特許第6804377号(P6804377)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6804377
(24)【登録日】2020年12月4日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】汚泥処理装置および汚泥処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/06 20060101AFI20201214BHJP
   B01D 19/02 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   C02F11/06 B
   C02F11/06 A
   B01D19/02
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-83339(P2017-83339)
(22)【出願日】2017年4月20日
(65)【公開番号】特開2018-176124(P2018-176124A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2019年12月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073759
【弁理士】
【氏名又は名称】大岩 増雄
(74)【代理人】
【識別番号】100088199
【弁理士】
【氏名又は名称】竹中 岑生
(74)【代理人】
【識別番号】100094916
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 啓吾
(74)【代理人】
【識別番号】100127672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 憲治
(72)【発明者】
【氏名】黒木 洋志
(72)【発明者】
【氏名】平敷 勇
(72)【発明者】
【氏名】古川 誠司
(72)【発明者】
【氏名】有馬 芳明
(72)【発明者】
【氏名】時盛 孝一
(72)【発明者】
【氏名】大泉 雅伸
(72)【発明者】
【氏名】小原 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】若村 修
(72)【発明者】
【氏名】臼井 肇
【審査官】 片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−212868(JP,A)
【文献】 特開2016−077928(JP,A)
【文献】 特開2016−077933(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/125612(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/78、11/00−20
B01D 19/00−04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥含有液をオゾンガスで発泡させて汚泥泡を生成するオゾン反応槽、
上記オゾン反応槽から上記汚泥泡を移送する汚泥泡移送配管、
上記汚泥泡移送配管を介して移送された上記汚泥泡を貯留するとともに、上記汚泥泡を、上記オゾンガスにより改質された改質汚泥と、上記オゾンガスを含む排ガスとに分離する改質汚泥分離槽を備え、
上記汚泥泡移送配管は、移送される複数の上記汚泥泡を結合し、上記汚泥泡を大径化する汚泥泡結合部を有し、
上記汚泥泡結合部は、上記汚泥泡移送配管の一部の内径を絞った配管絞り部を有し、上記配管絞り部において、複数の上記汚泥泡を結合することを特徴とする汚泥処理装置。
【請求項2】
上記汚泥泡結合部は、上記汚泥泡を上記配管絞り部に流入させる流入口を有し、上記流入口は、上記汚泥泡移送配管の内径が徐々に小さくなるテーパ形状に形成されたことを特徴とする請求項記載の汚泥処理装置。
【請求項3】
上記汚泥泡結合部は、上記汚泥泡を上記配管絞り部から流出させる流出口を有し、上記流出口は、上記汚泥泡移送配管の内径寸法に形成されたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の汚泥処理装置。
【請求項4】
上記配管絞り部を通過する上記汚泥泡のレイノルズ数が800以上となるように、上記配管絞り部の内径が調整されたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の汚泥処理装置。
【請求項5】
上記改質汚泥分離槽に貯留された上記汚泥泡を移送する下流側汚泥泡移送配管、
上記下流側汚泥泡移送配管を介して移送された上記汚泥泡を改質汚泥と排ガスとに分離する下流側改質汚泥分離槽を備え、
上記下流側汚泥泡移送配管は、移送される複数の上記汚泥泡を結合し、上記汚泥泡を大径化する汚泥泡結合部を有することを特徴とする請求項1からのいずれか一項記載の汚泥処理装置。
【請求項6】
上記下流側改質汚泥分離槽は、上記改質汚泥分離槽の上部に配置され、上記下流側改質汚泥分離槽において生じた上記改質汚泥は、上記下流側改質汚泥分離槽の底面部に設けられた配管を介して上記改質汚泥分離槽に落下することを特徴とする請求項記載の汚泥処理装置。
【請求項7】
上記改質汚泥分離槽と上記下流側改質汚泥分離槽は、一つの槽を仕切板によって上下に仕切った下段槽と上段槽に相当することを特徴とする請求項記載の汚泥処理装置。
【請求項8】
上記汚泥泡移送配管の排出口は、上記改質汚泥分離槽の上面側に配設されたことを特徴とする請求項1からのいずれか一項記載の汚泥処理装置。
【請求項9】
オゾンガスを汚泥含有液に吹き込んで汚泥泡を生成するステップ、
上記汚泥泡を移送させる汚泥泡移送配管の一部の内径を絞った配管絞り部において、複数の上記汚泥泡を結合し、上記汚泥泡を大径化するステップ、
