(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6804445
(24)【登録日】2020年12月4日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】吸光度測定装置への蛍光検出機能の統合
(51)【国際特許分類】
G01N 21/59 20060101AFI20201214BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20201214BHJP
G01N 21/05 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
G01N21/59 Z
G01N21/64 Z
G01N21/05
【請求項の数】18
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-527888(P2017-527888)
(86)(22)【出願日】2015年11月24日
(65)【公表番号】特表2017-536550(P2017-536550A)
(43)【公表日】2017年12月7日
(86)【国際出願番号】EP2015077567
(87)【国際公開番号】WO2016083416
(87)【国際公開日】20160602
【審査請求日】2018年11月8日
(31)【優先権主張番号】1451419-4
(32)【優先日】2014年11月25日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】597064713
【氏名又は名称】サイティバ・スウェーデン・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 研二
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(74)【代理人】
【識別番号】100115462
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 猛
(74)【代理人】
【識別番号】100151286
【弁理士】
【氏名又は名称】澤木 亮一
(72)【発明者】
【氏名】アーリング,ハノ
【審査官】
横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−033388(JP,A)
【文献】
中国実用新案第201819876(CN,U)
【文献】
国際公開第2014/146147(WO,A2)
【文献】
国際公開第2013/178770(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0264803(US,A1)
【文献】
特表2009−517641(JP,A)
【文献】
特開平09−304272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を収容するための単一のフローセル(2)と、
第1の光源(3)と、
前記フローセル(2)に収容された試料を照射するために前記第1の光源(3)からの光の前記フローセル(2)への伝播を可能にする第1の光路(5)と、
前記照射光のうちの前記フローセル(2)内の前記試料によって吸収されなかった部分について、前記照射光の該部分の振幅を割り出すように構成された試料検出器(9)への伝播を可能にする第2の光路(7)と
を備える、試料の蛍光および吸光度を測定するための装置(1)であって、
第2の光源(4)と、
前記試料をさらに照射するために前記第2の光源(4)からの光の前記フローセル(2)への伝播を可能にする第3の光路(6)と
をさらに備え、
前記試料検出器(9)は、前記さらなる照射の結果としての前記試料の蛍光からもたらされる光が前記第2の光路(7)によって伝播されてさらに検出するように構成されており、
第1のフィルタ(8)が、前記第2の光路(7)と前記試料検出器(9)との間に配置され、前記第1のフィルタ(8)は、前記第2の光源(4)によって発せられる波長の光を遮るように構成されたバンドパスフィルタ(17)であり、
前記第1の光路(5)は、前記第3の光路(6)でもあり、吸光度の測定のための前記第1の光源(3)からの光および蛍光の測定のための前記第2の光源(4)からの光が、該同じ光路を通って前記フローセル(2)へと伝えられ、
前記照射光のうちの前記フローセル(2)内の前記試料によって吸収されなかった部分及び前記試料の蛍光からもたらされる光が同じ光路(7)を通って前記試料検出器(9)によって検出され、
前記光路は、光導体の形態である装置(1)。
【請求項2】
