(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
<前提技術>
(インバータ回路)
図1は3レベルIタイプインバータ構成のインバータ回路における1アームの基本構成を示す回路図である。同図に示すように、3レベルIタイプのインバータ回路60は、DC電圧の高電位側(High side)の第1の電位端子である電位端子Pと、低電位側(Low side)の第2の電位端子である電位端子Nとを有している。
【0018】
そして、
図1に示すように、インバータ回路60は、第1〜第4のスイッチング素子であるトランジスタQ1〜Q4と、トランジスタQ1〜Q4に対応して設けられる第1〜第4のダイオードであるダイオードD1〜D4と、第5及び第6のダイオードであるダイオードD5及びD6とを有している。
【0019】
そして、トランジスタQ1〜Q4は、電位端子P側を一方電極とし電位端子N側を他方電極として、電位端子Pと電位端子Nとの間に直列に設けられる。
図1ではトランジスタQ1〜Q4としてIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を示している。なお、トランジスタQ1〜Q4をMOSトランジスタ等の他のスイッチング素子で実現しても良い。
【0020】
ダイオードD1〜D4は各々のアノードが電位端子N側になるようにトランジスタQ1〜Q4に逆接続される。
【0021】
中間電位端子である電位端子Cと第1の中間接続端子である中間接続端子M1との間にアノードが電位端子C側になるようにダイオードD5が接続される。
【0022】
電位端子Cと第2の中間接続端子である中間接続端子M2との間にカソードが電位端子C側になるようにダイオードD6が接続される。
【0023】
中間接続端子M1は第1及び第2のスイッチング素子間であるトランジスタQ1及びQ2間の接続点であり、中間接続端子M2は第3及び第4のスイッチング素子間であるトランジスタQ3及びQ4間の接続点であり、第2及び第3のスイッチング素子間であるトランジスタQ2及びQ3間の接続点が出力電位端子ACとして規定される。
【0024】
端子71〜74はトランジスタQ1〜Q4の制御電極に接続される端子であり、端子81〜84はトランジスタQ1〜Q4における電位端子N側の他方電極に接続される端子である。
【0025】
このように、トランジスタQ1〜Q4とダイオードD1〜D6とにより、出力電位端子ACから負荷へ電力を供給する3レベルIタイプインバータ構成のインバータ回路60が構成される。
【0026】
図2は3レベルIタイプインバータ構成のインバータ回路60Bにおける1アームの他の構成を示す回路図である。
【0027】
同図に示すように、ダイオードD5及びD6に対応してトランジスタQ5及びQ6をさらに有している点が基本構成と異なる。
【0028】
トランジスタQ5は一方電極が中間接続端子M1に接続され、他方電極が電位端子Cに接続される。トランジスタQ6は一方電極が電位端子Cに接続され、他方電極が中間接続端子M2に接続される。
【0029】
端子75及び76はトランジスタQ5及びQ6の制御電極に接続される端子であり、端子85及び86はトランジスタQ5及びQ6の他方電極に接続される端子である。
【0030】
図2で示したインバータ回路60BからトランジスタQ5及びQ6をオフ状態に設定すれば、
図1で示したインバータ回路60と等価となる。
【0031】
なお、トランジスタQ1〜Q6がIGBTの場合、制御電極がゲート電極、一方電極がコレクタ電極、他方電極がエミッタ電極となる。以降、トランジスタQ1〜Q6がIGBTの場合を前提として、上述したゲート電極、コレクタ電極及びエミッタ電極を、ゲート、コレクタ及びエミッタと略記して説明する。
【0032】
(パワー半導体モジュール)
図3は2in1構成のパワー半導体モジュール101の内部構成を示す説明図である。
【0033】
パワー半導体モジュール101は内部に、第1及び第2のモジュール内スイッチング素子であるトランジスタTr1及びTr2と、第1及び第2のモジュール内ダイオードであるダイオードDi1及びDi2を有している。
図3ではトランジスタTr1及びTr2としてIGBTを示している。
【0034】
また、2in1構成の半導体モジュールであるパワー半導体モジュール101は、第1の外部端子であるコレクタ端子C1、第2の外部端子であるエミッタ端子E2、第3の外部端子であるコレクタ・エミッタ端子C2E1、端子G1、及び端子G2を外部端子として有している。
【0035】
トランジスタTr1及びTr2は、コレクタをコレクタ端子C1側、エミッタをエミッタ端子E2側として、コレクタ端子C1とエミッタ端子E2との間に直列に接続される。ダイオードDi1及びDi2はトランジスタTr1及びTr2に対応して設けられ、アノードがエミッタ端子E2側になるように逆接続される。
【0036】
したがって、トランジスタTr1のコレクタ及びダイオードDi1のカソードがコレクタ端子C1に接続され、トランジスタTr1のエミッタ、ダイオードDi1のアノード、トランジスタTr2のコレクタ及びダイオードDi2のカソードがコレクタ・エミッタ端子C2E1に接続され、トランジスタTr2のエミッタ及びダイオードDi2のアノードがエミッタ端子E2に接続される。また、端子G1及びG2がトランジスタTr1及びTr2のゲートに接続される。上述したコレクタ・エミッタ端子C2E1はダイオードDi1及びDi2間並びにトランジスタTr1及びTr2間の接続点となる。
【0037】
このように、2in1構成のパワー半導体モジュール101はトランジスタTr1及びTr2並びにダイオードDi1及びDi2を含む回路素子群を有している。
【0038】
図4は2in1構成のパワー半導体モジュール102の内部構成を示す説明図である。
【0039】
パワー半導体モジュール102は内部に、第1のモジュール内スイッチング素子であるトランジスタTr1と、第1及び第2のモジュール内ダイオードであるダイオードDi1及びDi2とを有している。
【0040】
また、2in1構成の半導体モジュールであるパワー半導体モジュール102は、パワー半導体モジュール101と同様、第1の外部端子であるコレクタ端子C1、第2の外部端子であるエミッタ端子E2、第3の外部端子であるコレクタ・エミッタ端子C2E1、及び端子G1を外部端子として有している。
【0041】
そして、ダイオードDi1及びDi2は、コレクタ端子C1とエミッタ端子E2との間に、アノードがエミッタ端子E2側になるように直列に接続される。トランジスタTr1はダイオードDi1に並列に接続され、コレクタがコレクタ端子C1にエミッタがコレクタ・エミッタ端子C2E1に接続される。
【0042】
このように、2in1構成のパワー半導体モジュール102はトランジスタTr1並びにダイオードDi1及びDi2を含む回路素子群を有している。すなわち、
図3で示したパワー半導体モジュール101からトランジスタTr2及び端子G2が省略された構成がパワー半導体モジュール102となる。したがって、
図3で示したパワー半導体モジュール101において、トランジスタTr2をオフ状態に設定すれば、
図4で示すパワー半導体モジュール102と等価になる。
【0043】
図5は2in1構成のパワー半導体モジュール103の内部構成を示す説明図である。
【0044】
パワー半導体モジュール103は内部に、第2のモジュール内スイッチング素子であるトランジスタTr2と、第1及び第2のモジュール内ダイオードであるダイオードDi1及びDi2を有している。
【0045】
また、2in1構成の半導体モジュールであるパワー半導体モジュール103は、パワー半導体モジュール101,102と同様、コレクタ端子C1、エミッタ端子E2、コレクタ・エミッタ端子C2E1、及び端子G2を外部端子として有している。
【0046】
そして、ダイオードDi1及びDi2は、コレクタ端子C1とエミッタ端子E2との間に、アノードがエミッタ端子E2側になるように直列に接続される。トランジスタTr2はダイオードDi2に並列に接続され、コレクタがコレクタ・エミッタ端子C2E1に接続され、エミッタがエミッタ端子E2に接続される。
【0047】
このように、2in1構成のパワー半導体モジュール103はトランジスタTr2並びにダイオードDi1及びDi2を含む回路素子群を有している。すなわち、
図3で示したパワー半導体モジュール101からトランジスタTr1及び端子G1が省略された構成がパワー半導体モジュール103となる。したがって、
図3で示したパワー半導体モジュール101において、トランジスタTr1をオフ状態に設定すれば、
図5で示すパワー半導体モジュール103と等価になる。
【0048】
パワー半導体モジュール101〜103それぞれの回路素子群は、コレクタ端子C1とエミッタ端子E2との間に、アノードがエミッタ端子E2側になるように直列に接続されるダイオードDi1及びDi2と、ダイオードDi1及びDi2のうち少なくとも一つに並列に接続される少なくとも一つのモジュール内スイッチング素子を含む点で共通する。
【0049】
上記少なくとも一つのモジュール内スイッチング素子として、パワー半導体モジュール101はトランジスタTr1及びTr2、パワー半導体モジュール102はトランジスタTr1、パワー半導体モジュール103はトランジスタTr2がそれぞれ相当する。
【0050】
図25は
図3で示したパワー半導体モジュール101を用いて、
図1で示したインバータ回路60を実現する従来のモジュール割り当て内容を示す回路図である。
【0051】
同図に示すように、トランジスタQ1及びQ2並びにダイオードD1及びD2からなる部分回路部30Aと、トランジスタQ3及びQ4並びにダイオードD3及びD4からなる部分回路部30Bと、ダイオードD5及びD6からなる部分回路部30Cとに分類し、3つのパワー半導体モジュール101を部分回路部30A〜30C用に割り当てる。以下、割り当て内容を詳述する。
【0052】
部分回路部30Aに関し、パワー半導体モジュール101のトランジスタTr1及びTr2をトランジスタQ1及びQ2に割り当て、ダイオードDi1及びDi2をダイオードD1及びD2に割り当てる。
【0053】
部分回路部30Bに関し、パワー半導体モジュール101のトランジスタTr1及びTr2をトランジスタQ3及びQ4に割り当て、ダイオードDi1及びDi2をダイオードD3及びD4に割り当てる。
【0054】
部分回路部30Cに関し、パワー半導体モジュール101のダイオードDi1及びDi2をダイオードD5及びD6に割り当てる。この際、トランジスタTr1及びTr2は無効化される。なお、部分回路部30Cについてはパワー半導体モジュール101に代えてパワー半導体モジュール102あるいはパワー半導体モジュール103を用いることもできるし、ダイオードのみを有するパワー半導体モジュールを用いることもできる。
【0055】
上記のように割り当てた場合、電位端子Pが部分回路部30A用のパワー半導体モジュール101のコレクタ端子C1となり、電位端子Nが部分回路部30B用のパワー半導体モジュール101のエミッタ端子E2端子となる。
【0056】
なお、
図1、
図2及び
