(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ガス導入部から導入した導入ガス中の検知成分の状態に応じて所定のガス警報を出力するガス警報機能を有するガス検知器に対し、当該ガス検知器のガス導入部に点検用ガスを供給して当該ガス検知器の状態を点検する点検処理を実行する点検処理手段を備えたガス検知器の点検処理システムであって、
前記点検用ガスの原料となる原料ガスを圧縮状態で貯留するガス容器が接続されるガス容器接続部と、
前記ガス容器接続部に接続された前記ガス容器から原料ガスを減圧して取り出す減圧手段と、を備え、
前記減圧手段が、複数の減圧器を有すると共に、前記原料ガスが通過する減圧器の個数である減圧段数を変更可能な減圧段数可変式に構成され、
前記点検処理手段による点検処理の実行状態に応じて前記減圧手段の減圧段数を調整する減圧段数調整手段を備えたガス検知器の点検処理システム。
前記減圧手段が、前記ガス容器接続部に接続された上段減圧器と、当該上段減圧器の二次側に接続された下段減圧器と、前記上段減圧器の二次側と前記下段減圧器の二次側とを接続するバイパス路と、当該バイパス路を開閉可能なバイパス弁とで構成されている請求項1又は2に記載のガス検知器の点検処理システム。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1に示す点検処理システム100は、ガス検知器70の状態を点検するための点検処理方法を実施するシステムとして構成されており、ガス検知器70を収容するための収容部5が正面に設けられたシステム本体1と、当該収容部5に着脱自在に装着されて、ガス検知器70の収容部5への収容を可能とするアダプタ50とを備える。
【0018】
尚、本願において、システム本体1において収容部5やディスプレイ3が設けられる面(
図1の手前側の面、
図2の下側の面、
図3の左手前側の面)を「正面」と呼び、その正面が向かう方向を「手前方向」と呼ぶ。これに対し、正面の反対側の面を「背面」と呼び、その背面が向かう方向を「奥行き方向」と呼ぶ。また、正面視における左側を単に「左側」と呼び、正面視における右側を単に「右側」と呼ぶ。
【0019】
[ガス検知器]
先ず、ガス検知器70の構成について、
図1、及び
図2を参照して説明する。
ガス検知器70は、詳細については後述するが、ガス導入部72から導入した導入ガス中の検知成分としての例えば可燃性ガス(水素、メタン、プロパン等)や一酸化炭素の状態に応じて所定のガス警報を出力するガス警報機能を有すると共に、ガス導入部72の閉塞時に所定の閉塞警報を出力する閉塞警報機能を有する。
【0020】
具体的に、かかるガス検知器70は、検知器本体71と、当該検知器本体71内にガスを導入するためのガス導入部72とを備える。
ガス導入部72は、検知器本体71から突出形成された略筒状の筒状部74、及び、当該筒状部74の先端側に連接する尖状の吸引ノズル73で構成されている。一方、検知器本体71内には、ガス導入部72を介して外部のガスを吸引するための吸引ポンプ75が設けられており、このことで、ガス検知器70は、吸引ノズル73から積極的にガスを吸引する吸引式に構成されている。
更に、検知器本体71内には、吸引ポンプ75で吸引した導入ガスが供給されて当該導入ガス中の検知成分に感応するセンサ素子等で構成されたセンサ部76、及び、コンピュータからなる制御部78等が設けられている。
【0021】
ガス検知器70の前面には所定の表示や入力操作を行うための表示操作部80が設けられており、制御部78は、センサ部76の出力信号から導入ガス中の検知成分濃度を求め、検知器本体71に設けられた表示操作部80に表示すると共に、その可燃性ガス濃度が許容範囲を超えた場合には、それを作業者に通知するべく、同表示操作部80に所定のガス警報表示(ガス警報の一例)を表示し、更には、検知器本体71に設けられたスピーカ82が所定のガス警報音(ガス警報の一例)を発生するように構成されている。そして、このような機能をガス警報機能と呼ぶ。
【0022】
更に、このガス検知器70の制御部78は、吸引ポンプ75の作動時において、吸引ポンプ75の負荷(以下「ポンプ負荷」と呼ぶ。)を当該吸引ポンプ75の駆動電力の電流値等で監視し、吸引ポンプ75の作動時においてポンプ負荷が異常に高い場合には、ガス導入部72の状態がゴミ等により閉塞している閉塞状態であると判定する。そして、この閉塞状態を閉塞異常として、作業者に通知するべく、表示操作部80に所定の閉塞警報表示を表示し、更には、スピーカ82が所定の閉塞警報音を発生するように構成されている。そして、このような機能を閉塞警報機能と呼ぶ。
【0023】
検知器本体71の側面側には、センサ部76を通流したガスを排出する排気部77と、制御部78が外部との間で赤外線通信を行うための通信素子79とが配置されている。
【0024】
また、ガス検知器70としては、単一の検知成分を検知対象とする単一成分用のものの他、複数の検知成分を検知対象とする複数成分用のものがある。この複数成分用のガス検知器70は、主検知成分を検知対象とする主検知モードで作動すると共に当該主検知モードでのモード切替操作により当該主検知成分とは別の副検知成分を検知対象とする副検知モードで作動する。
【0025】
[点検処理システム]
次に、点検処理システム100の詳細構成、即ち点検処理システム100が備えるシステム本体1及びアダプタ50の詳細構成について、順に説明する。
尚、以下の説明では、点検処理システム100の点検対象を吸引式のガス検知器70とする例を説明するが、吸引式のガス検知器70以外にも、ガスが自然にセンサ部に導入される拡散式のガス検知器を点検対象としても構わない。また、この場合、必要な処理を適宜追加又は不要な処理を適宜割愛しても構わない。
【0026】
〔システム本体〕
次に、点検処理システム100が備えるシステム本体1の構成について、
図1、
図2、及び
図7〜
図14を参照して説明する。
図1に示すように、システム本体1の前面には、ガス検知器70を収容するための4つの収容部5が設けられており、このことでガス検知器70の複数を点検対象とすることが可能となる。システム本体1の前面には、このような収容部5の他に、ディスプレイ3やその他操作スイッチ及びスピーカなどの機器が配置されており、更には、点検対象となるガス検知器70のセンサ部76が感応する検知成分を含む原料ガスを圧縮状態で貯留する2つのガス容器C1,C2の夫々が一対のガス容器接続部C1a,C2aに対して着脱自在に装着されている。尚、詳細は後述するが、このガス容器C1,C2に貯留される原料ガスは、適宜大気で希釈されて点検用ガスとして利用される。
【0027】
そして、システム本体1の収容部5に装着されるアダプタ50としては、単一成分用のガス検知器70を収容可能な単一成分用のものと、複数成分用のガス検知器70を収容可能な複数成分用のものとがある。そして、異なる成分の原料ガスを貯留した2種のガス容器C1,C2をガス容器接続部C1a,C2aに装着することによって、点検処理システム100は、収容部5に装着された複数成分用のアダプタ50に複数成分用のガス検知器70が収容された場合に、そのガス検知器70に対して、複数種の点検用ガスを択一的に供給可能となる。
【0028】
4つの収容部5は何れも、正面側に開口する共通の矩形断面凹部として形成されている。
図1及び
図2に示すように、この収容部5の内部奥面側には、ガス検知器70のガス導入部72に点検用ガス等のガスを供給するためのガス供給部である給気用継手5aと、ガス検知器70から排出された排気を吸引して外部に排出するための排気吸引部である排気用継手5bと、アダプタ50に設けられた基盤52のコネクタ55に接続されるコネクタ5cとが配置されている。
尚、
図1において、アダプタ50が装着されていない収容部5には、ガス検知器70の誤挿入等を防止するために、その前面にカバー5dが設けられている。
【0029】
コネクタ5cは、
