特許第6804413号(P6804413)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6804413C方向において+/−15度より少ないミスカットを有するM面基板上の半極性III族窒化物光電子デバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6804413
(24)【登録日】2020年12月4日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】C方向において+/−15度より少ないミスカットを有するM面基板上の半極性III族窒化物光電子デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/20 20060101AFI20201214BHJP
   H01S 5/343 20060101ALI20201214BHJP
   C30B 29/38 20060101ALI20201214BHJP
   C30B 23/08 20060101ALI20201214BHJP
   C23C 16/34 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   H01S5/20
   H01S5/343 610
   C30B29/38 D
   C30B23/08 Z
   C23C16/34
【請求項の数】17
【外国語出願】
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-177712(P2017-177712)
(22)【出願日】2017年9月15日
(62)【分割の表示】特願2016-74168(P2016-74168)の分割
【原出願日】2011年3月4日
(65)【公開番号】特開2017-216484(P2017-216484A)
(43)【公開日】2017年12月7日
【審査請求日】2017年9月15日
(31)【優先権主張番号】61/310,638
(32)【優先日】2010年3月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】ポー シャン スー
(72)【発明者】
【氏名】キャスリーン エム. ケルチナー
(72)【発明者】
【氏名】ロバート エム. ファレル
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル エー. ヘイガー
(72)【発明者】
【氏名】太田 裕朗
(72)【発明者】
【氏名】アヌラグ ティアギ
(72)【発明者】
【氏名】ナカムラ シュウジ
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ピー. デンバーズ
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ エス. スペック
【審査官】 高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−030877(JP,A)
【文献】 特開2003−328113(JP,A)
【文献】 特開2008−285364(JP,A)
【文献】 特開2006−156958(JP,A)
【文献】 特表2007−534159(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/126362(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/016459(WO,A1)
【文献】 米国特許第06163557(US,A)
【文献】 Anurag Tyagi et al.,AlGaN-Cladding Free Green Semipolar GaN Based Laser Diode with a Lasing Wavelength of 506.4nm,Applied Physics Express,日本,Japan Society of Applied Physics,2009年12月25日,Vol.3,011002
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00−5/50
H01L 33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電子デバイスであって、前記光電子デバイスは、
半極性結晶面上にエピタキシー成長された1つ以上の半極性のIII族窒化物層を含み、前記半極性結晶面は、GaN基板の表面を含み、前記GaN基板の表面は、前記GaN基板のm面から前記GaN基板のc方向にx度で配向され、−15<x<−1、1<x<15であり、前記半極性結晶面は、c面から80度の傾斜角または前記c面に対して80度と90度との間の傾斜角を有し、
前記III族窒化物層は、
インジウム組成を有するInGaN層を含む1つ以上のn型(Al,In,Ga)N層と、
1つ以上のp型(Al,In,Ga)N層と、
前記1つ以上のn型(Al,In,Ga)N層と前記1つ以上のp型(Al,In,Ga)N層との間の1つ以上のInGaN量子井戸層を含むInGaN活性層と
を含み、
前記InGaN層は、GaNの{11−22}結晶面上に堆積された同一のインジウム組成を有するInGaN層に対して臨界厚さ以上の厚さを有する、光電子デバイス。
【請求項2】
前記半極性結晶面は、{30−31}面、{30−3−1}面、{40−41}面、または{40−4−1}面である、請求項1に記載の光電子デバイス。
【請求項3】
前記半極性結晶面は、前記GaN基板の上表面である、請求項1に記載の光電子デバイス。
【請求項4】
前記光電子デバイスは、レーザーダイオードであり、前記レーザーダイオードは、少なくとも4.9%の前記レーザーダイオードのためのモーダル閉じ込めを提供する前記InGaN層を含む導波管を含み、前記レーザーダイオードは、少なくとも444.7nmの波長においてレージングピークを有する、請求項1に記載の光電子デバイス。
【請求項5】
前記1つ以上のInGaN量子井戸層の1つ以上の量子井戸は、少なくとも16%のインジウム組成と、4nmより大きい厚さとを有する、請求項1に記載の光電子デバイス。
【請求項6】
前記InGaN層は、少なくとも7%のインジウム組成を含む、請求項1に記載の光電子デバイス。
【請求項7】
前記光電子デバイスは、GaN基板のミスカットまたは微斜面の表面上に成長され、前記ミスカットまたは微斜面の表面は、前記半極性結晶面を含み、
前記1つ以上のInGaN量子井戸層は、少なくとも477nmの波長においてピーク光放射またはピーク光吸収を有している、請求項1に記載の光電子デバイス。
【請求項8】
前記光電子デバイスは、レーザーダイオードであり、
前記1つ以上のn型(Al,In,Ga)N層は、前記半極性結晶面の上または上方のn型GaN層を含み、
前記InGaN層は、前記n型GaN層の上または上方のn型InGaN導波管層を含み、前記n型InGaN導波管層は、少なくとも50nmの厚さと、7%以上のインジウム組成とを有し、
前記InGaN活性層は、前記n型InGaN導波管層の上または上方にあり、前記InGaN活性層は、少なくとも7%のインジウム組成と、4nmより大きい厚さとを有する1つ以上のInGaN量子井戸層を含み、
前記1つ以上のp型(Al,In,Ga)N層は、前記InGaN活性層の上または上方のp型InGaN導波管層と、前記p型InGaN導波管層の上または上方のp型GaN層とを含み、前記p型InGaN導波管層は、少なくとも50nmの厚さと、7%以上のインジウム組成とを有し、
前記III族窒化物層は、前記半極性結晶面の半極性配向を有する、請求項1に記載の光電子デバイス。
【請求項9】
前記半極性結晶面は、ミラー指数結晶面を含み、前記ミラー指数結晶面は、少なくとも2つの非ゼロのh、i、またはkミラー指数と、1つの非ゼロのlミラー指数とを有し、これにより、前記III族窒化物層の平坦なエピタキシー成長が達成される、請求項1に記載の光電子デバイス。
【請求項10】
前記半極性結晶面上に成長された前記光電子デバイスは、レーザーダイオード、発光ダイオード、超放射ダイオード、半導体増幅器、フォトニック結晶レーザー、VCSELレーザー、太陽電池、または光検出器を含む、請求項1に記載の光電子デバイス。
【請求項11】
