(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明を、作業車の一例であるトラクタに適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
尚、
図1に記載された符号Fの矢印が指し示す方向がトラクタの前側であり、符号Uの矢印が指し示す方向がトラクタの上側である。
又、
図2に記載された符号Fの矢印が指し示す方向がトラクタの前側であり、符号Rの矢印が指し示す方向がトラクタの右側である。
【0020】
図1〜8に示すように、本実施形態に例示されたトラクタは、車体の前後両端にわたる車体フレーム1、駆動可能な操舵輪として機能する左右の前輪2、駆動輪として機能する左右の後輪3、車体フレーム1の前部側に配置された原動部4、車体フレーム1の後部側に搭乗空間と運転部5とを形成するキャビン6、及び、車体フレーム1の後端部に昇降揺動可能に取り付けられた作業装置連結用の3点リンク機構7、などを備えている。
【0021】
図1に示すように、トラクタは、原動部4に配置されたエンジン8、エンジン8からの動力を断続するペダル操作式の主クラッチ9、主クラッチ9を経由した動力を走行用と作業用とに分岐して変速する変速伝動ユニット(図示せず)、及び、左右の後輪3に作用する左右のサイドブレーキ(図示せず)、などを備えている。エンジン8には、コモンレールシステムを備えた電子制御式のディーゼルエンジンが採用されている。
【0022】
図5〜6、
図8に示すように、3点リンク機構7は、車体に備えられた電子油圧制御式の昇降駆動ユニット10の作動によって上下方向に揺動駆動される。3点リンク機構7には、ロータリ耕耘装置、プラウ、ディスクハロー、カルチベータ、サブソイラ、播種装置、及び、散布装置、などの作業装置19が連結される。そして、3点リンク機構7に連結された作業装置19がロータリ耕耘装置などの駆動式である場合は、車体の後部から取り出された作業用の動力が外部伝動軸など介して作業装置19に伝達される。
【0023】
図1、
図8に示すように、運転部5には、左右の前輪2の手動操舵を可能にする手動操舵用のステアリングホイール11、主変速レバー12、副変速レバー13、前後進切り換え用のシャトルレバー14、作業装置19の高さ位置を設定する昇降レバー15、作業装置19の昇降を指令する昇降スイッチ、旋回上昇スイッチ、後進上昇スイッチ、PTOスイッチ、主クラッチ9の操作を可能にするクラッチペダル16、及び、左右のサイドブレーキの操作を可能にする左右のブレーキペダル(図示せず)、などの各種の人為操作具とともに、運転座席17などが備えられている。ステアリングホイール11は、全油圧式のパワーステアリングユニット(以下、PSユニットと称する)18などを介して左右の前輪2に連係されている。
【0024】
図1〜4に示すように、キャビン6は、左右のフロントピラー21、左右のセンタピラー22、左右のリアピラー23、各ピラー21〜23に支持されたルーフ24、キャビン6の前面を形成するフロントパネル25、左右のセンタピラー22に開閉揺動可能に支持された左右のドアパネル26、キャビン6の後部側面を形成する左右のサイドパネル27、及び、キャビン6の後面を形成するリアパネル28、などを備えている。
【0025】
ルーフ24は、各ピラー21〜23に連接されたルーフフレーム29、ルーフフレーム29から後方に延出する後部フレーム30、ルーフフレーム29などを下方から覆う樹脂製のインナルーフ(図示せず)、後部フレーム30などを下方から覆うリアカバー31、並びに、ルーフフレーム29及び後部フレーム30などを上方から覆う樹脂製のアウタルーフ32、などを備えている。ルーフ24は、リアカバー31及びインナルーフとアウタルーフ32との間に内部空間が形成されている。内部空間には、搭乗空間の空気調節を可能にする空調ユニット(図示せず)、及び、ラジオ(図示せず)、などが収納されている。
【0026】
ルーフフレーム29は、左右のフロントピラー21にわたるフロントビーム35、左右いずれかのフロントピラー21とリアピラー23とにわたる左右のサイドビーム36、及び、左右のリアピラー23にわたるリアビーム37、などを備えて平面視略矩形状に形成されている。
【0027】
図8に示すように、車体には、車体の走行に関する制御を行う走行制御部40A、及び、作業装置19に関する制御を行う作業制御部40B、などを備えたメインの電子制御ユニット(以下、メインECUと称する)40が搭載されている。メインECU40は、前述した電子油圧制御式の昇降駆動ユニット10、エンジン用の電子制御ユニット(図示せず)、電子制御式の主変速装置41、電子制御式の前後進切換装置42、電子制御式のPTOクラッチ43、左右のサイドブレーキの自動操作を可能にする電子油圧式のブレーキ操作ユニット44、及び、車速を含む車内情報を取得する車内情報取得ユニット45、などに、CAN(Controller Area Network)などの車内LAN又は通信線を介して通信可能に接続されている。メインECU40などの電子制御ユニットは、CPU及びEEPROMなどを有するマイクロプロセッサを備えている。走行制御部40Aは、車体の走行に関する制御を可能にする各種の制御プログラムなどを有している。作業制御部40Bは、作業装置19に関する制御を可能にする各種の制御プログラムなどを有している。
【0028】
主変速装置41、前後進切換装置42、及び、PTOクラッチ43は、走行用の動力を有段階で変速する副変速装置(図示せず)、及び、作業用の動力を有段階で変速するPTO変速装置(図示せず)、などとともに変速伝動ユニットに備えられている。主変速装置41には、走行用の動力を無段階で変速する静油圧式の無段変速装置が採用されている。
前後進切換装置42は、走行用の動力を断続する走行クラッチを兼ねている。
【0029】
車内情報取得ユニット45には、前述した昇降スイッチ、旋回上昇スイッチ、後進上昇スイッチ、及び、PTOスイッチ、などの各種のスイッチ類、並びに、エンジン8の出力回転数を検出する回転センサ、副変速装置の出力回転数を車速として検出する車速センサ、主変速レバー12の操作位置を検出する主変速センサ、副変速レバー13の操作位置を検出する副変速センサ、シャトルレバー14の操作位置を検出するシャトルセンサ、昇降レバー15の操作位置を検出する昇降センサ、昇降駆動ユニット10における左右のリフトアーム(図示せず)の上下揺動角度を作業装置19の高さ位置として検出する高さセンサ、及び、前輪2の舵角を検出する舵角センサ、などの各種のセンサ類が含まれている。
