(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
作動流体を圧縮する圧縮室と、この圧縮室で圧縮される作動流体を収容する吸入室と、前記圧縮室で圧縮され吐出された作動流体を収容する吐出室と、駆動軸が貫通されると共にこの駆動軸の回転に伴って回転する斜板を収容する制御圧室と、前記吐出室と前記制御圧室とを連通する給気通路と、前記制御圧室と前記吸入室とを連通する抽気通路と、前記給気通路の開度を調節することが可能な第1の弁部を備える第1の制御弁と、前記抽気通路上に設けられた第2の制御弁とを備え、
前記第2の制御弁は、前記抽気通路上に形成されたスプール収容凹部と、このスプール収容凹部内に前記抽気通路を開閉するように移動可能に収容されたスプールと、前記スプール収容凹部の前記スプールの背後に区画形成された背圧室と、前記スプールを前記抽気通路の開方向に付勢する付勢手段とを備え、前記給気通路の前記第1の制御弁の前記第1の弁部より下流側を前記背圧室に接続して前記背圧室の圧力に基づき前記抽気通路を開閉する可変容量型圧縮機であって、
前記第1の制御弁は、前記給気通路の前記第1の弁部の下流から分岐して前記吸入室と連通する低圧側通路と、この低圧側通路の開度を調整することが可能な第2の弁部と、をさらに備え、
前記第1の弁部と前記第2の弁部とは、前記第1の弁部により前記給気通路が閉状態となる場合に前記第2の弁部により前記低圧側通路が開状態となり、また、前記第2の弁部により前記低圧側通路が閉状態となる場合に前記第1の弁部により前記給気通路が開状態となる、一方が対応する通路を閉状態とする場合に他方が対応する通路を開状態とする連動関係にあり、
前記背圧室は、前記第1の制御弁の第1の弁部または第2の弁部を介して吐出室または吸入室に選択的に接続されることを特徴とする可変容量型圧縮機。
前記抽気通路には、前記第2の制御弁をバイパスして前記吸入室に接続するバイパス通路を接続し、このバイパス通路に固定絞りを設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の可変容量型圧縮機。
【背景技術】
【0002】
可変容量型圧縮機は、制御圧室の圧力を調整することによって斜板の傾斜角度を変えてピストンのストローク量を調整し、これにより吐出容量を可変させる機構が採用されている。このような圧縮機としては、吐出室と制御圧室とを給気通路を介して連通すると共に制御圧室と吸入室とを抽気通路を介して連通し、給気通路上に設けられた制御弁により給気通路の開度を調整して制御圧室に流入する冷媒量を調節することで制御圧室の圧力を制御する構成が知られている。
【0003】
このような構成において、制御弁によって給気通路を閉鎖すると、吐出室から制御圧室への高圧ガスの導入がなくなると共に、制御圧室は抽気通路を介して吸入室と常時連通しているので、制御圧室の圧力は、吸入室の圧力とほぼ同じ値まで低下し、圧縮機は最大容量で運転されることになる。また、制御弁によって給気通路を開くと、吐出室から制御圧室へ高圧ガスが導入され、抽気通路を介して冷媒ガスは制御圧室から吸入室へ流出されるものの、制御圧室の圧力は高められるので、圧縮機の吐出容量は制御弁による給気通路の開度調節によって制御される。
【0004】
ところで、圧縮機が稼働されずに長時間停止していると、冷凍サイクル内の圧力が平衡してくるとともに、冷凍サイクル中の最も温度の低い部位で冷凍サイクル中の冷媒が液化することとなる。圧縮機は、冷凍サイクルを構成する要素の中で最も熱容量が大きく、外気温度の変化に追随して温まりにくいため、圧縮機内にて冷凍サイクル中の冷媒が液化する事象が発生する。そして圧縮機内で冷媒が液化すると、制御圧室にも液冷媒が溜まることとなる。
【0005】
圧力が平衡した状態から圧縮機を起動させた場合、圧縮機の稼働により吸入室の圧力が低下し、これに伴い制御圧室の冷媒が抽気通路を介して吸入室に排出されるようになる。しかしながら、制御圧室内に液冷媒が溜まっていると、制御圧室内は気相冷媒と液相冷媒が共存する飽和状態となるため、制御圧室の冷媒が抽気通路を介して吸入室に排出されても、制御圧室の圧力は飽和圧力のまま維持されることとなる。このため、全ての液冷媒が気化して抽気通路から排出されるまでは制御圧室の圧力が下がらず、吐出容量制御が行えない(吐出容量が増加しない)という不都合が知られている。
【0006】
そこで、上述の問題を解決するために、
図8に示されるような構成が公知となっている(特許文献1参照)。これは、吐出室101と制御圧室102とを接続する給気通路103上にこの給気通路の開度を調節する第1制御弁104を設け、また、制御圧室102と吸入室105とを接続する抽気通路106上に第2制御弁107を設けたもので、この第2制御弁107を、ハウジングに形成されたスプール収容凹部108と、このスプール収容凹部108内に移動可能に収容されたスプール109と、スプール収容凹部108のスプール109の背後に区画形成された背圧室110と、スプール109を弁形成体111から離間する方向に付勢する付勢バネ112とを有して構成し、給気通路103の第1制御弁104とこれより下流側に設けられた固定絞り113との間の中間領域Kを分岐通路114を介して背圧室110に接続するようにしたものである。