前記光電子デバイスは、前記半極性結晶面上に成長されたレーザーダイオードであり、前記レーザーダイオードは、より高いゲインのために、前記レーザーダイオードのc投影方向に配向された導波管を含む、請求項1に記載の光電子デバイス。
【請求項12】
前記光電子デバイスは、12.2kA/cm以下の閾値電流密度を有するレーザーダイオードであり、前記レーザーダイオードは、x線逆格子空間マッピングのQx軸上に垂直に並ぶ前記III族窒化物層の各々に対するBraggピークによって測定されるコヒーレント的に歪んだ構造を含む、請求項1に記載の光電子デバイス。
【請求項13】
光電子デバイスを製造する方法であって、前記方法は、
半極性結晶面上に1つ以上の半極性のIII族窒化物層をエピタキシーに堆積することを含み、前記半極性結晶面は、GaN基板のm面から前記GaN基板のc方向にx度で配向された表面を含み、−15<x<−1、1<x<15であり、前記半極性結晶面は、c面から80度の傾斜角または前記c面に対して80度と90度との間の傾斜角を有し、
前記III族窒化物層は、
インジウム組成を有するInGaN層を含む1つ以上のn型(Al,In,Ga)N層と、
1つ以上のp型(Al,In,Ga)N層と、
前記1つ以上のn型(Al,In,Ga)N層と前記1つ以上のp型(Al,In,Ga)N層との間の1つ以上のInGaN量子井戸層を含むInGaN活性層と
を含み、
前記InGaN層は、GaNの{11−22}結晶面上に堆積された同一のインジウム組成を有するInGaN層に対して臨界厚さ以上の厚さを有する、方法。
【請求項14】
前記半極性結晶面は、{30−31}面、{30−3−1}面、{40−41}面、または{40−4−1}面である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記半極性結晶面は、窒化ガリウム(GaN)基板の上表面である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記光電子デバイスは、レーザーダイオードであり、前記レーザーダイオードは、少なくとも4.9%の前記レーザーダイオードのためのモーダル閉じ込めを提供する前記InGaN層を含む導波管を含み、前記レーザーダイオードは、少なくとも444.7nmの波長においてレージングピークを有する、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記1つ以上のInGaN量子井戸層の1つ以上の量子井戸は、少なくとも16%のインジウム組成と、4nmより大きい厚さとを有する、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、同時係属および同一人に譲渡されたPo Shan Hsu、Kathryn M.Kelchner、Robert M.Farrell、Daniel Haeger、Hiroaki Ohta、Anurag Tyagi、Shuji Nakamura、Steven P.DenBaars、およびJames S.Speckによる米国仮特許出願第61/310,638号(名称「SEMI−POLAR III−NITRIDE OPTOELECTRONIC DEVICES ON M−PLANE SUBSTRATES WITH MISCUTS LESS THAN +/− 15 DEGREES IN THE C−DIRECTION」、2010年3月4日出願、代理人整理番号30794.366−US−P1(2010−543−1))の米国特許法第119条第(e)項に基づく利益を主張する。上記出願は、本明細書に参照することによって援用される。
【0002】
本願は、下記の同時係属および同一人に譲渡された米国特許出願に関する:
Daniel F.Feezell、Mathew C.Schmidt、Kwang Choong Kim、Robert M.Farrell、Daniel A.Cohen、James S.Speck、Steven P.DenBaars,およびShuji Nakamuraによる米国特許出願第12/030,117号(名称「Al(x)Ga(1−x)N−CLADDING−FREE NONPOLAR GAN−BASED LASER DIODES AND LEDS」、2008年2月12日出願、代理人整理番号30794.222−US−U1(2007−424))。この出願は、Daniel F.Feezell、Mathew C.Schmidt、Kwang Choong Kim、Robert M.Farrell、Daniel A.Cohen、James S.Speck、Steven P.DenBaars、およびShuji Nakamuraによる米国仮特許出願第60/889,510号(名称「Al(x)Ga(1−x)N−CLADDING−FREE NONPOLAR GAN−BASED LASER DIODES AND LEDS」、2007年2月12日出願、代理人整理番号30794.222−US−P1(2007−424−1))の米国特許法第119条第(e)項に基づく利益を主張する;
Arpan Chakraborty、You−Da Lin、Shuji Nakamura、およびSteven P.DenBaarsよるPCT国際特許出願第US2010/37629号(名称「ASYMMETRICALLY CLADDED LASER DIODE」、2010年6月7日出願、代理人整理番号30794.314−US−WO(2009−614−2))。この出願は、Arpan Chakraborty、You−Da Lin、Shuji Nakamura、およびSteven P.DenBaarsによる米国仮特許出願第61/184,668号(名称「ASYMMETRICALLY CLADDED LASER DIODE」、2009年6月5日出願、代理人整理番号30794.314−US−P1(2009−614−1))の米国特許法第119条第(e)項に基づく利益を主張する;
および、 Arpan Chakraborty、You−Da Lin、Shuji Nakamura、およびSteven P.DenBaarsによる米国特許出願第12/795,390号(名称「LONG WAVELENGTH NONPOLAR AND SEMIPOLAR (Al,Ga,In)N BASED LASER DIODES」、2010年6月7日出願、代理人整理番号30794.315−US−U1(2009−616−2))。この出願は、同時係属および同一人に譲渡されたArpan Chakraborty、You−Da Lin、Shuji Nakamura、およびSteven P.DenBaarsによる米国仮特許出願第61/184,729号(名称「LONG WAVELENGTH m−PLANE (Al,Ga,In)N BASED LASER DIODES」、2009年6月5日出願、代理人整理番号30794.315−US−P1(2009−616−1))の米国特許法第119条第(e)項に基づく利益を主張する。
【0003】
上記出願は、本明細書に参照することによって援用される。
【0004】
(1.発明の分野)
本発明は、半極性光電子デバイスおよびそれらの製造方法に関し、より具体的に、c方向において+/−15度より少ないミスカットを有するm面基板上の半極性III族窒化物光電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0005】
(2.関連技術の記述)
(注記:本願は、括弧内の1つ以上の参照番号(例えば、[x])によって、本明細書を通して指示されるように、いくつかの異なる刊行物を参照する。このような参照番号に従って順序付けられたこれらの異なる刊行物の一覧は、以下の「参考文献」の項に列挙される。これらの刊行物はそれぞれ、参照することによって本明細書に組み込まれる。)
次世代ディスプレイテクノロジー(例えば、ミニチュアモバイルプロジェクターおよび高精細度飛点ディスプレイ)に対して期待された高い市販需要は、直接放射の緑色レーザーダイオード(LD)の開発を著しく加速させた。このような用途に対する技術基準は、LDが高効率、信頼性、コンパクト、および変調応答能力を有することを要求する[1]。ウルツ鉱(Al,Ga,In)Nベースの材料システムは、緑色光電子デバイスの先行候補として広く賛同されているが、その結晶面のエピタキシー成長に対する最適化が依然達成されていないことが一般的な合意である。
【0006】
