(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
表面に活物質を有する帯状の電極シートと、絶縁素材からなる帯状のセパレータシートとを回転可能に設けられた巻芯に供給するとともに、前記巻芯が回転することにより前記電極シート及び前記セパレータシートを重ねつつ巻回する巻回装置であって、
前記電極シート及び前記セパレータシートのうちの少なくとも一方である対象シートの搬送経路に沿って設けられるとともに、前記対象シートの搬送経路を挟む位置に配置された2つの把持部を備え、これら把持部の開閉動作により前記対象シートの把持及び把持解除を切換可能であり、把持状態にある前記対象シートを前記巻芯の方へと供給可能なシート供給手段と、
前記搬送経路に沿った前記シート供給手段よりも下流に設けられるとともに、前記対象シートの搬送経路を挟む位置に配置された2つの刃部を備え、これら刃部の開閉動作により前記対象シートを切断する切断手段と、
前記搬送経路に沿った前記切断手段よりも下流に設けられ、自身の回転により不良箇所を含む前記対象シートの一部を巻取可能な棒状の不良巻取巻芯と、
前記不良巻取巻芯による前記対象シートの巻取中に、前記不良巻取巻芯により巻取られた前記対象シートの外径が変動しても、少なくとも前記シート供給手段及び前記切断手段に対応する前記搬送経路を一定位置に維持する経路維持手段とを備えることを特徴とする巻回装置。
前記経路維持手段は、前記不良巻取巻芯による前記対象シートの巻取時に、前記不良巻取巻芯をその回転軸と直交する方向に沿って移動可能な巻芯移動手段によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の巻回装置。
前記経路維持手段は、前記不良巻取巻芯よりも上流において前記対象シートと接触する回転可能なパス変更ローラによって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の巻回装置。
前記パス変更ローラは、前記不良巻取巻芯による前記対象シートの巻取時のみに前記対象シートと接触する位置に設けられることを特徴とする請求項6に記載の巻回装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、不良巻取巻芯による電極シートの巻取りが進み、巻取られた電極シートの外径が徐々に増大していくと、不良巻取巻芯に対する電極シートの搬送経路が徐々に移動することになる。搬送経路の移動に伴い、万が一搬送される電極シートが切断手段(刃部)やシート供給手段(把持部)に接触してしまうと、切断手段やシート供給手段に異常が生じてしまったり、電極シートから活物質が飛散してしまったりするおそれがある。
【0008】
そこで、搬送経路が移動した場合であっても、電極シートが切断手段やシート供給手段へと接触してしまうことを防止するため、切断手段において開いた状態としたときの両刃部の間隔を十分に大きなものとし、また、シート供給手段において開いた状態としたときの両把持部の間隔を十分に大きなものとすることが考えられる。
【0009】
ところが、この場合には、切断手段やシート供給手段における開閉動作時の動作量が大きなものとなるため、これら手段を配設するために大きなスペースを確保する必要が生じてしまう。そのため、装置の大型化を招いてしまい、ひいては装置の製造等に係るコストの増大を招いてしまうおそれがある。尚、このような不具合は、セパレータシート側に不良巻取巻芯などを設け、当該不良巻取巻芯によってセパレータシートの不良箇所を巻き取って除去する場合においても同様に生じ得る。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、装置の小型化やコストの増大抑制を図ることができる巻回装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0012】
手段1.表面に活物質を有する帯状の電極シートと、絶縁素材からなる帯状のセパレータシートとを回転可能に設けられた巻芯に供給するとともに、前記巻芯が回転することにより前記電極シート及び前記セパレータシートを重ねつつ巻回する巻回装置であって、
前記電極シート及び前記セパレータシートのうちの少なくとも一方である対象シートの搬送経路に沿って設けられるとともに、前記対象シートの搬送経路を挟む位置に配置された2つの把持部を備え、これら把持部の開閉動作により前記対象シートの把持及び把持解除を切換可能であり、把持状態にある前記対象シートを前記巻芯の方へと供給可能なシート供給手段と、
前記搬送経路に沿った前記シート供給手段よりも下流に設けられるとともに、前記対象シートの搬送経路を挟む位置に配置された2つの刃部を備え、これら刃部の開閉動作により前記対象シートを切断する切断手段と、
前記搬送経路に沿った前記切断手段よりも下流に設けられ、自身の回転により不良箇所を含む前記対象シートの一部を巻取可能な棒状の不良巻取巻芯と、
前記不良巻取巻芯による前記対象シートの巻取中に、前記不良巻取巻芯により巻取られた前記対象シートの外径が変動しても、少なくとも前記シート供給手段及び前記切断手段に対応する前記搬送経路を一定位置に維持する経路維持手段とを備えることを特徴とする巻回装置。
【0013】
上記手段1によれば、不良巻取巻芯による対象シートの巻取中に、巻取られた対象シートの外径が変動したとしても、経路維持手段により、少なくともシート供給手段及び切断手段に対応する搬送経路を一定位置に維持することができる。従って、開いた状態としたときの両刃部の間隔を小さなものとしても、対象シートが切断手段(刃部)に接触することを防止でき、また、開いた状態としたときの両把持部の間隔を小さなものとしても、対象シートがシート供給手段(把持部)に接触することを防止できる。そのため、切断手段やシート供給手段に対する対象シートの接触防止を図りつつ、切断手段やシート供給手段における開閉動作時の動作量を小さなものとすることができる。その結果、これら手段の配設に必要なスペースを低減させることができ、装置の小型化を図ることができる。また、装置の製造等に係るコストの増大抑制を図ることができる。
【0014】
尚、「前記搬送経路を一定位置に維持する」とあるのは、不良巻取巻芯による対象シートの巻取中に、前記搬送経路が厳密な意味で一定位置に維持される場合のみならず、不良巻取巻芯による対象シートの巻取中に、前記搬送経路がほぼ一定の範囲内に維持される場合も含む。
【0015】
手段2.前記経路維持手段は、前記不良巻取巻芯による前記対象シートの巻取時に、前記不良巻取巻芯をその回転軸と直交する方向に沿って移動可能な巻芯移動手段によって構成されていることを特徴とする手段1に記載の巻回装置。
【0016】
上記手段2によれば、対象シートの外径変動に合わせて、巻芯移動手段により不良巻取巻芯を移動させることで、シート供給手段や切断手段に対応する搬送経路を一定位置に維持することができる。そのため、対象シートと接触する別の機構を設けることなく、搬送経路を一定位置に維持することができる。これにより、搬送される対象シートと別の機構との接触に伴い対象シートに蛇行が生じてしまい、対象シートの巻取に異常が発生してしまうことをより確実に防止できる。さらに、対象シートが電極シートである場合には、別の機構との接触により電極シートから活物質が飛散することを防ぐことができる。加えて、別の機構を設置するためのスペースを設けなくて済み、装置の小型化やコストの増大抑制をより図ることができる。
【0017】
手段3.前記対象シートのうち少なくとも前記不良巻取巻芯に巻取られる箇所の厚さを検出する厚さ検出手段と、
前記対象シートのうち少なくとも前記不良巻取巻芯に巻取られる箇所の長さを検出する長さ検出手段と、
前記厚さ検出手段及び前記長さ検出手段によるそれぞれの検出結果に基づき、前記巻芯移動手段を制御する移動制御手段とを備えることを特徴とする手段2に記載の巻回装置。
【0018】
上記手段3によれば、対象シートのうち少なくとも不良巻取巻芯に巻取られる箇所の厚さ及び長さに関する検出結果に基づき、巻芯移動手段が制御される。従って、実際に不良巻取巻芯によって巻取られる対象シートの状態に応じて、不良巻取巻芯の移動をより適切に制御することができ、ひいては搬送経路をより確実に一定位置に維持することができる。そのため、開いた状態としたときの両刃部の間隔をより小さなものとすることができ、また、開いた状態としたときの両把持部の間隔をより小さなものとすることができる。これにより、切断手段やシート供給手段における開閉動作時の動作量をより小さなものとすることができ、切断手段やシート供給手段に係る配設スペースの低減をより効果的に図ることができる。その結果、装置の小型化や装置の製造等に係るコストの増大抑制を一層図ることができる。
【0019】
手段4.前記不良巻取巻芯は、自身の回転軸方向に沿って前記搬送経路に重なる巻取時位置と前記搬送経路から外れる退避位置との間で移動可能に構成されており、
前記不良巻取巻芯が前記巻取時位置に配置され前記対象シートを巻取るときに、前記不良巻取巻芯の先端部を支持する支持手段と、
前記不良巻取巻芯による前記対象シートの巻取後に、巻取られた前記対象シートと接触し、この状態で前記不良巻取巻芯が前記巻取時位置から前記退避位置へと移動することで、自身に引っ掛かった状態の巻取られた前記対象シートを前記不良巻取巻芯から取外可能な取外手段とを備え、
