(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の回路はさらに、前記第2のバイアス抵抗の前記第2の端子と前記第1の過渡電圧抑制ダイオードの間に接続される第2の過渡電圧抑制ダイオードを備える、請求項4に記載の過電圧保護装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
患者又は動物に同時に適用される電気装置間の互換性は、除細動パルスを患者に印加する際に特に重要である。数百ボルトから数千ボルト(「過電圧」)に達する電圧振幅を有する除細動パルスによって、同時に使用される他の電子医療機器に対する課題が生じる。この課題は、電気パルス(ペースメーカ)又は信号波形(患者補助電流)を放出する装置にとって大きな課題である。このような装置は、患者(又は動物)に対して低インピーダンスのインターフェースを有する。例えば、ペースメーカが、通常、患者側配線インターフェース(patient line interfaces)の低インピーダンスを示す2つの状態は、刺激パルス及び刺激パルスの直後の放電期間中である。ペースメーカは数オームの範囲内の患者側配線インターフェースインピーダンスを必要とするが、バイオインピーダンスベースのモニタは、典型的には、数百オームから最大約1キロオームのインピーダンスで作動する。すなわち、保護上の理由からインターフェースに加えられるインピーダンスは、発信装置の機能を損なう可能性がある。
【0004】
除細動パルスに対する簡単な保護は、患者(人間又は動物)側配線インターフェースと直列の「保護抵抗」と共に過渡電圧抑制ダイオード(TVS)を使用することによって可能となり、各患者側配線インターフェースに適用することができる。適切に除細動エネルギーを減少させるためには、除細動保護抵抗の値を小さくすることはできない。その代わりに、相対的に高抵抗の抵抗が必要となる。このように、この単純な除細動保護アプローチは、低インピーダンスインターフェースを必要とする心臓ペースメーカ及びバイオインピーダンスベースのモニタなどの能動的な電気装置には使用することができない。
【0005】
通常の動作中に低インピーダンスの患者インターフェースと過電圧生成時に高インピーダンスインターフェースとを切り替えるために一般的に使用されるアプローチは、患者インターフェースに沿ってデプリーション型金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)を使用することである。MOSFETがオフ状態のときに流れる電流が最小になるので、これらの装置は電流を制限するものとして機能する。
【0006】
医療機器用の多くの公知の過電圧保護回路は、患者側配線インターフェースと直列の素子を有しており、MOSFETトランジスタをバイアスして電流を十分に妨げることができる。この素子は、抵抗又は他のトランジスタを含むことができる。どちらの場合でも、この素子は、通常の動作中の患者側配線インターフェースのインピーダンスを、トランジスタを使用するより少ない量だけ増加させ、抵抗を使用するより多くの量を増加させる。この欠点に加えて、いくつかの解決策は、保護された装置自体によって生成されるバイアス電圧に依存する、比較的複雑なMOSFETバイアス技術を採用する。保護が内部電圧に依存しており、内部電圧は障害又はバッテリの消耗によって疑わしいレベルになることがあるので、これにより損傷が発生することがある。
【0007】
いくつかの保護回路は、各患者側配線インターフェースと直列のコンデンサを有する。コンデンサは、最初の過電圧過渡エネルギーの一部しか通過しないように、入力トランジェントの形状を変化させる。残りの電圧は、ツェナーダイオードなどの電圧制限装置によってクランプされる。コンデンサとツェナーダイオードを組み合わせると、入力エネルギーが反発する。このような回路の潜在的な欠点は、コンデンサに関連する。高電圧トランジェントに対する信頼性の高い保護は、通常のタイプではない特殊な高電圧コンデンサの使用を必要とするため、多くの場合は高価であるか、及び/又は、手に入れるのが困難である。他の潜在的な欠点は、保護回路の感度が、印加される容量値に依存することである。このような保護回路は、予想される過電圧過渡状態を考慮してトリミングすることができるが、過電圧保護回路の所望の特性ではない。さらに、各患者側配線インターフェースに直列に接続された必要なコンデンサはインピーダンスを構成し、その値は容量値にも依存する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施態様では、患者インターフェースと電子医療機器との間の過電圧保護回路は、患者電流経路又は配線に配置されたデプリーション型金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)のような電流制限装置を組み合わせて使用され、過渡電圧パルスの場合に関連するMOSFETをオフにするためにバイアス電圧を生成するように構成された回路を有する。一実施態様では、バイアス電圧は、一端で患者電流経路又は患者側配線インターフェースに接続され、過渡電圧抑制装置(TVS:transient voltage suppressor)と直列に患者側配線から延在するバイアス抵抗から得られる。TVSは、一方向性又は双方向性のTVS又は分圧器を形成するためのバイアス抵抗と直列の第2の抵抗であってもよい。この構成では、保護構成要素は、医療機器の作動可能な電子構成要素と患者インターフェースとの間に接続された患者側配線に直接配置されない。
【0009】
