特許第6804375号(P6804375)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6804375
(24)【登録日】2020年12月4日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】ダイカストマシン
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/32 20060101AFI20201214BHJP
【FI】
   B22D17/32 A
   B22D17/32 B
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-76450(P2017-76450)
(22)【出願日】2017年4月7日
(65)【公開番号】特開2018-176192(P2018-176192A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222587
【氏名又は名称】東洋機械金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002608
【氏名又は名称】特許業務法人オーパス国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100091694
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 守
(74)【代理人】
【識別番号】100201248
【弁理士】
【氏名又は名称】田伏 克成
(72)【発明者】
【氏名】池田 伸吾
(72)【発明者】
【氏名】西村 友希
【審査官】 國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−283882(JP,A)
【文献】 特開平03−180262(JP,A)
【文献】 特開2012−110929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D15/00−17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出プランジャと、前記射出プランジャを前方に移動させる駆動部と、前記駆動部を制御する制御部と、を有するダイカストマシンであって、
前記駆動部が、1つの直動駆動系のみ有し、
前記制御部が、(1)前記射出プランジャを低速目標速度で前進させる低速射出動作、前記射出プランジャを高速目標速度で前進させる高速射出動作、および、前記射出プランジャを通常増圧目標圧力で前方に押圧する通常増圧動作を含む射出充填動作を実行するように前記駆動部を制御する製品製造モードと、(2)前記低速射出動作、および、前記射出プランジャを前記通常増圧目標圧力より低いウォームアップ増圧目標圧力で前方に押圧するウォームアップ増圧動作を少なくとも含むウォームアップ動作を実行するように前記駆動部を制御するウォームアップモードと、を有することを特徴とするダイカストマシン。
【請求項2】
前記ウォームアップ動作には、前記高速射出動作を含むことを特徴とする請求項1に記載のダイカストマシン。
【請求項3】
前記制御部が、前記ウォームアップモードで起動して前記ウォームアップ動作を実行したのち、前記製品製造モードに自動的に移行することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のダイカストマシン。
【請求項4】
前記駆動部が、前記制御部に制御される1つの電動モータまたは前記制御部に同一制御される複数の電動モータを有し、
前記制御部が、前記ウォームアップ増圧動作において前記射出プランジャが前記ウォームアップ増圧目標圧力で前方に押圧され、かつ前記通常増圧動作において前記射出プランジャが前記通常増圧目標圧力で前方に押圧されるように前記電動モータを制御することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のダイカストマシン。
【請求項5】
前記駆動部が、前記射出プランジャに接続された射出ピストンと、前記射出ピストンを収容する射出シリンダと、前記射出シリンダに油圧を加える油圧動作手段と、前記射出シリンダの油圧を減圧する減圧手段と、を有し、