前記巻芯移動手段は、前記支持手段及び前記取外手段を、前記不良巻取巻芯と同一の移動態様で移動させるように構成されていることを特徴とする手段2又は3のいずれかに記載の巻回装置。
【0020】
上記手段4によれば、不良巻取巻芯は、対象シートの搬送経路に重なる巻取時位置と前記搬送経路から外れる退避位置との間で移動可能とされている。そのため、不良巻取巻芯を退避位置に配置することで、巻回素子の製造時など、対象シートの不良箇所の巻取時以外のときに、不良巻取巻芯が対象シートに悪影響を及ぼしてしまうことを防止できる。
【0021】
また、上記手段4によれば、不良巻取巻芯による対象シートの巻取時に、不良巻取巻芯と同一の態様で移動する支持手段によって、不良巻取巻芯の先端部を支持することができる。そのため、対象シートの巻取中に、支持手段によって不良巻取巻芯をより安定的に支持することができ、不良巻取巻芯に撓みなどの変形が生じてしまうことをより確実に防止できる。その結果、対象シートをより適切な状態で巻取ることができる。
【0022】
加えて、取外手段が不良巻取巻芯と同一の態様で移動するため、巻取られる対象シートの厚さや長さにより不良巻取巻芯の移動量が変動した場合であっても、巻取完了時には、不良巻取巻芯と取外手段との相対位置関係を常に一定に保つことができる。従って、不良巻取巻芯をその回転軸と直交する方向に沿った元の位置(巻芯移動手段による移動前の位置)に戻したり、前記回転軸と直交する方向に沿った不良巻取巻芯の位置調節を行ったりせずとも、不良巻取巻芯を巻取時位置から退避位置へと移動させることで、取外手段によって不良巻取巻芯から巻取られた対象シートを取外すことができる。また、不良巻取巻芯を元の位置(巻芯移動手段による移動前の位置)に戻す前に、不良巻取巻芯を搬送経路から外れた退避位置へと移動させることができる。従って、不良巻取巻芯を元の位置に戻す前に巻回素子の製造を再開することができ、生産性の向上を図ることができる。
【0023】
さらに、上記手段4によれば、巻芯移動手段によって、支持手段及び取外手段を不良巻取巻芯の移動態様と同一の態様で移動させることができる。従って、巻芯移動手段とは別に、支持手段及び取外手段を移動させるための手段を設ける必要がなくなり、装置の小型化やコストの増大抑制をより効果的に図ることができる。
【0024】
手段5.前記不良巻取巻芯は、自身の回転軸と直交する断面において外周面が円形状をなすことを特徴とする手段2乃至4のいずれかに記載の巻回装置。
【0025】
上記手段5によれば、不良巻取巻芯の回転角度による搬送経路の変動を生じにくくすることができる。従って、巻芯移動手段による不良巻取巻芯の移動制御を容易に行うことができる。尚、上記手段5を下記の手段6又は手段7に適用してもよい。
【0026】
手段6.前記経路維持手段は、前記不良巻取巻芯よりも上流において前記対象シートと接触する回転可能なパス変更ローラによって構成されていることを特徴とする手段1に記載の巻回装置。
【0027】
上記手段6によれば、経路維持手段は、パス変更ローラによって構成されている。従って、経路維持手段を簡素な構成によって実現することができ、装置の製造等に係るコストの増大抑制をより確実に図ることができる。
【0028】
手段7.前記パス変更ローラは、前記不良巻取巻芯による前記対象シートの巻取時のみに前記対象シートと接触する位置に設けられることを特徴とする手段6に記載の巻回装置。
【0029】
上記手段7によれば、パス変更ローラは、不良巻取巻芯による対象シートの巻取時のみに対象シートと接触する位置に設けられている。従って、巻回素子の製造時など、不良巻取巻芯によって対象シートを巻取らないときに、対象シートがパス変更ローラに接触してしまうことを抑制できる。その結果、対象シートとパス変更ローラとが接触することによる不具合(例えば、対象シートの蛇行や、対象シートが電極シートである場合における活物質の飛散など)をより確実に防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。
[第1実施形態]
まず、巻回装置によって得られる巻回素子としてのリチウムイオン電池素子の構成について説明する。
【0032】
図1に示すように、リチウムイオン電池素子1(以下、単に「電池素子1」という)は、2枚のセパレータシート2,3を介して、正電極シート4及び負電極シート5が重ね合わされた状態で巻回されることにより製造される。尚、2枚のセパレータシート2,3に代えて、折返された1枚のセパレータシートを用いてもよい。また、以下においては、説明の便宜上、セパレータシート2,3及び電極シート4,5を「各種シート2〜5」と称することがある。
【0033】
セパレータシート2,3は、それぞれ同一の幅を有する帯状をなしており、異なる電極シート4,5同士が互いに接触して短絡を起こしてしまうのを防止すべく、ポリプロピレン(PP)等の絶縁体により構成されている。
【0034】
電極シート4,5は、薄板状の金属シートからなり、セパレータシート2,3と略同一の幅を有している。また、電極シート4,5の表裏両面には活物質が塗布されている。正電極シート4には例えばアルミニウム箔シートが用いられ、その表裏両面に正極活物質(例えば、マンガン酸リチウム粒子等)が塗布されている。負電極シート5には例えば銅箔シートが用いられ、その表裏両面に負極活物質(例えば、活性炭等)が塗布されている。そして、活物質を介して、正電極シート4及び負電極シート5間におけるイオン交換ができるようになっている。より詳しくは、充電時には、正電極シート4側から負電極シート5側へとイオンが移動し、放電時には、負電極シート5側から正電極シート4側へとイオンが移動する。
【0035】
加えて、本実施形態では、電池素子1ひとつを構成する両電極シート4,5の長さはそれぞれ予め設定された所定の値とされている。本実施形態において、一素子分の負電極シート5の長さは、負電極シート5で正電極シート4をより確実に覆うべく、一素子分の正電極シート4の長さよりも若干大きなものとされている。
【0036】
さらに、正電極シート4の幅方向一端縁からは図示しない複数の正極リードが延出するとともに、負電極シート5の幅方向他端縁からは図示しない複数の負極リードが延出している。
【0037】
リチウムイオン電池を得るに際しては、電池素子1が金属製で筒状をなす図示しない電池容器(ケース)内に配設されるとともに、前記正極リード及び前記負極リードがそれぞれまとめられる。そして、まとめられた正極リードを正極端子部品(図示せず)に接続するとともに、同じくまとめられた負極リードを負極端子部品(図示せず)に接続し、両端子部品を前記電池容器の両端開口に塞ぐように設けることで、リチウムイオン電池を得ることができる。
【0038】
次に、電池素子1を製造するための巻回装置10について説明する。
図3に示すように、巻回装置10は、各種シート2〜5を巻回するための巻回部11と、正電極シート4を巻回部11へ供給するための正電極シート供給機構31と、負電極シート5を巻回部11へ供給するための負電極シート供給機構41と、セパレータシート2,3をそれぞれ巻回部11へ供給するためのセパレータ供給機構51,61と、制御装置81とを備えている。尚、上記巻回部11や各供給機構31,41,51,61など、巻回装置10内の各種機構は、制御装置81により動作制御される構成となっている。
【0039】
正電極シート供給機構31は、正電極シート4がロール状に巻回されてなる正電極シート原反32を備えている。正電極シート原反32は、自由回転可能に支持されており、ここから適宜、正電極シート4が引き出されることとなる。また、この例においては、正電極シート原反32を構成する正電極シート4には、予め継ぎ目等の不良箇所に対応して不良始端マーカM1及び不良終端マーカM2が付されている。不良始端マーカM1は、不良箇所の始端(最上流部)を示すものであり、不良終端マーカM2は、不良箇所の終端(最下流部)を示すものである。本実施形態では、正電極シート4における不良始端マーカM1から不良終端マーカM2までの距離が、1素子分の正電極シート4の長さ未満となるように構成されている。
【0040】
尚、正電極シート原反32を構成する正電極シート4の厚さは、活物質の塗布厚みが異なる等の理由により、正電極シート原反32のロットごとに異なる場合がある。また、1の正電極シート原反32を構成する正電極シート4の各部位で厚みが異なることがある。これらの点は、負電極シート5においても同様である。
【0041】
正電極シート供給機構31は、シート供給手段としてのシート供給機構71と、切断手段としての電極カッタ72と、テンション付与機構73と、厚さ計測機構74と、不良巻取機構91と、不良検知センサ76とを備えている。
【0042】
シート供給機構71は、正電極シート4を巻回部11へ供給するものであり、正電極シート4の搬送経路に沿って、巻回部11に接近する接近位置と、巻回部11から離間する離間位置とに移動可能に構成されている。シート供給機構71は、正電極シート4の搬送経路を挟む位置に配置され、正電極シート4を把持可能な2つの把持部71a,71bを備えている。把持部71a,71bは、図示しない駆動手段により開閉動作可能に構成されており、把持部71a,71bの開閉動作により正電極シート4の把持及び把持解除を切換可能である。そして、把持部71a,71bにより正電極シート4を把持した状態で、シート供給機構71が巻回部11に対し接近することで、正電極シート4を巻回部11の後述する巻芯13,14の方へと供給可能となっている。