図14にも示すように、同じくシステム本体1に設けられたコンピュータからなる制御部2に接続されている。よって、アダプタ50側の基盤52のコネクタ55とシステム本体1側のコネクタ5cとが接続されることで、システム本体1側の制御部2は、アダプタ50側の通信部54(収容部側通信部の一例)との間でコマンドレスポンス方式の有線通信が可能な通信手段2aとして機能する。即ち、通信手段2aと複数の通信部54との間の通信では、先ず、通信手段2aが夫々の通信部54に対して、レスポンス信号の返信を要求する通信部54を指定する通信ID情報を付加したコマンド信号を一斉送信する。すると、それを受信した通信部54のうち、受信したコマンド信号に付加された通信ID情報に対応する通信部54が、当該コマンド信号に対応するレスポンス信号を通信手段2aに返信することで、通信手段2aは、指定した通信部54から所望のレスポンス信号を得ることができる。
【0030】
また、アダプタ50側の通信部54は、例えばコネクタ5cに設けられた抵抗素子(図示省略)の抵抗値を読み取って、当該アダプタ50が装着された収容部5を識別するための収容部番号(例えば収容部5が4つ存在する場合には1〜4)等の収容部ID情報を、上記通信手段2aとの通信に利用する通信ID情報として取得するID情報取得手段54aとして機能する。
更に、このID情報取得手段54aは、収容部5に対してアダプタ50が正常に装着されなかったなどの要因で、コネクタ5c側からの収容部ID情報の取得を失敗したときには、収容部ID情報とは異なる上記収容部番号以外(例えば0)の失敗時ID情報を、上記通信ID情報として取得するように構成されている。
【0031】
詳細は後述するが、アダプタ50側の通信部54は、当該アダプタ50のガス検知器収容部60に収容されたガス検知器70の制御部78との間で無線通信が可能に構成されている。従って、システム本体1側の通信手段2aは、アダプタ50側の通信部54との間で通信可能となる上に、当該通信部54を介して、収容部5にアダプタ50を介在させて収容されたガス検知器70側の制御部78との間でも通信可能となる。
【0032】
このシステム本体1側の制御部2は、
図14等に示すように、所定のプログラムを実行することにより、詳細については後述するが、所定の点検処理を実行する点検処理手段2dとして機能する。
更に、制御部2は、上記点検処理手段2dに加えて、収容部5に収容されたガス検知器70に関するガス検知器情報を取得可能なガス検知器情報取得手段2b、及び、収容部5に装着されたアダプタ50に関するアダプタ情報を取得可能なアダプタ情報取得手段2cとしても機能し、更に詳細については後述するが、減圧段数調整手段2e、装着異常判定手段2f、及び、空状態判定手段2gとしても機能する。
【0033】
ガス検知器情報取得手段2bは、収容部5にアダプタ50を介在させて収容されたガス検知器70側の制御部78との間で通信を行うことで、当該制御部78から、ガス検知器70の検知成分を識別可能な型式などのガス検知器側検知成分情報を含むガス検知器情報を当該ガス検知器70が収容された収容部5を識別する収容部ID情報に関連付けて取得する。
一方、アダプタ情報取得手段2cは、収容部5に装着されたアダプタ50側の通信部54との間で通信を行うことで、当該通信部54から、アダプタ50に収容可能な特定のガス検知器70の検知成分を識別可能な型式などのアダプタ側検知成分情報を含むアダプタ情報を、当該アダプタ50が装着された収容部5を識別する収容部ID情報に関連付けて取得する。
更に、アダプタ情報取得手段2cは、取得したアダプタ情報に含まれるアダプタ側検知成分情報と、予め登録されたガス容器C1,C2に貯留されている原料ガスの成分に関する原料ガス成分情報とを比較し、アダプタ側検知成分情報で識別される検知成分が、原料ガス成分情報で識別される原料ガスの成分と一致する場合には、そのアダプタ50に収容されたガス検知器70に対して当該アダプタ50側で指定された検知成分を含む点検ガスを供給可能であるとして、アダプタ側検知成分情報を、ガス検知器70に対して供給可能な点検用ガスに関する点検用ガス供給可能情報として取得する。
【0034】
また、制御部2は、これら取得した各種情報をメモリ等からなる記憶部4に記憶させ、記憶部4から必要な情報を適時取り出すことができる。
尚、アダプタ情報の取得タイミングについては、ガス検知器情報の取得タイミングと同様に、ガス検知器70の収容部5への収容時とすることができるが、ガス検知器70の収容時における情報処理量の削減等を目的として、収容部5へのアダプタ50の装着時とされている。
【0035】
図7〜
図13に示すように、システム本体1には、外部に開放して大気OAの取り込み又は外部への排気EAの排出を行うための開放部O1〜O4が設けられており、図示は省略するが、この開放部O1〜O4は、システム本体1の背面側に設けられている。更に、システム本体1の内部には、収容部5に設けられた給気用継手5a及び排気用継手5bと、開放部O1〜O4及びガス容器接続部C1a,C2aとを接続する各種経路が設けられており、これら経路には、圧力計Mp1〜Mp5、流量計Mf1〜Mf3、弁V1〜V14、ポンプP1,P2、圧力レギュレータR1,R21,R22(減圧器の一例)、及びフィルタF1〜F3等が配置されている。尚、圧力計Mp1〜Mp5で計測された圧力値、及び流量計Mf1〜Mf3で計測された流量値は、制御部2に入力され、また、制御部2は、それら入力信号等に基づいて、弁V1〜V14、ポンプP1,P2、及び圧力レギュレータR1,R21,R22の作動制御を実行する。
尚、
図7〜
図13では、弁V1〜V14において、閉状態のポートを黒塗り三角で示し、開状態のポートを白抜き三角で示している。
【0036】
例えば
図8に示すように、後述する希釈処理においてガス容器C1,C2から取り込んだ原料ガスG0が通流するガス経路6bは、夫々のガス容器C1,C2から、夫々の圧力計Mp4,Mp5、夫々の圧力レギュレータR1,R21,R22、夫々の二方弁V9,V10、三方弁V8,V11、流量調整弁V7、及び流量計Mf2等を経由して、合流部B1までの経路として設けられている。
点検用ガスG0,G1が通流する点検用ガス経路6cは、例えば
図11に示すように、合流部B1から、三方弁V4、三方弁V3、分岐部B2、及び三方弁V1等を経由して、給気用継手5aまでの経路として設けられている。
そして、このガス経路6bや点検用ガス経路6cのように、点検用ガスG0,G1が通流する経路をガス経路と呼ぶ。
【0037】
また、後述する希釈処理において原料ガスG0を希釈するための大気OAが通流する大気供給経路6aは、例えば
図11に示すように、開放部O3から、フィルタF3、ポンプP1、三方弁V14、三方弁V13、流量調整弁V12、及び流量計Mf3等を経由して、合流部B1までの経路として設けられている。
また、給気用継手5aを大気開放可能な大気開放経路は、例えば
図9に示すように、給気用継手5aから、三方弁V1、三方弁V3、流量計Mf1、及びフィルタF2等を経由して、開放部O2までの経路として設けられている。
【0038】
上記ガス経路6bと上記大気供給経路6aとは、ガス容器C1,C2から取り出され圧力レギュレータR1,R21,R22で減圧後の原料ガスG0を、大気OAを用いて希釈して、後述する点検処理において点検用ガスとして利用される希釈ガスG1を生成する希釈処理を実行可能な希釈処理手段6として機能する。
【0039】
夫々のガス容器接続部C1a,C2aに設けられた圧力レギュレータR1,R21,R22は、当該ガス容器接続部C1a,C2aに接続されたガス容器C1,C2から原料ガスG0を減圧して取り出す減圧手段として機能する。
更に、ガス容器接続部C1a側の減圧手段は、単一の圧力レギュレータR1を有し、原料ガスG0が通過する圧力レギュレータの個数である減圧段数が1段に固定された減圧段数固定式に構成されている。
【0040】
一方、ガス容器接続部C2a側の減圧手段は、2個の圧力レギュレータR21,R22を有すると共に、原料ガスG0が通過する圧力レギュレータの個数である減圧段数が1段と2段とで変更可能な減圧段数可変式に構成されている。