大径化された上記汚泥泡を破泡し、上記汚泥含有液をオゾンで改質した改質汚泥と、上記オゾンガスを含む排ガスとに分離するステップを含むことを特徴とする汚泥処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾンガスを用いた汚泥の改質処理に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機物質を含有する下水、食品廃水、畜産廃水などの処理方法として、活性汚泥法が広く利用されている。活性汚泥法においては、処理過程中に余剰汚泥と呼ばれる微生物が主体の汚泥が大量に発生する。その余剰汚泥は埋め立て又は焼却により処分する必要があるが、沈殿や脱水等の汚泥処理工程を必要とするものであった。そのため、余剰汚泥の処理コストを削減する観点から、物理的又は化学的な汚泥減容化処理を処理過程中に導入することが検討されている。
【0003】
従来の物理的な汚泥減容化処理としては、例えば、オゾンガスを利用して余剰汚泥を改質した後、生物学的処理工程に返送して再度分解する方法が提案されている。ここで余剰汚泥の改質とは、例えば有機物分解による固形物の低分子化等をいう。余剰汚泥は、有機物分解され低分子化されると、主成分の微生物が死滅した状態となるため、生物学的処理工程における分解が容易となる。
【0004】
一般的に、オゾンガスによる汚泥の改質を行う場合には、汚泥含有液中で汚泥とオゾンガスを反応させる方法が用いられている。このオゾン処理方法においては、まず、汚泥含有液中に吹き込まれたオゾンガスが、気泡となって汚泥含有液中を浮上する。そして、オゾンガス気泡が溶液中を浮上する間に、気泡内部のオゾンガスが汚泥含有液に溶解してオゾン水を生成する。そして、このオゾン水が溶液中の汚泥と接触し、汚泥成分を改質する。
【0005】
ここで、汚泥含有液中のオゾンガス気泡の浮上に要する時間とオゾンガスが汚泥含有溶液中に溶解されるのに要する時間を比較すると、オゾンガス気泡の浮上に要する時間よりも汚泥含有液へのオゾンガス溶解に要する時間の方が長くなる傾向がある。よって、オゾンガス気泡内部には未反応のオゾンが残留した状態で液面まで浮上し、気泡が破られ、オゾンガスが汚泥含有液から出てしまうため、十分なオゾン反応時間を確保することができず、オゾンによる改質効率(オゾンガスの溶解効率)が悪くなるという問題があった。
【0006】
上記の問題を解決するため、オゾンガスを吹き込むことで汚泥含有液を発泡させ、この泡の表面で汚泥成分にオゾンガスを反応させる方法が提案されている。散気装置などを用いて1mm以下のオゾンガスを含む微細な気泡を汚泥溶液に吹き込むと、汚泥溶液の液面に
は1mm以下の泡が発生する。この泡は、汚泥泡と呼ばれ、その表面には水と汚泥が付着し
ている。汚泥が持つ粘性のため、汚泥泡は、10分程度は破泡せず液膜でオゾンガスを覆った安定した泡の形態を保持できる。この汚泥泡の性質を利用し、汚泥泡が反応槽を移動する間に、表面の汚泥と汚泥泡内部のオゾンガスを反応させることで、汚泥を改質することができる。
【0007】
汚泥泡は、液膜が破れて破泡するか又は泡内部のオゾンガスが消費されるまで、内部でオゾンガスによる汚泥成分の改質反応が続く。通常、オゾンガスが汚泥含有液中を浮上する時間よりも汚泥泡が破泡するまでの時間及び汚泥泡の内部のオゾンガスが消費されるまでの時間の方が長いため、汚泥含有液中を浮上中の汚泥泡よりも、溶液の液面まで浮上した生成されてから時間が経った汚泥泡の方が、汚泥とオゾンガスとの反応効率は高くなっている。
【0008】
泡の表面でオゾンガスによって改質された汚泥は、汚泥泡の泡形状が壊されることで気液分離され、回収される。汚泥泡内部には未反応のオゾンガスも微量含まれるため、汚泥泡は密閉容器の中で気液分離する必要があり、オゾンガスを含む排ガスは、オゾンを分解した後に大気中に放出される。
【0009】
しかし、汚泥泡の処理流路内に、気液分離しない汚泥泡が長い時間存在すると、オゾンガスによる汚泥改質処理を行っているオゾン反応槽の内部が多数の汚泥泡により満たされ、さらには槽外に汚泥泡がオーバーフローするなどの問題が生じる。そこで、このオゾンガス気散によって発生した汚泥泡を壊し、気液分離するために、消泡剤添加や、オゾン反応槽の上部に設けたスプレーノズルから水などを散布する等の方法が用いられている。
汚泥泡を改質汚泥と排ガスとに気液分離する手段としては、攪拌などの物理的手段や、消泡剤を用いるなどの化学的手段が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002-336890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、攪拌などの物理的手段による気液分離では、攪拌機を回転させるための動力が必要となる。また、化学的手段による気液分離でも、消泡剤などの薬品が必要であり、その薬品自体の処理も必要となっていた。これらの気液分離処理は、汚泥処理装置の運転コストを上昇させ、ひいては、オゾンガスを用いた汚泥処理コストを引き上げるという問題があった。
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、オゾンガスによって発泡した汚泥泡を低コストで効率良く気液分離することが可能な汚泥処理装置および汚泥処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明に係わる汚泥処理装置は、汚泥含有液をオゾンガスで発泡させて汚泥泡を生成するオゾン反応槽、上記オゾン反応槽から上記汚泥泡を移送する汚泥泡移送配管、上記汚泥泡移送配管を介して移送された上記汚泥泡を貯留するとともに、上記汚泥泡を、上記オゾンガスにより改質された改質汚泥と、上記オゾンガスを含む排ガスとに分離する改質汚泥分離槽を備え、上記汚泥泡移送配管は、移送される複数の上記汚泥泡を結合し、上記汚泥泡を大径化する汚泥泡結合部を有し、上記汚泥泡結合部は、上記汚泥泡移送配管の一部の内径を絞った配管絞り部を有し、上記配管絞り部において、複数の上記汚泥泡を結合することを特徴とするものである。
【0013】
