(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、各図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0013】
(実施形態1)
図1〜5は、実施形態1に係るバルーンカテーテル1(医療用長尺体に相当)の各部の構成を示す図である。
【0014】
本実施形態に係るバルーンカテーテル1は、シャフト10を生体管腔Vに挿通させ、シャフト10の先端側に配置されたバルーン20を狭窄部N(病変部)において拡張させることにより、狭窄部Nを押し広げて治療する医療器具として構成している。
【0015】
バルーンカテーテル1は、例えば、冠動脈の狭窄部Nを広げるために使用されるPTCA拡張用バルーンカテーテルとして構成することができる。ただし、バルーンカテーテル1は、例えば、他の血管、胆管、気管、食道、その他消化管、尿道、耳鼻内腔、その他の臓器等の生体器官内に形成された狭窄部Nの治療および改善を目的として使用されるものとして構成することもできる。
【0016】
本明細書では、バルーンカテーテル1において生体管腔Vに挿入する側(バルーン20が配置された側)を先端側と称し、先端側と反対側に位置する手元での操作がなされる側(ハブ30が配置された側)を基端側と称し、バルーン20が延伸する方向をバルーンの軸方向と称する。また、実施形態の説明において、先端部とは、先端(最先端)およびその周辺を含む一定の範囲を意味し、基端部とは、基端(最基端)およびその周辺を含む一定の範囲を意味する。また、本明細書において、「周方向」とは、バルーン20の周方向を意味する。
【0017】
図1(A)、
図2(B)および
図3(A)を参照して概説すれば、実施形態1に係るバルーンカテーテル1は、シャフト10と、シャフト10の先端側に固定されたバルーン20(拡張部材に相当)と、バルーン20の内表面20S1に配置された伸縮部材110と、ハブ30と、を有する。バルーン20は、バルーン20の内表面20S1同士を向い合わせた位置に伸縮部材110を配置することにより、バルーン20の一部を放射方向に突出させた凸部120を備える。伸縮部材110の材料は、バルーン20を拡張した際、バルーン20の材料よりも周方向に伸張する材料で構成されている。以下、各部の構成について詳説する。
【0018】
図1(B)を参照して、シャフト10は、外側シャフト40と、内側シャフト50と、ガイドワイヤポートTと、を有する。
【0019】
外側シャフト40は、先端側シャフト41と、先端側シャフト41の基端側に接続された基端側シャフト42と、を有している。
【0020】
先端側シャフト41および基端側シャフト42は、シャフト10のガイドワイヤポートT付近において内側シャフト50と一体的に接続(融着)している。
【0021】
先端側シャフト41の内腔(図示省略)および基端側シャフト42の内腔(図示省略)は、先端側シャフト41と基端側シャフト42とが接続された状態において、バルーン20の内腔25(
図2(B)参照)に連通する外側シャフト40の内腔45を形成する。
【0022】
外側シャフト40の構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、軟質ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂、ポリウレタンエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー等の各種エラストマー、ポリアミド、結晶性ポリエチレン、結晶性ポリプロピレン等の結晶性プラスチックを用いることができる。
【0023】
内側シャフト50は、外側シャフト40の内腔45に配置される。内側シャフト50は、ガイドワイヤWが挿通可能なガイドワイヤルーメンLを形成する。ガイドワイヤルーメンLの基端側は、ガイドワイヤポートTと連通している。
【0024】
内側シャフト50の構成材料としては、例えば、外側シャフト40と同様の材料を用いることが可能である。
【0025】
ガイドワイヤポートTは、内側シャフト50のガイドワイヤルーメンLに連通する。ガイドワイヤポートTは、内側シャフト50の基端部に形成されている。
【0026】
バルーンカテーテル1は、シャフト10の先端部側寄りにガイドワイヤWが出入り可能なガイドワイヤポートTが形成された、いわゆるラピッドエクスチェンジ型のカテーテルとして構成している。
【0027】
図2(A)および
