(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記階段状の開口を形成する工程は、前記第2保護層に前記第1保護層を露出する第2開口を形成し、露出した前記第1保護層に前記第1電極を露出し、前記第2開口より小さい第1開口を形成する請求項1に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
前記第1保護層を化学的気相成長法又はスパッタリング法により形成し、前記第2保護層を化学的気相成長法により形成し、前記第3保護層をスパッタリング法により形成する請求項1に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
前記階段状の開口は、前記第1保護層に設けられた第1開口と、前記第2保護層に設けられ、前記第1開口より大きい第2開口とを有する請求項5に記載のサーマルプリントヘッド。
前記第2保護層は、前記第1保護層に接する絶縁性層と前記第3保護層に接する導電性層とを有し、前記導電性層は前記絶縁性層より厚い請求項5に記載のサーマルプリントヘッド。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0011】
(実施形態1)
本実施形態に係るサーマルプリントヘッドについて、
図1および
図2を用いて説明する。
図1はサーマルプリントヘッドを示す図で、
図1(a)はその平面図、
図1(b)は
図1(a)のV1−V1矢視断面図、
図2はサーマルプリントヘッドの除電部を示す断面図である。なお本実施の形態は単なる例示であり、本発明はこれに限定されない。
【0012】
始めに、サーマルプリントヘッドについて説明する。
図1に示すように、サーマルプリントヘッド10は、記録媒体に画像が形成可能な主走査方向S1に長い長尺型のヘッドユニット11を有している。ヘッドユニット11は、放熱板12、ヘッド基板13、回路基板14及び複数の駆動用IC15を有している。
【0013】
放熱板12は、アルミニウム等の放熱性の良い金属製で、主走査方向S1と直交する副走査方向S2の放熱板一端面12A及び当該副走査方向S2とは反対方向(以下、これを副走査反対方向とも呼ぶ)の放熱板他端面12Bがほぼ平行で、ほぼ均一な厚みを有する主走査方向S1に長い平板状に形成されている。
【0014】
また放熱板12の副走査反対方向の放熱板他端部は、回路基板14が配置される回路基板配置部となり、主走査方向S1に長い長方形状に形成されている。そして放熱板12は、一面に回路基板14及びヘッド基板13が、副走査方向S2へ順に並べて配置されている。
【0015】
ヘッド基板13は、主走査方向S1に長く、副走査方向S2のヘッド基板一端面13A及び副走査反対方向のヘッド基板他端面13Bがほぼ平行である。
【0016】
実際にヘッド基板13は、Al
2O
3等のセラミックにより直方体状に形成された支持基板16を有し、当該支持基板16の外形が、そのままヘッド基板13の外形になっている。支持基板16は、一面にSiO
2等のガラス膜でなるグレーズ層17が設けられている。
【0017】
そしてグレーズ層17の一面には、副走査方向S2に長い複数の発熱抵抗体18が主走査方向S1へ順に所定の基板内抵抗体配置間隔で配置されている。またグレーズ層17の一面には、複数の発熱抵抗体18において副走査方向S2に沿った両端部に共通電極(第1電極)19及び個別電極(第2電極)20が配置され、これら複数の発熱抵抗体18と共通電極19及び個別電極20とにより発熱素子が形成されている。これによりヘッド基板13は、主走査方向S1に沿った帯状の部分が、共通電極19及び個別電極20間で複数の発熱抵抗体18が発熱する発熱領域21になっている。
【0018】
またグレーズ層17の一面には、複数の発熱抵抗体18、共通電極19及び個別電極20を覆う保護膜22が形成されている。保護膜22は、発熱抵抗体18を覆う部分にわずかに凹んだ凹部22aを有している。
【0019】
なお