緑色スペクトル領域におけるLDの連続波(CW)動作は、GaNの従来のc面上に成長されたデバイスに対して実証された[2〜4]。しかしながら、これらのデバイスは、非励振内部電場という欠点があり、非励振内部電場は、量子井戸(QW)の放射再結合率を低減させ、そして増加するキャリアの注入で放射波長におけるブルーシフトを引き起こす量子閉じ込みシュタルク効果(QCSE)を引き起こす[5]。加えて、Inの多いInGaN QWと障壁層との間の増大した格子ミスマッチのために、QCSEは、長波長光電子デバイスに対してより顕著になる[2]。
【0007】
偏光効果を回避するために、研究者は、ウルツ鉱結晶の無極性m面の配向で成長されたLDの動作を実証した[6]。ハイパワーブルーLDに対する有望な候補であるが、活性領域における積層欠陥の形成のために、m面LDは、今のところでは500nmレージング放射に制限されている[7〜11]。
【0008】
さまざまな半極性平面(例えば、(10−11)および(11−22))も、代替的な成長面として調査された[12〜13]。最近、研究者は、半極性の(20−21)面上に成長された高品質InGaN QWから緑色スペクトル範囲内のレージングを報告した[14〜15]。さらなるの研究は、(20−21)上に成長された緑色放射のQWが、c面に対して報告された緑色放射より低い局在エネルギー値を有する高い組成均一性を示している[16]。しかしながら、歪み誘起によるミスフィット転位(MD)を生成することなしに、十分なモーダル閉じ込めを達成するために、4元のAlInGaNのクラッド層が(20−21)LD内に必要とされる[17]。4元のAlInGaNのクラッド層の使用は、低臨界厚さを有する半極性面に対する解決策を示したが、高組成InGaN波導管を有する単純なAlInGaNのクラッドフリー構造は、大量生産の観点から大いにより魅力的であり得る[7,15,18]。
【0009】
光電子デバイス成長に対して向上された方法が必要されている。本発明は、上記ニーズを満たす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
(本発明の要約)
本発明は、m面から、c方向にx度のミスカットを有するGaN基板上に成長された半極性(Al,Ga,In)Nベースの光電子デバイスを開示する(ここで、−15<x<−1および1<x<15)。
【0011】
c方向に向う+/−15度以上のミスカットと比較されると、c方向に向うx度(ここで、−15<x<−1および1<x<15)のミスカットを有するm面上のこのような光電子は、より低いQCSE誘起された注入電流依存のブルーシフト、より高い材料のゲインを引き起こす増大された振動子強度等を提供する。
【0012】
m面からより低く離れたミスカットは、ミスカット上に生成されたより大きな臨界厚さの層を提供する。より低い臨界厚さを提供する半極性面上に生成された層と比較されると、これは、ミスカット上に生成された層内のミスフィット欠陥の数を減少させ得る。次に、層内の欠陥密度は、層が蒸着されている半極性面に依存し得る。
【0013】
例えば、光電子デバイスは、GaNの半極性面または結晶面上に成長された1つ以上の半導体III族窒化物層を含み得、半極性面または半極性結晶面は、{30−3−1}面、{30−31}面、{40−41}面、または{40−4−1}面であり、GaNの半極性面または半極性結晶面は、例えば、微斜面、ミスカット、または軸外フリースタンディングGaN基板の上表面である。
【0014】
半極性GaN面が、原子的特定面を含み得ることにより、平坦なエピタキシー成長が達成される。
【0015】
方法は、半極性結晶面上に成長されたIII族窒化物層の臨界厚さを増大させるために、半極性結晶面を選択することを含み得る。例えば、光電子デバイスのIII族窒化物層は、Mathews−Blakeslee臨界厚さ以上の厚さを有する1つ以上のInGaN層を含み得、臨界厚さは、GaNのm面から、GaNのc方向に、15度以上で配向されたGaNの半極性結晶面上に蒸着されたInGaN層に対するものである。InGaN層は、少なくとも7%のインジウム組成を有し得る。
【0016】
光電子デバイスは、LDであり得、1つ以上のInGaN層は、モーダル閉じ込めをLDに提供するInGaN導波管を含み得、LDは、例えば、少なくとも460nmの波長でのレージングピークを有する。
【0017】
光電子デバイスは、1つ以上のInGaN量子井戸を含む光を放射するInGaN活性層をさらに含み得、量子井戸のうちの1つ以上は、少なくとも16%のインジウム組成(および4ナノメートル(nm)より大きい厚さ)を有する。
【0018】
光電子デバイスは、1つ以上のn型(Al,In,Ga)N層と、1つ以上のp型(Al,In,Ga)N層と、n型(Al,In,Ga)N層と1つ以上のp型(Al,In,Ga)N層との間の1つ以上のInGaN量子井戸層を含むInGaN活性層とをさらに含み得、n型(Al,In,Ga)N層、p型(Al,In,Ga)N層、およびInGaN量子井戸層は、半極性GaN結晶面の半極性配向を有し、InGaN量子井戸層は、少なくとも477nmの波長においてピーク光放射またはピーク光吸収を有する。
【0019】
光電子デバイスは、LDであり得、LDは、半極性結晶面の上または上方のn型GaN層と、n型GaN層の上または上方のn型InGaN導波管層であって、n型InGaN導波管層は、少なくとも50nmの厚さと、7%以上のインジウム組成とを有する、n型InGaN導波管層と、n型InGaN導波管層の上または上方のInGaN活性層であって、InGaN活性層は、少なくとも7%のインジウム組成と、4nmより大きい厚さとを有する1つ以上のInGaN量子井戸層を含む、InGaN活性層と、InGaN活性層の上または上方のp型InGaN導波管層と、p型InGaN導波管層の上または上方のp型GaN層であって、p型InGaN導波管層は、少なくとも50nmの厚さと、7%以上のインジウム組成とを有する、p型GaN層とを含み、n型GaN層、n型InGaN導波管層、InGaN活性層、p型InGaN層およびp型InGaN導波管層は、半極性結晶面の半極性配向を有する。
【0020】
半極性結晶面および蒸着する状態は、例えば、III族窒化物層のうちの1つ以上が0.75nm以下の表面ラフネスを有するようなものであり得る。
【0021】
LDは、より高いゲインのために、LDのc投影方向に配向された導波管を含み得る。
【0022】
半極性GaN結晶面上に蒸着されたデバイスは、例えば、LD、レーザー放射ダイオード(LED)、超放射ダイオード(SLD)、半導体増幅器、フォトニック結晶レーザー、VCSELレーザー、太陽電池、または光検出器を含むが、それらに限定されない。
【0023】
本発明は、光電子デバイスを製造する方法をさらに開示し、方法は、GaNのm面から、GaNのc方向に、x度で配向された半極性GaN結晶面上にIII族窒化物層をエピタキシー蒸着することを含み、ここで、−15<x<−1および1<x<15である。方法は、半極性結晶面上に成長されたIII族窒化物層の臨界厚さを増大させるために、半極性結晶面を選択することをさらに含み得る。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
光電子デバイスであって、該光電子デバイスは、
GaNの半極性結晶面上にエピタキシー成長された1つ以上のIII族窒化物層を含み、
該半極性結晶面は、該GaNのm面から、該GaNのc方向に、x度で配向されており、ここで、−15<x<−1および1<x<15である、デバイス。
(項目2)
前記半極性結晶面は、{30−31}面、{30−3−1}面、{40−41}面、または{40−4−1}面である、項目1に記載のデバイス。
(項目3)
前記半極性結晶面は、微斜面、ミスカット、または軸外フリースタンディングGaN基板の上表面である、項目1に記載のデバイス。
(項目4)
前記III族窒化物層は、Mathews−Blakeslee臨界厚さ以上の厚さを有する1つ以上のInGaN層を含み、該臨界厚さは、GaNのm面から、該GaNのc方向に、15度以上で配向された該GaNの半極性結晶面上に蒸着されたInGaN層に対するものである、項目1に記載のデバイス。
(項目5)
前記光電子デバイスは、レーザーダイオードであり、前記1つ以上のInGaN層は、モーダル閉じ込めを該レーザーダイオードに提供するInGaN導波管を含む、項目4に記載のデバイス。
(項目6)
前記III族窒化物は、1つ以上のInGaN量子井戸を含む光を放射するInGaN活性層をさらに含み、該量子井戸のうちの1つ以上は、少なくとも16%のインジウム組成と、4nmより大きい厚さとを有する、項目5に記載のデバイス。
(項目7)