図2(B)を参照して、バルーン20は、外側シャフト40と内側シャフト50の先端側に固定されている。具体的には、バルーン20の先端部20aは、内側シャフト50の先端部に固定されている。バルーン20の基端部20bは、外側シャフト40の先端部に固定されている。
【0028】
バルーン20は、外側シャフト40の内腔45(拡張ルーメン)を通じて流体(加圧媒体)が注入されることにより、シャフト10の放射方向に拡張する。
【0029】
バルーン20は、先端21aおよび基端21bを有する中間領域21と、中間領域21の先端21aからシャフト10に向かって傾斜する先端側傾斜部22と、中間領域21の基端21bからシャフト10に向かって傾斜する基端側傾斜部23と、を有する。中間領域21は、バルーン20が拡張した状態において、最大外径部を形成し、生体管腔壁と接触する。
【0030】
バルーン20の構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、架橋型エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリスチレンエラストマー、シリコーンゴム、ラテックスゴム等を用いることができる。
【0031】
内側シャフト50には、バルーン20の位置を示す造影マーカー部Cが設けられている。
【0032】
造影マーカー部Cは、例えば、白金、金、銀、イリジウム、チタン、タングステン等の金属、またはこれらの合金等により構成することができる。
【0033】
造影マーカー部Cは、内側シャフト50において、中間領域21に対応する箇所に配置されている。造影マーカー部Cは、バルーン20の中間領域21の先端21a側に配置された先端側マーカーC1と、中間領域21の基端21b側に配置された基端側マーカーC2と、を有する。
【0034】
先端側マーカーC1および基端側マーカーC2は、シャフト10の軸方向において、先端側傾斜部22と中間領域21との境界部および中間領域21と基端側傾斜部23との境界部を示すように配置されている。具体的には、先端側マーカーC1は、先端側マーカーC1の先端側の端面が先端側傾斜部22と中間領域21との境界部に配置されている。また、基端側マーカーC2は、基端側マーカーC2の基端側の端面が中間領域21と基端側傾斜部23との境界部に配置されている。
【0035】
内側シャフト50は、先端側に先端チップ60を備えている。先端チップ60は、先端側に向けて外径が小さくなるテーパー形状を備えている。先端チップ60の内部には、先端チップ60を軸方向に貫通する貫通孔61を形成している。そのため、貫通孔61は、ガイドワイヤルーメンLの一部を形成する。
【0036】
先端チップ60は、例えば、柔軟な樹脂部材で構成することが可能である。ただし、先端チップ60の材質は、内側シャフト50に対して固定することが可能であれば特に限定されない。
【0037】
内側シャフト50は、先端側に先端チップ60を備えることにより、バルーンカテーテル1の先端が生体器官(血管の内壁等)に接触した際に、生体器官に損傷等が生じるのを好適に防止することができる。
【0038】
図1(A)を参照して、ハブ30は、流体(加圧媒体)を供給するためのインデフレーター等の供給装置(図示省略)と液密・気密に接続可能なポート31を有している。ハブ30のポート31は、例えば、流体チューブ等が接続・分離可能に構成された公知のルアーテーパー等によって構成することができる。
【0039】
シャフト10は、外側シャフト40の内腔45がハブ30内の流路と連通した状態で、ハブ30と接続されている。バルーン20の拡張に使用される流体(例えば、造影剤や生理食塩水)は、ハブ30のポート31を介して外側シャフト40の内腔45へ供給される。
【0040】
次に、バルーン20および伸縮部材110について詳説する。
【0041】
図3(A)を参照して、バルーン20は、バルーン20の内表面20S1同士を向い合わせた位置に伸縮部材110を配置することにより、バルーン20の一部を放射方向に突出させた凸部120を備える。
【0042】
伸縮部材110の材料は、バルーン20を拡張した際、バルーン20の材料よりも周方向に伸張する材料で構成されている。伸縮部材110の材料は特に限定されないが、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴムのような各種ゴム材料や、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、オレフィン系、スチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、ウレタンアクリレート等のUV硬化型接着剤あるいはそれらの混合物等を使用できる。