前記制御部が、前記通常増圧動作において前記射出シリンダに前記通常増圧目標圧力となる油圧を加え、かつ、前記ウォームアップ増圧動作において前記射出シリンダに前記通常増圧目標圧力となる油圧を加えるとともに前記射出シリンダの油圧を前記ウォームアップ増圧目標圧力に減圧する、ように前記油圧動作手段および前記減圧手段を制御することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のダイカストマシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカストマシンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来のダイカストマシンが開示されている。このダイカストマシンは、金属溶湯が供給される筒状の射出スリーブと、射出スリーブ内で進退される射出プランジャとを備え、射出プランジャの前進により金属溶湯を型閉された金型のキャビティ内に射出充填する射出工程の駆動源に、油圧動作手段および電動サーボモータを用いている。このダイカストマシンは、油圧動作手段および電動サーボモータにより、金型のキャビティ内に金属溶湯を射出する射出動作を行う射出機構と、金型のキャビティ内に充填された金属溶湯を押し込む増圧動作を行う増圧機構とを実現している。
【0003】
一般的に、ダイカストマシンは、射出機構および増圧機構の2つの直動駆動系を多段接続した構成を備えているが、小型のダイカストマシンは、油圧動作手段または電動モータで構成された1つの直動駆動系としての射出機構のみ有し、増圧機構を有していない。このような小型のダイカストマシンでは、射出機構により、射出動作および増圧動作の両方を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−184211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ダイカストマシンでは、製品製造動作の前に金型を温めるウォームアップ動作が行われる。しかしながら、射出機構のみ有するダイカストマシンでは、射出機構が射出動作から増圧動作まで一連の動作を行うことから、ウォームアップ動作時に、十分に温まっていない金型に充填された金属溶湯に比較的高い増圧圧力が加わってしまうおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、温まっていない状態の金型に充填された金属溶湯に高い圧力が加わってしまうことを効果的に抑制できるダイカストマシンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のダイカストマシンは、射出プランジャと、前記射出プランジャを前方に移動させる駆動部と、前記駆動部を制御する制御部と、を有するダイカストマシンであって、前記駆動部が、1つの直動駆動系のみ有し、前記制御部が、(1)前記射出プランジャを低速目標速度で前進させる低速射出動作、前記射出プランジャを高速目標速度で前進させる高速射出動作、および、前記射出プランジャを通常増圧目標圧力で前方に押圧する通常増圧動作を含む射出充填動作を実行するように前記駆動部を制御する製品製造モードと、(2)前記低速射出動作、および、前記射出プランジャを前記通常増圧目標圧力より低いウォームアップ増圧目標圧力で前方に押圧するウォームアップ増圧動作を少なくとも含むウォームアップ動作を実行するように前記駆動部を制御するウォームアップモードと、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、制御部が、射出プランジャを低速目標速度で前進させる低速射出動作、および、射出プランジャを通常増圧目標圧力より低いウォームアップ増圧目標圧力で前方に押圧するウォームアップ増圧動作を少なくとも含むウォームアップ動作を実行するように駆動部を制御する。このようにしたことから、製品製造モードの前にウォームアップモードに移行してウォームアップ動作を行うようにすることで、通常増圧目標圧力より低いウォームアップ増圧目標圧力で増圧動作を行うことができる。
【0009】
本発明においては、前記ウォームアップ動作には、前記高速射出動作を含むことが好ましい。このようにすることで、ウォームアップ動作において、低速射出動作、高速射出動作およびウォームアップ増圧動作を行うので、製品製造の一般的な立上動作により近い動作を実行することができる。
【0010】
本発明においては、前記制御部が、前記ウォームアップモードで起動して前記ウォームアップ動作を実行したのち、前記製品製造モードに自動的に移行することが好ましい。このようにすることで、起動直後に誤って、通常の製品製造のための射出充填動作を行ってしまうことを防ぐことができる。
【0011】
