【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、
独立請求項1
から3に係る方法及び
独立請求項
15,16,17に係る装置により達成される。本方法又は装置の好適な実施例及び/又は展開例は、従属項により達成することができる。本発明に係る本質的な用途発明は請求項18に記載されている。
【0012】
先ず、本発明の前提(本発明に係る、基板が各パーツに分割するメカニズム)について説明する。
【0013】
本発明に係る分割方法は、レーザパルス毎に、本発明の目的に適したレーザレンズ系(以下、光学配置とも呼ぶ)により、(焦点と対比させて)レーザビーム焦点面を生成する。該焦点面はレーザと基板材料との間のインタラクション領域を定義する。焦点面が分割されるべき材料内にある場合は、当該材料との相互作用が生じるようにレーザパラメータが選択され、当該焦点面に沿って本発明に係る亀裂領域が生成される(即ち、該焦点面に亘って亀裂領域が設けられる)。なお、レーザパラメータとして重要なのは、該レーザの波長とパルス幅(パルス時間)である。
【0014】
本発明に係るレーザビームと材料との相互作用として、以下のような性質が表れることが好ましい:
1) 材料を実質的に透過するようなレーザの波長を選択する(具体的には、例えば、材料深さ1mmあたりの吸収率<<10%
;ランベルトーベール吸収係数γ<<1/cm)。
2) 相互作用時間内において、インタラクション領域からの実質的な熱の伝達(熱拡散)が生じないようなレーザパルス幅を選択する(具体的には、例えば、τ<<F/α。但し、F:レーザビーム焦点面の面積、τ
:レーザパルス幅、α:材料の熱拡散定数)。
3) インタラクション領域、即ち焦点面において、材料の局所過熱、別言すれば、材料に印加される熱応力により亀裂形成を引き起こす誘導吸収処理(induced absorption)を実現するエネルギ強度のレーザパルスエネルギを選択する。
4) さらに、除去や溶解ではなく、固体構造における亀裂形成のみが影響を受けるようなパルス時間中の強度、パルスエネルギ、及びレーザビーム焦点面の膨張量又はサイズを選択する。かかる要件は、サブナノ秒オーダのパルスレーザ、具体的には、例えば10から100psのパルス幅を用いることで、半導体や透明結晶といった従来の材料において最も容易に満たすことができる。
【0015】
次に、所望の分割表面が得られる幾何学的生産方法(基板表面に沿ったレーザビームと基板の相対的動作)について説明する。
【0016】
本発明に係る材料との相互作用では、レーザパルス毎に、(レーザビームの入射方向及び基板表面と垂直方向から見て)焦点面に亘って材料中に亀裂領域が発生する。材料の完全分割にあっては、レーザパルス毎に、所望の分割線沿いに当該亀裂領域が密集するように連続して配置され、当該亀裂領域が連結して材料に対する所望の亀裂表面/輪郭が形成される。このため、レーザは所定周波数で繰り返し照射される。
【0017】
材料に所望の分割面を生成するためには、基板平面と平行(及び可能であれば垂直)に移動可能な光学配置により、固定された材料に対してパルスレーザビームを当てる、又は、当該所望の分割線を形成ように、移動手段を用いて、固定された光学配置に対して材料そのものを動かすことができる。
【0018】
そして、基板を複数のパーツに分割(分割又は分離)する最後のステップを実行する。
【0019】
生成した亀裂表面/輪郭に沿った材料の分離は、材料の内在応力又は外的な力、例えば機械的(引張)若しくは熱的(非均一過熱/冷却)応力の影響を受ける。本発明によれば、材料が除去されることがないため、通常、一時的には材料中に連続した空隙は生じず、互いに連鎖した状態で、ブリッジにより連結された、細かく破壊された領域(マイクロクラック)のみが存在する。続いて印加される外力により(基板と平行に作用する)横割れが成長して上記ブリッジが分割され、連鎖状態が解消されることにより、分割面に沿って材料が分割される。
【0020】
次いで、本発明に係る方法及び本発明に係る装置の本質的特徴について、特許請求の範囲の記載を参照しながら説明する。
【0021】
請求項1
から3は本発明に係る方法の本質的特徴を規定し、請求項
13,14,15は本発明に係る方法を実行するための装置
の本質的な構成素子を規定する。
【0022】
なお、請求