【0043】
バルーン20は、第1内圧P1で拡張した際、バルーン20の内部に第1内腔25aを形成しつつ、バルーン20の外表面20S2に凸部120を形成する。第1内圧P1は、例えば、バルーン20のノミナル圧である。
【0044】
凸部120は、バルーン20が第1内圧P1で拡張した際、周方向に複数個形成されている。凸部120は、バルーン20が第1内圧P1で拡張した際、周方向に等間隔に離間して形成された第1凸部120a、第2凸部120bおよび第3凸部120cを有する。
【0045】
図4(A)および
図4(B)を参照して、凸部120は、バルーン20が第1内圧P1よりも高い第2内圧P2で拡張した際、伸縮部材110が周方向に伸張することにより小さくなる。具体的には、
図4(B)のように、凸部120は、バルーン20が第1内圧P1よりも高い第2内圧P2で拡張した際に消滅することが好ましい。そして、バルーン20が第2内圧P2で拡張した際、バルーン20の内部には、第1内腔25aよりも大きい第2内腔25bが形成される。
【0046】
伸縮部材110は、バルーン20が第2内圧P2で拡張した際、周方向に伸張する。バルーン20が第2内圧P2で拡張した際、伸縮部材110によって付着されたバルーン20の内表面20S1同士は離間する。
【0047】
第2内圧P2は、第1内圧P1よりも高い限りにおいて特に限定されないが、例えば、第1内圧P1と第2内圧P2との比を1.0:1.2〜2.0とし得る。第2内腔25bの大きさは、第1内腔25aの大きさよりも大きい限りにおいて限定されないが、例えば、第1内腔25aの内径D1と第2内腔25bの内径D2との比を1.00:1.05〜1.50とし得る。
【0048】
バルーン20は、第2内圧P2よりも低い第3内圧P3に減圧した際、周方向における伸縮部材110の伸張が解除されることにより、第2内腔25bよりも小さい第3内腔25cを形成しつつ、バルーン20の外表面20S2に再び凸部120を形成する。第2内圧P2よりも低い第3内圧P3に減圧した際のバルーン20の形状は、第1内圧P1で拡張されたバルーン20の形状と実質的に同じである。第3内圧P3は、第2内圧P2よりも小さい限りにおいて特に限定されず、例えば、第1内圧P1と同じノミナル圧とし得る。第3内腔25cの内径は、第3内圧P3が第1内圧P1と同じノミナル圧である場合、第1内腔25aの内径D1と略等しい。
【0049】
図3(B)を参照して、凸部120は、内側シャフト50の放射方向におけるバルーン20の中心Mからバルーン20の外表面20S2までの距離が最大となる頂点121を有する。第1内圧P1で拡張した際にバルーン20の外表面20S2に形成される凸部120の突出量Hは、特に限定されないが、例えば、0.2〜1.0mm程度とし得る。第1内圧P1で拡張した際にバルーン20の外表面20S2に形成される凸部120の幅B1は、特に限定されないが、例えば、0.2〜1.0mm程度とし得る。
【0050】
伸縮部材110は、伸縮部材110の内部にバルーン20および伸縮部材110よりも剛性が高い剛性部材130を有する。
【0051】
剛性部材130の材料は、バルーン20および伸縮部材110よりも剛性が高い限りにおいて特に限定されず、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、銅、銅系合金、タンタル、コバルト合金などの金属類を使用できる。また、剛性部材130の材料として、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン12)などの樹脂を使用してもよい。
【0052】
剛性部材130は、バルーン20の内表面20S1に固定されている。剛性部材130が金属材料から構成されている場合、剛性部材130は、例えば、バルーン20の内表面20S1に公知の接着剤等により固定できる。また、剛性部材130が樹脂材料から構成されている場合、剛性部材130は、バルーン20の内表面20S1に熱融着等により固定できる。
【0053】
バルーン20の軸方向に垂直な断面における剛性部材130の輪郭形状は特に限定されず、例えば、円形形状や楕円形状とし得る。バルーン20の軸方向に垂直な断面における剛性部材130の輪郭形状が楕円形状の場合、楕円形状の長軸は、凸部120の頂点121とバルーン20の中心Mとを結ぶ直線EL上に配置されるのが好ましい。