本発明においては、前記駆動部が、前記制御部に制御される1つの電動モータまたは前記制御部に同一制御される複数の電動モータを有し、前記制御部が、前記ウォームアップ増圧動作において前記射出プランジャが前記ウォームアップ増圧目標圧力で前方に押圧され、かつ前記通常増圧動作において前記射出プランジャが前記通常増圧目標圧力で前方に押圧されるように前記電動モータを制御することが好ましい。このようにすることで、電動式のダイカストマシンにおいて、例えば、電動モータに流れる電流値を制御することなどにより、比較的容易にウォームアップ増圧動作を実行することができる。
【0012】
本発明においては、前記駆動部が、前記射出プランジャに接続された射出ピストンと、前記射出ピストンを収容する射出シリンダと、前記射出シリンダに油圧を加える油圧動作手段と、前記射出シリンダの油圧を減圧する減圧手段と、を有し、前記制御部が、前記通常増圧動作において前記射出シリンダに前記通常増圧目標圧力となる油圧を加え、かつ、前記ウォームアップ増圧動作において前記射出シリンダに前記通常増圧目標圧力となる油圧を加えるとともに前記射出シリンダの油圧を前記ウォームアップ増圧目標圧力に減圧する、ように前記油圧動作手段および前記減圧手段を制御することが好ましい。このようにすることで、油圧式のダイカストマシンにおいて、比較的簡易な構成により、ウォームアップ増圧動作を実行することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、温まっていない状態の金型に充填された金属溶湯に大きな圧力が加わってしまうことを効果的に抑制できる。そのため、金型の寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係る電動ダイカストマシンの概略構成を示す図である。
図2図1の電動ダイカストマシンの動作の一例を説明するグラフである。
図3】本発明の第2実施形態に係る油圧ダイカストマシンの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係る電動ダイカストマシンについて、図1図2を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る電動ダイカストマシンの概略構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態の電動ダイカストマシン1は、第1電動モータ11と、第2電動モータ12と、ボールねじ機構13と、第1動力伝達機構14と、第2動力伝達機構15と、衝撃緩衝機構18と、直動体19と、射出プランジャ20と、ロードセル21、位置センサ22と、制御部30と、を有している。
【0017】
第1電動モータ11および第2電動モータ12は、例えば、互いに同一構成の電動サーボモータで構成されており、後述する制御部30から送信される制御信号により制御される。第1電動モータ11および第2電動モータ12は、一方をマスターモータとし他方をスレーブモータとして、スレーブモータがマスターモータに追従して、互いに同じ方向に同じ速度で回転する。すなわち、第1電動モータ11および第2電動モータ12は、1つの制御系統によって同一制御されることにより、互いに同じ動作を行う。なお、本実施形態では、2つの電動モータを備える構成であったが、これに限定されるものではなく、1つの電動モータ、または、1つの制御系統によって同一制御される3つ以上の複数の電動モータを備えた構成としてもよい。
【0018】
ボールねじ機構13は、ねじ軸13aおよびこのねじ軸13aに図示しないボールを介して螺合するナット体13bを有している。ボールねじ機構13は、ねじ軸13aが軸を中心に回転されることにより、ナット体13bがねじ軸13aの軸方向に直線移動する。
【0019】
第1動力伝達機構14は、ねじ軸13aに同軸に設けられた第1プーリ14aと、この第1プーリ14aと第1電動モータ11の出力プーリ11aとに架けわたされる無端ベルト状のタイミングベルト14bとを有している。第1動力伝達機構14は、第1電動モータ11の回転出力をねじ軸13aに伝達して、ねじ軸13aを軸を中心に回転させる。
【0020】
第2動力伝達機構15も、第1動力伝達機構と同様に、ねじ軸13aに同軸に設けられた第2プーリ15aと、この第2プーリ15aと第2電動モータ12の出力プーリ12aとに架けわたされる無端ベルト状のタイミングベルト15bとを有している。第2動力伝達機構15は、第2電動モータ12の回転出力をねじ軸13aに伝達して、ねじ軸13aを軸を中心に回転させる。
【0021】
第1動力伝達機構14および第2動力伝達機構15により、第1電動モータ11および第2電動モータ12の回転出力がねじ軸13aに直接伝達される。
【0022】