この発明に係わる汚泥処理方法は、オゾンガスを汚泥含有液に吹き込んで汚泥泡を生成するステップ、上記汚泥泡を移送させる汚泥泡移送配管の一部の内径を絞った配管絞り部において、複数の上記汚泥泡を結合し、上記汚泥泡を大径化するステップ、大径化された上記汚泥泡を破泡し、上記汚泥含有液をオゾンで改質した改質汚泥と、上記オゾンガスを含む排ガスとに分離するステップを含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
この発明の汚泥処理装置によれば、汚泥泡結合部を備えているため、複数の汚泥泡を結合して大径化された汚泥泡を得ることができる。この大径化された汚泥泡においては、泡体の下方部に汚泥含有液が溜まるとともに、汚泥泡の液膜の厚さが大径化前の汚泥泡の液膜よりも薄くなる部分が生じ、大径化前よりも大径化後の汚泥泡の方が破泡しやすい状態となる。従って、汚泥泡結合部によって得られる大径化された汚泥泡は、改質汚泥と排ガスとに容易に気液分離することができる。
【0015】
この発明の汚泥処理方法によれば、複数の汚泥泡を結合し、汚泥泡を大径化するステッ
プを含んでいるため、汚泥処理過程において複数の汚泥泡を結合して大径化された汚泥泡を得ることができる。この大径化された汚泥泡は、大径化前の汚泥泡よりも破泡しやすいため、汚泥泡を破泡し、改質汚泥と排ガスとに分離することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態1による汚泥処理装置を説明するための構成図である。
図2】本発明の実施の形態1による汚泥処理装置の汚泥泡移送配管の要部断面図であり、汚泥泡結合部の内径変化に伴う汚泥泡の形状変化を示す図である。
図3】本発明の実施の形態1による汚泥処理装置の汚泥泡移送配管の要部断面図であり、汚泥泡結合部の配置例を示す図である。
図4】本発明の実施の形態1に必要な説明図であり、汚泥泡と改質汚泥の容積比の汚泥泡のレイノルズ数依存性を示す図である。
図5】本発明の実施の形態2による汚泥処理装置を説明するための構成図である。
図6】本発明の実施の形態3による汚泥処理装置を説明するための構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1による汚泥処理装置100を説明するための構成図である。図1において、汚泥処理装置100は、汚泥含有液6をオゾンガス8で発泡させて汚泥泡4を生成するオゾン反応槽1、このオゾン反応槽1から汚泥泡4を移送する汚泥泡移送配管2、汚泥泡移送配管2を介して移送された汚泥泡4を貯留するとともに、汚泥泡4を、オゾンガスにより改質された改質汚泥12と、オゾンガス8を含む排ガス13とに分離する改質汚泥分離槽3により主に構成される。
【0018】
そして、汚泥泡移送配管2は、移送される複数の汚泥泡4を結合し、大径化された汚泥泡4bを得るための主要構成部である汚泥泡結合部5を有している。この汚泥泡結合部5では、二つの汚泥泡4が結合されて一つの大径化された汚泥泡4bとなるケースが多いが、三つ以上の汚泥泡4が結合される場合や、大径化された汚泥泡4bが多重に汚泥泡4または4bと結合されるような場合もある。
【0019】
図1に示すように、オゾン反応槽1の内部には汚泥含有液6が貯留される。オゾン反応槽1には、汚泥含有液6を槽内へ引き込むための汚泥含有液供給配管7が接続されており、下水処理によって発生した余剰汚泥を含有する汚泥含有液6は、送液ポンプ(図示せず)を用いて汚泥含有液供給源(図示せず)から、汚泥含有液供給配管7を介してオゾン反応槽1に供給される。汚泥含有液供給源は、下水処理によって発生した余剰汚泥を貯留するタンクや、下水処理設備において余剰汚泥を移送する配管等を構成要素に含む構成部である。
【0020】
オゾン反応槽1内部の底面部近傍には、汚泥含有液6に微細な気泡状のオゾンガス8を吹き込むための散気手段9が配設されている。そして、オゾン反応槽1の底面部には、汚泥濃度が低下した汚泥含有液6の残渣液を槽外へ引き抜くための残渣液排出配管10が配設されている。
散気手段9には、オゾンガス8を流入させるオゾンガス供給配管11が接続されており、オゾンガス8はオゾンガス供給源(図示せず)からオゾンガス供給配管11を介して散気手段9に供給される。
【0021】
オゾンガス供給源では、酸素ガスまたは空気の雰囲気で放電によりオゾンガスを発生させる。そのため、オゾンガス供給源からオゾンガス供給配管11を介して散気手段9に送られるガスには、オゾンガス以外に酸素または窒素が含まれるが、ここでは、オゾン反応槽1に散気される気泡をオゾンガス8として説明している。なお、散気手段9としては、
例えば散気孔が設けられた散気管又は散気シート、ディフューザ、エジェクタなどを用いることができ、特別な限定はない。
【0022】
散気手段9から汚泥含有液6に注入されたオゾンガス8は、気泡となって汚泥含有液6の溶液中を上昇する。オゾンガス8が気泡となって汚泥含有液6を上昇する際には、オゾンガス8と汚泥含有液6中の汚泥成分が反応する。オゾンガス8と反応した汚泥含有液6には、汚泥含有液6に含まれる汚泥がオゾンガス8によって改質され、粘性を有する有機物が生成する。この粘性を有する有機物により、気泡状のオゾンガス8の周囲を汚泥含有液6が被った状態となり、汚泥含有液6の液面には、汚泥含有液6をオゾンガス8で発泡させた汚泥泡4が多数発生する。
汚泥含有液6の液面に浮かぶ汚泥泡4は、その内部にオゾンガス8が存在し、表面には汚泥が付着した状態となっている。
【0023】
汚泥泡4は、オゾンガス8の加圧注入に伴って新たに汚泥含有液6の液面に次々と浮かび上がってくる。そして、オゾン反応槽1の内部は、新しい汚泥泡4が、古い汚泥泡4を押し上げ、汚泥泡4によって満たされた状態となる。この汚泥泡4は、オゾン反応槽1の汚泥含有液6内を浮上する間だけでなく、汚泥含有液6の液面から槽の上面までのオゾン反応槽1の内部を上昇する間においても、汚泥泡4の表面に付着した汚泥成分が汚泥泡4の内部に含まれるオゾンガス8と反応して改質される。これにより、汚泥泡4の表面に付着した汚泥は、オゾンガス8によって改質された改質汚泥に変化していく。
【0024】
新しく生成された汚泥泡4に押し上げられ、オゾン反応槽1の頂部に到達した汚泥泡4は、オゾン反応槽1の上面部に接続された導入口2aから汚泥泡移送配管2に導入され、流路途中の汚泥泡結合部5を通過し、改質汚泥分離槽3の上面側に接続された排出口2bから改質汚泥分離槽3へ移送される。