【0054】
なお、剛性部材130は、バルーン20が第1内圧P1で拡張した際、凸部120の剛性を高めることが可能であれば、バルーン20の内表面20S1に固定されていなくてもよい。また、剛性部材130は、バルーン20が第1内圧P1で拡張した際、狭窄部Nに押し付けられる凸部120の力が分散せず、かつ、凸部120の剛性を高めることが可能であれば、伸縮部材110の内部に複数個存在していてもよい。
【0055】
伸縮部材110は、バルーン20が第1内圧P1で拡張した際、シャフト10の放射方向に向かって凹んだ伸張開始部140を有する。伸張開始部140は、伸縮部材110においてバルーン20の内腔25に臨む面から、シャフト10の放射方向に向かって凹んでいる。伸張開始部140は、バルーン20の軸方向に垂直な断面において、凸部120の頂点121とバルーン20の中心Mとを結ぶ直線EL上に配置されている。
【0056】
図2(A)および
図2(B)を参照して、凸部120は、中間領域21に形成される。具体的には、凸部120は、第1内圧P1でバルーン20を拡張した際、中間領域21の先端21aから基端21bに向かって連続的に形成される。剛性部材130は、第1内圧P1でバルーン20を拡張した際、中間領域21の先端21aから基端21bに向かって連続的に延びている。
【0057】
図5(A)を参照して、バルーン20は、収縮した状態で、内側シャフト50に巻き付けられた羽根部150を有する。収縮した状態とは、バルーン20の内腔25に内圧を付与しない状態をいう。
【0058】
図5(B)を参照して、羽根部150は、羽根部150の巻き付け方向の端部側に配置された頂点部155を備える。頂点部155は、バルーン20の外表面20S2同士がシャフト10の放射方向で重なるようにシャフト10の放射方向に対して屈曲している。伸縮部材110は、羽根部150の頂点部155の内表面155Sに配置される。羽根部150の頂点部155は、バルーン20が第1内圧P1または第3内圧P3で拡張した際に凸部120を形成する。
【0059】
羽根部150は、バルーン20が収縮した状態において、周方向に複数個形成されている。羽根部150は、バルーン20が収縮した状態において、周方向に等間隔に離間して形成された第1羽根部150a、第2羽根部150bおよび第3羽根部150cを有する。
【0060】
第1羽根部150a、第2羽根部150bおよび第3羽根部150cは、周方向において同じ向きに湾曲している。
【0061】
次に、バルーンカテーテル1の使用方法について説明する。
【0062】
まず、術者は、ガイドワイヤWを生体管腔Vに挿入し、ガイドワイヤWの先端側を狭窄部N(病変部)に通過させ、ガイドワイヤWに沿ってバルーンカテーテル1を生体管腔Vに挿入する。そして、
図6を参照して、術者は、生体管腔Vに挿入されたバルーンカテーテル1を狭窄部Nに送達させ、バルーン20を生体管腔Vの狭窄部Nに配置する。バルーンカテーテル1を狭窄部Nに送達および配置する際、バルーン20は、
図5(A)および(B)に示すように、収縮した状態にある。
【0063】
次に、
図7(A)を参照して、術者は、狭窄部Nにバルーン20を配置した状態で、バルーン20の内腔25に流体を注入することにより、バルーン20を第1内圧P1で拡張させ、バルーン20の外表面20S2に凸部120を形成する。バルーン20の内腔25への流体の注入は、ハブ30のポート31および外側シャフト40の内腔45を介して行う。バルーン20の外表面20S2に凸部120を形成することにより、狭窄部Nに切れ目を入れることができる。
【0064】
次に、
図7(B)および
図7(C)を参照して、術者は、第1内圧P1で拡張しているバルーン20の内腔25に流体を注入することにより、バルーン20を第1内圧P1から第2内圧P2で拡張させ、バルーン20の外表面20S2から凸部120を小さくする又は消滅させる。バルーン20を第2内圧P2で拡張させることにより、術者は、切れ目を入れた狭窄部Nを更に拡張することができる。このとき、バルーン20の外表面20S2の凸部120が小さくなる又はバルーン20の外表面20S2から凸部120が消滅することにより、バルーン20は、狭窄部Nに対して、周方向に沿って均等に拡張圧を付与できる。
【0065】
次に、
図7(D)を参照して、術者は、第2内圧P2で拡張しているバルーン20の内腔25から流体を排出することにより、バルーン20の内圧を、第2内圧P2から第3内圧P3に減圧する。バルーン20の内腔25からの流体の排出は、外側シャフト40の内腔45およびハブ30のポート31を介して行う。