第1電動モータ11、第2電動モータ12、ボールねじ機構13、第1動力伝達機構14および第2動力伝達機構15は、射出プランジャ20を前進方向に移動させる1つの直動駆動系を有する駆動部を構成する。1つの直動駆動系とは、1つの駆動系(1つの電動モータ、もしくは1つの制御系統によって同一制御される複数の電動モータ、または、1組の射出ピストン及び射出シリンダ)により直線運動する機構のことをいう。
【0023】
衝撃緩衝機構18は、第1部材18aと、第2部材18bと、弾性部材18cと、を有している。第1部材18aは、環状に形成され、内側にナット体13bが挿通された状態で当該ナット体13bに固定して取り付けられている。第2部材18bは、環状に形成されるとともに内側にナット体13bが挿通され、弾性部材18cを間に挟んだ状態で第1部材18aと図示しないボルトなどの連結部材で連結されている。第2部材18bはナット体13bに固定されていない。
【0024】
弾性部材18cは、高速射出工程から増圧工程に切り換える際の溶湯圧力と同等かこれよりも若干(例えば、1.05倍〜1.1倍)大きい圧縮力を付与された状態で、第1部材18aと第2部材18bとの間に配置されている。これにより、高速射出工程中に弾性部材18cが縮むことはなく金属溶湯に所要の射出圧力を付与することができ、瞬間的に大きな圧力が付与されたときに弾性部材18cが縮んで、大きな圧力による装置の損傷などを抑制できる。
【0025】
直動体19は、内側にねじ軸13aが挿通される円筒状の本体部19aと、本体部19aの先端側端部を塞ぐ壁部19bと、本体部19aの後端側端部に設けられたフランジ部19cと、を有している。フランジ部19cは、衝撃緩衝機構18の第2部材18bに固定して取り付けられている。
【0026】
射出プランジャ20は、円柱状に形成され、一端が直動体19の先端に固定して取り付けられている。射出プランジャ20は、直動体19および衝撃緩衝機構18を介してナット体13bに取り付けられており、ナット体13bに伴って直線移動される。
【0027】
ロードセル21は、ねじ軸13aに加わる圧力を検出し、この圧力を示す信号を制御部30に送信する。
【0028】
位置センサ22は、例えば、リニアエンコーダで構成され、直動体19の前後方向の位置を検出し、この直動体19の位置を示す信号を制御部30に送信する。
【0029】
制御部30は、例えば、CPU、ROM、RAM、EEPROM、各種I/Oインタフェースなどを有する組み込み機器用のマイクロコンピュータを有して構成されている。制御部30は、電動ダイカストマシン1全体の制御を司り、型締め工程、低速射出工程、高速射出工程、通常増圧工程、ウォームアップ増圧工程、型開き工程および製品取り出し工程などの各工程において、上記第1電動モータ11および第2電動モータ12、ならびに、図示しない型開閉用アクチュエータや製品取出用アクチュエータなどの各駆動装置の動作を制御する。
【0030】
制御部30は、第1電動モータ11および第2電動モータ12に接続されており、これら電動モータに対して起動・停止および回転速度に関する制御信号を送信する。
【0031】
制御部30は、ロードセル21に接続されており、ロードセル21からの信号に基づいて射出プランジャ20を押圧する圧力Pを検出する。ロードセル21と制御部30とで、圧力検出部を構成する。本実施形態は、射出プランジャ20を押圧する圧力Pと射出プランジャ20の射出圧力とが同一となるように構成されている。制御部30は、位置センサ22に接続されており、位置センサ22からの信号に基づいて射出プランジャ20の前後進位置Lおよび速度Vを検出する。位置センサ22と制御部30とで、位置検出部および速度検出部を構成する。
【0032】
制御部30は、検出した射出プランジャ20を押圧する圧力Pならびに前後進位置Lおよび速度Vを用いて第1電動モータ11および第2電動モータ12をフィードバック制御(PID制御)する。また、制御部30は、第1電動モータ11および第2電動モータ12に送信される制御信号に基づいて第1電動モータ11および第2電動モータ12のトルクを検出する。制御部30は、制御信号により第1電動モータ11および第2電動モータ12に流れる電流(すなわちトルク)を制御する。
【0033】
制御部30は、動作モードとして、製品製造のための射出充填動作を実行する製品製造モード、および、金型を温めるウォームアップ動作を実行するウォームアップモードを有している。本実施形態において、制御部30は、ウォームアップモードで起動し、所定の条件を満足すると自動的に製品製造モードに移行する。ここで、所定の条件とは、例えば、ウォームアップ動作を所定のウォームアップ回数以上実行することや、金型の温度を監視して、当該金型の温度がモード移行基準値を超えることなどである。手動により、ウォームアップモードから製品製造モードに移行してもよい。