図1(a)には、ヘッド基板13に配置される複数の発熱抵抗体18として、発熱領域21を形成する共通電極19及び個別電極20間の抵抗体電極間部分を実線で示している。そしてヘッド基板13は、放熱板12のヘッド基板配置部の一面に、両面テープ又はシリコン樹脂等の熱可塑性の樹脂である接着剤23を介して支持基板16の他面が接着されている。
【0020】
回路基板14は、主走査方向S1に長いプリント配線基板として形成され、又はそれぞれ主走査方向S1に長いセラミック板にフレキシブル基板が貼着されて形成されている。そして回路基板14は、放熱板12の回路基板配置部の一面に両面テープまたは接着剤23を介して他面が接着されている。因みに回路基板14には、ヘッド基板13と駆動用IC15を介して電気的に接続される接続回路が形成され、外部から当該接続回路に駆動電力及び制御信号を入力するコネクタ(図示せず)が実装されている。
【0021】
複数の駆動用IC15は、それぞれ一面に複数の第1端子及び第2端子が設けられ、発熱素子を制御可能なスイッチング機能を有する制御素子である。そして複数の駆動用IC15は、例えば回路基板14の一面の副走査方向S2の一端部(すなわちヘッド基板13との境界部分)に、主走査方向S1に沿って順に並べて配置されている。
【0022】
複数の駆動用IC15は、複数の第1端子が複数のボンディングワイヤ24を介して個別電極20と電気的に接続されている。また複数の駆動用IC15は、複数の第2端子が複数のボンディングワイヤ25を介して、回路基板14の接続回路に形成された対応する基板電極(図示せず)と電気的に接続されている。
【0023】
そして複数の駆動用IC15は、複数のボンディングワイヤ24、25と共にヘッド基板13の一面及び回路基板14の一面の境界付近に、エポキシ樹脂からなる封止体26によって封止されている。
【0024】
更にサーマルプリントヘッド10には、後述するプラテンローラとの間に挟み込まれ、副操作方向S2に送出される感熱紙およびインクリボン等の媒体に帯電している電荷を逃がすための除電部30が設けられている。
【0025】
除電部30は、例えば発熱領域21とヘッド基板一端面13Aとの間に設けられる。除電部30の形状は、例えば主走査方向S1に長い階段状のトレンチである。具体的には、除電部30は平面視で主走査方向S1に長い矩形状であり、副走査方向S2の断面が階段状である。
【0026】
次に、保護膜22の構造および除電部30について説明する。
図2に示すように、保護膜22は、発熱抵抗体18と、共通電極19と、個別電極20との上に設けられた絶縁性の第1保護層31と、第1保護層31の上に設けられた導電性の第2保護層32と、第2保護層32の上に設けられた導電性の第3保護層33とを有している。第2保護層32は第1導電性を有し、第3保護層33は第1導電性と異なる第2導電性を有している。第2導電性は第1導電性より大きい。
【0027】
第1保護層31は、例えばシリコン酸窒化膜(SiON)である。第2保護層32は、下地の第1保護層31との密着性を向上させるために第1保護層31に接する絶縁性層32aと、第3保護膜33に接する導電性層32bを有している。絶縁性層32aは、例えば第1保護層31と同じSiON膜であるが、より酸素リッチなSiON膜としてもよい。導電性層32bは、導電性と強度を高める材料がドープされたシリコン膜であってもよい。第3保護層33は、例えば導電性材料がドープされたシリコン酸化膜である。
【0028】
第1保護層31は、厚さが例えば1.0μm程度である。第2保護層32は、SiON膜の厚さが例えば1.0μm程度、導電層32の厚さが例えば3.0乃至8.0μm程度で、トータル厚さが例えば4.0乃至9.0μm程度である。第3保護層33は、厚さが例えば0.4μm程度である。
【0029】
第1保護層31は、主に抵抗発熱体18、共通電極19、個別電極20を電気的に絶縁するために設けられている。第2保護層32は、主に絶縁性層32aで緻密性を確保するとともに第1保護膜31との密着性を向上させ、導電性層32bで熱伝導性を確保するために設けられている。第3保護層33は、主に電荷の流路を形成するために設けられている。