【0066】
次に、術者は、第2内圧P2から第3内圧P3に減圧させたバルーン20の内腔25から流体をさらに排出することにより、バルーン20を収縮させる。術者は、生体管腔Vを介して、収縮させたバルーン20を体外に除去する。
【0067】
なお、術者は、第2内圧P2で拡張しているバルーン20の内腔25から流体を排出することにより、第2内圧P2から第3内圧P3にバルーン20の内圧を減圧する際、バルーン20の内腔25の流体を全て排出することにより、バルーン20を収縮させてもよい。このような場合、術者は、生体管腔Vを介して、収縮させたバルーン20を容易に体外に除去できる。
【0068】
本実施形態に係るバルーンカテーテル1は、バルーン20を第1内圧P1で拡張した際、バルーン20の外表面20S2に凸部120が形成される。これにより、バルーンカテーテル1は、バルーン20を第1内圧P1で拡張することによって、狭窄部Nに切れ目を入れることができる。そして、バルーンカテーテル1は、バルーン20を第1内圧P1から第2内圧P2に拡張した際、バルーン20の外表面20S2の凸部120が小さくなり(バルーン20の外表面20S2の凸部120が消え)、かつ、バルーン20の外径が大きくなる。これにより、バルーンカテーテル1は、1本のバルーンカテーテルを使用し、狭窄部Nに切れ目を入れ、その切れ目を入れた狭窄部Nに対してバルーン20の拡張圧を均等に作用させることができる。従って、バルーンカテーテル1は、狭窄部Nに切れ目を入れることができるとともに、切れ目を入れた狭窄部Nを好適に拡張できる。
【0069】
また、本実施形態に係るバルーンカテーテル1は、バルーン20の内表面S1に伸縮部材110が配置される。伸縮部材110は、バルーン20が第1内圧P1よりも高い第2内圧P2で拡張した際に伸張する。これにより、バルーンカテーテル1は、バルーン20が第2内圧P2で拡張した際、バルーン20の外表面20S2の凸部120が小さくなった状態又は消えた状態であっても、バルーン20の内表面S1に配置された伸縮部材110により、バルーン20の剛性が増加する。そのため、バルーンカテーテル1は、バルーン20が第2内圧P2で拡張した際、切れ目を入れた狭窄部Nに対して、バルーン20の拡張圧をより確実に付与できる。従って、バルーンカテーテル1は、狭窄部Nに切れ目を入れることができるとともに、切れ目を入れた狭窄部Nをより好適に拡張できる。
【0070】
また、本実施形態に係るバルーンカテーテル1によれば、伸縮部材110は、伸縮部材110の内部にバルーン20および伸縮部材110よりも剛性が高い剛性部材130を有する。これにより、凸部120の剛性が向上するから、バルーンカテーテル1は、バルーン20が第1内圧P1で拡張した際、狭窄部Nに対して、より確実に切れ目を入れることができる。
【0071】
また、本実施形態に係るバルーンカテーテル1によれば、剛性部材130は、バルーン20の内表面20S1に固定されている。これにより、バルーンカテーテル1は、バルーン20が第1内圧P1で拡張した際、剛性部材130が移動せず、凸部120において狭窄部Nに接触する箇所の剛性をさらに確実に向上させることができる。そのため、バルーンカテーテル1は、バルーン20が第1内圧P1で拡張した際、凸部120による狭窄部Nへの力の伝達が分散せず、狭窄部Nに対して、さらに確実に切れ目を入れることができる。
【0072】
また、本実施形態に係るバルーンカテーテル1によれば、凸部120は、中間領域21に形成される。中間領域21は、バルーン20が拡張した際に狭窄部Nに接触する領域であるから、中間領域21に凸部120が形成されることにより、バルーンカテーテル1は、バルーン20が第1内圧P1で拡張した際、狭窄部Nに対して、さらに確実に切れ目を入れることができる。
【0073】
また、本実施形態に係るバルーンカテーテル1によれば、凸部120は、第1内圧P1でバルーン20を拡張した際、中間領域21の先端21aから基端21bに向かって連続的に形成される。これにより、バルーンカテーテル1は、バルーン20が第1内圧P1で拡張した際、狭窄部Nに対して、中間領域21の先端21aから基端21bに向かって連続的に切れ目を入れることができる。そのため、バルーンカテーテル1は、バルーン20が第1内圧P1から第2内圧P2で拡張した際、狭窄部Nをより確実に拡張できる。
【0074】