【0030】
走行制御部40Aは、回転センサの出力と車速センサの出力と主変速センサの出力と副変速センサの出力とに基づいて、車速が、エンジン回転数と主変速レバー12の操作位置と副変速レバー13の操作位置とから求めた制御目標車速に達するように、主変速装置41のトラニオン軸(図示せず)を操作する車速制御を行う。これにより、運転者は、主変速レバー12を任意の操作位置に操作することにより、車速を任意の速度に変更することができる。
【0031】
走行制御部40Aは、シャトルセンサの出力に基づいて、シャトルレバー14の操作位置に応じた伝動状態に前後進切換装置42を切り換える前後進切り換え制御を行う。これにより、運転者は、シャトルレバー14を前進位置に操作することにより、車体の進行方向を前進方向に設定することができる。運転者は、シャトルレバー14を後進位置に操作することにより、車体の進行方向を後進方向に設定することができる。
【0032】
作業制御部40Bは、昇降センサの出力と高さセンサの出力とに基づいて、昇降レバー15の操作位置に応じた高さ位置に作業装置19が位置するように昇降駆動ユニット10の作動を制御するポジション制御を行う。これにより、運転者は、昇降レバー15を任意の操作位置に操作することにより、作業装置19の高さ位置を任意の高さ位置に変更することができる。
【0033】
作業制御部40Bは、昇降スイッチの手動操作によって昇降スイッチが上昇指令状態に切り換えられると、昇降スイッチからの上昇指令と高さセンサの出力とに基づいて、作業装置19が予め設定された上限位置まで上昇するように昇降駆動ユニット10の作動を制御する上昇制御を行う。これにより、運転者は、昇降スイッチを上昇指令状態に切り換えることにより、作業装置19を上限位置まで自動的に上昇させることができる。
【0034】
作業制御部40Bは、昇降スイッチの手動操作によって昇降スイッチが下降指令状態に切り換えられると、昇降スイッチからの下降指令と昇降センサの出力と高さセンサの出力とに基づいて、作業装置19が昇降レバー15によって設定された作業高さ位置まで下降するように昇降駆動ユニット10の作動を制御する下降制御を行う。これにより、運転者は、昇降スイッチを下降指令状態に切り換えることにより、作業装置19を作業高さ位置まで自動的に下降させることができる。
【0035】
作業制御部40Bは、旋回上昇スイッチの手動操作によって旋回連動上昇制御の実行が選択された場合は、前輪2の舵角を検出する舵角センサの出力に基づいて、前輪2の舵角が畦際旋回用の設定角度に達したことを検知したときに、前述した上昇制御を自動的に行う。これにより、運転者は、旋回連動上昇制御の実行を選択しておくことにより、畦際旋回の開始に連動して、作業装置19を上限位置まで自動的に上昇させることができる。
【0036】
作業制御部40Bは、後進上昇スイッチの手動操作によって後進連動上昇制御の実行が選択された場合は、シャトルセンサの出力に基づいて、シャトルレバー14の後進位置への手動操作を検知したときに、前述した上昇制御を自動的に行う。これにより、運転者は、後進連動上昇制御の実行を選択しておくことにより、後進走行への切り換えに連動して、作業装置19を上限位置まで自動的に上昇させることができる。
【0037】
作業制御部40Bは、PTOスイッチの手動操作によってPTOスイッチの操作位置が入り位置に切り換えられると、この入り位置への切り換えに基づいて、作業用の動力が作業装置19に伝達されるようにPTOクラッチ43を入り状態に切り換えるクラッチ入り制御を行う。これにより、運転者は、PTOスイッチを入り位置に操作することによって作業装置19を作動させることができる。
【0038】
作業制御部40Bは、PTOスイッチの手動操作によってPTOスイッチの操作位置が切り位置に切り換えられると、この切り位置への切り換えに基づいて、作業用の動力が作業装置19に伝達されないようにPTOクラッチ43を切り状態に切り換えるクラッチ切り制御を行う。これにより、運転者は、PTOスイッチを切り位置に操作することによって作業装置19を停止させることができる。
【0039】
作業制御部40Bは、PTOスイッチの手動操作によってPTOスイッチの操作位置が自動位置に切り換えられると、前述した上昇制御の実行に連動して前述したクラッチ切り制御を自動的に行い、又、前述した下降制御の実行に連動して前述したクラッチ入り制御を自動的に行う。これにより、運転者は、PTOスイッチを自動位置に操作しておくことにより、作業装置19の上限位置への自動上昇に連動して作業装置19を停止させることができ、又、作業装置19の作業高さ位置への自動下降に連動して作業装置19を作動させることができる。
【0040】
図1〜8に示すように、このトラクタは、運転モードの選択を可能にする選択スイッチ50、及び、車体の自動運転を可能にする自動運転用の電子制御システム51、を備えている。又、このトラクタは、運転モードとして、手動運転モードと自動運転モードと協調運転モードとを備えている。電子制御システム51は、前述したメインECU40、左右の前輪2の自動操舵を可能にする自動操舵ユニット52、車体の位置及び方位を測定する測位ユニット53、及び、車体の周囲を監視する監視ユニット54、などを備えている。
【0041】
図8に示すように、自動操舵ユニット52は、前述したPSユニット18によって構成されている。PSユニット18は、手動運転モードが選択された場合は、ステアリングホイール11の回動操作に基づいて左右の前輪2を操舵する。又、PSユニット18は、自動運転モード又は協調運転モードが選択された場合は、メインECU40からの制御指令に基づいて左右の前輪2を操舵する。
【0042】
上記の構成により、自動操舵専用のステアリングユニットを備えることなく、左右の前輪2を自動で操舵することができる。又、PSユニット18の電気系に不具合が生じた場合は、搭乗者による手動操舵に簡単に切り換えることができ、車体の運転を継続することができる。
【0043】
図1〜4、