【0030】
第1保護層31は、例えばスパッタリング法またはCVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成された膜である。
【0031】
除電部30において、保護膜22には、第2保護層32から第1保護層31に到り共通電極19を露出する階段状の開口34が設けられている。第3保護層33は開口34の内面に沿って開口34に露出した共通電極19に接している。具体的には、階段状の開口34は、第1保護層31に設けられ共通電極19を露出する第1開口34aと、第2保護層32に第1開口34aと同心状に設けられ第1開口34aより大きい第2開口34bとを有している。第3保護層33は、第2開口34bの内面および第1開口34aの内面に沿って第1開口34aに露出した共通電極19に接している。
【0032】
除電部30の動作について説明する。
除電部30は、導電性の高い第3保護層33を共通電極19に電気的に接続している。共通電極19は、回路基板14等を介して任意の電位を有する箇所に接続されている。具体的には、共通電極19は、抵抗35を介して電源36に接続されている。
【0033】
感熱紙およびインクリボン等の媒体37に帯電している過剰な電荷38は、サーマルプリントヘッド10、特に保護膜22に放電する。放電した電荷は、高い導電性を有する第3保護層33に集中し、共通電極19を介して速やかに排出される。その結果、媒体37に帯電している電荷38によるサーマルプリントヘッド10、特に保護膜22や抵抗発熱体18の損傷を防止することが可能である。
【0034】
また、開口34は、第1開口34aおよび第2開口34bを有する階段状なので、第3保護層33の段切れを防止することが可能である。導電層を、第1導電性を有する第2保護層32と第1導電性より高い第2導電性を有する第3保護層33の2層構造としたので、除電機能をより向上させることが可能である。第3保護層33は、緻密性および保護機能において第2保護層32より低くても構わない。
【0035】
図3は比較例のサーマルプリントヘッドの要部を示す断面図である。比較例のサーマルプリントヘッドとは、保護膜が第3保護層を有しないサーマルプリントヘッドのことである。
図3に示すように、比較例のサーマルプリントヘッドでは、保護膜40は第1保護層31および第2保護層32のみを有し、第3保護層33を有していない。
【0036】
図4は比較例のサーマルプリントヘッドの除電方法を示す断面図である。
図4に示すように、比較例のサーマルプリントヘッドでは、第2保護層32のうちの導電性層32bを何らかの手段を用いて任意の電位を有する部位に接続する必要がある。導電性層32bは、例えば基準電位GNDを有する配線に接続される。または、導電性層32bは、例えば抵抗35を介して電源36に接続されてもよい。
【0037】
図5および
図6は、比較例のサーマルプリントヘッドの除電部を示す断面図である。
図5に示す例では、導電性剤41、例えば導電性ペーストが、導電性層32bの上面からヘッド基板13の側面を経由して放熱板12に到るように塗布されている。導電性層32bは、導電性ペースト41を介して放熱板12に電気的に接続される。放熱板12は、基準電位GNDを有する配線に接続されている。これにより、媒体37に帯電している電荷38を、基準電位GNDを有する配線側に逃がすことは可能である。
【0038】
図6に示す例では、導電性剤42、例えば導電性ペーストが、導電性層32bの上面から保護膜40の側面を経由して共通電極19に到るように塗布されている。導電性層32bは、導電性ペースト42を介して共通電極19に電気的に接続される。
【0039】