また、本実施形態に係るバルーンカテーテル1によれば、伸縮部材110は、バルーン20が第1内圧P1で拡張した際、シャフト10の放射方向に向かって凹んだ伸張開始部140を有する。これにより、バルーン20が第1内圧P1から第2内圧P2で拡張する際、伸張開始部140を起点にして伸縮部材110がより円滑に伸張するため、伸縮部材110によって付着されたバルーン20の内表面20S1同士がより円滑に離間する。そのため、バルーンカテーテル1は、バルーン20が第1内圧P1から第2内圧P2で拡張する際、凸部120をより円滑に小さくさせる又は消滅させることができるから、切れ目を入れた狭窄部Nに対してバルーン20の拡張圧をより確実に均等に作用させることができる。
【0075】
また、本実施形態に係るバルーンカテーテル1によれば、バルーン20は、バルーン20の内部に内圧を付与しない収縮した状態で、内側シャフト50に巻き付けられた複数の羽根部150a、150b、150cを有する。これにより、バルーンカテーテル1は、内側シャフト50に羽根部150が巻き付くことによって、収縮した状態におけるバルーン20の外径をより小さくできる。そのため、バルーンカテーテル1は、生体管腔Vにおけるバルーン20の通過性を向上させることができる。
【0076】
(変形例)
図8(A)を参照して、バルーン20は、バルーン20の外表面20S2に配置される外表面伸縮部160を有してもよい。外表面伸縮部160の材料は、バルーン20を拡張した際、バルーン20の材料よりも周方向に伸張する材料で構成し得る。外表面伸縮部160は、バルーン20の内部に内圧を付与しない収縮した状態で、第1羽根部150aと第2羽根部150bの間、第2羽根部150bと第3羽根部150cの間、および第3羽根部150cと第1羽根部150aの間に配置される。
【0077】
図8(B)を参照して、外表面伸縮部160は、バルーン20を拡張した際、周方向に伸張する。外表面伸縮部160は、周方向に伸張した際、内部に復元力が生じる。そのため、外表面伸縮部160は、拡張したバルーン20を収縮する際、バルーン20を元の形状に戻そうとする力を生じさせる。
【0078】
外表面伸縮部160を構成する材料は、バルーン20を拡張した際、バルーン20の材料よりも周方向に伸張する材料である限りにおいて特に限定されず、伸縮部材110の材料として上述した材料と同様の材料を使用し得る。
【0079】
本変形例に係るバルーンカテーテルによれば、バルーン20が拡張する際、周方向に外表面伸縮部160が伸張することによって、外表面伸縮部160の内部に復元力が生じる。これにより、本変形例に係るバルーンカテーテルは、バルーン20が拡張した状態から収縮した状態に変化する際に、隣り合う羽根部150の間に配置された外表面伸縮部160の復元力によって、内側シャフト50に羽根部150をより確実に巻き付けることができる。そのため、本変形例に係るバルーンカテーテルは、拡張した状態から再度収縮する際、拡張前のバルーン20の外径に自動的に戻りやすく、バルーン20の外径を拡張前の小さい状態で維持することができる。
【0080】
(実施形態2)
上述した実施形態1では、凸部120の内部は、伸縮部材110によって満たされていた。しかしながら、凸部は、バルーン20の内表面20S1と伸縮部材110の間に空間部を有していてもよい。以下、実施形態2に係るバルーンカテーテルについて説明する。以下の説明において、上述した実施形態1と同じ部材は、上述した実施形態1と同一の符号を付して説明を省略する。
【0081】
図9(A)および(B)を参照して、実施形態2に係るバルーンカテーテルにおいて、凸部220は、バルーン20の内表面20S1と伸縮部材110の間に空間部270を有する。そして、空間部270には、剛性部材130が配置される。なお、「空間部」とは、バルーン20の内表面20S1と伸縮部材110の間に形成された空隙である。すなわち、凸部220の内部には、バルーン20が収縮した状態において、剛性部材130の他に、凸部220の内部を埋める部材(上述した実施形態において凸部120の内部を満たしていた伸縮部材110など)は配置されていない。
【0082】
空間部270の大きさは、バルーン20が収縮した状態において最小となる。バルーン20が収縮した状態における空間部270の大きさは、剛性部材130を配置し得る限りにおいて特に限定されない。バルーン20が収縮した状態における空間部270の大きさは、剛性部材130の大きさと略等しいか、剛性部材130の大きさよりも大きくてよい。
【0083】