図25は、便宜上、電気回路記号で示したが、各電気回路記号を複数のパワー半導体モジュールを並列接続して構成する場合、並列接続されるパワー半導体モジュール(2in1)はひと固まりにまとめられて配置されるのが一般的である。
【0057】
図6は
図3で示したパワー半導体モジュール101を回路装置として実現したパワー半導体モジュール装置100の構成を模式的に示す説明図である。
【0058】
同図に示すように、
図3で示したパワー半導体モジュール101が筐体65内に設けられる。そして、トランジスタTr1のコレクタに接続される端子11が第1の外部端子であるコレクタ端子C1に電気的に接続され、トランジスタTr2のエミッタに接続される端子10が第2の外部端子であるエミッタ端子E2に電気的に接続される。
【0059】
さらに、トランジスタTr1のエミッタは端子7を介して一方のコレクタ・エミッタ端子C2E1に電気的に接続され、端子8を介して他方のコレクタ・エミッタ端子C2E1に電気的に接続される。すなわち、パワー半導体モジュール装置100は、第3の外部端子が2つ存在し、一方の第3の外部端子として端子7に電気的に接続されるコレクタ・エミッタ端子C2E1が設けられ、他方の第3の外部端子として端子8に電気的に接続されるコレクタ・エミッタ端子C2E1が設けられる。
【0060】
なお、サーミスタ15は端子1,2間に設けられる。また、端子3はトランジスタTr1のゲート用の信号端子であり、端子4はトランジスタTr1のエミッタ用の信号端子であり、端子5はトランジスタTr1のコレクタ用の信号端子であり、端子12はトランジスタTr2のゲート用の信号端子であり、端子13はトランジスタTr2のエミッタ用の信号端子である。
【0061】
パワー半導体モジュール装置100では、コレクタ端子C1及びエミッタ端子E2が図中左側の第1の側面側に設けられ、一方及び他方のコレクタ・エミッタ端子C2E1が第1の側面に対向する図中右側の第2の側面に設けられる。
【0062】
(従来技術の問題点の詳細)
図26は
図6で示したパワー半導体モジュール装置100を用いて4並列構成で実現した場合の従来の電力変換装置の平面構成を示す説明図である。
【0063】
図26において、4つのパワー半導体モジュール装置100A、4つのパワー半導体モジュール装置100B及び4つのパワー半導体モジュール装置100Cはそれぞれ
図6で示すパワー半導体モジュール装置100と同一構成である。
【0064】
そして、4つのパワー半導体モジュール装置100Aはそれぞれ
図25で示す部分回路部30Aに割り当てられる。モジュール装置群200A内に、コレクタ端子C1及びエミッタ端子E2を有する第1側面を図中左側にして、4つのパワー半導体モジュール装置100Aがまとめて配置されることにより、Part−Aを担当する。したがって、4つのパワー半導体モジュール装置100Aそれぞれにおいて、コレクタ端子C1を電位端子Pに、エミッタ端子E2を出力電位端子ACに、一方及び他方のコレクタ・エミッタ端子C2E1の少なくとも一つを中間接続端子M1にそれぞれ電気的に接続する必要がある。
【0065】
一方、4つのパワー半導体モジュール装置100Bはそれぞれ
図25で示す部分回路部30Bに割り当てられ、図中、モジュール装置群200Aの下方に位置するモジュール装置群200B内に、コレクタ端子C1及びエミッタ端子E2を有する第1側面を図中左側にしてまとめて配置されることにより、Part−Bを担当する。したがって、4つのパワー半導体モジュール装置100Bそれぞれにおいて、コレクタ端子C1を出力電位端子ACに、エミッタ端子E2を電位端子Nに、一方及び他方のコレクタ・エミッタ端子C2E1の少なくとも一つを中間接続端子M2にそれぞれ電気的に接続する必要がある。
【0066】
さらに、4つのパワー半導体モジュール装置100Cはそれぞれ
図25で示す部分回路部30Cに割り当てられ、図中、モジュール装置群200Aの左方に位置するモジュール装置群200C内に、コレクタ端子C1及びエミッタ端子E2を有する第1側面を図中左側にしてまとめて配置されることにより、Part−Cを担当する。したがって、4つのパワー半導体モジュール装置100Cそれぞれにおいて、コレクタ端子C1を中間接続端子M1に、エミッタ端子E2を中間接続端子M2に、一方及び他方のコレクタ・エミッタ端子C2E1の少なくとも一つを電位端子Cに電気的に接続する必要がある。
【0067】
さらに、モジュール装置群200A及びモジュール装置群200Bとモジュール装置群200Cとの間の領域にバスバー51が設けられ、モジュール装置群200A及び200Bの図中右側の領域にバスバー52が設けられ、モジュール装置群200Cの左側の領域にバスバー53が設けられる。
【0068】
図27及び
図28は、特許文献1で開示された電力変換装置の構成を示す回路図及び説明図である。
図27及び
図28の特許文献1の
図8及び
図9と等価な図面であり、一部の符号を変更して示している。なお、
図27で示す符号301〜306、309〜312は、特許文献1の
図8に示す符号1〜6,9〜12に対応している。
【0069】
特許文献1で開示された電力変換装置は、
図3で示すパワー半導体モジュール101を用いて、3レベル電力変換装置を実現した構成である。
図27において、MD5〜MD7が、
図25の部分回路部30A〜30Cを実現するための半導体モジュールとなる。
【0070】
図28に各半導体モジュールを3個並列接続した時のモジュール配置と配線構造を示している。図中、半導体モジュールMD5用の3並列の半導体モジュールMD5a〜MD5c、半導体モジュールMD6用の3並列の半導体モジュールMD6a〜MD6c、半導体モジュールMD7用の3並列の半導体モジュールMD7a〜MD7cそれぞれを
図3に示すパワー半導体モジュール101を用いて実現している。
【0071】
なお、
図28において、207a〜207cが電圧クランプ形スナバである。また、UB2は交流端子配線バー、UPB2、UNB2は中性点クランプダイオード回路の配線バー、MB2が零極の配線バーで、並列接続される各々の半導体モジュールを接続している。
【0072】
配線インダクタンスを小さくし、サージ電圧を効果的に抑制するために、スナバ207aを接続した半導体モジュールMD7aは半導体モジュールMD6a及びMD5a間に設けられる。同様にして、スナバ207bを接続した半導体モジュールMD7bは半導体モジュールMD6b及びMD5b間に設けられ、スナバ207cを接続した半導体モジュールMD7cは半導体モジュールMD6c及びMD5c間に設けられる。
【0073】
図27及び
図28で示す特許文献1で開示された電力変換装置も、2in1構成のパワー半導体モジュールを用いて、3レベルIタイプインバータ構成のインバータ回路を有する電力変換装置を実現すべく、
図25の部分回路部30A〜30Cそれぞれに2in1構成のパワー半導体モジュールを割り当てている。すなわち、
図26で示す電力変換装置と実質等価な平面構成となる。
【0074】
図26で代表される従来の電力変換装置は、回路インダクタンスの増大により、サージ電圧が過大に発生することが問題点となる。さらに、過大なサージ電圧の発生により、電力変換装置の運転範囲を制限せざるを得ない等の問題を有する。一方、過大なサージ電圧を抑制するため、スナバ回路を別途搭載する必要が生じ、装置の大型化やコストアップを招いてしまう問題点があった。
【0075】
図27及び
図28で示す特許文献1に開示の従来技術では、電流経路を考慮すると、電流往復路での電磁界キャンセリング効果を得て回路インダクタンスを小さくするために近くに配置すべき、電位端子Pから電位端子Cに至る電流経路、電位端子Cから電位端子Nに至る電流経路、中間接続端子M1から出力電位端子ACを介して中間接続端子M2に至る電流経路がそれぞれ大きなループ状に配置されることなる。このため、電力変換装置の回路インダクタンスが大きくなり、3レベルインバータの利点を充分に引き出せない問題点を有している。仮に、上記問題点課題を解消すべく、上述した複数の電流経路の全体を覆うように大きくして重ね合わせた構成の配線バスバーを設ける場合、当該配線バスバーが3層より多くなり、形状が複雑化したり、製造を困難にしたりするため、装置の重量やコストの増加を招いてしまう。
【0076】
具体的には、
図6に示すパワー半導体モジュール装置100を用いて、特許文献1に開示の電力変換装置を構成した場合、
図25に示す部分回路部30A〜30Cの回路割振りであるため、バスバー51は、出力電位端子AC用、電位端子P用、電位端子N用、電位端子C用に少なくとも4層構成する必要があり、構成層が多くなる。また、4層のうちの出力電位端子ACの層以外の層により、出力電位端子ACから負荷への配線を設けることが難しくなる問題点も生じてしまう。
【0077】
このように、3レベルIタイプインバータ構成のインバータ回路を有する従来の電力変換装置は、
図26のように構成されているため、後に詳述するように、バスバー51によって電気的に接続されるバンクキャパシタ16及び17からの電流往路と電流復路とが互いのキャンセル効果を期待できない比較的離れた位置に存在することになる。したがって、従来の電力変換装置は、力行動作及び回生動作のうち少なくとも一方の動作時に、トランジスタQ1〜Q4のスイッチング動作に伴い電流変化(di/dt)が生じる電流ループにおける回路インダクタンスが大きくなってしまう問題点があった。この問題点の解消を図ったのが本願発明の電力変換装置である。
【0078】
<実施の形態1>
(発明の原理)
図7は
図3〜
図5で示したパワー半導体モジュール101〜103を用いて、
図1で示したインバータ回路60を実現する本願発明のモジュール割り当て内容を示す回路図である。
【0079】
同図に示すように、トランジスタQ1、ダイオードD1及びダイオードD5からなる部分回路部20Aと、トランジスタQ4、ダイオードD4及びD6からなる部分回路部20Bと、トランジスタQ2及びQ3並びにダイオードD2及びD3からなる部分回路部20Cとに分類し、3つのパワー半導体モジュール101を部分回路部20A〜20C用に割り当てる。以下、割り当て内容を詳述する。
【0080】
部分回路部20Aに関し、パワー半導体モジュール101あるいはパワー半導体モジュール102のトランジスタTr1をトランジスタQ1に割り当て、ダイオードDi1及びDi2をダイオードD1及びD5に割り当てる。
【0081】
部分回路部20Bに関し、パワー半導体モジュール101あるいはパワー半導体モジュール103のダイオードDi1及びDi2をダイオードD6及びD4に割り当て、トランジスタTr2をトランジスタQ4に割り当てる。
【0082】
部分回路部20Cに関し、パワー半導体モジュール101のトランジスタTr1及びTr2をトランジスタQ2及びQ3に割り当て、ダイオードDi1及びDi2を第2及び第3のダイオードであるダイオードD2及びD3に割り当てる。
【0083】
上記のように割り当てた場合、電位端子Pが部分回路部20A用のパワー半導体モジュール101あるいは102のコレクタ端子C1となり、電位端子Nが部分回路部20B用のパワー半導体モジュール101あるいは103のエミッタ端子E2端子となる。
【0084】
さらに、電位端子Cが部分回路部20A用のパワー半導体モジュール101あるいは102のエミッタ端子E2と、部分回路部20B用のパワー半導体モジュール101あるいは103のコレクタ端子C1とになる。
