(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の内面材押圧装置の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0024】
<内面材押圧装置の概略説明>
図1〜
図2に、本発明の内面材押圧装置の一実施例を示す。
この内面材押圧装置1は、円筒状の管Pの内表面の仕上げ等を行うに際して管Pの内部に搬入・設置され、管軸方向(管軸中心線Sが延びる方向)に移動しながら、管軸方向に配設する内面材5の表面を押圧して、管Pの内周面に設置された内面材固定部材10に、内面材5を係合して嵌着するために用いられるものである。なお、内面材押圧装置1は、円筒状の管に限らず、角筒状の管にも適用することができる。
【0025】
図2に示すように、内面材押圧装置1は、内面材5の表面に当接する、第1の当接部11と、第2の当接部12と、第3の当接部13と、各当接部11,12,13を支持する支柱部15とを備えている。
第1の当接部11と、第2の当接部12及び第3の当接部13とは、管軸(管軸中心線S)を含む面と管周とが交わる一方の線上と、他方の線上とにそれぞれ位置するように配置され、第1の当接部11と、第2の当接部12及び/又は第3の当接部13とが、内面材5を押圧するようにしている。
ここで、管周とは、管Pの内周面に平行な仮想の周面を含み、特に、内面材固定部材10に係合して嵌着される内面材5を管Pの周方向に順次配設して形成される筒状体18(
図3参照)の内周面と略面一をなす仮想の周面を含むものである。
【0026】
<内面材の説明>
図3(a)及び(b)に示すように、内面材5は、ファスナ21と組み合わせて用いることによって、内面材構造体20を構成するもので、管Pの長手方向に沿って延びる、例えば、合成樹脂製の帯板状部材よりなるものである。
すなわち、内面材構造体20は、内面材固定部材10に嵌着して取り付けられる内面材5と、内面材固定部材10に取り付けられた隣接する内面材5,5´同士を接続するファスナ21とからなる。
そして、
図4(a)及び(b)に示すように、内面材5の表面には、ファスナ21を取り付けるための溝22が管Pの長手方向に延びるように設けられるとともに、溝22の内部には、ファスナ21と係合する係合爪23が形成されている。また、内面材5には、内面材固定部材10に形成された内面材装着部24に嵌着される嵌着部25を形成するようにする。
【0027】
<内面材取付用骨格構造の説明>
ここで、内面材5を取り付けるための骨格構造としては、特許文献3や本件出願人の出願である特願2016−90985号明細書に記載のものを適用することができる。
この骨格構造は、
図3〜
図7に示すように、管Pの長手方向に間隔をあけて、管Pの内周面に沿って設けられるリング状支持部材30と、背面側にリング状支持部材30に沿って取り付けるための嵌合部26を備え、表面側に内面材5を取り付けるための内面材装着部24を備えた内面材固定部材10と、この内面材固定部材10を介して管Pの長手方向に沿って取り付けられることによって、隣接するリング状支持部材30間の距離を規定する連結スペーサ31とからその主要部が構成されている。
【0028】
リング状支持部材30は、環状となる支持部材であって、管Pの長手方向から見た外形の形状が円形であるが、管Pの形状や構築される内層構造の形状に合わせて、矩形、多角形、アーチ形等、任意の形状のものを用いることができる。
なお、リング状支持部材30には、鉄製棒材や異形鉄筋を用いることが好ましいが、断面形状が四角形や多角形の棒状部材や中空体(パイプ部材)を用いることもでき、また、金属製の部材以外の合成樹脂製や複合材料製の部材も使用することができる。
【0029】
内面材固定部材10は、
図5に示すように、背面側にリング状支持部材30に沿って取り付けるための嵌合部26を備え、表面側に内面材5を取り付けるための内面材装着部24を備えたもので、合成樹脂や金属製の成形品からなる。
ここで、内面材固定部材10の嵌合部26には、リング状支持部材30に嵌合した内面材固定部材10の嵌合部26が外れないようにするための突起26a,26bを形成するようにしている。
【0030】
また、内面材固定部材10には、
図5及び
図7に示すように、連結スペーサ31を挿通するための矩形の断面形状をした挿通空間27を形成し、この挿通空間27に挿通した連結スペーサ31を、連結スペーサ31に形成した嵌着部32を介して、内面材固定部材10に対して挿通方向に摺動しないように固定することができるようにしている。なお、挿通空間27には、必要に応じて、挿通空間27に挿通された連結スペーサ31の下面を支持する受片28を設けるようにする。
これにより、連結スペーサ31の内面材固定部材10への取り付けを簡易に行うことができる。
【0031】
ここで、内面材固定部材10に取り付けるようにした連結スペーサ31と、隣接するリング状支持部材30側の内面材固定部材10に取り付けられる連結スペーサ31とを、連結スペーサ31に備えた連結部33,34によって連結するようにしている。
そして、連結スペーサ31に備えた連結部34を、その幅を他の部分より大きくなるように段状に形成して、内面材固定部材10の挿通空間27に挿通した連結スペーサ31がこの位置で止まるようにするとともに、連結スペーサ31の中間位置に連結スペーサ31の挿通空間27の反対側の開口縁に当接する係止爪35を形成して、連結スペーサ31の嵌着部32を構成するようにしている。
これにより、連結スペーサ31同士を連結することによって、相互に隣接するリング状支持部材30間の距離を規定することができる。
なお、連結スペーサ31を、内面材固定部材10に対して挿通方向に摺動しないように固定するための手段は、これに限定されず、例えば、嵌着部32の両側に係止爪35を形成して、連結スペーサ31をいずれの側からも内面材固定部材10に挿通できるようにしたり(この場合、連結スペーサ31に備えた連結部34の幅を他の部分と同一にする。)、内面材固定部材10側に連結スペーサ31に嵌着する嵌着部を形成するようにしたり、内面材固定部材10及び連結スペーサ31の所定位置にピン孔を形成し、ピン孔に固定ピンを挿入する等、任意の固定方式を採用することができる。