剛性部材130は、バルーン20の内表面20S1に固定されている。バルーン20の内表面20S1に剛性部材130を固定する方法は特に限定されず、上述した実施形態1において上述した方法と同様の方法により固定できる。なお、上述した実施形態1と同様に、剛性部材130は、バルーン20が第1内圧P1で拡張した際、凸部120の剛性を高めることが可能であれば、バルーン20の内表面20S1に固定されていなくてもよい。
【0084】
バルーン20は、第1内圧P1で拡張された際、バルーン20の内部に剛性部材130を支える支持部材280を有する。そして、支持部材280は、剛性部材130と伸縮部材110の間に配置される。これにより、支持部材280は、バルーン20が第1内圧P1で拡張され、凸部220が狭窄部Nを押圧する際、バルーン20の内部の方向に剛性部材130が移動することを防止し、凸部220の剛性を高めつつ、凸部220による狭窄部Nへの力の伝達を高めることができる。
【0085】
また、支持部材280は、バルーン20の内表面20S1に固定されている。そして、伸縮部材110は、支持部材280に固定されている。これにより、伸縮部材110は、支持部材280を介して、バルーン20の内表面20S1同士を付着する。そのため、支持部材280は、バルーン20が第1内圧P1で拡張される際、剛性部材130を好適に支えることができる。
【0086】
支持部材280の材料は特に限定されず、例えば、剛性部材130の材料として上述した材料と同様の材料を用いることができる。
【0087】
支持部材280は、バルーン20が第1内圧P1で拡張した際、剛性部材130を支える第1領域280Aと、第1領域280Aよりもバルーン20の中心M側に形成される第2領域280Bとを有する。伸縮部材110は、第2領域280Bに配置される。
【0088】
上述した実施形態1と同様に、バルーン20は、第1内圧P1で拡張した際、バルーン20の内部に第1内腔25aを形成しつつ、バルーン20の外表面20S2に凸部220を形成する。支持部材280の第1領域280Aは、バルーン20が第1内圧P1で拡張した際、剛性部材130に接触する
上述した実施形態1と同様に、
図10(A)および(B)に示すように、凸部220は、バルーン20が第1内圧P1よりも高い第2内圧P2で拡張した際に小さくなる。具体的には、
図10(B)で示すように、凸部220は、バルーン20が第1内圧P1よりも高い第2内圧P2で拡張した際に消滅することが好ましい。そして、バルーン20が第2内圧P2で拡張した際、バルーン20の内部には、第1内腔25aよりも大きい第2内腔25bが形成される。
【0089】
伸縮部材110は、バルーン20が第2内圧P2で拡張した際、周方向に伸張する。バルーン20が第2内圧P2で拡張した際、伸縮部材110によって付着されたバルーン20の内表面20S1同士は離間する。
【0090】
支持部材280の第1領域280Aは、バルーン20が第1内圧P1から第2内圧P2で拡張した際、剛性部材130との接触が解除される。
【0091】
支持部材280は、バルーン20が第2内圧P2で拡張した際に互いに離間する第1支持部材281と第2支持部材282を有する。第1支持部材281と第2支持部材282との間の距離Rは、バルーン20の内圧が高くなるにしたがって大きくなる。バルーン20が第2内圧P2で拡張した状態における第1支持部材281と第2支持部材282との間の距離R(周方向における第1支持部材281と第2支持部材282との間の距離)は、バルーン20の軸方向に垂直な断面であり、かつ、バルーン20が第1内圧P1で拡張した状態において、剛性部材130の幅B2(周方向における剛性部材130の長さ)よりも大きい。
【0092】
上述した実施形態1と同様に、バルーン20は、第2内圧P2よりも低い第3内圧P3に減圧した際、伸縮部材110の周方向への伸張が解除されることにより、第2内腔25bよりも小さい第3内腔25cを形成しつつ、バルーン20の外表面20S2に再び凸部220を形成する。第2内圧P2よりも低い第3内圧P3に減圧した際のバルーン20の形状は、第1内圧P1で拡張したバルーン20の形状に実質的に等しい。
【0093】
上述した実施形態1と同様に、
図11(A)および
図11(B)を参照して、バルーン20は、収縮した状態で、シャフト10に巻き付けられた羽根部150を有する。羽根部150は、羽根部150の巻き付け方向の端部側に配置された頂点部155を備える。頂点部155は、バルーン20の外表面20S2同士がシャフト10の放射方向で重なるようにシャフト10の放射方向に対して屈曲している。伸縮部材110は、羽根部150の頂点部155の内表面155Sに配置される。伸縮部材110は、支持部材280を介して、羽根部150の頂点部155の内表面155Sに固定されている。