項に規定される、前記光学配置により発生するレーザビーム焦点面は、上記及び以下において、レーザビームの焦点面とも呼ぶ。本発明にあっては、基板平面から見た亀裂形成(基板面に直交する方向において基板面に向けて延びる焦点面での誘導吸収処理)によって基板を複数のパーツに分割又は分離する。したがって、当該亀裂形成は、基板又は基板平面と直交する基板内部にまで影響を及ぼす。上述した如く、一般的には、基板表面の線に沿って相当数のレーザビーム焦点面位置を導く必要があり、これにより基板の各部分がそれぞれ分割されることなる。また、かかる目的を達成するためには、レーザビーム若しくは光学配置に対して基板を基板平面と平行に移動させる、又は固定された基板に対して該光学配置を光学平面と平行に移動させることができる。
【0023】
また、本方法又は装置の少なくとも1つの従属項に記載される特徴を効果的に追加することもできる。また、複数の従属項の特徴を組み合わせることもできる。
【0024】
数学的に、表面(即ち、レーザビーム焦点面)なる文言は、2次元で無限に拡がる構造を意味するものとして理解されている。なお、上記2次元(その近似値)におけるレーザビーム焦点面の拡がりは、半値全幅により定義することができる。本発明において、上記2つの次元の直交方向におけるレーザビーム焦点面の拡がりは、上記2つの次元に比して非常に小さく、好適には、少なくとも10倍、若しくは50倍、100倍、又は500倍小さくても良い。なお、「表面部位に沿って」なる文言は、「当該部分の全表面に亘って」と同じ意味をなす。また、上記誘導吸収処理とは、結晶構造体に微細構造欠陥を形成する処理をいう。該微細構造欠陥は強度を弱めた表面部位を意味し、当該部分に沿って基板が複数に分割される。したがって、(一般的な意味を脱することなく)基板材料の膨張を介し、レーザビーム焦点面領域における局所的エネルギ吸収によって非結晶化が生じるものと推測することができる。即ち、膨張によって生じた圧力により、誘導吸収処理により膨張した表面部位に局所的な亀裂が発生する。
【0025】
さらに有利な特徴が従属項
4により達成することができる。
即ち、半導体基板は、特に4−6又は3−5半導体基板(好ましくは、GaAs基板)、又は基本半導体基板(好ましくは、Si基板)である。絶縁基板は、特に酸化物(好ましくは、Al2O3(サファイア)やSiO2(石英))、フッ化物(好ましくは、CaF2やMgF2)、塩化化合物(好ましくは、NaCl)、又は窒化物(好ましくは、Si3N4やBN)である。基板は、結晶質又は準結晶質の基本順序を有する少なくとも1つの炭素系材料を含む、又は、これからなる基板が、特にカーボンナノチューブを構成する。
【0026】
また、さらに有利な特徴が請求項
5に記載される。即ち、特定の空間方向におけるレーザビーム焦点面の拡がりは、当該レーザビームの最大強度の少なくとも半分の強度のレーザビームの拡がりにより定義することができる。
レーザビーム焦点面の拡張(ここで長さlと呼ぶ)がレーザビーム焦点面の第2方向における膨張量Dよりも少なくとも10倍大きい。ビーム方向におけるレーザビーム焦点面の長さは、該レーザビーム焦点面の第2方向における膨張量Dよりも大きく、好ましくは少なくとも20倍、より好ましくは少なくとも50倍、さらに好ましくは少なくとも100倍、特に好ましくは少なくとも500倍である。レーザビーム焦点面の第1方向の幅は、該レーザビーム焦点面の第2方向における膨張量Dよりも大きく、好ましくは少なくとも10倍、より好ましくは少なくとも50倍、さらに好ましくは少なくとも100倍である。
【0027】
また、請求項
6に係る方法にあっては、基板内部において誘導吸収処理により膨張した表面部位は基板表面から基板の規定深さまで(あるいは、それを超えて)拡がる。したがって、誘導吸収処理による膨張部分は、一方の表面から他方の表面までの全基板深さを覆うこととなる。また、基板の内部のみで(即ち、基板表面を含むことなく)誘導吸収処理により横方向に膨張した部分を生成することも可能である。
【0028】
さらなる有利な特徴が、請求項
7により達成
される(後述する
図3も参照のこと)。