図8に示すように、測位ユニット53は、全地球航法衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)の一例である周知のGPS(Global Positioning System)を利用して車体の位置及び方位を測定する衛星航法装置55を備えている。GPSを利用した測位方法には、DGPS(Differential GPS)やRTK−GPS(Real Time Kinematic GPS)などがあるが、本実施形態においては、移動体の測位に適したRTK−GPSが採用されている。
【0044】
衛星航法装置55は、GPS衛星(図示せず)から送信された電波と、既知位置に設置された基準局(図示せず)から送信された測位データとを受信する衛星航法用のアンテナユニット56を備えている。基準局は、GPS衛星からの電波を受信して得た測位データを衛星航法装置55に送信する。衛星航法装置55は、GPS衛星からの電波を受信して得た測位データと、基準局からの測位データとに基づいて、車体の位置及び方位を求める。
【0045】
アンテナユニット56は、GPS衛星からの電波の受信感度が高くなるように、車体の最上部に位置するキャビン6のルーフ24に取り付けられている。そのため、GPSを利用して測定した車体の位置及び方位には、車体のヨーイング、ピッチング、又は、ローリングに伴うアンテナユニット56の位置ズレに起因した測位誤差が含まれている。そこで、アンテナユニット56の内部には、前述した測位誤差を取り除く補正を可能にするために、3軸のジャイロスコープ(図示せず)と3方向の加速度センサ(図示せず)とを有して車体のヨー角、ピッチ角、ロール角、などを計測する慣性計測装置(IMU:Inertial
Measurement Unit)57が備えられている。慣性計測装置57は、前述したアンテナユニット56の位置ズレ量を求め易くするために、アンテナユニット56とともに、平面視において車体におけるトレッドTの中央部でホイールベースLの中央部に位置するように、キャビン6のルーフ24における前部上面の左右中央箇所に取り付けられている(
図2参照)。
【0046】
図8に示すように、メインECU40は、車体の自動運転を可能にする各種の制御プログラムなどを有する自動運転制御部40Cを備えている。自動運転制御部40Cは、選択スイッチ50の人為操作によって自動運転モード又は協調運転モードが選択された場合に、車体を自動で運転する自動運転制御を行う。自動運転制御部40Cは、自動運転モードでの自動運転制御においては、車体が予め設定された圃場の目標走行経路を設定速度で自動走行しながら適正に作業を行うように、目標走行経路及び測位ユニット53の測位結果などに基づいて、走行制御部40A及び作業制御部40Bなどに各種の制御指令を適切なタイミングで送信する。走行制御部40Aは、自動運転制御部40Cからの各種の制御指令及び車内情報取得ユニット45の各種取得情報などに基づいて、主変速装置41及び前後進切換装置42などに各種の制御指令を適切なタイミングで送信して主変速装置41及び前後進切換装置42などの作動を制御する。作業制御部40Bは、自動運転制御部40Cからの各種の制御指令及び車内情報取得ユニット45の各種取得情報などに基づいて、昇降駆動ユニット10及びPTOクラッチ43などに各種の制御指令を適切なタイミングで送信して昇降駆動ユニット10及びPTOクラッチ43などの作動を制御する。
【0047】
目標走行経路は、圃場での手動運転による作業走行時に走行した走行経路、及び、畦際旋回開始地点などが、測位ユニット53の測位結果などに基づいてデータ化されたものであってよい。又、目標走行経路は、圃場での手動運転によるティーチング走行時に走行した走行経路、及び、畦際旋回開始地点などが、測位ユニット53の測位結果などに基づいてデータ化されたものであってよい。
【0048】
図1〜8に示すように、監視ユニット54は、車体に対する至近距離内(例えば1m以内)での障害物の接近を検出する障害物検出モジュール58、車体に対する近距離(例えば10m以内)において障害物を探知する前後3個のレーザスキャナ(障害物探知器の一例)59、障害物との接触を回避する接触回避制御を行う接触回避制御部40D、車体の周囲を撮影する4台の監視カメラ60、監視カメラ60が撮影した画像を処理する画像処理装置61、などを備えている。
【0049】
図1〜7、
図9〜11に示すように、各レーザスキャナ59は、約270度程度の最大検出角度を有して障害物の探知を行う探知部59A、及び、探知部59Aからの探知情報を処理する処理部59B、などを備えている。各探知部59Aは、所定の探知対象領域A1〜A2(
図5〜7参照)にレーザ光線を照射して反射光を受け取る。処理部59Bは、レーザ光線の照射から受光までの時間に基づいて、車体に対する近距離において障害物が接近しているか否かなどを判別し、判別結果を接触回避制御部40Dに出力する。前側の左右のレーザスキャナ59は、車体の前方を含む車体の左右両側方が探知対象領域A1に設定されている。後側の単一のレーザスキャナ59は、作業装置19の後方などが探知対象領域A2に設定されている。
【0050】
図1〜3、
図5〜8に示すように、障害物検出モジュール58は、車体に対する至近距離内において障害物を探知する8個のソナー(障害物探知器の一例)62、及び、各ソナー62からの探知情報に基づいて車体に対する至近距離内に障害物が接近したか否かの判別処理を行う2台の探知情報処理装置63、を備えている。8個のソナー62は、車体の前方と左右両側方とに所定の探知対象領域A3〜A6(
図5〜6参照)を有するように、車体の前端部と左右両端部とに分散して配置されている。各ソナー62は、それらの探知で得た探知情報を対応する探知情報処理装置63に送信する。各探知情報処理装置63は、対応する各ソナー62における超音波の発信から受信までの時間に基づいて、車体に対する至近距離内に障害物が接近したか否かの判別処理を行い、この判別結果を接触回避制御部40Dに出力する。
【0051】
これにより、車体前方の探知対象領域A3又は車体横側方の探知対象領域A4〜A6において障害物が車体に対する至近距離内に異常接近した場合は、この障害物の接近が障害物検出モジュール58によって検出される。又、車体の後端部にはソナー62が備えられていないことにより、障害物検出モジュール58が、車体の後部に昇降可能に取り付けられた作業装置19を障害物として誤検出する虞が回避されている。