【0094】
本実施形態に係るバルーンカテーテルによれば、凸部220は、バルーン20の内表面20S1と伸縮部材110の間に空間部270を有し、空間部270には剛性部材130が配置される。すなわち、本実施形態に係るバルーンカテーテルでは、凸部120の内部に伸縮部材110が埋められていた実施形態1に係るバルーンカテーテル1とは異なり、凸部220の内部に、凸部220の内部を埋める部材が配置されていない。そのため、本実施形態に係るバルーンカテーテルでは、実施形態1にバルーンカテーテル1と比較して、バルーン20が収縮した状態における凸部220の体積が小さくなる。そのため、本実施形態に係るバルーンカテーテルは、バルーン20が収縮した状態において、凸部220の体積が減少した分だけ、収縮した状態におけるバルーン20の外径を小さくできる。このため、本実施形態に係るバルーンカテーテルは、バルーン20が収縮した状態において、生体管腔Vにおけるバルーン20の通過性をより向上させることができる。
【0095】
また、本実施形態に係るバルーンカテーテルによれば、バルーン20は、第1内圧P1で拡張した際、バルーン20の内部に剛性部材130を支える支持部材280を有する。そして、支持部材280は、剛性部材130と伸縮部材110の間に配置される。これにより、本実施形態に係るバルーンカテーテルは、バルーン20が第1内圧P1で拡張した際、支持部材280によって、剛性部材130を狭窄部N側に押し付けることができる。そのため、本実施形態に係るバルーンカテーテルは、バルーン20が第1内圧P1で拡張した際、さらに確実に狭窄部Nに切れ目を入れることができる。
【0096】
また、本実施形態に係るバルーンカテーテルによれば、支持部材280は、バルーン20が第1内圧P1で拡張した際、剛性部材130を支える第1領域280Aと、第1領域280Aよりもバルーン20の中心M側に形成される第2領域280Bとを有する。そして、伸縮部材110は、第2領域280Bに配置される。これにより、本実施形態に係るバルーンカテーテルは、バルーン20が第1内圧P1で拡張した際、伸縮部材110により支持部材280の周方向の移動を抑制した状態で、支持部材280によって、剛性部材130を狭窄部N側にさらに確実に押し付けることができる。そのため、本実施形態に係るバルーンカテーテルは、バルーン20が第1内圧P1で拡張した際、さらに確実に狭窄部Nに切れ目を入れることができる。
【0097】
(その他の改変例)
上述した実施形態1およびその変形例並びに実施形態2では、羽根部150の頂点部155は、シャフト10の放射方向に対して屈曲していた。しかしながら、羽根部150の頂点部155は、
図12に例示するように、シャフト10の放射方向に対して湾曲していてもよい。本改変例に係るバルーンカテーテルによっても、上述した実施形態1およびその変形例並びに実施形態2と同様の作用効果を奏する。
【0098】
以上、実施形態1とその変形例および実施形態2並びにその改変例を通じてバルーンカテーテルを説明したが、本発明は実施形態において説明した構成のみに限定されることはなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
【0099】
例えば、上述した実施形態1とその変形例および実施形態2並びにその改変例では、凸部は、バルーンが第1内圧で拡張した際、周方向において等間隔に離間して形成された第1凸部、第2凸部および第3凸部を有した。しかしながら、凸部は、バルーンが第1内圧で拡張した際、周方向に1つ配置されていてもよいし、周方向に離間して2つまたは4つ以上配置されていてもよい。
【0100】
また、上述した実施形態1とその変形例および実施形態2並びにその改変例では、造影マーカー部の先端側マーカーおよび基端側マーカーは、シャフトにおいて、バルーンの中間領域に対応する箇所に配置された。しかしながら、先端側マーカーは、先端側マーカーの基端側の端面が、バルーンの先端側傾斜領域と中間領域との境界部に配置されるように、バルーンの先端側傾斜領域に対応する箇所に配置されてもよい。また、基端側マーカーは、基端側マーカーの先端側の端面が中間領域と基端側傾斜領域との境界部に配置されるように、バルーンの基端側傾斜領域に対応する箇所に配置されてもよい。なお、造影マーカー部は、1つのマーカーにより構成されてもよい。その場合、1つのマーカーは、シャフトにおいて、バルーンの中間領域の軸方向の略中心位置を示す位置に配置される。