記開始操作が検出された場合に前記複数の動作段階の中から現在の動作段階を判別し、前記対応関係取得部が取得した前記対応関係を参照して、前記現在の動作段階に対応した前記動作制御を決定する決定部と、
前記決定部が決定した前記動作制御に従って前記装置本体を動作させる制御部と、
を備える眼科装置。
【請求項2】
前記対応関係には、前記複数の動作段階ごとに、前記動作制御の種類と、前記動作制御の種類に対して予め定められた前記開始操作の種類とが対応付けて記憶されており、
前記決定部は、前記操作検出部で前記開始操作が検出された場合に、前記対応関係を参照して、前記現在の動作段階及び前記開始操作の種類の双方に対応した前記動作制御の種類を決定する請求項1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記装置本体は、ベースと、前記眼特性を取得する眼特性取得部と、前記ベースに設けられ、前記ベースに対して前記眼特性取得部を予め定めた軸方向に移動させる駆動部と、を備え、
前記複数の動作段階には、前記装置本体による前記被検眼の前記眼特性の取得の開始前の第1動作段階が含まれ、
前記対応関係には、前記第1動作段階に対応した前記動作制御として、前記駆動部の駆動を制御して前記被検眼に対する前記眼特性取得部のアライメントを開始するアライメント開始制御と、前記駆動部の駆動を制御して前記眼特性取得部による前記眼特性の取得の対象の前記被検眼を左右眼の一方から他方に切り替える左右切替移動制御と、が記憶されている請求項1又は2に記載の眼科装置。
【請求項4】
前記装置本体は、ベースと、前記眼特性を取得する眼特性取得部と、前記ベースに設けられ、前記ベースに対して前記眼特性取得部を予め定めた軸方向に移動させる駆動部と、を備え、
前記複数の動作段階には、前記駆動部が前記眼特性取得部を前記被検眼に向かう方向に移動させている第2動作段階が含まれ、
前記対応関係には、前記第2動作段階に対応した前記動作制御として、前記駆動部の駆動を制御して前記眼特性取得部を前記被検眼から遠ざかる方向に移動させてから停止させる第1停止制御が記憶されている請求項1から3のいずれか1項に記載の眼科装置。
【請求項5】
前記装置本体は、ベースと、前記眼特性を取得する眼特性取得部と、前記ベースに設けられ、前記ベースに対して前記眼特性取得部を予め定めた軸方向に移動させる駆動部と、を備え、
前記複数の動作段階には、前記駆動部が前記眼特性取得部を前記被検眼に向かう方向とは異なる方向に移動させている第3動作段階が含まれ、
前記対応関係には、前記第3動作段階に対応した前記動作制御として、前記駆動部の駆動を制御して前記眼特性取得部の移動を停止する第2停止制御が記憶されている請求項1から4のいずれか1項に記載の眼科装置。
【請求項6】
前記装置本体は、前記被検眼の前記眼特性の取得結果を出力する出力部を有し、
前記複数の動作段階には、前記装置本体による前記被検眼の前記眼特性の取得が完了した後の第4動作段階が含まれ、
前記対応関係には、前記第4動作段階に対応した前記動作制御として、前記出力部に前記取得結果の出力を実行させる出力実行制御が記憶されている請求項1から5のいずれか1項に記載の眼科装置。
【請求項7】
前記装置本体は、ベースと、前記眼特性を取得する眼特性取得部と、前記ベースに設けられ、前記ベースに対して前記眼特性取得部を予め定めた軸方向に移動させる駆動部と、を備え、
前記操作検出部は、前記開始操作として、前記眼特性取得部及び前記駆動部の少なくとも一方を前記軸方向に押し操作又は引き操作する押し引き操作を検出し、
前記決定部は、前記操作検出部による前記押し引き操作の検出結果に基づき、前記現在の動作段階に対応した前記動作制御を決定する請求項1から6のいずれか1項に記載の眼科装置。
【請求項8】
前記操作検出部は、前記押し引き操作の操作方向と、前記押し引き操作の圧力の大きさとを検出し、
前記決定部は、前記操作検出部が検出した前記圧力の大きさが予め定めた閾値未満の場合に前記現在の動作段階に対応した前記動作制御の決定を行い、
前記駆動部は、前記操作検出部が検出した前記圧力の大きさが前記閾値以上の場合に、前記眼特性取得部を当該圧力の大きさに応じた速度で前記押し引き操作の操作方向に向けて移動させる請求項7に記載の眼科装置。
【請求項9】
前記駆動部は、前記眼特性取得部と一体に移動する第1係合部と、前記第1係合部に係合する第2係合部と、前記第2係合部を前記軸方向に沿って移動させる駆動源と、を備え、
前記第1係合部及び前記第2係合部は、前記軸方向において互いに対向する対向面を有し、
前記操作検出部は、前記第1係合部及び前記第2係合部の双方の前記対向面にそれぞれ接続された圧力センサであって、且つ前記押し引き操作の操作方向に応じて前記双方の前記対向面の間で圧縮又は伸長される圧力センサである請求項7又は8に記載の眼科装置。
【請求項10】
前記操作検出部は、前記開始操作として、操作者による接触操作を検出する接触センサである請求項1から6のいずれか1項に記載の眼科装置。
【請求項11】
前記操作検出部は、前記開始操作として、操作者の予め定めた動作を検出するモーションセンサである請求項1から6のいずれか1項に記載の眼科装置。
【請求項12】
被検眼の眼特性の取得動作を行う装置本体を備える眼科装置の作動方法において、
対応関係取得部が、前記取得動作に含まれる複数の動作段階と、前記複数の動作段階にそれぞれ対応した前記装置本体の動作制御と、の対応関係を取得する取得工程と、
操作検出部が、前記動作制御の開始操作であって且つ前記複数の動作段階で共通の前記開始操作を検出する検出工程と、
決定部が、前記操作検出部で前記開始操作が検出された場合に前記複数の動作段階の中から現在の動作段階を判別し、前記対応関係取得部が取得した前記対応関係を参照して、前記現在の動作段階に対応した前記動作制御を決定する決定工程と、
制御部が、前記決定部により決定した前記動作制御に従って前記装置本体を動作させる制御工程と、
を有する眼科装置の作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検眼の眼特性を測定する眼科装置及びその作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
眼科では、被検眼の眼屈折力、眼圧、及び角膜内皮細胞の数などの各種の眼特性の取得(測定、撮影、及び観察等)を眼科装置により行う。この場合、取得する眼特性の精度、確度及び画質等の観点から、被検眼に対する眼科装置の測定ユニット(眼特性取得部)の位置合わせ、すなわちアライメントが極めて重要となる。このため、眼科装置にはベースに対して測定ユニットを移動させることによりアライメント調整を行う構成が設けられている。
【0003】
特許文献1及び2には、測定ユニットの移動を電動型の駆動部で行う眼科装置が記載されている。特許文献1及び2に記載の眼科装置では、例えば操作レバーの傾倒操作により駆動部の駆動を制御して測定ユニットを移動させる。これにより、手動のアライメントを操作レバーの傾倒操作により行うことができる。また、特許文献1及び2に記載の眼科装置では、被検眼に対する測定ユニットのアライメントを検出し、この検出結果に基づき駆動部の駆動を制御して、アライメントを自動で行う所謂フルオートアライメント(以下、単にオートアライメントという)が可能となる。
【0004】
ところで、近年では眼科装置の多機能化が進み、操作レバーだけでは眼科装置の全操作を行うことが困難になっている。このため、特許文献3には、操作レバーの他にタッチパネル式モニタを備える眼科装置が記載されている。このタッチパネル式モニタには、眼科装置で行われる被検眼の眼特性の取得に係る操作画面(アイコン等)が表示される。そして、特許文献3に記載の眼科装置では、タッチパネル式モニタの画面内に表示されている操作画面のアイコンに対してタッチ操作を行うことにより、被検眼の眼特性の測定動作を行う装置本体を駆動して、オートアライメントの開始、オートアライメントの緊急停止、及び眼特性の測定結果の出力等を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−234号公報
【特許文献2】特開2014−23960号公報
【特許文献3】特開2015−167683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献3に記載の眼科装置では、上記の測定ユニットの移動制御に係る各種操作を行う場合に、タッチパネル式モニタの画面上の限られた面積に表示されている操作画面のアイコン等をタッチ操作する必要がある。このため、操作者は、操作レバーを操作する場合とは異なり直感的な操作を行うことができない。
【0007】
また、眼科装置が行う被検眼の眼特性の取得動作には、眼測定の測定前、オートアライメントの実行中、及び眼測定の完了後などの複数の動作段階が含まれている。そして、各動作段階において実行される眼科装置の動作制御の種類(例えば既述のオートアライメントの開始、オートアライメントの緊急停止、及び眼特性の測定結果の出力等)は、必ずしも同一ではなく異なる場合もある。
【0008】
このため、上記特許文献3に記載の眼科装置のように、タッチパネル式モニタに表示される操作画面のアイコンをタッチ操作して、各動作段階に応じた眼科装置の動作制御を実行する場合、動作段階ごとに対応する操作画面(アイコン)を用意する必要が生じる。その結果、操作画面の数及びアイコンの数が増加するため、操作者が現在の動作段階に対応した操作画面内から所望のアイコンを探し出すのに時間が掛かる。従って、例えばオートアライメントを緊急停止する必要がある場合に、操作者が迅速に非常停止用のアイコンを見つけてタッチ操作することが困難となる。その結果、眼科装置の操作性が著しく低下するという問題が生じる。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、被検眼の眼特性の取得動作に含まれる複数の動作段階の中で、現在の動作段階に対応した装置本体の動作制御の開始操作を、操作性を低下させることなく操作者が直感的に行うことができる眼科装置及びその作動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的を達成するための眼科装置は、被検眼の眼特性の取得動作を行う装置本体と、取得動作に含まれる複数の動作段階と、複数の動作段階にそれぞれ対応した装置本体の動作制御と、の対応関係を取得する対応関係取得部と、動作制御の開始操作であって且つ複数の動作段階で共通の開始操作を検出する操作検出部と、操作検出部で開始操作が検出された場合に複数の動作段階の中から現在の動作段階を判別し、対応関係取得部が取得した対応関係を参照して、現在の動作段階に対応した動作制御を決定する決定部と、決定部が決定した動作制御に従って装置本体を動作させる制御部と、を備える。