【0043】
また、本実施形態において、シート供給機構71は、開放状態としたときの把持部71a,71bの間隔が十分に小さなものとなるように構成されている。これにより、把持部71a,71bの開閉動作時における動作量が十分に小さなものとされている。
【0044】
電極カッタ72は、正電極シート4を切断するためのものであり、正電極シート4の搬送経路を挟む位置に配置された2つの刃部72a,72bを備えている。刃部72a,72bは、図示しない駆動手段によって開閉動作可能に構成されており、正電極シート4を挟むように位置するシート切断位置と、正電極シート4の搬送経路から離間した退避位置との間を移動可能とされている。尚、正電極シート4の切断は、前記把持部71a,71bにより正電極シート4を把持した状態で行われるようになっている。
【0045】
また、本実施形態において、電極カッタ72は、開放状態としたときの刃部72a,72bの間隔が十分に小さなものとなるように構成されている。これにより、刃部72a,72bの開閉動作時における動作量が十分に小さなものとされている。
【0046】
テンション付与機構73は、一対のローラ73a,73bと、両ローラ73a,73b間において揺動自在に設けられたダンサローラ73cとを有している。ダンサローラ73cは、トルク制御された所定のサーボモータ(図示せず)により動作し、制御装置81により前記サーボモータが制御されることで、正電極シート4に付与される張力を変更可能に構成されている。また、ダンサローラ73cは、正電極シート4に張力を付与することで、正電極シート4の弛みを防止する役割も果たす。尚、本実施形態では、テンション付与機構73によって、正電極シート4に対し常に一定の張力が付与されるようになっている。
【0047】
厚さ計測機構74は、一対のローラ74a,74bと、第一測長ローラ74cと、第二測長ローラ74dとを備えている。第一測長ローラ74cの外周には、両ローラ74a,74b間に位置する正電極シート4が折り返して曲げられた状態で架けられている。第二測長ローラ74dは、第一測長ローラ74cとの間で正電極シート4の折り返し部分を挟み込むようにして配置されている。
【0048】
また、両測長ローラ74c,74dは、互いに同径で、かつ、それぞれ自由回転可能な従動ローラであり、正電極シート4の搬送に伴い回転する。そして、第一測長ローラ74cの回転量は、所定の第一エンコーダ77aにより把握可能となっており、第二測長ローラ74dの回転量は、所定の第二エンコーダ77bにより把握可能となっている(
図6参照)。両測長ローラ74c,74dの回転量に関する情報は、両エンコーダ77a,77bから制御装置81へと出力される。
【0049】
加えて、ローラ74bの回転量は、所定の第三エンコーダ77c(
図6参照)により把握可能となっており、ローラ74bの回転量に関する情報が第三エンコーダ77cから制御装置81へと出力される。
【0050】
尚、両測長ローラ74c,74d及び正電極シート4の位置関係が上述のように設定されているため、正電極シート4が両測長ローラ74c,74d間を通過しているときに、正電極シート4の内周面(屈曲内側面)に接触する第一測長ローラ74cの回転量と、正電極シート4の外周面(屈曲外側面)に接触する第二測長ローラ74dの回転量とに差が生じることとなる。この回転量の差は、正電極シート4が厚いほど大きく、正電極シート4が薄いほど小さくなる。
【0051】
不良巻取機構91は、不良箇所を含む正電極シート4の一部を巻き取って除去するための機構である。不良巻取機構91は、正電極シート4の搬送経路に沿って電極カッタ72よりも下流に設けられている。不良巻取機構91の構成については後に説明する。
【0052】
不良検知センサ76は、所定の光電センサ等により構成されており、不良始端マーカM1及び不良終端マーカM2を検知するためのものである。不良検知センサ76は、不良始端マーカM1又は不良終端マーカM2を検知すると、制御装置81に対し不良始端マーカM1又は不良終端マーカM2を検知した旨の信号を送信する。尚、本実施形態において、正電極シート4の搬送経路に沿った電極カッタ72から不良検知センサ76までの距離は、1素子分の正電極シート4の長さと同一となるように構成されている。
【0053】
負電極シート供給機構41は、その最上流側において、負電極シート5がロール状に巻回されてなる負電極シート原反42を備えている。負電極シート原反42は、自由回転可能に支持されており、ここから適宜、負電極シート5が引き出されることとなる。また、負電極シート原反42を構成する負電極シート5には、正電極シート4と同様に、予め継ぎ目等の不良箇所に対応して不良始端マーカM1及び不良終端マーカM2が付されている。本実施形態では、負電極シート5における不良始端マーカM1から不良終端マーカM2までの距離が、1素子分の負電極シート5の長さ未満となるように構成されている。
【0054】
さらに、負電極シート原反42から巻回部11にかけての負電極シート5の搬送経路の途中には、正電極シート4の搬送経路と同様に、シート供給機構71、電極カッタ72、テンション付与機構73、厚さ計測機構74、不良巻取機構91、不良検知センサ76などが設けられている。これらは、負電極シート5を対象として機能する点を除き、正電極シート4の搬送経路に設けられたものと基本的に同様の構成であるため、これらについての詳細な説明は省略する。尚、本実施形態において、負電極シート5の搬送経路に沿った電極カッタ72から不良検知センサ76までの距離は、1素子分の負電極シート5の長さと同一となるように構成されている。
【0055】
一方、セパレータ供給機構51,61は、それぞれセパレータシート2,3がロール状に巻回されてなるセパレータ原反52,62を備えている。セパレータ原反52,62は、自由回転可能に支持されており、ここから適宜、セパレータシート2,3が引き出されることとなる。
【0056】
さらに、セパレータ供給機構51,61は、電極シート供給機構31,41と同様に、テンション付与機構73を備えている。これは、セパレータシート2,3を対象として機能する点を除き、正電極シート供給機構31に設けられたものと同様である。従って、これについての詳細な説明は省略する。
【0057】
また、各種シート2〜5の搬送経路の途中には、各種シート2〜5をひとまとめにする一対のガイドローラ78a,78bなど、各種シート2〜5を案内するための各種ガイドローラ(符号略)が設けられている。
【0058】
次に、巻回部11の構成について説明する。
図2に示すように、巻回部11は、図示しない駆動機構により回転可能に設けられた相対向する2枚の円盤状のテーブルからなるターレット12と、当該ターレット12の回転方向に180°間隔で設けられた2つの巻芯13,14と、当該巻芯13,14に対しそれぞれターレット12の回転方向にほぼ90°ずつずれた位置に設けられた2つの支持ローラ15a,15bと、セパレータカッタ16と、巻回終了直前の各種シート2〜5を押さえるための押えローラ17と、所定の固定用テープを貼付するためのテープ貼付機構18とを備えている。
【0059】
巻芯13,14は、それぞれ自身の外周側において各種シート2〜5を巻取るためのものであり、図示しない駆動機構により自身の中心軸を回転軸として回転可能に構成されている。巻芯13,14の回転量は、図示しないエンコーダにより把握可能となっており、当該エンコーダから回転量に関する情報が制御装置81へと入力されるようになっている。
【0060】
また、巻芯13,14は、ターレット12の軸線方向(
図2の紙面奥行方向)に沿って、ターレット12を構成する一方のテーブルに対し出没可能に設けられている。尚、巻芯13,14は、前記一方のテーブルから突出した状態となったときに、その先端部が他方のテーブルに形成された受け用の穴に挿通され、両テーブルによって回転可能な状態で支持されるようになっている。
【0061】
さらに、巻芯13(14)は、それぞれ自身の軸線方向(
図2の紙面奥行方向)に沿って延びる一対の芯片13a,13b(14a,14b)を備えている。芯片13a,13b(14a,14b)間には隙間13c(14c)が形成されている。
【0062】
加えて、巻芯13,14は、ターレット12が回転することにより、巻回ポジションP1と、取外しポジションP2との間を旋回移動可能に構成されている。
【0063】
巻回ポジションP1は、巻芯13,14に対し各種シート2〜5を巻回するポジションであり、当該巻回ポジションP1に対し上記各供給機構31,41,51,61から各種シート2〜5が供給されることとなる。
【0064】
取外しポジションP2は、巻回後の各種シート2〜5、すなわち電池素子1の取外しを行うためのポジションである。取外しポジションP2の周辺部には、巻芯13,14から電池素子1の取外しを行うための取外装置(不図示)等が設けられている。
【0065】
支持ローラ15a,15bは、取外しポジションP2へ移動した巻芯13,14と上記供給機構31,41,51,61との間で各種シート2〜5を引っ掛け、支持するためのものである。
【0066】