【0034】
次に、上述した本実施形態の電動ダイカストマシン1の動作の一例について、図2を参照して説明する。図2は、図1の電動ダイカストマシンの動作の一例を示すグラフであり、(a)は第1ウォームアップ動作であり、(b)は第2ウォームアップ動作であり、(c)は製品製造のための射出充填動作である。これらグラフにおいて、横軸は時間であり、縦軸は射出プランジャの速度および射出プランジャを押圧する圧力である。
【0035】
電動ダイカストマシン1(具体的には制御部30)は、ウォームアップモードで起動する。そして、電動ダイカストマシン1は、始めに図2(a)に示す第1ウォームアップ動作を実行する。
【0036】
図2(a)に示すように、第1ウォームアップ動作では、制御部30は、低速射出動作として、第1電動モータ11および第2電動モータ12の回転動作を開始し、射出プランジャ20の速度を一定の低速目標速度V1(例えば0.2m/秒)で前進させる。そして、射出プランジャ20の前進位置が所定の増圧切替位置L2に到達すると、制御部30は、ウォームアップ増圧動作として、射出プランジャ20を押圧する圧力Pがウォームアップ増圧目標圧力Pw(例えば30MPa)となるように第1電動モータ11および第2電動モータ12を制御する。これにより、制御部30は、第1電動モータ11および第2電動モータ12のトルクを上昇させ、これに伴って射出プランジャ20を押圧する圧力Pがウォームアップ増圧目標圧力Pwまで上昇して、ウォームアップ増圧目標圧力Pwを一定期間保持する。その後、制御部30は、射出プランジャ20を後退させて押し込みを解除し、金型を開いて成形品を取り出す。この第1ウォームアップ動作を所定回数(例えば、10回)実行すると、次に、電動ダイカストマシン1は、図2(b)に示す第2ウォームアップ動作を実行する。
【0037】
図2(b)に示すように、第2ウォームアップ動作では、制御部30は、低速射出動作として、第1電動モータ11および第2電動モータ12の回転動作を開始し、射出プランジャ20の速度を一定の低速目標速度V1で前進させる。そして、射出プランジャ20の前進位置が所定の高速切替位置L1に到達すると、制御部30は、高速射出動作として、第1電動モータ11および第2電動モータ12の回転速度を上げて射出プランジャ20の速度を急速に上昇させたのち一定の高速目標速度V2(例えば2.0m/秒)で前進させる。そして、射出プランジャ20の前進位置が所定の増圧切替位置L2に到達すると、制御部30は、ウォームアップ増圧動作として、射出プランジャを押圧する圧力Pがウォームアップ増圧目標圧力Pwとなるように第1電動モータ11および第2電動モータ12を制御する。これにより、制御部30は、第1電動モータ11および第2電動モータ12のトルクを上昇させ、これに伴って射出プランジャ20を押圧する圧力Pがウォームアップ増圧目標圧力Pwまで上昇して、ウォームアップ増圧目標圧力Pwを一定期間保持する。その後、制御部30は、射出プランジャ20を後退させて押し込みを解除し、金型を開いて成形品を取り出す。この第2ウォームアップ動作を所定回数(例えば、10回)実行すると、次に、電動ダイカストマシン1の制御部30は、ウォームアップモードから製品製造モードに自動的に移行して、図2(c)に示す射出充填動作を実行する。
【0038】
図2(c)に示すように、射出充填動作では、制御部30は、低速射出動作として、第1電動モータ11および第2電動モータ12の回転動作を開始し、射出プランジャ20の速度を一定の低速目標速度V1で前進させる。そして、射出プランジャ20の前進位置が所定の高速切替位置L1に到達すると、制御部30は、高速射出動作として、第1電動モータ11および第2電動モータ12の回転速度を上げて射出プランジャ20の速度を急速に上昇させたのち一定の高速目標速度V2で前進させる。そして、射出プランジャ20の前進位置が所定の増圧切替位置L2に到達すると、制御部30は、通常増圧動作として、射出プランジャ20を押圧する圧力Pが通常増圧目標圧力Pm(例えば60MPa)となるように第1電動モータ11および第2電動モータ12を制御する。これにより、制御部30は、第1電動モータ11および第2電動モータ12のトルクを上昇させ、これに伴って射出プランジャ20を押圧する圧力Pが通常増圧目標圧力Pmまで上昇して、通常増圧目標圧力Pmを一定期間保持する。その後、制御部30は、射出プランジャ20を後退させて押し込みを解除し、金型を開いて製品となる成形品を取り出す。これ以降、電動ダイカストマシン1は、射出充填動作を繰り返し実行する。