【0052】
ちなみに、障害物検出モジュール58は、例えば、車体が自動運転によって畦に向かって走行しているとき、又は、車体が自動運転によって畦際で畦に沿って走行しているときに、畦が車体に対する至近距離内に異常接近した場合は、この畦を障害物として検出する。又、移動体が車体に対する至近距離内に異常接近した場合は、この移動体を障害物として検出する。
【0053】
図8に示すように、接触回避制御部40Dは、接触回避制御の実行を可能にする制御プログラムなどを有してメインECU40に備えられている。接触回避制御部40Dは、各レーザスキャナ59及び各探知情報処理装置63の判別結果に基づいて、車体に対する近距離内にて障害物の存在を検知している場合に、自動運転制御部40Cの制御作動に優先して前述した接触回避制御を行う。
【0054】
接触回避制御において、接触回避制御部40Dは、接触回避制御の開始とともに走行制御部40Aに減速指令を出力する。これにより、接触回避制御部40Dは、走行制御部40Aの制御作動によって主変速装置41を減速作動させて、車速を通常走行用の設定速度から接触回避用の設定速度まで低下させる。
接触回避制御部40Dは、低速走行状態において、各レーザスキャナ59及び各探知情報処理装置63の判別結果に基づいて、車体に対する至近距離内への障害物の接近を検知したときに、走行制御部40A及び作業制御部40Bに緊急停止指令を出力する。これにより、接触回避制御部40Dは、走行制御部40Aの制御作動によって前後進切換装置42を中立状態に切り換えるとともに、ブレーキ操作ユニット44の作動によって左右のブレーキを作動させて左右の前輪2と左右の後輪3とを制動させる。又、接触回避制御部40Dは、作業制御部40Bの作動によってPTOクラッチ43を切り状態に切り換えて作業装置19の作動を停止させる。その結果、車体に対する至近距離内への障害物の接近に基づいて、車体の走行停止と作業装置19の作動停止とを迅速に行うことができ、車体が障害物に接触する虞を回避することができる。
接触回避制御部40Dは、緊急停止状態を含む車体の停止状態において、各レーザスキャナ59及び各探知情報処理装置63の判別結果に基づいて、車体に対する至近距離内に障害物が存在しないことを検知した場合は、運転開始指令に基づく車体の停止状態から前述した低速走行状態への移行を許容する。
接触回避制御部40Dは、低速走行状態において、各レーザスキャナ59及び各探知情報処理装置63の判別結果に基づいて、車体に対する近距離内に障害物が存在しないことを確認したときに、走行制御部40Aに増速指令を出力し、その後、接触回避制御を終了する。これにより、接触回避制御部40Dは、走行制御部40Aの制御作動によって主変速装置41を増速作動させて、車速を接触回避用の設定速度から通常走行用の設定速度まで上昇させた後、自動運転制御部30Cの制御作動に基づく自動運転を再開させる。
【0055】
図1〜4、
図8に示すように、各監視カメラ60には、広角の可視光用CCDカメラが採用されている。各監視カメラ60は、車体の周囲を漏れなく撮影するために、キャビン6のルーフ24における前後左右の各端部に分散して配置されている。
【0056】
画像処理装置61は、各監視カメラ60からの映像信号を処理して、車体前方画像、車体右方画像、車体左方画像、車体後方画像、及び、車体の真上から見下ろしたような俯瞰画像、などを生成して、搭乗空間の表示ユニット64などに送信する。表示ユニット64は、液晶パネル64Aに表示される各種の操作スイッチ(図示せず)の人為操作などに基づいて、液晶パネル64Aに表示される画像などを切り換える制御部64B、などを有している。
【0057】
上記の構成により、手動運転モードにおいては、運転者は、画像処理装置61からの画像を液晶パネル64Aに表示させることにより、運転中の車体の周辺状況や作業状況を容易に視認することができる。これにより、運転者は、作業の種類などに応じた良好な車体の運転を容易に行うことができる。又、自動運転モード又は協調運転モードにおいて管理者が車体に搭乗する場合は、管理者は、画像処理装置61からの画像を液晶パネル64Aに表示させることにより、自動運転中又は協調運転中の車体の周辺状況や作業状況を容易に視認することができる。そして、管理者は、自動運転中又は協調運転中に車体周辺又は作業状況などにおいて異常を視認した場合は、その異常の種類や程度などに応じた適切な処置を速やかに行うことができる。
【0058】
図1〜4、
図8に示すように、電子制御システム51は、各種の情報を他車などとの間で無線通信する通信モジュール65、及び、他車からの情報などに基づいて協調運転制御を行う協調運転制御部40E、を備えている。協調運転制御部40Eは、協調運転制御の実行を可能にする制御プログラムなどを有してメインECU40に備えられている。
【0059】
自動運転制御部40Cは、協調運転モードでの自動運転制御においては、車体が予め設定された併走用の目標走行経路を設定速度で自動走行しながら適正に作業を行うように、併走用の目標走行経路及び測位ユニット53の測位結果などに基づいて、走行制御部40A及び作業制御部40Bなどに各種の制御指令を適切なタイミングで送信する。
【0060】
協調運転制御部40Eは、協調運転制御において車間距離判定処理と車間距離適正化処理を行う。協調運転制御部40Eは、車間距離判定処理においては、自車の併走用の目標走行経路、測位ユニット53の測位結果、他車の併走用の目標走行経路、及び、他車の位置情報、などに基づいて、先行する他車と自車との進行方向での車間距離、及び、先行する他車と自車との併走方向での車間距離、などが適正であるか否かを判別する。そして、いずれかの車間距離が適正でない場合に、その車間距離が適正になるように、自動運転制御部40Cの制御作動に優先して車間距離適正化処理を行う。
【0061】
車間距離適正化処理において、協調運転制御部40Eは、進行方向での車間距離が適正距離よりも短い場合は、走行制御部40Aに減速指令を出力することにより、走行制御部40Aの制御作動によって主変速装置41を減速作動させて、進行方向での車間距離を適正距離に復帰させる。そして、協調運転制御部40Eは、進行方向での車間距離が適正距離に復帰するのに伴って、自動運転制御部40Cの制御作動に基づく自動運転を再開させることにより、車速を通常走行用の設定速度まで上昇させて進行方向での車間距離を適正距離に維持する。