具体的には、ガス容器接続部C2aに接続された上段圧力レギュレータR21(上段減圧器の一例)と、当該上段圧力レギュレータR21の二次側に接続された下段圧力レギュレータR22(下段減圧器の一例)とが、直列状態で配置されている。更に、上段圧力レギュレータR21の二次側と下段圧力レギュレータR22の二次側とを接続するバイパス路BLが設けられており、そのバイパス路BLの起点部には、当該バイパス路BLを開閉可能なバイパス弁としての三方弁V11が設けられている。また、バイパス路BLに原料ガスG0が通流する際にレギュレータR22において原料ガスG0が逆流することを防止するために、レギュレータR22の出口側に逆止弁CVが設けられている。また、この逆止弁CVは、レギュレータR22に内蔵されていても構わない。
【0041】
この構成により、
図13に示すように、三方弁V11を操作してバイパス路BLへの原料ガスG0の通流を停止すれば、ガス容器C2から流出した原料ガスG0が上段圧力レギュレータR21と下段圧力レギュレータR22との順に通流し、減圧段数が多い側の2段に設定されることになる。一方、
図11に示すように、三方弁V11を操作してバイパス路BLへの原料ガスG0の通流を許可することで、ガス容器C2から流出した原料ガスG0が上段圧力レギュレータR21にのみ通流し、減圧段数が少ない側の1段に設定されることになる。
そして、詳細については後述するが、制御部2が機能する減圧段数調整手段2eは、ガス容器C2に貯留された原料ガスG0を点検用ガスとして利用した点検処理手段2dによる点検処理の実行時において、当該点検処理の実行状態に応じて上記三方弁V11を操作する形態で、上記圧力レギュレータR21,R22等で構成された減圧段数可変式の減圧手段の減圧段数を調整するように構成されている。
尚、本実施形態では、C1a側の減圧手段を減圧段数固定式に構成すると共に、C2a側の減圧手段を減圧段数可変式に構成したが、逆に、C1a側の減圧手段を減圧段数可変式に構成すると共に、C2a側の減圧手段を減圧段数固定式に構成しても構わない。また、C1a側とC1b側の両方の減圧手段を減圧段数可変式に構成しても構わない。
【0042】
〔アダプタ〕
次に、アダプタ50の構成について、
図1、
図2、
図3、
図14に基づいて説明する。
アダプタ50は、
図1に示すように、システム本体1の正面に設けられた収容部5に対して着脱自在に装着されて、ガス検知器70の収容部5への収容を可能とするものとして構成されている。即ち、アダプタ50の外形はその収容部5の内部に正面側から挿入されて内嵌するよう共通の矩形断面を有し、アダプタ50の正面側の上下には、システム本体1に対してアダプタ50をネジにて固定するための取付用爪64が上下方向に突出形成されている。
そして、このアダプタ50は、収容部5に対して正面側から奥行き方向に挿入し、当該アダプタ50の取付用爪64を収容部5の縁部にネジにて固定する形態で、収容部5に装着される。
【0043】
尚、システム本体1へのアダプタ50の装着は、ガス検知器70の点検に先立って行えばよいが、誤った選定や装着等を防止するために、使用者側で行うのではなく、納入元(メーカー等)側で行うことが望ましい。即ち、納入元は、点検処理システム100の受注時において、予め使用者が使用しているガス検知器70の仕様を把握し、それに基づいて適切なアダプタ50を予めシステム本体1へ装着した点検処理システム100を使用者に納入する。また、納入元は、メンテナンスやオーバーホール等の時点において、使用者が使用しているアダプタ50の変更等に基づいてアダプタ50を変更することができる。
【0044】
アダプタ50には、正面側の開口からガス検知器70を挿入して収容する矩形断面凹部であるガス検知器収容部60が設けられている。このガス検知器収容部60は、その形状やそれに設けられた各種部位の配置等が、ガス検知器70の所定の型式に適合したものとして構成されており、複数の型式のガス検知器70の夫々に適合した複数種のアダプタ50が用意されている。このことで、共通の収容部5に対してアダプタ50を介在させる形態で複数種の型式のガス検知器70を収容することができ、収容部5には、使用者が所有するガス検知器70の型式に応じたアダプタ50が選定されて装着されることになる。
【0045】
アダプタ50は、
図3に示すように、上側ケーシング50a及び下側ケーシング50bからなる上下2分割構造で構成されており、上述したガス検知器収容部60が、上側ケーシング50aの下面側の凹部と下側ケーシング50bの上面側の凹部とを組み合わせる形態で形成されている。
このアダプタ50の上側ケーシング50aの下面側や下側ケーシング50bの上面側には、上記ガス検知器収容部60以外に、詳細については後述するが、排気用チューブ57やフィルタ58が設けられる排気案内路56、給気用チューブ62が設けられる給気案内路61、通信素子53や通信部54等が設けられた基盤52が収容される基盤収容部51、及び、通信用通路63などを形成するための各種凹部が設けられている。
【0046】
排気案内路56は、収容部5へ収容されたガス検知器70からの排気を排気用継手5bに案内する通路として、ガス検知器収容部60の左側に隣接して設けられており、その延出方向が収容部5へのアダプタ50の装着方向(即ち奥行方向)に沿う方向とされている。この排気案内路56には、ガス検知器収容部60に対し側方から開口する開口部59を有しており、この開口部59は、ガス検知器収容部60に収容されたガス検知器70の排気部77に対し、所定の間隔をあけて対向配置されている。更に、排気用継手5bのガス吸引流量(即ちシステム本体1側のポンプP2(
図7〜
図13参照)の吸引流量)が、ガス検知器70の排気流量(即ちガス検知器70側の吸引ポンプ75の吸引流量)よりも多く設定されている。これにより、ガス検知器70の排気部77から排出された排気を確実に開口部59から排気案内路56に吸引することができる。更に、この開口部59には、ガス検知器70からの排気に加えて、ガス検知器収容部60の周辺空気が取り込まれることになる。即ち、ガス検知器70からの排気を周辺空気で希釈して開口部59から排気案内路56に吸引することができ、その希釈された排気をシステム本体1側から外部に安全な状態で外部に排出することができる。
【0047】
排気案内路56において、開口部59に面する空間にはフィルタ58が設けられており、その奥側には排気用チューブ57が内嵌されている。この排気用チューブ57の奥側端部が、収容部5の内部奥面側に設けられた排気用継手5bに嵌合接続され、その接続方向が、収容部5へのアダプタ50の装着方向(即ち奥行方向)に沿う方向に設定されている。このことで、収容部5に対するアダプタ50の装着時において、排気用継手5bに対する排気用チューブ57の接続を簡単に行うことができる。尚、アダプタ50において、フィルタ58を適宜省略してシステム本体1側に設けても構わない。
【0048】
給気案内路61は、給気用継手5aに供給された点検用ガスG0,G1をガス検知器70のガス導入部72に案内する通路として、ガス検知器収容部60の奥側に設けられており、その延出方向が収容部5へのアダプタ50の装着方向(即ち奥行方向)に沿う方向とされている。この給気案内路61には、給気用チューブ62が内嵌されている。この給気用チューブ62の手前側端部が、ガス検知器収容部60に収容されるガス検知器70の吸引ノズル73に嵌合接続され、その接続方向が、ガス検知器収容部60へのガス検知器70の挿入方向(即ち奥行方向)に沿う方向に設定されている。このことで、ガス検知器収容部60へのガス検知器70の挿入時において、給気用チューブ62に対する吸引ノズル73の接続を簡単に行うことができる。
【0049】
更に、この給気用チューブ62の奥側端部が、収容部5の内部奥面側に設けられた給気用継手5aに嵌合接続され、その接続方向が、収容部5へのアダプタ50の装着方向(即ち奥行方向)に沿う方向に設定されている。このことで、収容部5に対するアダプタ50の装着時において、給気用継手5aに対する給気用チューブ62の接続を簡単に行うことができる。