【0007】
このような構成によれば、吐出室101の圧力Pdと吸入室105の圧力Psとの差が小さい起動時においては、第1制御弁104は給気通路28を全閉状態とし、吐出室101と制御圧室102との連通状態を遮断する。すると、給気通路103の第1制御弁104よりも下流側の中間領域Kの圧力Pk、即ち背圧室110の圧力は制御圧室102の圧力Pcとほぼ等しい状態に維持されるので、スプール109は、付勢バネ112のバネ力によって抽気通路106を全開状態とする。
【0008】
その結果、制御圧室102に液冷媒が溜まっていても、制御圧室102の圧力を開度が大きい抽気通路を介して吸入室105に逃がして早期に低下させることが可能となり(制御圧室102に溜まっていた液冷媒が全て気化して吸入室105に排出されるまでの時間が短くなり)、吐出容量制御が行えるまでの時間が長くなる不都合を回避することが可能となる。したがって、制御圧室102の圧力Pcは、第1制御弁104の全閉によって速やかに低下し、斜板の傾斜角が速やかに増大して吐出容量を増大させることが可能となる。
【0009】
その後、制御圧室102に溜まっていた液冷媒が全て気化して吸入室105に排出された後に、徐々に吐出室101の圧力Pdと吸入室105の圧力Psとの差が大きくなってくると、第1制御弁104の全閉状態が解除されて給気通路103が開き、中間領域Kの圧力(背圧室110の圧力)が制御圧室102の圧力Pcよりも高くなる。すると、スプール109は、付勢バネ112に抗して移動して弁形成体111に当接し、抽気通路106はスプール109の先端部に形成された連通溝109aによって大きく絞られた状態となる。したがって、抽気通路106を介して制御圧室102から吸入室105へ導出される冷媒量は大幅に減少され、制御圧室102の圧力Pcは上昇し、斜板の傾斜角が減少して吐出容量は小さくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
車両用空調装置においては、車両の急加速等の事情に対応して、一時的に圧縮機の動力を急激に低下させる必要が生じることがある(いわゆるカットオフ制御)。可変容量圧縮機を用いた冷凍サイクルの場合、このような要請に応じて、吐出室と制御圧室とを接続する給気通路上に設けた制御弁により、給気通路を開放させることによって、吐出室の高圧圧力を制御圧室に導き、圧縮機の吐出容量を最小とすることが知られている(例えば特許文献2)。上述した特許文献1に記載した圧縮機に、このような急加速制御を行う場合には、第1の制御弁104により吐出室101と制御圧室102の連通を開放することとにより、吐出室101の高圧冷媒を制御圧室102に導いて、圧縮機の吐出容量を最小にすることができる。このとき、給気通路103の第1制御弁104の下流側の中間領域の圧力Pkは制御圧室の圧力よりも高められている。この中間領域の圧力Pkはスプール収容凹部108の背圧室110にも導かれ、これによりスプール109が付勢バネ112のバネ力に抗して抽気通路106を閉鎖する方向に移動し、これにより御圧室の圧力をさらに高い値に保持しやすくなるようになっている。
【0012】
上述のカットオフ制御による最小吐出容量から再び最大吐出容量に移行する場合、第1の制御弁に通電して給気通路を閉鎖して吐出室101からの高圧圧力の供給を遮断することとなるが、第2制御弁の107のスプール収容凹部108のスプール109の背後に設けられた背圧室110の圧力は、第1制御弁の下流に設けられた固定絞り113を介して制御圧室102に開放することでしか低下させることができず、さらには制御圧室102の圧力が急加速制御に対応して高い値となっていることから、背圧室110の圧力の低下に時間がかかり、第2の制御弁の開放が遅れる(スプール109が開方向に移動しにくい)という不都合がある。このため、制御圧室から吸入室への圧力の開放が遅くなり、最大容量制御への移行が遅れるという不都合がある。
【0013】
この点を解消するために、付勢バネ112のバネ力を強くすることが考えられるが、付勢バネ112のバネ力を強くすると、中間ストローク状態で圧縮機を運転しようとした場合に、第2制御弁が閉じにくくなり、制御圧室から吸入室への漏れ量が多くなるため、COPが悪化するという不都合がある。
【0014】