他の実施態様では、1つ以上の電子部品と、電気信号を医療機器の電子部品に及び/又は電子機器を接続するための第1及び第2の患者側配線を有する少なくとも1つの患者チャネルと、患者チャネルに接続された患者インターフェースと、患者チャネルに関連付けられ、第1の患者側配線又は電流経路に配置された第1の電流制限装置、第2の患者側配線に配置された第2の電流制限装置、並びに第1及び第2の患者側配線のそれぞれの外側にある第1及び第2のバイアス電圧生成装置を有し、第1又は第2の配線の過渡過電圧に応答して、第1又は第2の電流制限装置をオフにして、それぞれ第1又は第2の配線を流れる電流を制限するために、所定のバイアス電圧を生成するように構成される過電圧保護装置又は回路と、を有する医療機器が提供される。
【0010】
一実施態様では、第1及び第2の電圧生成装置は、一端がそれぞれの第1又は第2の患者側配線に接続されたそれぞれの第1及び第2のバイアス抵抗と、それぞれの第1及び第2のバイアス抵抗の間に直列に接続された少なくとも1つの電圧制限装置又は過渡電圧抑制装置を有する。一実施形態では、電圧制限装置は、バイアス抵抗の第2の端部の間に接続された1つの双方向性の電圧制限装置を有する。他の実施形態では、第1の一方向性の電圧制限装置が第1のバイアス抵抗に接続され、第2の一方向性の電圧制限装置が第2のバイアス抵抗に接続され、第1及び第2の一方向性の電圧制限装置が互いに接続される。他の実施形態では、第1及び第2のバイアス抵抗はそれぞれ第1及び第2の分圧器を形成するためにそれぞれ追加の抵抗と直列に接続され、それぞれ第1の電流制限装置に接続された第1の分圧器の抵抗間の接続部を有し、それぞれ第2の電流制限装置に接続された第2の分圧器の抵抗間の接続部を有する。
【0011】
一実施形態では、バイアス抵抗は、過渡電圧抑制ダイオード(TVS)と直列に接続され、MOSFETソースとゲート端子との間にも接続されている。急峻なランプの形状を有する過電圧が発生すると、最初は小さな電流が抵抗を通って流れる。この抵抗の両端の電圧がMOSFETの必要バイアスレベルに達すると、MOSFETは患者側配線インターフェースを遮断し、その結果、電流が抵抗を通って流れる。TVSの電圧制限機能は、過渡過電圧の最初に、TVSと直列に接続された抵抗を流れる電流を小さくするために必要である。他の実施形態では、TVSを抵抗で置き換えることができる。他の実施形態では、バイアス抵抗は第2の抵抗と直列に接続されて分圧器を形成し、MOSFETゲート端子に接続された抵抗の間の接続部を形成する。
【0012】
過電圧保護回路又は装置は、過渡過電圧に対して非常に迅速に応答するように設計されている。MOSFETは、過電圧がピークに達する前に、過電圧ランプの開始時にほとんどオフ状態にある。また、バイアス回路は、患者側配線インターフェースに追加のインピーダンス素子を必要としない。
【0013】
一実施態様では、過電圧保護回路は、患者側配線インターフェースに1つの構成要素のみを追加し、具体的には、オン状態又はオフ状態のいずれかのMOSFETなどの電流制限装置を追加する。
【0014】
過電圧保護回路は、電圧/電流信号又はパルス(心臓及び神経刺激器又は生体インピーダンスに基づくモニタなど)を出力(発信)する任意の医療装置に組み込まれ、又はそれと共に使用することができる。これらの装置は、患者(又は動物)に対する低抵抗インターフェースを特徴とする。除細動パルスのような過電圧印加の場合、これらの装置は損傷を非常に受けやすく、患者のために意図された印加エネルギーを患者から遠ざける方向に変える。過電圧保護回路は、配線の除細動パルスなどの過電圧の発生時に関連する患者側配線又は配線を遮断するように設計されている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】医療機器の従来技術の過電圧保護回路を示すブロック図である。
【
図2】1つの患者側配線に接続された電気又は電子医療機器用の過電圧保護システム又は回路の一実施形態を示す図である。
【
図3】患者チャネルの2つの患者側配線インターフェースに接続するための
図2のシステムの変形例を示す図である。
【
図4】
図3のシステム又は回路の変形例であり、一方向性の電圧制限装置が1つの双方向性の電圧制限装置に置き換えられていることを示す図である。
【
図5A】医療機器の2つのチャネルの4つの患者側配線インターフェース用の変更された過電圧保護システムを示す図である。
【
図5B】医療機器の2つのチャネルの4つの患者側配線インターフェース用の変更された過電圧保護システムを示す図である。
【
図6A】電子医療機器の4つの患者側配線インターフェース用に設計された過電圧保護システム又は回路の実施形態を示す図である。
【
図6B】電子医療機器の4つの患者側配線インターフェース用に設計された過電圧保護システム又は回路の実施形態を示す図である。
【
図7A】6つの患者側配線インターフェース(3つのチャネル)を有する過電圧保護回路又はシステムの他の実施形態を示す図である。
【
図7B】6つの患者側配線インターフェース(3つのチャネル)を有する過電圧保護回路又はシステムの他の実施形態を示す図である。
【
図7C】6つの患者側配線インターフェース(3つのチャネル)を有する過電圧保護回路又はシステムの他の実施形態を示す図である。
【
図8A】6つの患者側配線インターフェースを有する過電圧保護回路のさらなる実施形態を示す図である。
【
図8B】6つの患者側配線インターフェースを有する過電圧保護回路のさらなる実施形態を示す図である。
【
図8C】6つの患者側配線インターフェースを有する過電圧保護回路のさらなる実施形態を示す図である。
【
図8D】6つの患者側配線インターフェースを有する過電圧保護回路のさらなる実施形態を示す図である。
【
図9A】6つの患者側配線インターフェースを有する過電圧保護回路のさらに簡略化された実施形態を示す図である。