基板は、レーザ焦点面に対し、材料中(即ち、基板内部)の誘導吸収処理により膨張した表面部位が、ビーム方向から見て、対向して配置された基板表面の一方から他方まで(即ち、基板の層厚さd全体に亘って)延びるように相対配置される。材料中(即ち、基板内部)の誘導吸収処理により膨張した表面部位は、ビーム方向から見て、対向して配置された基板表面から、基板に向かって、層全体厚さdの80%〜90%を超えて、好ましくは85%〜95%を超えて、より好ましくは90%を超えて膨張する。ここで、誘導吸収処理により膨張した表面部位(即ち、基板平面に対して垂直方向の亀裂長さ等)は、基板内部の特定の深さから基板の背面側表面まで、又は基板の表側表面から基板内部の特定の深さまで延びる。そしていずれの場合も、平面基板の対向する2つの基板表面と垂直な層厚さdが測定される。
【0029】
請求項
7及び残り全ての請求項において、記載される範囲制限は、それぞれ上限及び下限値を示す。
【0030】
本発明にあっては、請求項
8により、有利に誘導吸収処理を発生させることができる。これは、上記したレーザパラメータ、具体的には、続く実施例及び従属項
9から
12においても規定するように、本発明に係る装置を構成する素子の光学配置及び当該配置に係る幾何学的パラメータを調整することで達成できる。原則、請求項
9から
12に記載されるパラメータの組合せはいずれも可能である。なお
、τ<<F/αとは、τが1%未満、好適には、F/αの1%未満(Fはレーザビーム焦点面の平面的拡がり)であることを意味する。例えば、パルス幅τを10ps(又はそれ以下)、10から100psの間、又は100ps以上とする。Si基板の分離の場合、好適には、波長1.5から1.8μmのEr:YAGレーザが利用される。なお、通常、半導体基板に用いられるレーザの波長は、光子エネルギが該半導体のバンドギャップ未満となるように選択される。
【0031】
レーザビーム焦点面の長さlは、0.2mm〜10mmである。レーザビーム焦点面の幅bは0.02mm〜2.5mmである。基板の層厚さd(対向配置された基板表面の直交方向の測定値)は、2μm〜3000μmである。レーザビーム焦点面長さlと基板層厚さdの比率V1=l/dは、10〜0.5である。第2方向におけるレーザビーム焦点面の膨張量Dは1μm〜50μmである。
【0032】
具体的には以下が好ましい。レーザビーム焦点面の長さlが0.5mm〜2mm、及び/又は、レーザビーム焦点面の幅bが0.05mm〜0.2mm、及び/又は、レーザビーム焦点面の層厚さd(対向配置された基板表面の直交方向の測定値)が100μm〜500μm、及び/又は、レーザビーム焦点面長さlと基板層厚さdの比率V1=l/dが5〜2、及び/又は、第2方向におけるレーザビーム焦点面の膨張量Dが5μm〜25μmである。
【0033】
レーザのパルス幅τは、基板(1)の材料に対する相互作用時間内において、該材料内の熱拡散は無視できるほど小さいか、影響がなくなるように選択される。したがって、好ましくは、レーザビーム焦点面の表面膨張Fと基板の材料の熱拡散定数αとが、τ<<F/αに従って調整され、具体的には、τが10ns未満、好ましくは100ps未満となるように選択されることが望ましい。レーザのパルス繰返周波数は100kHzとすることができる。平均レーザ出力は、15ワット〜30ワットの間である。特に、可視波長帯において透明な結晶体を基板とするとき、レーザとして、波長λが1064nmのNd:YAGレーザ、又は波長λが1030nmのY:YAGレーザを用いることができる。あるいは、赤外波長帯で透明となる半導体基板の場合、レーザーとして波長λが1.5μm〜2.1μmのEr:YAGレーザを用いることができる。
【0034】
レーザの波長λは、基板の材料が当該波長において透明又は略透明になるように選択される。なお、略透明とは、基板材料中においてビーム方向に沿って生じるレーザビームの強度低下が、貫通深度1ミリメートル当たり10%以下であることを意味する。
【0035】
基板を最終的に複数のパーツに分割又は分離するためにさらに必要となり得る方法処理については、従属項
11及び
12に記載される。
【0036】
レーザビームは、基板を複数の部分に分ける第1方向と平行な線に沿い、基板表面に対して移動することができ、この線に沿って、基板の内部において、誘導吸収処理により膨張した表面部位が多量に生成される。好ましくは、誘導吸収処理により膨張した表面部位のうち、直接隣接しているもの(即ち、連続して生成されたもの)同士の平均間隔Aと、第1方向におけるレーザビーム焦点面の幅bとの割合V2=A/Bが、1.0〜1.3、好ましくは1.0〜1.1となる。
