特許第6804446号(P6804446)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6804446改善した流動性および高剛性を有する充填ポリカーボネート組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6804446
(24)【登録日】2020年12月4日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】改善した流動性および高剛性を有する充填ポリカーボネート組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20201214BHJP
   C08K 7/04 20060101ALI20201214BHJP
   C08K 5/103 20060101ALI20201214BHJP
   C08K 5/41 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   C08L69/00
   C08K7/04
   C08K5/103
   C08K5/41
【請求項の数】13
【全頁数】47
(21)【出願番号】特願2017-529000(P2017-529000)
(86)(22)【出願日】2015年11月26日
(65)【公表番号】特表2017-536460(P2017-536460A)
(43)【公表日】2017年12月7日
(86)【国際出願番号】EP2015077729
(87)【国際公開番号】WO2016087296
(87)【国際公開日】20160609
【審査請求日】2018年11月26日
(31)【優先権主張番号】14195706.8
(32)【優先日】2014年12月1日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100188651
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 広介
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムート、ベルナー、ホイアー
(72)【発明者】
【氏名】ロルフ、ベーアマン
(72)【発明者】
【氏名】アンケ、ボウマンス
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル、エルケレンツ
(72)【発明者】
【氏名】ハンス、フランセン
【審査官】 藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2004/058894(WO,A1)
【文献】 特開2006−257182(JP,A)
【文献】 特表2007−524731(JP,A)
【文献】 特開2008−115250(JP,A)
【文献】 特開2009−292962(JP,A)
【文献】 特開2010−150470(JP,A)
【文献】 特開2010−168543(JP,A)
【文献】 特開2011−046948(JP,A)
【文献】 特開2011−108435(JP,A)
【文献】 特開2011−256359(JP,A)
【文献】 特表2011−513546(JP,A)
【文献】 特表2017−536462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 69/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)20重量%〜99.0重量%の芳香族ポリカーボネート、
B)0.0〜1.0重量%の、脂肪族スルホン酸、芳香族スルホン酸、およびスルホンアミドのアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩;ならびに、メチルホスホン酸ナトリウム、メチルホスホン酸カリウム、(2−フェニルエチレン)ホスホン酸ナトリウム、(2−フェニルエチレン)ホスホン酸カリウム、ペンタクロロ安息香酸ナトリウム、ペンタクロロ安息香酸カリウム、2,4,6−トリクロロ安息香酸ナトリウム、2,4,6−トリクロロ安息香酸カリウム、2,4−ジクロロ安息香酸ナトリウム、2,4−ジクロロ安息香酸カリウム、フェニルホスホン酸リチウム、ヘキサフルオロアルミン酸三ナトリウム、ヘキサフルオロアルミン酸三カリウム、ヘキサフルオロチタン酸二ナトリウム、ヘキサフルオロチタン酸二カリウム、ヘキサフルオロケイ酸二ナトリウム、ヘキサフルオロケイ酸二カリウム、ヘキサフルオロジルコン酸二ナトリウム、ヘキサフルオロジルコン酸二カリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、テトラフルオロホウ酸ナトリウム、テトラフルオロホウ酸カリウム、ヘキサフルオロリン酸ナトリウム、ヘキサフルオロリン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸リチウム、およびそれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1種の難燃剤、
C)0.5重量%〜50.0重量%の、少なくとも1種のガラス繊維、1種の炭素繊維およびカーボン・ナノチューブからなる群から選択される少なくとも1つの成分
D)0.01重量%〜3.0重量%の、ジグリセロールエステルの群から選択される、少なくとも1種の流動助剤、
E)0.0重量%〜5.0重量%の少なくとも1種の抗滴下剤、
F)0.0重量%〜1.0重量%の少なくとも1種の熱安定剤、
G)0.0重量%〜10.0重量%の、酸化防止剤、紫外線吸収剤、IR吸収剤、静電気防止剤、蛍光増白剤、光散乱剤、着色料、無機充填剤、およびエチレン−アクリル酸メチルコポリマーからなる群から選択される、さらなる添加剤
を含んでなる組成物であって、
ジグリセロールエステルとして、式(I)のエステル:
【化1】
[式中、
R=COC2n+1および/またはR=COR’であり、