セパレータカッタ16は、巻回ポジションP1の近傍に配置されており、ターレット12に接近しセパレータシート2,3を切断する切断位置と、ターレット12から離間し巻芯13,14の移動を妨げない退避位置との間で移動可能である。
【0067】
押えローラ17は、取外しポジションP2の近傍に配置されており、ターレット12に接近し各種シート2〜5を押さえる近接位置と、ターレット12から離間し巻芯13,14の移動を妨げない退避位置との間で移動可能に構成されている。
【0068】
テープ貼付機構18は、取外しポジションP2の近傍に配置されており、巻回終了時に、ターレット12に接近し、セパレータシート2,3の終端部に所定の固定用テープを貼付する機能を備えている。
【0069】
次いで、不良巻取機構91の構成について説明する。不良巻取機構91は、電極シート4,5における少なくとも不良始端マーカM1から不良終端マーカM2までの部位、すなわち、電極シート4,5における不良箇所を含む部位を巻取るためのものである。本実施形態では、正電極シート4及び負電極シート5が対象シートに相当する。尚、不良巻取機構91は、両電極シート4,5の搬送経路のそれぞれに対応して設けられているが、以下では、正電極シート4の搬送経路に対応して設けられた不良巻取機構91について説明する。負電極シート5の搬送経路に対応して設けられた不良巻取機構91は、負電極シート5を対象として機能する点を除き、正電極シート4の搬送経路に対応して設けられた不良巻取機構91と同様の構成を有する。
【0070】
不良巻取機構91は、
図4及び
図5に示すように、巻芯ユニット92、支持手段としての巻芯支持部93及び取外手段としての取外機構94と、これらが固定されるベース部95と、当該ベース部95を移動させることで巻芯ユニット92等を移動させる経路維持手段及び巻芯移動手段としての移動機構96とを備えている。
【0071】
巻芯ユニット92は、軸部921と、円形基部922と、カバー部923と、不良巻取巻芯924と、駆動部925とを備えている。
【0072】
軸部921は、円筒状をなしており、駆動部925によって自身の軸方向に沿って往復移動可能な状態で支持されている。但し、軸部921は、駆動部925に対し相対回転不能である。
【0073】
円形基部922は、円板状をなしており、軸部921の先端部に取付けられている。また、円形基部922は、自身の中心部に、軸部921の内周空間に連通する孔を備えている。当該孔は、不良巻取巻芯924の挿通される部位である。
【0074】
カバー部923は、不良巻取巻芯924による正電極シート4の巻取時に、活物質が飛散することを防止するために設けられている。カバー部923は、円形基部922の端面の外周寄りから突出しており、不良巻取巻芯924の周囲に設けられている。また、カバー部923は、自身の長手方向と直交する断面において、不良巻取巻芯924の中心軸を中心とした円弧状をなす一対の部材によって構成されている。
【0075】
不良巻取巻芯924は、不良箇所を含む正電極シート4の一部を巻取るためのものである。不良巻取巻芯924は、円形基部922の中心部に設けられた前記孔と軸部921の内周とに挿通されており、駆動部925によって、自身の中心軸を回転軸として回転可能とされている。また、不良巻取巻芯924は、駆動部925によって、自身の中心軸方向に沿って往復移動可能とされている。さらに、不良巻取巻芯924は、自身の回転軸と直交する断面において外周面が円形状をなしている。つまり、不良巻取巻芯924は、断面円形状をなしている。加えて、不良巻取巻芯924は、自身の回転軸方向に延びるスリット924sを備えている。
【0076】
駆動部925は、軸部921及び不良巻取巻芯924をそれらの中心軸方向に沿って往復移動させる機能と、不良巻取巻芯924を回転させる機能とを備えたものである。駆動部925によって、軸部921及び不良巻取巻芯924をこれらの中心軸方向に沿って移動させることにより、軸部921、円形基部922、カバー部923及び不良巻取巻芯924を前進位置及び後退位置の間で一体的に往復移動させることが可能である。前進位置に軸部921等を配置した状態では、不良巻取巻芯924が正電極シート4の搬送経路と重なる位置(「巻取時位置」と称す)に配置される。一方、後退位置に軸部921等を配置した状態では、不良巻取巻芯924が正電極シート4の搬送経路から外れた位置(「退避位置」と称す)に配置される。すなわち、不良巻取巻芯924は、自身の中心軸方向に沿って巻取時位置と退避位置との間で往復移動可能とされている。
【0077】
巻芯支持部93は、巻取時位置に配置された不良巻取巻芯924の先端部を支持するものである。巻芯支持部93は、不良巻取巻芯924の中心軸方向に沿って、不良巻取巻芯924と相対する位置に設けられており、円筒状の被挿通部931と、当該被挿通部931の中心に位置する受けピン932とを備えている。不良巻取巻芯924が巻取時位置に配置されると、被挿通部931に不良巻取巻芯924の先端部が挿通されるとともに、スリット部924sに受けピン932が配置された状態となり、巻芯支持部93によって不良巻取巻芯924の先端部が安定的に支持された状態となる。
【0078】
取外機構94は、不良巻取巻芯924によって巻取られた正電極シート4(後述する不良シートロール4F)を、不良巻取巻芯924から取外すためのものである。取外機構94は、駆動ブロック941と、当該駆動ブロック941を正電極シート4の搬送方向に沿って往復移動可能な駆動部942と、駆動ブロック941から突出した板状の取外用爪部943とを備えている。取外用爪部943の厚さは、スリット924sの幅よりも小さなものとされており、駆動部942によって駆動ブロック941を所定の前進位置に配置することで、取外用爪部943をスリット924sへと配置可能である。一方、駆動部942によって駆動ブロック941を所定の後退位置に配置することで、取外用爪部943を不良巻取巻芯924から所定距離以上離間した状態とすることが可能である。
【0079】
ベース部95は、巻芯ユニット92、巻芯支持部93及び取外機構94を支持しつつ、これらを同一の態様で移動させるためのものである。ベース部95は、鉛直方向に沿って貫通形成された挿通孔(図示せず)を備えており、ベース部95のうち前記挿通孔を形成する部位には、ねじ孔951aを有するナット951が固定されている。ナット951のうちねじ孔951aを形成する部位には、図示しない雌ねじが形成されている。また、ナット951のねじ孔951aと前記挿通孔とは直列的に連なった状態となっている。
【0080】
さらに、ベース部95は、巻取時位置に配置された不良巻取巻芯924の下方に対応する位置に、不良巻取巻芯924によって巻取られた正電極シート4を収容するための窪み状の不良シート収容部952を備えている。
【0081】
移動機構96は、ベース部95を移動させることで、不良巻取巻芯924や巻芯支持部93等を移動させるための機構である。移動機構96は、前記ナット951に螺合されたボールねじ961と、ボールねじ961を回転動作可能なモータ962とを備えている。モータ962は、例えばサーボモータにより構成され、制御装置81の後述する移動制御部85によってその回転量や回転速度が制御される。モータ962によりボールねじ961を回転させることで、ベース部95は、不良巻取巻芯924の回動軸及び正電極シート4の搬送経路のそれぞれと直交する方向(本実施形態では、鉛直方向)に沿って移動する。ベース部95の移動により、ベース部95に固定された巻芯ユニット92、巻芯支持部93及び取外機構94が同一の移動態様で鉛直方向に沿って移動する。尚、本実施形態における移動機構96はあくまで一例であり、移動機構の構成は適宜変更可能である。
【0082】
次いで、制御装置81について説明する。制御装置81は、演算手段としてのCPUや、各種プログラムを記憶するROM、演算データや入出力データなどの各種データを一時的に記憶するRAM、演算データ等を長期記憶するハードディスクなどを備えており、上述の通り、巻回部11や各供給機構31,41,51,61の動作を制御する。制御装置81は、
図6に示すように、長さ検出手段としての長さ検出部82と、厚さ検出手段としての厚さ検出部83と、平均厚さ算出部84と、移動制御手段としての移動制御部85とを備えている。
【0083】
長さ検出部82は、第三エンコーダ77cから入力されたローラ74bの回転量に関する情報に基づき、巻回部11側に対する電極シート4,5の繰出し量(供給量)を取得する。
【0084】
厚さ検出部83は、第一エンコーダ77a及び第二エンコーダ77bから入力された両測長ローラ74c,74dの回転量に関する情報に基づき、電極シート4,5の厚さを検出する。本実施形態において、厚さ検出部83は、予め設定された、電極シート4,5の厚さと両測長ローラ74c,74dの回転量の差との関係を示すテーブルを用いて、電極シート4,5の厚さを検出する。また、本実施形態において、厚さ検出部83は、電極シート4,5におけるその長手方向に沿った全域の厚さを検出する。さらに、厚さ検出部83は、検出した厚さと長さ検出部82により得られた電極シート4,5の繰出し量に関する情報に基づき、両測長ローラ74c,74dよりも下流に位置する電極シート4,5の各部の厚さを得るとともに、得られた各部の厚さに関する情報をRAMやハードディスクに記憶する。
【0085】