前記InGaN層は、少なくとも7%のインジウム組成を有する、項目4に記載のデバイス。
(項目8)
前記光電子デバイスは、GaN基板のミスカットまたは微斜面の表面上に成長され、該ミスカットまたは微斜面の表面は、前記半極性結晶面を含み、前記III族窒化物層は、
1つ以上のn型(Al,In,Ga)N層と、
1つ以上のp型(Al,In,Ga)N層と、
該n型(Al,In,Ga)N層と該1つ以上のp型(Al,In,Ga)N層との間の1つ以上のInGaN量子井戸層を含むInGaN活性層と
をさらに含み、
該n型(Al,In,Ga)N層、該p型(Al,In,Ga)N層、および該InGaN量子井戸層は、該半極性結晶面の半極性配向を有し、該InGaN量子井戸層は、少なくとも477nmの波長においてピーク光放射またはピーク光吸収を有している、項目1に記載のデバイス。
(項目9)
前記光電子デバイスは、レーザーダイオードであり、前記III族窒化物層は、
前記半極性結晶面の上または上方のn型GaN層と、
該n型GaN層の上または上方のn型InGaN導波管層であって、該n型InGaN導波管層は、少なくとも50nmの厚さと、7%以上のインジウム組成とを有する、n型InGaN導波管層と、
該n型InGaN導波管層の上または上方のInGaN活性層であって、該InGaN活性層は、少なくとも7%のインジウム組成と、4nmより大きい厚さとを有する1つ以上のInGaN量子井戸層を含む、InGaN活性層と、
該InGaN活性層の上または上方のp型InGaN導波管層と、
該p型InGaN導波管層の上または上方のp型GaN層であって、該p型InGaN導波管層は、少なくとも50nmの厚さと、7%以上のインジウム組成とを有する、p型GaN層と
を含み、
該III族窒化物層は、該半極性結晶面の半極性配向を有する、項目1に記載のデバイス。
(項目10)
前記半極性結晶面が、原子的特定面を含むことにより、前記III族窒化物層の平坦なエピタキシー成長が達成される、項目1に記載のデバイス。
(項目11)
前記半極性結晶面上に成長された前記デバイスは、レーザーダイオード、レーザー放射ダイオード、超放射ダイオード、半導体増幅器、フォトニック結晶レーザー、VCSELレーザー、太陽電池、または光検出器を含む、項目1に記載のデバイス。
(項目12)
前記デバイスは、前記半極性結晶面上に成長されたレーザーダイオードであり、該レーザーダイオードは、より高いゲインのために、該レーザーダイオードのc投影方向に配向された導波管を含む、項目1に記載のデバイス。
(項目13)
前記III族窒化物層のうちの1つ以上は、0.75nm以下の表面ラフネスを有する、項目1に記載のデバイス。
(項目14)
光電子デバイスを製造する方法であって、該方法は、
半極性結晶面上にIII族窒化物層をエピタキシー蒸着することを含み、
該半極性結晶面は、GaNのm面から、該GaNのc方向に、x度で配向されており、ここで、−15<x<−1および1<x<15である、方法。
(項目15)
前記半極性結晶面は、{30−31}面、{30−3−1}面、{40−41}面、または{40−4−1}面である、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記半極性結晶面は、微斜面、ミスカット、または軸外フリースタンディングGaN基板の上表面である、項目14に記載の方法。
(項目17)
前記III族窒化物層を蒸着することは、Mathews−Blakeslee臨界厚さ以上の厚さを有する1つ以上のInGaN層を蒸着することを含み、該臨界厚さは、GaNのm面から、該GaNのc方向に、15度以上で配向された該GaNの半極性結晶面上に蒸着されたInGaN層に対するものである、項目14に記載の方法。
(項目18)
前記光電子デバイスは、レーザーダイオードであり、前記1つ以上のInGaN層は、モーダル閉じ込めを該レーザーダイオードに提供するInGaN導波管を含み、該レーザーダイオードは、少なくとも460nmの波長においてレージングピークを有している、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記III族窒化物を蒸着することは、1つ以上のInGaN量子井戸を含む光を放射するInGaN活性層を蒸着することをさらに含み、該量子井戸のうちの1つ以上は、少なくとも16%のインジウム組成と、4nmより大きい厚さとを有する、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記InGaN層は、少なくとも7%のインジウム組成を有する、項目18に記載の方法。
(項目21)
前記光電子デバイスは、GaN基板のミスカットまたは微斜面の表面上に蒸着され、該ミスカットまたは微斜面の表面は、前記半極性GaN結晶面を含み、前記III族窒化物層を蒸着することは、
該半極性結晶面上に1つ以上のn型(Al,In,Ga)N層を蒸着することと、
該1つ以上のn型(Al,In,Ga)N層の上または上方に、1つ以上のInGaN量子井戸層を含むInGaN活性層を蒸着することと、
該InGaN量子井戸層上に1つ以上のp型(Al,In,Ga)N層を蒸着することと
をさらに含み、
該n型(Al,In,Ga)N層、該p型(Al,In,Ga)N層、および該InGaN量子井戸層は、該半極性結晶面の半極性配向を有し、該InGaN量子井戸層は、少なくとも477nmの波長においてピーク光放射またはピーク光吸収を有している、項目14に記載の方法。
(項目22)
前記光電子デバイスは、レーザーダイオードであり、前記III族窒化物層を蒸着することは、
前記半極性結晶面の上または上方にn型GaN層を蒸着することと、
該n型GaN層の上または上方にn型InGaN導波管層を蒸着することであって、該n型InGaN導波管層は、少なくとも50nmの厚さと、7%以上のインジウム組成とを有する、ことと、
該n型InGaN導波管層の上または上方にInGaN活性層を蒸着することであって、該InGaN活性層は、少なくとも7%のインジウム組成と、4nmより大きい厚さとを有する1つ以上のInGaN量子井戸層を含む、ことと、
該InGaN活性層の上または上方にp型InGaN導波管層を蒸着することと、
該p型InGaN導波管層の上または上方にp型GaN層を蒸着することであって、該p型InGaN導波管層は、少なくとも50nmの厚さと、7%以上のインジウム組成とを有する、ことと
を含み、
該III族窒化物層は、該半極性結晶面の半極性配向を有する、項目14に記載の方法。
(項目23)
前記半極性結晶面が、原子的特定面を含むことにより、前記III族窒化物層の平坦なエピタキシー成長が達成される、項目14に記載の方法。
(項目24)
前記半極性GaN結晶面上に蒸着された前記光電子デバイスは、レーザーダイオード、レーザー放射ダイオード、超放射ダイオード、半導体増幅器、フォトニック結晶レーザー、VCSELレーザー、太陽電池、または光検出器を含む、項目14に記載の方法。
(項目25)
前記光電子デバイスは、前記半極性結晶面上に成長されたレーザーダイオードであり、該レーザーダイオードは、より高いゲインのために、該レーザーダイオードのc投影方向に配向された導波管を含む、項目14に記載の方法。
(項目26)
前記半極性結晶面上に成長された前記III族窒化物層の臨界厚さを増大させるために、該半極性結晶面を選択することをさらに含む、項目14に記載の方法。
(項目27)
前記半極性結晶面および前記蒸着する状態は、前記III族窒化物層のうちの1つ以上が0.75nm以下の表面ラフネスを有するようなものである、項目14に記載の方法。
【0024】
次に、図面を参照する(同一参照番号は、全体を通して、対応する部分を表す)。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1a図1(a)は、{10−10}面、{30−31}面、{20−21}面および{0001}面を示すウルツ鉱GaN結晶構造の概略図である。
図1b図1(b)は、Matthews−Blakeslee方程式を用いて計算されたフリースタンディング半極性GaN基板上の半極性InGaNのMatthews−Blakeslee臨界厚さをプロットしたグラフである。
図2図2は、本発明の方法を例示するフローチャートである。
図3a図3(a)は、プロトタイプレーザーデバイス構造の断面を例示する。
図3b図3(b)は、デバイス構造の別の実施形態の断面を例示する。
図3c図3(c)は、エッチングされたファセットを有する完成されたレーザーデバイス構造の断面図である。