前記第1の光源(3)へと接続され、光を受け取って第1の部分(21)および第2の部分(22)へと分割するビームスプリッタ(14)であって、前記第1の光路(5)は、前記第2の部分(22)を受け取るように構成されている、ビームスプリッタ(14)と、
光の前記第1の部分(21)を受け取り、該第1の部分の電磁放射を検出するように構成された参照用検出器(15)と、
前記参照用検出器(15)からの第1の信号(31)および前記試料検出器(9)からの第2の信号(32)を受け取り、該第1および第2の信号(31、32)にもとづいて吸光度を割り出すように構成された処理ユニット(16)と
をさらに備える、請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記試料検出器(9)は、少なくとも1つの光検出器である、請求項1または2に記載の装置(1)。
【請求項4】
前記第1の光源(3)は、UV発光ダイオードである、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項5】
前記第2の光源(4)は、UV発光ダイオードである、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項6】
前記第1の光源(3)および前記第2の光源(4)は、パルス状である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項7】
前記第3の光路(6)は、前記第2の光路(7)に対して或る角度に配置されている、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項8】
前記角度は、30°〜150°である、請求項7に記載の装置(1)。
【請求項9】
前記第2の光路(7)は、光が前記第1の入口から出ることを防止するシャッタ要素(10)を備える、請求項1乃至4および6乃至7のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項10】
前記第3の光路(6)は、前記フローセル(2)から前記試料検出器(9)へと光を伝えるように構成される、請求項9に記載の装置(1)。
【請求項11】
前記第2の光源(4)および前記第1のフィルタ(8)は、当該装置のユーザによる交換が可能であるように構成されている、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項12】
試料を収容するための単一のフローセル(2)を用意するステップと、
前記フローセル(2)に収容された試料を照射するために第1の光源(3)から前記フローセル(2)へと光を第1の光路(5)を介して伝えるステップと、
電磁放射を定量化し、前記フローセル(2)内の前記試料の吸光度を割り出すための試料値を得るために、前記フローセル(2)から試料検出器(9)へと光を第2の光路(7)を介して伝えるステップと
を含んでいる試料内の物質の吸光度および蛍光を測定するための方法であって、
前記フローセル(2)に収容された前記試料を照射するために第2の光源(4)からの光を第3の光路(6)を介して前記フローセル(2)へと伝えるステップと、
前記フローセル(2)から前記試料検出器(9)へと光を前記第2の光路(7)を介して伝えるステップと、
前記試料検出器(9)で蛍光信号を検出し、前記試料内の前記物質の蛍光を割り出すステップと
をさらに含み、
第1のフィルタ(8)が、前記第2の光路(7)と前記試料検出器(9)との間に配置され、前記第1のフィルタ(8)は、前記第2の光源(4)によって発せられる波長の光を遮るように構成されたバンドパスフィルタ(17)であり、
前記第1の光路(5)は、前記第3の光路(6)でもあり、吸光度の測定のための前記第1の光源(3)からの光および蛍光の測定のための前記第2の光源(4)からの光が、該同じ光路を通って前記フローセル(2)へと伝えられ、
前記照射光のうちの前記フローセル(2)内の前記試料によって吸収されなかった部分及び前記試料の蛍光からもたらされる光が同じ光路(7)を通って前記試料検出器(9)によって検出され、
前記光路は、光導体の形態である方法。
【請求項13】
前記第1の光源(3)からの光をビームスプリッタ(14)に伝え、該光の第1の部分(21)を、該光の第1の部分(21)の電磁放射を定量化して参照値を得る参照用検出器(15)へと向けるステップと、
前記試料値および前記参照値から吸光度を割り出すステップと
をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1および第2の光源をパルス状にするステップ