なお、係止爪35は、連結スペーサ31の中間位置の側面に形成するほか、連結スペーサ31の中間位置の上面に形成することもでき、また、係止爪35を含めて嵌着部32を形成する位置も、自由に設定することができる。
【0032】
また、リング状支持部材30に沿って取り付けた内面材固定部材10のすべての挿通空間27に連結スペーサ31挿通して取り付ける必要はなく、数個所、例えば、管Pの内周面の底端位置を挟んだ対称の位置に2個所、天端位置に1個所というように、相互に隣接するリング状支持部材30間の距離を規定するために必要な個所に選択的に挿通して取り付けるようにする。
そして、連結スペーサ31を挿通しない挿通空間27には、必要に応じて、鉄製棒材や異形鉄筋等からなる補強部材(図示省略)を挿通して、管Pの長手方向に沿って取り付けることができる。
この補強部材は、管Pの内周面と内面材5によって区画された環状の隙間に充填される硬化材6中に埋設され、管Pの強度を高めることができる。
【0033】
また、内面材固定部材10は、その底面29を、管Pの内周面に接地して設けるようにする。
これにより、管Pの内周面に沿って設けられるリング状支持部材30を、内面材固定部材10を介して、安定して設置することができる。
ここで、内面材固定部材10は、そのすべてを管Pの内周面に接地して設ける必要はなく、内面材固定部材10を介してリング状支持部材30を安定して設置することができる限りにおいて、リング状支持部材30に沿って取り付けた内面材固定部材10のうちの任意の位置の内面材固定部材10を接地して設けるようにすればよい。
【0034】
この場合、
図6に示すように、内面材固定部材10の嵌合部26から底面29までの寸法Ha〜Hdを適正に設定した複数種類の内面材固定部材10を用意し、これを選択して用いることができる。すなわち、寸法Ha〜Hdが、管Pの半径とリング状支持部材30の半径との差と同じ内面材固定部材10を用いることによって、内面材固定部材10の底面29が管Pの内周面に接地するようにでき、併せて、管Pの中心にリング状支持部材30の中心を合わせることができ、これにより、管Pの内周面と内面材5によって区画された環状の隙間に充填される硬化材6の層の厚みを、周方向で均一にすることができ、強固で安定的な管Pの内層構造を構築することができるものとなる。
【0035】
このように、この内面材5を取り付けるための骨格構造によれば、管Pの長手方向に間隔をあけて、管Pの内周面に沿って設けられるリング状支持部材30と、背面側にリング状支持部材30に沿って取り付けるための嵌合部26を備え、表面側に内面材5を取り付けるための内面材装着部24を備えた内面材固定部材10と、この内面材固定部材10を介して管Pの長手方向に沿って取り付けられることによって、隣接するリング状支持部材30間の距離を規定する連結スペーサ31とからなるようにすることにより、内面材固定部材10を介して管Pの長手方向に沿って取り付けられる連結スペーサ31によって、相互に隣接するリング状支持部材30間の距離を正確に規定することができるとともに、内面材固定部材10をリング状支持部材30に簡易に固定することができ、これにより、内面材固定部材10を介して内面材5を精度高く配設することを可能にしながら、構成部材の組み立ての手間を省いて設置作業を簡便化することができる。
【0036】
<内面材押圧装置の詳細説明>
以下、
図8〜
図14に基づいて、管Pの内周面に設置された内面材固定部材10に、表面に管Pの長手方向に延びる溝22を備えた内面材5を嵌着するために用いられる内面材押圧装置の詳細について説明する。
【0037】
<当接部の配置説明>
図8に示す内面材押圧装置1において、第1の当接部11と、第2の当接部12及び第3の当接部13とは、管軸中心線Sを基準に管直径方向に略対称に位置するように配置され、第1の当接部11は、管軸中心線Sを基準に、管直径方向一側(
図8では上側)に配置され、管軸中心線Sを基準にして、管直径方向他側(
図8では下側)に、第2の当接部12及び第3の当接部13がそれぞれ配置されている。
第2の当接部12と第3の当接部13とは、管軸方向に所定間隔をあけて配置され、第2の当接部12は、第1の当接部11の管軸方向の配置位置を基準に、内面材押圧装置1の牽引方向に対して、後行する側に配置される一方、第3の当接部13は、第1の当接部11の管軸方向の配置位置を基準に、内面材押圧装置1の牽引方向に対して先行する側に配置されている。
こうして、第1の当接部11、第2の当接部12及び第3の当接部13の管軸方向の相対位置が、第2の当接部12と第3の当接部13との間に第1の当接部11が位置するような関係となるようにしている。
【0038】
<支柱部の説明>
支柱部15は、
図8において管軸中心線Sと直交する水平軸線方向から見て略三角形状の支持体であって、第1の支柱部51と第2の支柱部52と第3の支柱部53とを備え、これら支柱部51,52,53が三角形の三辺を構成するように配置されてなり、第1の支柱部51と第2の支柱部52とがピン55を介して互いに回動可能に連結され、第2の支柱部52と第3の支柱部53とがピン56を介して互いに回動可能に連結され、第3の支柱部53と第1の支柱部51とがピン57を介して互いに回動可能に連結されている。
ここで、略三角形状の支柱部15において、第1の支柱部51と第3の支柱部53とが交わる頂点に第1の当接部11が配置され、第1の支柱部51と第2の支柱部52とが交わる頂点に第2の当接部12が配置され、第2の支柱部52と第3の支柱部53とが交わる頂点の近傍に第3の当接部13が配置されている。
【0039】
<第1の支柱部の説明>