なお、オゾンガス8は、オゾン反応槽1内に加圧されて注入されているため、オゾン反応槽1内の汚泥泡4は、圧力が低い大気解放側、つまり汚泥処理流路の下流側の改質汚泥分離槽3へ、自然に流れる状態となる。よって、汚泥泡4を移送させるための吸引装置等は、基本的に設ける必要はない。
【0025】
オゾン反応槽1の頂部に到達した汚泥泡4の表面に付着している汚泥は、オゾン反応槽1の内部を上昇する間にオゾンガス8による改質が進んだ状態となっている。汚泥泡移送配管2の途中に備えられた汚泥泡結合部5は、この汚泥泡結合部5内の狭流路に同時に引き込まれる複数の汚泥泡4を結合する構成部である。この汚泥泡結合部5にオゾン反応槽1で発生した小径の汚泥泡4を挿通させることで、大径化された汚泥泡4bに変化させることができる。泡径が大きくなった汚泥泡4bは、改質汚泥分離槽3の内部空間に放出されると、破泡し、改質汚泥12と排ガス13に分離される。
【0026】
改質汚泥分離槽3の内部において、汚泥泡移送配管2の終端部となる排出口2bは、改質汚泥分離槽3の内部に貯留される改質汚泥12の液面よりも高い位置に配置される。汚泥泡移送配管2の終端部を改質汚泥分離槽3に貯留した改質汚泥12の液面よりも高い位置に配置することで、改質汚泥12に排ガス13が注入されて新たな汚泥泡4が発生することを防止することができる。改質汚泥分離槽3で気液分離されて生じた排ガス13は、排ガス排出配管14を介して排オゾン分解装置(図示せず)に導入され排オゾンの分解後、大気中に放出される。また、改質汚泥分離槽3に貯留された改質汚泥12は、改質汚泥排出配管15を介して引き抜かれ、槽外へ排出される。
【0027】
なお、汚泥泡結合部5は、図1においては、改質汚泥分離槽3の上面側の外部に設けられた状態を例示しているが、これに限ることなく、改質汚泥分離槽3の上面側から内部に挿入された汚泥泡移送配管2の途中や、配管最下流の排出口2bの部分に設けることも可
能である。汚泥泡結合部5を汚泥泡移送配管2の最下流となる部位に配設する場合、汚泥泡4の内部におけるオゾンガス8の反応時間をより長く確保することができ、汚泥成分の改質が進み、気液分離の効率が良くなるため、改質汚泥分離槽3内に汚泥泡4が溜まりにくくなる。
また、改質汚泥分離槽3の上面側に排出口2bが配置された場合、気液分離にて生じた改質汚泥12が自重により自然に落下するため、流路配管内への改質汚泥の滞留を抑制することができる。
【0028】
次に、図2に、汚泥泡移送配管2の要部である汚泥泡結合部5の断面図を示すとともに、汚泥泡結合部5の内径変化にともなう汚泥泡4の形状変化を示す。汚泥泡結合部5は、汚泥泡移送配管2流路の一部の内径寸法に変化を付けることで得られる構成部であり、流路の上流側から下流側にかけて、汚泥泡結合部5の領域a、領域b、領域cを、汚泥泡4が順次通過する構成となっている。
【0029】
汚泥泡結合部5の領域aには、汚泥泡4を流入させる流入口51が設けられ、この流入口51は、汚泥泡移送配管2の内径が徐々に小さくなるように傾斜した(テーパ形状に形成された)テーパ面部51aを有している。このテーパ面部51aは、漏斗型の傾斜面部に相当し、漏斗型の角度は、例えば60度以下とすることができる。
【0030】
汚泥泡結合部5の領域bには、汚泥泡移送配管2の流路の中で最も内径が小さい配管絞り部52(狭流路)が設けられ、同じタイミングでこの狭流路内を移動する複数の汚泥泡4が互いに結合した状態となる。この配管絞り部52内で、二つの泡が結合すると、くっつき合った壁面部の液膜が破れ、泡の内部ガスが一体化された汚泥泡4aが生成される。
【0031】
汚泥泡結合部5の領域cには、配管絞り部52から出てくる汚泥泡4aを、球状の大径化された汚泥泡4bに移行させるための流出口53が設けられている。流出口53は、配管絞り部52の終端部の下流側に位置し、その配管内径寸法は、例えば、汚泥泡移送配管2の内径寸法に相当する。この流出口53には、内径寸法が徐々に大きくなるようなテーパは設けられておらず、狭流路から一気に広い空間(流路)に汚泥泡4bが流出される構成となっている。
【0032】
なお、図2および後述の汚泥泡移送配管2の要部断面図を示す図3では、汚泥泡4が、紙面左側から右側に、横向きに移動する流路を例示しているが、これに限ることなく、下から上、上から下に流れるように、汚泥泡結合部5を汚泥泡移送配管2に設けることが可能であることは言うまでもない。
【0033】
次に、複数の汚泥泡4を結合させ、大径化された汚泥泡4bを得る工程の汚泥処理状況について、より詳細に説明する。
図2に示すように、汚泥泡結合部5の狭流路となる配管絞り部52は、その上流側の流入口51にてテーパ面部51aに接続された構成であるため、流路の内径が小さくなるにつれて、流路内を移送される汚泥泡4の流速が大きくなる。汚泥泡4の流速が増すと、汚泥泡4の進行方向に汚泥泡4を引き延ばす力が働く。この力は、流速が急激に変化する配管絞り部52とテーパ面部51aとの接合部において、特に強くなる傾向がある。狭流路内にて汚泥泡4が進行方向に引き伸ばされることにより、進行方向と垂直な引き伸ばされた箇所の汚泥泡4の液膜が薄くなる。隣接する汚泥泡4の接合部分の液膜が薄くなると、引き延ばす力に耐えられなくなった液膜の一部が破れ、隣接する泡の内部ガスが導通状態となり、一体化された汚泥泡4aに変化する。また、狭流路となる配管絞り部52の流路内壁面部と接触することにより汚泥泡4の液膜が破れると、泡形状が壊れ、ガスだまりとなって流出口53へ移送される。
【0034】
複数の汚泥泡4が結合された汚泥泡4aは、流出口53にて広い流路に移動すると、液膜の内部空間が球形となって、大径化された汚泥泡4bとなる。また、配管絞り部52にて生じたガスだまりは、多数の大径化した汚泥泡4bに挟まれた状態で汚泥泡移送配管2を流れ、排出口2b側へ移送される。
【0035】