図4a図4(a)は、(30−31)半極性結晶面上に成長された図3(a)の構造の透過型電子顕微鏡(TEM)画像を示す。
図4-2】図4(b)および図4(c)は、(30−31)成長表面の形態を示す5倍(図4(b))および10倍(図4(c))で撮られたノマルスキー画像を示す。
図4-3】図4(d)および図4(e)は、N雰囲気(図4(d))およびH雰囲気(図4(e))を用いて、(30−31)半極性結晶面上に、MOCVDよって成長された図3(a)の構造における層の上表面のノマルスキー画像である。図4(f)および図4(g)は、N雰囲気(図4(f))およびH雰囲気(図4(g))を用いて、(30−3−1)半極性結晶面上に、MOCVDよって成長された図3(a)の構造における層の上表面のノマルスキー画像である。
図5図5は、(30−31)LD構造の非対称(20−25)回折の周りの逆格子空間マップ(RSM)である。
図6a図6(a)は、{30−3−1}GaN基板上に成長された、エッチングされたファセットレーザーダイオードのライト電流電圧(Light−Current−Voltage)(L−I−V)特性を示す。
図6b図6(b)は、{30−3−1}GaN基板上に成長された、エッチングされたファセットレーザーダイオードのレージングスペクトルを示す。
図7-1】図7(a)および図7(b)は、それぞれ、{30−31}GaN基板上に成長された、エッチングされたファセット10μm×1800μm LDのL−I−V特性およびレージングスペクトルを示し、測定は、最小のデバイス自己加熱効果を確保するために、1μsパルスおよび0.1%デューティサイクルを用いて20℃で行われ、図7(b)は、444.7nmにおいて明確なレージングピークを示す。図7(c)は、図7(a)のデバイスの場合、最大閾値までの低い電流注入に対する電界発光(EL)を示し、EL強度(任意単位a.u.)は、電流注入(ミリアンペア、mA)の増加につれて増大する。
図7-2】図7((d))は、図7(a)のデバイスの場合、電流密度依存のピーク波長および半値全幅を示し、c面LDの50nmに対するピーク波長データが、比較[22]のために含まれている。図7(e)は、図7(a)のデバイスの場合、閾値電流密度およびレージング波長のステージ温度の依存性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
好ましい実施形態についての以下の説明において、本明細書の一部を形成し、本発明が実践され得る特定の実施形態の一例として示される添付図面が参照される。他の実施形態が利用されてもよく、構造的変更は、本発明の範囲から逸脱することなくなされ得ることを理解されたい。
【0027】
(概要)
(Al,Ga,In)N光電子デバイスは、極性{0001}、非極性{11−20}および{10−10}、並びに半極性{10−1−1}、{11−22}および{20−21}のGaN結晶面上に成長される。
【0028】
極性面および半極性面上に成長されたレ−ザーは、デバイス性能を劣化させる量子井戸内の分極関連の電場という欠点を有する。
【0029】
非極性の{10−10}および{11−20}のデバイスは、分極関連の効果に捉われていないが、{10−10}に高インジウム濃度の取り込みおよび{11−20}の高品質結晶成長は、達成することが難しいと見られている。
【0030】
例えば、m面上に十分な長波長を放射する光電子デバイスは、高いインジウム組成で欠陥の生成のために達成することが難しい。半極性面がより容易にインジウムを取り込むことと確信されるので、半極性面(例えば、{20−21})は、長波長においてより良い性能を示す。しかしながら、+/−15度以上のミスカットを有する半極性面は、低い臨界厚さを有し、従ってレーザーのための十分な導波管構造を成長させるのは非常に難しい。{20−21}上のSumitomoの緑色レーザー[14]は、成長することが非常
に難しい格子整合されたAlInGaNクラッド層を使用する。
【0031】
(命名法)
GaN、アルミニウムおよびインジウムを取り込むその3元および4元化合物(AlGaN、InGaN、AlInGaN)が、本明細書に使用される場合、共通に用語(Al,Ga,In)N、III族窒化物、III族窒化物のグループ、窒化物、Al(1−x−y)InGaN(ここで、0<x<1、0<y<1)、またはAlInGaNを使用することを言う。これらの用語のすべては、単一種(Al、Ga、およびIn)のそれぞれの窒化物も、このIII族の金属種の2元、3元および4元組成も含むように等価的かつ広く構成されることが意図されている。従って、これらの用語は、化合物AlN、GaN、およびInNも、この命名法に含まれる種のように、3元化合物AlGaN、GaInN、およびAlInN、並びに4元族化合物AlGaInNも含む。(Ga,Al,In)構成種のうちの2つ以上が存在する場合に、(組成に存在する(Ga,Al,In)構成種の各々の相対的モル比の表示に対して)化学量論比も「非化学量論」比も含む可能な組成のすべては、本発明の広い範囲内に使用されることが可能である。従って、GaN材料への主要な参照において、本明細書の後の本発明の議論は、さまざまな他の(Al,Ga,In)N材料種の形成に適用可能であることが認識される。さらに、本発明の範囲内の(Ga,Al,In)N材料は、微粒のドーパントおよび/または他の不純物または包括的な材料をさらに含み得る。ホウ素(B)も含まれ得る。
【0032】
用語「AlGa1−xNクラッドフリー」は、任意のAlモル比を含む導波管クラッド層(例えば、AlGa1−xN/GaN超格子、バルクAlGa1−xN、またはAlN)がないことを指す。光導波管のために使用されない他の層は、ある量のAl(例えば、10%Al含有率より少ない)を含み得る。例えば、AlGa1−xN電子ブロッキング層が存在し得る。
【0033】
GaNまたはIII族窒化物ベースの光電子デバイス内の自然および圧電の分極効果を消すための1つのアプローチは、結晶の非極性面上にIII族窒化物デバイスを成長させることである。このような面は、同等の数のGa(またはIII族の原子)とN原子とを含み、電荷中性である。さらに、その後の非極性層は、互いに対して等価であり、従ってバルク結晶は、成長方向に沿って分極化されない。GaNの対称等価の非極性面の2つの族は、a面として集合的に知られる{11−20}族と、m面として集合的に知られる{1−100}族とである。従って、非極性III族窒化物は、III族結晶の(0001)c軸に垂直な方向に沿って成長させられる。
【0034】
(Ga,Al,In,B)Nデバイスの分極効果を低減するための別のアプローチは、結晶の半極性面上にデバイスを成長させることである。用語「半極性面」(半極性の面とも呼ばれる)は、c面、a面、またはm面に分類されることができない任意の面を指すように使用され得る。結晶学的用語において、半極性面は、少なくとも2つの非ゼロのh、i、またはkミラー指数と、1つの非ゼロのlミラー指数とを有する任意の面を含み得る。
【0035】
(技術的説明)
基底(0001)面上の事前に存在するスレッディング転移(TD)のすべりによるヘテロ界面における応力解放のミスフィット転移(MD)の形成の可能性のために、半極性GaN結晶面上のLD構造の設計は、特有である[19]。このようなTDすべりのための駆動力は、基底面上の分解せん断応力に起因し、その大きさは、基底(0001)面から離れる半極性面の傾斜角の増加につれて減少する[20]。それ故、(c面に対して)80度と90度との間の傾斜角を有する半極性面上の歪(Al,Ga,In)N層のヘテロエピタキシー成長は、基底面上の分解せん断応力の急減な減少と、エピタキシー層の臨界厚さの同時の増加につながるはずである。
【0036】
図1(a)に示されるように、{30−31}GaN半極性面は、半極性GaN{20−21}面および非極性GaN{10−10}m面から、それぞれ、c方向に離れて5度および10度で傾斜されている。{0001}面、GaN[10−10]方向、GaN[0001]方向、GaN[11−20]方向、Ga原子およびN原子も図1(a)に示されている。図1(b)に示されるように、(11−22)、(20−21)、および(30−31)GaN半極性面上にエピタキシー成長されたIn0.06Ga0.94Nに対する(等方弾性の仮定の下で計算された)Matthews−Blakeslee平衡臨界厚さh値は、それぞれ、17nm、46nmおよび74nmである[21]。(30−31)上のより大きな臨界厚さは、他のこれまでに調査された半極性面と比較して相当なエピタキシー層LD導波管の設計空間まで自由にする。半極性(SP)フリースタンディングGaN基板上の半極性(SP)InGaN層に対する、図1(b)の臨界厚さhは、hに対するMatthews−Blakeslee方程式[21]