【0011】
この眼科装置によれば、被検眼の眼特性の測定動作の各動作段階においてそれぞれ予め定められた装置本体の動作制御を、各動作段階で共通の開始操作を行うことにより開始させることができる。その結果、多数の動作制御を開始させるための多数のアイコンをモニタの操作画面上に表示させたり、或いは操作者が多数の操作パターンを記憶したりする必要が無くなる。
【0012】
本発明の他の態様に係る眼科装置において、対応関係には、複数の動作段階ごとに、動作制御の種類と、動作制御の種類に対して予め定められた開始操作の種類とが対応付けて記憶されており、決定部は、操作検出部で開始操作が検出された場合に、対応関係を参照して、現在の動作段階及び開始操作の種類の双方に対応した動作制御の種類を決定する。これにより、多数の動作制御を開始させるための多数のアイコンをモニタの操作画面上に表示させたり、或いは操作者が多数の操作パターンを記憶したりする必要が無くなるので、操作者の操作性をより向上させることができる。
【0013】
本発明の他の態様に係る眼科装置において、装置本体は、ベースと、眼特性を取得する眼特性取得部と、ベースに設けられ、ベースに対して眼特性取得部を予め定めた軸方向に移動させる駆動部と、を備え、複数の動作段階には、装置本体による被検眼の眼特性の取得の開始前の第1動作段階が含まれ、対応関係には、第1動作段階に対応した動作制御として、駆動部の駆動を制御して被検眼に対する眼特性取得部のアライメントを開始するアライメント開始制御と、駆動部の駆動を制御して眼特性取得部による眼特性の取得の対象の被検眼を左右眼の一方から他方に切り替える左右切替移動制御と、が記憶されている。これにより、操作者は第1動作段階で上述の開始操作を行うだけでアライメント開始制御又は左右切替移動制御を開始させられるため、操作者の操作性を向上させることができる。
【0014】
本発明の他の態様に係る眼科装置において、装置本体は、ベースと、眼特性を取得する眼特性取得部と、ベースに設けられ、ベースに対して眼特性取得部を予め定めた軸方向に移動させる駆動部と、を備え、複数の動作段階には、駆動部が眼特性取得部を被検眼に向かう方向に移動させている第2動作段階が含まれ、対応関係には、第2動作段階に対応した動作制御として、駆動部の駆動を制御して眼特性取得部を被検眼から遠ざかる方向に移動させてから停止させる第1停止制御が記憶されている。これにより、操作者は第2動作段階で上述の開始操作を行うだけで第1停止制御を開始させられるため、操作者の操作性を向上させることができる。
【0015】
本発明の他の態様に係る眼科装置において、装置本体は、ベースと、眼特性を取得する眼特性取得部と、ベースに設けられ、ベースに対して眼特性取得部を予め定めた軸方向に移動させる駆動部と、を備え、複数の動作段階には、駆動部が眼特性取得部を被検眼に向かう方向とは異なる方向に移動させている第3動作段階が含まれ、対応関係には、第3動作段階に対応した動作制御として、駆動部の駆動を制御して眼特性取得部の移動を停止する第2停止制御が記憶されている。これにより、操作者は第3動作段階で上述の開始操作を行うだけで第2停止制御を開始させられるため、操作者の操作性を向上させることができる。
【0016】
本発明の他の態様に係る眼科装置において、装置本体は、被検眼の眼特性の取得結果を出力する出力部を有し、複数の動作段階には、装置本体による被検眼の眼特性の取得が完了した後の第4動作段階が含まれ、対応関係には、第4動作段階に対応した動作制御として、出力部に取得結果の出力を実行させる出力実行制御が記憶されている。これにより、操作者は第4動作段階で上述の開始操作を行うだけで出力実行制御を開始させられるため、操作者の操作性を向上させることができる。
【0017】
本発明の他の態様に係る眼科装置において、装置本体は、ベースと、眼特性を取得する眼特性取得部と、ベースに設けられ、ベースに対して眼特性取得部を予め定めた軸方向に移動させる駆動部と、を備え、操作検出部は、開始操作として、眼特性取得部及び駆動部の少なくとも一方を軸方向に押し操作又は引き操作する押し引き操作を検出し、決定部は、操作検出部による押し引き操作の検出結果に基づき、現在の動作段階に対応した動作制御を決定する。これにより、被検眼の眼特性の測定動作の各動作段階においてそれぞれ予め定められた動作制御を、各動作段階で押し引き操作を行うことによって開始させることができる。
【0018】
本発明の他の態様に係る眼科装置において、操作検出部は、押し引き操作の操作方向と、押し引き操作の圧力の大きさとを検出し、決定部は、操作検出部が検出した圧力の大きさが予め定めた閾値未満の場合に現在の動作段階に対応した動作制御の決定を行い、駆動部は、操作検出部が検出した圧力の大きさが閾値以上の場合に、眼特性取得部を圧力の大きさに応じた速度で押し引き操作の操作方向に向けて移動させる。これにより、操作者は押し引き操作の力を増減することで、駆動部による眼特性取得部の移動と装置本体の動作制御との選択を直感的に行うことができる。また、操作者が意図しない制御の実行が防止される。
【0019】
本発明の他の態様に係る眼科装置において、駆動部は、眼特性取得部と一体に移動する第1係合部と、第1係合部に係合する第2係合部と、第2係合部を軸方向に沿って移動させる駆動源と、を備え、第1係合部及び第2係合部は、軸方向において互いに対向する対向面を有し、操作検出部は、第1係合部及び第2係合部の双方の対向面にそれぞれ接続された圧力センサであって、且つ押し引き操作の操作方向に応じて双方の対向面の間で圧縮又は伸長される圧力センサである。これにより、圧力センサを用いた簡単な構成で押し引き操作(操作方向及び押し引き操作の圧力)を検出することができる。
【0020】
本発明の他の態様に係る眼科装置において、操作検出部は、開始操作として、操作者による接触操作を検出する接触センサである。これにより、被検眼の眼特性の測定動作の各動作段階においてそれぞれ予め定められた動作制御を、各動作段階で接触操作を行うことによって開始させることができる。
【0021】
本発明の他の態様に係る眼科装置において、操作検出部は、開始操作として、操作者の予め定めた動作を検出するモーションセンサである。これにより、被検眼の眼特性の測定動作の各動作段階においてそれぞれ予め定められた動作制御を、各動作段階で操作者が予め定められた動作を行うことによって開始させることができる。
【0022】
本発明の目的を達成するための眼科装置の作動方法は、被検眼の眼特性の取得動作を行う装置本体を備える眼科装置の作動方法において、対応関係取得部が、取得動作に含まれる複数の動作段階と、複数の動作段階にそれぞれ対応した装置本体の動作制御と、の対応関係を取得する取得工程と、操作検出部が、動作制御の開始操作であって且つ複数の動作段階で共通の開始操作を検出する検出工程と、決定部が、操作検出部で開始操作が検出された場合に複数の動作段階の中から現在の動作段階を判別し、対応関係取得部が取得した対応関係を参照して、現在の動作段階に対応した動作制御を決定する決定工程と、制御部が、決定部により決定した動作制御に従って装置本体を動作させる制御工程と、を有する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の眼科装置及び作動方法は、被検眼の眼特性の取得動作に含まれる複数の動作段階の中で、現在の動作段階に対応した装置本体の動作制御の開始操作を、操作性を低下させることなく操作者が直感的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の眼科装置の側面図である。
図2図1中の2−2線に沿う断面図である。
図3】操作レバーを用いた測定ユニットのZ軸方向及びX軸方向の移動操作を説明するための説明図である。
図4】Z軸方向の押し引き操作の種類を説明するための説明図である。
図5】X軸方向の押し引き操作の種類を説明するための説明図である。
図6】Z軸方向の押し引き操作に伴うZ軸方向の圧力の変化を検出するZ軸圧力センサの側面図である。
図7】Z軸方向の押し引き操作が行われた場合のZ軸圧力センサによるZ軸方向の圧力の検出を説明するための説明図である。
図8】眼科装置内に設けられている制御部の電気的構成を示すブロック図である。
図9】移動制御部による測定ユニットのZ軸方向及びX軸方向の粗動制御を説明するための説明図である。
図10】粗動制御時にZ軸圧力センサ及びX軸圧力センサでそれぞれ検出される圧力と時間との関係を示す圧力変化の一例を示したグラフである。
図11】対応関係情報の一例を示した説明図である。
図12】動作制御「左眼(右眼)測定位置への左右切替移動制御」を説明するための説明図である。
図13】動作制御「第1アライメント停止制御」を説明するための説明図である。
図14】決定部による動作制御の決定と、決定部が決定した動作制御の実行との流れを説明するためのフローチャートである。
図15】上記構成の眼科装置による眼特性の測定の流れを示すフローチャートである。
図16】他実施形態の対応関係情報を説明するための説明図である。
図17】手動アライメントモード時における装置本体の動作制御の決定及び実行と、測定ユニットの粗動制御の実行との流れを示すフローチャートである。
図18】他の構成によるZ軸方向及びX軸方向の押し引き操作の検出を説明するための説明図である。
図19】装置本体の動作制御の開始操作の変形例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[眼科装置の構成]
図1は、本発明の眼科装置10の側面図である。この眼科装置10は、被検者の被検眼Eの各種の眼特性の測定、観察、及び撮影等の取得(以下、単に「測定」と略す)を行う。このような眼科装置10としては、眼底カメラ、OCT(optical coherence tomography)、SLO(Scanning Laser Ophthalmoscope)、眼軸長計、スリットランプ、レフラクトメータ、ケラトメータ、トノメータ、スペキュラマイクロスコープ、及びこれらの複合機等が例として挙げられる。