なお、汚泥泡4は、汚泥泡結合部5において、大径化された汚泥泡4bやガスだまりに変化するが、一部のものが大径化されず、また、ガスだまりとならない場合がある。その場合、改質汚泥分離槽3の内部に汚泥泡4が貯留された状態となるが、時間の経過とともに、汚泥泡4内のオゾンガスと汚泥成分との反応が進み、汚泥成分は改質汚泥化して泡が破れやすくなることから、改質汚泥分離槽3内にて自然に気液分離される。
【0036】
ここで、汚泥泡移送配管2と狭流路となる配管絞り部52の間にテーパ面部51aを設けない場合、汚泥泡4の表面に付着していた汚泥が、配管絞り部52の手前で汚泥泡移送配管2の内部に蓄積する。これにより、汚泥泡移送配管2における汚泥の蓄積による配管詰まりが発生する。これに対し、テーパ面部51aを設けた場合には、汚泥泡4がテーパ面部51aの表面を滑らかに流れるため、汚泥泡移送配管2内の配管絞り部52の流入口51に汚泥は蓄積せず、流路内において配管詰まりが起きにくくなる。
【0037】
配管絞り部52から汚泥泡4が流出する流出口53では、テーパ形状部を設けずに狭流路である配管絞り部52をより広い通常内径寸法の汚泥泡移送配管2に接続している。このような形状にすると、狭流路となる配管絞り部52から流出する汚泥泡4や結合した汚泥泡4bは、流速を速めたまま汚泥泡移送配管2の通常寸法の流路に放出される。流出口53につながる汚泥泡移送配管2では、狭流路となる配管絞り部52から流出した汚泥泡4、4bが、汚泥泡移送配管2に存在する汚泥泡4、4bと衝突する。この衝突により、汚泥泡移送配管2に存在する結合した汚泥泡4bの形状が変化し、汚泥泡4bの液膜が破れて多重に結合し、さらに泡径の大きな結合した汚泥泡4bとなる。このようにして泡径が大きくなるように多重に結合した汚泥泡4bが汚泥泡移送配管2から改質汚泥分離槽3に放出されると、泡膜が破れて泡表面部の改質汚泥12と、泡内部の排ガス13とに分離される。
【0038】
なお、配管内径を絞った狭流路となる配管絞り部52においては、配管内径を小さく絞るほど内部を流れる汚泥泡4の流速が大きくなる。しかし、汚泥泡4の表面に付着している汚泥が配管内径を絞った狭流路およびその手前側に蓄積すると、汚泥泡4の流れが悪くなるとともに、オゾン反応槽1へのオゾンガス8の流入を妨げる要因となる。よって、オゾン反応槽1における汚泥の改質効率を低下させる。そのため、汚泥泡結合部5の配管絞り部52の内径は、汚泥が滞留しない寸法を確保する必要がある。
【0039】
ここで、上述の図2には、汚泥泡移送配管2の流路内に一つの汚泥泡結合部5を設けた例を示していたが、汚泥泡結合部5は、汚泥移送配管2の流路内に複数を配設することも可能である。
図3は、汚泥泡移送配管2の要部断面図であり、配管流路内に直列に汚泥泡結合部5a、5bを設けた配置例を示している。図3に示すように、汚泥泡移送配管2に対し、複数箇所に汚泥泡結合部5a、5bを設けることで、汚泥泡4の結合効率を高めることが可能となる。

【0040】
図3では、汚泥泡移送配管2の中に、配管内径を絞った一つ目の汚泥泡結合部5aを設け、さらに、その下流側に配管内径を絞ったもう一つの汚泥泡結合部5bを配設した状態を示している。なお、一つの汚泥泡移送配管2に、汚泥泡結合部5a、5bの二つを配設する以外に、より多数の結合部をシリーズに設けることも可能である。この図3の構成では、配管内径を絞った汚泥泡結合部5aで変形されて結合した汚泥泡4aは、その汚泥泡
結合部5aの下流側で、通常配管寸法に広げられた配管流路(流出口53)に出ると大径化した汚泥泡4bとなり、下流側の汚泥泡結合部5bへ流れていく。
【0041】
図3に示すように、下流側の汚泥泡結合部5bには、上流側の汚泥泡結合部5aにて結合されなかった汚泥泡4も、結合により大径化された汚泥泡4bとともに流入する。配管内径が絞られた下流側の汚泥泡結合部5bでは、流速の変化によって汚泥泡4、4bがともに引き伸ばされて変形する。これにより、汚泥泡4、4bの液膜の膜厚が部分的に薄くなり、隣接した泡体の接触部分の液膜が破れ、汚泥泡4同士または汚泥泡4b同士、あるいは汚泥泡4と4bが結合する。これにより、下流側の汚泥泡結合部5bを通過した後は、未結合の汚泥泡4の数が減少し、汚泥泡4の結合効率を高めることができる。なお、結合した汚泥泡4bは、汚泥成分の改質や大径化により破泡しやすい状態となっており、改質汚泥12と排ガス13とに容易に分離することができる。
【0042】
ここで、我々は、汚泥泡4同士が結合し改質汚泥分離槽3で排ガス13と改質汚泥12に分離される現象について、配管絞り部52の配管径と汚泥泡4の速度を変えながら調査を行い、配管絞り部52の配管径をどのように調整することが適切であるかを調べた。その結果、配管内径を絞った配管絞り部52を流れる汚泥泡4のレイノルズ数Reを制御することで、汚泥泡4を効率良く結合させ、改質汚泥分離槽3において効率良く気液分離することが可能となることを見出した。ここで、レイノルズ数Reとは、流体の慣性力と粘性力の比を表す無次元数であり、層流から乱流への遷移を示す指標として用いられるものである。
【0043】
図4は、汚泥泡と改質汚泥の容積比(縦軸)の、汚泥泡のレイノルズ数(横軸)依存性を示す図であり、オゾンガスによって生成した汚泥泡を配管(配管絞り部52に相当する。)に流し、配管径と汚泥泡4の流速を変化させて配管から流出した汚泥泡を回収した場合に、改質汚泥と残存する汚泥泡の容積比を測定した結果を示している。なお、図4の横軸の、汚泥泡のレイノルズ数Reは、配管径L(m)と流速U(m/sec)および汚泥泡に含まれるガスの動粘性係数ν(m2/sec)から、次の式によって算出することができる。
式: Re=L・U/ν
【0044】
レイノルズ数Reが増加すると配管から流出した溶液に占める汚泥泡の容積が減少し、レイノルズ数Reが800になると汚泥泡と改質汚泥の容積比は0.5になった。この結果は、配管から流出した汚泥泡が改質汚泥と排ガスに分離し、汚泥泡容積は改質汚泥の50%まで減少
することを示す。また、レイノルズ数Reが800以上では汚泥泡と改質汚泥の容積比はほぼ
一定値になった。この結果から、流体(汚泥泡4)のレイノルズ数Reが800以上となるよ