【0050】
基盤収容部51は、排気案内路56の左側に隣接して設けられており、その延出方向が収容部5へのアダプタ50の装着方向(即ち奥行方向)に沿う方向とされている。この基盤収容部51には、板状の基盤52が板面を左右方向に対して垂直となる姿勢で収容されている。そして、この基盤52の奥側端部に設けられたコネクタ55が、収容部5の内部奥面側に設けられたコネクタ5cに嵌合接続され、その接続方向が、収容部5へのアダプタ50の装着方向(即ち奥行方向)に沿う方向に設定されている。このことで、収容部5に対するアダプタ50の装着時において、システム本体1側のコネクタ5cに対するアダプタ50側のコネクタ55の接続を簡単に行うことができる。
【0051】
更に、この基盤52には、CPU等からなる通信部54が配置されており、更にガス検知器収容部60側の面には、当該ガス検知器収容部60に収容されたガス検知器70の通信素子79との間で赤外線通信を行うための通信素子53が配置されている。
そして、アダプタ50には、これら通信素子79,53との間で送受信される通信用赤外線を通過させるための通信用通路63が左右方向に延出する姿勢でアダプタ50に形成されている。このことで、ガス検知器70をアダプタ50のガス検知器収容部60に収容する際に、完全に収容された時点でこれら通信素子79,53間の赤外線通信が可能となる。そこで、このような赤外線通信が可能となった状態を検出することで、ガス検知器70の収容完了を判定することができる。
尚、アダプタ50において、通信部54を設ける基盤52については、多種のアダプタに採用可能なように、複数種の通信部54のパターンを準備しておき、製造時にどの通信部を実装するかを決定することで、当該基盤52の共通化が図られている。
【0052】
〔装着異常判定処理〕
次に、制御部2が機能する装着異常判定手段2fにより実行される装着異常判定処理について、
図14を参照して説明する。
装着異常判定手段2fは、点検処理システム100の起動時において自動的に、通信手段2aの通信状態に基づいて所定の装着異常判定処理を実行する。
この装着異常判定処理は、アダプタ50が収容部5に正常に装着され、且つアダプタ50に設けられた収容部側通信部としての通信部54が収容部5のコネクタ5cに正常に装着されたか否かを的確に判定する処理である。
【0053】
具体的に、この装着異常判定処理では、先ず、通信手段2aにより、全てのアダプタ50の通信部54に対して、当該通信部54がコネクタ5cへの装着に失敗したときに収容部IDとして取得する失敗時ID情報を通信ID情報として付加したコマンド信号を一斉送信する。
すると、そのコマンド信号を受信した全てのアダプタ50の通信部54のうち、コネクタ5cへの装着が失敗したことに起因して失敗ID情報を通信ID情報として取得した通信部54のみが、そのコマンド信号の受信に対応してレスポンス信号を通信手段2aに返信することになる。
よって、装着異常判定手段2fは、通信手段2aが失敗時ID情報を通信ID情報として付加したコマンド信号の一斉送信に伴ってレスポンス信号を受信した場合には、収容部5に対して正常に装着されていない装着異常の通信部54が存在していると判定することができる。そして、このような装着異常が存在している場合には、その旨がディスプレイ3に表示され、作業者に対して装着異常を是正する措置を施すことが促される。
【0054】
〔空状態判定処理〕
次に、制御部2が機能する空状態判定手段2gにより実行される空状態判定処理について、
図14を参照して説明する。
空状態判定手段2gは、上記装着異常判定手段2fと同様に、点検処理システム100の起動時において自動的に、通信手段2aの通信状態に基づいて所定の空状態判定処理を実行する。
この空状態判定処理は、複数の収容部5の夫々について、アダプタ50が装着されていない空状態であるか否かを的確に判定する処理である。
【0055】
具体的に、この空状態判定処理では、先ず、通信手段2aにより、夫々のアダプタ50の通信部54に対して、当該収容部5に関連付けられた収容部ID情報を通信ID情報として付加したコマンド信号を一斉送信する。
すると、コマンド情報に付加した収容部ID情報を通信ID情報として持つ通信部54が存在する場合には、通信手段2aはその通信部54からレスポンス信号を受信するが、そのような通信部54が存在しない場合には、通信手段2aはレスポンス信号を受信しないことになる。
よって、空状態判定手段2gは、収容部ID情報を付加したコマンド信号の一斉送信に伴ってレスポンス信号を受信した場合には、その収容部IDに関連付けられた収容部5には通信部54を有するアダプタ50が装着されていると判定する。
逆に、収容部ID情報を付加したコマンド信号の一斉送信に伴ってレスポンス信号を受信しなかった場合には、その収容部IDに関連付けられた収容部5には通信部54を有するアダプタ50が装着されていない所謂空状態であるか、若しくは、その通信部54に装着異常が発生していると判定することができる。しかし、この空状態判定処理は、上述した装着以上判定処理の実行により装着異常が是正されている前提で実行されるため、レスポンス信号を受信しなかった場合には、空状態であると判定し、夫々の収容部5が空状態であるか否かはディスプレイ3に表示されることになる。
【0056】
[点検処理方法]
次に、上述した点検処理システム100で実行される点検処理方法について、
図4〜
図13を参照して、説明する。
先ず、作業者は、点検対象となるガス検知器70を作動させた状態で、収容部5に装着されたアダプタ50のガス検知器収容部60に挿入する。尚、点検対象のガス検知器70が、検知モードの切替を伴って主検知成分と副検知成分とを択一的に検知対象とする複数成分用のものである場合には、当該ガス検知器70を、主検知成分を検知対象とする主検知モードで作動させた状態で、収容部5に装着されたアダプタ50に挿入する。
【0057】
すると、前述したように、ガス検知器70側の吸引ノズル73がアダプタ50側の給気用チューブ62に接続されると共に、ガス検知器70側の通信素子79とアダプタ50側の通信素子53との間の赤外線通信が可能な状態となる。そして、システム本体1側の制御部2は、その赤外線通信が可能となった状態を、ガス検知器70の収容完了として判定する。
【0058】
そして、制御部2は、夫々のガス容器接続部C1a,C2aにガス容器C1,C2が接続され、且つ、ガス検知器70が収容部5に収容された状態で、ディスプレイ3に初期画面(
図6(a)参照)を表示し、その初期画面上の「バンプテスト」ボタンが使用者によって操作された際に、点検処理方法の実行を開始する。尚、このボタン操作を省略すべく、ガス検知器70が収容部5に収容されたことを検知した場合に自動的に点検処理方法の実行を開始するように構成しても構わない。
そして、点検処理方法では、
図4に示すように、適合性確認処理(#S1)及び所定のグルーピング処理(#S2)を順に実行して、点検対象のガス検知器70を決定(#S3)した上で、当該決定したガス検知器70に対して点検処理(#S4)を実行する。また、この点検処理(#S4)の実行後には、クリーニング処理(#S6)を実行する。また、4つの収容部5に対してガス検知器70が複数収容されている場合には、そのガス検知器70の複数を点検対象として、当該点検対象とした複数のガス検知器70に対して、直列的に点検処理(#S4)を順次実行する。尚、本実施形態では、点検処理方法を構成する各種処理は直列的に順次実行するものとするが、それの処理順序を変更したり、複数の処理の少なくとも一部を重複させたり、別の処理を間に介在させるなどのように、適宜可能な範囲内で実行手順を変更しても構わない。
以下、これら点検処理方法を構成する各処理の詳細について順に説明を加える。
【0059】
〔適合性確認処理〕