【
図9B】6つの患者側配線インターフェースを有する過電圧保護回路のさらに簡略化された実施形態を示す図である。
【
図9C】6つの患者側配線インターフェースを有する過電圧保護回路のさらに簡略化された実施形態を示す図である。
【
図9D】6つの患者側配線インターフェースを有する過電圧保護回路のさらに簡略化された実施形態を示す図である。
【
図10】過電圧保護回路の他の実施形態を示す図である。
【
図11A】
図10の回路の変形例であり、医療機器の2つの患者チャネルに対する過電圧保護を提供することを示す図である。
【
図11B】
図10の回路の変形例であり、医療機器の2つの患者チャネルに対する過電圧保護を提供することを示す図である。
【
図12A】3つの患者チャネルに過電圧保護を提供するための、
図10から11Bの回路の変形例を示す図である。
【
図12B】3つの患者チャネルに過電圧保護を提供するための、
図10から11Bの回路の変形例を示す図である。
【
図12C】3つの患者チャネルに過電圧保護を提供するための、
図10から11Bの回路の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
様々な実施形態の詳細は、部分的に、添付の図面の調べることにより収集することができ、同様の参照番号は同様の部分を指す。
【0017】
本明細書で開示される特定の実施形態は、ECGモニタ、血行力学的モニタ、電気焼灼ナイフ又は他の電気外科装置、心臓刺激又は神経刺激のための電気パルス発生器又はペースメーカ、及び心臓細動除去器などを含む埋め込み型又は外部装置など、治療又はモニタリングのための電気医療装置の出力又は入力に接続された1つ以上の患者側配線インターフェースと直接的に接続されない回路部品を介してバイアス電圧を生成するように設計された過電圧保護システム又は回路を提供する。
【0018】
本明細書に記載された主題は、例示的な実装形態によって示されている。明確のため、主題を不明確にするのを避けるために、様々な詳細は省略されている。以下に示す例は、過電圧保護装置、電子医療機器のためのシステム及び方法を主題としている。主題の特徴及び利点は、以下の説明によって明らかにされる。
【0019】
本明細書によって、当業者に対しては、様々な他の実施形態及び他の応用として本発明をどのように実施するかが明らかになる。しかしながら、本明細書は、本発明に関する様々な全ての実施形態を説明するものではない。本明細書に示された実施形態は、一例として示されているに過ぎず、実施形態を限定するものではない。
【0020】
図1は、電子医療機器12と患者インターフェース14との間で患者側配線11に直列に接続された従来技術の回路又は過電圧保護装置10を示している。装置10は、患者側配線11と接地との間に接続された過渡電圧抑制ダイオード(TVS)15、患者側配線インターフェース14と直列に患者側配線11に接続された保護抵抗(インピーダンス)16、MOSFET電流制限器18によって過電圧に対する保護を提供する。この構成では、過電圧パルスが発生すると、MOSFETはオフになる。適切な除細動エネルギーの低減を達成するため、除細動又は過電圧保護抵抗16のオーム値を小さくすることはできない。代わりに、比較的高抵抗の抵抗が必要である。したがって、この単純な除細動保護アプローチは、低インピーダンスインターフェースを必要とする心臓ペースメーカ及び生体適合性ベースのモニタなどの能動的な電気装置には使用することができない。
【0021】
図2は、患者側配線インターフェース14及び医療機器内部回路12と直列に患者側配線11に抵抗又はインピーダンスを直接有さない過電圧保護装置又は回路20の第1の実施形態を示す。
図2の実施形態は、1つの患者側配線インターフェース11を用いて図示されているが、2つの患者インターフェース(1つの患者チャネル)に対する過電圧保護を提供するために、変更された実施形態が提供され、又は、医療装置に設けられたチャネルの数に応じて、2つ、3つ又はそれ以上の患者チャネルの過電圧保護のために提供される。以下に説明する過電圧保護回路は、電子部品と患者インターフェースとの間の電子医療機器自体に組み込まれてもよく、又は医療機器と患者との間に組み込むための別個の装置であってもよい。
【0022】
一実施形態では、過電圧保護回路は、患者側配線又は患者電流経路に位置していないバイアス電圧生成装置と組み合わせて、患者側配線又は電流経路内のデプリーション型MOSFETなどの電流制限装置を使用し、過電圧が発生した場合に電流制限装置のバイアス電圧を設定するするように構成される。
図2は、動作原理を示すために、1つの患者側配線に関連する過電圧保護回路の一実施形態を示す。この構成では、患者側配線は一方向にのみ保護される。いくつかの変形例については、
図3から
図12に関連して以下でより詳細に説明するように、各患者チャネルが過電圧保護回路20を有し、過渡電圧の印加方向に依存せずに保護が可能となる。
【0023】
図2では、MOSFETなどの電流制限器25が、電気又は電子医療機器の患者インターフェース14と内部回路12との間の電流経路又は第1の配線11に配置されている。バイアス電圧生成回路又は装置は、患者11から延在する第2の配線23に配置され、MOSFET25と医療装置の内部回路との間の位置で患者側配線又は配線11に一端で接続され、配線23のTVSダイオード24のような過渡電圧制限装置と直列に接続されたバイアス抵抗22を有する。バイアス抵抗22とTVSダイオード24との間の接続部は、配線26を介してMOSFETゲート端子Gに接続されている。
【0024】