【0085】
また、出力電位端子ACが部分回路部20C用のパワー半導体モジュール101のコレクタ・エミッタ端子C2E1端子となる。
【0086】
このように、本願発明では、
図7の部分回路部20A〜20Cに、パワー半導体モジュール101〜103を割り当てるようにしたことを特徴とする。
【0087】
(比較技術)
(第1の比較技術)
図8は
図6で示したパワー半導体モジュール装置100を用いて4並列構成で実現した場合の電力変換装置における第1の比較技術の平面構成を示す説明図である。
【0088】
図9は
図8で示す電力変換装置と等価な回路構成を模式的に示す説明図である。同図に示すように、
図1で示したインバータ回路60に対し、電位端子PにPバスバー40Pが電気的に接続され、電位端子NにNバスバー40Nが電気的に接続され、電位端子CにCバスバー40Cが電気的に接続され、中間接続端子M1にM1バスバー40M1が電気的に接続され、中間接続端子M2にM2バスバー40M2が電気的に接続される。
【0089】
そして、Pバスバー40P,Cバスバー40C間に上位バンクキャパシタであるバンクキャパシタ16が介挿され、Cバスバー40C,Nバスバー40N間に下位バンクキャパシタであるバンクキャパシタ17が介挿される。
【0090】
インバータ回路による動作はDC/AC変換することを基本動作としているが、インバータ入力側のDC電圧の安定化用のバンクキャパシタ16及び17が必要となり、Cバスバー40Cの電位は、Pバスバー40Pの電位とNバスバー40Nの電位との中間電位となる。
【0091】
図8に戻って、4つのパワー半導体モジュール装置100A、4つのパワー半導体モジュール装置100B及び4つのパワー半導体モジュール装置100Cはそれぞれ
図6で示すパワー半導体モジュール装置100と同一構成である。
【0092】
4つのパワー半導体モジュール装置100Aはそれぞれ
図7で示す部分回路部20Aに割り当てられる。モジュール装置群200A内に、コレクタ端子C1及びエミッタ端子E2を有する第1側面を図中左側にして、4つのパワー半導体モジュール装置100Aがまとめて配置されることにより、Part−Aを担当する。したがって、4つのパワー半導体モジュール装置100Aそれぞれにおいて、コレクタ端子C1を電位端子Pに、エミッタ端子E2を電位端子Cに、一方及び他方のコレクタ・エミッタ端子C2E1の少なくとも一つを中間接続端子M1に電気的に接続する必要がある。
【0093】
一方、4つのパワー半導体モジュール装置100Bはそれぞれ
図7で示す部分回路部20Bに割り当てられる。図中、モジュール装置群200Aの下方に位置するモジュール装置群200B内に、コレクタ端子C1及びエミッタ端子E2を有する第1側面を図中左側にして、4つのパワー半導体モジュール装置100Bがまとめて配置されることにより、Part−Bを担当する。したがって、4つのパワー半導体モジュール装置100Bそれぞれにおいて、コレクタ端子C1を電位端子Cに、エミッタ端子E2を電位端子Nに、一方及び他方のコレクタ・エミッタ端子C2E1の少なくとも一つを中間接続端子M2に電気的に接続する必要がある。
【0094】
さらに、4つのパワー半導体モジュール装置100Cはそれぞれ
図7で示す部分回路部20Cに割り当てられる。図中、モジュール装置群200Aの右方に位置するモジュール装置群200C内に、コレクタ端子C1及びエミッタ端子E2を有する第1側面を図中左側にして、4つのパワー半導体モジュール装置100Cがまとめて配置されることにより、Part−Cを担当する。したがって、4つのパワー半導体モジュール装置100Cそれぞれにおいて、コレクタ端子C1を中間接続端子M1に、エミッタ端子E2を中間接続端子M2に、一方及び他方のコレクタ・エミッタ端子C2E1を出力電位端子ACに電気的に接続する必要がある。
【0095】
さらに、モジュール装置群200A及びモジュール装置群200Bとモジュール装置群200Cとの間の領域にバスバー42が設けられ、モジュール装置群200A及び200Bの図中左側の領域から図中下方で屈曲して、バスバー42の図中下方に延び、最終的に先端部がバスバー42の右側に位置するバスバー41が設けられる。
【0096】
バスバー41は
図9で示すPバスバー40P、Cバスバー40C及びNバスバー40Nの3層構造で実現され、例えば、Pバスバー40P上に絶縁層を介してCバスバー40Cを配置し、Cバスバー40C上に絶縁層を介してNバスバー40Nを配置することにより実現される。Pバスバー40P、Cバスバー40C及びNバスバー40Nはラミネート構成により平面視重複して積層しても、平面視重複することなく平面視分離して絶縁層を介して積層してもよい。また、バスバー41の先端部において、平面視重複してバンクキャパシタ16及び17が設けられる。なお、バスバー41とバンクキャパシタ16及び17とは異なる形成高さに形成される。
【0097】
また、絶縁紙等の絶縁物を介してPバスバー40P、Cバスバー40C及びNバスバー40Nの積層構成を実現しても良い。また、Pバスバー40P、Cバスバー40C及びNバスバー40Nの重ね順としては、電流の往路と復路とでの電磁界キャンセリング効果を加味して、Cバスバー40CをPバスバー40PとNバスバー40Nとの中間層とするのが望ましいが、これに限定されない。
【0098】
そして、Pバスバー40Pは4つのパワー半導体モジュール装置100Aのコレクタ端子C1に電気的に接続され、Cバスバー40Cは4つのパワー半導体モジュール装置100Aのエミッタ端子E2及び4つのパワー半導体モジュール装置100Bのコレクタ端子C1に電気的に接続され、Nバスバー40Nは4つのパワー半導体モジュール装置100Bのエミッタ端子E2に電気的に接続される。
【0099】
Pバスバー40P、Cバスバー40C及びNバスバー40Nはラミネート構成により平面視重複して積層する場合、Pバスバー40P及びCバスバー40Cに適宜開口部を設け、当該開口部を介して上層のCバスバー40C及びNバスバー40Nとの電気的接続を図ることができる。
【0100】
バスバー42は
図9で示すM1バスバー40M1及びM2バスバー40M2の2層構造で実現され、例えば、M1バスバー40M1上に絶縁層を介してM2バスバー40M2を配置することにより実現される。M1バスバー40M1及びM2バスバー40M2をラミネート構成により平面視重複して積層しても、平面視重複することなく平面視分離して積層してもよい。
【0101】
そして、M1バスバー40M1は4つのパワー半導体モジュール装置100Aの一方及び他方のコレクタ・エミッタ端子C2E1の少なくとも一つに電気的に接続され、かつ、4つのパワー半導体モジュール装置100Cのコレクタ端子C1に電気的に接続される。
【0102】
M2バスバー40M2は4つのパワー半導体モジュール装置100Bの一方及び他方のコレクタ・エミッタ端子C2E1の少なくとも一つに電気的に接続され、かつ、4つのパワー半導体モジュール装置100Cのエミッタ端子E2に電気的に接続される。
【0103】
M1バスバー40M1及びM2バスバー40M2はラミネート構成により平面視重複して積層する場合、M1バスバー40M1に適宜開口部を設け、当該開口部を介して上層のM2バスバー40M2との電気的接続を図ることができる。
【0104】
(第2の比較技術)
図10は
図6で示したパワー半導体モジュール装置100を用いて4並列構成で実現した場合の電力変換装置における第2の比較技術の平面構成を示す説明図である。
【0105】
図10で示す電力変換装置と等価な回路構成は第1の比較技術と同様に
図9で示す構成となる。
【0106】
図10において、4つのパワー半導体モジュール装置100A、4つのパワー半導体モジュール装置100B及び4つのパワー半導体モジュール装置100Cはそれぞれ
図6で示すパワー半導体モジュール装置100と同一構成である。
【0107】
4つのパワー半導体モジュール装置100Aはそれぞれ
図7で示す部分回路部20Aに割り当てられる。モジュール装置群200A内に、コレクタ端子C1及びエミッタ端子E2を有する第1側面を図中左側にして、4つのパワー半導体モジュール装置100Aがまとめて配置されることにより、Part−Aを担当する。したがって、4つのパワー半導体モジュール装置100Aそれぞれにおいて、コレクタ端子C1を電位端子Pに、エミッタ端子E2を電位端子Cに、一方及び他方のコレクタ・エミッタ端子C2E1の少なくとも一つを中間接続端子M1にそれぞれ電気的に接続する必要がある。
【0108】
一方、4つのパワー半導体モジュール装置100Bはそれぞれ
図7で示す部分回路部20Bに割り当てられる。図中、後述するバスバー44を挟んでモジュール装置群200Aの右側に位置するモジュール装置群200B内に、コレクタ端子C1及びエミッタ端子E2を有する第1側面を図中右側にして、4つのパワー半導体モジュール装置100Bがまとめて配置されることにより、Part−Bを担当する。したがって、4つのパワー半導体モジュール装置100Bそれぞれにおいて、コレクタ端子C1を電位端子Cに、エミッタ端子E2を電位端子Nに、一方及び他方のコレクタ・エミッタ端子C2E1の少なくとも一つを中間接続端子M2にそれぞれ電気的に接続する必要がある。
【0109】
さらに、4つのパワー半導体モジュール装置100Cはそれぞれ
図7で示す部分回路部20Cに割り当てられる。図中、モジュール装置群200A及び200Bの下方に位置するモジュール装置群200C内に、4つのパワー半導体モジュール装置100Cのうち、2つのパワー半導体モジュール装置100Cがバスバー44の左側に、他の2つのパワー半導体モジュール装置100Cがバスバー44の右側に配置されることにより、Part−Cを担当する。この際、バスバー44の左側の2つのパワー半導体モジュール装置100Cは、コレクタ端子C1及びエミッタ端子E2を有する第1側面を図中右側にして、バスバー44の右側の他の2つのパワー半導体モジュール装置100Cは、コレクタ端子C1及びエミッタ端子E2を有する第1側面を図中左側に配置している。
【0110】
したがって、4つのパワー半導体モジュール装置100Cにおいて、コレクタ端子C1を中間接続端子M1に、エミッタ端子E2を中間接続端子M2に、一方及び他方のコレクタ・エミッタ端子C2E1の少なくとも一つを出力電位端子ACに電気的に接続する必要がある。
【0111】
さらに、モジュール装置群200A及び2つのパワー半導体モジュール装置100Cと、モジュール装置群200B及び他の2つのパワー半導体モジュール装置100Cとの間にバスバー44が設けられる。
【0112】
そして、バスバー部分領域43a〜43cを有するバスバー43が設けられる。バスバー部分領域43aは、図中、モジュール装置群200Aの左側に形成され、バスバー部分領域43bは、図中、モジュール装置群200Bの右側に形成され、バスバー部分領域43cはバスバー部分領域43a及び43bに連結して、モジュール装置群200A、バスバー44及びモジュール装置群200Bの図中上方に形成される。
【0113】
バスバー43のバスバー部分領域43aは
図9で示すPバスバー40P及びCバスバー40Cの2層構造で実現され、例えば、Pバスバー40P上に絶縁層を介してCバスバー40Cを配置することにより実現される。
