特許第6804425号(P6804425)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6804425
(24)【登録日】2020年12月4日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
   B62D 49/00 20060101AFI20201214BHJP
   B62D 21/18 20060101ALI20201214BHJP
   B60R 16/04 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   B62D49/00 B
   B62D49/00 N
   B62D21/18 C
   B60R16/04 D
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-204559(P2017-204559)
(22)【出願日】2017年10月23日
(65)【公開番号】特開2019-77275(P2019-77275A)
(43)【公開日】2019年5月23日
【審査請求日】2019年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】篠原 誠
【審査官】 米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−195175(JP,A)
【文献】 特開2005−29127(JP,A)
【文献】 実開昭59−32543(JP,U)
【文献】 実開昭60−79918(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 49/00
B60R 16/04
B62D 21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンが連結されるエンジン連結部、及び、前記エンジン連結部から車体前後方向での一方向きに延出する延出フレーム部を有する車体フレームと、
前記延出フレーム部に支持されるバッテリーと、が備えられ、
前記延出フレーム部と前記バッテリーとの間に防振材が介装されており、
エンジン起振周波数と前記車体フレームの共振周波数とが一致すると、前記バッテリーが前記車体フレームと逆位相で振動する状態で前記防振材による前記バッテリーの支持が行われる作業車。
【請求項2】
前記防振材は、前記バッテリーを下方から受け止め支持する状態で介装されている請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記バッテリーが載置されるバッテリー載置台、及び、前記バッテリーと前記バッテリー載置台とに連結されて前記バッテリーを前記バッテリー載置台に固定する固定具が備えられ、
前記防振材は、前記バッテリー載置台と前記延出フレーム部との間に介装されている請求項1又は2に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンが連結されるエンジン連結部、及び、前記エンジン連結部から車体前後方向での一方向きに延出する延出フレーム部を有する車体フレームと、前記延出フレーム部に支持されるバッテリーと、が備えられた作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
上記した作業車としては、例えば特許文献1に示されるトラクタがある。このトラクタでは、走行車体の前部に前部フレームが備えられ、前部フレームにエンジンが支持されている。エンジンよりも車体前方側において、前部フレームにバッテリーが支持されている。バッテリーは、前部フレームに溶接固定された支持プレートの上に配置され、支持プレートを介して前部フレームに支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−125107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車体フレームの共振周波数がエンジン起振周波数や走行装置の振動周波数などと一致すると、振動騒音が出る。車体フレームに専用の動吸振器を装備することにより、車体フレームの振動を低減する場合、かなり重いマス(錘)が必要になるので、車体が大型になる。また、コスト高になる。
【0005】
本発明は、車体の大型化を回避しつつ、コスト高を抑制しつつ車体フレームの振動を低減できる作業車を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による作業車は、エンジンが連結されるエンジン連結部、及び、前記エンジン連結部から車体前後方向での一方向きに延出する延出フレーム部を有する車体フレームと、前記延出フレーム部に支持されるバッテリーと、が備えられ、前記延出フレーム部と前記バッテリーとの間に防振材が介装されており、エンジン起振周波数と前記車体フレームの共振周波数とが一致すると、前記バッテリーが前記車体フレームと逆位相で振動する状態で前記防振材による前記バッテリーの支持が行われる。
【0007】