図4に示す適合性確認処理(#S1)では、点検処理(#S4)の実行前に、アダプタ情報取得手段2cで取得したアダプタ情報とガス検知器情報取得手段2bで取得したガス検知器情報との適合性を確認する。
即ち、この適合性確認処理(#S1)では、アダプタ50の装着時に予め記憶部4に記憶した各収容部5のアダプタ情報から生成された点検用ガス供給可能情報を参照し、収容部5に収容されたガス検知器70のガス検知器情報が、同じ収容部5に関連付けられた点検用ガス供給可能情報に適合するか否かを比較する形態で、アダプタ50に対して適合したガス検知器70がセットされたか否かを確認する。
【0060】
具体的に、上記ガス検知器情報には、上述したように、ガス検知器70の検知成分を識別可能な型式などのガス検知器側検知成分情報が含まれている。一方、上記アダプタ情報には、アダプタ50に収容可能な特定のガス検知器70の検知成分を識別可能な型式などのアダプタ側検知成分情報が含まれている。そして、点検用ガス供給可能情報は、そのアダプタ50に収容されたガス検知器70に対して供給可能な点検用ガスに関する情報として予めアダプタ情報等から生成され記憶されている。
【0061】
そして、適合性確認処理(#S1)において、点検処理システム100において供給可能な点検用ガス、言い換えれば装着されたガス容器C1,C2に貯留されている原料ガスG0に適合する検知成分を検知対象とするガス検知器70がアダプタ50に収容されたか否かを確認する形態で、上記ガス検知器側検知成分情報と上記点検用ガス供給可能情報との適合性が確認される。
【0062】
また、複数の検知成分を検知対象とする複数成分用のガス検知器70を点検対象とする場合には、そのガス検知器70は主検知成分を検知対象とする主検知モードで作動させた状態でアダプタ50に収容される。そして、その複数成分用のガス検知器70がアダプタ50に収容された場合には、ガス検知器70の少なくとも主検知成分に対応する点検用ガスを当該ガス検知器70に対して供給可能であるか否かを判定する形態で、アダプタ50に対して適合したガス検知器70がセットされたか否かを確認する上記適合性確認処理(#S1)が実行される。尚、詳細は後述するが、アダプタ50が複数成分用である場合には、適合性確認処理(#S1)において、ガス検知器70の副検知成分に対応する点検用ガスを当該ガス検知器70に対して供給可能であるか否かについても判定される。
【0063】
尚、この適合性確認処理(#S1)では、点検対象のガス検知器70が複数成分用であるか否か、またそのガス検知器70がセットされたアダプタ50が複数成分用であるか否かによって、適合性確認処理(#S1)の実行形態が異なる。以下、各ケースの確認基準の例について説明を加える。
【0064】
(ケース1:複数成分用のガス検知器70が複数成分用のアダプタ50にセットされた場合)
この場合には、ガス検知器70の主検知成分と副検知成分の両方について、当該検知成分に対応する点検用ガスを当該ガス検知器70に対して供給可能であるか否かを判定する形態で、上記適合性確認処理(#S1)が実行される。
そして、両方の検知成分に対応する点検ガスを供給可能である場合には、アダプタ50に対して適合したガス検知器70がセットされたと判定し、一方、少なくとも一方の検知成分に対応する点検ガスを供給不可である場合には、アダプタ50に対して不適合のガス検知器70がセットされたと判定する。
尚、主検知成分及び副検知成分の両方に対応する点検ガスを供給可能である場合であっても、ガス検知器70とアダプタ50との間で、型式等が異なって、例えば主検知成分と副検知成分とが逆である場合には、アダプタ50に対して不適合のガス検知器70がセットされたと判定することができる。
尚、このケースでは、ガス検知器70の主検知成分と副検知成分の両方について判定するが、例えば、ガス検知器70の主検知成分に対応する点検用ガスを当該ガス検知器70に対して供給可能であれば、副検知成分については供給不可であったとしても、アダプタ50に対して適合したガス検知器70がセットされたと判定し、主検知成分に対応する点検ガスを利用した点検処理のみを実行するように構成しても構わない。
【0065】
(ケース2:単一成分用のアダプタ50に複数成分用のガス検知器70がセットされた場合)
この場合には、ガス検知器70の主検知成分に対応する点検用ガスを当該ガス検知器70に対して供給可能であるか否かを判定する形態で、上記適合性確認処理(#S1)が実行される。
そして、主検知成分に対応する点検ガスを供給可能である場合には、副検知成分については供給不可であったとしても、アダプタ50に対して適合したガス検知器70がセットされたと判定する。
【0066】
(ケース3:複数成分用のアダプタ50に単一成分用のガス検知器70がセットされた場合)
この場合には、例え上記ガス検知器側検知成分情報と上記点検用ガス供給可能情報とが一部適合していたとしても、不適合と判定する。
【0067】
そして、上記適合性確認処理(#S1)において、アダプタ50に対して不適合のガス検知器70がセットされたと判定した場合、即ち、アダプタ50に収容されたガス検知器70が原料ガスG0に適合する検知成分を検知対象とするものではない、又は、ガス検知器70が複数成分用である場合にはそのガス検知器70に対して主検知成分に対応する点検用ガスを供給できないと判定した場合には、点検処理(#S4)の実行を禁止して使用者にその旨を通知する。逆に、アダプタ50に対して適合したガス検知器70がセットされたと判定した場合には、次のグルーピング処理(#S2)に進む。
このような適合性確認処理(#S1)を実行することで、例えばアダプタ50に対しそれに適合しないガス検知器70がセットされた状態で後の点検処理(#S4)が実行されることが防止される。よって、このようなガス検知器70とアダプタ50との組み合わせが不適合であることに起因する点検用ガスG0,G1の漏洩や誤った点検結果を得るという問題が回避される。
【0068】
〔グルーピング処理〕
図4に示すグルーピング処理(#S2)では、4つの収容部5に収容されたガス検知器70の複数を点検対象として、当該点検対象とした複数のガス検知器70の夫々に対して、当該ガス検知器70に供給する点検用ガスに応じてグループ分けを行う。更に、このグルーピング処理(#S2)では、点検用ガスに関する種々の情報をグループ分けの指標とすることができるが、本実施形態では、ガス検知器70に供給する点検用ガスの組成や濃度をグループ分けの指標としている。
【0069】
このようなグルーピング処理(#S2)を実行し、後の点検処理(#S4)の実行後に、同じグループに属する次の点検対象のガス検知器70が存在するか否かを確認する(#S5)。そして、同じグループに属する次の点検対象のガス検知器70が存在する場合には、そのガス検知器70に対する点検処理(#S4)を優先して実行し、一方、存在しない場合には、後述するクリーニング処理(#S6)を実行した上で、別のグループに属する点検対象のガス検知器70が存在するか否かを確認し(#S7)、その別のグループに属するガス検知器70に対する点検処理(#S4)に移行する。
そして、このようにグルーピング処理(#S2)を実行して、当該グループ毎に順次点検処理(#S4)を実行することで、点検対象の切り替えに伴う点検用ガスの組成や濃度の変更が簡素化されている。
【0070】
〔点検処理〕
図4に示す点検処理(#S4)の詳細な処理フローを
図5に示す。
図5に示すように、この点検処理では、点検対象のガス検知器70に対して、作業者確認処理(#S10)、初期確認処理(#S12)、閉塞警報確認処理(#S13)、吸引流量確認処理(#S14)、及びガス警報確認処理(#S15)を順に実行する。また、ガス警報確認処理の実行前、具体的には初期確認処理(#S12)〜吸引流量確認処理(#S14)の実行に並行して、濃度安定化処理(#S11)を実行する。また、閉塞警報確認処理(#S13)、吸引流量確認処理(#S14)、及びガス警報確認処理(#S15)の全てにおいて異常がないと判断された場合には、総合判断として正常である旨を表示し(#S16)、校正処理(#S17)を実行した上で、点検処理(