ここで、nは整数であり、かつR’は、分岐鎖状アルキル部分または分岐鎖状もしくは非分岐鎖状アルケニル部分であり、かつC2n+1は、脂肪族、飽和直鎖状アルキル部分である。]
が含まれる、組成物。
【請求項2】
前記成分A)〜G)の合計が100重量%となる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
R=COC2n+1において、nが6〜24、好ましくは8〜18、より好ましくは10〜16および一層より好ましくは12の整数である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも0.05重量%の抗滴下剤が存在している、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
ガラス繊維および0.001〜1.0重量%の難燃剤を含んでなる、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
ガラス繊維が存在していて、かつ該ガラス繊維が3mm〜6mmの配合前の長さを有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
ガラス繊維が存在していて、かつ該ガラス繊維が細断ガラス繊維である、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
ガラス繊維が存在していて、かつ該ガラス繊維が5〜25μm、好ましくは8〜20μmおよびより好ましくは11〜17μmの平均繊維直径を有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が、ISO 1133(試験温度300℃、質量1.2kg)により測定される7〜25cm/10分のメルトボリュームフローレートMVRを有し、かつISO 527により測定される弾性係数が少なくとも2700N/mmである、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が、炭素繊維を含んでなる、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
1.5mm壁厚でUL94 V−0可燃性等級を有する、電気/電子部門またはIT部門用の厚さ0.1〜3mmの薄肉成形品の製造における、請求項1〜10に記載の組成物の使用。
【請求項12】
成形品、特にウルトラブック用の構成部品用成形品、の製造における、ISO 1133(試験温度300℃、質量1.2kg)により測定される1〜30cm/10分のメルトボリュームフローレートMVRおよび室温でISO 179/1eUにより測定される35 kJ/mを超えるシャルピー衝撃強さを有する請求項1〜10に記載の組成物の使用。
【請求項13】
A)20重量%〜99.0重量%の芳香族ポリカーボネート、
B)0.0〜1.0重量%の、脂肪族スルホン酸、芳香族スルホン酸、およびスルホンアミドのアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩;ならびに、メチルホスホン酸ナトリウム、メチルホスホン酸カリウム、(2−フェニルエチレン)ホスホン酸ナトリウム、(2−フェニルエチレン)ホスホン酸カリウム、ペンタクロロ安息香酸ナトリウム、ペンタクロロ安息香酸カリウム、2,4,6−トリクロロ安息香酸ナトリウム、2,4,6−トリクロロ安息香酸カリウム、2,4−ジクロロ安息香酸ナトリウム、2,4−ジクロロ安息香酸カリウム、フェニルホスホン酸リチウム、ヘキサフルオロアルミン酸三ナトリウム、ヘキサフルオロアルミン酸三カリウム、ヘキサフルオロチタン酸二ナトリウム、ヘキサフルオロチタン酸二カリウム、ヘキサフルオロケイ酸二ナトリウム、ヘキサフルオロケイ酸二カリウム、ヘキサフルオロジルコン酸二ナトリウム、ヘキサフルオロジルコン酸二カリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、テトラフルオロホウ酸ナトリウム、テトラフルオロホウ酸カリウム、ヘキサフルオロリン酸ナトリウム、ヘキサフルオロリン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸リチウム、およびそれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1種の難燃剤、
C)0.5重量%〜50.0重量%の、少なくとも1種のガラス繊維、1種の炭素繊維およびカーボン・ナノチューブからなる群から選択される少なくとも1つの成分、
D)0.01重量%〜3.0重量%の、ジグリセロールエステルの群から選択される、少なくとも1種の流動助剤、
E)0.0重量%〜5.0重量%の少なくとも1種の抗滴下剤、
F)0.0重量%〜1.0重量%の少なくとも1種の熱安定剤、
G)0.0重量%〜10.0重量%の、酸化防止剤、紫外線吸収剤、IR吸収剤、静電気防止剤、蛍光増白剤、光散乱剤、着色料、無機充填剤、およびエチレン−アクリル酸メチルコポリマーからなる群から選択される、さらなる添加剤
を含んでなる組成物のメルトにおいて流動性を改善するための少なくとも一つのジグリセロールエステルの使用であって、
ジグリセロールエステルとして、式(I)のエステル:
【化2】
[式中、
R=COC2n+1および/またはR=COR’であり、
ここで、nは整数であり、かつR’は、分岐鎖状アルキル部分または分岐鎖状もしくは非分岐鎖状アルケニル部分であり、かつC2n+1は、脂肪族、飽和直鎖状アルキル部分である。]