本発明は、係る事情に鑑みてなされたものであり、簡易な構成によって圧縮機の起動性能を高めると共に、中間ストローク時の内部循環冷媒を少なくすることが可能な可変容量型圧縮機を提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を達成するために、本発明に係る可変容量型圧縮機は、作動流体を圧縮する圧縮室と、この圧縮室で圧縮される作動流体を収容する吸入室と、前記圧縮室で圧縮され吐出された作動流体を収容する吐出室と、駆動軸が貫通されると共にこの駆動軸の回転に伴って回転する斜板を収容する制御圧室と、前記吐出室と前記制御圧室とを連通する給気通路と、前記制御圧室と前記吸入室とを連通する抽気通路と、前記給気通路の開度を調節することが可能な第1の弁部を備える第1の制御弁と、前記抽気通路上に設けられた第2の制御弁とを備え、前記第2の制御弁は、前記抽気通路上に形成されたスプール収容凹部と、このスプール収容凹部内に前記抽気通路を開閉するように移動可能に収容されたスプールと、前記スプール収容凹部の前記スプールの背後に区画形成された背圧室と、前記スプールを前記抽気通路の開方向に付勢する付勢手段とを備え、前記給気通路の前記第1の制御弁の前記第1の弁部より下流側を前記背圧室に接続して前記背圧室の圧力に基づき前記抽気通路を開閉する可変容量型圧縮機であって、前記第1の制御弁は、前記給気通路の前記第1の弁部の下流から分岐して前記吸入室と連通する低圧側通路と、この低圧側通路の開度を調整することが可能な第2の弁部と、をさらに備え、前記第1の弁部と前記第2の弁部とは、一方が対応する通路を閉状態とする場合に他方が対応する通路を開状態とする連動関係にあり(前記第1の弁部により前記
給気通路が閉状態となる場合に前記第2の弁部により前記低圧側通路が開状態となり、また、前記第2の弁部により前記低圧側通路が閉状態となる場合に前記第1の弁部により前記
給気通路が開状態となる関係にあり)、前記背圧室は、前記第1の制御弁の第1の弁部または第2の弁部を介して吐出室または吸入室に選択的に接続されることを特徴としている。
【0016】
このような構成において、圧縮機が長時間停止して、冷凍サイクル内の圧力が平衡している状態から圧縮機を起動させる場合(コールドスタート時)、背圧室を第1の制御弁の第2の弁部を介して吸入室に接続することで、背圧室の圧力を吸入室の圧力とほぼ同じ圧力まで低下させることができる。これにより、背圧室の圧力に基づいて抽気通路を開放する第2の制御は、抽気通路を確実に開放し、制御圧室の気化冷媒は、抽気通路を介して吸入室へ排出される。
これにより、制御圧室の冷媒を吸入室に速やかに逃がすことが可能となり、制御圧室に溜まっていた液冷媒が全て気化して吸入室に排出されるまでの時間を短縮することが可能となる。
【0017】
制御圧室の液冷媒が全て排出され、ピストンストローク(吐出容量)が大きくなった後、車両の急加速運転等の事情により、圧縮機の吐出容量を急激に低減させて冷凍サイクルを停止させる場合には、第1の制御弁の第1の弁部により給気通路を開放することにより、吐出室の高圧ガスを制御圧室に導き、ピストンストロークを急劇に減少させるとともに、吐出室の高圧ガスは、第2の制御弁の背圧室に導かれ、抽気通路は第2の制御弁により閉鎖される。これにより、制御圧室に導入された冷媒の吸入室への流出を低減させて、最小限の冷媒ガスの導入だけで圧縮機の吐出容量を低減させることが可能となる。すなわち、背圧室を第1の制御弁の第1の弁部を介して吐出室に接続することにより、抽気通路を閉鎖し、制御圧室から吸入室への冷媒の流出を低減させることが可能となる。
【0018】
その後、圧縮機の吐出容量を再び増大させる場合に、背圧室を第1の制御弁の第2の弁部によって吸入室に接続することで、背圧室に停留していた高圧ガスを第1の制御弁を介して吸入室に排出することができるので、スプール収容凹部に収容されているスプールは、付勢手段により開方向に移動し、抽気通路は開状態となる。
これにより、制御圧室の圧力を抽気通路を介して吸入室へ速やかに逃がすことが可能になり、再起動時の吐出容量を速やかに増大させることが可能となる。
【0019】
このように、スプール収容凹部の背圧室を第1の制御弁によって吐出室または吸入室に選択的に接続することで抽気通路を開閉制御することが可能となるので、圧縮機の起動性能を高めると共に、吐出容量低減時の内部循環冷媒を少なくすることが可能となる。
【0020】
なお、上述の構成において、給気通路の背圧室が接続される箇所より下流側に、固定絞りを設けるようにしてもよい。
このような固定絞りを設けることで、第1の制御弁により給気通路が開状態である場合に、固定絞りの上流側の圧力(背圧室の圧力)を高めて、スプールにより抽気通路を着実に閉じることが可能となる。
【0021】
また、抽気通路には、第2の制御弁をバイパスして吸入室に接続するバイパス通路を接続し、このバイパス通路に固定絞りを設けるようにしてもよい。
このような構成とすることで、第1の制御弁により給気通路を開いて抽気通路が閉じた状態となっても、バイパス通路の固定絞りにより、制御圧室内に最低量の冷媒ガスの循環を確保することが可能となる。また、背圧室を第1の制御弁を介して吸入室に連通させる場合には、第2の制御弁を介した抽気の他に、このバイパス通路の固定絞りを介しても制御圧室の冷媒を吸入室に逃がすことができ、制御圧室の圧力を速やかに低下することが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