【0037】
上記した如く、(レーザを含む)光学配置に対して基板を移動させるか、基板に対して(レーザを含む)光学配置を移動させる。ここで、間隔Aは、(ビーム方向zから見て、即ち基板に向けて)直接対向する位置にある2つの隣接した誘導吸収処理による表面部位の境界間の距離ではなく、2つの隣接した誘導吸収処理による表面部位におけるある境界とそれに対応する境界(例えば、所望の分割線に沿ったレーザ方向で見て、正面位置の境界)間の距離を意味する。これは、基板内部で発生した各誘導吸収処理が重なるのを避けつつ、可能な限り狭い間隔で、所望の分割線に沿って隣接する誘導吸収処理による表面部位を繋げることを目的とする(さもなければ、重なり合った領域において吸収強度が約2倍になり、結晶性構造の所望の分割線に沿った微細構造欠陥の差が大きくなり過ぎてしまうためである)。また、請求項1
4に記載する亀裂形成は(本発明において必須となる誘導亀裂形成に対して)、横割れ、即ち基板の平面に沿った方向(基板が分割されるべき線に対応する方向)における横割れの形成を意味する。
【0038】
レーザビーム焦点面を生成、配置する光学配置の種々の実施例について記載する請求項
13〜15に係る発明の装置による有利な発展例
を以下に示す(後述する実施例及び
図4から7も参照のこと)。
【0039】
請求項13に記載する非球形自由表面を有する光学素子とダイアフラムとの間には、レーザビームをコリメートする光学素子が配置され、非球形自由表面を持つ光学素子から放射されるレーザ放射がダイアフラムに向けて平行に投射されるように当該光学素子を配向する。
【0040】
光学配置は、ダイアフラム又はレーザビームを第2方向でなく第1方向にフォーカスする光学素子のビーム出力側において、レーザビームを少なくとも第1方向にフォーカスする光学素子を備える。
【0041】
第1方向における所望の方向に配向されたダイアフラムは、第1方向に向けられたスリットダイアフラムであっても良い。レーザビームをコリメートする光学要素は、平凸コリメーションレンズとすることができる。非球形自由表面を有する光学素子の出力側に距離z2を空けて設けられ、レーザビームを第2方向ではなく第1方向にフォーカスする光学素子は、第2方向に向けられた円柱レンズでも良い。該光学配置内において、ダイアフラム又はレーザビームを第2方向でなく第1方向にフォーカスする光学素子の出力側に設けられた光学素子は、コリメーションレンズ、好ましくは、レーザビームを第1及び第2方向にフォーカスする平凸コリメーションレンズとすることができる。ダブルエッジの出力側に配置されてレーザビームを少なくとも第1方向にフォーカスする光学素子は、コリメーションレンズ、好ましくは、レーザビームを第1及び第2方向にフォーカスする平凸コリメーションレンズとすることができる。
【0042】
なお、本発明に係る装置は、光学配置及びこれと相対的に配置される基板とを含む。
【0043】
また
、ダイアフラムに代えて、絞りを用いる、又はダイアフラムによって絞りを形成しても良い。また、ダイアフラムに代えて(所定のエッジ強度の)回析素子を用いたり、ダイアフラムを(所定のエッジ強度の)回析素子として形成したりしても良い(通常のダイアフラムに加え、回析ビーム形成器を組み合わせてアキシコンによるラインフォーカスを形成しても良い)。
【0044】
請求項1
5において、2つのビーム束の偏向とは、全体として視たとき、2つのビーム束がそれぞれ平行に偏向されると共に、相互に向かい合うことを意味する。
【0045】
本発明に係る本質的な用途は請求項1
6によって達成される。
即ち、半導体基板、具体的には、4−6又は3−5半導体基板(好ましくは、GaAs基板)、又は基本半導体基板(好ましくは、Si基板)である。絶縁基板は、特に酸化物(好ましくは、Al2O3(サファイア)やSiO2(石英))、フッ化物(好ましくは、CaF2やMgF2)、塩化化合物(好ましくは、NaCl)、又は窒化物(好ましくは、Si3N4やBN)からなる半導体基板の分離、あるいは、結晶質又は準結晶質の基本順序を有する少なくとも1つの炭素系材料を含む、又は、これからなる基板(具体的には、カーボンナノチューブ)の分離を達成できる。
【0046】
本発明は、先行技術における公知の方法や装置に比して、一連の優位性を有する。