【0037】
【数1】

を用いて計算される。
【0038】
ここで、bは、バーガースベクトルであり、υは、ポアッソン比であり、λは、バーガースベクトルと、転移線に垂直であり、かつ界面の面内にある方向との間の角度であり、βは、バーガースベクトルと転移線との間の角度であり、rおよびRは、それぞれ、まっすぐな転移コアを囲む円筒形リングの内径および外径である。
【0039】
本発明は、c方向において+/−15度より少ないミスカットを有するm面基板上の半極性III族窒化物光電子デバイスを開示している。例えば、本発明は、c方向においてx度(ここで、−15<x<−1および1<x<15)でミスカットされるm面基板上にレーザー構造を成長することによる優れたレーザー性能の可能性を実証する。
【0040】
(プロセスステップ)
図2は、デバイスを製造する方法を例示する。方法は、以下のステップを含み得る。
【0041】
ブロック200は、GaNのm面からGaNのc方向にx度で配向され、またはミスカットされた半極性GaN結晶面を提供することを示す(ここで、−15<x<−1および1<x<15)。GaN結晶面は、GaN基板(例えば、フリースタンディング基板)上にあり得る。半極性GaN結晶面は、GaN基板をミスカットし、カットし、またはソーすること、または他にミスカットされた表面または近接表面は、半極性GaN結晶面を含み得るように、ミスカットされたGaN基板または微斜面の基板を得ることによって提供され得る。例えば、三菱化学コーポレーションによって提供された低欠陥密度のフリースタンディングGaN基板が使用され得る。ステップは、半極性結晶面上に成長されたIII族窒化物の臨界厚さを増大するために、半極性結晶面を選択することをさらに含み得る。
【0042】
ブロック202は、半極性GaN結晶面上、GaNまたはGaN基板のミスカット上、またはGaNまたはGaN基板の微斜面の表面(ミスカットされた表面または微斜面の表面は、半極性GaN結晶面を含む)上にデバイス(例えば、1つ以上のIII族窒化物層を含む光電子デバイス)を蒸着し、または例えば、エピタキシー成長させることを示す。半極性GaN結晶面は、GaNのm面からc方向にx度でミスカットされ、または配向され得る(ここで、−15<x<−1および1<x<15)。
【0043】
光電子デバイスは、Mathews−Blakeslee臨界厚さ以上の厚さを有する1つ以上のIII族窒化物層または(Al,In,Ga)N(例えば、InGaN)層を含み得る。臨界厚さは、GaNのm面からGaNのc方向に15度で配向されたGaNの半極性結晶面上に蒸着された(同じインジウム組成を有する)InGaN層に対するものである。(Al,In,Ga)N層またはInGaN層は、少なくとも7%のインジウム組成を有し得る。(Al,In,Ga)N層は、光電子デバイスの全エピタキシー層の厚さを含み得る。InGaN層は、導波管層、活性層、またはその両方を含み得る。InGaN活性層は、1つ以上の光放射量子井戸層または光吸収量子井戸層(例えば、多重量子井戸層)を含み得る。活性層の全厚さ(例えば、多重量子井戸の全厚さ)は、GaNのm面からc方向に15度以上で配向された半極性面に対する臨界厚さより厚い厚さを有する。
【0044】
光電子デバイスは、LDを含み得、1つ以上のInGaN層は、InGaN導波管を含み得、InGaN導波管は、LDにモーダル閉じ込めを提供し、LDは、例えば、少なくとも445nm、少なくとも460nm、または少なくとも478nmの波長においてレージングピークを有する。
【0045】
III族窒化物は、1つ以上のInGaN量子井戸を含む光放射InGaN活性層をさらに含み得、量子井戸のうちの1つ以上は、例えば、少なくとも7%、少なくとも10%、または少なくとも16%のインジウム組成と、4ナノメートルより厚い厚さ(例えば、5nm)、少なくとも5nm、または少なくとも8nmの厚さを有する。しかしながら、量子井戸の厚さは、4nmより薄い場合もあり得るが、それは一般的に2nmより厚い厚さである。
【0046】
III族窒化物の蒸着は、半極性GaN結晶面上に1つ以上のn型(Al,In,Ga)N層を蒸着すること、1つ以上のn型(Al,In,Ga)N層の上または上方に、(障壁層の間に)1つ以上のInGaN量子井戸層を含むInGaN活性層を蒸着すること、およびInGaN量子井戸層の上に1つ以上のp型(Al,In,Ga)N層を蒸着することをさらに含み得る。III族窒化物層(例えば、n型(Al,In,Ga)N層、p型(Al,In,Ga)N層、およびInGaN量子井戸層)は、半極性GaN結晶面の半極性配向を有し、InGaN量子井戸層は、少なくとも477nmの波長においてピーク光放射またはピーク光吸収を有する。しかしながら、層が反対の順序で蒸着され得、その結果、p型層は、半極性結晶面の上、かつ活性層の下にあり、n型層は、活性層の上にある。
【0047】
光電子デバイスは、半極性結晶面の上または上方にn型GaN層を蒸着することと、n型GaN層の上または上方にn型InGaN導波管層を蒸着することであって、n型InGaN導波管層は、少なくとも50nmの厚さと7%以上のインジウム組成とを有する、ことと、n型InGaN導波管層の上または上方にInGaN活性層を蒸着することであって、活性層は、障壁層と、少なくとも7%のインジウム組成および4nm以上の厚さを有する1つ以上のInGaN量子井戸層とを含む(InGaN量子井戸層が障壁層の間にある)、ことと、InGaN量子井戸層の上または上方にp型InGaN導波管層を蒸着することと、p型InGaN導波管層の上または上方にp型GaN層を蒸着することであって、p型InGaN導波管層は、少なくとも50nmの厚さと、7%以上のインジウム組成とを有する、こととによって製造されたLDであり得る。III族窒化物層(例えば、n型GaN層、n型InGaN導波管層、InGaN活性層、p型GaN層、およびp型InGaN導波管層)は、半極性結晶面の半極性配向を有する。
【0048】
1つの実施形態において、LDは、AlGaNクラッド層フリーであり得、言い換えると、レーザーダイオードは、任意のAlGaNクラッド層を含まない場合もあり、またはデバイス内の任意のAlGaN層は、デバイスの光学モードを制限しない(例えば、デバイス内のAlGaN層は、10%以下のAl含有率を有し得る)。
【0049】
図3(a)は、金属有機化学蒸着法(MOCVD)(例えば、大気圧MOCVD(AP−MOCVD))を用いて、{30−31}GaN基板302(ここで、x=−10度)または{30−3−1}GaN基板302(ここで、x=−10度)上にエピタキシー成長されたプロトタイプレーザー構造300を例示する。デバイス構造300は、GaN基板302の上表面304上に成長される。上表面304は、GaN基板300のm面306に対してx度で配向される。例えば、表面304は、{30−31}面または{30−3−1}面であり得る。デバイス300は、AlGaNクラッドフリーであり、{30−31}LDを成長させるために利用されたMOVCD成長状態は、c面、m面および(20−21)の成長のために一般的に使用される状態に類似している。
【0050】
構造300は、厚い下部GaNクラッド層308(例えば、半極性GaN結晶面304の上または上方のn型GaN層)、SiドープのInGaN導波管層310(n型GaN層308上または上方の50nm厚n型InGaN導波管層310)、n型InGaN導波管層310上または上方の活性層であって、GaN障壁層314a、314b(例えば、10nm厚)の間に挟まれた3周期のノンドープのInGaN量子井戸312(例えば、5nm厚)を含む活性層、AlGaN電子ブロッキング層(EBL)316、MgドープのInGaN上部導波管層318(例えば、量子井戸312の上または上方の50nm厚p型InGaN上部導波管層)、Mgドープの上部GaNクラッド層320(例えば、p型GaN層)、およびMgドープのGaNp++接触層322を含む[7]。n型GaN308、n型InGaN310、活性領域312、314a、314b、およびp型InGaN318が、N雰囲気の下で成長された。p型GaN320が、H雰囲気の下で成長された。全デバイスは、高V/III(>150)比率の下で成長された。構造および成長状態は、[7]に記載されたそれらに類似している。