以上述べたように、本発明によれば、吐出室と制御圧室とを連通する給気通路の開度を第1の制御弁によって調節し、また、制御圧室と吸入室とを連通する抽気通路の開度を第2の制御弁によって調節することで制御圧室の圧力を調節する可変容量型圧縮機において、第2の制御弁を、抽気通路上に形成されたスプール収容凹部と、このスプール収容凹部内に抽気通路を開閉するように移動可能に収容されたスプールと、スプール収容凹部のスプールの背後に区画形成された背圧室と、スプールを抽気通路の開方向に付勢する付勢手段とを備え、給気通路の第1の制御弁より下流側を背圧室に接続した可変容量型圧縮機において、スプール収容凹部の背圧室を、第1の制御弁によって吐出室または吸入室に選択的に接続するようにしたので、起動時に背圧室を第1の制御弁を介して吸入室に接続することで、背圧室の圧力を吸入室に速やかに排出することが可能となり、圧縮機の起動性能を高めることが可能となる。
【0023】
また、第1の制御弁の第1の弁部により給気通路を開状態とするストローク低減時には、背圧室を第1の制御弁を介して吐出室に接続することで、抽気通路を閉状態とすることが可能となるので、制御圧室から吸入室への冷媒の流れを遮断することができ、ストローク低減時の内部循環冷媒を少なくすることが可能となる。
【0024】
なお、上述した構成において、給気通路の背圧室が接続される箇所より下流側に、固定絞りをさらに設けるようにすれば、第1の制御弁により給気通路が開状態である場合に、固定絞りの上流側の圧力(背圧室の圧力)を確実に高めて、スプールにより抽気通路を着実に閉塞することが可能となる。
【0025】
また、抽気通路には、第2の制御弁をバイパスして吸入室に接続するバイパス通路を接続し、このバイパス通路に固定絞りを設ける構成を更に付加することで、第1の制御弁により給気通路を開いて抽気通路が閉じられた状態となった場合でも、バイパス通路の固定絞りにより、制御圧室内に最低量の冷媒ガスの循環を確保することができ、また、第1の制御弁により給気通路の該第1の制御弁より下流側を吸入室に連通させる場合には、第2の制御弁を介した抽気の他に、このバイパス通路の固定絞りを介しても制御圧室の冷媒を吸入室に逃がすことができるので、制御圧室の圧力を速やかに低下させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、この発明の実施形態を添付図面を参照しながら説明する。
【0028】
図1乃至
図3において、本発明に係る可変容量型圧縮機が示されている。この可変容量型圧縮機は、シリンダブロック1と、このシリンダブロック1のリア側(図中、右側)にバルブプレート2を介して組み付けられたリアヘッド3と、シリンダブロック1のフロント側(図中、左側)を閉塞するように組み付けられて制御圧室4を画成するフロントヘッド5とを有して構成されているもので、これらフロントヘッド5、シリンダブロック1、バルブプレート2、及び、リアヘッド3は、締結ボルト6により軸方向に締結され、圧縮機のハウジングを構成している。
【0029】
フロントヘッド5とシリンダブロック1とによって画設される制御圧室4には、前端がフロントヘッド5から突出する駆動軸7が収容されている。この駆動軸7のフロントヘッド5から突出した部分には、図示しない駆動プーリが設けられ、駆動プーリに与えられる回転動力を電磁クラッチを介して駆動軸7に伝達するようにしている。
【0030】
また、この駆動軸7の前端側は、フロントヘッド5との間に設けられたシール部材11を介してフロントヘッド5との間が気密よく封じられると共にラジアル軸受12にて回転自在に支持されており、駆動軸7の後端側は、シリンダブロック1の略中央に形成された収容孔13に収容されるラジアル軸受14を介して回転自在に支持されている。ここで、ラジアル軸受け13,14は、転がり軸受けであっても、プレーンベアリングであってもよい。
【0031】
シリンダブロック1には、ラジアル軸受14が収容される収容孔13と、この収容孔13を中心とする円周上に等間隔に配された複数のシリンダボア15とが形成されており、それぞれのシリンダボア15には、片頭ピストン16が往復摺動可能に挿入されている。
【0032】
前記駆動軸7には、制御圧室4において、該駆動軸7と一体に回転するスラストフランジ17が固装されている。このスラストフランジ17は、フロントヘッド5の内面に対してスラスト軸受18を介して回転自在に支持されており、このスラストフランジ17には、リンク部材19を介して斜板20が連結されている。
【0033】
斜板20は、駆動軸7上に摺動自在に設けられたヒンジボール21を中心に傾動可能に設けられているもので、リンク部材19を介してスラストフランジ17の回転に同期して一体に回転するようになっている。そして、斜板20には、その周縁部分に一対のシュー22を介して片頭ピストン16の係合部16aが係留されている。
【0034】
したがって、駆動軸7が回転すると、これに伴って斜板20が回転し、この斜板20の回転運動がシュー22を介して片頭ピストン16の往復直線運動に変換され、シリンダボア15内において片頭ピストン16とバルブプレート2との間に形成された圧縮室23の容積が変更されるようになっている。