第1の支柱部51は、第1の支柱部材51aと第2の支柱部材51bとにより構成され、第1の支柱部材51aは、主としてプッシュロッド60及びスプリング収容体61で構成され、第2の支柱部材51bは、帯状主板部の両側部に一対の帯状側板部が支柱部15の内方に向けて突設されてなる本体部分62とこの本体部分62の他端部から突出状態でその本体部分62に固着される脚部材63とで構成されている。
なお、第2の支柱部材51bの本体部分62における帯状主板部の一端寄りの部位及び他端部寄りの部位にはそれぞれ取っ手64が取り付けられており、管Pの内部への内面材押圧装置1の搬入・設置等を取っ手64を握って操作することで容易に行うことができるようにしている。
【0040】
<弾性伸縮機構の説明>
第1の支柱部51には、この第1の支柱部51の長さを弾性伸縮可能とするための弾性伸縮機構65が設けられている。
この弾性伸縮機構65は、スプリング収容体61に、プッシュロッド60を軸方向に往復動可能に支持させるように配設するとともに、圧縮コイルスプリング66の弾性反発力によってプッシュロッド60をスプリング収容体61から押し出す方向に付勢するように圧縮コイルスプリング66をスプリング収容体61に組み込むことによって構成されている。
なお、内面材5と内面材固定部材10との係合に要する力が50N〜1500Nの際、圧縮コイルスプリング66のばね定数が2N/mm〜30N/mmであれば好適に係合することができる。
【0041】
この弾性伸縮機構65の構成についてより具体的に説明すると、
図9(a)に示すように、スプリング収容体61は、所定間隔をあけて一端側及び他端側にそれぞれ配設されるヘッド側ブロック67及びボトム側ブロック68と、これらブロック67,68を連結するようにそれらブロック67,68の両側に配設されて各ブロック67,68の両側面に固定される一対の連結板69とにより構成されている。
ヘッド側ブロック67及びボトム側ブロック68のそれぞれには、プッシュロッド60が挿通可能なロッド挿通孔が設けられ、これらロッド挿通孔にプッシュロッド60が挿通されて両ブロック67,68を貫通するような状態でそれらブロック67,68にプッシュロッド60が軸方向に往復動可能に支持されている。
プッシュロッド60の外周面には、プッシュロッド60の軸方向中間部よりもやや一端側寄りで、ヘッド側ブロック67とボトム側ブロック68との間に位置するように円環状の鍔部60aが形成され、この鍔部60aとボトム側ブロック68との間に、圧縮コイルスプリング66がプッシュロッド60に外嵌された状態で組み込まれている。
【0042】
ここで、
図8に示す支柱部15において、例えば、第1の支柱部51を第1のリンク部、第2の支柱部52を第2のリンク部、第3の支柱部53を第3のリンク部と見立てた場合、支柱部15は、3個のリンク部が互いに回り対偶をなして連接される三節リンク機構により構成されることになる。
通常、三節リンク機構の場合、各リンク部は回り対偶を持っていても相対運動ができないので、固定連鎖となり、自由度がゼロとなってリンク機構として動かない。
本実施例では、弾性伸縮機構65により第1のリンク部(第1の支柱部51)の長さが弾性伸縮可能とされているため、三節リンク機構は自由度を持つようになり、リンク機構として動くことができる。
なお、第1の支柱部材51aを第1のリンク部材、第2の支柱部材51bを第2のリンク部材と見立てた場合、後述する距離可変機構75の操作時には、支柱部15は、四節リンク機構により構成されることになる。
【0043】
図15(a)及び(b)に示すように、本実施例においては、第1の当接部11と第2の当接部12とを結ぶ第1仮想直線71と、第2の当接部12と第3の当接部13とを結ぶ第2仮想直線72と、第3の当接部13と第1の当接部11とを結ぶ第3仮想直線73とで形成される仮想三角形70の3つの夾角θa,θb,θcのうち、
図15(a)に示すように、第1仮想直線71と第3仮想直線73とで挟まれた第1夾角θaと、第1仮想直線71と第2仮想直線72とで挟まれた第2夾角θbと、第2仮想直線72と第3仮想直線73とで挟まれた第3夾角θcとの3つの夾角の角度が変動するような動作が可能である。また、本実施例において第1の支柱部51と第3の支柱部53との両方に弾性伸縮機構65を設けることで、
図15(b)に示すように、例えば第2夾角θbが固定で、第1夾角θaと第3夾角θcとが変動するような動作、つまり2つの夾角の角度が変動するような動作が可能である。
【0044】
また、仮想三角形70において、第2の当接部12及び第3の当接部13を頂点とする夾角、すなわち第2夾角θbと第3夾角θcとを共に90度以下にすることにより、第1の当接部11、第2の当接部12及び第3の当接部13の管軸方向の相対位置が、第2の当接部12と第3の当接部13との間に第1の当接部11が常に位置するような関係となる。
【0045】
<距離可変機構の説明>
図8に示すように、第1の支柱部51には、上述した弾性伸縮機構65に加え、第1の当接部11と第2の当接部12との距離を可変とする距離可変機構75が設けられている。
この距離可変機構75は、第2の支柱部材51bの断面コの字形の本体部分62における支柱部15の内方に向けて開口された開口部内に、第1の支柱部材51aの本体部分を構成するスプリング収容体61を組み込み、第2の支柱部材51bにおける本体部分62の一対の帯状側板部とスプリング収容体61における一対の連結板69(
図9(a)参照)とを貫通するように組み付けられる回動軸76を介して第1の支柱部材51aと第2の支柱部材51bとを互いに回動可能に接続して構成されている。
【0046】
図10に示すように、距離可変機構75においては、第1の支柱部51を支柱部15の内方側に向けて略への字状に屈曲させるように第1の支柱部材51aと第2の支柱部材51bとを回動軸76を中心に互いに回動させることで、第1の支柱部材51aの一端側に設けられた第1の当接部11と第2の支柱部材51bの他端側に設けられた第2の当接部12との相対距離を縮めて第1の当接部11と第2の当接部12との管直径方向の距離Lを狭めることができる一方、屈曲させた第1の支柱部51を支柱部15の外方側に向けて伸展させるように第1の支柱部材51aと第2の支柱部材51bとを回動軸76を中心に互いに回動させることで、第1の当接部11と第2の当接部12との相対距離を伸ばして第1の当接部11と第2の当接部12との管直径方向の距離Lを広げることができる。