このアプローチでは、MOSFETのバイアス電圧は、MOSFETの電流経路の外に(したがって、患者の電流経路又は患者側配線インターフェースの外側に)配置された抵抗や、特に、過渡電圧抑制器(TVS)と直列に配置された抵抗から得られ、過渡電圧抑制器(TVS)は、一方向性の又は双方向性のTVSのいずれかになる。これは、
図1の従来技術の構成とは異なり、MOSFETと装置内部回路12との間の配線11に直列に抵抗素子を接続することを回避する。
【0025】
いくつかの実施形態では、バイアス抵抗は、過渡過電圧の場合にMOSFETを比較的迅速にオフにするのに十分なバイアス電圧を生成するように選択された抵抗を有する。いくつかの実施形態では、100オームの抵抗を有する抵抗は、過渡電圧抑制ダイオード(TVS)24と直列に接続されるが、いくつかの実施形態では、例えば50オームから1キロオームの範囲の抵抗を有する異なる抵抗値を有するバイアス抵抗を使用することができる。MOSFET電流経路の外側にTVSダイオード24とともに配置された抵抗22は、デプリーション型MOSFET25のためのバイアス電圧を生成するために使用される。このバイアス電圧は、MOSFET電流制限器のソース端子Sとゲート端子Gとの間の配線11及び配線26を介して印加され、過渡過電圧が患者インターフェースの入力に発生した場合、MOSFET電流制限器をオフにする。デプリーション型MOSFETは、TVSが導通し始めるときに小さな電流が抵抗22を流れ始めるので、過渡電圧パルスの初めに高インピーダンスを示す。典型的な過渡過電圧の電圧の一部分で導通するTVSダイオードが選択される。ペースメーカや血行動態モニタなどの多くの装置では、印加されたTVSは20Vから24Vの電圧でブレークダウンを開始する。バイアス抵抗100オームの場合、バイアス抵抗22を流れる電流は約30ミリアンペアになる。このような電流は、TVSダイオードが導通(ブレークダウン)し始めた後すぐに流れ、過渡過電圧に対する応答が速くなる。
【0026】
図3は、電子医療機器の患者チャネルを形成し、患者インターフェース14A及び14Bを有する2つの患者側配線11A、11Bのための過電圧保護装置又は回路30の変更された実施形態を示す。回路30は、
図2の回路20と同様又は同一の構成要素を使用する。第1のバイアス抵抗22Aは、患者側配線11Aに接続された第1の端部を有し、患者側配線から延在する配線23Aの第1の一方向性の過渡電圧抑制器(TVS)24Aと直列に接続され、第1のバイアス抵抗22Aと第1の一方向性のTVS24Aとの間の接続部からMOSFET25Aのゲートに延在する配線26Bを介して接続されている。第2のバイアス抵抗22Bは、患者側配線11Bに接続された第1の端部を有し、患者側配線から延在する配線23Bを介して第2の一方向性のTVS24Bと直列に接続され、バイアス抵抗22Bと一方向性のTVS24Bとの間の接続部から患者側配線11Bに位置するMOSFET25Bのゲートに延在する配線26Bを介して接続されている。一方向性のTVSダイオード24A及び24Bは、それらの隣接する端部で、それらのカソード又はアノードのいずれかと互いに接続されている。保護回路は、電子医療機器の患者チャネル、例えばシングルチャンバペースメーカ又は血行動態モニタの1つのチャネル、又は他のタイプの医療機器に接続される。回路30は、医療機器の内部回路12が過電圧に含まれるエネルギーを吸収するリスクを回避又は低減するために、各極性の過電圧の発生時及び過電圧の発生中に2配線患者チャネルに過電圧保護を提供するように設計されている。
【0027】
図4は、
図3の回路30と類似するが、一方向性の電圧制限装置24A、24Bを双方向性のTVSダイオード42のような1つの双方向性の電圧制限装置に置き換えた変更された過電圧保護回路40を示す。回路の他の部分又は装置40は、
図3の回路30の構成要素と同じであり、同様の部分には同様の番号が付されている。双方向性のTVSは、どちらの方向にも取り付けることができる。
図3に示されているように、回路は、2つの患者側配線からなる患者チャネルに適用され、これは、シングルチャンバペースメーカ又は血行動態モニタの1つのチャネルなどであってもよい。
【0028】
図5A及び
図5Bは、デュアルチャンバペースメーカ又は2つのチャネルの血行動態モニタのような、2つの患者チャネルを有する電子医療機器に対して過電圧パルス保護を提供するように構成された変更された過電圧保護回路又は装置50の一実施形態を示す。装置50は、デュアルチャネル装置のそれぞれのチャネルに適用された
図3のシングルチャネル回路30のうちの2つを備え、同様の部品には同様の参照番号が付されている。各チャネルの回路30は、一端が患者側配線11Aに接続され、配線23Aの第1の一方向性の過渡電圧抑制器(TVS)24Aと直列に接続され、抵抗22AとTVS24Aとの間の接続部からゲートMOSFET25Aのゲートに接続される第1のバイアス抵抗22Aと、一端が患者側配線11Bに接続され、配線23Bを介して第2の一方向性のTVS24Bと直列に接続され、配線26Bを介してMOSFET25Bのゲートに接続される第2のバイアス抵抗22Bとを有する。
図3に示すように、一方向性のTVS装置は、カソード又はアノードのいずれかの端部と互いに接続されている。2つの回路は、ぞれぞれの回路内のTVS24Aと24Bとの間に位置するノード53(
図5A)と54(
図5B)との間に延在する配線52を介して接続されている。
【0029】
この回路が使用される例は、デュアルチャンバペースメーカ又は血行動態モニタの2つのチャネルである。回路50は、2つのチャネルに対する過電圧保護を提供する。すなわち、回路50は、任意の患者側配線間の各極性の過電圧の発生時及び過電圧の発生中に装置を保護し、装置が過電圧に含まれるエネルギーを吸収するリスクを回避又は低減する。
【0030】
図6A及び6Bは、