共通電極19は、ボンディングワイヤ44により回路基板14に接続されている。共通電極19は、回路基板14等を介して任意の電位を有する箇所に接続されている。共通電極19は、例えば基準電位GNDを有する配線に接続される。また、共通電極19は、例えば抵抗35を介して電源36に接続されてもよい。これにより、媒体37に帯電している電荷38を、基準電位GNDを有する配線側に逃がすことは可能である。媒体37に帯電している電荷38を、抵抗35を介して電源36側に逃がすことは可能である。
【0040】
然しながら、
図5および
図6に示す例では、導電性ペースト41、42の塗布ムラに起因する接続信頼性の低下、導電性ペースト41、42が所定以上の厚みを有していることに起因する不具合が生じる恐れがある。また、導電性ペースト41、42の塗布、バンプボール43の形成、ボンディングワイヤ44の接続等の追加工程が必要になる問題がある。
【0041】
一方、本実施形態のサーマルプリントヘッド10では、上述したように保護膜22は第2保護膜32の導電性層32bより高い導電性を有する第3保護層33を有している。第3保護層33は、階段状の開口34に露出した共通電極19を覆い、共通電極19に電気的に接続されている。
【0042】
従って、導電性ペースト41、42を用いた場合より高い接続信頼性が得られる。更に、第3保護層33は0.4μmと薄いので、厚みに起因する不具合は生じない。
【0043】
サーマルプリントヘッド10の製造方法について説明する。
図7乃至
図12はサーマルプリントヘッド10の製造工程を順に示す図である。
図7乃至
図12の左側に製造工程のフローを示し、右側に断面図を示している。
【0044】
始めに、ヘッド基板13の製造工程について説明する。
支持基板16となるセラミック基板にグレーズ層17が設けられたグレーズドセラミック基板を用意する(ステップS10、
図7(a))。
【0045】
グレーズドセラミック基板を洗浄し(ステップS11)、グレーズドセラミック基板に発熱抵抗体18となる抵抗膜50として、例えば導電性材料をドープしたシリコン酸化膜をスパッタリング法により形成する(ステップS12、
図7(b))。
【0046】
これにより、グレーズ層17上の発熱抵抗体18が得られる。
【0047】
発熱抵抗体18上に共通電極19、個別電極20となるアルミニウム膜52を、例えば真空蒸着法により形成する(ステップS16、
図8(a))。
【0048】
アルミニウム膜52上に発熱抵抗体18、共通電極19および個別電極20に応じたパターンを有するレジト膜(図示せず)を形成する。レジストパターンは、長手方向が副走査方向S2で、主走査方向S1に所定の間隔で配列された複数の短冊状で、ヘッド基板一端面13A側の端部がバーで連接されている。レジストパターンは、所謂T字状である。また、T字が横一列に連接しているので、全体としては櫛歯状である。
【0049】
レジスト膜をマスクとしてアルミニウム膜52および発熱抵抗体18をエッチングする。アルミニウム膜52のエッチングは、例えば塩素系ガス用いたRIE(Reactive Ion Etching)法によりおこなう。発熱抵抗体18のエッチングは、例えばフッ素系ガスを用いたRIE法により行う(ステップS17の1PEP、
図8(b)−1)。
【0050】
1PEPでパターニングされたアルミニウム膜52上に発熱抵抗体18を露出するための開口を有するレジスト膜(図示せず)を形成し、レジスト膜をマスクとしてアルミニウム膜52をエッチングする(ステップS17の2PEP、
図8(b)−2)。
【0051】
これにより、短冊状のアルミニウム膜52が2分割されて、ヘッド基板一端面13A側の部分が共通電極19になり、ヘッド基板一端面13Aと反対側の部分が個別電極20になる。共通電極19と個別電極20の間にドット状に発熱抵抗体18が露出する。
【0052】
露出した発熱抵抗体18と、共通電極19と、個別電極20との上に絶縁性の第1保護層31としてSiON膜を形成する。SiON膜は、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成する。または、スパッタリング法により形成することもできる(ステップS19、
図9(a))。
【0053】