【0114】
バスバー43のバスバー部分領域43bは
図9で示すNバスバー40N及びCバスバー40Cの2層構造で実現され、例えば、Cバスバー40C上に絶縁層を介してNバスバー40Nを配置することにより実現される。
【0115】
バスバー43のバスバー部分領域43cは
図9で示すPバスバー40P、Cバスバー40C及びNバスバー40Nの3層構造で実現され、例えば、Pバスバー40P上に絶縁層を介してCバスバー40Cを配置し、Cバスバー40C上に絶縁層を介してNバスバー40Nを配置することにより実現される。また、バスバー部分領域43cに平面視重複してバンクキャパシタ16及び17が設けられる。なお、バスバー43のバスバー部分領域43cとバンクキャパシタ16及び17とは異なる形成高さに形成される。
【0116】
また、Pバスバー40Pはバスバー部分領域43a及び43c間で連結されており、Nバスバー40Nはバスバー部分領域43b及び43c間で連結されており、Cバスバー40Cはバスバー部分領域43a〜43c間で連結されている。
【0117】
そして、Pバスバー40Pは4つのパワー半導体モジュール装置100Aのコレクタ端子C1に電気的に接続され、Cバスバー40Cは4つのパワー半導体モジュール装置100Aのエミッタ端子E2及び4つのパワー半導体モジュール装置100Bのコレクタ端子C1に電気的に接続され、Nバスバー40Nは4つのパワー半導体モジュール装置100Bのエミッタ端子E2に電気的に接続される。
【0118】
バスバー44は
図9で示すM1バスバー40M1及びM2バスバー40M2の2層構造で実現され、例えば、M1バスバー40M1上に絶縁層を介してM2バスバー40M2を配置することにより実現される。
【0119】
そして、M1バスバー40M1は4つのパワー半導体モジュール装置100Aの一方及び他方のコレクタ・エミッタ端子C2E1の少なくとも一つに電気的に接続され、かつ、4つのパワー半導体モジュール装置100Cのコレクタ端子C1に電気的に接続される。
【0120】
M2バスバー40M2は4つのパワー半導体モジュール装置100Bの一方及び他方のコレクタ・エミッタ端子C2E1の少なくとも一つに電気的に接続され、かつ、4つのパワー半導体モジュール装置100Cのエミッタ端子E2に電気的に接続される。
【0121】
(実施の形態1の具体的構成)
図11は
図6で示したパワー半導体モジュール装置100を用いて4並列構成で実現した場合の電力変換装置における実施の形態1の平面構成を示す説明図である。
【0122】
図11で示す電力変換装置と等価な回路構成は第1及び第2の比較技術と同様に
図9で示す構成となる。
【0123】
図11において、4つのパワー半導体モジュール装置100A、4つのパワー半導体モジュール装置100B及び4つのパワー半導体モジュール装置100Cはそれぞれ
図6で示すパワー半導体モジュール装置100と同一構成である。
【0124】
複数の第1の半導体モジュールに相当する4つのパワー半導体モジュール装置100Aはそれぞれ
図7で示す部分回路部20Aに割り当てられる。複数の第2の半導体モジュールに相当する4つのパワー半導体モジュール装置100Bはそれぞれ
図7で示す部分回路部20Bに割り当てられる。
【0125】
図11に示すように、モジュール装置群200AB1内に、2つのパワー半導体モジュール装置100Aと2つのパワー半導体モジュール装置100Bとが一単位毎に図中上下方向に交互に配置される。すなわち、モジュール装置群200AB1内において、左列1番目L1及び左列3番目L3にパワー半導体モジュール装置100Aが配置され、左列2番目L2及び左列4番目L4にパワー半導体モジュール装置100Bが配置される。
【0126】
なお、モジュール装置群200AB1内では2つのパワー半導体モジュール装置100A及び2つのパワー半導体モジュール装置100Bは共にコレクタ端子C1及びエミッタ端子E2を有する第1側面が図中左側に配置される。
【0127】
さらに、後述するバスバー46を挟んでモジュール装置群200AB1の右側に位置するモジュール装置群200AB2内に、2つのパワー半導体モジュール装置100Aと2つのパワー半導体モジュール装置100Bとが一単位毎に図中上下方向に交互に配置される。すなわち、モジュール装置群200AB2において、右列1番目R1及び右列3番目R3にパワー半導体モジュール装置100Bが配置され、右列2番目R2及び右列4番目R4にパワー半導体モジュール装置100Aが配置される。
【0128】
なお、モジュール装置群200AB2内では2つのパワー半導体モジュール装置100A及び2つのパワー半導体モジュール装置100Bは共にコレクタ端子C1及びエミッタ端子E2を有する第1側面が図中右側に配置される。
【0129】
このように、実施の形態1の電力変換装置は、モジュール装置群200AB1及び200AB2に4つのパワー半導体モジュール装置100A及び4つのパワー半導体モジュール装置100Bを混在して配置している。
【0130】
そして、実施の形態1の電力用半導体装置は、Part−Aを担当する4つのパワー半導体モジュール装置100A及びPart−Bを担当する4つのパワー半導体モジュール装置100B間において、一単位のパワー半導体モジュール装置100Aと一単位のパワー半導体モジュール装置100Bが図中上下方向に沿って交互に配置されるように混合配置したことを特徴とする。
【0131】
さらに、上記混合配置は第1の列となるモジュール装置群200AB1と第2の列となるモジュール装置群200AB2とに分離する分離混合配置となる。
【0132】
4つのパワー半導体モジュール装置100Aそれぞれにおいて、コレクタ端子C1を電位端子Pに、エミッタ端子E2を電位端子Cに、一方及び他方のコレクタ・エミッタ端子C2E1の少なくとも一つを中間接続端子M1にそれぞれ電気的に接続する必要がある。
【0133】
一方、4つのパワー半導体モジュール装置100Bにおいて、コレクタ端子C1を電位端子Cに、エミッタ端子E2を電位端子Nに、一方及び他方のコレクタ・エミッタ端子C2E1の少なくとも一つを中間接続端子M2にそれぞれ電気的に接続する必要がある。
【0134】
さらに、複数の第3の半導体モジュールに相当する4つのパワー半導体モジュール装置100Cはそれぞれ
図7で示す部分回路部20Cに割り当てられる。図中、モジュール装置群200AB1及び200AB2の下方に位置するモジュール装置群200C内に、4つのパワー半導体モジュール装置100Cのうち、2つのパワー半導体モジュール装置100Cがバスバー46の左側に、他の2つのパワー半導体モジュール装置100Cがバスバー46の右側に配置されることにより、Part−Cを担当する。この際、バスバー46の左側の2つのパワー半導体モジュール装置100Cは、コレクタ端子C1及びエミッタ端子E2を有する第1側面を図中右側にして、バスバー46の右側の他の2つのパワー半導体モジュール装置100Cは、コレクタ端子C1及びエミッタ端子E2を有する第1側面を図中左側に配置している。
【0135】
したがって、4つのパワー半導体モジュール装置100Cそれぞれにおいて、コレクタ端子C1を中間接続端子M1に、エミッタ端子E2を中間接続端子M2に、一方及び他方のコレクタ・エミッタ端子C2E1の少なくとも一つを出力電位端子ACに電気的に接続する必要がある。
【0136】
さらに、モジュール装置群200AB1及び2つのパワー半導体モジュール装置100Cと、モジュール装置群200AB2及び他の2つのパワー半導体モジュール装置100Cとの間にバスバー46が設けられる。
【0137】
そして、バスバー部分領域45a〜45cを有するバスバー45が設けられる。バスバー部分領域45aは、図中、モジュール装置群200AB1の左側に形成され、バスバー部分領域45bは、図中、モジュール装置群200AB2の右側に形成され、バスバー部分領域45cはバスバー部分領域45a及び45bに連結して、モジュール装置群200AB1、バスバー46及びモジュール装置群200AB2の図中上方に形成される。バスバー部分領域45cに平面視重複してバンクキャパシタ16及び17が設けられる。なお、バスバー43のバスバー部分領域43cとバンクキャパシタ16及び17とは異なる形成高さに形成される。
【0138】
バスバー45のバスバー部分領域45a〜45cはそれぞれ
図9で示すPバスバー40P、Cバスバー40C及びNバスバー40Nの3層構造で実現され、例えば、Pバスバー40P上に絶縁層を介してCバスバー40Cを配置し、Cバスバー40C上に絶縁層を介してNバスバー40Nを配置することにより実現される。
【0139】
なお、バスバー45のバスバー部分領域45a〜45cにおいて、Pバスバー40P、Cバスバー40C及びNバスバー40Nはラミネート構成により平面視重複して積層しても、平面視重複することなく平面視分離して積層してもよい。
【0140】
また、Pバスバー40Pはバスバー部分領域45a〜45c間で連結されており、Nバスバー40Nはバスバー部分領域45a〜45c間で連結されており、Cバスバー40Cはバスバー部分領域45a〜45c間で連結されている。
【0141】
そして、Pバスバー40Pは4つのパワー半導体モジュール装置100Aのコレクタ端子C1に電気的に接続され、Cバスバー40Cは4つのパワー半導体モジュール装置100Aのエミッタ端子E2及び4つのパワー半導体モジュール装置100Bのコレクタ端子C1に電気的に接続され、Nバスバー40Nは4つのパワー半導体モジュール装置100Bのエミッタ端子E2に電気的に接続される。
【0142】
Pバスバー40P、Cバスバー40C及びNバスバー40Nはラミネート構成により平面視重複して積層する場合、下層側のPバスバー40P及びCバスバー40Cに適宜開口部を設け、当該開口部を介して上層側のCバスバー40C及びPバスバー40Pとの電気的接続を図ることができる。
【0143】
バスバー46は
図9で示すM1バスバー40M1及びM2バスバー40M2の2層構造で実現され、例えば、M1バスバー40M1上に絶縁層を介してM2バスバー40M2を配置することにより実現される。M1バスバー40M1及びM2バスバー40M2はラミネート構成により平面視重複して積層しても、平面視重複することなく平面視分離して積層してもよい。
【0144】
そして、M1バスバー40M1は4つのパワー半導体モジュール装置100Aの一方及び他方のコレクタ・エミッタ端子C2E1の少なくとも一つに電気的に接続され、かつ、4つのパワー半導体モジュール装置100Cのコレクタ端子C1に電気的に接続される。
【0145】
M2バスバー40M2は4つのパワー半導体モジュール装置100Bの一方及び他方のコレクタ・エミッタ端子C2E1の少なくとも一つに電気的に接続され、かつ、4つのパワー半導体モジュール装置100Cのエミッタ端子E2に電気的に接続される。
【0146】
M1バスバー40M1及びM2バスバー40M2をラミネート構成により平面視重複して積層する場合、下層のM1バスバー40M1に適宜開口部を設け、当該開口部を介して上層のM2バスバー40M2との電気的接続を図ることができる。
【0147】