が含まれる、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い流動性、卓越した剛性および可能的に改善した難燃特性を有する、ガラス繊維強化ポリカーボネート組成物のみならず、同様に炭素繊維強化ポリカーボネート組成物またはカーボン・ナノチューブ強化ポリカーボネート組成物に関する。さらに本発明は、EEおよびIT部門のハウジング部品(例えば、電気的ハウジング/接続箱またはLCD/LEDスクリーンのフレーム)、同様にスマートフォン、タブレット、ウルトラブック(Ultrabook)、ノートブックまたはノート型パソコン等の携帯通信端末、同様に、衛星ナビゲーション、スマートウォッチまたは心拍数モニターのハウジング部品および薄肉設計の電気的用途(例えば、住居用および業務用ネットワークシステムおよびスマートメーター用ハウジング部品)の製造における本発明による組成物の使用に関する。
【0002】
これら組成物は、1.5mmの壁厚でUL94 V−0の防火分類を達成している、比較的大きな構成部品に特に有用である。
【0003】
先行技術には、剛性を改善するために、ポリカーボネート等のプラスチック類をガラス繊維、炭素繊維またはカーボン・ナノチューブと混合することが開示されている。さらに、数多くの難燃剤がポリカーボネートに好適であることが知られている。それにもかかわらず、剛性に関してポリカーボネートの特性および難燃特性を最適化することは、特に流動性を犠牲にすることを伴う。
【0004】
WO 2013/045552 A1には、高度の剛性、同様に良好な強靱性を有するガラス繊維充填難燃性ポリカーボネートが記載されている。対応する組成物の流動性を改善する可能性については何も教示がない。US 3 951 903 Aには、応力亀裂耐性を改善するための、ガラス繊維充填ポリカーボネートにおけるカルボン酸無水物の使用が記載されている。EP 0 063 769 A2には、ガラス繊維およびポリ無水物を含んでなり、かつ改善した水準の衝撃強さを有するポリカーボネートが記載されている。改善した流動性は記載されていない。
【0005】
改善した流動は、所望の効果を達成するために、伝統的に、BDP(ビスフェノールAジホスフェート)を、10重量%を超える量で用いることにより探求されてきた。しかしながら、結果として熱耐性は大幅に低減した。
【0006】
ジグリセロールエステルは、透明静電気防止組成物と関連して、例えばJP2011108435 A、JP2010150457 A、JP2010150458 Aにおいて引用されている。JP2009292962 Aには、エステルが少なくとも20個の炭素原子を有する特定の態様が記載されている。JP2011256359 Aにはジグリセロールエステル類を含んでなる難燃性紫外線安定静電気防止組成物が記載されている。
【0007】
本発明が提起する一つの課題は、高剛性、高流動性の組み合わせ、および理想的にはUL94 V−0の耐炎性(1.5mmの壁厚に製造された成形品用に)を特色とする強化ポリカーボネート組成物、同様に、先行技術の組成物の短所(例えば、加工中の不十分な流動性)がない対応の成形品を提供することである。
【0008】
驚くべきことに、今やこの課題は、以下を含んでなる組成物によって解決されることが見出された:
A)20.0重量%〜99.0重量%の芳香族ポリカーボネート、
B)0.0重量%〜1.0重量%の少なくとも1種の難燃剤、
C)0.5重量%〜50.0重量%の少なくとも1種のガラス繊維、1種の炭素繊維および/またはカーボン・ナノチューブ、
D)0.01重量%〜3.0重量%のジグリセロールエステルの群から選択される少なくとも1種の流動助剤、
E)0.0重量%〜5.0重量%の少なくとも1種の抗滴下剤(Antitropfmittels)、
F)0.0重量%〜1.0重量%の少なくとも1種の熱安定剤、
G)0.0重量%〜10.0重量%のさらなる添加剤。
【0009】
好ましくは、組成物はさらなる成分は含まず、むしろ成分A)〜G)は合計100重量%となる。
【0010】
ガラス繊維および/または炭素繊維および/またはカーボン・ナノチューブおよびさらなる添加剤の高い割合にもかかわらず、驚くべきことに、比較的少量のジグリセロールエステルでも顕著な流動性の改善を達成するために十分である。それに応じて、熱特性(例えば、熱耐性)への影響は最小限である。
【0011】
本発明は、さらにそのような組成物から得られた成形品(Formteile)によって解決される。
【0012】
ISO 1133(試験温度300℃、質量1.2kg)により測定される、1〜30cm/10分、より好ましくは7〜25 cm/10分のメルトボリュームフローレートMVR、および1.5mm壁厚でのUL−94 V−0燃焼等級および/またはISO 1133(試験温度300℃、質量1.2kg)により測定される1〜30cm/10分、より好ましくは7〜25cm/10分のメルトボリュームフローレートMVRならびに、組成物中にガラス繊維が存在している場合、室温でDIN EN ISO 179により測定される35kJ/mを上回るシャルピー衝撃強さを有する、本発明によるそれら組成物は、成形品の製造における使用に好ましい。
【0013】
本発明による組成物は、場合により改善した耐炎性に加えて、良好な機械的特性、具体的には、良好な水準の剛性、および非常に良好なレオロジー挙動(流動し易い)で注目すべきである。本発明に好ましいのは、充填剤と同様に難燃剤を含んでなる組成物である。
【0014】
本発明による組成物の個々の成分は、以下に一層より詳細に記載されている。
【0015】
成分A
本発明の目的のためのポリカーボネートは、ホモポリカーボネートのみならず、コポリカーボネートもである;問題のポリカーボネートは、通常の様式での直鎖状または分岐鎖状でもよい。本発明によれば、ポリカーボネートの混合物も有用である。
【0016】
問題のポリカーボネートは、通常の方法にてジフェノール類、炭酸誘導体、場合により停止剤および分岐形成剤から調製される。
【0017】