第1保護層31の上に第2保護層32として絶縁性層32aとなるSiON膜と導電性層32bをCVD法により形成する。絶縁性層32aを形成した後、絶縁性層32aと導電性層32bを連続して形成する(ステップS20、
図9(b))。
【0054】
第2保護層32上に第2開口34bに応じたパターンを有するレジスト膜(第1レジスト膜、図示せず)を形成し、レジスト膜をマスクとして第2保護層32をエッチングする。エッチングは、例えばフッ素系のガスを用いてRIE法により行う。導電性層32bと絶縁性層32aとでエッチング速度を異ならしめ、第1保護層31が露出するあたりでエッチングを停止させるとよい。これにより、第2保護層32に第2開口34bが形成される(ステップS21、
図9(c))。
【0055】
第2保護層32上に第2開口34bを埋め込んで第1開口34aに応じたパターンを有するレジスト膜(第2レジスト膜、図示せず)を形成し、レジスト膜をマスクとして第1保護層31をエッチングする。第2開口34bにおけるレジスト膜の厚さは、第2保護層32より十分厚くしておく。エッチングは、例えばフッ素系のガスを用いてRIE法により行う。これにより、第1保護層31に第1開口34aが形成される。第1開口34aおよび第2開口34bにより、階段状の開口34が得られる。開口34に共通電極19が露出する(ステップS22、
図9(d))。
【0056】
第2保護層32と、開口34の内面と、開口34に露出した共通電極19との上に第3保護層33をスパッタリング法などにより形成する。これにより、導電性の高い第3保護層33が共通電極19に電気的に接続される(ステップS23、
図10(a))。
【0057】
次に、サーマルプリントヘッドの組み立て工程について説明する。
放熱板12を用意する。放熱板12の一面に接着剤(両面テープ)23を介して回路基板14及びヘッド基板13を副走査方向S2へ順に並べて配置し、固定する(ステップS26、
図11(a))。
【0058】
回路基板14に駆動用IC15をマウントする。(ステップS27、
図11(b))。
【0059】
駆動用IC15の出力端子(図示せず)とヘッド基板13の個別電極20とをボンディングワイヤ24を介して接続する。駆動用IC15の入力端子(図示せず)と回路基板14の制御端子(図示せず)とをボンディングワイヤ25を介して接続する(ステップS28、
図11(c))。
【0060】
充填剤(フィラー)を含有する封止材を、ディスペンサを用いて駆動用IC15およびボンディングワイヤ24、25に塗布し、キュアする。これにより、駆動用IC15およびボンディングワイヤ24、25は、封止体26で封止され、保護される(ステップS30、
図12(a))。
【0061】
回路基板14にコンデンサ54、コネクタ55等の電気部品を半田付けする。これにより、回路基板14がコネクタ55を介して外部に接続可能となり、サーマルプリントヘッド10が完成する(ステップS31、
図12(b))。
【0062】
以上説明したように、本実施形態のサーマルプリントヘッド10では、階段状の開口34を有し、導電性の高い第3保護層33を共通電極19に電気的に接続する除電部30を有している。
【0063】
その結果、感熱紙やインクリボン等の媒体37に帯電した電荷38がサーマルプリントヘッド10に放電しても、速やかに除電することができる。従って、媒体に帯電している電荷の放電による損傷を防止するサーマルプリントヘッドが得られる。
【0064】
ここでは、除電部30の開口34の階段が2段の場合について説明したが、第3保護膜のステップカバレッジが確保されればよいので、段数には制限はない。3段以上の多段であっても構わない。開口34の階段が3段の場合は、第2保護層32が8μm程度と厚いので、追加する段は第2保護層32に設ける。
【0065】
除電部30が発熱領域21とヘッド基板一端面13Aとの間に設けられ、除電部30の形状が主走査方向S1に長い階段状のトレンチである場合について説明したが、除電部30が設けられる場所および除電部30の形状は、媒体に帯電している電荷の逃げ道を確保するものであればよいので、さまざまな場所および形状が可能である。