なお、4つのパワー半導体モジュール装置100Cそれぞれの一方及び他方のコレクタ・エミッタ端子C2E1の少なくとも一つに電気的に接続される出力電位端子ACは、負荷に配線される端子である。このため、全てのコレクタ・エミッタ端子C2E1を近接して低インダクタンスに接続する等の配慮は特に必要なく、複数のコレクタ・エミッタ端子C2E1をバスバー等で接続してまとめても良いし、複数のコレクタ・エミッタ端子C2E1それぞれをワイヤーやバスバー等で個別に負荷へ配線するようにしても良い。
【0148】
(効果)
上述したように、実施の形態1の電力変換装置は、
図7に示す部分回路部20A及び20Bに、パワー半導体モジュール装置100A及び100Bを割り当てている。この際、実施の形態1の電力変換装置は、4つのパワー半導体モジュール装置100A及び100Bをそれぞれひと固まりで配置せず、モジュール装置群200AB1及び200AB2それぞれにおいて、一単位のパワー半導体モジュール装置100Aと一単位のパワー半導体モジュール装置100Bとが交互に配置されるように混合配置したことを特徴としている。
【0149】
実施の形態1の電力変換装置は上記のように構成することにより、Pバスバー40P、Cバスバー40C及びNバスバー40Nで代表される電流経路間で電磁界キャンセリング効果が生じ、力行動作時及び回生動作時において、トランジスタQ1〜Q4のスイッチングに伴い電流変化(di/dt)が生じる電流ループにおける回路インダクタンスを小さくした3レベルIタイプのインバータ回路を実現することができる。
【0150】
図12は
図10で示した第2の比較技術の電力変換装置における回路インダクタンス(Circuit Inductance)解析結果を示すグラフであり、
図13は
図11で示した実施の形態1の電力変換装置における回路インダクタンス解析結果を示すグラフである。
図12及び
図13において、横軸に周波数(Frequency;単位GHz)、縦軸に回路インダクタンス値(単位nH)を示している。なお、周波数はトランジスタQ1〜Q4におけるオン,オフ間の切り替わりに要するスイッチング時間の逆数、すなわち、
図16〜
図19それぞれにおいて、(a) の状態から(b)の状態への変化に要する時間の逆数、あるいは(b) の状態から(c) の状態への変化に要する時間の逆数を意味する。
【0151】
図14は通常のスイッチング動作時に流れる電流を説明する説明図である。
図15は
図12及び
図13で示すインダクタンスL11〜L14の要因となる電流ループを説明する説明図(その2)である。
【0152】
図16〜
図19は
図15で示した電流ループを生じさせる電流変化を詳細に示した説明図である。
【0153】
以下、
図12〜
図19を参照して、3レベルIタイプのインバータ回路の動作を1アームに着目して説明する。
【0154】
図14は通常のスイッチング(Switching)における高電位側(High side)及び低電位側(Low side)における電流を示している。同図に示すように、高電位側では電位端子P,出力電位端子AC間に電流I1が流れ、出力電位端子AC,電位端子C間に電流I2が流れる。一方、低電位側では、出力電位端子AC,電位端子N間に電流I3が流れ、電位端子C,出力電位端子AC間に電流I4が流れる。
【0155】
図15はターンオフ(turn off)あるいは回復(Recovery)時におけるサージループ(surge loop)を、力行動作(Generative mode)及び回生動作(Regenerative mode)に分けて示している。
【0156】
同図に示すように、力行動作時において高電位側では電位端子P,電位端子C間の電流ループI5に電流変化が発生し、低電位側では電位端子C,電位端子N間の電流ループI6に電流変化が発生する。一方、回生動作時において、高電位側では電位端子P,電位端子C間の電流ループI7に電流変化が発生し、低電位側では電位端子C,電位端子Nの電流ループI8に電流変化が発生する。
【0157】
図16は力行動作でインバータ回路から電流を吐き出す、電流吐き出しモードにおける電流ループI5を説明する説明図であり、
図17は力行動作でインバータ回路に電流を吸い込む、電流吸い込みモードにおける電流ループI6を説明する説明図ある。
【0158】
図18は回生動作でインバータ回路から電流を吐き出す、電流吐き出しモードにおける電流ループI8を説明する説明図であり、
図19は回生動作でインバータに電流を吸い込む、電流吸い込みモードにおける電流ループI7を説明する説明図である。
【0159】
なお、
図16〜
図19それぞれにおいて、(a) はオン状態時、(b) はターンオフ(turn off)時のサージ(surge)電圧発生時、(c) はターンオン時の回復サージ(Recovery surge)電圧発生時を示し、(d) は(a) 〜(c) で示すスイッチング動作に伴い電流変化(di/dt)が生じる電流ループI5〜I8を示している。
【0160】
また、
図16〜
図19において、「di/dt occurs」で示され破線で囲まれた素子は電流変化(di/dt)が発生した素子を示し、「di/dt doesn’t occurs」で示され破線で囲まれた箇所は電流変化(di/dt)が発生していない素子を示している。
【0161】
図16(a) で示すオン状態時に電流I51が流れ、
図16(b) で示すターンオフ時に電流I52が流れ、
図16(c) で示すターンオン時に電流I53が流れる。その結果、力行動作の電流吐き出しモードでは、
図16(d) に示すように、トランジスタQ1〜Q4のスイッチング動作に伴い電流変化(di/dt)が生じる、P−C間のサージ電圧(surge voltage)用の電流ループI5が電位端子Pから電位端子Cにかけて発生する。
【0162】
図17(a) で示すオン状態時に電流I61が流れ、
図17(b) で示すターンオフ時に電流I62が流れ、
図17(c) で示すターンオン時に電流I63が流れ、その結果、力行動作の電流吸い込みモードでは、
図17(d) に示すように、トランジスタQ1〜Q4のスイッチング動作に伴い電流変化(di/dt)が生じる、C−N間のサージ電圧用の電流ループI6が電位端子Cから電位端子Nにかけて発生する。
【0163】
図18(a) で示すオン状態時に電流I81が流れ、
図18(b) で示すターンオフ時に電流I82が流れ、
図18(c) で示すターンオン時に電流I83が流れる。その結果、回生動作の電流吐き出しモードでは、
図18(d) に示すように、トランジスタQ1〜Q4のスイッチング動作に伴い電流変化(di/dt)が生じる、C−N間のサージ電圧用の電流ループI8が電位端子Cから電位端子Nにかけて発生する。
【0164】
図19(a) で示すオン状態時に電流I71が流れ、
図19(b) で示すターンオフ時に電流I72が流れ、
図19(c) で示すターンオン時に電流I73が流れる。その結果、力行動作の電流吸い込みモードでは、
図19(d) に示すように、トランジスタQ1〜Q4のスイッチング動作に伴い電流変化(di/dt)が生じる、P−C間のサージ電圧用の電流ループI7が電位端子Pから電位端子Cにかけて発生する。
【0165】
なお、
図16(b) 〜
図19(b) で示すターンオフ時に電流が流れるのは、出力電位端子ACには誘導性の負荷が接続されるため、ターンオフ時においても負荷がオン状態時の電流を維持しようとする作用が働くためである。
【0166】
図16〜
図19それぞれにおいて、(a) 〜(c) にかけて動作ステップが進み、各ステップの切り替わり時に「di/dt occurs」と記した破線箇所に電流変化(di/dt)が発生する。これらの動作を考慮すると、
図16(a) 〜
図19(d) で示した力行動作あるいは回生動作時において、上述した電流変化が生じる電流ループI5〜I8における回路インダクタンスの低減化を図ることが重要であることが分かる。
【0167】
このように、力行動作時(Generative mode)におけるP−C間の電流ループI5、及びC−N間の電流ループI6、回生動作時(Regenerative mode)におけるP−C間の電流ループI7、及びC−N間の電流ループI8による回路インダクタンスを小さくすることが重要となっている。なお、P−C間は電位端子P,電位端子C間を意味し、C−N間は電位端子C,電位端子N間を意味する。
【0168】
図12及び
図13に戻って、
図12及び
図13に示されたインダクタンスL11〜L14について説明する。インダクタンスL11は高電位側の力行動作時に生じるP−C間の電流ループI5における回路インダクタンスを示している。インダクタンスL12は低電位側の力行動作時に生じるC−N間の電流ループI6における回路インダクタンスを示している。
【0169】
インダクタンスL13は高電位側の回生動作時に生じるP−C間の電流ループI7における回路インダクタンスを示している。インダクタンスL14は低電位側の回生動作時に生じるC−N間の電流ループI8における回路インダクタンスを示している。
【0170】
図12と
図13との比較から明らかなように、実施の形態1の電力変換装置は、第2の比較技術の電力変換装置よりも大幅に回路インダクタンスを低減できることが確認できる。
【0171】
特に、回生動作(Regenerative mode)時では、約10分の1に低減できている。回生動作は、電力変換装置を利用するアプリケーションシステムにおいて、インバータの出力電圧と出力電流とが位相がずれる動作に当たる。したがって、ちょうど力率“1”で動作するようなシステムでは実施の形態1の効果を得ることは難しいが、力率が“1”から少しでもずれる場合には本実施の形態の効果を大きく得られることを意味する。
【0172】
以下、
図10で示す第2の比較技術と
図11で示す実施の形態1とにおけるキャンセリング効果(cancelling effect)の差異について説明する。
【0173】
図10で示す第2の比較技術は、各パワー半導体モジュール装置100A内のP−C間の内部電流経路に、力行動作の電流吐き出しモード時に発生する電流ループI5の電流方向が逆方向となる、電流ループI5用の逆方向電流往復経路を設けることにより第1のキャンセリング効果CE1を発揮している。
【0174】
加えて、第2の比較技術では、
図10に示すように、図中、上下方向に隣接する位置関係にあるパワー半導体モジュール装置100A,100C間において、回生動作の電流吸い込みモード時におけるP−AC間の内部電流経路に、電流ループI7用の逆方向電流往復経路を設けることにより第2のキャンセリング効果CE2を発揮することができる。
【0175】
さらに、第2の比較技術は、
図9及び
図10に示すように、モジュール装置群200C内に位置するバスバー44に設けられるM1バスバー40M1及びM2バスバー40M2によって、回生動作の電流吸い込みモード時及び電流吐き出しモード時におけるM1−M2間の外部電流経路に、電流ループI8及びI7用の逆方向電流往復経路を設けることにより第3のキャンセリング効果CE3を発揮することができる。なお、P−AC間は電位端子P,出力電位端子AC間を意味し、M1ーM2間は中間接続端子M1,中間接続端子M2間を意味する。
【0176】
一方、
図11で示す実施の形態1においても、第2の比較技術と同様に、上記第1〜第3のキャンセリング効果CE1〜CE3を発揮できる。