をさらに含む請求項12又は13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の光源(4)から前記フローセル(2)へと第3の光路(6)を通って光を伝え、前記フローセル(2)から前記試料検出器(9)へと第2の光路(7)を通って光を伝えるステップ
をさらに含んでおり、
前記入口および出口は、互いに或る角度にある、請求項12乃至14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記角度は、30°〜150である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の光源(3)からの光の前記フローセル(2)への到達を防止するステップ をさらに含む、請求項12乃至13、15、および16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記第2の光源(4)を取り除き、第3の光源で置き換えるステップと、
前記第1のフィルタ(8)を取り除き、第2のフィルタで置き換えるステップと
をさらに含み、
前記第2のフィルタは、前記第3の光源によって発せられる波長の光の前記試料検出器(9)への到達を防止する、請求項12乃至17のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中の物質の吸光度および蛍光を検出するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
試料の種々の特性の正確な検出は、さまざまな技術分野における多数の応用を有する領域である。例えば、液体クロマトグラフィにおいて、試料中の化学元素の量を割り出すための蛍光の検出が、しばしば必要とされる。しかしながら、蛍光検出装置は、高い感度と波長選択能力とを組み合わせるがゆえに、高価でかさばることが多い。多くの場合、分光計が、例えば中国実用新案第2856989号明細書によって知られているように、種々の波長の蛍光信号を検出するために使用される。
【0003】
例えば、試料中に沈められるとともに、より低コストの光学分光計へと接続される光ファイバプローブの使用など、蛍光を測定するための他の方法も知られている。これにより、より費用効率の高い装置が実現されるが、感度がはるかに低い。
【0004】
したがって、蛍光を検出するための方法および装置であって、費用効率の高いやり方で製造することができるが、試料の特性の測定における高い感度および精度が依然として維持される方法および装置が、一般的に必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2014/088498号パンフレット
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、試料中の物質の蛍光および吸光度を測定するための費用効率の高い装置および方法を実現することにある。
【0007】
本明細書において、「光」は、可視および不可視の電磁放射を含むように意図されている。本明細書において、「蛍光」および類似の用語は、物質が発する(可視または不可視の)光(自然蛍光)、あるいは例えば物質に付着した蛍光染料などの物質に関連付けられた蛍光分子または他の要素が発する光(誘起蛍光)を含むように意図される。用語「物質」が、本明細書において使用されるとき、任意の化学物質を指すことを理解できるであろう。特に、有機化合物および無機化合物が含まれる。有機化合物の例として、これらに限られるわけではないが、タンパク質、ペプチド、炭水化物、脂質、核酸、タンパク質核酸、薬物候補、および生体異物が挙げられる。無機化合物の例として、硫酸第二鉄、塩化銅、硝酸ニッケル、などの金属塩が挙げられる。
【0008】
本発明の第1の態様において、試料検出器が試料中の物質の吸光度および蛍光を検出するように構成されている添付の独立請求項に記載の装置および方法が提供される。これにより、同じ装置を、吸光度および蛍光の両方の測定に使用することができ、費用効率の高い高感度の蛍光検出、ならびに試料の別の特性、すなわち吸光度を測定するように構成された装置へのこれらの機能の統合という両方の利点がもたらされる。これにより、蛍光の測定に使用される多くの構成要素は吸光度の測定にも必要であるため、著しい利点を達成することができる。
【0009】
本発明の一態様によれば、試料検出器は、少なくとも1つの光検出器である。これにより、装置を小型かつ高い費用効率に製作することができるとともに、依然としていくつかの異なる波長の光を検出することができる。
【0010】
本発明の一態様によれば、吸光度を測定するための第1の光源は、UV発光ダイオードである。これにより、帯域幅が狭く、低コストであり、かつ安定な構成要素という利点を達成することができ、電池または他の低電圧の電源による動作、ならびに構成要素の信頼できる使用が可能になる前の暖機時間の回避を含むいくつかの他の利点を有する。