【0026】
ここで、図中のX軸方向は被検者を基準とした左右方向(被検眼Eの眼幅方向)であり、Y軸方向は上下方向であり、Z軸方向は被検者に近づく前方向と被検者から遠ざかる後方向とに平行な前後方向(作動距離方向ともいう)である。従って、Z軸方向及びX軸方向は水平方向に含まれる。
【0027】
図1に示すように、眼科装置10は、本発明のベースに相当する本体ベース12(基台ともいう)と、顔支持部13と、本発明の駆動部に相当する電動駆動部14と、本発明の眼特性取得部に相当する測定ユニット15と、モニタ16と、操作レバー17と、被検眼Eの眼特性の測定結果(本発明の取得結果に相当)を出力する出力部18(図8参照)と、を備える。なお、本体ベース12、電動駆動部14、測定ユニット15、及び出力部18は、被検眼Eの眼特性の測定開始から測定結果の出力までの被検眼Eの眼特性の測定動作(本発明の取得動作に相当)を行う眼科装置10の装置本体10aを構成する。
【0028】
本体ベース12のZ軸方向前方側(被検者側)の端部には顔支持部13が設けられ、且つ本体ベース12の上面には電動駆動部14が設けられている。
【0029】
顔支持部13は、Y軸方向に位置調整可能な不図示の顎受け及び額当てを有しており、眼科装置10による測定時に被検者の顔を支持する。
【0030】
電動駆動部14は、本体ベース12上において後述の測定ユニット15をXYZ軸の各軸方向にそれぞれ移動自在に保持している。電動駆動部14は、後述の制御部65(図8参照)の制御の下、本体ベース12に対して測定ユニット15をXYZ軸の各軸方向にそれぞれ移動させることにより、被検眼Eに対する測定ユニット15のアライメントを行う。この測定ユニット15の移動には、例えば被検眼Eの前眼部像を取得可能な位置への測定ユニット15の移動、及び測定対象の被検眼Eの左右切替の際の測定ユニット15の移動などを行う場合の粗動(高速移動)と、例えば狭い範囲での精密なアライメントを行う場合の微動(低速移動)と、が含まれる。
【0031】
なお、本実施形態の眼科装置10では、アライメントを自動で行うオートアライメントと、アライメントを手動操作(マニュアル操作)で行う手動アライメントと、を選択することができる。
【0032】
電動駆動部14は、Z軸ベース21と、Z軸駆動部22と、X軸ベース23と、X軸駆動部24と、Y軸駆動部25と、を備えている。
【0033】
Z軸ベース21は、本体ベース12上に設けられている後述のZ軸駆動部22のさらに上方に設けられており、このZ軸駆動部22によりZ軸方向に移動自在に保持されている。このZ軸ベース21の下面には、Z軸方向に並べて配置された一対の軸受27が2組設けられている(図2参照)。2組の一対の軸受27は、X軸方向に間隔をあけて設けられている(図2参照)。また、2組の一対の軸受27には、それぞれZ軸方向に平行な不図示の貫通穴が形成されている。
【0034】
また、Z軸ベース21の下面には、X軸方向において2組の一対の軸受27の間に位置するように、ハウジング28(本発明の第1係合部に相当)が設けられている(図2参照)。ハウジング28は、後述のナット32と係合してナット32と一体にZ軸方向に移動可能な形状、例えばナット32の上方からナット32をZ軸方向に挟み込む形状を有している。このハウジング28は、ナット32のZ軸方向の移動に伴い、Z軸ベース21、X軸駆動部24、X軸ベース23、及びY軸駆動部25を介して、測定ユニット15と一体にZ軸方向に移動する。
【0035】
図2は、図1中の2−2線に沿う断面図(Z軸駆動部22の上面図)である。図1及び図2に示すように、Z軸駆動部22は、本体ベース12上に設けられている。このZ軸駆動部22は、Z軸方向に平行な2本のZガイド軸30と、2組の一対の軸固定部31と、ナット32(本発明の第2係合部に相当)と、送りねじ33と、Z軸モータ34と、を備える。
【0036】
2本のZガイド軸30は、それぞれ2組の一対の軸受27の貫通穴に挿通されている。そして、各Zガイド軸30の両端部は、本体ベース12の上面に設けられた2組の一対の軸固定部31によりそれぞれ保持されている。これにより、Z軸ベース21は、一対の軸受27を介して、Zガイド軸30によりZ軸方向に移動自在に保持、すなわち本体ベース12上でZ軸方向に移動自在に保持される。
【0037】
ナット32は、既述のハウジング28に係合、すなわちハウジング28により上方からZ軸方向に挟み込まれている。この際に、ナット32は、ハウジング28に対してZ軸周りに相対回転不能な状態でハウジング28に係合されている。
【0038】
送りねじ33は、Z軸方向に平行な姿勢で既述のハウジング28をZ軸方向に貫通し、且つこのハウジング28に係合しているナット32に螺合している。この送りねじの一端部には、本体ベース12上に設けられたZ軸モータ34が接続されている。なお、送りねじ33は、後述のZ軸モータ34と共に本発明の駆動源を構成する。
【0039】
Z軸モータ34は、後述の制御部65(図8参照)の制御の下、送りねじ33を回転駆動する。この送りねじ33の回転駆動によって、ナット32を介してハウジング28をZ軸方向に移動できると共に、さらにこのハウジング28を介してZ軸ベース21をZ軸方向に移動できる。その結果、Z軸ベース21上に設けられているX軸駆動部24、X軸ベース23、Y軸駆動部25、及び測定ユニット15を一体的にZ軸方向に移動できる。すなわち測定ユニット15等を本体ベース12に対してZ軸方向に相対移動できる。また、Z軸モータ34により送りねじ33の回転方向を制御することで測定ユニット15等のZ軸方向の移動方向を制御できると共に、送りねじ33の回転速度を制御することで測定ユニット15等のZ軸方向の移動速度を制御できる。
【0040】
X軸ベース23は、Z軸ベース21上に設けられている後述のX軸駆動部24のさらに上方に設けられており、このX軸駆動部24によりX軸方向に移動自在に保持されている。このX軸ベース23の下面には、2組の一対の軸受37と、ハウジング38(本発明の第1係合部に相当)とが設けられている。これら一対の軸受37及びハウジング38は、既述の一対の軸受27及びハウジング28をそれぞれY軸周りに90度回転させた構造(配置)である。なお、ハウジング38は、後述のナット42に係合し、このナット42のX軸方向の移動に伴い、X軸ベース23及びY軸駆動部25を介して、測定ユニット15と一体にX軸方向に移動する。
【0041】
X軸駆動部24は、Z軸ベース21上に設けられている。このX軸駆動部24は、X軸方向に平行な2本のXガイド軸40と、2組の一対の軸固定部41と、ナット42と、送りねじ43と、X軸モータ44と、を備える。なお、ナット42は本発明の第2係合部に相当し、送りねじ43及びX軸モータ44は本発明の駆動源に相当する。
【0042】
これらX軸駆動部24の各部は、既述のZ軸駆動部22の各部をそれぞれY軸周りに90度回転させた構造(配置)である。従って、X軸モータ44が後述の制御部65(図8参照)の制御の下で送りねじ33を回転駆動することにより、ナット42を介して、ハウジング38及びX軸ベース23を本体ベース12に対してX軸方向に相対移動できる。その結果、X軸ベース23上に設けられているY軸駆動部25及び測定ユニット15を一体的にX軸方向に移動できる。また、X軸モータ44によって、送りねじ43の回転方向を制御することで測定ユニット15等のX軸方向の移動方向を制御し、且つ送りねじ43の回転速度を制御することで測定ユニット15等のX軸方向の移動速度を制御できる。
【0043】
Y軸駆動部25は、円筒ハウジング50と、支柱51と、ナット52と、送りねじ53と、Y軸モータ54とを備える。円筒ハウジング50は、Y軸方向に平行な円筒形状を有しており、X軸ベース23の上面に固定されている。この円筒ハウジング50内には、その上端側の開口から内部に挿入された支柱51が嵌合している。
【0044】
また、円筒ハウジング50内には送りねじ53及びY軸モータ54が収納される。具体的に、Y軸モータ54は円筒ハウジング50内においてX軸ベース23上に固定されている。また、送りねじ53は、その下端側がY軸モータ54に接続されており、円筒ハウジング50内においてY軸方向に平行な姿勢でY軸モータ54に保持されている。
【0045】
支柱51は、Y軸方向に平行な円筒形状を有しており、その下端側から円筒ハウジング50内に嵌合している。また、支柱51の上端部には測定ユニット15が固定されている。そして、支柱51の下端側の内周面には、その周方向に沿ってナット52が係合する環状の係合溝51aが形成されている。ナット52は、支柱51内の係合溝51aに対してY軸周りに相対回転不能な状態で係合しており、支柱51と一体にY軸方向に移動する。
【0046】
送りねじ53は、既述の支柱51内にその下方から嵌合している。また、送りねじ53は、支柱51内の係合溝51aに係合しているナット52に螺合している。
【0047】
Y軸モータ54は、後述の制御部65(図8参照)の制御の下、送りねじ53を回転駆動することにより、ナット52を介して支柱51をY軸方向に移動させる。その結果、測定ユニット15をY軸方向に移動できる。また、Y軸モータ54によって、送りねじ53の回転方向を制御することで測定ユニット15のY軸方向の移動方向を制御すると共に、送りねじ53の回転速度を制御することで測定ユニット15のY軸方向の移動速度を制御できる。
【0048】
このようにZ軸モータ34、X軸モータ44、及びY軸モータ54をそれぞれ駆動することにより、測定ユニット15をXYZ軸の各軸方向にそれぞれ移動(粗動又は微動)させることができる。
【0049】
測定ユニット15は、眼科装置10が測定する眼特性の種類に対応した測定光学系15a(撮像素子及び各種光源を含む)を有している。この測定ユニット15は、アライメント検出時にはアライメント検出用の検出信号(被検眼Eの前眼部の観察像等)を後述の制御部65(図8参照)へ出力し、被検眼Eの眼特性の測定時には測定用の測定信号を制御部65へ出力する。なお、測定ユニット15及びその測定光学系15aの構成について周知技術であるので、ここでは具体的な説明は省略する。
【0050】