うに、配管絞り部52の配管径と汚泥泡の流速を制御すれば、汚泥泡4を改質汚泥12と排ガス13に効率良く分離することが可能であることが分かった。
なお、レイノルズ数Reが800に満たない場合でも、800に近い値になるほど、気液分離の効率が良くなることは言うまでもない。
【0045】
ここで、直径1mの円筒形状のオゾン反応槽1に、汚泥泡4の上昇速度が0.001m/secとなるようにオゾンガス8を流して汚泥処理を行う場合について、汚泥泡結合部5の配管絞り部52の配管径を算出する。オゾン反応槽1の内径と汚泥泡4の上昇速度から、オゾン反応槽1に流れるオゾンガス8の流量は0.000785m3/secとなる。このオゾンガス8が流速U
(m/sec)で配管絞り部52を流れる際の、汚泥泡4のレイノルズ数Reが800となる場合の配管絞り部52の直径L(m)を算出すると、この配管内径は約8cmとなる。このとき、動
粘性係数ν(m2/sec)に20℃における空気の値(1.5×10-5(m2/sec))を使用するもの
とする。
【0046】
なお、オゾン反応槽1で発生する汚泥泡4の径は1mm程度であるため、直径8cmの内径を
持つ配管(配管絞り部52)内においては、同時に多数の汚泥泡4の結合現象が生じる状態となる。そして、泡径に対して配管内径が十分に大きいため、配管内部への汚泥蓄積を抑制することができ、汚泥処理流路が閉塞状態となることはなく、常に同流路内に流体を流すことが可能な導通状態に保つことができる。
【0047】
このように、本発明の実施の形態1による汚泥処理装置100においては、汚泥含有液6中にオゾンガス8を吹き込んで発泡させ、汚泥が付着した汚泥泡4を生成するため、汚泥泡4が破泡するまでの間に、汚泥泡4の内部に含まれるオゾンガス8と汚泥泡4の表面の汚泥とが反応し、改質汚泥12が生成される。汚泥泡4がオゾン反応槽1の上面部に到達する時間は、汚泥含有液6の中をオゾンガス8が浮上する時間よりも長く、汚泥泡4に付着した汚泥はオゾンガス8によって効率良く改質される。
【0048】
また、汚泥泡移送配管2に備えられた汚泥泡結合部5において、汚泥泡4同士が結合し、大きな汚泥泡4bとなるため、破泡しやすい状態を得ることができる。改質汚泥分離槽3の内部に汚泥泡4bが排出されると、容易に汚泥泡4bを改質汚泥12と排ガス13とに分離することができる。
そして、汚泥泡4のレイノルズ数Reが800以上となるように、汚泥泡4の流路となる配
管絞り部52の内径寸法を制御しておくことで、汚泥泡4同士の結合効率を向上させることができる。
【0049】
本発明の実施の形態1の汚泥処理装置100は、その汚泥処理流路において、流体となる汚泥泡4の泡の形状を改質反応に必要な時間だけ保持し、十分な改質反応時間をとった後は、汚泥泡4を速やかに気液分離することができるように構成されている。
つまり、汚泥処理流路において、汚泥泡4の気液分離を実施したい部位(汚泥泡移送配管2の排出口2b)の手前側に汚泥泡結合部5を配設することにより、所望の箇所(汚泥泡移送配管2の排出口2b)に破泡しやすい大径化された汚泥泡4bを発生させ、排出口2bからの汚泥泡4bの放出にともなって、容易に汚泥泡4bの気液分離が行えるよう構成している。
【0050】
このような本発明の実施の形態1の汚泥処理装置100には、消泡剤や消泡手段を用いる必要がなく、汚泥泡移送配管2の排出口2bから放出される汚泥泡4bが、放出された気相内で自然に破泡するように汚泥泡4の液膜の改質を進め、泡形状を大径化するなどの工夫を施しているため、汚泥処理に要する費用を低減することが可能となる。
また、従来のように、汚泥の固形成分を沈殿させる水槽や脱水設備等を設ける必要がなく、設備面においても低コスト化が可能である。
【0051】
なお、図1では、オゾン反応槽1の上面が平坦な形状であり、その平面部に汚泥泡移送配管2の導入口2aを接続させた例を示していたが、オゾン反応槽1の上面を変形させ、導入口2aに向かって徐々にオゾン反応槽1の内部空間が狭くなるようにシェイプし、漏斗型とすることも可能である。
オゾン反応槽1の上面部が漏斗型に形成された場合、その漏斗形状部において、流体となる汚泥泡4は、下から上の方向に流れ、流路が狭まる導入口2aではその流速が大きくなり、汚泥泡4同士が結合しやすく、破泡しやすい状況を作ることができ、汚泥泡4の気液分離効率をより向上させることができる。
【0052】
実施の形態2.
上述の実施の形態1の汚泥処理装置100では、オゾン反応槽1の下流側に、汚泥泡4を気液分離するための分離槽として、一つの改質汚泥分離槽3を設けた例を示した。
しかし、汚泥の成分や処理条件によっては、一つの改質汚泥分離槽3を配設した汚泥処理装置100では、気液分離効率が追い付かず、改質汚泥分離槽3の内部に、破泡されな
い汚泥泡4が充満するような状況となる場合もある。そこで、この実施の形態2においては、より気液分離効率を向上させることが可能な汚泥処理装置100について、図5を用いて説明する。
【0053】
図5は、本発明の実施の形態2の汚泥処理装置100の構成図であり、改質汚泥分離槽3の下流側に、下流側改質汚泥分離槽30を増設した状態を示している。図5に示すように、汚泥泡4の気液分離を行うため分離槽は複数であり、それらの槽は流路に沿って直列に接続されている。
【0054】
この実施の形態2の汚泥処理装置100では、一つ目の分離槽となる改質汚泥分離槽3において、気液分離することができなかった汚泥泡4(結合された汚泥泡4bを含む場合もある。)を、流路の下流側に設けた二つ目の分離槽となる下流側改質汚泥分離槽30で気液分離することができる。
【0055】
このように、汚泥処理装置100において、汚泥泡4を気液分離するために、流路に沿って多段に分離槽を設けた構造を適用することで、汚泥泡4を改質汚泥12と排ガス13とに分離する効率を、単槽構造の分離槽のものよりも高めることが可能である。
【0056】
この実施の形態2の汚泥処理装置100では、上流側に設けられた改質汚泥分離槽3と、その下流側に設けられた下流側改質汚泥分離槽30とが、汚泥泡移送配管20によって連結されている。この汚泥泡移送配管20は、上流側に設けられた汚泥泡移送配管2と同様の機能を持ち、その流路の途中に複数の汚泥泡4(または4b)を結合させる汚泥泡結合部5を備えている。なお、汚泥泡移送配管2、20の内径寸法は、その流路内を流れる流体である汚泥泡4の物性や流速に依存して、各々、最適な寸法に調整して用いられることは言うまでもない。