【0039】
以上説明したように、本実施形態の電動ダイカストマシン1によれば、制御部30が、射出プランジャ20を低速目標速度V1で前進させる低速射出動作、および、射出プランジャ20を通常増圧目標圧力Pmより低いウォームアップ増圧目標圧力Pwで前方に押圧するウォームアップ増圧動作を含む第1ウォームアップ動作を実行するように第1電動モータ11および第2電動モータ12を制御する。このようにしたことから、製品製造モードの前にウォームアップモードに移行してウォームアップ動作を行うようにすることで、通常増圧目標圧力Pmより低いウォームアップ増圧目標圧力Pwで増圧動作を行うことができる。
【0040】
また、第1ウォームアップ動作に続く第2ウォームアップ動作に高速射出動作を含めることにより、始めに、第1ウォームアップ動作において低速射出動作およびウォームアップ増圧動作を行い、次いで、第2ウォームアップ動作において低速射出動作、高速射出動作およびウォームアップ増圧動作を行うので、徐々に製品製造の一般的な立上動作に近づけることができる。
【0041】
また、制御部30が、ウォームアップモードで起動して第1ウォームアップ動作および第2ウォームアップ動作を実行したのち、製品製造モードに自動的に移行するので、起動直後に誤って、通常の製品製造のための射出充填動作を行ってしまうことを防ぐことができる。
【0042】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態に係る油圧ダイカストマシンについて、図3を参照して説明する。
【0043】
図3は、本発明の一実施形態に係る油圧ダイカストマシンの概略構成を示す図である。図3に示すように、本実施形態の油圧ダイカストマシン51は、射出プランジャ61と、射出ピストン62と、連結部材63と、射出シリンダ64と、油圧動作手段71と、減圧手段75と、タンク79と、制御部80と、を有している。
【0044】
射出プランジャ61は、図示しない固定ダイプレートに形成された射出スリーブ内に進退可能(前後方向に移動可能)に配置されている。射出ピストン62は、射出プランジャ61の後端部に連結部材63を介して接続されている。射出シリンダ64は、射出ピストン62を進退可能に収容している。
【0045】
油圧動作手段71は、アキュムレータ72と流量調整弁73とを有している。アキュムレータ72は、流量調整弁73を通じて射出シリンダ64の射出ピストン62後方側の空間である第1油室64aに接続されており、流量調整弁73を開いてアキュムレータ72から第1油室64aに作動油が流れ込むことで、第1油室64aの圧力(油圧)が高まり射出ピストン62が前進する。このとき流量調整弁73の開度によって射出ピストン62の前進の速度が調整される。射出シリンダ64の前方側の空間である第2油室64bはタンク79に接続されている。なお、図示は省略しているが、油圧ダイカストマシン51には、射出ピストン62を後退させる機構も設けられている。
【0046】
減圧手段75は、互いに直列に接続された制御弁76とリリーフ弁77とを有している。制御弁76は、射出シリンダ64の第1油室64aに接続されており、リリーフ弁77は、タンク79に接続されている。制御弁76は、例えば、2ポート単動常時閉電磁弁であって、オン状態で第1油室64aとリリーフ弁77とを接続し、オフ状態でこれらを切断する。制御弁76がオン状態となり第1油室64aとリリーフ弁77とが接続されると、第1油室64a内の作動油がリリーフ弁77を通じてタンク79に流れ、第1油室64aの油圧がリリーフ弁77の設定圧力まで減圧される。本実施形態において、リリーフ弁77の設定圧力は、ウォームアップ増圧目標圧力Pwに設定されている。
【0047】
射出ピストン62、連結部材63、射出シリンダ64、油圧動作手段71および減圧手段75は、射出プランジャ61を前進方向に移動させる1つの直動駆動系を有する駆動部を構成する。
【0048】
また、油圧ダイカストマシン51は、図示しない圧力センサおよび位置センサを有している。圧力センサは、射出プランジャ61を押圧する圧力Pを検出し、この圧力を示す信号を制御部80に送信する。位置センサは、例えば、リニアエンコーダで構成され、射出プランジャ61の前後方向の位置を検出し、検出した位置を示す信号を制御部80に送信する。
【0049】
制御部80は、例えば、CPU、ROM、RAM、EEPROM、各種I/Oインタフェースなどを有する組み込み機器用のマイクロコンピュータを有して構成されている。制御部80は、油圧ダイカストマシン51全体の制御を司り、型締め工程、低速射出工程、高速射出工程、通常増圧工程、ウォームアップ増圧工程、型開き工程および製品取り出し工程などの各工程において、上記アキュムレータ72、流量調整弁73および制御弁76、ならびに、図示しない型開閉用アクチュエータや製品取出用アクチュエータなどの各駆動装置の動作を制御する。