又、協調運転制御部40Eは、進行方向での車間距離が適正距離よりも長い場合は、走行制御部40Aに増速指令を出力することにより、走行制御部40Aの制御作動によって主変速装置41を増速作動させて、進行方向での車間距離を適正距離に復帰させる。そして、協調運転制御部40Eは、進行方向での車間距離が適正距離に復帰するのに伴って、自動運転制御部40Cの制御作動に基づく自動運転を再開させることにより、車速を通常走行用の設定速度まで低下させて進行方向での車間距離を適正距離に維持する。
一方、協調運転制御部40Eは、併走方向での車間距離が適正距離よりも長い場合は、走行制御部40Aに他車側への操舵指令を出力することにより、走行制御部40Aの制御作動によって左右の前輪2を他車側に操舵させて、併走方向での車間距離を適正距離に復帰させる。そして、協調運転制御部40Eは、併走方向での車間距離が適正距離に復帰するのに伴って、自動運転制御部40Cの制御作動に基づく自動運転を再開させることにより、車体の進行方向を通常走行用の進行方向に戻して併走方向での車間距離を適正距離に維持する。
又、協調運転制御部40Eは、併走方向での車間距離が適正距離よりも短い場合は、走行制御部40Aに他車から離れる側への操舵指令を出力することにより、走行制御部40Aの制御作動によって左右の前輪2を他車から離れる側に操舵させて、併走方向での車間距離を適正距離に復帰させる。そして、協調運転制御部40Eは、併走方向での車間距離が適正距離に復帰するのに伴って、自動運転制御部40Cの制御作動に基づく自動運転を再開させることにより、車体の進行方向を通常走行用の進行方向に戻して併走方向での車間距離を適正距離に維持する。
これにより、自車を、先行する他車に対して、進行方向での車間距離と併走方向での車間距離とを適正に維持しながら自動で適正に併走させることができる。
【0062】
図1〜3、
図8に示すように、通信モジュール65は、周波数帯が異なる3本の通信アンテナ66〜68と通信情報処理装置69とを備えている。各通信アンテナ66〜68は、通信感度を高めるためにキャビン6の上端部に配置されている。通信情報処理装置69は、防水性及び防塵性などを高めるためにルーフ24の内部空間に配置されている。
【0063】
3本の通信アンテナ66〜68のうち、周波数帯が最も高い第1通信アンテナ66は、情報量の多い画像情報を、他車の通信モジュール65などとの間で無線通信する。その次に周波数帯が高い第2通信アンテナ67は、画像情報を除いた車速などの車内情報を、他車の通信モジュール65などとの間で無線通信する。周波数帯が最も低い第3通信アンテナ68は、遠隔操作具70からの運転開始指令及び運転停止指令などの各種の情報を遠隔操作具70との間で無線通信する。
【0064】
第1通信アンテナ66は、ルーフ24における後部フレーム30の左前端部に第1支持具71を介して取り付けられている。第2通信アンテナ67は、後部フレーム30の右前端部に第2支持具72を介して取り付けられている。第3通信アンテナ68は、ルーフ24における上面の左前部に第3支持具73を介して取り付けられている。ちなみに、キャビン6における左側のフロントピラー21の上端部には、ラジオ用の受信アンテナ74が取り付けられている。
【0065】
図8に示すように、通信情報処理装置69には、車内情報取得ユニット45、各レーザスキャナ59、画像処理装置61、及び、各探知情報処理装置63、などがメインECU40を介して通信可能に接続されている。
【0066】
これにより、車内情報取得ユニット45が取得した車速などの車内情報、各レーザスキャナ59及び各探知情報処理装置63からの監視情報、及び、画像処理装置61からの監視画像情報、などを、それぞれ専用の通信アンテナ66〜68を介して他車などに良好に通信することができ、協調走行する他車と共有することができる。そして、共有する車内情報と監視情報と監視画像情報とを有効利用することにより、協調走行する他車と連動した車速調整、及び、協調走行する他車と連動した障害物との接触回避、などが行い易くなる。その結果、協調走行する他車との接触などをより確実に回避することができる。
【0067】
図1、
図8に示すように、遠隔操作具70は、手動操作された場合に運転開始指令を出力する開始スイッチ70A、手動操作された場合に運転停止指令を出力する停止スイッチ70B、運転開始指令や運転停止指令などの各種の情報を処理する情報処理部70C、及び、第3通信アンテナ68との間で無線通信する通信アンテナ70D、などを備えている。
【0068】
図1〜7、
図9〜10に示すように、車体前側の左右のレーザスキャナ59は、車体の前方を含む車体の左右両側方が探知対象領域A1になるように、左右のフロントピラー21に第1取付ユニット80を介して取り付けられている。前側の各レーザスキャナ59は、それらの取り付け姿勢が、正面視で車体横外側に傾倒し、かつ、側面視で車体前側に傾倒する横外側倒れの前傾姿勢に設定されている。前側の各レーザスキャナ59は、それらの探知対象領域A1として、車体の前側ほど地面に近づく前下がりで、車体の横外側ほど地面に近づく横外下がりの傾斜領域を有している。尚、
図5においては、便宜上、探知対象領域A1が模式的に直線で示されている。
【0069】
車体後側のレーザスキャナ59は、作業装置19の後方が主な探知対象領域A2になるように、ルーフ24における後部フレーム30の左右中央箇所に第2取付ユニット90を介して取り付けられている。後側のレーザスキャナ59は、その取り付け姿勢が、側面視で車体後側に傾倒する後傾姿勢に設定されている。後側のレーザスキャナ59は、その探知対象領域A2として、車体の後側ほど地面に近づく後下がりで、地面に近づくほど左右方向に広くなる裾広がりの傾斜領域を有している。尚、
図5においては、便宜上、探知対象領域A2が模式的に直線で示されている。
【0070】
各レーザスキャナ59の探知対象領域A1〜A2のうち、太い一点鎖線で示す領域は、所定の高さよりも低い高さ領域に存在する障害物を探知することが可能な領域である(
図6参照)。又、細い一点鎖線で示す領域は、所定の高さよりも低い高さ領域に存在する障害物を探知することが不可能な領域である(
図6参照)。