図4の#S4)を終了し、何れかにおいて異常があると判断された場合には、総合判断として異常である旨を表示した上で(#S18)、点検処理(
図4の#S4)を終了する。尚、校正処理(#S17)は、作業者により適宜実行するか否かを設定することができる。
以下、これら点検処理を構成する各種処理の詳細について説明を加える。
【0071】
(作業者確認処理)
作業者確認処理(#S10)では、ディスプレイ3に作業者確認画面(
図6(b)参照)を表示する。この作業者確認画面には、作業者が目視等で確認すべき点検項目が表示されており、作業者は、この表示に沿ってガス検知器70の目視等による点検を行い、問題がない場合には、同画面に表示されている「確認完了」ボタンを操作する。その「確認完了」ボタンが操作されると、この作業者確認処理(#S10)を終了し、ディスプレイ3の作業者確認画面(
図6(b)参照)をバンプテスト画面(
図6(c)参照)に遷移させると共に、次の初期確認処理(#S12)の実行を開始する。
【0072】
(初期確認処理)
初期確認処理(#S12)での各種補機の作動状態及びガスの流れ状態を
図7に示す。
この初期確認処理(#S12)では、オートゼロ設定と電池残量確認を行う。
オートゼロ設定では、ガス検知器70のガス導入部72が接続された給気用継手5aを、開放部O1に開放させるよう、三方弁V1の切替状態を設定する。すると、ガス検知器70は、ガス導入部72から開放部O1を介して大気OAを吸引し、当該吸引した大気OAをセンサ部76に供給する状態となる。この状態で、ガス検知器70側の制御部78は、センサ部76の出力をゼロに設定し、当該設定が完了するとガス検知器70側の制御部78からその旨を受信する。更に、一方、電池残量確認では、ガス検知器70側の電池残量を、同ガス検知器70の制御部78から受信する。
そして、オートゼロ設定と電池残量確認とが完了すると、上記ゼロ設定を行った旨と電池残量とをディスプレイ3に表示したバンプテスト画面(
図6(c)参照)上に表示した上で、この初期確認処理(#S12)を終了する。
【0073】
(閉塞警報確認処理)
閉塞警報確認処理(#S13)での各種補機の作動状態及びガスの流れ状態を
図8に示す。この閉塞警報確認処理(#S13)では、ガス検知器70においてガス導入部72の閉塞時に所定の閉塞警報を出力する閉塞警報機能の異常の有無を確認する。
即ち、閉塞警報確認処理(#S13)では、ガス検知器70のガス導入部72に給気用継手5aが接続された状態で、給気用継手5aからのガスの流出を遮断するように、給気用継手5aに通じる三方弁V1,V3,V4,V5の切替状態を設定する。すると、ガス検知器70のガス導入部72の状態は擬似的な閉塞状態となり、その際のガス検知器70の閉塞警報機能による閉塞警報の出力の有無をガス検知器70側の制御部78との通信により確認する。
【0074】
そして、給気用継手5aからのガス流出の遮断に伴って閉塞警報が出力された場合には、ガス検知器70の閉塞警報機能が正常に作動していると判断する。一方、給気用継手5aからのガス流出の遮断に伴って閉塞警報が出力されなかった場合には、ガス検知器70の閉塞警報機能が正常に作動していないと判断する。また、このように閉塞警報機能に異常があるガス検知器70については、ガス吸引流量が適正流量範囲から乖離している吸引流量異常を有する以前に、そもそも吸引流量が略ゼロになる閉塞異常を有する可能性もあると判断できる。
そして、ガス検知器70における閉塞警報機能の異常の有無をディスプレイ3に表示したバンプテスト画面(
図6(c)参照)上に表示した上で、この閉塞警報確認処理(#S13)を終了する。
【0075】
また、閉塞警報確認処理(#S13)を終了するにあたり、閉塞警報機能に異常を有さないガス検知器70に対してのみ、次の吸引流量確認処理(#S14)を実行する。一方、閉塞警報機能に異常を有すると判断した場合には、そのガス検知器70に対するガス警報確認処理(#S15)を含む以降の処理の無駄な実施を回避するべく、総合判断として異常である旨を表示した上で(#S18)、点検処理(
図4の#S4)を終了することで、当該点検処理の合理化を図る。
【0076】
(吸引流量確認処理)
吸引流量確認処理(#S14)での各種補機の作動状態及びガスの流れ状態を
図9に示す。この吸引流量確認処理(#S14)では、ガス検知器70のガス導入部72からのガス吸引流量が適正流量範囲から乖離している吸引流量異常の有無を確認する。
即ち、吸引流量確認処理(#S14)では、ガス検知器70のガス導入部72に給気用継手5aを接続した状態で、三方弁V1、及び三方弁V3の切替状態を設定して、開放部O2に通じる大気開放経路を介して当該給気用継手5aを大気開放させる。すると、ガス検知器70は、ガス導入部72から当該大気開放経路を通じて大気OAを吸引することになるので、この大気開放経路に設けられた流量計Mf1で計測されたガス流量を、ガス検知器70のガス吸引量として取得して、ガス検知器70において適正なガス吸引流量を確保できない吸引流量異常の有無を把握する。
そして、ガス検知器70の吸引流量異常の有無をディスプレイ3に表示したバンプテスト画面(
図6(c)参照)上に表示した上で、この吸引流量確認処理(#S14)を終了する。
【0077】
また、この吸引流量異常確認処理(#S14)を終了するにあたり、吸引流量異常を有さないガス検知器70に対してのみ、次のガス警報確認処理(#S15)を実行する。一方、吸引流量異常を有すると判断した場合には、そのガス検知器70に対するガス警報確認処理(#S15)を含む以降の処理の無駄な実施を回避するべく、総合判断として異常である旨を表示した上で(#S18)、点検処理(
図4の#S4)を終了することで、当該点検処理の合理化を図る。
【0078】
(濃度安定化処理)
濃度安定化処理(#S11)での各種補機の作動状態及びガスの流れ状態を
図8〜10に示す。この濃度安定化処理(#S11)は、後のガス警報確認処理(#S15)の実行当初から流量や濃度が安定した点検用ガスとしての希釈ガスG1をガス検知器70のガス導入部72に供給して正確な点検結果を得るために、当該警報確認処理(#S15)の実行前の閉塞警報確認処理(#S13)又は吸引流量確認処理(#S14)の実行時に実行する処理であり、具体的には初期確認処理(#S12)〜吸引流量確認処理(#S14)の実行に並行して実行し(
図8,9参照)、更には、吸引流量確認処理(#S14)の実行後においても、希釈ガスG1の流量及び濃度が安定するまでは、警報確認処理(#S15)の実行開始を待機した状態で実行する(
図10参照)。
【0079】
即ち、濃度安定化処理(#S11)では、前述した希釈処理手段6による希釈処理で生成された点検用ガスとしての希釈ガスG1を外部に排気して、希釈ガスG1の濃度を安定化させる。
具体的には、流量調整弁V7及び二方弁V10を開弁すると共に三方弁V8の切替状態を設定し、更には減圧段数調整手段2eにより三方弁V11の切替状態を設定して減圧段数を少ない側の1段に設定することで、ガス容器C2から取り出した原料ガスG0(本実施形態ではガス容器C2に貯留された原料ガスG0を利用するものとするが、別のガス容器C1のものを利用しても構わない。)を、上段圧力レギュレータR21で圧力を安定化させた上でバイパス路BL等を介して流量計Mf2に通流させて、合流部B1に供給する。同時に、ポンプP1を作動させ、流量調整弁V12を開弁させると共に三方弁V13,V14の切替状態を設定することで、開放部O3から取り込んだ大気OAを、フィルタF3及び流量計Mf3に通流させて合流部B1に供給する。
このことで、合流部B1では、流量計Mf2が設けられたガス経路6bに通流された原料ガスG0が、流量計Mf3が設けられた大気供給経路6aに通流された大気OAにより希釈される所謂希釈処理が実行されて、希釈ガスG1が生成される。
【0080】
また、合流部B1に供給される原料ガスG0の流量は流量調整弁V7の開度調整により制御されており、一方、合流部B1に供給される大気OAの流量は流量調整弁V12の開度調整により制御されている。そして、これら制御により、希釈ガスG1の流量及び濃度が所望の流量及び濃度に調整される。