図4のものと同様の過電圧保護回路60の実施形態を示しているが、例えば、デュアルチャンバペースメーカの2つの患者チャネル又は血行力学的モニタの2つのチャネルのように、適用可能な4つの患者側配線インターフェースのそれぞれの患者側配線インターフェースに接続された各々の抵抗(インピーダンス)を使用してバイアス電圧を生成することによって、2チャネルの患者インターフェースを保護するように変更されている。
【0031】
この実施形態では、4つの追加の双方向性の電圧制限装置又はTVSダイオード65、66、67及び68(
図6A参照)は、2つの異なるチャネルに属する患者側配線間に過渡電圧が発生した場合に回路60の電流制限能力を作動させるために、2つの患者チャネル62、64(
図6B参照)のバイアス抵抗間に直列に接続される。
図6Bに示すように、第1の双方向性のTVS装置65は、第1及び第2の患者チャネルの抵抗22Aの第2の端部の間の配線73に配置され、TVS装置66は、第1の患者チャネル62の抵抗22Aの第2の端部と第2の患者チャネルの抵抗22Bの第2の端部との間に接続された配線45に配置され、TVS装置67は、第1の患者チャネル内の抵抗22Bの第2の端部と、第2の患者チャネル内の抵抗22Aの第2の端部との間に接続された配線46内に配置され、TVS装置68は、第1の患者チャネル内の抵抗22Bの第2の端部と第2の患者チャネル内の抵抗22Bの第2の端部との間に接続された配線47に配置される。これにより、任意のペアを形成している患者側配線間のいずれかの極性の過電圧から医療機器を保護する。したがって、この実施形態は、一方向性のTVSを使用する前の実施形態よりも、さらに2つのTVS装置を必要とする(
図5A、5B参照)。
【0032】
図7Aから
図7Cは、
図5A及び5Bと同様の過電圧保護回路70の実施形態を示しているが、トリプルチャンバ又は両心室ペースメーカの3つの患者チャネルのように、3つの患者チャネルを保護するように変更されている。
図7Aから
図7Cの回路70は、
図3、
図5A、
図5Bの3つの過電圧保護回路30を有し、
図5Bのような2つのチャネルではなく、3つの患者チャネル72、74、76を有する医療装置の3チャネルの患者インターフェースに適用され、同様の部分には同様の番号が付されている。回路70は、
図5A及び
図5Bに関連して上述したのと同じ方法で、6つの患者側配線インターフェースの各患者側配線インターフェースに接続された第1の端部を有するそれぞれのバイアス抵抗(インピーダンス)22A又は22Bを使用してバイアス電圧を生成するように設計される。
図5A及び
図5Bのように、この回路は一方向性のTVSを使用する。
【0033】
図5A、
図5Bのように、一方向性のTVS24A、24Bのそれぞれのペアは、それらのカソード又はアノードのいずれかの端部で互いに接続されている。異なるチャネルの各TVSペアの間の接続部は、異なる患者チャネルに属する患者側配線間に過渡電圧が発生した場合に電流制限能力を提供するために、
図7Aから
図7Cに示すように配線77、78を介して互いに接続される。過電圧保護回路70は、3つのチャネルに対する過電圧保護を提供する。すなわち、過電圧保護回路70は、任意の患者側配線間の各極性の過電圧の発生時及び過電圧の発生中に装置を保護し、装置が過電圧に含まれるエネルギーを吸収するリスクを低減又は排除する。
【0034】
図8Aから
図8Dは、
図6A及び
図6Bと同様の過電圧保護回路80の実施形態を示しているが、3チャネルの患者インターフェースを保護するように変更されており、同様の部品には同様の参照番号が使用されている。上述の実施形態と同様に、回路80は、患者側配線インターフェースに一端が接続された抵抗(インピーダンス)を使用してバイアス電圧を生成するように構成される。この場合、それぞれのバイアス抵抗は、例えば、3つの患者チャネル72(
図8B)、74(
図8C)、及び76(
図8D)を有するトリプルチャンバペースメーカ又は血行動態モニタの3つの患者チャネルのように、適用可能なそれぞれ6つの患者側配線インターフェースに接続された第1の端部を有する。以下でより詳細に説明するように、
図6A、
図6Bと同様に、この回路は、異なる患者チャネルの患者側配線間に追加の双方向性のTVS装置とともに、各患者チャネルのバイアス抵抗22A、22Bの間に双方向性のTVS装置42を使用する。これにより、2つの異なるチャネルにおける患者側配線間に発生する過電圧を含む、任意のペアの患者側配線間の任意の極性の過電圧の発生時及び過電圧の発生中に過電圧保護を行う。
【0035】
双方向性の過渡電圧抑制回路を備えた3チャネルの過電圧保護を実現するには、各患者チャネルに1つの双方向性のTVSを適用するだけでは不十分である。図に示された実施形態では、3つの患者チャネルの間に他の12の双方向性の過渡電圧抑制装置又はTVS装置が接続され、異なる患者チャネルに属する患者側配線間に過渡電圧が発生した場合にこの保護回路の電流制限能力を作動させる。
図8Aから
図8Dにおいて、双方向性のTVSが各ペアの患者側配線間に接続されている。接続配線は以下の通りである。
【0036】
TVS81−チャネル72のバイアス抵抗22Aとチャネル74のバイアス抵抗22Aとの間(Jを介して
図8B及び
図8C参照)。
【0037】
TVS82−チャネル74のバイアス抵抗22Aとチャネル76のバイアス抵抗22Bとの間(Jを介して
図8C及び
図8Dを参照)。
【0038】
TVS83−チャネル72のバイアス抵抗22Aとチャネル76のバイアス抵抗22Aとの間(I、Hを介して
図8B、
図8C、
図8D参照)。
【0039】
TVS84−チャネル72のバイアス抵抗22Aとチャネル74のバイアス抵抗22Bとの間(A、Dを介して
図8B、
図8A、
図8C参照)。