モニタ16は、測定ユニット15のZ軸方向後方側(操作者側)の端部に取り付けられている。モニタ16としては、例えばタッチパネル式の液晶表示装置が用いられる。このモニタ16は、測定ユニット15により得られた被検眼Eの眼特性の測定結果、測定ユニット15のアライメント等に利用される被検眼Eの前眼部の観察像、及び眼特性の測定に係る操作(測定ユニット15の位置調整を含む)を行うための操作画面等を表示する。
【0051】
操作レバー17は、例えばX軸ベース23上のZ軸方向後方側の端部に取り付けられている。なお、操作レバー17の頂部には測定ボタンが設けられており、この測定ボタンを押下することで被検眼Eの眼特性の測定を開始することができる。
【0052】
操作レバー17は、測定ユニット15をXYZ軸の各軸方向に手動で移動操作するための操作部である。例えば、操作レバー17をその長手軸周りに回転(時計回り又は反時計回りに回転)することで、既述のY軸モータ54が駆動され、測定ユニット15がY軸方向(上下方向)に移動する。この際に、操作レバー17の回転方向を切り替えることで、Y軸モータ54による送りねじ53の回転方向が切り替えられるため、既述のように測定ユニット15をY軸方向に移動させることができる。また、操作レバー17の回転角度を調整することで、測定ユニット15のY軸方向の粗動と微動とが切り替えられる。なお、操作レバー17の回転角度は、例えばロータリーポテンショメータであるYポテンショメータ56Y(図8参照)により検出される。
【0053】
図3は、操作レバー17を用いた測定ユニット15のZ軸方向及びX軸方向(水平方向)の移動操作を説明するための説明図である。なお、本実施形態ではZ軸方向及びX軸方向が本発明の予め定められた軸方向に相当する。また、本実施形態では、操作レバー17をX軸ベース23上に設けているが、眼科装置10内の他の部位に設けてもよい。
【0054】
図3に示すように、操作レバー17を用いた測定ユニット15のZ軸方向及びX軸方向の移動操作には、測定ユニット15をZ軸方向及びX軸方向に微動させる場合の傾倒操作(微動操作ともいう)と、測定ユニット15をZ軸方向及びX軸方向に粗動させる場合の押し引き操作(粗動操作ともいう)と、を含む2種類の操作がある。
【0055】
図3の上段に示すように、操作レバー17をZ軸方向又はX軸方向に傾倒する傾倒操作を行うことで、既述のZ軸モータ34又はX軸モータ44が駆動され、測定ユニット15がZ軸方向又はX軸方向に移動(微動)する。この際に、Z軸モータ34又はX軸モータ44は後述の押し引き操作時よりも低速駆動されるため、測定ユニット15は押し引き操作時よりも低速でZ軸方向又はX軸方向に移動、すなわち微動する。
【0056】
なお、操作レバー17を傾倒操作する際の傾倒角度を調整することで、測定ユニット15の移動速度を調整することができる。なお、操作レバー17の傾倒方向及び傾倒角度は、例えば直動型ポテンショメータであるZポテンショメータ56Z及びXポテンショメータ56X(図8参照)によりそれぞれ検出される。
【0057】
図3の下段に示すように、操作レバー17を傾倒させることなくこの操作レバー17をZ軸方向又はX軸方向に押し操作又は引き操作する押し引き操作(水平移動操作)を行うと、操作レバー17を介してX軸ベース23がZ軸方向又はX軸方向に押圧される。
【0058】
例えばX軸ベース23がZ軸方向に押圧された場合、Z軸方向に可動する部材であるナット32と、このナット32に係合してZ軸方向に従動移動する部材であるハウジング28との間でのZ軸方向の圧力が変化する。また、例えばX軸ベース23がX軸方向に押圧された場合、X軸方向に可動する部材であるナット42と、このナット42に係合してX軸方向に従動移動する部材であるハウジング38との間でのX軸方向の圧力が変化する。
【0059】
そこで本実施形態では、Z軸方向の圧力の変化又はX軸方向の圧力の変化に基づき、既述のZ軸モータ34又はX軸モータ44を駆動して、測定ユニット15をZ軸方向又はX軸方向に移動(粗動)させる。この際に、Z軸モータ34又はX軸モータ44は既述の傾倒操作時よりも高速駆動されるため、測定ユニット15は傾倒操作時よりも高速でZ軸方向又はX軸方向に移動、すなわち粗動する。
【0060】
このようなZ軸方向及びX軸方向の圧力の変化を発生させる押し引き操作は、操作レバー17に対するZ軸方向及びX軸方向の押し引き操作に限定されるものではない。
【0061】
図4はZ軸方向の押し引き操作の種類を説明するための説明図である。また、図5は、X軸方向の押し引き操作の種類を説明するための説明図である。なお、図4及び図5では、図面の煩雑化を防止するため、Z軸駆動部22及びX軸駆動部24は簡略化している。
【0062】
図4に示すように、Z軸方向の押し引き操作には、既述の操作レバー17に対するZ軸方向の押し引き操作(矢印PZ1参照)の他に、測定ユニット15(モニタ16を含む)に対するZ軸方向の押し引き操作(矢印PZ2参照)、Z軸ベース21及びX軸ベース23の少なくとも一方に対するZ軸方向の押し引き操作(矢印PZ3参照)、及びY軸駆動部25に対するZ軸方向の押し引き操作(矢印PZ4参照)等が含まれる。また、これら各押し引き操作を複数組み合わせてもよい。このような電動駆動部14、測定ユニット15、及び操作レバー17の少なくともいずれかに対するZ軸方向の押し引き操作により、既述のZ軸方向の圧力の変化が発生する。
【0063】
図5に示すように、X軸方向の押し引き操作としては、既述の操作レバー17に対するX軸方向の押し引き操作(矢印PX1参照)の他に、測定ユニット15等に対するX軸方向の押し引き操作(矢印PX2参照)、X軸ベース23に対するX軸方向の押し引き操作(矢印PX3参照)、及びY軸駆動部25に対するX軸方向の押し引き操作(矢印PX4参照)等が含まれる。また、これら各押し引き操作を複数組み合わせてもよい。このような電動駆動部14、測定ユニット15、及び操作レバー17の少なくともいずれかに対するX軸方向の押し引き操作によって、既述のX軸方向の圧力の変化が発生する。
【0064】
図6は、Z軸方向の押し引き操作に伴うZ軸方向の圧力の変化を検出するZ軸圧力センサ60の側面図である。図6に示すように、既述のハウジング28及びナット32の双方のZ軸方向において互いに対向する対向面28a,32aの間には、本発明の操作検出部に相当するZ軸圧力センサ60が設けられている。
【0065】
Z軸圧力センサ60は各対向面28a,32aにそれぞれ接続されている。このため、Z軸圧力センサ60は、Z軸方向の押し引き操作が行われた場合、この押し引き操作に伴うZ軸方向の圧力(圧力の変化)を検出する。
【0066】
図7は、Z軸方向の押し引き操作が行われた場合のZ軸圧力センサ60によるZ軸方向の圧力の検出を説明するための説明図である。図7の上段に示すように、Z(+)で示すZ軸方向前方側に向けて押し引き操作(矢印PZ1〜PZ4参照)が行われると、矢印A1及び矢印H1に示すように、Z軸ベース21及びハウジング28に対してZ軸方向前方側に向かう圧力が加えられる。この際に、ナット32は送りねじ33によってZ軸方向への移動が規制されているので、矢印F1に示すようにハウジング28の対向面28aがZ軸圧力センサ60をナット32の対向面32aに向けて押圧する。これにより、ハウジング28及びナット32の双方の対向面28a,32aの間でZ軸圧力センサ60が圧縮されて、Z軸圧力センサ60により正(+)の圧力が検出される。
【0067】
図7の下段に示すように、Z(−)で示すZ軸方向後方側に向けて押し引き操作(矢印PZ1〜PZ4参照)が行われると、矢印A2及び矢印H2に示すように、Z軸ベース21及びハウジング28に対してZ軸方向後方側に向かう圧力が加えられる。この場合においてもナット32は送りねじ33によってZ軸方向への移動が規制されているので、矢印F2に示すように、ハウジング28の対向面28aがZ軸圧力センサ60をナット32の対向面32aから遠ざかる方向に引っ張る。これにより、ハウジング28及びナット32の双方の対向面28a,32aの間でZ軸圧力センサ60が伸長されて、Z軸圧力センサ60により負(−)の圧力が検出される。従って、Z軸圧力センサ60によって、押し引き操作のZ軸方向の操作方向(Z軸方向の前方側又は後方側)と、押し引き操作の圧力の大きさとを検出することができる。
【0068】
具体的には、Z軸圧力センサ60で検出される圧力の正負に応じて押し引き操作のZ軸方向の操作方向を検出できると共に、Z軸圧力センサ60で検出される圧力の絶対値に基づきZ軸方向の押し引き操作の圧力の大きさを検出できる。
【0069】
そこで、Z軸圧力センサ60で正の圧力が検出された場合には、図中の矢印R1に示すようにZ軸モータ34により送りねじ33を一方向に回転駆動することより、測定ユニット15をZ軸方向前方側に向けて、この正の圧力の絶対値に応じた速度で移動(粗動)させる。また、Z軸圧力センサ60で負の圧力が検出された場合には、図中の矢印R2に示すようにZ軸モータ34により送りねじ33を他方向に回転駆動することより、測定ユニット15をZ軸方向後方側に向けて、この負の圧力の絶対値に応じた速度で移動させる。
【0070】
また、図示は省略するが、既述の図1に示したハウジング38及びナット42のX軸方向において互いに対向する対向面(不図示)の間にも、本発明の操作検出部に相当するX軸圧力センサ61(図8参照)が設けられている。これにより、X軸圧力センサ61で検出される圧力の正負に応じて押し引き操作のX軸方向の操作方向(X軸方向の左側又は右側)を検出できる。また、X軸圧力センサ61で検出される圧力の絶対値に基づき、X軸方向の押し引き操作の圧力の大きさを検出できる。
【0071】
そこで、X軸圧力センサ61(図8参照)で正の圧力が検出された場合には、X軸モータ44により送りねじ43を一方向に回転駆動することより、測定ユニット15をX軸方向(左右)の一方側に向けて、この正の圧力の絶対値に応じた速度で移動(粗動)させる。また、X軸圧力センサ61で負の圧力が検出された場合には、X軸モータ44により送りねじ43を他方向に回転駆動することより、測定ユニット15をX軸方向の他方側に向けて、この負の圧力の絶対値に応じた速度で移動させる。
【0072】