【0050】
制御部80は、上記アキュムレータ72、流量調整弁73および制御弁76に接続されており、アキュムレータ72に対して作動油の圧力に関する制御信号を送信し、流量調整弁73に対して作動油の流量に関する制御信号を送信し、制御弁76に対して接続(オン状態)および切断(オフ状態)に関する制御信号を送信する。
【0051】
制御部80は、図示しない圧力センサに接続されており、圧力センサからの信号に基づいて射出プランジャ61を押圧する圧力Pを検出する。圧力センサと制御部80とで、圧力検出部を構成する。制御部80は、図示しない位置センサに接続されており、位置センサからの信号に基づいて射出プランジャ61の前後進位置Lおよび速度Vを検出する。位置センサと制御部80とで、位置検出部および速度検出部を構成する。
【0052】
制御部80は、動作モードとして、製品製造のための射出充填動作を実行する製品製造モード、および、金型を温めるウォームアップ動作を実行するウォームアップモードを有している。本実施形態において、制御部80は、ウォームアップモードで起動し、所定の条件を満足すると自動的に製品製造モードに移行する。ここで、所定の条件とは、例えば、ウォームアップ動作を所定のウォームアップ回数以上実行することや、金型の温度を監視して、当該金型の温度がモード移行基準値を超えることなどである。手動により、ウォームアップモードから製品製造モードに移行してもよい。
【0053】
次に、上述した本実施形態の油圧ダイカストマシン51の動作の一例について、図2を参考として説明する。図2は、図1の電動ダイカストマシンの動作の一例を示すグラフであるが、図3の油圧ダイカストマシンにおいても同様の動作となる。
【0054】
油圧ダイカストマシン51(具体的には制御部80)は、ウォームアップモードで起動する。そして、油圧ダイカストマシン51は、始めに図2(a)に示す第1ウォームアップ動作を実行する。
【0055】
図2(a)に示すように、第1ウォームアップ動作では、制御部80は、まずアキュムレータ72の作動油の圧力を通常増圧目標圧力Pm(例えば15MPa)まで高める。このとき、制御弁76はオフ状態である。制御部80は、次に、低速射出動作として、流量調整弁73を開いて射出プランジャ61の速度を一定の低速目標速度V1(例えば0.2m/秒)で前進させる。そして、射出プランジャ61の前進位置が所定の増圧切替位置L2に到達すると、制御部80は、ウォームアップ増圧動作として、制御弁76をオン状態として射出シリンダ64の第1油室64aとリリーフ弁77とを接続する。これにより、第1油室64aの油圧がリリーフ弁77の設定圧力であるウォームアップ増圧目標圧力Pw(例えば7.5MPa)となり、この圧力を一定期間保持する。その後、制御部80は、射出プランジャ61を後退させて押し込みを解除し、金型を開いて成形品を取り出す。この第1ウォームアップ動作を所定回数(例えば、10回)実行すると、次に、油圧ダイカストマシン51は、図2(b)に示す第2ウォームアップ動作を実行する。
【0056】
図2(b)に示すように、第2ウォームアップ動作では、制御部80は、まずアキュムレータ72の作動油の圧力を通常増圧目標圧力Pmまで高める。このとき、制御弁76はオフ状態である。制御部80は、次に、低速射出動作として、流量調整弁73を開いて射出プランジャ61の速度を一定の低速目標速度V1で前進させる。そして、射出プランジャ61の前進位置が所定の高速切替位置L1に到達すると、制御部80は、高速射出動作として、流量調整弁73をさらに開いて射出プランジャ61の速度を急速に上昇させたのち一定の高速目標速度V2(例えば2.0m/秒)で前進させる。そして、射出プランジャ61の前進位置が所定の増圧切替位置L2に到達すると、制御部80は、ウォームアップ増圧動作として、制御弁76をオン状態として射出シリンダ64の第1油室64aとリリーフ弁77とを接続する。これにより、第1油室64aの油圧がウォームアップ増圧目標圧力Pwとなり、この圧力を一定期間保持する。その後、制御部80は、射出プランジャ61を後退させて押し込みを解除し、金型を開いて成形品を取り出す。この第2ウォームアップ動作を所定回数(例えば、10回)実行すると、次に、油圧ダイカストマシン51の制御部80は、ウォームアップモードから製品製造モードに自動的に移行して、図2(c)に示す射出充填動作を実行する。
【0057】