【0011】
本発明の一態様によれば、蛍光を測定するための第2の光源は、UV発光ダイオードである。これにより、物質に蛍光分子を適用する必要なく、物質の固有蛍光を測定することができる。
【0012】
本発明の一態様によれば、第1の光源および第2の光源の少なくとも一方が、パルス状とされる。これにより、光源を一度に1つだけが光を発するように制御することができ、より高い感度で吸光度および蛍光を測定する機会がもたらされるとともに、光源のいずれかを完全にオフにしなくても参照値としてのバックグラウンド光を測定することができる。
【0013】
本発明の一態様によれば、第1のフィルタが第2の導体と試料検出器との間に配置され、この第1のフィルタは、第2の光源によって放射された波長の光を遮断するように構成される。これにより、試料検出器に到達し得る検出に無関係な光の量を少なくできるため、蛍光信号の検出を向上させることができる。
【0014】
本発明の一態様によれば、第1の導体は、第3の導体でもあり、したがって第1の光源および第2の光源からの光が、同じ導体を通ってセルへと伝えられる。これにより、より少ない部品で装置を構成することができ、コストをさらに最小限に抑えることができる。
【0015】
本発明の一態様によれば、第2の導体は、第3の導体に対して或る角度に配置される。これにより、出口を通って試料検出器へと伝わる第2の光源からの光の量が減少し、試料からの蛍光信号の検出が改善される。好ましくは、第2の導体を通って伝わる第2の光源からの光の量を最小にするために、前記角度は90°である。
【0016】
本発明の一態様によれば、第1の入口は、光がこの第1の入口から出ることを防止するためのシャッタ要素を備える。これにより、光源がパルス状ではない場合に、蛍光測定の最中に第1の光源からの光が試料に照射されることが防止され、蛍光信号の検出が改善される。
【0017】
本発明の一態様によれば、第2の光源および第1のフィルタは、装置のユーザによる交換が可能であるように構成される。これにより、ユーザは、装置のさらなる変更を必要とせずに、個々の用途の各々に最も適した光源およびフィルタを選択することができ、費用効率を維持しつつ、装置をより汎用的にすることができる。
【0018】
本発明のさらなる利点および利益は、以下の詳細な説明に照らし、当業者にとって容易に明らかであろう。
【0019】
次に、本発明を、添付の図面を参照して、さらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】試料中の物質の蛍光および吸光度を測定するための本発明による装置の第1の実施形態を開示する概略図である。
【
図2】本発明による第2の実施形態の概略図である。
【
図3】本発明の追加の構成要素を開示する第1の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明による装置1の第1の好ましい実施形態の概略図である。装置1は、
図3を参照して以下で詳細に説明されるように、装置1のフローセル2内に位置する試料の吸光度の測定における使用に適した光を発する第1の光源3、好ましくはUV LEDを備える。第1の光源3からの光は、第1の入口11においてフローセル2に接続された第1の光路、この場合には光ファイバ5の形態の光導体を通って、フローセル2に向かって伝播する。吸光度の測定のために、ビームスプリッタ14および参照用検出器15の形態のさらなる構成要素が、一般に必要とされる(
図3を参照)。しかしながら、例えば参照値を得るためにフローセル内の水などの参照試料を使用することによって、これらの構成要素を必要とせずに吸光度を測定することは可能であると考えられる。第1の光源3は、試料の吸光度の測定に適しているのであれば、例えば別の種類のLEDなど、UV範囲外の異なる波長の光をもたらす別の種類の光源であってもよいことに、注意すべきである。フローセル2からの光は、光を第1のフィルタ8を介して試料検出器9へと伝送する光ファイバ光導体7の形態の第2の光路に接続された出口13を通ってフローセル2から出ることができる。
【0022】
さらに、好ましくはやはりUV LEDである第2の光源4が、フローセル2を照射するように配置され、フローセル2内に位置する試料の蛍光の測定に適した光を放出する。第2の光源4からの光は、使用時に光ファイバ光導体6の形態の第3の光路を通ってフローセル2に向かって伝播し、第2の入口12を通ってフローセル2に入る。
【0023】