【0057】
また、この実施の形態2の汚泥処理装置100では、排ガス排出配管14は、最も下流側の下流側改質汚泥分離槽30の上面部に設けられている。そして、上流側の改質汚泥分離槽3には、排ガス排出配管14の代わりに汚泥泡移送配管20の導入口部分を連結した構造となっている。さらに、図示しない改質汚泥排出配管15は、独立したタンク形状である改質汚泥分離槽3と下流側改質汚泥分離槽30のそれぞれの下方部に設けられ、気液分離によって得られた改質汚泥12を槽内から排出する構成となっている。
【0058】
図5に示す汚泥処理装置100によれば、一つ目の改質汚泥分離槽3における気液分離処理は、上述の実施の形態1において説明した要領で行われる。つまり、オゾン反応槽1で発生した汚泥泡4は、オゾン反応槽1に連結された汚泥泡移送配管2の流路に設けられた汚泥泡結合部5で、複数個が結合され、大径化された汚泥泡4bに変化し、改質汚泥分離槽3に移送され、この汚泥泡4bが破泡することで改質汚泥12と排ガス13に分離されることにより、第一段階の気液分離が行われる。
【0059】
このとき、改質汚泥分離槽3で、破泡した汚泥泡4(または4b)から生成された改質汚泥12は、改質汚泥分離槽3の底部に貯留される。汚泥泡4(または4b)の破泡によって分離された排ガス13は、改質汚泥分離槽3の上部に連結された下流側の汚泥泡移送配管20を通って下流側改質汚泥分離槽30側に流入する。
ここで、上流側の改質汚泥分離槽3で破泡しなかった汚泥泡4(または4b)は、改質汚泥分離槽3に貯留された改質汚泥12の上部に蓄積した状態となる。改質汚泥分離槽3の内部に蓄積した汚泥泡4(または4b)が、次第に増え、槽内の頂部に達するまで充満すると、下流側の汚泥泡移送配管20に流入し、その配管流路を通って下流側改質汚泥分離槽30へ移送され、第二段階の気液分離が行われる。
【0060】
ここで、下流側の汚泥泡移送配管20の流路の途中には、汚泥泡結合部5が設けられているため、上流側に設けられた汚泥泡結合部5と同様に汚泥泡4を結合することができる。しかし、汚泥処理流路においては、流路を流れる汚泥泡4の流量は、下流側になるほど気液分離が進むため、少なくなる。よって、汚泥泡移送配管2と20では、その流路を流れる汚泥泡4の流量が異なってくるため、仮に同じ配管径を適用すれば下流側における流速が小さくなってしまう。そこで、汚泥泡4の流量に応じて、汚泥泡移送配管2と20の内径寸法や、汚泥泡結合部5の配管絞り部52の内径寸法を、個々に、適正な寸法に制御して用いるものとする。
【0061】
なお、汚泥泡4が生成されてからの経過時間に応じて、オゾンガスによる汚泥の改質の進行度合いが異なってくるため、汚泥の改質による物性の変化も加味して、配管絞り部52の内径寸法を適正に制御することが好ましいことは言うまでもない。
【0062】
このような実施の形態2による汚泥処理装置100では、増設された下流側の汚泥泡結合部5を汚泥泡4が通過する際に汚泥泡4同士が結合し、大径化された汚泥泡4bが形成される。下流側改質汚泥分離槽30に流入した、結合により大径化された汚泥泡4bは、汚泥泡4の形状を保持している時間が、流路の延長に伴って実施の形態1の汚泥処理装置100のものよりも長くなっており、オゾンガスによる汚泥成分の改質に要する反応時間が十分に確保されている。そのため、汚泥泡4が下流側改質汚泥分離槽30の広い空間に放出されると、容易に破泡し、改質汚泥12と排ガス13とに分離される。この汚泥泡移送配管20の排出口にて気液分離されなかった汚泥泡4(または4b)があれば、下流側改質汚泥分離槽30の内部に貯留される。
【0063】
なお、下流側改質汚泥分離槽30に汚泥泡4(または4b)が貯留される状態にあっても、下流側改質汚泥分離槽30に流入する汚泥泡4(または4b)の数は、上流側の改質汚泥分離槽3に流入する汚泥泡4の数よりも少なくなる。そのため、下流側改質汚泥分離槽30の内部に蓄積する汚泥泡4(または4b)の蓄積速度は、改質汚泥分離槽3よりも遅くなる。
【0064】
上述したように、内部にオゾンガスを封入した汚泥泡4(または4b)は、その泡形状を保った状態にある場合、オゾンガスにより汚泥成分が改質される。そして、汚泥泡4(または4b)の槽内における蓄積速度が遅くなると、下流側改質汚泥分離槽30の内部における汚泥泡4(または4b)の滞留時間が長くなり、汚泥成分の改質がさらに進む。加えて、汚泥泡4(または4b)の液膜の水分は時間の経過とともに蒸発し、液膜の膜厚が次第に薄くなっていく。これらの効果によって下流側改質汚泥分離槽30の内部に貯留される汚泥泡4(または4b)は、より一層破泡しやすい状態となり、下流側改質汚泥分離槽30の内部に蓄積される汚泥泡4(または4b)の数は自然に減少していく。
【0065】
このように、本発明の実施の形態2による汚泥処理装置100は、改質汚泥分離槽3と下流側改質汚泥分離槽30を、汚泥処理流路に直列に設け、これら二つの分離槽を、汚泥泡結合部5を設けた汚泥泡移送配管20で連結した構成としている。これにより、上流側の分離槽である改質汚泥分離槽3で気液分離しきれなかった汚泥泡4(または4b)を、下流側改質汚泥分離槽30で改質汚泥12と排ガス13とに分離することができる。よって、実施の形態1の一つの分離槽を配設した汚泥処理装置100よりも、本実施の形態2のものの方が、より汚泥泡4の気液分離効率を向上させることができる。
【0066】
なお、図5では、増設した下流側改質汚泥分離槽30として一つの槽を例示したが、さらに分離槽の数を増やし、汚泥処理流路に、三槽以上の分離槽を直列に接続し、それらの分離槽間を、汚泥泡結合部5を設けた汚泥泡移送配管20で連結した構成とすることも可能である。
このように、より多段(多槽)の分離槽構造を適用することにより、汚泥泡4の気液分離効率をさらに高めることが可能となることは言うまでもない。
【0067】
実施の形態3.