なお、既述の図6及び図7では、ハウジング28とナット32との間に形成される隙間の中で、対向面28a,32aにより形成されるZ軸方向後方側の隙間にZ軸圧力センサ60を設けているが、Z軸方向前方側の隙間、或いはZ軸方向前方側及び後方側の双方の隙間にZ軸圧力センサ60を設けてもよい。すなわち、Z軸方向の押し引き操作を検出可能な位置(押し引き操作により圧縮又は伸長される位置)であれば、Z軸圧力センサ60の位置は特に限定はされない。また、X軸圧力センサ61(図8参照)の位置についても同様に、X軸方向の押し引き操作を検出可能な位置であれば特に限定はされない。
【0073】
眼科装置10では、Z軸圧力センサ60で検出される圧力の正負に基づき、Z軸方向後方側からZ軸方向前方側へ向けての押し引き操作と、Z軸方向前方側からZ軸方向後方側へ向けての押し引き操作とを区別して検出できる。また、眼科装置10では、X軸圧力センサ61で検出される圧力の正負に基づき、X軸方向左側からX軸方向右側へ向けての押し引き操作と、X軸方向右側からX軸方向左方側へ向けての押し引き操作とを区別して検出できる。従って、眼科装置10では、各圧力センサ60,61により複数方向の押し引き操作を区別して検出できる。
【0074】
そこで、本実施形態では、測定ユニット15の手動アライメントを実行しないオートアライメントモード時において、眼科装置10の装置本体10aに予め定められた動作制御を開始させる開始操作として、押し引き操作を行う。
【0075】
オートアライメントモード時に眼科装置10の装置本体10aが行う被検眼Eの眼特性の測定動作(本発明の取得動作に相当)には、例えば被検眼Eの眼特性の測定開始前(待機中)、オートアライメントの実行中、及び被検眼Eの眼特性の測定完了後などの複数の動作段階が含まれている。このため、各動作段階においてそれぞれ予め定められた装置本体10aの動作制御を押し引き操作によって開始する。従って、押し引き操作は、本発明の「複数の動作段階で共通の開始操作」に相当する。なお、ここでいう「複数の動作段階で共通の開始操作」には、複数の動作段階で同一(同一種類)の開始操作が含まれる。すなわち、押し引き操作と動作制御とが一対一の関係ではなく、動作段階ごとに押し引き操作よって開始される動作制御の種類が変わる。
【0076】
ここで、予め定められた装置本体10aの動作制御とは、例えば、眼特性を測定する被検眼Eの左右眼の切り替え、オートアライメントの開始、オートアライメントの緊急停止、被検眼Eの眼特性の測定結果の出力などの動作を自動で実行する制御である。従って、既述の押し引き操作による測定ユニット15の粗動のような手動で行う制御は、ここでいう動作制御には含まれない。
【0077】
動作段階ごとの装置本体10aの動作制御の開始操作として押し引き操作を行う場合、この押し引き操作の操作方向を変えることにより、操作の種類を変えることができる。このため、本実施形態では、各圧力センサ60,61で検出した押し引き操作の方向(開始操作の種類)と、押し引き操作がなされた際の動作段階(現在の動作段階)とに応じて、実行する装置本体10aの動作制御の種類を決定し、決定した動作制御を実行する。
【0078】
図8は、眼科装置10内に設けられている制御部65の電気的構成を示すブロック図である。図8に示すように、制御部65は、例えばCPU(Central Processing Unit)又はFPGA(field-programmable gate array)等を含む各種の演算部及びメモリ等から構成された演算回路であり、眼科装置10の各部の動作を統括制御する。例えば制御部65は、モニタ16のタッチ操作又は操作レバー17の操作等に応じて、既述のアライメント検出用の検出信号の取得及び出力と、被検眼Eの眼特性の測定信号の取得及び出力とを測定ユニット15に実行させる。
【0079】
また、制御部65は、記憶部66から読み出した制御プログラム(不図示)を実行することにより、演算処理部67、移動制御部68、出力制御部77、対応関係取得部78、及び決定部82として機能する。
【0080】
演算処理部67は、アライメント検出部70及び解析部71として機能する。アライメント検出部70は、後述のオートアライメントモード時において、測定ユニット15から入力されるアライメント検出用の検出信号に基づき、被検眼Eに対する測定ユニット15のXYZ軸の各軸方向のアライメント検出を行う。そして、アライメント検出部70は、アライメント検出結果を移動制御部68へ出力する。
【0081】
解析部71は、測定ユニット15から入力される被検眼Eの眼特性の測定信号を解析して、眼特性の測定結果を得る。そして、解析部71は、被検眼Eの眼特性の測定結果をモニタ16、記憶部66、及び出力制御部77に出力する。これにより、被検眼Eの眼特性の測定結果がモニタ16に表示されると共に記憶部66に記憶される。また、被検眼Eの眼特性の測定結果が後述の出力制御部77から出力部18へ出力される。
【0082】
移動制御部68は、Z軸モータ34、X軸モータ44、及びY軸モータ54の駆動を制御して、測定ユニット15をXYZ軸の各軸方向にそれぞれ移動或いは移動停止させる。これにより、移動制御部68は、被検眼Eに対する測定ユニット15のアライメント(オートアライメント又は手動アライメント)、オートアライメントの停止、及び被検眼Eの左右切替移動等を含む測定ユニット15の各種移動を実行する。この移動制御部68には、既述の各モータ34,44,54、各ポテンショメータ56X,56Y,56Z、及び各圧力センサ60,61の他に、測定ユニット15のX軸方向の位置を検出するX軸位置検出センサ73とY軸方向の位置を検出するY軸位置検出センサ74とZ軸方向の位置を検出するZ軸位置検出センサ75とが接続されている。
【0083】
移動制御部68は、被検眼Eに対する測定ユニット15のアライメントを行う動作モードとして、オートアライメントモードと手動アライメントモードとを有している。オートアライメントモードと手動アライメントモードとの切り替えは、例えばモニタ16に表示される操作画面上でのタッチ操作により行う。手動アライメントモードは、例えば、被検眼Eの角膜又は虹彩に異常があったり或いは眼振が大きかったりするなどの特にオートアライメントが実行できない場合を考慮したモードである。
【0084】
移動制御部68は、オートアライメントモードが設定されている場合、既述のアライメント検出部70から入力されるアライメント検出結果と、各位置検出センサ73,74,75の検出結果とに基づき、各モータ34,44,54の駆動を制御して、測定ユニット15のXYZ軸の各軸方向の位置調整を行う。これにより、被検眼Eに対する測定ユニット15のオートアライメントが実行される。
【0085】
一方、移動制御部68は、手動アライメントモードが選択されている場合において、操作レバー17の傾倒操作及び回転操作が行われると、各ポテンショメータ56X,56Y,56Zのいずれかより入力される信号に基づき、各モータ34,44,54のいずれかの駆動を制御する微動制御を行う。これにより、測定ユニット15が傾倒操作又は回転操作に対応した方向及び速度に従って微動(低速で移動)する。
【0086】
また、移動制御部68は、手動アライメントモードが選択されている場合において、既述の図4及び図5に示したようなZ軸方向又はX軸方向の押し引き操作が行われると、各圧力センサ60,61のいずれかで検出される圧力の正負及び絶対値に基づき、各モータ34,44のいずれかの駆動を制御する粗動制御を開始する。
【0087】
図9は、移動制御部68による測定ユニット15のZ軸方向及びX軸方向の粗動制御を説明するための説明図である。また、図10は、粗動制御時にZ軸圧力センサ60及びX軸圧力センサ61でそれぞれ検出される圧力と時間との関係を示す圧力変化の一例を示したグラフである。図9及び図10に示すように、移動制御部68は、手動アライメントモード時において各圧力センサ60,61のいずれかで検出される圧力の絶対値の大きさが予め定めた閾値±VLの絶対値未満(本発明の閾値未満に相当)である場合、各モータ34,44の駆動を停止する。すなわち、各圧力センサ60,61の絶対値の大きさが閾値±VLの絶対値未満となる圧力範囲は、手動アライメントモード時において測定ユニット15のZ軸方向及びX軸方向の粗動を行わない不感帯となる。
【0088】
一方、移動制御部68は、手動アライメントモード時において各圧力センサ60,61のいずれかで検出される圧力の絶対値の大きさが閾値±VLの絶対値以上(本発明の閾値以上)となる場合、この圧力の正負に応じて押し引き操作のZ軸方向又はX軸方向の操作方向を決定する。また、移動制御部68は、検出された圧力の絶対値の大きさに応じて測定ユニット15の移動速度の大きさ(以下、単に移動速度という)を決定する。この際に移動制御部68は、圧力の絶対値の大きさが予め定めた閾値±VUの絶対値よりも大きくなる場合には、移動速度の更なる増加は行わずに一定速度とする。そして、移動制御部68は、決定した操作方向及び移動速度に従って、各モータ34,44のいずれかを駆動する。これにより、手動アライメントモード時において測定ユニット15が押し引き操作に対応した方向及び速度に従って粗動する。
【0089】
図8に戻って、移動制御部68は、既述のオートアライメントモードが設定されている場合において、さらに後述の決定部82から装置本体10aの動作制御の決定結果が入力された場合に、各モータ34,44,54の駆動を制御して、決定部82からの決定結果に従って電動駆動部14を動作させる。
【0090】
出力制御部77は、出力部18の動作を制御して、解析部71により解析された被検眼Eの眼特性の測定結果を出力部18から出力させる。この出力部18としては、被検眼Eの眼特性の測定結果をプリントするプリンタ、及び被検眼Eの眼特性の測定結果を他の装置に有線又は無線で送信する通信インターフェース等が用いられる。
【0091】
また、出力制御部77は、既述のオートアライメントモードが設定されている場合であって、且つ後述の決定部82から装置本体10aの動作制御の決定結果が入力された場合に、出力部18を動作させる。
【0092】
対応関係取得部78は、記憶部66或いは眼科装置10の外部(例えばインターネット上のサーバ及び別の眼科装置10など)に予め記憶されている対応関係情報79を取得し、この対応関係情報79を後述の決定部82へ出力する。
【0093】
図11は、本発明の対応関係に相当する対応関係情報79の一例を示した説明図である。図11に示すように、対応関係情報79は、オートアライメントモード時に装置本体10aが行う被検眼Eの眼特性の測定動作に含まれる複数の動作段階ごとに、既述の開始操作である押し引き操作の種類(操作方向)と、装置本体10aが行う動作制御の種類と、の対応関係を予め記憶したものである。