【0040】
TVS85−チャネル74のバイアス抵抗22Bとチャネル76のバイアス抵抗22Aとの間(D、E、Hを介して
図8C、
図8A、
図8D参照)。
【0041】
TVS86−チャネル72のバイアス抵抗22Aとチャネル76のバイアス抵抗22Bとの間(A、F、Gを介して
図8B、
図8A、
図8D参照)。
【0042】
TVS87−チャネル72のバイアス抵抗22Bとチャネル74のバイアス抵抗22Aとの間(B、Cを介して
図8B、
図8A、
図8C参照)。
【0043】
TVS88−チャネル74のバイアス抵抗22Aとチャネル76のバイアス抵抗22Aとの間(C、E、Hを介して
図8C、
図8A、
図8D参照)。
【0044】
TVS89−チャネル72のバイアス抵抗22Bとチャネル74のバイアス抵抗22Bとの間(B、Dを介して
図8B、
図8A、
図8C参照)。
【0045】
TVS91−チャネル74のバイアス抵抗22Bとチャネル76のバイアス抵抗22Bとの間(D、F、Gを介して
図8C、
図8A、
図8D参照)。
【0046】
TVS92−チャネル72のバイアス抵抗22Bとチャネル76のバイアス抵抗22Aとの間(B、E、Hを介して
図8B、
図8A、
図8D参照)。
【0047】
TVS93−チャネル72のバイアス抵抗22Bとチャネル76のバイアス抵抗22Bとの間(B、F、Gを介して
図8B、
図8A、
図8D参照)。
【0048】
回路80における双方向性の過渡電圧抑制器(TVS)の総数は15である。これは、一方向性のTVSを使用する
図7Aから
図7Cの実施形態よりもはるかに多く、一方向性のTVSが6つだけ必要である。しかし、TVS装置は大きな電流を流す必要がなく、高出力装置である必要はないので、いくつかの実施形態では、小型の最新のESD保護TVS装置を使用することができる。これらの装置は、ほぼすべて双方向性であるため、10個の電子部品を追加しても装置のサイズや経費は大幅に増加しない。
【0049】
図9Aから
図9Dは、それぞれの配線インターフェースから延在するそれぞれの配線を介して6つの患者側配線インターフェース用の患者側配線インターフェースに接続された第1の端部を有する抵抗(インピーダンス)を使用してバイアス電圧を生成し、各患者チャネルのバイアス抵抗間に双方向性のTVSを使用する過電圧保護回路90の簡略化された実施形態を示す。上述の2つの実施形態と同様に、この実施形態は、例えば、トリプルチャンバペースメーカの3つの患者チャネルに適用可能である。
【0050】
図4、
図6A、
図6Bに示すように、回路90は、3つの過電圧保護回路40を有し、
図6A、
図6Bのように2つのチャネルではなく3つの患者チャネル72、74、76を有する医療機器の3チャネル患者インターフェースに適用され、同様の部分には同様の番号が付されている。回路90は、
図8Aから
図8Dと同様であるが、単純化された双方向性のTVS構成を有する3チャネルの患者インターフェースを提供する。この回路を使用できる例は、二心室ペースメーカである。回路90は、3つのチャネルに対して完全な過電圧保護を行う。すなわち、回路90は、6つの患者側配線のいずれかの間の各極性の過電圧の発生時及び過電圧の発生中に装置を保護する。
図8Aから
図8Dのように、各患者チャネル72、74、76には、1つの双方向性の過渡電圧抑制器42が装備されている。しかしながら、
図8Aから
図8Dのように12個の双方向性のTVS素子の代わりに、患者チャネル間には6個の双方向性のTVS素子95、96しかない。これは、不均一なTVSブレークダウン電圧を使って行われる。電圧過渡が予想される患者側配線の組み合わせによっては、ブレークダウン電圧UTVSが予想されるが、他の患者側配線の組み合わせではブレークダウン電圧が2UTVSに等しくなる。しかしながら、これは、UTVSが発生する可能性のある過渡電圧のほんの一部である多くの場合において、保護回路の保護能力を提供する際には問題ではない。
図9Aから
図9Dにおいて、各双方向性のTVS95は、各ペアの回路40(E、G、I参照)のバイアスダイオード22Aの間に接続され、各双方向性のTVS96が、各ペアの回路40(F、H、J参照)のバイアスダイオード22Bの間に接続され、合計6つの双方向性のTVS装置を構成する。しかしながら、
図8Aから
図8Dとは異なり、1つの回路のバイアスダイオード22Aと他の2つの回路のいずれかのバイアスダイオード22Bとの間には双方向性のTVS素子はなく、
図8Aから
図8Dの双方向性のTVS素子のうちの6つは省略されている。
【0051】
図8から
図8D又は
図9Aから
図9Dのように、
図7Aから
図9Dの3チャネル過電圧保護回路は、
図7Aから
図9Dのチャネル72、74、76と同様の方法で、4つ目のチャネル用の追加の回路30又は40と、2つの一方向性のTVS装置ではなく双方向性のTVSがバイアス抵抗間で使用される場合に、各チャネルの患者側配線間に追加の双方向性のTVS装置とを追加することによって、心臓の4つの部屋の心臓モニタ又はペースメーカのような4チャネルの医療装置に対してスケールアップすることができる。
【0052】
図10は、2つの患者側配線インターフェース又は1つの患者医療チャネルの過電圧保護回路100の他の実施形態を示す。回路100は、装置内部回路12と医療機器の患者インターフェースとの間に接続されている。