第1のフィルタ8は、好ましくは、フローセル2内の試料の蛍光信号の測定を改善するために、第2の光源4によって放射された波長の光を遮断するが、第1の光源3からの光および予想される蛍光信号の範囲内の光を通過させるように構成された少なくとも1つの光学バンドパスフィルタである。したがって、複数の波長範囲の光が、少なくとも1つの光学フィルタを通過することができる。技術的に周知のとおり、追加のバンドパスフィルタを第1および第2の光源3、4に隣接させて配置して、例えば10nmなどの狭い波長範囲だけを通過させることができることに、注意すべきである。第2の光源としてUV LEDを使用することが有利であり、なぜならば、これは、例えばタンパク質などの物質について280〜300nmの波長範囲の固有蛍光を測定する機会をもたらすからである。しかしながら、所望に応じ、例えば他の種類のLEDなどの他の種類の光源も、使用することが可能である。
【0024】
第2の光源4が第1の光源3に隣接して配置され、蛍光信号が第3の導体6を通って装置1から出ることができる実施形態を参照してさらに後述されるように、出口13に、光を遮るためのシャッタ要素10を配置することも可能である。
【0025】
図2は、本発明による装置の第2の実施形態を開示しており、第1の導体5を用いて第1の光源3および第2の光源4の両方からの光をフローセル2へと伝える点で、第1の実施形態から相違している。したがって、この実施形態においては、両方の光源からの光が同じ方向からフローセルに進入する。これは、装置1に必要な構成要素がより少なく、両方の光源3、4からの光を同じ光ファイバによって伝送できるため、費用効率が高い。高い感度での正確な蛍光測定を依然として行うために、第1のフィルタ8は、第2の光源4によって放射される光の波長を遮断するように構成される。第1の光源3からの光が第1のフィルタ8を通過できると同時に、第2の光源4からの光が遮断されるように、第1の光源3および第2の光源4の波長が充分に異なっていると好都合である。
【0026】
あるいは、測定されるべき蛍光が、試料の吸光度の測定に必要な波長に近く、あるいは試料の吸光度の測定に必要な波長と同一の励起波長を必要とするのであれば、第1の光源3および第2の光源4の代わりに単一の光源を使用できることに、注意すべきである。
【0027】
単一の光源が使用される場合には、第1のフィルタ8は、当然ながら、吸光度の測定においては迂回または省略される必要があると考えられる。あるいは、第1の光源3および第2の光源4を、同じカバー内に一緒に取り付けることができる。
【0028】
上述したように、試料検出器9は、好ましくは、光の振幅を検出および測定するように構成された少なくとも1つの光検出器である。光検出器は、例えば、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード、光電子増倍管、またはシリコン光電子増倍管であってよい。この用途のための分光計の使用と比較して、上述の光検出器は、小型で費用効率が高いという利点を有する。これは、容易な取り扱いおよび種々の場所での便利な使用を可能にする。一実施形態においては、特定の波長を検出することができるフォトダイオードを他の波長を検出することができるフォトダイオードで置き換えることができるように、試料検出器9を、ユーザによる取り外しが可能であるように構成することができる。一実施形態において、試料検出器は、フォトダイオードのアレイなどの複数のフォトダイオードを備えることで、装置のコストをわずかにしか増やさずに、検出可能な波長の数を増加させる。
【0029】
所望であれば、いくつかの光源を並べて取り付け、各々の光源からの光を同じ光ファイバまたはファイバ束にて一緒に運び、フローセル2または異なる試料を収容しているいくつかの異なるフローセル2において再び分離させることができる。この多重化の実施形態においては、各々が例えば異なる蛍光色に対応する複数の光源を、フローセル2内の試料を照射するために使用することができ、蛍光信号として放出される各々の色の光の量を、例えば各々の色を検出するように構成されたフォトダイオードのアレイによって検出することができる。この場合、フォトダイオードの各々は、望まれない光の到達を防ぐために、そのフォトダイオードに合わせたフィルタを必要とすると考えられる。あるいは、例えばOptoFlash光学エンジン(Newport Corporationの商標)など、波長の多重化および検出をもたらし、ダイオードおよび光学フィルタの両方を備えている単一の構成要素を、試料検出器9として使用することができる。
【0030】
図3は、