そして、このような希釈処理において、ガス容器C2の容量をできるだけ小さいもので済むように、原料ガスG0の希釈割合に応じて設定される原料ガスG0の設定流量は、同希釈割合に応じて設定される大気OAの設定流量よりも小さいものとされている。
そして、この濃度安定化処理(#S11)では、三方弁V4,V5の切替状態を設定することで、合流部B1で生成された希釈ガスG1は、三方弁V4,V5を介して開放部O4に供給され、当該開放部O4から外部に排気される。即ち、希釈ガスG1の供給先は、ガス検知器70側の給気用継手5aから外部の開放部O4に切り替えて当該希釈ガスG1を排気可能に構成されている。
【0081】
また、この濃度安定化処理(#S11)では、希釈ガスG1は比較的小流量の原料ガスG0を大気で希釈したものとなるが、減圧段数調整手段2eにより減圧段数が少ない側の1段に設定されるので、圧力レギュレータR21のロックアップやチャタリングが回避されて、ガス容器C1から確実に原料ガスG0が取り出されることになる。
【0082】
この濃度安定化処理(#S11)では、ポンプP2を作動させながら、二方弁V2及びV6を開弁することで、アダプタ50の開口部59から取り込んだ周辺空気を排気EAとして開放部O4から外部に排出する状態とされる。即ち、開放部O4を介して外部に排気される希釈ガスG1は、アダプタ50の開口部59から取り込んだ周辺空気により希釈されたものとなり、希釈ガスG1を高濃度のまま外部に排気することが回避されている。
【0083】
更に、前述した希釈処理の実行開始時、即ちこの濃度安定化処理(#S11)の実行開始時において、一時的に、流量調整弁V7の開度が増加されて、原料ガスG0の流量を、同原料ガスG0の希釈割合に応じた設定流量よりも多く設定する。このことで、合流部B1で生成される希釈ガスG1の濃度が早期に上昇して適切な濃度に到達することになり、結果、警報確認処理(#S15)の実行開始を待機した状態での濃度安定化処理(#S11)の実行時間をできるだけ短いものとすることができる。
【0084】
更に、
図10に示すように、ガス警報確認処理(#S15)の実行開始を待機した状態での濃度安定化処理(#S11)を実行する間は、前述した初期確認処理(#S12)と同様に、ガス検知器70のガス導入部72が接続された給気用継手5aを開放部O1に開放させることで、ガス検知器70は、ガス導入部72から開放部O1を介して大気OAを吸引するようにする。
【0085】
(ガス警報確認処理(希釈処理))
希釈処理を行う場合のガス警報確認処理(#S15)での各種補機の作動状態及びガスの流れ状態を
図11に示す。このガス警報確認処理(#S15)では、ガス検知器70のガス導入部72に対して、ガス供給部である分岐部B2及び給気用継手5aを介して希釈処理により生成された点検ガスとしての希釈ガスG1を供給して、ガス検知器70におけるガス警報機能の異常の有無を確認する。
尚、このガス警報確認処理(#S15)では、希釈処理により乾燥処理が施されていない大気OAで希釈された希釈ガスG1がガス検知器70に供給されるため、ガス検知器70のセンサ部76は、過剰に乾燥することなく、適度に湿気を含んだ通常の大気OAと同程度の状態に維持されて、通常使用時と同条件下で作動することになる。
【0086】
即ち、
図11に示すガス警報確認処理(#S15)では、
図10の濃度安定化処理(#S11)の状態から、三方弁V1,V4,V5の切替状態を設定することで、三方弁V4に供給された希釈ガスG1を、ガス供給部としての分岐部B2及び給気用継手5aを介して、ガス検知器70のガス導入部72に供給し、ガス検知器70に当該希釈ガスG1を吸引させる。すると、ガス検知器70は検知成分を含む希釈ガスG1がガス導入部72から導入されることになり、その際にガス検知器70のガス警報機能が正常に作動してガス警報を出力するか否かをガス検知器70側の制御部78との通信により確認して、ガス検知器70におけるガス警報機能の異常の有無を確認する。
そして、ガス検知器70におけるガス警報機能の異常の有無をディスプレイ3に表示したバンプテスト画面(
図6(c)参照)上に表示した上で、この警報確認処理(#S15)を終了する。
【0087】
また、アダプタ50に収容されたガス検知器70が複数成分用である場合には、先ずは、主検知モードで作動させた状態でアダプタ50にセットされた複数成分用のガス検知器70に対して、当該主検知モードでの検知対象である主検知成分に対応する原料ガスG0で生成した希釈ガスG1を用いてガス警報確認処理(#S15)を実行する。そして、当該ガス警報確認処理(#S15)の実行後に、ガス検知器70のモード切替操作を行ってガス検知器70の検知モードを副検知モードに切り替えた上で、当該副検知モードでの検知対象である副検知成分に対応する原料ガスG0で生成した希釈ガスG1を用いてガス警報確認処理(#S15)を実行する。
【0088】
更に、この
図11に示すガス警報確認処理(#S15)では、ガス検知器70のガス吸引流量、即ちガス検知器70側の吸引ポンプ75の吸引流量よりも多い希釈ガスG1がガス検知器70のガス導入部72に通じるガス供給部である分岐部B2に供給する。すると、ガス検知器70のガス導入部72に吸引されなかった希釈ガスG1が存在することになるが、その希釈ガスG1を、三方弁V5を介して開放部O4から外部に排出する。このことで、ガス検知器70は、不足することなく希釈ガスG1を吸引し、更にはその吸引流量をシステム本体1側の希釈ガスG1の供給流量に関係なく適正な吸引流量に維持して、通常使用時と同条件下で作動することになる。
【0089】
また、ガス警報確認処理(#S15)を終了するにあたり、ガス警報異常を有さないガス検知器70に対しては、前の閉塞警報確認処理(#S13)及び吸引流量確認処理(#S14)においても正常であったことから、総合判断として正常である旨を表示した上で
(#S16)、点検処理(
図4の#S4)を終了する。一方、ガス警報異常を有すると判断した場合には、総合判断として異常である旨を表示した上で(#S18)、点検処理(
図4の#S4)を終了する。
【0090】
(校正処理(非希釈処理))
校正処理(#S17)での各種補機の作動状態及びガスの流れ状態を
図13に示す。
尚、上述した
図11に示すガス警報確認処理(#S15)では、ガス容器C2から取り出した原料ガスG0を大気OAで希釈して希釈ガスG1を生成する希釈処理を実行する場合のものであるが、校正処理(#S17)では、希釈処理に代えて、希釈処理手段6を非作動状態として、ガス容器C2から取り出した原料ガスG0をそのまま希釈することなく点検用ガスとする非希釈処理を実行する。
この校正処理(#S17)では、ガス検知器70のガス導入部72に対して、ガス容器C2から取り出した原料ガスG0を点検用ガスとして供給して、ガス検知器70の感度の校正を行う。
尚、この校正処理(#S17)では、濃度が安定した原料ガスG0が希釈されることなくそのままガス検知器70に供給され、その際のガス検知器70のセンサ部76の出力信号が、原料ガスG0の濃度に合ったものとなるように、当該センサ部76の感度が正確に校正される。
【0091】
以下に、その詳細について説明を加える。
非希釈処理を行う場合の校正処理(#S17)での各種補機の作動状態及びガスの流れ状態を
図13に示す。この校正処理(#S17)では、ガス検知器70のガス導入部72に対して、ガス供給部である分岐部B2及び給気用継手5aを介してガス容器C1から取り出した原料ガスG0を供給して、ガス検知器70の感度を校正する。
【0092】
即ち、