【0071】
8個のソナー62のうち、車体前端部の2個のソナー62は、ボンネット38における前端部の上下中央箇所に、左右方向に所定間隔をあけて取り付けられている。車体前端部の各ソナー62は、それらの探知対象領域A3が、ボンネット38の前方における各レーザスキャナ59の探知対象領域A1よりも上側の領域に設定されている(
図5参照)。
【0072】
車体前側の2個のソナー62は、左右のフロントピラー21に第1取付ユニット80を介して取り付けられている。車体前側の各ソナー62は、それらの探知対象領域A4が、前輪2と後輪3との間に位置する各フロントピラー21の横外方における各レーザスキャナ59の探知対象領域A1よりも下側の領域に設定されている(
図5参照)。
【0073】
車体後側の2個のソナー62は、左右のリアフェンダ39における上部の前側箇所に取り付けられている。車体後側の各ソナー62は、それらの探知対象領域A5が、各後輪3の前側横外方における各レーザスキャナ59の探知対象領域A1よりも下側の領域に設定されている(
図5参照)。
【0074】
車体後部の2個のソナー62は、左右のリアフェンダ39における上部の後端箇所に取り付けられている。車体後部の各ソナー62は、それらの探知対象領域A6が、各後輪3の後側横外方で作業装置19の前方における各レーザスキャナ59の探知対象領域A1よりも下側の領域に設定されている(
図5参照)。
【0075】
つまり、監視ユニット54は、車体の前方を含む車体の左右両側方が探知対象領域A1となる車体前側の左右のレーザスキャナ59と、作業装置19の後方が主な探知対象領域A2となる車体後側のレーザスキャナ59とに加えて、それらの死角となる領域が探知対象領域A3〜A6となる8個のソナー62を備えることにより、車体に対する近距離内の車体周辺での障害物の探知を洩れなく良好に行うことができる。
【0076】
図5〜7に示すように、各レーザスキャナ59及び各ソナー62の探知対象領域A1〜A6は、作業走行中に圃場の起伏などに応じて車体がローリング又はピッチングした場合であっても、圃場の地面が、各レーザスキャナ59及び各ソナー62の探知対象領域A1〜A6に入り込む虞がないように適正に設定されている。これにより、作業走行中における車体のローリング又はピッチングに起因して、各レーザスキャナ59及び各ソナー62が圃場の地面を障害物として誤検出する虞を回避することができる。
【0077】
各レーザスキャナ59及び各ソナー62の探知対象領域A1〜A6は、制動距離などとの関係から、車速が速くなるほど車体から離れる方向に広くなるように制御設定されている。
【0078】
車体後側のレーザスキャナ59の探知対象領域A2及び左右のリアフェンダ39に備えた車体後側の各ソナー62の探知対象領域A5〜A6は、作業装置19の種類又は左右幅などに応じて設定変更することができる。
【0079】
図3、
図9〜10に示すように、左右の第1取付ユニット80は、車体に対する車体前側のレーザスキャナ59及びソナー62の取り付け角度を調整する第1調整機構81を備えている。第2取付ユニット90は、車体に対する車体後側のレーザスキャナ59の取り付け角度を調整する第2調整機構91を備えている。
【0080】
左右の第1取付ユニット80は、左右のフロントピラー21に固定された固定部材82と、探知対象領域A1を探知するレーザスキャナ59を支持する第1支持部材83と、探知対象領域A4を探知するソナー62を支持する第2支持部材84とを備えている。第1調整機構81は、固定部材82に第1支持部材83と第2支持部材84とが個々に角度調整可能に取り付けられることにより、レーザスキャナ59とソナー62との独立した取り付け角度の調整を可能にしている。
【0081】
第2取付ユニット90は、後部フレーム30の左右中央箇所に固定された左右の固定部材92と、探知対象領域A2を探知するレーザスキャナ59を支持する逆U字状の支持部材93とを備えている。第2調整機構91は、固定部材92に支持部材93が角度調整可能に取り付けられることにより、レーザスキャナ59の取り付け角度の調整を可能にしている。
【0082】
この構成により、製造誤差などに起因して、車体前側の左右のレーザスキャナ59と車体後側のレーザスキャナ59と車体前側の左右のソナー62とのいずれかにおいて、車体に対する取り付け角度に誤差が生じた場合には、第1調整機構81又は第2調整機構91により、それらのレーザスキャナ59又はソナー62の取り付け角度を容易に適正な取り付け角度に調整することができ、これにより、それらのレーザスキャナ59又はソナー62の探知対象領域A1,A2,A4にズレが生じる虞を回避することができる。
【0083】
その結果、前述したレーザスキャナ59又はソナー62の探知対象領域A1,A2,A4にズレが生じることに起因して、例えば、作業走行中に圃場の起伏などに応じて車体がローリング又はピッチングした場合、又は、前輪2又は後輪3が圃場の地面に沈み込んだ場合などにおいて、圃場の地面などが、前述したレーザスキャナ59又はソナー62の探知対象領域A1,A2,A4に入り込んで、これらのレーザスキャナ59又はソナー62によって障害物として探知される不都合、左右の前輪2が操舵された場合などにおいて、左右の前輪2が、前述した車体前側のレーザスキャナ59又はソナー62の探知対象領域A1,A4に入り込んで、これらのレーザスキャナ59又はソナー62によって障害物として探知される不都合、あるいは、作業装置19が上限位置に向けて上昇操作された場合などにおいて、作業装置19が、前述した車体後側のレーザスキャナ59の探知対象領域A2に入り込んで、このレーザスキャナ59によって障害物として探知される不都合、などの発生を防止することができる。
【0084】
そして、左右の第1取付ユニット80においては、単一の固定部材82にレーザスキャナ59とソナー62とが取り付けられることから、例えば、レーザスキャナ59とソナー62とを専用の固定部材82に個々に取り付ける場合に比較して、固定部材82の装備数を削減することによる構成の簡素化を図ることができる。
【0085】