【0035】
前記バルブプレート2には、それぞれのシリンダボア15に対応して吸入孔31と吐出孔32とが形成され、また、リアヘッド3には、圧縮室23で圧縮される作動流体を収容する吸入室33と、圧縮室23で圧縮吐出された作動流体を収容する吐出室34とが画設されている。この例において、吸入室33は、リアヘッド3の中央寄りの部分に形成され、蒸発器の出口側に通じる図示しない吸入口に連通すると共に図示しない吸入弁によって開閉される前記吸入孔31を介して圧縮室23に連通可能となっている。また、吐出室34は、吸入室33の周囲に形成されており、図示しない吐出弁によって開閉される前記吐出孔32を介して圧縮室23に連通可能になっていると共に、バルブプレート2及びシリンダブロック1に形成された通路2a,1aを介してシリンダブロック1の周壁部に形成された吐出空間35に連通している。この吐出空間35は、シリンダブロック1とこれに取り付けられたカバー36とによって画成され、カバー36には、凝縮器の入口側に通じる吐出口37が形成されると共に、凝縮器から吐出空間35への冷媒の逆流を防ぐ逆止弁38が設けられている。
【0036】
この圧縮機の吐出容量は、ピストン16のストロークによって決定され、このストロークは、駆動軸7と垂直な面に対する斜板20の傾斜角度によって決定される。斜板20の傾斜角度は、それぞれのピストン16に作用する圧縮室23の圧力(シリンダボア内の圧力)と制御圧室4の圧力との差に由来するモーメント、斜板やピストンの慣性力に由来するモーメント、及び、ヒンジボール21を付勢するデストロークスプリング24の付勢力に由来するモーメントの総和がゼロとなる角度にてバランスする。これによりピストンストロークが決定されて吐出容量が決定されるようになっている。
【0037】
すなわち、制御圧室4の圧力が低くなれば、圧縮室23と制御圧室4との差圧が大きくなるので、斜板20の傾斜角度を大きくする方向にモーメントが働く。したがって、
図2に示されるように、斜板20の傾斜角度が大きくなると、デストロークスプリング24からの付勢力に抗してヒンジボール21がスラストフランジ17側へ移動し、ピストン16のストローク量が大きくなって吐出容量が大きくなる。
【0038】
これに対して、制御圧室4の圧力が高くなって、圧縮室23と制御圧室4との差圧が小さくなると、斜板20の傾斜角度を小さくする方向にモーメントが働く。したがって、
図3に示されるように、斜板20の傾斜角度が小さくなると、ヒンジボール21がスラストフランジ17から遠ざかる方向に移動し、ピストン16のストローク量が小さくなって吐出容量が小さくなる。
【0039】
そして、本構成例においては、シリンダブロック1に形成された通路1b、バルブプレート2に形成された固定絞り(オリフィス孔)2b、及びリアヘッド3に亘って形成された通路3bによって吐出室34と制御圧室4とを連通する給気通路40が形成されている。
【0040】
また、シリンダブロック1に形成された収容孔13に収容されるラジアル軸受14の隙間や駆動軸7に形成されたオイル分離通路7c、収容孔13に続いて形成されたシリンダブロック1の連通孔1c、この連通孔1cに連通されるバルブプレート2に形成されたオリフィス孔2cを介して制御圧室4と吸入室33とを連通する第2の抽気通路41と、シリンダブロック1及びバルブプレート2に形成された通路1d、2dによって制御圧室と吸入室とを連通する第1の抽気通路42が形成されている。
【0041】
ここで、第2の抽気通路41の一部を構成する駆動軸7に形成されたオイル分離通路7cは、駆動軸7の軸心上に後端から前端に向かって先端近傍まで穿設される軸方向通孔7c−1と、この軸方向通孔7c−1に連通し、駆動軸7の径方向に穿設されて、制御圧室4に開口する径方向通孔7c−2とにより構成され、駆動軸7の回転により生ずる遠心力によって径方向通孔7c−2から流入する作動流体からオイルを分離する機能を有する。
【0042】
給気通路40上には、第1の制御弁50が設けられ、この第1の制御弁50より吐出室34から給気通路40を介して制御圧室4へ流入する冷媒ガス量を調節するようにしている。また、第1の抽気通路42上には、第2の制御弁45が設けられ、この第2の制御弁45により制御圧室4から第1の抽気通路42を介して吸入室33に流入する冷媒ガス量を調節するようにしている。
【0043】
ここで、第2の制御弁45から説明すると、第2の制御弁45は、
図4にも示されるように、リアヘッド3に形成された吸入室内壁のバルブプレート2に形成された通孔2dと対峙する箇所にスプール収容凹部46が形成され、このスプール収容凹部46内に第1の抽気通路42を開閉するように(バルブプレート2に対して遠近する方向に)移動可能に収容された有底円筒状のスプール47と、スプール収容凹部46のスプール47の背後に区画形成された背圧室48と、スプール47を第1の抽気通路42の開方向(バルブプレート2から離反する方向)に付勢する付勢手段(圧縮ばね49)とを備えて構成されている。
【0044】