【0094】
対応関係情報79には、動作段階として、「測定開始前」、「第1アライメント実行中」、「第2アライメント実行中」、「右眼測定完了」、及び「左眼測定完了」が設定されている。
【0095】
動作段階「測定開始前」は、被検眼Eの眼特性の測定開始前の動作段階であり、本発明の第1動作段階に相当する。この動作段階「測定開始前」は、測定ユニット15が被検眼Eの右眼の眼特性を測定する右眼測定位置にある「右眼測定開始前」と、測定ユニット15が左眼の眼特性を測定する左眼測定位置にある「左眼測定開始前」と、の2つの動作段階に分けられている。
【0096】
右眼測定位置及び左眼測定位置は、それぞれ対応する被検眼E(右眼又は左眼)の前眼部の観察像を測定ユニット15が取得可能なX軸方向位置、すなわちアライメント検出が可能な位置である。また、本実施形態では右眼測定位置及び左眼測定位置が固定位置であるものとして説明を行う。
【0097】
なお、動作段階「測定開始前」よりも前の動作段階では、測定ユニット15が被検眼Eの右眼又は左眼の前眼部の観察像を取得している状態(モニタ16に観察像が表示されている状態)になるように、顔支持部13の顎受け及び額当てのY軸方向の高さ位置の位置調整、及び手動操作による測定ユニット15の位置調整が行われる。従って、動作段階「測定開始前」よりも前の動作段階において押し引き操作が行われた場合、既述の手動アライメントモード時と同様に、測定ユニット15が押し引き操作に対応した方向及び速度に従って粗動される。
【0098】
動作段階「第1アライメント実行中」は、オートアライメントモードの実行中で且つ測定ユニット15が被検眼Eに近づく方向、すなわちZ軸方向前方側へ移動している移動中の動作段階であり、本発明の第2動作段階に相当する。また、動作段階「第2アライメント実行中」は、オートアライメントモードの実行中で且つ測定ユニット15がZ軸方向前方側とは異なる方向に移動している移動中の動作段階であり、本発明の第3動作段階に相当する。
【0099】
動作段階「右眼測定完了」は、被検眼Eの右眼の眼特性の測定が完了している動作段階であり、本発明の第4動作段階に相当する。この動作段階「右眼測定完了」は、被検眼Eの左眼の眼特性が未測定である「左眼未測定」と、被検眼Eの左眼の眼特性の測定が完了している「左眼測定完了」と、の2つの動作段階に分けられている。
【0100】
動作段階「左眼測定完了」は、被検眼Eの左眼の眼特性の測定が完了している動作段階であり、本発明の第4動作段階に相当する。この動作段階「左眼測定完了」は、被検眼Eの右眼の眼特性が未測定である「右眼未測定」と、被検眼Eの右眼の眼特性の測定が完了している「右眼測定完了」と、の2つの動作段階に分けられている。
【0101】
これら各動作段階には、各動作段階で互いに共通の3種類(3種類以外でも可)の押し引き操作が定められている。具体的には、各動作段階にそれぞれ「右方向押し引き操作」、「左方向押し引き操作」、及び「前方向押し引き操作」の操作方向が異なる3種類の押し引き操作が定められている。
【0102】
「左方向押し引き操作」は、被検者(被検眼E)側から見て電動駆動部14、測定ユニット15(モニタ16を含む)、及び操作レバー17の少なくともいずれかを、X軸方向右側からX軸方向左側に向けて押し引きする操作である。また逆に「右方向押し引き操作」は、被検者側から見て電動駆動部14、測定ユニット15、及び操作レバー17の少なくともいずれかを、X軸方向左側からX軸方向右側に向けて押し引きする操作である。そして、「前方向押し引き操作」は、電動駆動部14、測定ユニット15、及び操作レバー17の少なくともいずれかを被検者側(Z軸方向前方側)に向けて押し引きする操作である。
【0103】
動作段階「右眼測定開始前」には、「左方向押し引き操作」に対応する装置本体10aの動作制御として「左眼測定位置への左右切替移動制御」が設定され、「右方向押し引き操作」に対応する動作制御として「待機」が設定され、「前方向押し引き操作」に対応する動作制御として「右眼に対するアライメント開始制御」が設定されている。
【0104】
動作段階「左眼測定開始前」には、「左方向押し引き操作」に対応する装置本体10aの動作制御として「待機」が設定され、「右方向押し引き操作」に対応する動作制御として「右眼測定位置への左右切替移動制御」が設定され、「前方向押し引き操作」に対応する動作制御として「左眼に対するアライメント開始制御」が設定されている。
【0105】
動作段階「第1アライメント実行中」には、全ての押し引き操作に対応する装置本体10aの動作制御として、「第1アライメント停止制御」が設定されている。また、動作段階「第2アライメント実行中」には、全ての押し引き操作に対応する動作制御として、「第2アライメント停止制御」が設定されている。
【0106】
動作段階「左眼未測定」には、「左方向押し引き操作」に対応する装置本体10aの動作制御として「左眼測定位置への左右切替移動制御及びアライメント開始制御」が設定され、「右方向押し引き操作」及び「前方向押し引き操作」の双方に対応する動作制御として「待機」が設定されている。また、動作段階「左眼測定完了」には、「左方向押し引き操作」及び「右方向押し引き操作」の双方に対応する動作制御として「待機」が設定され、「前方向押し引き操作」に対応する動作制御として「出力実行制御」及び「リセット」が設定されている。
【0107】
動作段階「右眼未測定」には、「右方向押し引き操作」に対応する装置本体10aの動作制御として「右眼測定位置への左右切替移動制御及びアライメント開始制御」が設定され、「左方向押し引き操作」及び「前方向押し引き操作」の双方に対応する動作制御として「待機」が設定されている。また、動作段階「右眼測定完了」には、「左方向押し引き操作」及び「右方向押し引き操作」の双方に対応する動作制御として「待機」が設定され、「前方向押し引き操作」に対応する動作制御として「出力実行制御」及び「リセット」が設定されている。
【0108】
次に、各動作制御について具体的に説明する。動作制御「待機」は、装置本体10aを待機状態にする制御である。また、動作制御「右眼(左眼)に対するアライメント開始制御」は、本発明のアライメント開始制御に相当し、各モータ34,44,54の駆動を制御して、被検眼E(左眼、右眼)に対する測定ユニット15のオートアライメントを実行する制御である。なお、動作制御「左眼(右眼)測定位置への左右切替移動制御及びアライメント開始制御」の後者も同様である。
【0109】
図12は、動作制御「左眼(右眼)測定位置への左右切替移動制御」を説明するための説明図である。図12に示すように、動作制御「左眼(右眼)測定位置への左右切替移動制御」は、本発明の左右切替移動制御に相当するものであり、X軸モータ44の駆動を制御して、測定ユニット15を右眼測定位置と左眼測定位置との一方から他方に向けて移動させる制御である。なお、動作制御「左眼(右眼)測定位置への左右切替移動制御及びアライメント開始制御」の前者も同様である。
【0110】
図13は、動作制御「第1アライメント停止制御」を説明するための説明図である。図13に示すように、「第1アライメント停止制御」は、本発明の第1停止制御に相当するものである。
【0111】
「第1アライメント停止制御」は、符号C1に示すように、既述の動作段階「第1アライメント実行中」においてZ軸モータ34の駆動を制御して、オートアライメントを緊急停止させる制御である。この「第1アライメント停止制御」では、符号C2に示すような測定ユニット15のZ軸方向前方側への移動停止と、符号C3に示すような測定ユニット15のZ軸方向後方側への移動(後退)とが行われた後、測定ユニット15の移動停止が行われる。これにより、被検者(被検眼E)の安全性をより高めることができる。
【0112】
一方、動作制御「第2アライメント停止制御」は、本発明の第2停止制御に相当するものであり、既述の動作段階「第2アライメント実行中」において、各モータ34,44,54の駆動を制御して、オートアライメントを緊急停止させる制御である。測定ユニット15が被検眼Eに近づくZ軸方向前方側とは異なる方向に移動している動作段階「第2アライメント実行中」では、オートアライメントモードを緊急停止する場合に、測定ユニット15をZ軸方向後方側へ移動(後退)させる必要性は低い。このため、「第2アライメント停止制御」では測定ユニット15を現在の位置で緊急停止させる。
【0113】
図11に戻って、動作制御「出力実行制御」は、既述の出力制御部77よって出力部18の動作を制御して、解析部71により解析された被検眼Eの眼特性の測定結果を出力部18から出力させる制御である。また、動作制御「リセット」は、例えば各モータ34,44,54の駆動を制御して、測定ユニット15を所定の初期位置に移動させる動作制御である。
【0114】
このように対応関係情報79では、各動作段階において3種類の押し引き操作にそれぞれ対応付けられている装置本体10aの動作制御の種類を異ならせている。このため、押し引き操作の種類が限られていたとしても(本実施形態では最大4種類)、対応関係情報79では押し引き操作の種類よりも多数の装置本体10aの動作制御を設定できる。
【0115】
図8に戻って、決定部82は、既述のオートアライメントモード時の各動作段階(図11参照)において、各圧力センサ60,61のいずれかで押し引き操作が検出された場合、既述の対応関係情報79に基づき、装置本体10aが実行する動作制御の種類を決定する。
【0116】
図14は、決定部82による動作制御の決定と、決定部82が決定した動作制御の実行との流れを説明するためのフローチャートである(本発明の眼科装置の作動方法に相当)。
【0117】
図14に示すように、予め対応関係取得部78によって記憶部66或いは外部からの対応関係情報79の取得が行われ、対応関係取得部78から決定部82へ対応関係情報79が入力されている(ステップS1、本発明の取得工程に相当)。
【0118】
操作者は、オートアライメントモード時における動作段階「測定開始前」以後の各動作段階において、実行する動作制御の種類に対応した押し引き操作を、電動駆動部14、測定ユニット15、及び操作レバー17の少なくともいずれかに対して行う(ステップS2でYES)。
【0119】