図9に示すように、左右の第1取付ユニット80において、第1支持部材83は、横向きの単一の揺動支点軸83Aと、揺動支点軸83Aを挟んで上下方向に対向する位置に揺動支点軸83Aと平行に配置された一対のネジ軸83Bとを備えている。第2支持部材84及び固定部材82は、揺動支点軸83Aが挿通される単一の丸孔84A,82Aと、一対のネジ軸83Bが挿通される一対の長孔84B,82Bとを備えている。各第1調整機構81は、前述した揺動支点軸83A、一対のネジ軸83B、各丸孔84A,82A、一対の長孔84B,82B、一対のネジ軸83Bに外嵌される一対のワッシャ85、及び、一対のネジ軸83Bにねじ込まれる一対のナット86により、固定部材82にレーザスキャナ59とソナー62とを個々に揺動支点軸回りに角度調整可能に取り付けるように構成されている。
【0086】
上記の構成により、左右の第1取付ユニット80は、固定部材82が第1支持部材83と第2支持部材84との間に位置する配置で、第1支持部材83の揺動支点軸83Aが、固定部材82の車体内側から、固定部材82の丸孔82Aと第2支持部材
84の丸孔84Aとに挿通されるとともに、第1支持部材83の各ネジ軸83Bが、固定部材82の各長孔82Bと第2支持部材84の各長孔84Bとに挿通されることにより、各支持部材83,84が、固定部材82に対して各長孔82B,84Bの範囲内で揺動支点軸回りに個々に角度調整可能になる。そして、各支持部材83,84の角度調整後に、各ネジ軸83Bにナット86がねじ込まれて、固定部材82が第1支持部材83と第2支持部材84との間に挟み込まれることにより、各支持部材83,84が、固定部材82に対する任意の取り付け角度で固定される。これにより、車体前側のレーザスキャナ59とソナー62との取り付け角度を、それぞれの適正な取り付け角度に独立して調整することができる。
【0087】
つまり、左右の第1調整機構81を、第1支持部材83に備えた単一の揺動支点軸83Aと一対のネジ軸83B、第2支持部材84と固定部材82とに備えた単一の丸孔84A,82Aと一対の長孔84B,82B、一対のワッシャ85、及び、一対のナット86によって簡素に構成しながら、車体前側のレーザスキャナ59とソナー62との取り付け角度を、それぞれの適正な取り付け角度に独立して調整することができ、車体前側のレーザスキャナ59及びソナー62の各探知対象領域A1,A4にズレが生じる虞を回避することができる。
【0088】
図11に示すように、第2取付ユニット90において、左右の固定部材92は、左右向きの揺動支点軸92Aと、揺動支点軸92Aの後方に配置された長孔92Bとを備えている。支持部材93は、各揺動支点軸92Aに上下揺動可能に引っ掛かる左右の係合部93Aと、各長孔92Bに挿通された左右のボルト94がねじ込まれる左右の雌ネジ部93Bとを備えている。第2調整機構91は、前述した左右の揺動支点軸92A、左右の長孔92B、左右の係合部93A、左右の雌ネジ部93B、及び、左右のボルト94により、固定部材92にレーザスキャナ59を上下方向に角度調整可能に取り付けるように構成されている。
【0089】
上記の構成により、第2取付ユニット90は、各固定部材92の揺動支点軸92Aに支持部材93の各係合部93Aが引っ掛けられるとともに、各固定部材92の長孔92Bに挿通された各ボルト94が支持部材93の各雌ネジ部93Bにねじ込まれることにより、支持部材93が、左右の固定部材92に対して各長孔92Bの範囲内で上下方向に角度調整可能になる。そして、支持部材93の角度調整後に、各ボルト94が各雌ネジ部93Bに更にねじ込まれることにより、支持部材93が、左右の固定部材82に対する任意の取り付け角度で固定される。これにより、車体後側のレーザスキャナ59の取り付け角度を、適正な取り付け角度に調整することができる。
【0090】
つまり、第2調整機構91を、左右の固定部材92に備えた揺動支点軸92Aと長孔92B、支持部材93に備えた左右の係合部93Aと左右の雌ネジ部93B、及び、左右のボルト94によって簡素に構成しながら、車体後側のレーザスキャナ59の取り付け角度を適正な取り付け角度に調整することができ、車体後側のレーザスキャナ59の探知対象領域A2にズレが生じる虞を回避することができる。
【0091】
図4、
図9〜10に示すように、第1取付ユニット80は、第1調整機構81を覆い隠す第1カバー87を備えている。第2取付ユニット90は、第2調整機構91を覆い隠す第2カバー95を備えている。これにより、第1調整機構81又は第2調整機構91が使用者によって安易に操作されて、各レーザスキャナ59及び車体前側の各ソナー62の取り付け角度が不適切に変更される虞を抑制することができる。
【0092】
図9に示すように、第1カバー87は、センタピラー22及び第1調整機構81の固定部材82に取り付けられる樹脂製の外側カバー部87Aと、レーザスキャナ59に取り付けられる樹脂製の内側カバー部87Bとを備えて、左右方向に分割可能に構成されている。
【0093】
図4、
図10に示すように、第2カバー95は、ルーフ24のリアカバー31における後端部の左右中央箇所に形成された第1凹部31A、及び、ルーフ24のアウタルーフ32における後端部の左右中央箇所に形成された第2凹部32Aにより構成されている。つまり、リアカバー31の後端部とアウタルーフ32の後端部とが第2カバー95の構成部品に兼用されている。
【0094】
図1〜4、
図11〜13に示すように、監視ユニット54は、多数のLEDを有して各監視カメラ60の撮影対象箇所を照明する6台の照明灯75を備えている。これにより、夜間作業においても各監視カメラ60による車体周囲の撮影を良好に行うことができる。
そして、この周囲画像を協調走行する他車と共有して有効利用することにより、視認性が低下する夜間作業においても、協調走行する他車との車速調整、又は、協調走行する他車と連動した障害物との接触回避、などが行い易くなる。
【0095】
6台の照明灯75のうち、2台の照明灯75は、車体の前方を照明する前方用であり、前方用の監視カメラ60の左右に配置されている。1台の照明灯75は、車体の右方を照明する右方用であり、右方用の監視カメラ60の上方に配置されている。1台の照明灯75は、車体の左方を照明する左方用であり、左方用の監視カメラ60の上方に配置されている。2台の照明灯75は、車体の後方を照明する後方用であり、後方用の監視カメラ60の左右に配置されている。
【0096】