【0051】
1つ以上の例において、半極性結晶面304および蒸着状態は、III族窒化物層308〜322のうちの1つ以上が0.75nm以下の表面ラフネスを有するようなものであり得る。
【0052】
図3(b)は、ブロック200中に、ブロック200の半極性平面304上に成長されたデバイス構造324の別の実施形態を例示する。デバイス構造は、1つ以上のn型III族窒化物または(Al,Ga,In)N層328と1つ以上のp型III族窒化物または(Al,Ga,In)N層330との間の1つ以上のIII族窒化物または(Al,Ga,In)N活性層326(例えば、1つ以上のInGaN量子井戸)を含む。例えば、n型III族窒化物層328は、半極性GaN結晶面304の上または上方にあり得る。III族窒化物活性326は、n型III族窒化物層328の上または上方にあり得る。p型III族窒化物層330は、III族窒化物活性層326の上または上方にあり得る。1つの実施形態において、n型層328およびp型層330が逆にされ得る。また、GaN基板302のc方向も図3(a)および図3(b)に示されている。
【0053】
半極性結晶面304は、例えば、{30−31}、{30−3−1}、{40−41}、または{40−4−1}面であり得る。ブロック200において提供される半極性GaN結晶面304は、例えば、微斜面、ミスカット、または軸外フリースタンディング半極性GaN基板302の上表面であり得る。半極性GaN面304が原子的特定面であることにより、III族窒化物層(例えば、308〜322、326、328、330)の平坦なエピタキシー成長が達成される。例えば、1つ以上のIII族窒化物層308〜322、326、328、330は、0.75nm以下の表面ラフネスを有する。本発明は、III族窒化物層の特定の厚さに限定されず、III族窒化物活性層326は、量子井戸または特定種類の活性層に限定されない。例えば、光電子デバイスのIII族窒化物層は、太陽電池、光検出器等のためのデバイス層であり得る。活性層326は、太陽電池、光検出器等のための活性層であり得る。
【0054】
ブロック204は、デバイスを処理する(例えば、ミラーファセットを形成することを含む)ことを表す。リッジ導波管レーザー構造は、従来のフォトリソグラフィ、ドライエッチング、およびリフトオフの技術を用いて製造される。例えば、一実施形態において、ブロック202のレーザーデバイス構造は、フォトリソグラフィおよびドライエッチングの技術を用いて10μm×1800μmのリッジ導波管LDに処理された。自己整列されたドライエッチおよびレフトオフの処理が、リッジ導波管および酸化物絶縁体を規定するために使用され、その後、p接触のための50/1000nmPd/Au金属化がなされた。ミラーファセットは、標準Clベースの反応イオンエッチングによって、c軸の面内投影に垂直に形成された。後側面Al/Au n接触が、バルク基板上に直接に蒸着された。
【0055】
ブロック206は、方法の最終結果、(例えば、ミスカットされたGaN基板302上の)半極性面304または半極性GaN結晶面304上に成長されたデバイスまたは光電子デバイス(例えば、レーザーダイオードまたはLED)を表す。半極性面304または半極性GaN結晶面304は、GaNのm面306からGaNのc方向にx度でミスカットされ、または配向される(ここで、−15<x<−1および1<x<15)。例えば、光電子デバイスがGaNのミスカットの上に成長され得る。ミスカットは、GaNのm面306からGaNのc方向にx度でミスカットされた半極性GaN結晶面304を含む(ここで、−15<x<−1および1<x<15)。
【0056】
図3(c)は、エッチングされたファセット334(エッチングされたファセットミラー)、リッジ絶縁体336、およびp接触パッド338を有する、ブロック206の完成されたレーザーデバイス構造332の断面概略図である。LDは、例えば、{30−31}上にあり得る。光電子デバイスは、モーダル閉じ込めを提供するのに十分に厚いInGaN導波管を含むAlGaNクラッド層フリーLDであり得る。
【0057】
(実験結果)
(形態品質および構造品質)
LD構造の形態的品質および構造的品質は、別個の(30−31)GaN基板上で同じ成長状態を反復することによって特徴付けられた。別個のMOCVD成長の間の不一致は、光ルミネセンス測定を介して最小限度まで示された。
【0058】
図4(a)は、(30−31)半極性結晶面304上に成長された図3(a)の構造のTEM画像を示し、明確な欠陥を有しない高品質な界面を示す。図4(a)は、n型GaN層308(n−GaN)、n型InGaN層310(n−InGaN)、GaN障壁層314a、314bを有するInGaN量子井戸312(InGaN/GaN)、p型AlGaN EBL(p−AlGaN)、p型InGaN層318(p−InGaN)、およびp型層320(p−GaN)を示す。
【0059】
図4(b)および図4(c)は、本発明が、最適化ではない成長状態と見なす「11−22」方向に沿って延在する明確な条線を有する図3(a)のデバイス構造のn型GaN層308の(30−31)上表面340(表面304の反対側または表面304に平行)のノマルスキー画像を示す。
【0060】
図4(d)〜図4(g)は、表面形態が成長状態によってどのように最適化され得るかを示す。図4(d)および図4(e)は、N雰囲気(図4(d))およびH雰囲気(図4(e))を用いて(30−31)半極性結晶面304上にMOVCDによって成長された、図3(a)のデバイス構造のn型GaN層308の上表面340のノマルスキー画像である。
【0061】
図4(f)および図4(g)は、N雰囲気(図4(f))およびH雰囲気(図4(g))を用いて(30−3−1)半極性結晶面304上にMOVCDによって成長された、図3(a)のデバイス構造のn型GaN層308の上表面340のノマルスキー画像である。
【0062】
(30−31)面304上の50nm厚InGaN層(例えば、層310)は、上部(30−3−1)面の表面342を有し、上表面342は、0.75nmの平方自乗平均(RMS)ラフネスを有する。しかしながら、RMSラフネスは、より高くもより低くもあり得る。50nm厚InGaN層310は、N雰囲気の下に、GaN308上に成長された。GaN308は、高温(例えば、約900℃)でN雰囲気の下に成長された。
【0063】
図5は、(30−31)面の非対称(20−25)回折の周りの、図3(a)のLD構造300のx線逆格子空間マッピング(RSM)を示す。RSMにおいて理解されるように、LD構造の層のすべてに対するBraggピークは、Qx軸上に垂直に並んでおり、LDがコヒーレントに的歪んでいることを示す。
【0064】
(出力特性)
電気測定およびルミネセンス測定のすべては、コーティングされていないミラーファセットを有するデバイスについてなされた。
【0065】
図6(a)および図6(b)は、それぞれ、{30−3−1}GaN基板上に成長された(そして図2に従って処理された)図3(a)の構造を有するエッチングされたファセットLDのL−I−V特性およびレージングスペクトルを示す。図6(b)は、0.4nmのFWHMと477.5nmでのレージングピークを示す。
【0066】
図7(a)〜7(e)は、(30−31)GaN基板上に成長され、そして図2のステップに従って処理された図3(a)のエッチングされたファセットAlGaNクラッドフリーInGaN/GaN LDの測定である。
【0067】
図7(a)および図7(b)は、それぞれ、エッチングされたファセットAlGaNクラッドフリーInGaN/GaN LDのL−I−V特性およびレージングスペクトルを示す。すべての測定は、最小のデバイス自己加熱効果を確保するために、1μsパルスおよび0.1%デューティサイクルを用いて20℃で行われた。図7(b)のレージングスペクトルは、444.7nmにおいて明確なレージングピークを示す。推定された閾値電流(Ith)は、5.6kA/cmのJthに対応する1022mAである。本発明において、9.9Vの比較的高い閾値電圧は、最適化されていないp接触およびドーピングプロフィールに起因する。
【0068】
図7(c)は、電流の関数として測定された一連のELスペクトルを示す。
【0069】