本構成によると、車体フレームの共振周波数とバッテリーの重量とを鑑みて防振材のバネ定数を適切に設定することにより、車体フレームの共振周波数がエンジン起振周波数や走行装置の振動周波数と一致すると、バッテリーが車体フレームと逆位相で振動して反力を発生する。すなわち、バッテリーを動吸振器の錘として活用できる。
延出フレーム部に支持されるバッテリーは、車体フレームの振動の腹となる延出フレーム部の先端に近い箇所に位置するので、バッテリーが動吸振器の錘としての機能を効果的に発揮する。
【0008】
従って、専用の動吸振器を備える必要がなく、バッテリーを防振支持すれば済むので、車体の大型化、及び大幅なコストアップを回避しつつ車体フレームの振動を低減できる。
【0009】
本発明においては、前記防振材は、前記バッテリーを下方から受け止め支持する状態で介装されていると好適である。
【0010】
本構成によれば、バッテリーが防振材を揺動支点にして揺れ動き易いので、バッテリーに動吸振器の錘としての機能を発揮させやすい。
【0011】
本発明においては、前記バッテリーが載置されるバッテリー載置台、及び、前記バッテリーと前記バッテリー載置台とに連結されて前記バッテリーを前記バッテリー載置台に固定する固定具が備えられ、前記防振材は、前記バッテリー載置台と前記延出フレーム部との間に介装されていると好適である。
【0012】
本構成によれば、バッテリーとバッテリー載置台とに連結する固定具によってバッテリーがバッテリー載置台に固定されるので、固定具がバッテリーと車体フレームとに連結されるものに比べ、固定具がバッテリー振動の障害物にならなくてバッテリーを振動し易くできる。すなわち、バッテリーに動吸振器の錘としての機能を効果的に発揮させられる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】トラクタの全体を示す右側面図である。
図2】バッテリー搭載部を示す右側面図である。
図3図2のIII−III断面矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を作業車の一例としてのトラクタに適用した場合について、図面に基づいて説明する。図1は、トラクタの全体を示す右側面図である。図1に示す[F]の方向が走行車体1の前方向、[B]の方向が走行車体1の後方向、紙面表側の方向が走行車体1の右方向、紙面裏側の方向が走行車体1の左方向と定義する。
【0015】
図1に示すように、トラクタは、左右一対の前車輪2が操向操作可能にかつ駆動可能に装備され、左右一対の後車輪3が駆動可能に装備された走行車体1を備えている。走行車体1の前部に原動部4が備えられている。原動部4には、エンジン5、及び、エンジン5を覆うエンジンボンネット6等が備えられている。走行車体1の後部に運転部7が備えられている。運転部7には、運転座席8、前車輪2を操向操作するステアリングホィール9が備えられている。走行車体1の後部にリンク機構10が昇降操作可能に備えられている。
【0016】
トラクタは、例えば、走行車体1の後部にリンク機構10を介してロータリ耕耘装置(図示せず)が昇降操作可能に連結されることによって、乗用型耕耘機を構成する。
【0017】
図1,2に示すように、走行車体1の車体フレーム11は、エンジン5と、エンジン5の後部に備えられたクラッチハウジング5aの後部に前部が連結された前部ミッションケース12と、前部ミッションケース12の後部に前部が連結された後部ミッションケース13と、エンジン5の下部に連結された前部フレーム14とによって構成されている。後部ミッションケース13の両横側部に後車輪3が駆動可能に支持されている。エンジン5からの動力が前部ミッションケース12及び後部ミッションケース13を介して前車輪2及び後車輪3に伝達される。前部フレーム14に前輪駆動ケース15を介して左右の前車輪2が支持されている。前部ミッションケース12から出力される前輪用動力が前輪駆動ケース15を介して左右の前車輪2に伝達される。
【0018】
前部フレーム14が本発明に係る「車体フレーム」に相当する。図2,3に示すように、前部フレーム14は、エンジン5の左右側の下部に後部が各別連結された左右一対のフレーム材16を備えている。左のフレーム材16の前端部と右のフレーム材16の前端部とにわたって連結フレーム材17が連結され、前部フレーム14は、枠組み構造になっている。
【0019】
左のフレーム材16は、エンジン5の左横下部に連結され、エンジン5によって支持される左エンジン連結部と、左エンジン連結部から車体前方向きに延出する左延出フレーム部とを備えている。右のフレーム材16は、エンジン5の右横下部に連結され、エンジン5によって支持される右エンジン連結部と、右エンジン連結部から車体前方向きに延出する右延出フレーム部とを備えている。左のフレーム材16の左エンジン連結部における後端部、及び、右のフレーム材の右エンジン連結部における後端部は、前部ミッションケース12の前部まで延出して前部ミッションケース12に連結されている。前部フレーム14は、左のフレーム材16の左エンジン連結部と、右のフレーム材16の右エンジン連結部とによって構成され、エンジン5に連結されるエンジン連結部14Eを備えている。前部フレーム14は、左のフレーム材16の左延出フレーム部と、右のフレーム材16の右延出フレーム部とによって構成され、エンジン連結部14Eから車体前方向きに延出する延出フレーム部14Fを備えている。