したがって、スプール47の位置は、スプール47に作用する力のバランスにより決定され、背圧室48の圧力に基づく力が、第1の抽気通路42を介して作用する制御圧室4の圧力に基づく力と付勢手段(圧縮ばね49)による付勢力との和よりも大きくなった場合には、スプール47は付勢手段(圧縮ばね49)の付勢力に抗して図中左方へ移動し、第1の抽気通路42を閉とする。また、背圧室48の圧力に基づく力が、第1の抽気通路42を介して作用する制御圧室4の圧力に基づく力と付勢手段(圧縮ばね49)による付勢力との和よりも小さくなった場合には、スプール47は、付勢手段により図中右方へ移動し、第1の抽気通路42を開とする。
【0045】
そして、第2の制御弁45の背圧室48は、給気通路40の第1の制御弁50より下流側に分岐通路40aを介して接続されており、したがって、第2の制御弁45の背圧室48は、第1の制御弁50によって導入圧力が調整可能となっている。
【0046】
第1の制御弁50は、リアヘッド3に形成された装着孔39に挿着され、吸入圧力が目標値となるよう給気通路40の開度を調節して制御圧室4の圧力を制御すると共に、通電を停止することで給気通路40を全開状態とし、制御圧室4の圧力を高めて吐出容量を最小とし、また、起動初期においては、通電量を最大(デューティー比を100%)とすることで給気通路40を全閉状態とし、制御圧室4への圧力供給を停止するなどの動作を行う。
【0047】
この第1の制御弁50は、
図4にもされるように、流路切換部51と駆動部52とから構成されている。
流路切換部51は、筒状の頭部ケース53と、この頭部ケース53内に中心軸上で進退可能に収容された作動棒54と、頭部ケース53の先端部に組み付けられた弁受け体55とを有して構成されている。
【0048】
作動棒54は、先端部に設けられた球体状の第1の弁部54aと、基端部に設けられた径を拡大した円柱状の第2の弁部54bと、これら第1の弁部54aと第2の弁部54bとを連結する中継ロッド54cとを備え、中継ロッドの第1の弁部と連接する部分には、径を小さくした細径部54dが形成されている。
【0049】
中継ロッド54cは、第2の弁部54bよりも径が小さく形成され、頭部ケース53の中程で内周面から内側に突設された弁受け部56を挿通している。弁受け部56は、その内周面が中継ロッド54cの基端部の径よりも大きく、また、第2の弁部54bの径よりも小さく形成されており、頭部ケース53内に、この弁受け部56を境にして、中継ロッド54cの周囲に圧力調整室57が形成され、また、第2の弁部54bの周囲に低圧室58が形成され、弁受け部56の内周面と中継ロッド54cとの間には、これら圧力調整室57と低圧室58とを連通する低圧側連通孔59が形成されている。
【0050】
また、頭部ケース53の先端部に組み付けられる弁受け体55は、先端が大きく開放された筒状に形成されているもので、基端部に内周面から内側に突設された弁受け部60が形成され、それより先端側に弁収容空間61が形成されている。前記作動棒54の細径部54dは、この弁受け部60に挿通され、また作動棒54の第1の弁部54aは、弁収容空間61に収容されている。弁受け部60は、その内周面が作動棒54の細径部54dの径よりも大きく、また、第1の弁部54aの径よりも小さく形成され、弁受け部60の内周面と細径部54dとの間には、これら弁収容空間61と圧力調整室57とを連通する高圧側連通孔62が形成されている。
【0051】
また、弁受け体55の弁収容空間61には、開放端部に形成されたばね受け63と第1の弁部54aとの間に圧縮ばね64が弾装され、この圧縮ばね64により、第1の弁部54aは、高圧側連通孔62を閉鎖する方向に常時付勢されている。
【0052】
したがって、作動棒54が圧縮バネの付勢力に抗して図中上方へ移動すると、第1の弁部54aが弁受け部60から離反して高圧側連通孔62を開放し、また、第2の弁部54bが弁受け部56に当接して低圧側連通孔59を閉鎖するようになっている。また、作動棒54が圧縮バネ64の付勢力によって図中下方へ移動すると、第1の弁部54aが弁受け部60に当接して高圧側連通孔62を閉鎖し、また、第2の弁部54bが弁受け部56から離反して低圧側連通孔59を開放するようになっている。
【0053】
そして、前記圧力調整室57は、前記頭部ケース53の側面に開口する制御圧室連通孔65、及び前記給気通路40を介して制御圧室4に連通し、前記低圧室58は、前記頭部ケース53の側面に開口する低圧室連通孔66、及び、リアヘッド3に形成された低圧通路3cを介して吸入室33に連通し、前記弁受け体55の弁収容空間61は、リアヘッド3に形成された通路3bを介して吐出室34に連通している。
【0054】
したがって、第1の制御弁50の内部には、弁収容空間61、高圧側連通孔62、圧力調整室57、及び制御圧室連通孔65により、
給気通路40の第1の制御弁50の上流側と下流側とを連通する高圧側通路43が構成され、この高圧側通路43の開度(給気通路40の開度)が第1の弁部54aにより調節される。また、低圧側連通孔59、低圧室58、及び低圧室連通孔66により、給気通路40の第1の弁部54aの下流から分岐して吸入室33に連通する低圧通路3cと接続する低圧側通路44が構成され、この低圧側通路44の開度が第2の弁部54cにより調整される。