【0177】
さらに、実施の形態1の電力変換装置は、
図9及び
図11に示すように、バスバー45に設けられるPバスバー40P及びCバスバー40Cによって、回生動作時の電流吸い込みモードにおけるP−C間の外部電流経路に電流ループI7用の逆方向電流往復経路を設けることにより第4のキャンセリング効果CE4を発揮できる。
【0178】
その理由は以下の通りである。電流ループI7に関し、上位側のバンクキャパシタ16の正極からPバスバー40Pを介して電位端子Pからパワー半導体モジュール装置100Aに電流が注入する電流往路と、パワー半導体モジュール装置100Bの電位端子CからCバスバー40Cを介してバンクキャパシタ16の負極に電流が帰還する電流復路が設けられる。そして、Pバスバー40P及びCバスバー40Cはラミネート等により積層され互いに電磁界の影響を強く受ける位置関係となっているため、電流往路となるPバスバー40Pと電流復路となるバスバー40Cを流れる電流ループI7の電流方向が互いに逆方向となり、Pバスバー40P及びCバスバー40Cにより生じる電磁界を互いに打ち消し合い、第4のキャンセリング効果CE4を効果的に発揮できる。
【0179】
同様な理由により、実施の形態1の電力変換装置は、バスバー45に設けられるNバスバー40N及びCバスバー40Cによって、回生動作時の電流吐き出しモードにおけるN−C間の外部電流経路に、電流ループI8用の逆方向電流往復経路を設けることによりに第5のキャンセリング効果CE5を発揮できる。
【0180】
その理由は以下の通りである。電流ループI8に関し、下位側のバンクキャパシタ17の正極からCバスバー40Cを介して電位端子Cからパワー半導体モジュール装置100Aに電流が流入する電流往路と、パワー半導体モジュール装置100Bの電位端子NからNバスバー40Nを介してバンクキャパシタ167負極に電流が帰還する電流復路が設けられる。そして、Nバスバー40N及びCバスバー40Cはラミネート等により積層され互いに電磁界の影響を強く受ける位置関係となっているため、電流往路となるCバスバー40Cと電流復路となるNバスバー40Nを流れる電流ループI8の電流方向が互いに逆方向となり、Nバスバー40N及びCバスバー40Cにより生じる電磁界を互いに打ち消し合い、第5のキャンセリング効果CE5を効果的に発揮できる。
【0181】
第4のキャンセリング効果CE4及び第5のキャンセリング効果CE5は、隣接配置される一対のパワー半導体モジュール装置100A及び100B間において、Cバスバー40Cにはパワー半導体モジュール装置100Aのエミッタ端子E2に加え、パワー半導体モジュール装置100Bのコレクタ端子C1が電気的に接続されていることが重要となる。
【0182】
一方、
図10で示す第2の比較技術では、4つのパワー半導体モジュール装置100A及び100Bはモジュール装置群200A及び200Bに分離して配置されているため、電流ループI7の電流往路I7aがバスバー部分領域43aに設けられ、電流ループI7の電流復路I7bがバスバー部分領域43bに設けられることになる。このように、電流ループI7の電流往路と電流復路とは大きく離れて形成されるため、電流ループI7用の第4のキャンセリング効果CE4を発揮することはできず、キャンセリング不能(No Canceling)となる。同様な理由で電流ループI8用の第5のキャンセリング効果CE5も発揮することができない。
【0183】
なお、アプリケーションシステムにおいて、例えば、基本的に力率“1”で動作する太陽光パワーコンディショナーであっても力率0.99や0.98等の動作が必ず存在し、ちょうど力率“1”で動作し続けることは稀であるため、本実施の形態の電力変換装置を用いるシステムにおいて、本実施の形態の効果を得ることができる。
【0184】
本実施の形態の効果を
図12と
図13とを比較して示したが、実施の形態1の比較対象は
図10で示す第2の比較技術であった。
【0185】
したがって、
図8で示した第1の比較技術や
図26で示した従来技術であれば、第2の比較技術と比較しても、少なくとも上記第4及び第5のキャンセリング効果及びCE4及びCE5は発揮できず、第2の比較技術よりも優れたキャンセリング効果を発揮することができないため、第2の比較技術による回路インダクタンス以上の回路インダクタンススとなることが推測される。また、第1の比較技術や従来技術は回路配線がさらに複雑になるという問題点も有している。
【0186】
したがって、実施の形態1の電力変換装置は、
図12及び
図13の比較によるインダクタンス効果の差異分以上の効果を第1の比較技術や従来技術に対して有している。
【0187】
このように、実施の形態1の電力変換装置は、モジュール装置群200AB1及び200AB2それぞれにおいて、一単位のパワー半導体モジュール装置100Aと一単位のパワー半導体モジュール装置100Bとが交互に配置されるように混合配置したことを特徴とする。
【0188】
実施の形態1の電力変換装置は、上記特徴を有することにより、4つのパワー半導体モジュール装置100A及び100Bのうち互いに隣接して配置される一対のパワー半導体モジュール装置100A及び100B間において、パワー半導体モジュール装置100Aのコレクタ端子C1に電気的に接続されるPバスバー40Pと、パワー半導体モジュール装置100Aのエミッタ端子E2及びパワー半導体モジュール装置100Bのコレクタ端子C1に電気的に接続されるCバスバー40Cとを互いに電磁界の影響を受ける近い距離に配置することができる。すなわち、回生動作時に生じる電流ループI7に関し、第1の電位用電流経路であるPバスバー40Pと中間電位用電流経路となるCバスバー40Cとの間隔を、第2の比較技術を含む従来構成に比べ短くして配置することができる。
【0189】
同様にして、パワー半導体モジュール装置100Bのエミッタ端子E2に電気的に接続されるNバスバー40NとCバスバー40Cとを互いに電磁界の影響を受ける近い距離に配置することができる。すなわち、回生動作時に生じる電流ループI8に関し、第2の電位用電流経路であるNバスバー40NとCバスバー40Cとの間隔を、従来構成に比べ短くして配置することができる。
【0190】
したがって、実施の形態1の電力変換装置は、インバータ回路におけるトランジスタQ1〜Q4のスイッチング動作に伴い電流変化(di/dt)が生じる電流ループにおける回路インダクタンスを小さくすることができ、特に回生動作時に生じる電流ループI7及びI8における回路インダクタンスを小さくすることができる。
【0191】
そして、実施の形態1の電力変換装置は、上記回路インダクタンスの低減に伴い、システムから、
図27で示したスナバ207a〜2007cのようにスナバ回路を不要とするスナバ回路レスまたはスナバ回路の小型化を実現して、小型かつ低コストに装置を実現することができる。
【0192】
さらに、実施の形態1の電力変換装置は、上記回路インダクタンスの低減に伴い、サージ電圧を抑制でき、運転範囲を拡大することができる。
【0193】
加えて、実施の形態1の電力変換装置は、サージ電圧を抑制することにより、急峻なスイッチング動作を適用でき、スイッチング動作を低損失で行うことができる。
【0194】
さらに、実施の形態1の電力変換装置は、トランジスタTr1及びTr2のうち少なくとも一つとダイオードDi1及びDi2とを有する点で共通する回路素子群を各々が有するパワー半導体モジュール装置100A〜100Cを組み合わせてインバータ回路を構成することにより、既存のパワー半導体モジュール装置100を用いて効率的にインバータ回路を構成することができる効果を奏する。
【0195】
加えて、実施の形態1の電力変換装置は、4つのパワー半導体モジュール装置100A及び4つのパワー半導体モジュール装置100Bをモジュール装置群200AB1及び200AB2の2つの列に分離する分離混合配置を採用している。このため、一列に配置する場合に比べ、長手方向(
図6の上下方向)の配置長さを抑制することができ、全体としてコンパクトに構成することができる。
【0196】
その結果、実施の形態1の電力変換装置は、4つのパワー半導体モジュール装置100A〜100Cを取付け・冷却するための放熱フィンを比較的簡単に装着することができる。
【0197】
さらに、実施の形態1の電力変換装置は、第1及び第2の電位用電流経路として用いるPバスバー40P及びNバスバー40N、並びに中間電位用電流経路に用いるCバスバー40Cをそれぞれ細長いバスバーを使用せずに済むため、運搬や振動による変形が生じ難く、信頼性を高めることができる。
【0198】
また、実施の形態1の半導体装置は、4つのパワー半導体モジュール装置100A及び100Bそれぞれにおいて、コレクタ端子C1及びエミッタ端子E2を同一の第1の側面に設けている。このため、バスバー45のバスバー部分領域45a及び45bにおいて、Pバスバー40P、Nバスバー40N及びCバスバー40Cをラミネート構成等で比較的簡単に形成することができる。したがって、Pバスバー40P,Cバスバー40C間及びNバスバー40N,Cバスバー40C間において互いに電磁界の影響を強く受ける位置関係の配置を比較的容易に実現することができる効果を奏する。
【0199】
さらに、実施の形態1の電力変換装置の上記分離混合配置において、第1の列を構成するモジュール装置群200AB1と、第2の列を構成するモジュール装置群200AB2との間の列間領域に、4つのパワー半導体モジュール装置100A及び100B第3の外部端子である一方及び他方のコレクタ・エミッタ端子C2E1の全てを配置している。
【0200】
このため、実施の形態1の電力変換装置は、上記列間領域内に設けられる第1の中間点用電流経路となるM1バスバー40M1によって、4つのパワー半導体モジュール装置100Aのコレクタ・エミッタ端子C2E1間の共通に電気的に接続する第1の中間点共通接続構成を行うことができる。同様にして、上記列間領域に設けられる第2の中間点用電流経路となるM2バスバー40M2によって、4つのパワー半導体モジュール装置100Bのコレクタ・エミッタ端子C2E1を共通に電気的に接続する第2の中間点共通接続構成を比較的簡単に行うことができる。
【0201】
図20は実施の形態1の第1の中間点共通接続構成を模式的に示す回路図である。同図に示すように、4つのパワー半導体モジュール装置100Aのコレクタ・エミッタ端子C2E1端子間をM1バスバー40M1により共通に接続することにより第1の中間点共通接続構成を比較的簡単に実現している。なお、第2の中間点共通接続構成も、同様にして、比較的簡単に実現することができる。
【0202】
その結果、実施の形態1の電力変換装置は、上述した第1及び第2の中間点共通接続構成によって、4つのパワー半導体モジュール装置100A間の電流アンバランス、及び4つのパワー半導体モジュール装置100B間の電流アンバランスを抑制することができる。
【0203】
また、実施の形態1の電力変換装置は、4つのパワー半導体モジュール装置100Cに関し、4つのパワー半導体モジュール装置100A及び100Bと混在させない、非混在配置を採用している。
【0204】
その結果、実施の形態1の電力変換装置は、比較的簡単な配置構成で、かつ電流バランスの良いインバータ回路を有することができる。
【0205】