平均厚さ算出部84は、長さ検出部82により得られた電極シート4,5の繰出し量と厚さ検出部83により得られた電極シート4,5の厚さとに基づき、電極シート4,5の平均厚さを算出する。
【0086】
移動制御部85は、平均厚さ算出部84により得られた平均厚さを用いて、移動機構96(モータ962)の動作を制御する。
【0087】
また、制御装置81は、通常、ハードディスク等に予め記憶された情報に基づき、各供給機構31,41,51,61や巻回部11を制御し、各種シート2〜5を巻芯13,14によって巻取ることで電池素子1を製造する。但し、後述する不良検知フラグがオンである場合、制御装置81は、電池素子1の製造工程を一時的に停止し、不良巻取機構91の動作を制御して不良巻取処理を行う。不良巻取処理は、電極シート4,5における不良箇所を含む一部を不良巻取機構91によって巻取り、電極シート4,5の不良箇所を除去する処理である。不良巻取処理については後に説明する。
【0088】
次いで、電池素子1を得る際の巻回装置10の動作について説明する。尚、巻回ポジションP1に配置された一方の巻芯13(14)には、セパレータシート2,3が所定量だけ巻き取られた状態となっている。
【0089】
まず、負電極シート供給機構41のシート供給機構71により一方の巻芯13(14)側に対し負電極シート5を供給する。具体的には、負電極シート5を把持するシート供給機構71が巻回部11側に接近し、セパレータシート2,3間に負電極シート5を挿入することで、負電極シート5を供給する。挿入後、シート供給機構71による負電極シート5の把持を解除するとともに、シート供給機構71を元の位置に戻す。
【0090】
負電極シート5の供給後、一方の巻芯13(14)を所定数回転(例えば、1回転)させた上で、シート供給機構71により一方の巻芯13(14)側に対し、正電極シート4を供給する。具体的には、正電極シート4を把持するシート供給機構71が巻回部11側に接近し、セパレータシート2,3間に正電極シート4を挿入することで、正電極シート4を供給する。挿入後、シート供給機構71による正電極シート4の把持を解除するとともに、シート供給機構71を元の位置に戻す。
【0091】
そして、一方の巻芯13(14)を回転させていき、正電極シート4の繰出し量が予め設定された所定量に到達すると、一方の巻芯13(14)の回転を一時停止する。その上で、シート供給機構71により正電極シート4を把持するとともに、電極カッタ72により正電極シート4を切断する。尚、正電極シート4の繰出し量は、正電極シート供給機構31における第三エンコーダ77cからの出力情報に基づき算出される。また、所定量は、電池素子1ひとつ分を構成する正電極シート4の長さに対応するものとされる。正電極シート4が前記所定量だけ一方の巻芯13(14)に巻回されることで、一素子分の正電極シート4の終端部が電極カッタ72に対応して配置された状態となる。
【0092】
その後、一方の巻芯13(14)の回転を再開し、負電極シート5の繰出し量が所定量に到達すると、一方の巻芯13(14)の回転を一時停止する。その上で、シート供給機構71により負電極シート5を把持するとともに、電極カッタ72により負電極シート5を切断する。尚、負電極シート5の繰出し量は、負電極シート供給機構41における第三エンコーダ77cからの出力情報に基づき算出される。また、所定量は、電池素子1ひとつ分を構成する負電極シート5の長さに対応するものとされる。負電極シート5が前記所定量だけ一方の巻芯13(14)に巻回されることで、一素子分の負電極シート5の終端部が電極カッタ72に対応して配置された状態となる。
【0093】
負電極シート5の切断後、一方の巻芯13(14)の回転を再開させることにより電極シート4,5の終端部分(巻残り部分)を巻き取るとともに、セパレータシート2,3を切断することなく、ターレット12を回転させる。これにより、巻回ポジションP1にあった一方の巻芯13(14)がセパレータ供給機構51,61からセパレータシート2,3を引き出しつつ、取外しポジションP2側へと移動していく。
【0094】
そして、一方の巻芯13(14)の回転量が予め設定された所定量に到達した時点で、一方の巻芯13(14)の回転を停止する。また、ターレット12の回転により、巻回ポジションP1にあった一方の巻芯13(14)を取外しポジションP2に配置し、取外しポジションP2にあった他方の巻芯14(13)を巻回ポジションP1に配置する。このときには、一方の巻芯13(14)とローラ78a,78bとの間において、セパレータシート2,3が一方の支持ローラ15b(15a)に架けられた状態となる。
【0095】
この状態で、押えローラ17を一方の巻芯13(14)に接近させ、押えローラ17により各種シート2〜5を押えた上で、セパレータカッタ16がセパレータシート2,3に接近することにより、セパレータシート2,3を一度に切断する。
【0096】
尚、セパレータシート2,3の切断に先立って、他方の巻芯14(13)がターレット12の一方のテーブルから突出することで、他方の巻芯14(13)の隙間14c(13c)にセパレータシート2,3を配置する。そして、他方の巻芯14(13)を所定量だけ回転させることにより、その外周にセパレータシート2,3を所定量だけ巻き付けられた状態とする。
【0097】
セパレータシート2,3の切断後、押えローラ17により各種シート2〜5を押えた状態のまま、一方の巻芯13(14)を回転させる。これにより、各種シート2〜5が完全に巻取られる。その後、テープ貼付機構18により、セパレータシート2,3の終端部を前記固定用テープにより巻止めし、前記取外装置によって巻止めされた電池素子1を一方の巻芯13(14)から取外すことで、電池素子1が得られる。
【0098】
上記のような電池素子1の製造工程では、不良検知処理が同時に行われる。不良検知処理では、不良始端マーカM1や不良終端マーカM2の有無を検知しつつ、検知時に各種処理を行う。次いで、不良検知処理について説明する。尚、以下では、正電極シート4を対象とした不良検知処理について説明するが、負電極シート5側においても同様の処理が行われる。
【0099】
不良検知処理では、
図7に示すように、まず、ステップS11において、電池素子1の製造時において、一素子分の正電極シート4が巻回されたか否かを判定する。この判定は、長さ検出部82により得られた、巻回開始時からの正電極シート4の繰出し量に基づき行われる。ステップS11にて否定判定された場合、すなわち、正電極シート4の供給を続ける必要がある場合には、ステップS12に移行する。
【0100】
ステップS12では、不良検知センサ76により、不良始端マーカM1が検知されたか否かを判定する。ステップS12にて否定判定された場合には、ステップS11へと戻る。一方、ステップS12で肯定判定された場合には、ステップS13に移行し、不良巻取処理を実行すべく、不良検知フラグをオンとし、ステップS14に移行する。不良検知フラグは、不良巻取処理を行うか否かを判定するための識別情報である。
【0101】
一方、ステップS11にて肯定判定された場合、すなわち、不良始端マーカM1が検知されることなく、一素子分の正電極シート4の供給が終了した場合には、不良検知処理を終了する。尚、この場合、電極カッタ72及び不良検知センサ76間に位置する一素子分の正電極シート4に不良箇所は存在しない。従って、不良巻取処理を行う必要はなく、不良検知フラグはオフである。
【0102】
ステップS14では、一素子分の正電極シート4が巻回されたか否かを判定する。ステップS14にて否定判定された場合、すなわち、正電極シート4の供給を続ける必要がある場合には、ステップS15に移行する。
【0103】
ステップS15では、不良検知センサ76により、不良終端マーカM2が検知されたか否かを判定する。ステップS15にて否定判定された場合には、ステップS14に戻る。
【0104】
一方、ステップS15で肯定判定された場合には、ステップS16において、長さ検出部82により、不良終端マーカM2が検知された時点における、巻回開始時からの正電極シート4の繰出し量を取得する。本実施形態において、取得された繰出し量は、次回の不良巻取処理の開始時における、正電極シート4の始端から不良終端マーカM2までの距離に相当する。
【0105】
続くステップS17では、取得された繰出し量を不良巻取距離LAとして制御装置81におけるRAMやハードディスクに記憶し、不良検知処理を終了する。不良巻取距離LAは、不良巻取巻芯924によって巻取る予定の正電極シート4の長さである。尚、不良巻取距離LAの初期値は、予め設定された値(例えば0)とされている。
【0106】
一方、ステップS14で肯定判定された場合、すなわち、一素子分の正電極シート4の供給が終了した場合には、不良検知処理を終了する。このとき、不良始端マーカM1は検知された一方、不良終端マーカM2は検知されていないため、不良検知フラグはオンであるが、不良巻取距離LAは初期値のままとなる。
【0107】
結果的に、不良検知処理を行うことで、不良検知フラグがオンとされるとともに、初期値以外の不良巻取距離LAが記憶された状態と、不良検知フラグがオンであるとともに、不良巻取距離LAが初期値である状態と、不良検知フラグがオフの状態とのいずれかが生じることになる。
【0108】