図10に示すように、この実施形態では、過渡電圧抑制器又はTVS素子は、それぞれの補償コンデンサ104A、104Bと並列にそれぞれ抵抗102A、102Bで置換され、Aの一端がそれぞれ患者側配線11A又は11Bに接続されたバイアス抵抗105A又は105Bと直列に接続されている。いくつかの実施形態では、補償コンデンサ104A及び104Bを省略することができる。上述した実施例と同様に、各患者側配線11A、11Bは、MOSFET電流制限器25A、25Bを有する。抵抗105Aと抵抗102Aとの間の接続部106Aは、配線108Aを介して、MOSFET25Aのゲートに接続されている。同様に、接続部106Bは、配線108Bを介して、MOSFET25Bのゲートに接続されている。それぞれ一方向性の電圧制限装置又はTVSダイオード110A、110Bは、患者側配線11A、11Bと配線108A、108Bとの間のそれぞれバイアス抵抗105A、105Bと並列に接続されている。一方向性の電圧制限装置110Aは、患者側配線11Aに接続された陽極と、接続部106Aに接続された陰極とに接続され、一方向性の電圧制限装置110Bは、患者側配線11Bに接続された陽極と接続部106Bに接続された陰極とに接続されている。
【0053】
過電圧保護回路100は、1つの患者チャネルを構成する2つの患者側配線11A、11Bを保護し、
図2から
図9Dに示される上述の実施形態と全く同じ方法で使用される電流制限装置25A、25B(デプリーション型MOSFETなどで構築される)を利用する。しかしながら、この実施形態では、バイアス電圧は、抵抗105A及び102Aを含む第1の抵抗分圧器と、2つの患者側配線間に構築された抵抗105B及び102Bを備える第2の抵抗分圧器から得られる。第1の過電圧のランプが発生すると、最初は小さな電流が分圧器の抵抗を通って流れる。バイアス抵抗105A又は105Bの一方の両端の電圧がMOSFETの必要バイアスレベルに達すると、それぞれのMOSFETは患者側配線を流れる電流を遮断する。どのMOSFETが最初にオフになるかは、過渡過電圧の方向に依存する。分圧器は、MOSFETの遮断が
図2から
図9Dの過電圧保護回路の場合よりもさらに迅速に行われるように調整することができる。一例では、抵抗105A及び105Bはそれぞれ10キロオームの抵抗を有し、抵抗102A及び102Bはそれぞれ22キロオームの抵抗を有し、コンデンサ104A及び104Bはそれぞれ10ナノファラドの静電容量を有する。抵抗105A及び105Bの抵抗は、10キロオームから1メガオームの範囲内であり得るが、抵抗102A及び102Bの適切な抵抗の範囲は、22キロオームから3.3メガオームである。補償キャパシタ104A及び104Bは、数ピコファラドから22ナノファラドの容量を有することができる。実際の値は、過電圧保護回路が使用される装置の患者側配線の特性に強く依存する。
【0054】
分圧器は、各抵抗対105A、102A及び105B、102Bを流れる電流が非常に小さくなるように、高オーム抵抗で構成することができる。しかしながら、分圧器の大きさを決定する手順(dimensioning procedure)の間に、バイアス容量105A又は105Bとともにこの容量がローパスフィルタを形成するので、MOSFETゲート端子Gに見られるMOSFET容量Cissに関して注意する必要がある。Cissはゲート−ソース間容量とゲート−ドレイン間容量(Ciss=Cgs+Cgd)の和である。回路に使用される特定のMOSFETに依存して、この容量は、数ナノファラッドまでの値を有することができる。これを補償するために、それぞれの補償コンデンサ104A、104Bがそれぞれの抵抗102A、102Bと並列に印加される。いくつかの実施形態では、正確な補償の場合よりも過渡過電圧に対する応答が速くなるので、補償コンデンサをCissに対して過補償するように配置することが最良な配置であり得る。しかしながら、コンデンサ104A、104Bの導入は、保護回路の周波数応答に影響を及ぼす。
図10の実施形態で使用された上述の例の構成要素パラメータでは、約25キロヘルツで−3デシベルの減衰限界が達成される。このような周波数応答は、過電圧保護装置がペースメーカ装置又はECGモニタに使用されるとき、ほとんどの生体信号に対して十分である。血行動態モニタの保護のための実施形態では、回路がより少ない減衰を導入するように、回路パラメータを変更することができる。電圧測定を担当する血行動態モニタの患者チャネルの場合、補償コンデンサの値をピコファラド値に減らすか、補償コンデンサを完全に省略することができる。電圧測定患者チャネルがペースメーカチャネル又は血行動態モニタの電流チャネルほど低いインピーダンスを示さないため、これは可能である。
【0055】
回路100は、ゲート端子とソース端子との間の過大な電圧から保護するために、各MOSFET電流制限器25A、25Bのゲート端子とソース端子の間に接続されたTVS素子110A及び110Bを有する。しかしながら、この回路で使用されるTVS素子は、患者側配線に電圧制限能力を導入しないことに留意すべきである。回路100内のTVS素子の唯一の目的は、MOSFET電流制限器を過度のゲート−ソース電圧から保護して、MOSFETを損傷させることである。上述したように、過電圧保護回路100の電圧制限は、MOSFET25A及び25Bの遮断によって単独で達成される。所望の遮断効果は、上述した分圧器の適切な大きさに強く依存する。
【0056】
図10に示す過電圧保護回路には、
図2及び
図3から
図9Dに示す回路に比べて2つの利点がある。第1の利点は、過電圧過渡現象に対してより感度が高いこと、第2の利点は、より良好に制御が可能であり、MOSFETの遮断がより深いことである。これは、過渡事象によってもたらされるエネルギーをより良く排除し、改善されたエネルギー排除能力をもたらす。しかしながら、この実施形態における過電圧保護は、上述の実施形態よりも正確な大きさ又は構成要素パラメータに依存する。大きさは、過電圧保護回路が適用される特定の医療機器によって大きく左右される。
【0057】
図11A及び