実施の形態1の電力変換装置は、一方のコレクタ・エミッタ端子C2E1と他方のコレクタ・エミッタ端子C2E1とを有する。このため、4つのパワー半導体モジュール装置100Aの一方及び他方のコレクタ・エミッタ端子C2E1の少なくとも一つの端子をM1バスバー40M1に共通に電気的に接続することにより、第1の中間点共通接続構成を実現することができる。同様にして、4つのパワー半導体モジュール装置100Bの一方及び他方のコレクタ・エミッタ端子C2E1うち少なくとも一つの端子を共通にM2バスバー40M2に電気的に接続することにより、第2の中間点共通接続構成を実現することができる。
【0206】
その結果、本願発明の電力変換装置は、比較的簡単に第1及び第2の中間点共通接続構成を実現することによって、複数の第1の半導体モジュール間の電流アンバランス、及び複数の第2の半導体モジュール間の電流アンバランスを抑制することができる。
【0207】
さらに、実施の形態1の電力変換装置では、バスバーの積層構造は、バスバー45において最大で3層の積層構造ととなり、
図26で示した従来技術よりも簡素に回路インダクタンスが小さい3レベルIタイプのインバータ回路を有することができる。
【0208】
(その他)
なお、
図11で示す実施の形態1において、モジュール装置群200AB1及び200AB2の2列に、4つのパワー半導体モジュール装置100Aと4つのパワー半導体モジュール装置100Bとを混在配置したが、他の混合配置も考えられる。
【0209】
図11で示す例では、モジュール装置群200AB1とモジュール装置群200AB2との間でも、左列1番目Li(i=1〜4のいずれか)と右列1番目Riとの関係において、一方がパワー半導体モジュール装置100A、他方がパワー半導体モジュール装置100Bとなるように配置した。すなわち、モジュール装置群200AB1,200AB2間でもパワー半導体モジュール装置100Aとパワー半導体モジュール装置100Bとが交互になるように配置した。
【0210】
この混合配置以外に、左列1番目Li(i=1〜4のいずれか)と右列1番目Riとの関係において、共にパワー半導体モジュール装置100Aあるいは、共にパワー半導体モジュール装置100Bとなるように配置しても良い。すなわち、モジュール装置群200AB1,200AB2間で左右対称になるように、パワー半導体モジュール装置100A及び100Bを配置しても良く、同様の効果が得られる。
【0211】
また、
図11において、モジュール装置群200AB1とモジュール装置群200AB2とを入れ替えて構成しても、同様の効果が得られる。この場合、モジュール装置群200AB1及び200AB2それぞれで個別にバスバー46に相当するバスバーを設けることを想定している。
【0212】
但し、この場合には、並列接続している4つのパワー半導体モジュール装置100Aの中間接続端子M1及び4つのパワー半導体モジュール装置100Bの中間接続端子M2が全てバスバー46側になるように揃えている効果を消失するため、電流バランスは多少崩れやすい傾向が考えられる。
【0213】
図11に示す実施の形態1では、出力電位端子ACに接続され、Part−Cとなる4つのパワー半導体モジュール装置100Cのみは、モジュール装置群200C内にまとめて配置している。
【0214】
一方、4つのパワー半導体モジュール装置100Cもパワー半導体モジュール装置100A及びパワー半導体モジュール装置100Bと混在して、パワー半導体モジュール装置100A、100B及び100が共に混合しつつ交互に配置しても類似の効果が得られる。
【0215】
すなわち、一単位のパワー半導体モジュール装置100Aと一単位のパワー半導体モジュール装置100Bとが交互に配置される際、パワー半導体モジュール装置100A及び100B間の一部にパワー半導体モジュール装置100Cを混合配置しても良い。但し、この場合には、出力電位端子ACの接続の容易性を欠く恐れがある。
【0216】
パワー半導体モジュール装置100A〜100Cそれぞれの内部構成は、
図6に示すパワー半導体モジュール装置100のように、図中左側の一方側面にコレクタ端子C1及びエミッタ端子E2を設け、一方側面に対向する反対側の他方側面に一方及び他方のコレクタ・エミッタ端子C2E1を配置した端子構成を採用している。
【0217】
しかしながら、上記端子構成に限ったものではなく、別の形状、別の端子構成でも同様な効果を得ることができる。ただし、Pバスバー40P、Nバスバー40N及びCバスバー40Cをラミネート構成等で比較的簡単に形成する効果を得るためには、パワー半導体モジュール装置100A及び100Bの同一側面にコレクタ端子C1及びエミッタ端子E2を設けることが望ましい。
【0218】
図6では一方及び他方のコレクタ・エミッタ端子C2E1を有する端子構成であるが、一単位のコレクタ・エミッタ端子C2E1を有する端子構成を採用しても、本実施の形態の効果を奏することができる。但し、コレクタ・エミッタ端子C2E1を2つ有する形状の方が並列接続しやすく、その際の回路インダクタンスを小さくする効果を得やすい。
【0219】
また、実施の形態1では、パワー半導体モジュール装置100A〜100C内の回路構成として、
図3に示すパワー半導体モジュール101のように、逆接続のダイオードDi1及びDi2を有するトランジスタTr1及びTr2が2つ直列接続されている回路構成を採用した。
【0220】
パワー半導体モジュール装置100A〜100Cとして他の回路構成を採用することも可能である。例えば、パワー半導体モジュール装置100Aとして
図4で示すパワー半導体モジュール102の回路構成を採用しても良く、パワー半導体モジュール装置100Cとして
図5で示すパワー半導体モジュール103の回路構成を採用しても良い。
【0221】
図21は他の2in1構成のパワー半導体モジュール104の内部構成を示す説明図である。
【0222】
パワー半導体モジュール104は内部に、第1及び第2のモジュール内スイッチング素子であるトランジスタTr1及びTr2と、第1及び第2のモジュール内ダイオードであるダイオードDi1及びDi2を有している。さらに、パワー半導体モジュール104はダイオードDi3を有しており、ダイオードDi3のアノードにコレクタ・エミッタ端子C2E1が接続され、カソードがトランジスタTr1及びTr2間のノードN1に接続される。また、トランジスタTr2のエミッタ及びダイオードDi2のアノードがエミッタ端子E2に接続されている。なお、他の構成は
図3で示したパワー半導体モジュール101と同様である。
【0223】
図22は他の2in1構成のパワー半導体モジュール105の内部構成を示す説明図である。
【0224】
パワー半導体モジュール105は内部に、第1及び第2のモジュール内スイッチング素子であるトランジスタTr1及びTr2と、第1及び第2のモジュール内ダイオードであるダイオードDi1及びDi2を有している。さらに、パワー半導体モジュール105はダイオードDi4を有しており、ダイオードDi4のカソードにコレクタ・エミッタ端子C2E1が接続され、アノードがトランジスタTr1及びTr2間のノードN1に接続される。また、トランジスタTr2のエミッタ及びダイオードDi2のアノードがエミッタ端子E2に接続され。なお、他の構成は
図3で示したパワー半導体モジュール101と同様である。
【0225】
上述したパワー半導体モジュール104あるいは105の回路構成を実施の形態1のパワー半導体モジュール装置100A〜100Cの回路構成として採用しても良い。例えば、パワー半導体モジュール装置100Aとして
図21で示すパワー半導体モジュール104の回路構成を用い、パワー半導体モジュール装置100Bとして
図22で示すパワー半導体モジュール105を用いる回路構成を変形例として採用しても良い。
【0226】
上記変形例では、パワー半導体モジュール104のエミッタ端子E2とパワー半導体モジュール105のコレクタ端子C1とを電気的に接続し、かつ、パワー半導体モジュール104のコレクタ・エミッタ端子C2E1とパワー半導体モジュール105のコレクタ・エミッタ端子C2E1とを電気的に接続することにより、
図1で示すインバータ回路を実現することができる。
【0227】
上記変形例において
図11と類似の配置構造を実現する場合、4つのパワー半導体モジュール装置100A及び100Bを以下のように配置することが望ましい。
【0228】
モジュール装置群200AB1及び200AB2内の配置において、各々がパワー半導体モジュール104を有する4つのパワー半導体モジュール装置100Aのコレクタ端子C1及びコレクタ・エミッタ端子C2E1を同一側面してバスバー部分領域45aあるいはバスバー部分領域45bに配置し、エミッタ端子E2をバスバー46側に配置する。
【0229】
モジュール装置群200AB1及び200AB2内の配置において、各々がパワー半導体モジュール105を有する4つのパワー半導体モジュール装置100Bのエミッタ端子E2及びコレクタ・エミッタ端子C2E1を同一側面してバスバー部分領域45aあるいはバスバー部分領域45bに配置し、コレクタ端子C1をバスバー46側に配置する。
【0230】
なお、上記変形例において、4つのパワー半導体モジュール装置100Aそれぞれの回路素子群に対し、インバータ回路60におけるトランジスタQ2及びダイオードD2がさらに割り当てられ、4つのパワー半導体モジュール装置100Bはそれぞれの回路素子群に対し、インバータ回路60におけるトランジスタQ3及びダイオードD3がさらに割り当てられる。
【0231】
したがって、パワー半導体モジュール装置100A及び100Bの組み合わせにより、
図1で示すインバータ回路を構成することができるため、Part−Cを担当するパワー半導体モジュール装置100Cが不要となる。
【0232】
このように実施の形態1の変形例では、パワー半導体モジュール104を採用した4つのパワー半導体モジュール装置100Aと、パワー半導体モジュール105を採用した4つのパワー半導体モジュール装置100Bとの組み合わせにより、パワー半導体モジュール装置100Cを不要にしてインバータ回路を構成することができる。
【0233】
その結果、電力変換装置の上記変形例は、2種類のパワー半導体モジュール装置100A及び100Bを用いてコンパクトにインバータ回路を構成することができる。
【0234】
図11で示した実施の形態1では、パワー半導体モジュール装置100A〜100Cそれぞれを4並列接続する例を示して説明したが、もちろん、2並列や3並列、或いはそれ以外の並列数の場合でも同様に本発明を適用して効果を得ることができる。
【0235】
<実施の形態2>
上述した実施の形態1では、4つのパワー半導体モジュール装置100Aと、4つのパワー半導体モジュール装置100Bとを混在配置する際、モジュール装置群200AB1とモジュール装置群200AB2との2列配置を採用した。実施の形態2では、4つのパワー半導体モジュール装置100A及び4つのパワー半導体モジュール装置100Bを1列に配置する構成を採用する。
【0236】
図23は
図6で示したパワー半導体モジュール装置100を用いて4並列構成で実現した場合の電力変換装置における、実施の形態2の平面構成を示す説明図である。
【0237】