【0047】
先ず、本発明による切断形成にあっては、粒子形成を生じさせず、切断面を溶かさず、切断面における亀裂形成を最小にし、目立つ切断間隙(即ち、基板材料のロス)を生じさせることなく、かつ切断面を直線にすることができる。
【0048】
本発明にあっては、非常に高いレーザ平均出力が必要となるが、比較的高い分割率を達成することができる。したがって、本発明によりレーザパルスごと(又はバーストパルスごと)にレーザビーム焦点面(拡がりを持たない非常に局所的な焦点ではない)が形成される。そのために、後述するレーザレンズ系が用いられる。また、焦点面によりレーザと基板との間のインタラクション領域が規定される。焦点面が、(深さ方向で視て)少なくとも部分的に分割される基板材料に入る場合、本発明に係る材料との相互作用によって全焦点面深さ及び全焦点面の平面に亘る亀裂領域を形成するようにレーザパラメータを選択しても良い。選択可能なレーザパラメータには、例えば、レーザ波長、レーザパルス幅、及びレーザパルスエネルギがある。
【0049】
機械的な亀裂及び破壊処理に関し、本発明に係る方法の有するさらに有利な点は、粒子形成が生じない(又は、少なくとも最小である)ことに加え、機械的な亀裂線に比して高いアスペクト比(レーザビーム焦点面の、第2方向の拡張に対する深さ方向への拡張の比)を得られることにある。機械的亀裂及び破壊処理中、広範囲にわたる制御不能な亀裂成長によって材料に破断線が形成されるが、本発明による分割は、基板の法線に対して非常に正確に調整可能な角度で行うことができる。また、本発明によれば、斜め方向の切断も容易に可能となる。
【0050】
さらに、厚い材料に対しても、加工速度の高速化が可能である。
【0051】
また、表面除去、表面上のばり形成、及び粒子形成が回避される(特に、基板の表面からその内部に向けて基板に対する焦点位置を調整することにより、本発明における膨張誘導吸収処理及び亀裂形成を確実に実行できる)。かかる場合、表面に対して第1の(所望の)ダメージが加えられると共に、基板深さへの誘導吸収処理により亀裂形成領域に沿った規定に応じてダメージが継続される。
【0052】
本発明にあっては、異なる材料、具体的には、サファイアウェハ、半導体ウェハ等も加工することができる。
【0053】
また、一方が透明でない、コーティング済み材料(例えばTCOコーティング)や印刷済み基板であっても、本発明に係る加工、分割を行うことができる。
【0054】
本発明にあっては、実際に切断間隙を生じることなく切断処理をすることが可能である。即ち、材料へのダメージは、通常1〜10μmの膨張範囲でのみ生じる。具体的には、材料や表面に関して切断ロスが生じない。切断間隙ロスがある場合は、ウェハの利用可能面積が減少するため、上記効果は半導体ウェハの切断において特に有利に働く。焦点面切断処理に関する本発明の方法により表面歩留りを増加させることができる。
【0055】
本発明に係る方法は、特に製造処理のインライン作業において利用することができる。特に有利なのは、ロール・ツー・ロールの製造処理時である。
【0056】
本発明にあっては、バーストパルスを発生するレーザのような、パルスレーザをそれぞれ利用できる。また、継続ライン作業において当該レーザを使用することも原則可能である。
【0057】
以下の明細書の記載は、例示である:
1. サファイアウェハを全体的に又は部分的に分割することによるサファイアLEDの分割。本発明に係る方法により、単一のステップで金属層が分割される。
2. テープを損傷させることなく半導体ウェハの分離が可能。そのために、焦点面は基板表面から(レーザとは逆側となる、基板の裏面側の)テープ膜部分までとし、焦点面の一部のみを基板材料の内側に配置する。例えば、材料の約10%は分割しない。上記の通り、焦点面は当該膜の前までとなるように配置されるため、当該膜はそのまま残る。その後、半導体ウェハの残りの10%に対しては、機械的な外力(例えばCO2レーザによる熱応力)により連続的に分割されても良い。
3. コーティング済み材料、例えば、ブラッグ反射器(DBR)や金属膜サファイアウェハの切断。活性金属や金属酸化物が既に塗布された加工済みシリコンウェハであっても、本発明によって切断することができる。
【0058】
以上を前提とし、いくつかの実施例を参照しながら本発明について説明する。