図2(c)に示すように、射出充填動作では、制御部80は、まずアキュムレータ72の作動油の圧力を通常増圧目標圧力Pmまで高める。このとき、制御弁76はオフ状態である。制御部80は、次に、低速射出動作として、流量調整弁73を開いて射出プランジャ61の速度を一定の低速目標速度V1で前進させる。そして、射出プランジャ61の前進位置が所定の高速切替位置L1に到達すると、制御部80は、高速射出動作として、流量調整弁73をさらに開いて射出プランジャ61の速度を急速に上昇させたのち一定の高速目標速度V2で前進させる。そして、射出プランジャ61の前進位置が所定の増圧切替位置L2に到達すると、制御部80は、通常増圧動作として、引き続き制御弁76のオフ状態を維持し、射出シリンダ64の第1油室64aとリリーフ弁77とを切断したままとする。これにより、第1油室64aの油圧が通常増圧目標圧力Pmとなり、この圧力を一定期間保持する。その後、制御部80は、射出プランジャ61を後退させて押し込みを解除し、金型を開いて製品となる成形品を取り出す。これ以降、油圧ダイカストマシン51は、射出充填動作を繰り返し実行する。
【0058】
以上説明したように、本実施形態の油圧ダイカストマシン51によれば、制御部80が、射出プランジャ61を低速目標速度V1で前進させる低速射出動作、および、射出プランジャ61を通常増圧目標圧力Pmより低いウォームアップ増圧目標圧力Pwで前方に押圧するウォームアップ増圧動作を含む第1ウォームアップ動作を実行するようにアキュムレータ72、流量調整弁73および制御弁76を制御する。このようにしたことから、製品製造モードの前にウォームアップモードに移行してウォームアップ動作を行うようにすることで、通常増圧目標圧力Pmより低いウォームアップ増圧目標圧力Pwで増圧動作を行うことができる。
【0059】
また、第1ウォームアップ動作に続く第2ウォームアップ動作に高速射出動作を含めることにより、始めに、第1ウォームアップ動作において低速射出動作およびウォームアップ増圧動作を行い、次いで、第2ウォームアップ動作において低速射出動作、高速射出動作およびウォームアップ増圧動作を行うので、徐々に製品製造の一般的な立上動作に近づけることができる。
【0060】
また、制御部80が、ウォームアップモードで起動して第1ウォームアップ動作および第2ウォームアップ動作を実行したのち、製品製造モードに自動的に移行するので、起動直後に誤って、通常の製品製造のための射出充填動作を行ってしまうことを防ぐことができる。
【0061】
上述した各実施形態によれば、温まっていない状態の金型に充填された金属溶湯に大きな圧力が加わってしまうことを効果的に抑制できる。そのため、金型の寿命を延ばすことができる。
【0062】
また、上述した各実施形態では、ウォームアップモードにおいて、第1ウォームアップ動作および第2ウォームアップ動作を実行する構成であったが、これに限定されるものではなく、第1ウォームアップ動作および第2ウォームアップ動作のいずれか一方のみを実行する構成であってもよい。
【0063】
上記に本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。前述の実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
(第1実施形態)
1…電動ダイカストマシン、11…第1電動モータ、11a…出力プーリ、12…第2電動モータ、12a…出力プーリ、13…ボールねじ機構、13a…ねじ軸、13b…ナット体、14…第1動力伝達機構、14a…第1プーリ、14b…タイミングベルト、15…第2動力伝達機構、15a…第2プーリ、15b…タイミングベルト、18…衝撃緩衝機構、18a…第1部材、18b…第2部材、18c…弾性部材、19…直動体、19a…本体部、19b…壁部、19c…フランジ部、20…射出プランジャ、21…ロードセル、22…位置センサ、30…制御部、L…前後進位置、L1…高速切替位置、L2…増圧切替位置、P…圧力、V…速度、V1…低速目標速度、V2…高速目標速度、Pw…ウォームアップ増圧目標圧力、Pm…通常増圧目標圧力
(第2実施形態)
51…油圧ダイカストマシン、61…射出プランジャ、62…射出ピストン、63…連結部材、64…射出シリンダ、64a…第1油室、64b…第2油室、71…油圧動作手段、72…アキュムレータ、73…流量調整弁、75…減圧手段、76…制御弁、77…リリーフ弁、79…タンク、80…制御部、L…前後進位置、L1…高速切替位置、L2…増圧切替位置、P…圧力、V…速度、V1…低速目標速度、V2…高速目標速度、Pw…ウォームアップ増圧目標圧力、Pm…通常増圧目標圧力
図1
図2
図3