図11には、夜間に全ての照明灯75を消灯させた全消灯状態において、各監視カメラ60からの映像信号を処理して得られた俯瞰画像を表示ユニット64の液晶パネル64Aに表示させた状態が示されている。この全消灯状態においては、当然のことながら、液晶パネル64Aに表示された俯瞰画像からは障害物を視認することが不可能になる。
【0097】
図12には、夜間に前方用の2台の照明灯75のみを点灯させた前方照明状態において、各監視カメラ60からの映像信号を処理して得られた俯瞰画像を表示ユニット64の液晶パネル64Aに表示させた状態が示されている。この前方照明状態においては、前方用の2台の照明灯75が配置されたキャビン6の前端部から車体前側の所定領域を良好に照明することができ、これにより、液晶パネル64Aに表示された俯瞰画像からは、車体前側の所定領域に存在する障害物を視認することが可能になる。
【0098】
図13には、夜間に全ての照明灯75を点灯させた全照明状態において、各監視カメラ60からの映像信号を処理して得られた俯瞰画像を表示ユニット64の液晶パネル64Aに表示させた状態が示されている。この全照明状態においては、各照明灯75が配置されたキャビン6の前後左右から車体周辺の所定領域を良好に照明することができ、これにより、液晶パネル64Aに表示された俯瞰画像からは、車体周辺の所定領域に存在する障害物を視認することが可能になる。
【0099】
図1〜2に示すように、ボンネット38の前端上部には左右のヘッドライト76が備えられている。これにより、夜間の走行時には、左右のヘッドライト76を点灯させることにより、車体の前方を良好に照明することができ、夜間の走行が行い易くなる。
【0100】
〔別実施形態〕
本発明は、上記の実施形態に例示された構成に限定されるものではなく、以下、本発明に関する代表的な別実施形態を例示する。
【0101】
〔1〕作業車は、以下に例示する構成が採用されていてもよい。
例えば、作業車は、左右の後輪3に代えて左右のクローラを備えるセミクローラ仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車は、左右の前輪2及び左右の後輪3に代えて左右のクローラを備えるフルクローラ仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車は、左右の前輪2と左右の後輪3とのいずれか一方が駆動される二輪駆動式であってもよい。
例えば、作業車は、エンジン8の代わりに電動モータを備える電動仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車は、エンジン8と電動モータとを備えるハイブリッド仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車は、運転モードとして、少なくとも手動運転モードと自動運転モードと協調運転モードとのいずれか一つを備えていればよい。
例えば、作業車は、キャビン6に代えて保護フレームを備えていてもよい。
例えば、作業車は、障害物探知器(レーザスキャナ)59と障害物探知器(ソナー)62とのいずれか一方のみを備える構成であってもよい。
【0102】
〔2〕障害物探知器(レーザスキャナ)59の配置及び数量などは、作業車の構成や大きさなどに応じて種々の変更が可能である。
例えば、作業車が、キャビン6の代わりに保護フレームを備えていれば、障害物探知器(レーザスキャナ)59を保護フレームにおける上部の左右中央箇所に配置するようにしてもよい。
例えば、車体前側の障害物探知器(レーザスキャナ)59を一つにして、原動部4における上部の左右中央箇所、又は、キャビン6のルーフ24における前端部の左右中央箇所、などに配置するようにしてもよい。
例えば、車体後側の障害物探知器(レーザスキャナ)59を左右一対にして、キャビン6のルーフ24における後端部の左右中央箇所から外れた左右対称位置に配置するようにしてもよい。
【0103】
〔3〕障害物探知器(ソナー)62の配置及び数量などは、作業車の構成や大きさなどに応じて種々の変更が可能である。
例えば、作業車の全長が長ければ、障害物探知器62の数量を10個以上にしてもよく、作業車の全長が短ければ、障害物探知器62の数量を6個以下にしてもよい。
例えば、作業車が、キャビン6の代わりに保護フレームを備えていれば、障害物探知器62を保護フレームに取り付けるようにしてもよい。
【0104】
〔4〕障害物探知器62には、赤外線測距センサなどを採用してもよい。
【0105】
〔5〕車体の前端部に配置された2個のソナー62、車体の後側に配置された2個のソナー62、及び、車体の後部に配置された2個のソナー62のうちのいずれか又はすべてを、調整機構81,91を備える取付ユニット80,90を介して、取り付け角度を調整可能に車体に取り付けるようにしてもよい。
【0106】
〔6〕第1取付ユニット80の構成は種々の変更が可能である。
例えば、第1取付ユニット80は、障害物探知器(レーザスキャナ)59のみを車体に取り付け角度を調整可能に取り付けるように構成されていてもよい。
例えば、第1取付ユニット80は、障害物探知器(ソナー)62のみを車体に取り付け角度を調整可能に取り付けるように構成されていてもよい。
例えば、第1取付ユニット80は、3個以上の障害物探知器59,62を車体に個々に取り付け角度を調整可能に取り付けるように構成されていてもよい。
例えば、第1取付ユニット80は、第2支持部材84に、横向きの単一の揺動支点軸と、揺動支点軸を挟んで上下方向に対向する位置に揺動支点軸と平行に配置された一対のネジ軸とが備えられ、第1支持部材83及び固定部材82に、揺動支点軸が挿通される単一の丸孔と、一対のネジ軸が挿通される一対の長孔とが備えられていてもよい。
例えば、第1取付ユニット80は、固定部材82に、横向きの単一の揺動支点軸と、揺動支点軸を挟んで上下方向に対向する位置に揺動支点軸と平行に配置された一対のネジ軸とが備えられ、第1支持部材83及び第2支持部材84に、揺動支点軸が挿通される単一の丸孔と、一対のネジ軸が挿通される一対の長孔とが備えられていてもよい。
【0107】
〔7〕取付ユニット80,90において、調整機構81,91を覆い隠すカバー87,95の構成は種々の変更が可能である。
例えば、第1カバー87は、上下方向に分割可能に構成されていてもよい。
例えば、第2カバー95は、第2調整機構91を覆い隠す専用部品によって構成されていてもよい。