【0020】
図2,3に示すように、延出フレーム部14Fにエンジン用のラジエータ18、及び、支持プレート19が支持されている。図3に示すように、支持プレート19の下面の左右側に備えられた取付けブラケット19aがフレーム材16に連結ボルトによって連結され、支持プレート19は、延出フレーム部14Fに固定されている。
【0021】
支持プレート19の上面側に防振材としての防振ゴム20を介してバッテリー載置台21が支持されている。防振ゴム20は、バッテリー載置台21の四箇所の角部近くのそれぞれに設けられている。各防振ゴム20は、ブロック形状に構成され、支持プレート19の上面とバッテリー載置台21の下面との間に介装され、バッテリー載置台21を下方から受け止め支持する状態で介装されている。
【0022】
バッテリー載置台21にバッテリー22が載置されている。バッテリー22は、固定具23によってバッテリー載置台21に固定されている。図2,3に示すように、固定具23は、バッテリー押さえ部23aと、一対の締付けロッド23bとを備えている。固定具23においては、バッテリー押さえ部23aがバッテリー22の上角部に当て付けて係止され、バッテリー押さえ部23aの両端部において、締付けロッド23bがバッテリー押さえ部23aとバッテリー載置台21の支持部21aとにわたって装着され、各締付けロッド23bのネジ部材23cが締め付け操作されることにより、バッテリー押さえ部23aが一対の締付けロッド23bによって引き下げ操作され、この引き下げ力によってバッテリー22がバッテリー載置台21に押し付け固定される。
【0023】
防振ゴム20は、バッテリー載置台21と支持プレート19との間に介装されることによって、バッテリー22と延出フレーム部14Fとの間に介装されることになる。すなわち、バッテリー22は、防振ゴム20を介して延出フレーム部14Fに支持される。
【0024】
エンジン起振周波数や、前車輪2及び後車輪3のラグ振動周波数と一致する前部フレーム14の共振周波数をFとし、バッテリー22の重量をmとし、4つの防振ゴム20によるバネ定数をKとすると、 F=1/2π×SQRT(K/m) が成立するように、バネ定数Kを設定する。ただし、SQRT( )は、平方根を示す関数である。
前部フレーム14の共振周波数がエンジン起振周波数、前車輪2のラグ振動周波数や後車輪3のラグ振動周波数と一致すると、バッテリー22が前部フレーム14と逆位相で振動して反力を発生する。すなわち、バッテリー22が動吸振器の錘として機能し、前部フレーム14の振動が低減される。
【0025】
バッテリー22は、前部フレーム14の振動の腹となる延出フレーム部14Fの前端に近い箇所で支持されている。防振ゴム20は、バッテリー載置台21を下方から受け止め支持することによってバッテリー22を下方から受け止め支持するので、バッテリー22は、防振ゴム20を揺動支点にして揺れ動き易い状態にある。固定具23は、バッテリー22とバッテリー載置台21とに連結されてバッテリー22をバッテリー載置台21に固定するので、固定具23がバッテリー22の振動に対する障害物にならない。これらにより、バッテリー22に動吸振器の錘としての機能を効果的に発揮させることができる。
尚、前部フレーム14にバッテー22を支持する以外に、バランスウエイトや、エンジン用の燃料タンクを支持することが可能である。
【0026】
〔別実施形態〕
(1)上記した実施形態では、延出フレーム部14Fがエンジン連結部14Eから車体前方向きに延出する例を示したが、延出フレーム部14Fがエンジン連結部14Eから車体後方向きに延出する構成を採用してもよい。
【0027】
(2)上記した実施形態では、車体フレームとしての前部フレーム14が左右一対のフレーム材16によって構成され、枠組み構造になっている例を示したが、ブロック形状の車体フレームを採用してもよい。
【0028】
(3)上記した実施形態では、防振ゴム20が防振材として採用された例を示したが、スプリングなど、性状が異なる各種の防振材の採用が可能である。
【0029】
(4)上記した実施形態では、ブロック形状の防振ゴム20が採用された例を示したが、板状の防振ゴムの採用が可能である。
【0030】
(5)上記した実施形態では、4つの防振ゴム20が設けられた例を示したが、3つ以下、5つ以上の防振ゴムを設けて実施してもよい。
【0031】
(6)上記した実施形態では、前車輪2及び後車輪3が走行装置として採用された例を示したが、クローラ走行装置、車輪とミニクローラとを組み合わせた走行装置の採用が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、トラクタの他、草刈り機、田植機など各種の作業車に適用できる。
【符号の説明】
【0033】
5 エンジン
14 車体フレーム(前部フレーム)
14E エンジン連結部
14F 延出フレーム部
20 防振材(防振ゴム)
21 バッテリー載置台
22 バッテリー
23 固定具
図1
図2
図3