【0066】
除電部30の平面形状は、例えば円形状、多角形状などでもよい。除電部30は、例えば主走査方向S1に離散的に設けてもよい。除電部30は、例えば発熱領域21と封止体26との間に設けてもよいし、封止体26の内部に設けてもよい。
【0067】
図13は別の除電部を示す平面図である。
図13(a)に示す例では、矩形状の除電部30が主走査方向S1に離散的に設けられている。
図13(b)に示す例では、円形状の除電部30が主走査方向S1に離散的に設けられている。
図13(c)に示す例では、円形状の除電部30が発熱領域21と封止体26との間であって、主走査方向S1に離散的に設けられている。除電部30を発熱領域21と封止体26との間に設ける場合は、共通電極19から引き出し線を発熱領域21と封止体26との間に延在させるとよい。
【0068】
グレーズ層17が平坦である場合について説明したが、グレーズ層に突状部を設けても構わない。
図14は、突状部が設けられたグレーズ層を有するサーマルプリントヘッドの要部を示す断面図である。
【0069】
図14に示すように、支持基板16上に突状部17aを有するグレーズ層17が設けられている。突状部17aは、副走査方向S2の中央部よりも僅かに副走査反対方向寄りで、主走査方向S1に沿って延びている。グレーズ層17の一面には、複数の発熱抵抗体18、共通電極19及び個別電極20が設けられ、更に複数の発熱抵抗体18、共通電極19及び個別電極20を覆う保護膜22が設けられていることは、
図1に示すサーマルプリントヘッド10と同様である。
【0070】
異なる点は、保護膜22において発熱抵抗体18を覆う部分にも突状部17aに倣って凸部22bが生じていることである。グレーズ層が突状部17aを有し、保護膜22に凸部22bが生じると、プラテンローラ56のプラテン圧を上げなくても媒体37と保護膜22との密着性が良くなる。但し、媒体37と保護膜22の摩擦力は増加する。
【0071】
この種のサーマルプリントヘッドにも、本実施形態の除電部30を設けることが可能である。
【0072】
尚、発熱素子(グレーズ層)には、真空蒸着、CVD、スパッタリング等の薄膜形成技術およびフォトエッチング法を用いて形成される薄膜型発熱素子と、スクリーン印刷などの印刷および焼成による厚膜形成技術を用いて形成される厚膜型発熱素子がある。本実施の形態に用いられる発熱素子は、いずれの方法で形成されたものでも構わない。
【0073】
階段状の開口34の形成は、第1の開口34aに応じたパターンを有するレジスト膜をスリミングして、第2の開口に応じたパターンを有するレジスト膜に変換することにより形成する方法も考えられる。
【0074】
具体的には、第2保護層34に第1開口34aに応じたパターンを有するレジスト膜を形成し、RIE法により第2保護層32から第1保護層31までエッチングし、共通電極19を露出する第1開口34aを形成する。レジスト膜をスリミングして第1開口34aに応じたパターンを第1開口34aより大きい第2開口34bに応じたパターンに変換する。第2開口34bに応じたパターンを有するレジストをマスクとして第2保護層34をエッチングし、第2開口34bを形成する。エッチングは、第2保護層32と第1保護層31の境界付近で停止させる。
【0075】
除電部30において、導電性の高い第3保護層33が共通電極19に電気的に接続され、共通電極19が抵抗35を介して電源36に接続されている場合について説明したが、第3保護層33は基準電位GNDを有する配線に接続されていてもよい。
【0076】
その場合は、例えば共通電極19とは絶縁分離されたパターンを有するダミー電極をグレーズ層17上または支持基板16上に設けるとよい。第3保護層33はダミー電極に接続され、ダミー電極は基準電位GNDを有する配線に接続される。また、ダミー電極は基準電位GNDを有する配線だけでなく、電源36以外の任意の電位を有する配線に接続することもできる。
【0077】
(実施形態2)