本実施例では、距離可変機構として第1の支柱部材51aと第2の支柱部材51bとを回動軸を介して接続する構成を説明したが、例えば第1の支柱部材51aと第2の支柱部材51bとがスライド可能に接続する構成、ジャッキのようにねじを回転することで第1の支柱部51の長さが変わる構成やエアシリンダを用いた構成でもよく、第1の当接部11と第2の当接部12との距離を可変とする機構は特に限定されない。
【0047】
<ストッパの説明>
図8に示すように、第1の支柱部材51aの本体部分を構成するスプリング収容体61と第2の支柱部材51bの本体部分62とは、それぞれの長手方向の半部程度が互いに重なり合うように組まれており、第1の支柱部51を支柱部15の内方側に向けて略への字状に屈曲させた
図10に示すような状態から、
図8に示すように、第1の支柱部材51aと第2の支柱部材51bとが一直線上に配されるように回動軸76を中心とするそれら支柱部材51a,51bの回動操作で第1の支柱部51が直線状の形態となるように伸展させたときに、第2の支柱部材51bの本体部分62における帯状主板部の一端部で構成されるストッパ機能板部77が、スプリング収容体61の一対の連結板69(
図9(a)参照)に固定された後述する固定クランプ部材79に当接してストッパとして機能し、第1の支柱部材51aと第2の支柱部材51bとの回動を規制する役目をする。これにより第1の当接部11と第2の当接部12との相対距離を一定にすることができる。
【0048】
<ロック装置の説明>
図9(a)及び(b)に示すように、第1の支柱部51には、この第1の支柱部51が直線状の形態となるように伸展させた状態で固定するためのロック装置78が付設されている。
このロック装置78は、第2の支柱部材51bにおけるストッパ機能板部77を挟持するための固定クランプ部材79及び可動クランプ部材80と、これら固定クランプ部材79及び可動クランプ部材80を締結するノブ付ボルト81とを備えて構成されている。
固定クランプ部材79は、ストッパ機能板部77と当接する比較的肉厚の薄い薄肉板部79aと、この薄肉板部79aに対し厚み方向に凸状に段差を持たせて形成される比較的肉厚の厚い厚肉板部79bとを有し、スプリング収容体61における一対の連結板69に跨るように置かれた状態でそれら連結板69に固定されている。
可動クランプ部材80は、固定クランプ部材79における薄肉板部79aと対をなすように対向するクランプ機能板部80aと、固定クランプ部材79における厚肉板部79bが嵌り込む凹部を有する取付板部80bとを有している。
ノブ付ボルト81は、可動クランプ部材80における取付板部80bを貫通し、固定クランプ部材79における厚肉板部79bに形成した雌螺子に螺合している。
【0049】
そして、ノブ付ボルト81を締め付けると、固定クランプ部材79の薄肉板部79aと可動クランプ部材80のクランプ機能板部80aとの協働によって両者がストッパ機能板部77を挟持して、第1の支柱部51が直線状の形態となるように伸展させた状態で固定することができる。
また、ノブ付ボルト81を緩めると、薄肉板部79aとクランプ機能板部80aとでストッパ機能板部77を挟持してロックした状態を解除することができ、
図10に示すように、第1の支柱部51を支柱部15の内方側に向けて略への字状に屈曲させるように第1の支柱部材51aと第2の支柱部材51bとを回動軸76を中心に互いに回動させるようにすることができる。
【0050】
<第2の支柱部及び第3の支柱部の説明>
図8に示すように、第2の支柱部52は、第2の当接部12と第3の当接部13とを結ぶ第2仮想直線72(
図15(a)及び(b)参照)に対し第2の当接部12から第3の当接部13に向かって管軸中心線Sに近づく方向(
図8では上方)に所定の鋭角をなして傾斜する仮想傾斜直線74に沿って延びる棒状部材52aと、この棒状部材52aにおける第2の当接部12側に向けた基端部に一体的に連設され、第1の支柱部51における脚部材63を両側から挟むクレビス形のブラケット52bとにより構成されている。
第3の支柱部53は、第1の当接部11と第3の当接部13とを結ぶ方向に沿って延在する帯状主板部の両側部に一対の帯状側板部が支柱部15の内方に向けて突設されてなる断面コの字形の部材よりなるものである。
なお、第3の支柱部53における帯状主板部の他端部には、内面材押圧装置1の牽引方向に向かって突出するようにアイボルト82が締結・固定されている。
【0051】
<各支柱部の連結構造の説明>
第1の支柱部51における脚部材63と第2の支柱部52におけるブラケット52bとは、両者を貫通するように組み付けられるピン55によって回動可能に連結されている。
第2の支柱部52における棒状部材52aの先端部は、第3の支柱部53と第3の当接部13との接続部分よりも第3の支柱部53の長手方向内側の位置(第3の支柱部53の他端部近傍位置)で断面コの字形の第3の支柱部53における支柱部15の内方に向けて開口された開口部内に差し込まれている。
そして、棒状部材52aの先端部と第3の支柱部53とは、第3の支柱部53における一対の帯状側板部と棒状部材52aの先端部とを貫通するように組み付けられるピン56によって回動可能に連結されている。
第1の支柱部51におけるプッシュロッド60の先端部は、第3の支柱部53の一端部の位置で断面コの字形の第3の支柱部53における支柱部15の内方に向けて開口された開口部内に差し込まれている。
そして、プッシュロッド60の先端部と第3の支柱部53とは、第3の支柱部53における一対の帯状側板部とプッシュロッド60の先端部とを貫通するように組み付けられるピン57によって回動可能に連結されている。
【0052】
<各当接部の支持構造の説明>
図13に示すように、第1の支柱部51と第3の支柱部53とを連結するピン57は、内面材押圧装置1の牽引方向に向かって両支柱部51,53の連結部から両側(