【0055】
駆動部52は、流路切換部51の頭部ケース53に対してシール用のOリングを介して気密に組み付けられる中間ケース67とこの中間ケース67に収容される励磁コイル68と、この励磁コイル68の中心軸上を進退可能に収容された磁性体である鉄片69と、中間ケース67の頭部ケース53とは反対側の端部を塞ぐように設けられた底部ケース71とを有して構成されている。
【0056】
頭部ケース53と中間ケース67との間には、薄膜よりなるダイアフラム70が挟持固定され、このダイアフラム70によって流路切換部51と駆動部52との間が仕切られ、低圧室58の圧力を受けるようになっている。
【0057】
そして、ダイアフラム70の低圧室58に臨む端面の中央には、前記作動棒54の基端が気密に固着されている。また、ダイアフラム70の駆動部側の端面には、鉄片69がダイアフラム70を介して作動棒54に連結されている。
【0058】
底部ケース71は、鉄製のものであり、中間ケース67の頭部ケース53とは反対側の端部を塞ぐフランジ部72と、このフランジ部72から突設された鉄心部73と、この鉄心部73とは反対側にフランジ部72から延設されたスプリング収容部74とを備え、鉄心部73を励磁コイル68内に挿入して配置し、鉄片69に対して軸方向で所定の間隔を隔てて固定されている。
【0059】
スプリング収容部74には、鉄片69と一体をなすロッド69aが鉄心部73を軸方向に貫通して突出し、このロッド69aの端部に固定されたバネ受け75と、軸方向に螺進退可能に開放端に取り付けられた調整ナット76と、バネ受け75と調整ナット76との間に弾装された圧縮バネ77とが収容され、圧縮バネ77によって鉄片69をロッド69aを介して鉄心部73から離反する方向に付勢している。そして、調整ナット76の進退量を調節することにより、圧縮バネ77の付勢力を任意に調整できるようにしている。
【0060】
したがって、このような構成によれば、励磁コイル68への通電により、鉄片69が底部ケース71の鉄心部73に吸着されるので、これと連結する作動棒54は引き寄せられ、第1の弁部54aが高圧側連通孔62を閉状態にすると共に第2の弁部54bが低圧側連通孔59を開状態とし、制御圧室連通孔65と低圧室連通孔66とが低圧側連通孔59を介して連通し、制御圧室4と吸入室33とが第1の制御弁50の低圧側連通孔59を介して連通する。また、励磁コイル68への通電がない場合には、鉄片69を吸着する電磁力は生じないので、圧縮バネ77により鉄片69が底部ケース71の鉄心部73から離反し、これに伴って作動棒54が圧縮バネ64に抗して押し上げられ、第1の弁部54aが高圧側連通孔62を開状態にすると共に第2の弁部54bが低圧側連通孔59を閉状態とし、制御圧室連通孔65とバネ受け体55の弁収容空間61とが高圧側連通孔62を介して連通し、制御圧室4と吐出室34とが第1の制御弁50の高圧側連通孔62を介して連通する。
すなわち、第1の制御弁の第1の弁部と第2の弁部とは、一方が対応する通路を閉状態とする場合に他方が対応する通路を開状態とする連動関係にあり、よって、第1の制御弁50は、第2の制御弁45の背圧室48を吐出室34に連通させる場合と吸入室33に連通させる場合とを切り替える三方弁として機能している。
【0061】
以上の構成において、圧縮機が長時間停止している状態においては、
図5(a)に示されるように、吐出室34の圧力Pd、制御圧室4の圧力Pc、及び吸入室33の圧力Psは、ほぼ等しくなっており、また、第1の制御弁50は、通電が停止していることから、高圧側連通孔62(高圧側通路43)は全開状態、低圧側連通孔59(低圧側通路44)は全閉状態となっており、第2の制御弁45の背圧室48は、第1の制御弁50を介して吐出室34に接続されている。
したがって、スプール収容凹部に収容されているスプール47は、その前後に作用する圧力が均衡しているため、付勢手段(圧縮ばね49)により付勢されて第1の抽気通路42は開状態となっている。
【0062】
この状態から圧縮機を稼働させると共に第1の制御弁50に通電すると、
図5(b)に示されるように、高圧側連通孔62(高圧側通路43)は第1の弁部54aにより閉状態、低圧側連通孔59(低圧側通路44)は第2の弁部54bにより開状態となるので、第2の制御弁45の背圧室48は、第1の制御弁50の低圧側連通孔59(低圧側通路44)を介して吸入室33に接続される。したがって、背圧室48は第1の制御弁50を介して吸入室33に連通しているので、背圧室48の圧力を吸入室33とほぼ同じ圧力まで低下させることができ、第1の抽気通路42の開状態は維持される。このため、制御圧室4で発生する気化冷媒は、第1及び第2の抽気通路42,41を介して吸入室33へ排出される。
これにより、制御圧室4の冷媒を吸入室33に速やかに逃がすことが可能となり、制御圧室4に溜まっていた液冷媒が全て気化して吸入室33に排出されるまでの時間を短縮することが可能となる。