次いで、不良巻取処理について説明する。不良巻取処理は、電池素子1の製造工程の終了時に不良検知フラグがオンである場合、不良巻取巻芯924によって電極シート4,5の不良箇所を巻取るべく行われる処理である。不良巻取処理では、
図8に示すように、ステップS21の巻取前処理と、ステップS22の巻取中処理とがこの順序で行われる。以下では、正電極シート4を対象とした不良巻取処理について説明するが、負電極シート5側においても同様の処理が行われる。
【0109】
巻取前処理は、巻取中処理を行うために必要な情報を取得する処理である。巻取前処理では、
図9に示すように、まず、ステップS31において、不良巻取距離LAが初期値であるか否かを判定する。つまり、不良検知処理において不良終端マーカM2が既に検知されているか否かを判定する。
【0110】
不良巻取距離LAが既に初期値以外の値に設定されている場合(ステップS31:NO)、ステップS32にて、予め得られた正電極シート4の各部の厚さに関する情報から、始端から不良終端マーカM2までの正電極シート4の各部の厚さを取得する。次いで、ステップS33において、取得した正電極シート4の各部の厚さと、不良巻取距離LAとを用いて、始端から不良終端マーカM2までの正電極シート4の平均厚さを取得する。そして、ステップS34において、取得した平均厚さを単位移動量YMとしてRAMやハードディスクに記憶し、ステップS35に移行する。単位移動量YMは、不良巻取巻芯924によって正電極シート4を巻取る際に、移動制御部85による移動機構96の制御に用いられるパラメータである。
【0111】
ステップS35では、不良特定済フラグをオンとし、ステップS39に移行する。不良特定済フラグは、不良巻取巻芯924による正電極シート4の巻取開始時に、正電極シート4の巻取対象箇所の全域が既に把握されていることを示すための識別情報である。
【0112】
一方、不良巻取距離LAが初期値である場合(ステップS31:YES)、つまり、不良終端マーカM2が未だ検知されていない場合、ステップS36に移行し、予め得られた正電極シート4の各部の厚さに関する情報から、始端から不良検知センサ76に対応する部位(以下、「巻取開始時センサ対応部位」と称することがある)までの正電極シート4の各部の厚さを取得する。次いで、ステップS37において、取得した正電極シート4の各部の厚さと、始端から巻取開始時センサ対応部位までの間に位置する正電極シート4の長さ(この長さは、1素子分の正電極シート4の長さと等しい)とを用いて、始端から巻取開始時センサ対応部位までの正電極シート4の平均厚さを取得する。そして、ステップS38において、取得した平均厚さを第一次単位移動量YM1としてRAMやハードディスクに記憶し、ステップS39に移行する。第一次単位移動量YM1は、不良巻取巻芯924によって正電極シート4を巻取る際に、移動制御部85による移動機構96の制御に用いられるパラメータである。但し、第一次単位移動量YM1は、特に不良巻取巻芯924による正電極シート4の巻取開始時に正電極シート4の巻取対象箇所の全域が把握されていない場合において、始端から巻取開始時センサ対応部位までの間に位置する正電極シート4の巻取時に用いられる。
【0113】
そして、ステップS35又はステップS38に続いてステップS39の処理を行い、巻取前処理を終了する。ステップS39では、駆動部925により、軸部921、円形基部922、カバー部923及び不良巻取巻芯924を後退位置から前進位置へと移動させることで、不良巻取巻芯924を退避位置から巻取時位置へと移動させる(
図15参照。尚、
図15ではカバー部923を不図示)。前進位置に配置された不良巻取巻芯924のスリット924sは、正電極シート4の搬送経路と平行な状態とされる。
【0114】
次いで、巻取中処理について説明する。巻取中処理は、不良巻取巻芯924によって正電極シート4における不良箇所を含む部分の巻取りを実行しつつ、必要に応じて、移動機構96の制御に用いるパラメータを取得する処理である。巻取中処理では、
図10に示すように、まず、ステップS41において、不良特定済フラグがオンであるか否かを判定する。ステップS41にて肯定判定された場合には、ステップS42に移行し、ステップS41にて否定判定された場合には、ステップS45に移行する。
【0115】
ステップS42では、巻取開始時処理が行われる。巻取開始時処理では、
図11に示すように、まず、ステップS51において、正電極シート4を把持するシート供給機構71が不良巻取巻芯924に接近し、スリット924sに正電極シート4を挿通することで、不良巻取巻芯924に正電極シート4を供給する(
図16参照)。供給後、シート供給機構71は、把持状態を解除した上で元の位置に戻る。
【0116】
続くステップS52では、不良巻取巻芯924の回転を開始させる。このとき、不良巻取巻芯924の回転速度はやや低いものとされる。
【0117】
次いで、ステップS53において、不良巻取巻芯924における回転開始時からの回転角度θ(但し90°以下)を取得するとともに、移動機構96を制御することで、回転角度θに応じた距離だけベース部95を鉛直下方に移動させる(
図17、18参照)。
【0118】
例えば、不良巻取巻芯924の半径r(mm)にsinθで乗じた値(又は当該値の近似値)だけベース部95を回転開始時の位置から鉛直下方に移動させる。これにより、不良巻取巻芯924による正電極シート4の巻取箇所が上方へとずれていくことを防止でき、巻取初期段階において、シート供給機構71及び電極カッタ72に対応する正電極シート4の搬送経路を一定位置に維持することができる。尚、「搬送経路が一定位置に維持される」とあるのは、搬送経路が厳密な意味で一定位置に維持される場合のみならず、搬送経路がほぼ一定の範囲内(例えば、理想的な搬送経路と直交する方向に沿って当該搬送経路から±10mmの範囲内)に維持される場合も含む(以下、同様)。
【0119】
続くステップS54では、回転角度θが90°に到達したか否かを判定する。ステップS54にて否定判定された場合には、ステップS53へと戻る。結果的に、回転角度θが90°に至る前には、回転角度θに応じて不良巻取巻芯924を徐々に移動させていくことになる。
【0120】
一方、ステップS54にて肯定判定された場合には、ステップS55に移行し、不良巻取巻芯924を予め設定された通常速度で回転させ、巻取開始時処理を終了する。
【0121】
図10に戻り、ステップS42の巻取時開始処理に続いて、ステップS43にて不良特定済処理を行う。不良特定済処理では、
図12に示すように、ステップS61,S62,S63の処理を行うことで、基本的には、不良巻取巻芯924が1回転する度に、移動機構96によって単位移動量YMだけ不良巻取巻芯924等を鉛直下方に移動させる。これにより、巻取中の電極シート4の外径変動に合わせて不良巻取巻芯924等が移動し、巻取られた正電極シート4の外径が変動したとしても、少なくともシート供給機構71及び電極カッタ72に対応する正電極シート4の搬送経路が一定位置に維持される(
図19,20参照)。
【0122】
そして、ステップS61において肯定判定されると、つまり、不良巻取巻芯924による巻取開始時からの正電極シート4の繰出し量が不良巻取距離LAに到達すると、不良特定済処理を終了する。
【0123】
図10に戻り、ステップS43の不良特定済処理に続いて、ステップS44にて巻取終了時処理を行う。巻取終了時処理では、
図14に示すように、まず、ステップS91において、不良巻取巻芯924の回転を一時停止させる。このとき、不良終端マーカM2は、電極カッタ72の直下流に位置した状態となる。続いてステップS92において、正電極シート4をシート供給機構71によって把持した上で、電極カッタ72により切断する。次いで、ステップS93において、不良巻取巻芯924を一定数だけ回転させることで正電極シート4の巻残り部分を巻取る。尚、巻取後には、スリット924sが正電極シート4の搬送経路と平行になるように不良巻取巻芯924の位置を調整する。続くステップS94では、取外機構94を後退位置から前進位置に移動させ、取外用爪部943をスリット924sに配置する。
【0124】
その上で、ステップS95において、不良巻取巻芯924やカバー部923等を前進位置から後退位置に移動させることで、不良巻取巻芯924を巻取時位置から退避位置へと移動させる。これにより、巻取られた正電極シート4(「不良シートロール4F」と称す)が取外用爪部943に接触して移動を規制されつつ、当該不良シートロール4Fから不良巻取巻芯924が徐々に抜けていく(
図21参照)。そして最終的に、不良シートロール4Fは、不良巻取巻芯924から外れて落下し、不良シート収容部952に収容される。尚、不良巻取処理が両電極シート4,5のうちの一方のみを対象として行われている場合には、不良巻取巻芯924を退避位置へと移動させた段階で、電池素子1の製造が再開される。つまり、移動機構96によって不良巻取巻芯924等を元の位置(移動機構96による移動前の位置)に移動させる前の段階で、電池素子1の製造が再開される。
【0125】
その後、ステップS96にて、巻芯ユニット92を元の位置に移動させる。すなわち、移動機構96によってベース部95(不良巻取巻芯924等)を元の位置に戻すとともに、取外機構94を後退位置に配置する。そして最後に、ステップS97において、各フラグや設定された各種値をリセットし、不良巻取処理を終了する。
【0126】