上述の実施の形態2の汚泥処理装置100では、図5にその構成図を示したように、多段の分離槽となる改質汚泥分離槽3と下流側改質汚泥分離槽30が、それぞれ独立した槽(タンク)である場合について説明していた。この実施の形態3においては、多段の分離槽を一つの槽である一体型改質汚泥分離槽31に集約してなる汚泥処理装置100について説明する。
【0068】
図6は、本発明の実施の形態3による汚泥処理装置100を示す構成図であり、例えば円筒形などのタンク型の、一体型改質汚泥分離槽31の内部空間を上下方向に多段に仕切って複数の分離室とした、縦型の多段分離槽構造を示している。一体型改質汚泥分離槽31の内部を上下に仕切って得られた下段側の分離室が、流路の上流側の改質汚泥分離槽3であり、上段側の分離室が、下流側改質汚泥分離槽30である。
【0069】
このように、一体型改質汚泥分離槽31の高さ方向に、下流側の分離室ほど上側に積まれるように複数の分離室を積み上げた多段の分離槽構造とすることで、一段の分離槽とする場合よりも汚泥処理装置100の気液分離効率を向上させることが可能となる。
【0070】
図6に示すように、一体型改質汚泥分離槽31は、仕切板32によって下段側分離室となる改質汚泥分離槽3と、上段側分離室となる下流側改質汚泥分離槽30に仕切られている。
そして、一体型改質汚泥分離槽31の仕切板32には、この仕切板32に開口された孔部の周囲を取り巻き、下方部に伸びる配管33が設けられている。この上段側分離室の底面から下段側分離室の内部に伸びる配管33を介して、上段側分離室に貯留される改質汚泥12は、下段側分離室に移送される。よって、改質汚泥12を排出する改質汚泥排出配管15は、下段側分離室の底面部に連結されている。そして、排ガス13を排出する排ガス排出配管14は、上段側分離室の上面部に連結されている。
【0071】
図6に示した汚泥処理装置100の構成によれば、オゾン反応槽1で生成した汚泥泡4は汚泥泡移送配管2を介して、一体型改質汚泥分離槽31へ移送され、下段側分離室となる改質汚泥分離槽3に流入する。汚泥泡移送配管2の途中に設けられた汚泥泡結合部5により、汚泥泡4は結合して泡径の大きな汚泥泡4bとなっている。この大きな汚泥泡4bが、上流側の改質汚泥分離槽3に放出されると破泡し、改質汚泥12と排ガス13に分離される。改質汚泥12は改質汚泥分離槽3の底部に貯留される。破泡されなかった汚泥泡4は、貯留された改質汚泥12の上部に蓄積される。蓄積した汚泥泡4が改質汚泥分離槽3の頂部に達すると、排ガス13とともに、改質汚泥分離槽3の上部に連結された汚泥泡移送配管20を通って上段側分離室となる下流側改質汚泥分離槽30へ流入する。
【0072】
下流側改質汚泥分離槽30に至る汚泥泡移送配管20の途中には、汚泥泡結合部5が設けられているため、結合された汚泥泡4bの泡径は大きくなった状態で下流側改質汚泥分離槽30に放出され、破泡して改質汚泥12と排ガス13に分離される。上段側分離室となる下流側改質汚泥分離槽30で分離した改質汚泥12は、この上段側分離室の底部に貯留されるが、仕切板32に連結された配管33を介して下段側分離室側に自重で落下していくため、改質汚泥12を排出するための改質汚泥排出配管15は一つに集約させて下段側分離室の底面部に配設することが可能となる。
【0073】
また、下流側改質汚泥分離槽30に流入する、結合されなかった汚泥泡4は、上流側の改質汚泥分離槽3に流入する、結合されなかった汚泥泡4よりも数が少ないため、下流側
改質汚泥分離槽30における汚泥泡4の蓄積量はより少なくなる。さらに、下流側改質汚泥分離槽30では、蓄積した汚泥泡4の液膜が次第に蒸発し、汚泥泡4は容易に破泡する状態となっている。これにより、下流側改質汚泥分離槽30においては、汚泥泡4の蓄積量を小さく抑制することができる。
【0074】
図6に示した汚泥処理装置100の構成によれば、一つのタンクを上下に仕切って、縦方向に分離室を並べた構成としたことで、上述の実施の形態2の図5に示した複数の分離槽を個々の独立したタンクとして配設する場合と比べて、コンパクトな構成とすることができ、装置製作コストを低減することが可能となる。また、図6では、仕切板32によって一体型改質汚泥分離槽31を上下2段の分離室に分割した例を示したが、さらに多数の仕切板32を配設し、一つの一体型分離槽に、より多段の分離槽を設けた構成とすることも可能である。
【0075】
このように、仕切板32による槽内空間の分割で得た複数の分離室を、汚泥泡結合部5を設けた汚泥泡移送配管2(または20)で連結する構成とすることで、複数の汚泥泡4を結合する汚泥泡結合部5を汚泥処理流路に多段に設けることができ、汚泥泡4を結合させて大径化された汚泥泡4bに変化させる確率を向上させることができる。よって、汚泥泡4および4bを効率良く破泡させ、改質汚泥12と排ガス13とに分離することが可能となる。
なお、この一体型改質汚泥分離槽31を設けた上で、さらに下流側に分離槽を別タンクとして増設することも可能であることは言うまでもない。
【0076】
また、図6では、仕切板32は、表面部が水平となるように配設された平板状の部材である例を示したが、この形状に限るものではなく、仕切板32を、その中央部が下方へ向かって傾斜するようにすり鉢状に変形させ、そのすり鉢状の仕切板32と配管33との組み合わせにより漏斗形状部を得ることができる。これによれば、仕切板32の底面部が傾斜面であるため、堆積する改質汚泥12を配管33側に流入させやすい構造とすることが可能である。
【0077】
本発明は、以上のように説明し且つ記述した特定の詳細、および代表的な実施の形態に限定されるものではない。当業者によって容易に導き出すことのできる変形例、および効果も発明に含まれる。したがって、特許請求の範囲、およびその均等物によって定義される、総括的な発明の概念の精神から逸脱しない範囲で、様々な変更が可能である。また、各図中、同一符合は同一または相当部分を示すものである。
【0078】
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 オゾン反応槽、2、20 汚泥泡移送配管、2a 導入口、2b 排出口、3 改質汚泥分離槽、4、4a、4b 汚泥泡、5、5a、5b 汚泥泡結合部、6 汚泥含有液、7 汚泥含有液供給配管、8 オゾンガス、9 散気手段、10 残渣液排出配管、11 オゾンガス供給配管、12 改質汚泥、13 排ガス、14 排ガス排出配管、15
改質汚泥排出配管、30 下流側改質汚泥分離槽、31 一体型改質汚泥分離槽、32
仕切板、33 配管、51 流入口、51a テーパ面部、52 配管絞り部、53 流出口、100 汚泥処理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6