図13では左右両側)に突出される一対の突出部分を有しており、このピン57の一対の突出部分に一対の第1の当接部11が回転可能に支持されている。
図14に示すように、第1の支柱部51と第2の支柱部52とを連結するピン55は、内面材押圧装置1の牽引方向に向かって両支柱部51,52の連結部から一側(
図14では右側)に突出される突出部分を有しており、このピン55の突出部分に第2の当接部12が回転可能に支持されている。
図11に示すように、第3の支柱部53の他端部には、内面材押圧装置1の牽引方向に向かって他側(
図11では右側)に第3の支柱部53から突出される突出部分を有するピン83が組み付けられており、このピン83の突出部分に第3の当接部13が回転可能に支持されている。
なお、第2の当接部12を回転可能に支持するピン55における第1の支柱部51と第2の支柱部52との連結部から突出される突出部分の突出方向と、第3の当接部13を回転可能に支持するピン83における第3の支柱部53から突出される突出部分の突出方向とは、逆向きであり、
図11に示すように、第2の当接部12と第3の当接部13とは管軸方向から見て管周に沿う方向に互いに逆向きに位置をずらして配置されている。特に牽引方向に対して先行する側に配置された第3の当接部13は、当接部と内面材とが当接する面積を小さくすることで内面材をより押圧しやすくするために、支柱部の連結部から一側に当接部を設けているが、第2の当接部12と第3の当接部13は両側に当接部を設けてもよい。
【0053】
<各当接部の詳細説明>
図11、
図13及び
図14に示すように、第1の当接部11、第2の当接部12及び第3の当接部13は、基本的に同構造で、いずれも管軸方向に転がるように回転可能な回転体よりなり、これから内面材固定部材10に係合して嵌着する一方の内面材5を、既に内面材固定部材10に係合されて嵌着された他方の内面材5´に隣接するように配設する際に、一方の内面材5を位置決めする位置決め機構と、他方の内面材5´に沿って案内される案内機構とを具備している。位置決め機構と案内機構は、内面材押圧装置1のどの部分に設けるかは限定されず、例えば支柱部に設けられてもよいが、内面材と当接して押圧する押圧部に一体に設けられていれば、一方の内面材の位置決めと他方の内面材での案内と内面材の押圧とが簡易な構成の一部材で行えるため好ましい。
【0054】
より具体的に説明すると、各当接部11,12,13は、ピン57,55,83に回転可能に支持されるローラ本体部90と、ローラ本体部90の軸方向(ピン57,55,83の軸方向)に所定の間隔をあけてローラ本体部90の外周面に全周に亘ってフランジ状に突出するように形成される内側突部91及び外側突部92とを備えて構成されている。
ローラ本体部90は、一方の内面材5の表面を内面材固定部材10に向けて実質的に押圧する押圧部としての役目をする。
内側突部91及び外側突部92は、互いに隣接する一方の内面材5と他方の内面材5´との隣接部分に跨ることができるようにローラ本体部90に突設されており、この隣接部分において互いに隣り合う一方の内面材5の溝22及び他方の内面材5´の溝22にそれぞれ内側突部91及び外側突部92が入り込むことが可能となるようにローラ本体部90に配設されている。
内側突部91は、これから内面材固定部材に係合させようとする一方の内面材5の溝22内に配置されることで一方の内面材5を位置決めする位置決め機構として機能し、外側突部92は、既に内面材固定部材に係合された他方の内面材5´の溝22内に配置されることで他方の内面材5´に沿って案内される案内機構として機能する。
【0055】
ここで、位置決め機構及び案内機構として、本実施例では、ローラ本体部90に突部(内側突部91及び外側突部92)を設け、内面材に溝22を設けた構成を説明したが、ローラ本体部90の周面に溝を設け、一方の内面材5及び他方の内面材5´の表面に管Pの管軸方向に伸びる突条部を設けて、これら一方の内面材5及び他方の内面材5´に設けた突条部をローラ本体部90の周面に設けた溝内に配置することで、位置決め機構及び案内機構としてもよい(図示しない。)。
【0056】
また、内側突部91には、この内側突部91が先細り形状となるようにその先端部両側に傾斜面91aを形成してテーパを設けるようにしている。
外側突部92にも同様に、この外側突部92が先細り形状となるようにその先端部両側に傾斜面92aを形成してテーパを設けるようにしている。
こうして、特に内側突部91及び外側突部92のテーパの先端側において、内側突部91と一方の内面材5の溝22の壁面とが所定の隙間を設けて配置され、外側突部92と他方の内面材5´の溝22の壁面とが所定の隙間を設けて配置される。
なお、本実施例では内側突部91と外側突部92の強度を保持するためにテーパを設けたが、溝22の幅よりも内側突部91と外側突部92の幅を小さく形成し、溝22の壁面と所定の隙間を設けておれば、必ずしもテーパを設けなくてもよい。
また、図示しないが、ローラ本体部90の周面に溝を、一方の内面材5及び他方の内面材5´の表面に管Pの管軸方向に伸びる突条部を設ける場合も、同様である。
【0057】
以上に述べたように構成される内面材押圧装置1を用いた内面材嵌着作業について、主に
図1、
図2、
図3、
図8、
図10及び
図11を用いて以下に説明する。
【0058】
まず、
図2に示すように、管軸中心線Sを基準に管直径方向の一側(上側)及び他側(下側)にそれぞれ内面材5(嵌着後は他方の内面材5´に相当)を配し、これら一対の内面材5において、これから内面材押圧装置1を管Pの長手方向に移動させる起点よりも上流側の部分を、事前に手動で、内面材5の表面を内面材固定部材10に向けて押圧することで係合させて内面材固定部材10に嵌着しておく。
【0059】
次いで、上記一対の内面材5における事前に手動で内面材固定部材10に嵌着した部分に沿わせるようにして内面材押圧装置1を管Pの内部に搬入する。
このとき、弾性伸縮機構65の弾性力が強くて内面材押圧装置1を管P内に挿入するのが難しい場合、