図11Bは、例えば、デュアルチャンバペースメーカ又は2チャネルの血行動態モニタのように、2つの患者チャネル118(
図11A)及び119(
図11B)を有する電子医療機器の過電圧保護を提供するために、
図10と同じ過電圧保護技術を使用する変更された過電圧保護回路又は装置112の一実施形態を示す。装置120は、デュアルチャネル装置のそれぞれのチャネル118、119に適用された
図10の1つのチャネル回路100のうちの2つを有し、同様の部品には同様の参照番号が付される。
図10のように、各チャネルの回路100は、一端が患者側配線11Aに接続され、補償コンデンサ104Aと並列に接続された第1の抵抗102Aと直列に接続された第1のバイアス抵抗105Aとを有する。抵抗102Aと105Aとの間の接続部106Aは、配線108Aを介して患者側配線11AのMOSFET25Aのゲートに接続されている。それぞれ第2のバイアス抵抗105Bは、一端が患者側配線11Bに接続され、補償コンデンサ104Bと並列に接続された第2の抵抗102Bと直列に接続されている。抵抗102Bと105Bとの間の接続部106Bは、配線108Bを介して、患者側配線11Bに位置するMOSFET25Bのゲートに接続されている。さらに、各回路内の電圧制限装置102Aと102Bとの間の接続部115は、配線116によって互いに接続されている。
【0058】
回路112が使用される医療機器の例は、デュアルチャンバペースメーカ又は2つのチャネルの血行動態モニタである。回路112は、2つのチャネルに対する過電圧保護を提供する。すなわち、回路112は、任意の患者側配線間で各極性の過電圧の発生時及び過電圧の発生中に医療装置を保護し、装置が過電圧に含まれるエネルギーを吸収するリスクを低減又は排除する。
【0059】
2チャネル過電圧保護回路112の一例では、抵抗105A及び105Bの抵抗はそれぞれ470キロオームであり、抵抗102A及び102Bの抵抗はそれぞれ1.5メガオームであり、コンデンサ104A及び104Bの容量は10ナノファラドである。
【0060】
図12Aから
図12Cは、
図1及び
図2と同様の変更された過電圧保護回路又は装置120の一実施形態を示し、トリプルチャンバペースメーカ又は3つのチャネルを有する血行力学的モニタのように、3つの患者チャネル122(
図12A)、124(
図12B)、125(
図12C)を有する電子医療機器の過電圧パルス保護を提供するように構成される。装置120は、3チャネル装置のそれぞれのチャネル122、124、125に適用された
図10の1つのチャネル回路100のうちの3つを備え、同様の部品には同様の参照番号が付されている。
図10のように、各チャネルの回路100は、一端が配線11Aに接続され、補償コンデンサ104Aと並列に接続された第1の抵抗102Aと直列に接続された第1のバイアス抵抗105Aとを有する。抵抗102Aと105Aとの間の接続部106Aは、配線108Aを介して患者側配線11AのMOSFET25Aのゲートに接続されている。TVSダイオード110Aは、バイアス抵抗105Aと並列に、配線11Aと108Aとの間に接続されている。それぞれの第2バイアス抵抗105Bは、一端で患者側配線11Bに接続され、補償コンデンサ104Bと並列に接続された第2抵抗102Bと直列に接続されている。抵抗102Bと105Bとの間の接続部106Bは、配線108Bを介して患者側配線11Bに位置するMOSFET25Bのゲートに接続されている。TVSダイオード110Bは、バイアス抵抗105Bと並列に、配線11Bと108Bとの間に接続されている。さらに、各回路内の電圧制限装置102Aと102Bとの間の接続部115は、配線116と126によって互いに接続されている。
【0061】
図1及び
図2の変更された過電圧保護回路120は、
図12Aから
図12Cは、6つの患者側配線11A、11Bのそれぞれ患者側配線にそれぞれの一端が接続された抵抗(インピーダンス)をそれぞれ使用してバイアス電圧を生成することによって、3チャネルの患者インターフェースを保護するように設計されている。この装置は、例えば、トリプルチャンバペースメーカ又は血行動態モニタの3つの患者チャネルに適用可能である。3チャネル過電圧保護回路120の一例では、抵抗105A及び105Bの抵抗はそれぞれ470キロオームであり、抵抗102A及び102Bの抵抗はそれぞれ1.5メガオームであり、コンデンサ104A及び104Bの容量は10ナノファラドである。
【0062】
上記の過電圧保護回路及び方法は、電気又は電子医療機器の過電圧保護を提供するものとして記載されているが、代わりに、2つの端子間の偶発的な過電圧から他のタイプの回路を保護するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、過電圧保護回路は、医療機器の内部回路自体に組み込まれてもよく、既存の医療機器の患者出力/入力端子又はチャネルに接続されるように設けられてもよい。上述の過電圧保護回路は、(人間又は動物の)体内又は体表の治療又はモニタリングの目的で使用される任意の電子医療機器と併用することができる。
【0063】
開示された実施形態に係る上記の説明は、当業者が本発明を実施又は使用することを可能にするために提供される。これらの実施形態に対する様々な変更は、当業者には容易に明らかであり、本明細書に記載された一般的な原理は、本発明の精神又は範囲から逸脱することなく他の実施形態に適用することができる。したがって、本明細書に提示される説明及び図面は、本発明の現時点で好ましい実施形態を表しており、それゆえ、本発明によって広く企図される主題を代表することが理解されるべきである。本発明の範囲は、当業者に明らかになる可能性のある他の実施形態を完全に包含し、添付の請求項以外になんら限定されるものではないことがさらに理解される。