図1の装置1をさらに詳細に示している。第1の光源3は、試料の吸光度の測定に適した光を放射し、試料中のタンパク質の吸光度を測定する場合には、好ましくはUV範囲の光を放射する。光は、光をフィルタ処理し、狭い波長範囲、好ましくは約10nm以下だけを通過させるように機能する第1の追加のバンドパスフィルタ17を通過することができる。次いで、光は、ビームスプリッタ14によって第1の部分および第2の部分22に分割され、第1の部分21は、光の第1の部分21の電磁放射を検出する参照用検出器15へと伝えられる。参照用検出器15は、第1の光源3によって放射された波長の光の検出に適した試料検出器9と同じ種類の光検出器であってよい。さらに、参照用検出器15は、参照用検出器15によって受光される光の量に対応する第1の信号31を受信するように構成された処理ユニット16に、動作可能に接続される。
【0031】
光の第2の部分22は、ビームスプリッタ14から第1の導体5を介してフローセル2に伝えられ、第1の入口11を通ってフローセル2に入り、フローセル2およびフローセル内に含まれる試料を照射する。光の一部は試料によって吸収され、残りは出口13および第2の導体7を通過して試料検出器9に向かう。試料検出器9に達する前に、光は、第1のフィルタ8を通過する。
【0032】
したがって、好ましくは第1の光源3によって発せられた波長の光を検出するように構成された少なくとも1つの光検出器の形態である試料検出器9は、光の第2の部分22のうちのフローセル2を通過した後の残りを受光し、この光の電磁放射を検出する。試料検出器9によって受光される光の量に対応する第2の信号32が、試料検出器9に動作可能に接続された処理ユニット16に伝えられる。
【0033】
第1の光源3からの光の第1の部分21に対応する第1の信号31と、試料に吸収されずにフローセル2を通過した光に対応する第2の信号32とを比較することによって、処理ユニットは、技術的に周知のとおり、試料の吸光度を割り出すように構成されている。
【0034】
試料の蛍光の測定のために、好ましくはやはりUV LEDである第2の光源4が、試料における蛍光信号の発生に適した波長に対応する光を放射するように構成される。260〜300nmの波長の光を放射するUV LEDを使用することにより、種々のタンパク質または抗体において固有蛍光を検出することができる。GFP(緑色蛍光タンパク質)などの別の物質の検出においては、約400〜500nmの波長を放射するLEDが適すると考えられ、さらに他の物質については、他の波長が使用されると考えられる。第2の追加のフィルタ18を、第3の導体6に進入してフローセル2へと伝えられる前に、好ましくはわずか10nmの小さな波長範囲の光だけを通過させるように構成することができる。いくつかの実施形態においては、とりわけ第2の光源4がレーザである場合に、第2の追加のフィルタ18は、通常は不要であろう。
【0035】
したがって、第2の光源4からの光は、第2の入口12を通ってフローセル2に入り、フローセル2に含まれる試料を照射する。これにより、第2の光源4からの光とは異なる波長を有する蛍光信号が生成される。この蛍光信号は、出口13および第2の導体7を通って試料検出器9へと第1のフィルタ8を通って伝えられ、試料検出器において試料からの蛍光信号の大きさに対応する第3の信号33を生成する。この第3の信号33を、ユーザへの提示ならびに/あるいは保存およびさらなる分析のために、処理ユニット16へと伝えることができる。
【0036】
第2の入口12および第3の導体6が、出口13よび第2の導体7に対して或る角度に配置されると有利であり、なぜならば、出口13を通過する第2の光源4からの直接光の量が、入口と出口とが互いに向かい合わせに配置されている場合よりも少なくなるからである。好ましくは、角度は30°〜150°、より好ましくは約90°である。
【0037】
上述したように、第2の光源4としてUV LEDを用いることにより、装置1は、タンパク質および抗体などのいくつかの物質の固有蛍光を検出することができる。他の化合物は、例えば400〜700nmの可視範囲またはより高い波長など、他の範囲の固有蛍光を有する。所望に応じて、蛍光分子または標識を試料に共有結合させ、選択された分子に対応する波長の光を発する第2の光源4を用いて検出することができる。したがって、本発明の実施形態によれば、第2の光源4を異なる種類のレーザまたはLEDで置き換えることができ、これに対応して、第2の光源4によって放射された波長の光が試料検出器9へと到達することを防止するように構成された第1のフィルタ8も変更することができる。この実施形態においては、第2の光源4および第1のフィルタ8を、装置1の他の特性を変更することなく現場でユーザが取り外して交換することができる。したがって、第2の光源を、第3の光源で置き換え、第1のフィルタ8を、第3の光源によって放射された波長の光を遮断するように構成されたバンドパスフィルタである第2のフィルタで置き換えることができる。