図10に示すように、ノブ付ボルト81を緩めてロック装置78によるロックを解除し、第1の支柱部51を支柱部15の内方側に向けて略への字状に屈曲させるように第1の支柱部材51aと第2の支柱部材51bとを回動軸76を中心に互いに回動させるように距離可変機構75を操作し、第1の当接部11と第2の当接部12との管直径方向の距離Lを狭めた状態にして、内面材押圧装置1を管P内に挿入し、その後、屈曲させた第1の支柱部51を支柱部15の外方側に向けて伸展させて第1の当接部11と第2の当接部12との管直径方向の距離Lを広げて使用に適した距離にする。
また、
図2に示すように、管Pの長手方向下流側に配設されたウインチ95からの索条96(ロープやワイヤ)を内面材押圧装置1に取り付けられたアイボルト82のリング部に掛け止める。
【0060】
そして、ウインチ95の巻き取り動作にて内面材押圧装置1を牽引することにより、作業者が管P内に入ることなく、内面材押圧装置1を管Pの長手方向に移動させながら、第1の当接部11と、第2の当接部12及び/又は第3の当接部13とによって、内面材5の表面を内面材固定部材10に向けて押圧することで内面材5を内面材固定部材10に係合させて嵌着することができる。
こうして、管軸方向に移動しながら管Pの内周面に設置された内面材固定部材10に内面材5を係合する作業を、必ずしも作業者が管P内に入ることなく、効率よく、安全に、かつ、確実性を以て行うことができ、かつ、小径(呼び径:800〜1000mm以下)の管Pにも適用できる。
【0061】
なお、内面材押圧装置1を管Pの長手方向に移動させる手段としては、管Pの内部を走行する走行台車や作業者が、牽引するようにしたり、押し移動するようにしたりすることもできる。
【0062】
次に、これから内面材固定部材10に係合して嵌着する一方の内面材5を、上記の内面材嵌着作業によって既に内面材固定部材10に係合されて嵌着された他方の内面材5´に隣接するように配設する作業は以下のようにして行われる。
【0063】
図1に示すように、既に内面材固定部材10に嵌着された一対の他方の内面材5´の隣に、これから内面材固定部材10に嵌着する一対の一方の内面材5を、管軸中心線S(
図2参照)を基準に管直径方向の対称位置に配し、これら一対の一方の内面材5において、これから内面材押圧装置1を管Pの長手方向に移動させる起点よりも上流側の部分を、事前に手動で、内面材5の表面を内面材固定部材10に向けて押圧することで内面材固定部材10に係合させて嵌着しておく。
【0064】
次いで、上記一対の一方の内面材5における事前に手動で内面材固定部材10に嵌着した部分に沿わせるようにして内面材押圧装置1を管Pの内部に搬入する。
このとき、代表として、
図11に示すように、互いに隣接する一方の内面材5と他方の内面材5´との隣接部分において互いに隣り合う一方の内面材5の溝22及び他方の内面材5´の溝22に第3の当接部13の内側突部91及び外側突部92をそれぞれ入り込ませて係合させる(第1の当接部11及び第2の当接部12についても同様)。
なお、弾性伸縮機構65の弾性力が強くて内面材押圧装置1を管P内に挿入するのが難しい場合、前述したように距離可変機構75を操作し、
図10に示すように、第1の当接部11と第2の当接部12との管直径方向の距離Lを狭めた状態にして、内面材押圧装置1を管P内に挿入し、その後、屈曲させた第1の支柱部51を支柱部15の外方側に向けて伸展させて第1の当接部11と第2の当接部12との管直径方向の距離Lを広げて使用に適した距離にする。
【0065】
そして、前述と同様の要領でウインチ95の巻き取り動作により内面材押圧装置1を牽引し、前述と同様の嵌着動作によって、一対の一方の内面材5を、既に内面材固定部材10に嵌着された一対の他方の内面材5´に隣接するように配設することができる。
【0066】
以下、同様にして、一対の他方の内面材5´に隣接するように一対の一方の内面材5を管Pの周方向に順次配設し、これら内面材5,5´を管周方向の全域に亘って配設したら、
図3に示すように、互いに隣接する内面材5,5´の隣接部分にファスナ21を装着して内面材構造体20からなる筒状体18を形成し、該筒状体18と管Pとの間に硬化材6を充填して管Pの補修・補強を施すようにする。
【0067】
<作用効果の説明>
内面材押圧装置1によれば、
図8に示すように、第1の当接部11と、第2の当接部12及び/又は第3の当接部13とが内面材5を押圧する際、第2の当接部12及び第3の当接部13によって反力を確保しつつ第1の当接部11で内面材5を押圧するといった具合に、一の当接部が他の2つの当接部によって反力を確保して内面材5を押圧することができるので、内面材5を押圧する際に安定して反力をとることができる。
なお、内面材押圧装置1では、第1の当接部11と、第2の当接部12及び/又は第3の当接部13とが内面材5を押圧する構成であるので、内面材5に局所的に強い力が作用するようなことがなく、内面材固定部材10への係合・嵌着に必要とされる押圧力を、内面材5の傷付きや変形が生じない所定の面圧以下となるように内面材5に作用させることができ、内面材5を傷付けたり、変形させたりすることなく内面材5を押圧することができる。
【0068】
図8に示すように、内面材押圧装置1においては、第1の当接部11と第2の当接部12とが弾性伸縮機構65により弾性変位可能とされているので、
図15(a)に示すように、仮想三角形70の3つの夾角θa,θb,θcの角度を変化させる、又は、第1の当接部11と第2の当接部12とが、及び、第1の当接部11と第3の当接部13とが弾性伸縮機構65により弾性変位可能とされているので、
図15(b)に示すように、3つの夾角θa,θb,θcのうちの2つの夾角θa,θcの角度を変化させることができ、第2の当接部12や第3の当接部13に対する第1の当接部11の相対位置を管径の変動や管Pの段差に応じて変化させることができ、管径が変動する場合や、管Pに段差がある場合であっても内面材押圧装置1を容易に適用することができる。