図13に示す校正処理(#S17)では、ポンプP1の作動を停止すると共に三方弁V14を閉弁して開放部O3から大気OAの取り込みを停止する。同時に、二方弁V10を開弁すると共に三方弁V8の切替状態を設定し、更には減圧段数調整手段2eにより三方弁V11の切替状態を設定して減圧段数を多い側の2段に設定することで、ガス容器C2から取り出した原料ガスG0を、上段圧力レギュレータR21及び下段圧力レギュレータR22で圧力を安定化させた上で、上述した希釈処理において大気OAが通流する流量計Mf3側の大気供給経路6aに通流させて、合流部B1に供給する。すると、その原料ガスG0が、ガス検知器70のガス導入部72に点検用ガスを供給するガス供給部としての分岐部B2及び給気用継手5aに供給されることになる。
このことで、原料ガスG0をそのまま利用する場合において、当該原料ガスG0の流量の必要流量が比較的大流量になる場合でも、その原料ガスG0を、比較的大流量の大気OAが通流する比較的大流量に対応した大気供給経路6aに通流させ、例えばその原料ガスG0の流量を比較的大流量に対応する流量計Mf3で計測することができる。一方、比較的小流量の原料ガスG0が通流する流量計Mf2側の原料ガス供給経路は、小流量のみに対応する比較的簡単且つ小型なものとして構成されており、例えば流量計Mf2としても比較的小流量に対応するものが利用されている。
【0093】
また、この校正処理(#S17)では、比較的大流量の原料ガスG0をガス検知器70に供給することになるが、減圧段数調整手段2eにより減圧段数が多い側の2段に設定されるので、ガス容器C2から取り出した原料ガスG0の流量安定化が図られている。
【0094】
以上が、
図4に示す点検処理方法における点検処理(#S4)の詳細な処理フローであり、当該点検処理(#S4)の実行後において、同じグループに属する次の点検対象のガス検知器70が存在する場合には(#S5)、その同じグループ内で点検対象とするガス検知器70を変更し、変更後のガス検知器70に対して点検処理(#S4)を実行する。その際、希釈処理で生成した希釈ガスG1を点検ガスとして利用している場合には、同じグループ内での点検対象の変更時において、生成した希釈ガスG1を一時的に三方弁V4,V5を介して開放部O4に供給して排気する形態で、希釈処理を継続する。このことで、点検対象の変更時の濃度安定化処理などが割愛され、当該変更に必要な時間が短縮される。
【0095】
同じグループに属する次の点検対象のガス検知器70の点検処理に移行する際には、所定の第1クリーニング処理(#S8)を実行し、また、同じグループ内のガス検知器70の点検処理が全て終了した際には、所定の第2クリーニング処理(#S9)を実行する。
【0096】
〔クリーニング処理〕
同じグループに属する次の点検対象のガス検知器70の点検処理に移行する際に実行する第1クリーニング処理(#S8)では、ガス検知器70のガス導入部72に大気OAを導入させて当該ガス検知器70のクリーニング(以下「ガス検知器クリーニング」と呼ぶ。)を行う。
一方、同じグループ内のガス検知器70の点検処理が全て終了した際に実行する第2クリーニング処理(#S6)では、ガス検知器クリーニングに加えて、希釈ガスG1又はその原料となる原料ガスG0が通流するガス経路に大気OAを通流させて当該ガス経路のクリーニング(以下「ガス経路クリーニング」と呼ぶ。)を行う。
尚、
図12には、ガス経路クリーニングとガス検知器クリーニングとを同時に行う際の各種補機の作動状態及びガスの流れ状態を示す。
【0097】
(ガス経路クリーニング)
具体的に、ガス経路クリーニングでは、
図11のガス警報確認処理(#S15)や校正処理(#S17)の状態から、二方弁V10を閉弁することで、ガス容器C2からの原料ガスG0の供給を停止すると共に、三方弁V8,V14の切替状態を設定して、開放部O3から取り込んだ大気OAを、ガス警報確認処理(#S15)等で原料ガスG0が通流していた流量計Mf2側のガス経路6bに通流させる。このことで、当該ガス経路6bに残留する原料ガスG0が大気OAに置換されて、当該ガス経路6bがクリーニングされることになる。
【0098】
更に、ガス経路6bを通流した後の大気OAは、ガス警報確認処理(#S15)等で希釈ガスG1や原料ガスG0が通流していた合流部B1から分岐部B2までの点検用ガス経路6cを通流する。このことで、当該点検用ガス経路6cに残留する希釈ガスG1が大気にOAに置換されて、当該点検用ガス経路6cがクリーニングされることになる。
そして、このようなガス経路クリーニングを実行することにより、次の点検対象のガス検知器70に対する点検処理において、ガス経路に残留する希釈ガスG1や原料ガスG0に起因する誤点検が回避される。
このガス経路クリーニングにおいて、ガス経路6b及び点検用ガス経路6cを通流後に分岐部B2に供給された大気OAは、三方弁V1,V5の切替状態を設定することで、開放部O4を介して外部に排気される。
【0099】
尚、
図13に示す非希釈処理を行う場合の校正処理(#S17)の後に実行されるガス経路クリーニングでは、当該校正処理(#S17)で原料ガスG0が通流した経路に大気OAを通流させることが望ましい。即ち、三方弁V14,V8,V13の切替状態を設定することで、開放部O3から取り込んだ大気OAを、大気供給経路6aに通流させる。このことで、非希釈処理を行う場合の校正処理(#S17)で原料ガスG0が通流した経路に残留する原料ガスG0が大気OAに置換されて、当該経路がクリーニングされることになる。尚、このクリーニング処理において、開放部O3から取り込んだ大気OAを、三方弁V13からガス経路6b側に供給すると共に、その大気OAを三方弁V8から三方弁12側に戻しても構わない。
【0100】
更に、ガス経路クリーニングにおいて、同時に実行されるガス検知器クリーニングが終了すると、三方弁V1の切り替え状態を設定して、分岐部B2にある大気OAを、三方弁V1側に供給する。すると、分岐部B2から三方弁V1までの経路に残留する希釈ガスG1や原料ガスG0が大気OAに置換されて、当該経路がクリーニングされることになる。
【0101】
(ガス検知器クリーニング)
一方、ガス検知器クリーニングでは、前述した初期確認処理(#S12)と同様に、ガス検知器70のガス導入部72が接続された給気用継手5aを開放部O1に開放させることで、ガス検知器70のガス導入部72には、開放部O1から取り込んだ大気OA、即ち上記ガス経路を通流したものとは別の新鮮な大気OAが導入される。そして、その大気OAがガス導入部72を介してガス検知器70に導入され、センサ部76を通流する。このことで、ガス検知器70側のガス導入部72やセンサ部76に残留する希釈ガスG1や原料ガスG0が大気OAに置換されて、当該ガス検知器70がクリーニングされることになる。
尚、このガス検知器クリーニングは、ガス検知器70のセンサ部76の出力信号から導入ガス中の検知成分濃度が略ゼロになったと判断したときに終了する。
【0102】
そして、このようなガス検知器クリーニングを実行することにより、かかる点検処理直後のガス検知器70の使用にあたり、ガス導入部72等に残留する点検用ガスG0,G1に起因する誤検知が回避される。
尚、このガス検知器クリーニングにおいて、ガス検知器70の排気部77から排出された排気EAは、開口部59から周辺空気と共に取り込まれ、排気用継手5bを介して開放部O4から外部に排出される。このことで、この排気EAが収容部5側の前面から放出されることが防止されている。更に、この開口部59から吸引した排気EAは、ガス経路クリーニングでガス経路6b及び点検用ガス経路6cを通流後の大気OAとまとめて排出される。このことで、ガス検知器クリーニング及びガス経路クリーニングのための排気経路が簡素化されている。
尚、これら排気EAと大気OAとは別々に外部に排出しても構わない。
【0103】
本実施形態では、ガス経路クリーニング及びガス検知器クリーニングを各別の大気OAで行うように構成したが、例えばガス経路を通流した大気をガス検知器70に導入するなどして、夫々のクリーニングを同じ大気で行うように構成しても構わない。
【0104】
また、本実施形態では、ガス検知器70の状態を点検する点検処理(#S4)として、種々の処理を実行するように構成したが、これらの処理については、適宜省略又は改変しても構わない。