図7(d)は、ピークEL波長が、0.03kA/cmでの約448nmから6.0kA/cmで閾値のちょうど上の440nmにシフトすることを示す。ELブルーシフトのこの値は、m面LDに匹敵し、同様な波長で放射するc面LDよりかなり低い(c面データが、比較のために示されている)[22,8]。図7dはまた、スペクトルの幅またはレーザーピークのFWHMの電流密度の依存性を示し、スペクトル幅が、0.03kA/cmでの16nmから閾値のちょうど上の2.5nmまで狭められた。
【0070】
図7(e)は、ステージ温度の関数として(約35mWの出力電力での)Jthおよびピーク波長を示す。約135Kの特性温度(T)値は、温度に対し閾値電流の自然対数をプロットし、そして勾配の逆数を計算することによって推定された。この値は、同じ波長領域で放射するc面でビアスに対して報告された値[23〜24]に充分に匹敵する。ピーク波長の温度依存性は、約0.06nm/Kであると計算された。これもm面、c面、および(20−21)面上に成長されたLDに対して報告された値[9,2,25,15]によく対応する。
【0071】
本発明は、図3(a)のLD構造に対して約4.9%の閉じ込め因子を推定する。しかしながら、より低い閉じ込め因子を有するレージングが可能であり、図3(a)のLD構造もより高い閉じ込め因子を有し得る。
【0072】
本発明は、向上されたレーザーの性能を可能にする。高い理論臨界厚さと、低い量子閉じ込みシュタルク効果(QCSE)とに連結されたこの初めてのLD性能は、半極性(30−31)面が長波LD応用に対して優れたポテンシャルを有することを示す。半極性GaN基板上にエピタキシー成長された歪(Al,Ga,In)N合金層は、本発明がコヒーレントレーザーダイオード導波管層に対してモーダル閉じ込めを向上させることを可能にする。より厚い量子井戸は、量子井戸内の有効キャリア密度を減少することを助け(オージェ型損失を減少させ)、低透過キャリア密度を容易にし得る。
【0073】
(可能な改変)
バリエーションは、さまざまな可能なエピタキシー成長技術、レーザーデバイス構造、異なるドライエッチング技術を含み、誘導結合プラズマ(ICP)、反応イオンエッチング(RIE)、集光イオンビーム(FIB)、CMP、化学的補助イオンビームエッチング(CAIBE)、劈開によるファセットミラーの形成、レーザー切断によるファセットミラーの形成、導波管構造のバリエーション、2種類のエッチング技術または異なる角度によって作られたファセット(超放射ダイオード(SLD))、および同じ/2種類の誘電体を用いてコーディングされたファセットミラー等を含む。
【0074】
例えば:
・ミスカットは、{30−31}、{30−3−1}、{40−41}および{40−4−1}面等を含むが、それらに限定しない。他のミラー指数を有する数多くの半極性面が可能である。(30−31)、(30−3−1)、(40−41)、および(40−4−1)は、例として列挙されることに過ぎない。原子的特定面を用いて、平坦なエピタキシー成長が可能である。
【0075】
・このようなミスカット上のLDデバイスは、劈開されたファセットミラーが可能でない場合に、エッチングされたファセットミラー、またはレーザー切断されたファセットミラーを有し得る。
【0076】
・このようなミスカット上のLDデバイスは、傾斜されたファセット(例えば、LDの成長面304に対して傾斜されたファセット)、または成長面304に垂直なファセットを有する劈開されたファセットミラーを有し得る。例えば、前述の{30−31}レーザーは、劈開されたファセットを有し得る。
【0077】
・このようなミスカット上のLDデバイスは、より高いゲインのために、c投影方向で配向された導波管を有し得る。
【0078】
・このようなミスカット上のLDデバイスは、キャビティミラーおよび/またはファセットおよび/または分散型Bragg反射器(DBR)および/または回折格子等からの光学フィードバックを使用し得る。
【0079】
・このようなミスカット上のLDデバイスは、光学ゲイン(例えば、SLDまたは半導体光学増幅器)を使用し得る。
【0080】
・このようなミスカット上のLDデバイスは、異なる導波管構造を使用し得る。
【0081】
・このようなミスカット上のLDデバイスは、フィードバックを抑制するために、1つまたは2つの角度のあるファセットまたは(ウェット化学エッチングによって形成された)粗いファセットを有し得る。
【0082】
・このようなミスカット上のLDデバイスは、受動キャビティまたは可飽和吸収体を有し得る。
【0083】
・このようなミスカット上のLDデバイスは、連続波動作のレーザー、増大されたレージングおよび自発波長を有するデバイスを含み得る。
【0084】
デバイスが、GaN以外の他のIII族窒化物基板上に成長され得る。半極性結晶面304は、半極性GaN結晶面または半極性III族窒化物結晶面であり得る。代替的には、半極性結晶面は、GaN(例えば、GaN基板)またはIII族窒化物(例えば、III族窒化物基板)の半極性結晶面304であり得る。半極性結晶面304は、III族窒化物のm面からIII族窒化物のc方向にx度で配向され、またはミスカットされ得る(ここで、−15<x<−1および1<x<15)。半極性結晶面304は、平面であり得る。III族窒化物層308〜322のうちの1つ以上は、平面層であり得る。例えば、III族窒化物層308〜322、326、328、330のうちの1つ以上は、平面である上表面(例えば、340、342)を有し得る。III族窒化物層308〜322、326、328、330のうちの1つ以上は、平面である(他のIII族窒化物層との)界面を有し得る。
【0085】
・デバイスは、MOCVD以外の成長方法(例えば、分子線エピタキシー(MBE)、ハイブリッド蒸気層エピタキシー(HVPE)を含むが、それらに限定されない)を用いて成長され得る。
【0086】
バリエーションは、c方向にx度(ここで、−15<x<−1および1<x<15)でミスカットされたm面基板上に成長された他の光電子デバイス(LED、フォトニック結晶レーザー、太陽電池、光検出器等)も含む。例えば、このようなミスカット上のデバイスは、レーザーダイオード、SLD、半導体増幅器、およびVCSELレーザーを含み得る。
【0087】
(利点および改善点)
現存の(Al,Ga,In)Nレーザーは、一般的に極性{0001}面、非極性{10−10}および{11−20}面、または半極性{11−22}および{20−21}面上に成長される。極性面および非極性面上に成長されたレーザーは、デバイス性能を劣化させる量子井戸内の分極関連電場という欠点を有する。非極性{10−10}デバイスおよび{11−20}デバイスには、分極関連効果がないが、{10−10}における高インジウム濃度の組込み、および{11−20}デバイスの高品質結晶成長が難しいことが知られている。
【0088】
従来の半極性面(すなわち、{11−22}、{20−21}等)と比較されると、m面からc方向にx度(ここで、−15<x<−1および1<x<15)でのミスカットを有する半極性面上に成長されたデバイスは、最小の量子井戸内の分極関連電場を有する。このようなGaNミスカットされたm面基板上の、歪エピタキシー(Al,Ga,In)N合金層の臨界厚さはまた、m面からc方向に+/−15度より大きなミスカットを有する他の半極性(すなわち、{11−22}、{10−1−1}、および{20−21})結晶面より大きくあり得る。これは、導波管層のためにより大きい厚さおよび組成を可能にし、従ってモーダルゲインを向上させる。本発明の{30−31}および{30−3−1}面上の動作するプロトタイプレーザーデバイスは、このm面ミスカット基板上のデバイスのポテンシャルを実証する。
【0089】
本発明のデバイスの用途は、表示、照明、生体医用イメージング、照明用途等のための光電子デバイス(レーザー、LED等)を含むが、それらに限定されない。
【0090】
(参考文献)
以下の参考文献は、参照することによって、本明細書に組み込まれる。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
【表3】

(結論)
ここで、本発明の好ましい実施形態の説明を結論付ける。本発明の1つ以上の実施形態の上述の説明は、例示および説明の目的のために提示されている。本発明を包括的または開示される正確な形態に制限することを意図するものではない。多くの修正例および変形例が、上述の教示に照らして可能である。本発明の範囲は、本発明を実施するための形態によってではなく、本明細書に添付の請求項によって制限されることが意図される。
図1a
図1b
図2
図3a
図3b
図3c
図4a
図4-2】
図4-3】
図5
図6a
図6b
図7-1】
図7-2】