また、仮想三角形70における第2の当接部12及び第3の当接部13を頂点とする夾角が90度以下とされているので、第1の当接部11、第2の当接部12及び第3の当接部13の管軸方向の相対位置が、第2の当接部12と第3の当接部13との間に第1の当接部11が位置するような関係となり、
図8に示すように、第2の当接部12及び第3の当接部13によって安定的に反力を確保しつつ支柱部15を介して第1の当接部11を強固に支持することができる。
【0069】
図16(a)及び(b)に示すように、内面材押圧装置1においては、第1の当接部11、第2の当接部12及び第3の当接部13の管軸方向の相対位置がずれているようにされているので、管Pに段差がある場合に、その段差を通過する際、それら当接部11,12,13が1つずつ通過するため、内面材押圧装置1に対する管Pの段差の干渉が少なくなり、段差を容易に越えることができる。
【0070】
図8に示すように、内面材押圧装置1においては、第1の当接部11、第2の当接部12及び第3の当接部13は、支柱部15で形成される略三角形の頂点又は頂点近傍にそれぞれ位置するようにされ、三角形を基本にした強固な骨組構造の支柱部15によって第1の当接部11、第2の当接部12及び第3の当接部13が支持されるので、第1の当接部11、第2の当接部12及び第3の当接部13が内面材5の表面に当接した状態を簡易な構造で安定的に保持することができる。
【0071】
図8に示すように、内面材押圧装置1においては、第2の支柱部15における棒状部材52aが、第2仮想直線72(
図15(a)及び(b)参照)に対し第2の当接部12から第3の当接部13に向かって管軸中心線Sに近づく方向(図では上方)に所定の鋭角をなして傾斜する仮想傾斜直線74に沿って延び、この棒状部材52aの先端部が、第3の支柱部53と第3の当接部13との接続部分よりも第3の支柱部53の長手方向内側の位置(第3の支柱部53の他端部近傍位置)に連結されているので、
図16(a)及び(b)に示すように、管Pに段差があっても、第3の当接部13が段差を越える際に、その段差に棒状部材52aが干渉するのを防ぐことができ、スムーズに段差を越えることができる。
【0072】
図16(a)及び(b)に示すように、内面材押圧装置1においては、管径に変動があったり管Pに段差があったりしても、第1の支柱部51に設けられた弾性伸縮機構65によって第1の支柱部51の長さがその管径の変動や管Pの段差に応じてフレキシブルに変化するので、管径の変動や管Pに段差がある場合でも、第1の支柱部51の両端に設けられた第1の当接部11及び第2の当接部12で内面材5の表面を確実に押圧することができる。
また、弾性伸縮機構65の弾性反発力が管軸方向に対し斜め方向に作用するため、斜め方向に作用した弾性反発力の管軸方向の分力が管軸方向に作用するので、管Pの段差を容易に越えることができる。
【0073】
図10に示すように、内面材押圧装置1においては、仮に、弾性伸縮機構65の弾性力が強い場合であっても、内面材押圧装置1を管P内に容易に挿入できるように距離可変機構75により第1の当接部11と第2の当接部12との管直径方向の距離Lを狭めて内面材押圧装置1を管P内に挿入し、その後、屈曲させた第1の支柱部51を支柱部15の外方側に向けて伸展させて第1の当接部11と第2の当接部12との管直径方向の距離Lを広げて使用に適した距離にすることができるので、内面材押圧装置1の管P内への搬入及び据え付け(初期セット)を容易に行うことができる。
【0074】
図10に示すように、内面材押圧装置1においては、第1の支柱部51に、第1の支柱部材51aと第2の支柱部材51bとの回動を規制するストッパとして機能するストッパ機能板部77が第2の支柱部材51bに具備されているので、第1の支柱部材51aと第2の支柱部材51bとの回動をストッパ機能板部77によって一定の回動角度に規制することができ、誰が据え付け設置しても内面材5に対する第1の当接部11及び第2の当接部12の押圧力を一定にすることができる。
【0075】
図11に示すように、内面材押圧装置1においては、代表として第3の当接部13について説明すると、既に内面材固定部材10に係合された他方の内面材5´に沿って案内機構として機能する外側突部92による案内で管軸方向に移動しながら、これから内面材固定部材10に係合する一方の内面材5を位置決め機構として機能する内側突部91で位置決めしつつその一方の内面材5をローラ本体部90で押圧するようにされているので、一方の内面材5を他方の内面材5´に隣接するように正確に位置決めすることができる(第1の当接部11及び第2の当接部12についても同様)。
【0076】
図12に示すように、内面材押圧装置1においては、代表として第3の当接部13について説明すると、第3の当接部13における内側突部91及び外側突部92にそれぞれ傾斜面91a及び傾斜面92aを形成することでそれら突部91,92にテーパが設けられ、内側突部91及び外側突部92と内面材5,5´の溝22の壁面とは所定の隙間を設けて配置されているので、内周面が湾曲した面で構成される管Pでは一方の内面材5と他方の内面材5´とが管Pの内周面の湾曲率に応じて二直角より小さい所定角度をなして配設されることになるが、このような場合であっても、内側突部91及び外側突部92が、一方の内面材5の溝22及び他方の内面材5´の溝22内にそれぞれ確実に配置されることになり、テーパにより当接部の突部の強度を担保しつつ、押圧部の突部が溝の壁面に所定の間隔を設けてあることにより管の湾曲部においても内面材押圧装置1が管の湾曲に合わせて進行方向を変える動きを妨げず、他方の内面材5´に沿って内面材押圧装置1を確実に案内しながら一方の内面材5を確実に位置決めすることができる(第1の当接部11及び第2の当接部12についても同様)。また、内面材5,5´に突条部が、当接部に溝が設けられている場合も同様の作用効果を奏する。
【0077】