この際に、各圧力センサ60,61はそれぞれ圧力を常時検出し、圧力検出結果を決定部82へ出力している。そして、操作者による押し引き操作が実行されると、各圧力センサ60,61のいずれかで検出される圧力が変化し、この圧力(圧力変化)の検出結果が決定部82へ出力される(ステップS3、本発明の検出工程に相当)。
【0120】
決定部82は、各圧力センサ60,61のいずれかより圧力検出結果が入力されると、眼科装置10の現在の動作段階を判別すると共に、この圧力検出結果に基づき押し引き操作の種類(操作方向)を判別する(ステップS4)。
【0121】
次いで、決定部82は、判別した現在の動作段階及び押し引き操作の種類に基づき、先に対応関係取得部78から入力された対応関係情報79を参照して、現在の動作段階及び押し引き操作の種類の双方に対応した装置本体10aの動作制御を決定する(ステップS5,S6、本発明の決定工程に相当)。
【0122】
そして、決定部82は、装置本体10aの動作制御として、「右眼(左眼)に対するアライメント開始制御」、「左眼(右眼)測定位置への左右切替移動制御」、及び「第1(第2)アライメント停止制御」等の測定ユニット15の移動及び移動停止に係る動作制御を決定した場合、この動作制御の決定結果を移動制御部68へ出力する。また、決定部82は、装置本体10aの動作制御として、「出力実行制御」のような被検眼Eの眼特性の測定結果の出力に係る動作制御を決定した場合、この動作制御の決定結果を出力制御部77へ出力する。
【0123】
決定部82から動作制御の決定結果の入力を受けた移動制御部68は、この決定結果に基づき各モータ34,44,54の駆動を制御して、測定ユニット15の移動及び移動停止に係る動作制御を実行させる(ステップS7、本発明の制御工程に相当)。また、決定部82から動作制御の決定結果の入力を受けた出力制御部77は、出力部18の駆動を制御して、被検眼Eの眼特性の測定結果の出力に係る動作制御を実行させる(ステップS7、本発明の制御工程に相当)。
【0124】
[眼科装置の作用]
図15は、上記構成の眼科装置10による眼特性の測定の流れを示すフローチャートである。なお、ここではオートアライメントモードが設定されている場合について説明を行う。
【0125】
図15に示すように、オートアライメントモードが設定されている場合(ステップS11)、操作者は顔支持部13の顎受け及び額当てのY軸方向の高さ位置の調整、及び測定ユニット15のY軸方向の移動操作を行って、測定ユニット15と被検者の顔とのY軸方向の高さ位置を調整する。
【0126】
また、操作者は、電動駆動部14、測定ユニット15、及び操作レバー17の少なくともいずれかに対してZ軸方向及びX軸方向の押し引き操作を行う。この操作により、移動制御部68による測定ユニット15の粗動制御が実行され、測定ユニット15が被検眼Eの前眼部像の取得可能位置までZ軸方向及びX軸方向に移動(粗動)される。これにより、アライメント検出前の測定ユニット15の位置調整が完了する。その結果、眼科装置10の測定動作の動作段階が、既述の図11に示した動作段階「測定開始前」に移行する。
【0127】
アライメント検出前の測定ユニット15の位置調整が完了すると、測定ユニット15からアライメント検出部70に対してアライメント検出用の検出信号が入力される。この検出信号の入力を受けてアライメント検出部70は、被検眼Eに対する測定ユニット15のXYZ軸の3軸方向のアライメント検出を行い、そのアライメント検出結果を移動制御部68へ出力する(ステップS12)。
【0128】
そして、操作者が電動駆動部14、測定ユニット15、及び操作レバー17の少なくともいずれかに対して、Z軸方向前方側へ押し引きする押し引き操作を行うと(ステップS13)、決定部82は、既述の図14に示したフローに従って動作制御「右眼(左眼)に対するアライメント開始制御」の実行を決定する。
【0129】
次いで、決定部82は、動作制御「右眼(左眼)に対するアライメント開始制御」の決定結果を移動制御部68へ出力する。これにより、移動制御部68は、アライメント検出部70から入力されたアライメント検出結果に基づき、各モータ34,44,54を駆動してオートアライメントを開始する(ステップS14)。その結果、眼科装置10の測定動作の動作段階が、測定ユニット15の移動方向に応じて既述の図11に示した動作段階「第1アライメント実行中」又は「第2アライメント実行中」に移行する。
【0130】
オートアライメントの開始後、操作者はオートアライメントを緊急停止する必要が生じた場合、電動駆動部14、測定ユニット15、及び操作レバー17の少なくともいずれかに対して、Z軸方向又はX軸方向に押し引きする押し引き操作を行う(ステップS15でYES、ステップS16)。この押し引き操作を受けて、決定部82は、既述の図14に示したフローに従って、動作制御「第1アライメント停止制御」又は「第2アライメント停止制御」の実行を決定する。これにより、移動制御部68は、各モータ34,44,54の駆動を制御して、オートアライメントを緊急停止させる(ステップS17)。
【0131】
次いで、移動制御部68は、手動アライメントモードへの切り替えを行う(ステップS18)。この場合、操作者は手動での移動操作、すなわち電動駆動部14、測定ユニット15、及び操作レバー17の少なくともいずれかに対する押し引き操作、及び操作レバー17に対する傾倒操作等を行う。これにより、押し引き操作に応じた測定ユニット15の粗動と、傾倒操作等に応じた測定ユニット15の微動とが実行され、被検眼Eに対して測定ユニット15が手動アライメントされる。
【0132】
一方、オートアライメントの開始後、オートアライメントを緊急停止させる押し引き操作が行われなかった場合、被検眼Eに対する測定ユニット15のオートアライメントが完了する(ステップS15でNO、ステップS19でYES)。
【0133】
オートアライメント又は手動アライメントが完了すると、測定ユニット15による被検眼Eの眼特性の測定と解析部71による解析とが実行され、被検眼Eの眼特性の測定結果が得られる(ステップS20)。この被検眼Eの眼特性の測定結果は、モニタ16に表示されると共に記憶部66に記憶され、さらに出力制御部77へ出力される。その結果、眼科装置10による被検眼Eの眼特性の測定動作の動作段階が、測定ユニット15の移動方向に応じて既述の図11に示した動作段階「右眼測定完了」又は「左眼測定完了」に移行する。
【0134】
眼特性を測定する被検眼Eの左右切替を行う場合、操作者は、電動駆動部14、測定ユニット15、及び操作レバー17の少なくともいずれかに対して、X軸方向右側又はX軸方向左側のうちの対応する方向に押し引きする押し引き操作を行う(ステップS21でYES、ステップS22)。この押し引き操作を受けて、決定部82は、既述の図14に示したフローに従って、動作制御「左眼(右眼)測定位置への左右切替移動制御及びアライメント開始制御」の実行を決定する。そして、移動制御部68は、X軸モータ44を駆動して、測定ユニット15を右眼測定位置及び左眼測定位置の一方から他方に向けて移動させる(ステップS23)。
【0135】
以下、既述のステップS12と同様のアライメント検出が実行された後(ステップS24)、既述のステップS14からステップS20までの処理が繰り返し実行される。
【0136】
操作者は、被検眼Eの両眼の眼特性の測定が完了した後(ステップS21でNO)、この測定結果の出力を行う場合には、電動駆動部14、測定ユニット15、及び操作レバー17の少なくともいずれかに対して、Z軸方向前方側に押し引きする押し引き操作を行う(ステップS25でYES、ステップS26)。
【0137】
この押し引き操作を受けて、決定部82は、既述の図14に示したフローに従って、動作制御「出力実行制御」及び「リセット」の実行を決定する。これにより、出力制御部77は、出力部18の駆動を制御して、この出力部18に被検眼Eの眼特性の測定結果の出力を実行させる(ステップS27)。また、移動制御部68は、この決定結果に基づき各モータ34,44,54の駆動を制御して、測定ユニット15を所定の初期位置に移動させる。
【0138】
[本実施形態の効果]
以上のように本実施形態の眼科装置10では、被検眼Eの眼特性の測定動作の各動作段階においてそれぞれ予め定められた動作制御を、各動作段階で共通の開始操作である押し引き操作によって開始できる。これにより、操作者は押し引き操作を行うだけで上述の動作制御を開始させられるため、操作者の操作性を向上させることができる。また、操作者は、押し引き操作を行うことにより、モニタ16の操作画面をタッチ操作する場合とは異なり直感的な操作を行うことができる。さらに、多数の動作制御を開始させるための多数のアイコンをモニタ16の操作画面上に表示させたり、或いは操作者が多数の操作パターンを記憶したりする必要が無くなる。その結果、現在の動作段階に対応した装置本体10aの動作制御の実行操作を、操作性を低下させることなく操作者が直感的に行うことができる。
【0139】
また、本実施形態では、動作段階ごとに、操作方向が異なる複数種類の押し引き操作にそれぞれ対応付けられる装置本体10aの動作制御の種類を異ならせている。これにより、押し引き操作の種類よりも多数の動作制御を、動作段階ごとに押し引き操作を行うことで開始させることができる。その結果、操作者の操作性をより向上させることができる。
【0140】
[押し引き操作の種類判別方法の変形例]
図16は、他実施形態の対応関係情報79Aを説明するための説明図である。上記実施形態の決定部82は、押し引き操作の操作方向に基づきこの押し引き操作の種類を判別しているが、押し引き操作の操作パターンに基づき押し引き操作の種類を判別してもよい。例えば、既述の各圧力センサ60,61として高感度且つ高精度なセンサを用いることで、押し引き操作として例えばタッチ操作等(タップ操作及び接触操作を含む)が行われた場合に、このタッチ操作等に伴う僅かな圧力の変化を各圧力センサ60,61で検出できる。
【0141】
従って、電動駆動部14、測定ユニット15、及び操作レバー17の少なくともいずれかに対して、押し引き操作が例えば1回又は複数回のタッチ操作、或いは長押し操作(一定時間連続したタッチ操作)などの互いに異なる操作パターンで行われた場合、決定部82は、各圧力センサ60,61の圧力検出結果に基づき各操作パターンを区別できる。
【0142】