図23で示す電力変換装置と等価な回路構成は第1及び第2の比較技術並びに
図11で示す実施の形態1と同様に
図9で示す構成となる。
【0238】
図23において、4つのパワー半導体モジュール装置100A、4つのパワー半導体モジュール装置100B及び4つのパワー半導体モジュール装置100Cはそれぞれ
図6で示すパワー半導体モジュール装置100と同一構成である。
【0239】
4つのパワー半導体モジュール装置100Aはそれぞれ
図7で示す部分回路部20Aに割り当てられる。4つのパワー半導体モジュール装置100Bはそれぞれ
図7で示す部分回路部20Bに割り当てられる。
【0240】
図23に示すように、後述するバスバー47及び48間の領域に配置されるモジュール装置群200AB内に、4つのパワー半導体モジュール装置100Aと4のパワー半導体モジュール装置100Bとが一単位毎に図中上下方向に交互に配置される。すなわち、モジュール装置群200ABにおいて、左列1番目L1、左列3番目L3、左列5番目L5及び左列7番目L7がパワー半導体モジュール装置100A、左列2番目L2、左列4番目L4、左列6番目L6及び左列8番目L8がパワー半導体モジュール装置100Bになるように配置される。
【0241】
このように、実施の形態2の電力変換装置は、モジュール装置群200AB内に4つのパワー半導体モジュール装置100A及び100Bを交互に混在させる一列混合配置を採用している。
【0242】
なお、モジュール装置群200AB内では4つのパワー半導体モジュール装置100A及び4つのパワー半導体モジュール装置100Bは共にコレクタ端子C1及びエミッタ端子E2を有する第1側面が図中左側に配置される。
【0243】
一方、4つのパワー半導体モジュール装置100Cはそれぞれ
図7で示す部分回路部20Cに割り当てられる。バスバー48の右側に位置するモジュール装置群200C内に、4つのパワー半導体モジュール装置100Cが図中上下方向に沿ってまとまって配置される。すなわち、右列1番目R1〜右列4番目R4にかけて4つのパワー半導体モジュール装置100Cが1列に配置される。
【0244】
したがって、コレクタ端子C1を中間接続端子M1に、エミッタ端子E2を中間接続端子M2に、一方及び他方のコレクタ・エミッタ端子C2E1の少なくとも一つを出力電位端子ACに電気的に接続する必要がある。
【0245】
なお、モジュール装置群200C内では4つパワー半導体モジュール装置100Cはコレクタ端子C1及びエミッタ端子E2を有する第1側面が図中左側に配置される。
【0246】
このように、実施の形態2の電力変換装置は、モジュール装置群200AB内に4つのパワー半導体モジュール装置100Aと4つのパワー半導体モジュール装置100Bが混在配置される。
【0247】
そして、Part−Aを担当する4つのパワー半導体モジュール装置100A及びPart−Bを担当する4つのパワー半導体モジュール装置100B間において、一単位のパワー半導体モジュール装置100Aと一単位のパワー半導体モジュール装置100Bが図中上下方向に沿って交互に配置されるように混合配置したことを特徴とする。
【0248】
4つのパワー半導体モジュール装置100Aそれぞれは、コレクタ端子C1を電位端子Pに、エミッタ端子E2を電位端子Cに、一方及び他方のコレクタ・エミッタ端子C2E1の少なくとも一つを中間接続端子M1に電気的に接続する必要がある。
【0249】
一方、4つのパワー半導体モジュール装置100Bそれぞれは、コレクタ端子C1を電位端子Cに、エミッタ端子E2を電位端子Nに、一方及び他方のコレクタ・エミッタ端子C2E1の少なくとも一つを中間接続端子M2に電気的に接続する必要がある。
【0250】
そして、モジュール装置群200ABとモジュール装置群200Cとの間にバスバー48が設けられる。
【0251】
さらに、モジュール装置群200ABの図中左側の領域から下方で屈折してモジュール装置群200AB及びバスバー48の図中下方に延在し、上方に屈折して最終的に端部がバスバー48の右側に位置するバスバー47が設けられる。バスバー47の端部領域に平面視重複してバンクキャパシタ16及び17が設けられる。なお、バスバー47とバンクキャパシタ16及び17とは異なる形成高さに形成される。
【0252】
バスバー47は
図9で示すPバスバー40P、Cバスバー40C及びNバスバー40Nの3層構造で実現され、例えば、Pバスバー40P上に絶縁層を介してCバスバー40Cを配置し、Cバスバー40C上に絶縁層を介してNバスバー40Nを配置することにより実現される。
【0253】
なお、バスバー47において、Pバスバー40P、Cバスバー40C及びNバスバー40Nはラミネート構成により平面視重複して積層しても、平面視重複することなく平面視分離して積層してもよい。
【0254】
そして、Pバスバー40Pは4つのパワー半導体モジュール装置100Aのコレクタ端子C1に電気的に接続され、Cバスバー40Cは4つのパワー半導体モジュール装置100Aのエミッタ端子E2及び4つのパワー半導体モジュール装置100Bのコレクタ端子C1に電気的に接続され、Nバスバー40Nは4つのパワー半導体モジュール装置100Bのエミッタ端子E2に電気的に接続される。
【0255】
バスバー48は
図9で示すM1バスバー40M1及びM2バスバー40M2の2層構造で実現され、例えば、M1バスバー40M1上に絶縁層を介してM2バスバー40M2を配置することにより実現される。M1バスバー40M1及びM2バスバー40M2はラミネート構成により平面視重複して積層しても、平面視重複することなく平面視分離して積層してもよい。
【0256】
そして、M1バスバー40M1は4つのパワー半導体モジュール装置100Aの一方及び他方のコレクタ・エミッタ端子C2E1の少なくとも一つに電気的に接続され、かつ、4つのパワー半導体モジュール装置100Cのコレクタ端子C1に電気的に接続される。
【0257】
M2バスバー40M2は4つのパワー半導体モジュール装置100Bの一方及び他方のコレクタ・エミッタ端子C2E1の少なくとも一つに電気的に接続され、かつ、4つのパワー半導体モジュール装置100Cのエミッタ端子E2に電気的に接続される。
【0258】
実施の形態2の電力変換装置においても、モジュール装置群200AB1及び200AB2の2列配置の効果以外の効果を、実施の形態1と同様に発揮することができる。ただし、パワー半導体モジュール装置100A,100C間は離れているので第2のキャンセリング効果CE2はあまり期待できない。
【0259】
したがって、実施の形態2の電力変換装置によって、トランジスタQ1〜Q4のスイッチングに伴う電流変化(di/dt)が生じる電流ループにおける回路インダクタンスを小さくしたインバータ回路を実現し、それに伴い、スイッチング動作に伴うサージ電圧の抑制、システムの運転範囲の拡大、スナバ回路レスやスナバ回路の小型化の実現、装置の小型化、低コスト化、装置の低損失化・高効率化等の効果を発揮することができる。
【0260】
さらに、実施の形態2の電力変換装置は、4つのパワー半導体モジュール装置100A及び100Bの一列混合配置を採用しているため、バスバー47を長手方向に細長い形状にして、幅方向の長さが短い形状の構造を呈することができる。
【0261】
実施の形態2においても、実施の形態1と同様、パワー半導体モジュール装置100の回路構成、端子配置等の変形は勿論可能である。
【0262】
また、
図23で示す実施の形態2では、パワー半導体モジュール装置100A〜100Cをそれぞれ4並列接続する場合を例に挙げた。しかしながら、
図23では図示はしないが、2並列接続やその他の数の並列接続時にも同様の考え方により、本発明を適用し、同様の効果を得ることができる。
【0263】
<実施の形態3>
図24は実施の形態3であるアプリケーションシステムを示す説明図である。同図に示すように、アプリケーションシステム300内に電力変換装置400を有している。電力変換装置400の具体的構成として
図11で示した実施の形態1の電力変換装置、あるいは
図23で示した実施の形態2の電力変換装置が該当する。
【0264】
実施の形態3のアプリケーションシステム300は、内部に電力変換装置400を有することにより、内部の電力変換装置400に関し、回路インダクタンスが小さく、スナバ回路レス、小型かつ低コスト、低損失で、運転範囲を拡大するという効果を奏する。
【0265】
(第1の態様)
アプリケーションシステム300の第1の態様として、太陽光パワーコンディショナーシステムを構成する態様がある。太陽光パワーコンディショナーシステムにおいて、電力変換装置400は太陽光パネルから得られる直流電圧を交流電圧に変換する装置として用いられ、電力変換装置400より得られた交流電圧は電力系統に供給される。
【0266】
実施の形態3の第1の態様により、回路インダクタンスが小さく、スナバ回路レス、小型かつ低コスト、低損失で、運転範囲を拡大した太陽光パワーコンディショナーシステムを実現できる。
【0267】
(第2の態様)
アプリケーションシステム300の第2の態様として、蓄電システムを構成する態様がある。蓄電システムにおいて、電力変換装置400は蓄電池から得られる直流電圧を交流電圧に変換する装置として用いられ、電力変換装置400より得られた交流電圧は電力系統や電力負荷に供給される。
【0268】
実施の形態3の第2の態様により、回路インダクタンスが小さく、スナバ回路レス、小型かつ低コスト、低損失で、運転範囲を拡大した蓄電システムを実現できる。
【0269】
(第3の態様)
アプリケーションシステム300の第3の態様として、無停電電源システムを構成する態様がある。無停電電源システムにおいて、電力変換装置400は無停電電源装置内の蓄電池から得られる直流電圧を交流電圧に変換する装置として用いられ、電力変換装置400より得られた交流電圧は電力系統や電力負荷に供給される。
【0270】
実施の形態3の第3の態様により、回路インダクタンスが小さく、スナバ回路レス、小型かつ低コスト、低損失で、運転範囲を拡大した無停電電源システムを実現できる。
【0271】
(第4の態様)
アプリケーションシステム300の第4の態様として、風力発電システムを構成する態様がある。風力発電システムにおいて、電力変換装置400は風車発電器より生成された交流電圧を直流電圧に変換するロータコンバータ、あるいはロータコンバータと電力系統との間に設けられるグリットインバータとして用いられる。
【0272】
実施の形態3の第4の態様により、回路インダクタンスが小さく、スナバ回路レス、小型かつ低コスト、低損失で、運転範囲を拡大した風力発電システムを実現できる。
【0273】
(第5の態様)
アプリケーションシステム300の第5の態様として、モータ駆動システムを構成する態様がある。モータ駆動システムにおいて、電力変換装置400は直流電圧を交流電圧に変換する装置として用いられ、電力変換装置400より得られた交流電圧はモータに供給される。
【0274】
実施の形態3の第5の態様により、回路インダクタンスが小さく、スナバ回路レス、小型かつ低コスト、低損失で、運転範囲を拡大したモータ駆動システムを実現できる。
【0275】
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。