装置1と互換性のある複数の光源およびフィルタを用意し、ユーザが特定の用途に最も適した光源およびフィルタを選択できるようにすることができる。次いで、これらを装置1に取り付け、その後の蛍光測定に使用することができる。あるいは、装置1自体に複数のフィルタおよび光源を設けることができ、ユーザは、例えばホイールを回転させ、あるいはスイッチを係合させることによってそれらを切り替えて、特定の光源を対応するフィルタとともに用いることができる。第2の光源から狭い波長範囲のみを通過させるために第2の追加のフィルタが使用される場合、このフィルタも交換可能である。さらに別の代案は、入射光に対する種々の角度において異なる波長を遮断するように構成された調節可能なバンドパスフィルタを使用することである。この場合、調節可能なバンドパスフィルタを、どの波長を遮断すべきかを決定するためにソフトウェアによって制御することができ、これもまた「交換可能」という用語に包含される。
【0038】
好ましくは、第1および第2の光源3、4は、所与の時点において一方の光源の光だけが試料検出器9に到達するように保証するために、例えば方形波を使用することによってパルス状にされる。これにより、吸光度および蛍光を別々に測定することができ、光源のいずれか1つを完全にオフにすることを必要とせずに、測定の感度および精度を高めることができる。代案として、信号を抽出するために、サイナス(sinus)波などの別の波形を使用し、処理ユニット16によってモデル化することもできる。所望に応じて、パルスを、バックグラウンド光を測定して処理ユニットのための参照値をもたらすことができるように設計することもできる。
【0039】
一実施形態において、試料検出器9は、各々がいくつかの波長を検出するように構成された複数のフォトダイオードを含むことができる。これにより、いくつかの波長の光を検出することができる。
【0040】
多くの実施形態において、吸光度および蛍光は同時に測定されるのではなく、むしろ第1および第2の光源3、4からの光をパルス状にするか、あるいは
図1によって示されるようなシャッタ要素10を使用することによって、一度に1つずつ測定される。シャッタとともに使用するための本発明の最も好適な実施形態は、第2の光源4が第1の光源3に隣接して取り付けられ、したがって両方の光源からの光が第1の導体5を通って装置1に進入することができる
図1の第1の実施形態の変形版である。その場合、第3の導体6は、蛍光信号のフローセル2からの取り出しを可能にするように機能し、第4の導体(図示せず)が、光を試料検出器9へと伝えるために第3の導体6へと接続される。したがって、第3の導体6は、フローセル2からの光を試料検出器9へと伝えるように構成される。同時に、第1の光源3からの光が第1のフィルタ8および試料検出器9に到達することがないように、シャッタ10が閉じられる。これにより、蛍光測定の感度を向上させることができ、第1の光源3からの追加の光の乱れを、おおむね防止することができる。
【0041】
装置1が、生成される信号ならびに第1および第2の光源3、4から放出される光を増強および改善するように働く追加の構成要素をさらに含むことができることを、理解すべきである。これは、技術的に周知であり、ここでは詳細には説明しない。また、装置1の種々の構成要素を、それらの通常の動作を可能化および促進するように機能する電源ならびに電気的な構成要素および回路へと接続することができること、および検出器9、15によって生成されるすべての信号を処理ユニットによって処理し、分析し、保存し、さらには提示することができることを、当業者であれば容易に理解できるであろう。
【0042】
本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態によって限定されるものと見なされるべきではなく、むしろ当業者によって容易に理解されるように、添付の特許請求の範囲の技術的範囲の中で変更が可能である。例えば、第1のフィルタを備えず、ビームスプリッタおよび参照用検出器を備えずに、本発明を実行することが可能であると考えられる。上述した種々の実施形態の特徴を、他の実施形態においても一般的に使用できることに、注意すべきである。
【符号の説明】
【0043】
1 装置
2 フローセル
3 第1の光源
4 第2の光源
5 第1の導体、光ファイバ
6 第3の導体、光ファイバ光導体
7 第2の導体、光ファイバ光導体
8 第1のフィルタ
9 試料検出器
10 シャッタ要素
11 第1の入口
12 第2の入口
13 出口
14 ビームスプリッタ
15 参照用検出器
16 処理ユニット
17 バンドパスフィルタ
18 フィルタ
21 第1の部分
22 第2の部分
31 第1の信号
32 第2の信号
33 第3の信号