そこで、図16に示すように、対応関係情報79Aの各動作段階に対して、これら各動作段階で互いに共通の3種類(3種類以外でも可)の押し引き操作の操作パターン(「操作パターン1」、「操作パターン2」、「操作パターン3」)を定める。例えば「操作パターン1」は1回タッチ操作であり、「操作パターン2」は複数回タッチ操作であり、「操作パターン3」は長押し操作である。これにより、決定部82は、各圧力センサ60,61の圧力検出結果に基づき、各動作段階で操作者により行われた押し引き操作の操作パターン(押し引き操作の種類)を判別し、この判別結果と現在の動作段階とに基づき、上記実施形態と同様に装置本体10aの動作制御を決定できる。
【0143】
[手動アライメントモード時における動作制御の実行]
上記実施形態では、オートアライメントモード時の既述の各動作段階で押し引き操作が行われた場合の装置本体10aの動作制御の決定及び実行について説明したが、手動アライメントモード時においても同様に動作制御(例えば被検眼Eの眼特性の測定結果の出力等)の決定及び実行を行ってもよい。
【0144】
この場合、決定部82は、各圧力センサ60,61で検出される圧力の絶対値が移動制御部68による測定ユニット15の粗動制御を実行しない既述の閾値±VLの絶対値未満である場合に、装置本体10aの動作制御の決定を行う。一方、各圧力センサ60,61で検出される圧力の絶対値が閾値±VLの絶対値以上である場合、移動制御部68による測定ユニット15の粗動制御が実行される。
【0145】
図17は、手動アライメントモード時における装置本体10aの動作制御の決定及び実行と、測定ユニット15の粗動制御の実行との流れを示すフローチャートである。なお、既述の図14に示したオートアライメントモード時と同様に、対応関係取得部78による対応関係情報79の取得と、決定部82への対応関係情報79の出力とが予め実行されている(ステップS31)。
【0146】
図17に示すように、手動アライメントモードが設定されている場合において(ステップS32)、操作者は、電動駆動部14、測定ユニット15、及び操作レバー17の少なくともいずれかに対して押し引き操作を行う(ステップS33でYES)。これにより、各圧力センサ60,61のいずれかで検出される圧力が変化し、この圧力(圧力変化)の検出結果が各圧力センサ60,61から移動制御部68及び決定部82の双方へ出力される(ステップS34)。
【0147】
移動制御部68は、各圧力センサ60,61のいずれかにより検出された圧力の絶対値の大きさが既述の図9及び図10に示した閾値±VLの絶対値以上である場合(ステップS35でNO)、測定ユニット15の粗動制御を開始する(ステップS36)。
【0148】
最初に移動制御部68は、各圧力センサ60,61のいずれかにより検出された圧力の正負に応じて押し引き操作のZ軸方向又はX軸方向の操作方向を決定すると共に、この圧力の絶対値の大きさに応じて測定ユニット15の移動速度を決定する(ステップS37)。次いで、移動制御部68は、決定した操作方向及び移動速度に従って、各モータ34,44のいずれかを駆動することにより、測定ユニット15を押し引き操作に対応した方向及び速度に従って粗動させる(ステップS38)。
【0149】
一方、移動制御部68は、各圧力センサ60,61のいずれかにより検出された圧力の絶対値の大きさが閾値±VLの絶対値未満である場合(ステップS35でYES)、測定ユニット15の粗動制御を停止する(ステップS39)。そして、既述の図14で説明したステップS4からステップS7まで処理、すなわち決定部82による動作制御の決定と、移動制御部68或いは出力制御部77による動作制御の実行とが行われる。
【0150】
このように測定ユニット15の粗動制御を行う場合の押し引き操作の圧力の大きさと、装置本体10aの動作制御の決定及び実行を行う場合の押し引き操作の圧力の大きさとは互いに異なる。このため、操作者が電動駆動部14、測定ユニット15、及び操作レバー17の少なくともいずれかに対する押し引き操作を行った場合に、測定ユニット15の粗動制御と、装置本体10aの動作制御とが同時に行われることが防止される。このため、操作者は、測定ユニット15の粗動制御を行う場合には強い力で押し引き操作を行い、装置本体10aの動作制御を行う場合にはタッチ操作等の弱い力で押し引き操作を行う。これにより、操作者は押し引き操作の力を増減することで、測定ユニット15の粗動制御と装置本体10aの動作制御との選択を直感的に行うことができる。また、操作者が意図しない制御の実行が防止される。
【0151】
[押し引き操作の他の検出方法]
上記実施形態では、Z軸圧力センサ60及びX軸圧力センサ61を用いて、測定ユニット15に対するZ軸方向及びX軸方向の押し引き操作を検出しているが、この押し引き操作を他の方法を用いて検出してもよい。
【0152】
図18は、他の構成によるZ軸方向及びX軸方向の押し引き操作の検出を説明するための説明図である。図18に示すように、Z軸圧力センサ60を設ける代わりに、ハウジング28及びナット32の双方の対向面28a,32aの一方又は双方に、両対向面28a,32aの間の距離Dを測距する測距センサ80(本発明の押し引き操作検出部)を設けてもよい。
【0153】
測距センサ80は、Z軸方向の押し引き操作(既述の図4の矢印PZ1〜PZ4参照)が行われた場合、この押し引き操作に伴う両対向面28a,32aの間の距離Dの変化を検出する。例えば、Z軸方向前方側に向けて押し引き操作が行われた場合、両対向面28a,32aの間の距離Dの減少が測距センサ80により検出される。また逆に、Z軸方向後方側に向けて押し引き操作が行われた場合、両対向面28a,32aの間の距離Dの増加が測距センサ80により検出される。従って、測距センサ80によって、Z軸方向の押し引き操作の操作方向と、押し引き操作の圧力の大きさとを検出できる。
【0154】
具体的には、測距センサ80で検出される距離Dの増減に応じて押し引き操作のZ軸方向の操作方向を検出できると共に、測距センサ80で検出される距離Dの増減量の絶対値に基づき押し引き操作の圧力の大きさを検出できる。
【0155】
また、ハウジング38及びナット42の双方のX軸方向において互いに対向する対向面(不図示)の間にも測距センサ80を設けることで、X軸方向の押し引き操作の操作方向と、押し引き操作の圧力の大きさとを検出できる。
【0156】
従って、制御部65(移動制御部68)は、Z軸方向及びX軸方向の測距センサ80の距離検出結果に基づき、上記実施形態と同様に特定の操作パターンに対応する測定ユニット15の特定移動制御と、測定ユニット15の粗動制御とを行うことができる。
【0157】
なお、上述のZ軸圧力センサ60、X軸圧力センサ61、及び測距センサ80の代わりに、本発明の押し引き操作検出部として、例えば押し引き操作に伴う眼科装置10の筐体等の歪みを検出する歪み検出センサ等を用いてよい。すなわち、本発明の押し引き操作検出部は、押し引き操作に伴う眼科装置10内の圧力の変化、歪み、及び変位等を検出可能であれば特に限定はされない。
【0158】
[眼科装置の動作制御の開始操作の変形例]
図19は、装置本体10aの動作制御の開始操作の変形例を説明するための説明図である。上記実施形態では、装置本体10aの動作制御の開始操作として押し引き操作を行っているが、本発明の開始操作は押し引き操作に限定されるものではなく、眼科装置10の複数の動作段階で共通の開始操作であれば特に限定されない。このため、例えば図19に示すように、装置本体10aの動作制御の開始操作として、操作者の接触操作を検出する接触センサ85、或いは操作者の予め定められた動作を検出するモーションセンサ86を設けてもよい。
【0159】
この場合においても、既述の動作段階ごとに、接触操作の種類或いは操作者の動作の種類と、装置本体10aの動作制御の種類との対応関係を予め定めておくことで、決定部82は上記実施形態と同様にして装置本体10aの動作制御を決定できる。
【0160】
[その他]
上記実施形態の眼科装置10では、Z軸方向及びX軸方向の押し引き操作を行うことができるが、Y軸方向の押し引き操作を実行可能にしてもよい。この場合に、Y軸方向の押し引き操作を不図示のY軸圧力センサ等で検出し、Y軸方向の押し引き操作の種類と現在の動作段階とに基づき、装置本体10aの動作制御の種類の決定を行ってもよい。
【0161】
上記実施形態では、測定ユニット15を微動させる場合に操作レバー17の傾倒操作又は回転操作を行っているが、操作レバー17以外の操作部、例えば不図示の操作ボタン及びモニタ16の画面上に表示されるタッチ操作画面等を操作して測定ユニット15の微動を行ってもよい。
【0162】
上記各実施形態では、Y軸方向の下方から上方に向かって、Z軸駆動部22及びZ軸ベース21と、X軸駆動部24及びX軸ベース23と、Y軸駆動部25とが設けられているが、これらの順番は適宜変更してもよい。また、電動駆動部14が測定ユニット15をXYZ軸の各軸方向に移動させる構成は、図1等に示した構成に限定されるものではなく、任意に変更してもよい。
【0163】
上記各実施形態では、電動駆動部14により測定ユニット15が本体ベース12に対してXYZ軸の各軸方向に移動自在に保持されている場合について説明したが、これら各軸方向の少なくともいずれか一方向に移動自在に保持されている場合についても本発明を適用することができる。
【0164】
上記実施形態では、電動駆動部14、測定ユニット15、及び操作レバー17の少なくともいずれかに対する押し引き操作により、測定ユニット15の粗動制御と装置本体10aの動作制御とを実行することができるが、押し引き操作により装置本体10aの動作制御のみを実行する場合にも本発明を適用することができる。この場合、測定ユニット15の騒動制御は従来と同様に操作レバー17の操作、又はモニタ16の操作画面のタッチ操作で行う。
【符号の説明】
【0165】
10…眼科装置,10a…装置本体,12…本体ベース,14…電動駆動部,15…測定ユニット,17…操作レバー,18…出力部,22…Z軸駆動部,24…X軸駆動部,28,38…ハウジング,28a,32a…対向面,32,42…ナット,60…Z軸圧力センサ,61…X軸圧力センサ,65…制御部,68…移動制御部,77…出力制御部,78…対応関係取得部,79…対応関係情報,80…測距センサ,82…決定部
図1
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