図11に示すように、内面材押圧装置1においては、代表として第3の当接部13について説明すると、第3の当接部13が管軸方向に回転可能な回転体であり、内面材押圧装置1を牽引することで、管軸方向に移動するようにしているので、回転体である第3の当接部13を内面材5上で転動させながら内面材5を第3の当接部13で押圧することができ、よりスムーズに連続的に内面材5を内面材固定部材10に係合して嵌着することができる(第1の当接部11及び第2の当接部12についても同様)。
【0078】
以上、本発明の内面材押圧装置について、一実施例に基づいて説明したが、本発明は上記一実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【0079】
上記実施例では、内面材押圧装置1が、略三角形状の支柱部15にスプリングを利用した弾性伸縮機構65を設けてなる態様を例示したが、これに限定されるものではなく、例えば、
図17〜
図20に示される変形例もある。
なお、以下に述べる各変形例において、上記実施例と同一又は同様のものについては図に同一符号を付すに留めてその詳細な説明を省略することとし、以下においては各変形例に特有の部分を中心に説明することとする。
【0080】
図17に示す内面材押圧装置1Aは、
図17において管軸中心線S(
図2参照)と直交する水平軸線方向から見てIの字形状の支持体であって管Pの直径方向に設けられる支柱部100と、支柱部100の両端に設けられ、内面材5の表面を内面材固定部材10に対して押圧する第1の当接部101及び第2の当接部102と、各当接部101,102を管Pの長手方向に案内する、内面材5の溝22に沿って移動する案内部を有する案内機構103とを備え、管Pの長手方向に移動しながら内面材5の表面を内面材固定部材10に向けて押圧することで内面材5を内面材固定部材10に嵌着するようにするものである。
【0081】
支柱部100には、上記実施例における第1の支柱部51に設けられていた弾性伸縮機構65が設けられている。
各当接部101,102と案内機構103とは、支柱部100の両端に設けられるフレーム部104に備えるようにしている。
案内機構103の内面材5の溝22に沿って移動する案内部は、各当接部101,102を挟んで内面材押圧装置1Aの移動方向(牽引方向)の前後位置に設けるようにしている。
これにより、案内機構103によって、支柱部100の両端に設けられた各当接部101,102を正確に案内することができる。
各当接部101,102及び(又は)案内機構103を、前述したローラ本体部90に、内面材5の溝22に入り込む前述した内側突部91及び外側突部92と同様のフランジを形成した回転体で構成することができる。
これにより、各当接部101,102及び(又は)案内機構103によって、支柱部100の両端に設けられた各当接部101,102を円滑かつ正確に案内することができるとともに、既に内面材固定部材10に嵌着された他方の内面材5´に対しこれから内面材固定部材10に嵌着する一方の内面材5を正確に位置決めすることができる。
【0082】
図17に示す内面材押圧装置1Aによっても、作業者が管P内に入ることなく、内面材押圧装置1Aを管Pの長手方向に移動させながら、各当接部101,102によって、内面材5の表面を内面材固定部材10に向けて押圧することで内面材5を内面材固定部材10に係合させて嵌着するようにすることができる。
【0083】
図18に示す内面材押圧装置1Bにおいては、支柱部110が、
図18において管軸中心線S(
図2参照)と直交する水平軸線方向から見て倒立Yの字形状の支持体であって、第1の当接部11を支持する第1の支柱部111と、第2の当接部12を支持する第2の支柱部112と、第3の当接部13を支持する第3の支柱部113とが、倒立Yの字を構成するように配置され、第1の支柱部111に弾性伸縮機構65が設けられている。
【0084】
図19に示す内面材押圧装置1Cにおいては、支柱部120が、
図19において管軸中心線S(
図2参照)と直交する水平軸線方向から見て四角形状の支持体であって、第1の支柱部121、第2の支柱部122、第3の支柱部123及び第4の支柱部124が、四角形の四辺を構成するように配置され、第1の支柱部121と第2の支柱部122とがピン130を介して互いに回動可能に連結され、第2の支柱部122と第3の支柱部123とがピン131を介して互いに回動可能に連結され、第3の支柱部123と第4の支柱部124とがピン132を介して互いに回動可能に連結され、第4の支柱部124と第1の支柱部121とがピン133を介して互いに回動可能に連結されている。
第1の支柱部121及び第3の支柱部123には、それぞれ弾性伸縮機構65が設けられている。
また、第1の当接部11、第2の当接部12、第3の当接部13及びこれら各当接部11,12,13と基本的に同構造の第4の当接部14は、支柱部120で形成される略四角形の頂点(又は頂点近傍)に位置するようにしている。
この四角形状の支柱部120を備えてなる内面材押圧装置1Cによれば、管Pの端部まで内面材5を内面材固定部材10に押圧・係合することができるという利点がある。
【0085】
図20に示す内面材押圧装置1Dは、
図19に示す内面材押圧装置1Cにおける支柱部120を平行四辺形状にした支柱部120´を採用し、第1の支柱部121及び第4の支柱部124の連結部と、第2の支柱部122及び第3の支柱部123の連結部とを結ぶ筋交いのように第5の支柱部125をピン133,131を介してそれら連結部に連結するようにしたものである。ピン130を介して、管周方向両側に第3の当接部13を設けることで、内面材押圧装置1Cと同様に、管Pの端部まで内面材5を内面材固定部材10に押圧・係合することができる。
第5の支柱部125にも、弾性伸縮機構65を設けるようにすることで、平行四辺形状を保ち、各当接部の管軸方向の相対位置をずれるようにしながら、段差や管径の変動に対応できるようにしている。
【0086】
以上、本発明の内面材押圧装置について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。