図10に戻り、不良特定済フラグがオフである場合、すなわち、ステップS41にて否定判定された場合には、ステップS42と同様に、ステップS45にて巻取開始時処理を行う。さらに、ステップS45の巻取時開始処理に続いて、ステップS46において不良未特定処理を行う。
【0127】
不良未特定処理では、
図13に示すように、まず、ステップS71,S72,S73,S74の処理を行うことで、正電極シート4の繰出し量が電極シート4の始端から巻回開始時センサ対応部位までの距離(すなわち、1素子分)に到達するまで、不良巻取巻芯924が1回転する度に、移動機構96によって第一次単位移動量YM1だけ不良巻取巻芯924等を移動させる。つまり、不良巻取巻芯924により電極シート4の始端から巻回開始時センサ対応部位までの部位を巻取っている際には、当該部位の平均厚さを用いて不良巻取巻芯924を移動させる。これにより、巻取られた正電極シート4の外径が変動したとしても、シート供給機構71及び電極カッタ72に対応する正電極シート4の搬送経路が一定位置に維持される。
【0128】
但し、ステップS71にて肯定判定されると、すなわち、不良検知センサ76により不良終端マーカM2が検知されると、ステップS75に移行し、不良終端マーカM2が検知された時点における、不良巻取巻芯924による巻取開始時からの正電極シート4の繰出し量を取得する。取得された繰出し量は、正電極シート4の搬送経路に沿った巻取開始時センサ対応部位から不良終端マーカM2までの距離に相当する。尚、本実施形態において、不良始端マーカM1から不良終端マーカM2までの距離は一素子分の正電極シート4の長さ未満とされているため、通常、一素子分の正電極シート4が巻回される前に、つまり、ステップS72にて肯定判定される前に、不良終端マーカM2が検知される。また、ステップS71にて肯定判定されると、この不良未特定処理における以降の処理では、ステップS71の処理がスキップされる。つまり、ステップS72,S73,S74の処理を繰り返し行う状態となる。
【0129】
ステップS75に続くステップS76では、取得した繰出し量を不良巻取距離LBとしてRAM等に記憶する。不良巻取距離LBは、一素子分の正電極シート4を巻取った後に、すなわち、ステップS72にて肯定判定された後に、不良巻取巻芯924によって巻取る予定の正電極シート4の長さである。次に、ステップS77において、巻取開始時センサ対応部位から不良終端マーカM2までの間における正電極シート4の各部の厚さを取得する。
【0130】
その後、ステップS78において、取得した各部の厚さと不良巻取距離LBとを用いて、巻取開始時センサ対応部位から不良終端マーカM2までの正電極シート4の平均厚さを取得する。そして、ステップS79において、取得した平均厚さを第二次単位移動量YM2としてRAMやハードディスクに記憶し、ステップS72に戻る。第二次単位移動量YM2は、不良巻取巻芯924によって正電極シート4を巻取る際に、移動制御部85による移動機構96の移動制御に用いられるパラメータであり、特に巻取開始時センサ対応部位から不良終端マーカM2までの間に位置する正電極シート4の巻取時に用いられる。
【0131】
さらに、ステップS72にて肯定判定されると、すなわち、巻回開始時からの正電極シート4の繰出し量が一素子分の正電極シート4の長さに到達すると、ステップS80,S81,S82の処理を行うことで、不良巻取巻芯924が1回転する度に、移動機構96によって第二次単位移動量YM2だけ不良巻取巻芯924等を移動させる。つまり、不良巻取巻芯924によって電極シート4の巻回開始時センサ対応部位から不良終端マーカM2までの部位を巻取っている際には、当該部位の平均厚さを用いて不良巻取巻芯924等を移動させる。
【0132】
そして、ステップ80において肯定判定されると、つまり、一素子分の正電極シート4の巻回が完了した時点からの正電極シート4の繰出し量が不良巻取距離LBに到達すると、不良特定済処理を終了する。その後、ステップS47の巻取終了時処理において、ステップS44と同様の処理を行い(
図10参照)、不良巻取処理を終了する。
【0133】
以上詳述したように、本実施形態によれば、不良巻取巻芯924による電極シート4,5の巻取中に、巻取られた電極シート4,5の外径が変動したとしても、少なくともシート供給機構71及び電極カッタ72に対応する搬送経路を一定位置に維持することができる。従って、開放状態における両刃部72a,72bの間隔を小さなものとしても、電極シート4,5が電極カッタ72(刃部72a,72b)に接触することを防止でき、また、開放状態における両把持部71a,71bの間隔を小さなものとしても、電極シート4,5がシート供給機構71(把持部71a,71b)に接触することを防止できる。そのため、電極カッタ72やシート供給機構71に対する電極シート4,5の接触防止を図りつつ、電極カッタ72やシート供給機構71における開閉動作時の動作量を小さなものとすることができる。その結果、電極カッタ72やシート供給機構71の配設に必要なスペースを低減させることができ、巻回装置10の小型化を図ることができる。また、巻回装置10の製造等に係るコストの増大抑制を図ることができる。
【0134】
さらに、本実施形態では、電極シート4,5の外径変動に合わせて、移動機構96により不良巻取巻芯924等を移動させることで、搬送経路を一定位置に維持することができる。そのため、電極シート4,5と接触する別の機構を設けることなく、搬送経路を一定位置に維持することができる。これにより、電極シート4,5と別の機構との接触に伴い電極シート4,5に蛇行が生じてしまい、不良巻取巻芯924による電極シート4,5の巻取に異常が発生してしまうことをより確実に防止できる。さらに、別の機構との接触により電極シート4,5から活物質が飛散することを防ぐことができる。加えて、別の機構を設置するためのスペースを設けなくて済み、巻回装置10の小型化やコストの増大抑制をより図ることができる。
【0135】
さらに、電極シート4,5のうち不良巻取巻芯924により巻取られる箇所の厚さ及び長さに関する検出結果に基づき、移動機構96が制御される。従って、実際に不良巻取巻芯924によって巻取られる電極シート4,5の状態に応じて、不良巻取巻芯924の移動をより適切に制御することができ、ひいては搬送経路をより確実に一定位置に維持することができる。そのため、開放状態における両刃部72a,72bの間隔をより小さなものとすることができ、また、開放状態における両把持部71a,71bの間隔をより小さなものとすることができる。これにより、電極カッタ72やシート供給機構71における開閉動作時の動作量をより小さなものとすることができ、電極カッタ72やシート供給機構71に係る配設スペースの低減をより効果的に図ることができる。その結果、巻回装置10の小型化や巻回装置10の製造等に係るコストの増大抑制を一層図ることができる。
【0136】
さらに、不良巻取巻芯924は、電極シート4,5の搬送経路に重なる巻取時位置と搬送経路から外れる退避位置との間で移動可能とされている。そのため、不良巻取巻芯924を退避位置に配置することで、電池素子1の製造時など、電極シート4,5の不良箇所の巻取時以外のときに、不良巻取巻芯924が電極シート4,5に悪影響を及ぼしてしまうことを防止できる。
【0137】
また、不良巻取巻芯924による電極シート4,5の巻取時に、不良巻取巻芯924と同一の態様で移動する巻芯支持部93によって、不良巻取巻芯924の先端部を支持することができる。そのため、電極シート4,5の巻取中に、巻芯支持部93によって不良巻取巻芯924をより安定的に支持することができ、不良巻取巻芯924に撓みなどの変形が生じてしまうことをより確実に防止できる。その結果、電極シート4,5をより適切な状態で巻取ることができる。
【0138】
加えて、取外機構94が不良巻取巻芯924と同一の態様で移動するため、巻取られる電極シート4,5の厚さや長さにより不良巻取巻芯924の移動量が変動した場合であっても、巻取完了時には、不良巻取巻芯924と取外機構94との相対位置関係を一定に保つことができる。従って、不良巻取巻芯924をその回転軸と直交する方向に沿った元の位置に戻したり、前記回転軸と直交する方向に沿った不良巻取巻芯924の位置調節を行ったりせずとも、不良巻取巻芯924を巻取時位置から退避位置へと移動させることで、取外機構94によって不良巻取巻芯924から不良シートロール4Fを取外すことができる。
【0139】
また、不良巻取巻芯924を自身の回転軸と直交する方向に沿った元の位置に戻す前に、不良巻取巻芯924を退避位置へと移動させることができるため、本実施形態のように、不良巻取巻芯924を元の位置に戻すことなく退避位置へと移動させた段階で、電池素子1の製造を再開することができる。従って、不良巻取巻芯924を元の位置に戻すとともに退避位置へと移動させた後に電池素子1の製造を再開する場合と比較して、生産性の向上を図ることができる。
【0140】
さらに、移動機構96によって、巻芯支持部93及び取外機構94を不良巻取巻芯924の移動態様と同一の態様で移動させることができる。従って、移動機構96とは別に、巻芯支持部93及び取外機構94を移動させるための機構を設ける必要がなくなり、巻回装置10の小型化やコストの増大抑制をより効果的に図ることができる。
【0141】