本実施形態に係るサーマルプリンタについて説明する。
図15は本実施形態のサーマルプリンタを示す断面図である。
【0078】
図15に示すように、本実施形態のサーマルプリンタ70は、
図2に示す除電部30を有するサーマルプリントヘッド10を用いている。サーマルプリンタ70はプラテンローラ71を備えている。このプラテンローラ71は、主走査方向S1を軸として、側面が発熱領域(複数の発熱抵抗体が配列された帯状の領域)21に接するように配置され、その軸72を中心に回転可能に設けられている。
【0079】
サーマルプリンタ70は、プラテンローラ71の回転によって、プラテンローラ71と発熱領域21の間に挿入された感熱紙73を主走査方向S1に対して垂直な副走査方向S2に移動させる。この感熱紙73の移動に伴って、複数の発熱抵抗体18を選択的に発熱させることにより、所望の画像を形成する。
【0080】
プラテンローラ71は、複数の発熱抵抗体18を選択的に発熱させるときは回転しながら、発熱抵抗体18を覆う保護膜22に感熱紙73を押し付ける。感熱紙73は、保護膜22と擦られる。その結果、感熱紙73は帯電する。
【0081】
上述したように、感熱紙73に帯電した電荷がサーマルプリントヘッド10に放電した場合、電荷は除電部30を介して速やかに排出されるので、サーマルプリントヘッド10の損傷が防止される。
【0082】
サーマルプリンタ70を用いて、A4サイズの感熱紙73に連続して印刷を行ないサーマルプリントヘッド10の耐久性試験を行った。結果、20000枚印刷しても、サーマルプリントヘッド10の損傷は認められなかった。サーマルプリントヘッド10の損傷は、例えばサーマルプリンタ70からサーマルプリントヘッド10を取り出し、放電痕の有無、特に保護膜22や発熱抵抗体18の損傷の有無を目視観察して判定することができる。
【0083】
従って、媒体に帯電している電荷の放電による損傷を防止するおよびサーマルプリントヘッド10を用いたサーマルプリンタ70が得られる。
【0084】
以上説明したように、本実施形態のサーマルプリンタ70は、除電部30を有するサーマルプリントヘッド10を用いているので、媒体に帯電している電荷の放電による損傷が防止されるサーマルプリンタが得られる。
【0085】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0086】
なお、以下の付記に記載されているような構成が考えられる。
(付記1) 前記第1電極は、少なくとも規準電位線および抵抗を介して電源のいずれかに接続されている請求項5に記載のサーマルプリントヘッド。
【0087】
(付記2) 支持基板と、前記支持基板上に配置された発熱抵抗体と、前記発熱抵抗体上に設けられ、前記発熱抵抗体に給電するための第1電極および第2電極と、前記発熱抵抗体と、前記第1電極と、前記第2電極との上に設けられ、絶縁性の第1保護層と、第1導電性を有する第2保護層と、前記第1導電性より高い第2導電性を有する第3保護層とが順に積層された保護膜と、を具備し、前記保護膜は前記第2保護層から前記第1保護層に到り前記第1電極を露出する階段状の開口を有し、前記第3保護層は前記開口の内面に沿って前記開口に露出した前記第1電極に接するサーマルプリントヘッドを具備するサーマルプリンタ。
【0088】
(付記3) 支持基板と、
前記支持基板上に配置された発熱抵抗体と、
前記発熱抵抗体上に設けられ、前記発熱抵抗体に給電するための第1電極および第2電極と、
前記発熱抵抗体と、前記第1電極と、前記第2電極との上に設けられ、絶縁性の第1保護層と、導電性の第2保護層とが順に積層された保護膜と、
を具備し、
前記第1保護層は前記第1電極を露出する開口を有し、前記第2保護層は前記開口の内面に沿って前記開口に露出した前記第1電極に接する
サーマルプリントヘッド。
【0089】
(付記4) 前記開口は、平面視で矩形状、円形状、多角形状のいずれかである請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。