【0063】
制御圧室4内の液冷媒が全て排出され、制御圧室4の圧力が低下してくると、圧縮機の吐出容量が大きくなり、吐出室34の圧力が上昇してくるが、第1の制御弁50の第1の弁部54aが高圧側連通孔62を開放しない限り、制御圧室4や背圧室48には給気通路40を介して吐出室34から高圧ガスは供給されないので、第1の抽気通路42は開状態が維持され、制御圧室4の冷媒ガスは、第2の抽気通路41のみならず第1の抽気通路42を介して吸入室33へ放出され、ピストンストローク(吐出量)は最大に向かう。
【0064】
その後、熱負荷に見合った中間吐出容量とする場合には、
図6(a)に示されるように、励磁コイルへの通電量およびダイアフラム70が受圧する低圧室の圧力に応じて、第1の制御弁50の高圧側連通孔62(高圧側通路43)を開状態とし、低圧側連通孔59(低圧側通路44)を閉状態とする。すると、吐出室34の高圧ガスが給気通路40を介して制御圧室4に供給されると共に背圧室48にも供給され、背圧室48に供給された高圧ガスによってスプール47に作用する力が制御圧室4の圧力に基づく力と付勢手段(圧縮ばね49)の付勢力との和を上回ると、スプール47が付勢手段(圧縮ばね49)の付勢力に抗して移動し、第1の抽気通路42を閉状態にする。
したがって、第1の抽気通路42が塞がれた状態で給気通路40を介して高圧ガスが制御圧室4に供給されるので、制御圧室4の圧力は上昇し、ピストンストローク(吐出量)は小さくなる。
【0065】
そして、車両の急加速運転等の事情により、圧縮機の吐出容量を最小にして圧縮機の動力を低減させる場合には、第1の制御弁50への通電を解除することにより、第1の制御弁の第1の弁部が高圧側通路62(高圧側通路43)を開状態にする。これにより、背圧室48は、第1の制御弁50を介して吐出室34に連通した状態に維持されるので、第1の抽気通路42の閉状態は維持される(
図6(a)参照)。これにより、制御圧室4に導入された冷媒が吸入室33に漏れることはなくなり、最小限の冷媒ガスの導入だけで圧縮機の吐出容量を低減させることが可能となる。
【0066】
その後、圧縮機の吐出容量を再び増加(再稼働)させる場合には、第1の制御弁50に通電して、
図6(b)に示されるように、高圧側連通孔62(高圧側通路43)を閉状態、低圧側連通孔59(低圧側通路44)を開状態として、第2の制御弁45の背圧室48を第1の制御弁50を介して吸入室33に接続する。
これにより、背圧室48は吸入室に連通するので、背圧室48に停留している高圧ガスを第1の制御弁50を介して吸入室33に排出することができるので、スプール47は、付勢手段(圧縮ばね49)の付勢力により開方向に移動し、第1の抽気通路42を開状態とする。
したがって、制御圧室4の圧力を第2の抽気通路41と第1の抽気通路42とを介して吸入室33へ速やかに逃がすことが可能になり、再稼働時の吐出容量を速やかに増大させることが可能となる。
【0067】
このように、第2の制御弁45の背圧室48を第1の制御弁50を介して吐出室34または吸入室33に選択的に連通させることで第1の抽気通路42を開閉制御することが可能となるので、圧縮機の起動性能(コールドスタート時のみならず、再稼働時の起動性)を高めると共に、中間ストローク時の内部循環冷媒を少なくすることが可能となる。
【0068】
なお、上述の構成においては、給気通路40の背圧室48が接続される箇所より下流側に、固定絞り2bが設けられているので、第1の抽気通路42が開状態である場合に、背圧室48を第1の制御弁50を介して吐出室34に接続した場合には、固定絞りの上流側の圧力(背圧室の圧力)を速やかに高めて、スプール47により第1の抽気通路42を着実に閉じることが可能となる。
【0069】
また、上述した構成に対して、
図7に示されるように、第1の抽気通路42に、第2の制御弁45をバイパスして吸入室33に接続するバイパス通路42aを接続し、このバイパス通路42aに固定絞り(オリフィス孔)2eを設けるようにしてもよい。
このような構成とすることで、第1の制御弁50により給気通路40を開いて第1の抽気通路42が閉じられた状態となっても、バイパス通路42aの固定絞り2eにより、第2の抽気通路41が無い場合でも、制御圧室内に最低量の冷媒ガスの循環を確保することが可能となる。また、第1の制御弁50により背圧室48を吸入室33に連通させる場合には、第2の抽気通路41を介して抽気と第1の抽気通路42の第2の制御弁45を介した抽気の他に、このバイパス通路42aの固定絞り2eを介しても制御圧室4の冷媒を吸入室33に逃がすことができ、制御圧室4の圧力を速やかに低下することが可能となる。
【0070】
なお、上述の構成例においては、第2の抽気通路41に加えて第1の抽気通路42を設けた例を示したが、第2の抽気通路41を設けずに上述した第2の制御弁45で開閉される第1の抽気通路42のみを設けるようにしてもよい。この場合、第1の抽気通路42を開閉する第2の制御弁45に僅かな冷媒の流れを許容する固定絞りを設けてもよい。