加えて、不良巻取巻芯924は断面円形状をなすため、不良巻取巻芯924の回転角度による搬送経路の変動を生じにくくすることができる。従って、移動機構96による不良巻取巻芯924の移動制御を容易に行うことができる。
【0142】
また、不良巻取処理では、不良巻取巻芯924によって電極シート4,5における不良終端マーカM2までの部位を巻取るため、不良巻取巻芯924によって巻取られる良品の電極シート4,5を減らすことができる。これにより、電池素子1の製造に係るコストの増大抑制をより確実に図ることができる。
[第2実施形態]
次いで、第2実施形態について、上記第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0143】
上記第1実施形態では、不良巻取巻芯924等を移動させる移動機構96によって、経路維持手段が構成されている。これに対し、本第2実施形態では、
図22,23に示すように、正電極シート4の搬送経路に沿って設けられたパス変更ローラ97によって、経路維持手段が構成されている。パス変更ローラ97は、電極カッタ72よりも下流であって不良巻取巻芯924よりも上流に設けられている。パス変更ローラ97は、自由回転可能なローラ(プーリ)により構成されている。尚、以下では、正電極シート供給機構31に設けられたパス変更ローラ97について説明するが、負電極シート供給機構41にも同様のパス変更ローラ97が設けられている。
【0144】
パス変更ローラ97は、電池素子1の製造時における正電極シート4の搬送経路から若干だけ離間した位置に設けられており、不良巻取巻芯924による巻取に伴い正電極シート4の搬送経路が若干移動したときに正電極シート4と接触する。このように不良巻取巻芯924による巻取時に、パス変更ローラ97及び正電極シート4が接触するため、不良巻取巻芯924により巻取られた正電極シート4の外径が変動しても、少なくともシート供給機構71及び電極カッタ72に対応する正電極シート4の搬送経路を一定位置に維持することが可能である。一方、本第2実施形態において、電池素子1の製造時には、例えば正電極シート4が大きく振れる等の不具合が生じない限り、パス変更ローラ97及び正電極シート4が接触しないようになっている。
【0145】
以上、本第2実施形態によれば、パス変更ローラ97によって経路維持手段が構成されている。従って、経路維持手段を簡素な構成によって実現することができ、巻回装置10の製造等に係るコストの増大抑制をより確実に図ることができる。
【0146】
さらに、パス変更ローラ97は、不良巻取巻芯924による電極シート4,5の巻取時のみに電極シート4,5と接触する位置に設けられており、電池素子1の製造時など、不良巻取巻芯924によって電極シート4,5を巻取らないときには、電極シート4,5及びパス変更ローラ97の接触が抑制される。その結果、電極シート4,5とパス変更ローラ97とが接触することによる不具合(例えば、電極シート4,5の蛇行や、活物質の飛散など)をより確実に防止することができる。
【0147】
また、不良巻取巻芯924が断面円形状をなすため、パス変更ローラ97及び不良巻取巻芯924間における搬送経路のばたつきを抑えることができ、電極シート4,5の蛇行や、活物質の飛散などを一層確実に防止することができる。
【0148】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0149】
(a)上記第1実施形態において、厚さ検出部83は、電極シート4,5におけるその長手方向に沿った全域の厚さを検出するように構成されている。これに対し、厚さ検出部によって、電極シート4,5のうち少なくとも不良巻取巻芯924によって巻取られる箇所の厚さのみを検出するように構成してもよい。
【0150】
(b)上記第1実施形態では、電極シート4,5のうち不良巻取巻芯924によって巻取られる箇所の平均厚さを取得し、この平均厚さを用いて不良巻取巻芯924等の移動を制御するように構成されている。これに対し、予め設定された一定値(例えば、入力値)や一箇所のみの厚さの測定値を用いて不良巻取巻芯924の移動制御を行うこととしてもよい。
【0151】
また、電極シート4,5のうち不良巻取巻芯924によってちょうど巻取られている部位の厚さを用いて、不良巻取巻芯924の移動を制御してもよい。
【0152】
さらに、不良巻取巻芯924によって既に巻取られた電極シート4,5の厚さを考慮して、不良巻取巻芯924の移動量を調節してもよい。また、電極シート4,5に付与される張力を考慮して、不良巻取巻芯924の移動量を調節してもよい。
【0153】
加えて、上記第1実施形態では、不良巻取巻芯924を一回転させる度に不良巻取巻芯924を移動させるように構成されている。つまり、不良巻取巻芯924を段階的に移動させるように構成されている。これに対し、不良巻取巻芯924を連続的に移動させるように構成してもよい。
【0154】
また、不良巻取巻芯924を一定時間毎に移動させるように構成してもよいし、不良巻取巻芯924を電極シート4,5の巻取長さに応じて移動させるように構成してもよい。
【0155】
(c)上記実施形態では、不良巻取巻芯924によって巻取られる電極シート4,5の長さが変化するように構成されているが、予め設定された、不良箇所を十分に巻取ることができる程度の一定長さの電極シート4,5を不良巻取巻芯924によって巻取ることとしてもよい。
【0156】
(d)上記第2実施形態において、パス変更ローラ97は、不良巻取巻芯924による電極シート4,5の巻回時のみ電極シート4,5と接触するように構成されているが、パス変更ローラ97が常に電極シート4,5と接触するように構成してもよい。
【0157】
(e)上記実施形態において、不良巻取巻芯924による巻取対象は、正電極シート4及び負電極シート5とされている。これに対し、不良巻取巻芯による巻取対象をセパレータシート2,3としてもよい。つまり、セパレータシート2,3が対象シートに相当するように構成してもよい。
【0158】
(f)上記第2実施形態において、カバー部923及びパス変更ローラ97は別々に設けられているが、
図24に示すように、パス変更ローラ98がカバー部926の一部を構成してもよい。この場合には、各種装置(例えば、シート供給機構71や電極カッタ72等)の設置に係るスペースの増大を図ることができる。
【0159】
また、カバー部923で囲まれた範囲内にパス変更ローラを設けてもよい。この場合には、仮にパス変更ローラと電極シート4,5との接触に伴い活物質が飛散したとしても、活物質がカバー部923外へと拡散してしまうことをより確実に防止できる。
【0160】
(g)上記実施形態では、電極シート4,5における不良始端マーカM1及び不良終端マーカM2間の部位が電極シート4,5の不良箇所として扱われるように構成されている。これに対し、例えば、電極シート4,5に対し不良箇所の始端を示す不良始端マーカのみを付し、当該不良始端マーカから下流側に所定の範囲を電極シート4,5の不良箇所として扱うように構成してもよい。
【0161】
また、電極シート4,5に対し、必ずしも不良箇所を示すマーカを設けなくてもよい。従って、例えば、電極シート4,5を撮像する撮像装置と、当該撮像装置により得られた画像に基づき電極シート4,5の不良箇所を検出する検査装置とを設け、当該検査装置により検出された不良箇所を不良巻取巻芯924によって巻取ることとしてもよい。
【0162】
(h)上記実施形態では、電極シート4,5の不良箇所を検知するための不良検知センサ76が設けられているが、必ずしも不良検知センサ76を設ける必要はない。例えば、原反31,41の製造時など、巻芯13,14側へと電極シート4,5を搬送する前の段階で電極シート4,5の不良箇所に関する情報を予め取得しておき、その情報に従い、電極シート4,5の不良箇所を巻取るように構成してもよい。また、例えば、不良箇所が電極シート4,5の長手方向に沿って一定の間隔で存在する場合には、この間隔に応じた一定のタイミングで、電極シート4,5の不良箇所の巻取処理を行うようにしてもよい。
【0163】
(i)上記第1実施形態では、不良巻取巻芯924による電極シート4,5の巻取初期に、回転角度θに応じて不良巻取巻芯924を移動させるように構成されているが、例えば不良巻取巻芯924が十分に細い場合には、回転角度θに応じた不良巻取巻芯924の移動を行わないこととしてもよい。
【0164】
(j)上記実施形態において、巻回部11は、2つの巻芯13,14を備えた構成となっているが、巻芯の数はこれに限定されるものではなく、1つ又は3つ以上の巻芯を備えた構成であってもよい。勿論、巻芯の形状なども適宜変更可能である。
【0165】
(k)上記実施形態では、巻回装置10によって、リチウムイオン電池の電池素子1が製造されているが、巻回装置10によって製造される巻回素子はこれに限定されるものではなく、例えば、電解コンデンサの巻回素子等を製造することとしてもよい。
【0166】
(l)セパレータシート2,3や電極シート4,5の材質は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、セパレータシート2,3の材質としてPPを挙げているが、他の絶縁性材料によってセパレータシート2,3を形成してもよい。また、例えば、電極シート4,5に塗布される活物質を適宜変更してもよい。