ポリカーボネートの調製に関する詳細は、約40年間、数多くの特許文献に書き留められてきた。ここで、例えば、Schnell, “Chemistry and Physics of Polycarbonates”, Polymer Reviews, Volume 9, Interscience Publishers, New York, London, Sydney 1964、D. Freitag, U. Grigo, P.R. Mueller, H. Nouvertne, BAYER AG, “Polycarbonates” in Encyclopedia of Polymer Science and Engineering, Volume 11, Second Edition, 1988, pages 648-718および最後に、U. Grigo, K. Kirchner and P.R. Mueller “Polycarbonate” in Becker/Braun, Kunststoff-Handbuch, Volume 3/1, Polycarbonate, Polyacetale, Polyester, Celluloseester, Carl Hanser Verlag Munich, Vienna 1992, pages 117-299を参照してもよい。
【0018】
芳香族ポリカーボネートは、例えば、相界面法により、場合により停止剤の使用により、かつ場合により三官能性または三官能性以上の分岐形成剤の使用により、ジフェノール類を、ハロゲン化カルボニル、好ましくはホスゲンおよび/または芳香族ジハロゲン化ジカルボニル、好ましくはベンゼンジハロゲン化ジカルボニルと反応させるによって調製される。ジフェノールの、例えば、炭酸ジフェニルとの反応による溶融重合法を介した製造も同様に可能である。
【0019】
ポリカーボネートを調製するために有用なジフェノール類の例として、ハイドロキノン、レゾルシノール、ジヒドロキシビフェニル、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)硫化物、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、α,α’−ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼン、イサチンまたはフェノールフタレイン誘導体に由来するフタルイミジン類および同様にそれらの環アルキル化化合物、環アリール化化合物または環ハロゲン化化合物が挙げられる。
【0020】
好ましいジフェノール類は、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ジメチルビスフェノールA、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼンおよび1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンである。
【0021】
特に好ましいジフェノールは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびジメチルビスフェノールAである。
【0022】
これらおよびさらに好適なジフェノールは、例えば、US−A 3 028 635、US−A 2 999 825、US−A 3 148 172、US−A 2 991 273、US−A 3 271 367、US−A 4 982 014およびUS−A 2 999 846において、DE−A 1 570 703、DE−A 2063 050、DE−A 2 036 052、DE−A 2 211 956およびDE−A 3 832 396において、FR−A 1 561 518において、モノグラフ“H. Schnell, Chemistry and Physics of Polycarbonates, Interscience Publishers, New York 1964”、同様にJP−A 62039/1986、JP−A 62040/1986およびJP−A 105550/1986において記載されている。
【0023】
ホモポリカーボネートは、ジフェノールを1種のみ利用する一方でコポリカーボネートは2種以上のジフェノール類を利用する。
【0024】
有用な炭酸誘導体の例として、ホスゲンおよび炭酸ジフェニルが挙げられる。
【0025】
ポリカーボネートを調製するために有用な停止剤には、モノフェノール類が含まれる。有用なモノフェノールの例としてフェノール自体、クレゾール類等のアルキルフェノール類、p−tert−ブチルフェノール、クミルフェノール、同様にそれらの混合物が挙げられる。
【0026】
好ましい停止剤は、C−C30アルキル部分から選択される1つ以上の置換基を有する、直鎖状または分岐鎖状、好ましくは非置換のフェノールおよびtert−ブチルである。特に好ましい停止剤は、フェノール、クミルフェノールおよび/またはp−tert−ブチルフェノールである。
【0027】
使用する停止剤の含量は、特定の使用したジフェノールのモル数に対して、好ましくは0.1〜5モル%の範囲である。停止剤は、炭酸誘導体との反応の前、間または後に混合してもよい。
【0028】
有用な分岐形成剤には、ポリカーボネート化学において通常の三官能性または三官能性以上の化合物、具体的には、3価または3価以上のフェノール系OH基を有するものが含まれる。
【0029】
有用な分岐形成剤の例として、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、トリ(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノール、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5’−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、テトラ(4−(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノキシ)メタンおよび1,4−ビス((4’,4”−ジヒドロキシトリフェニル)メチル)ベンゼンおよび3,3−ビス−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドールが挙げられる。
【0030】
使用した任意の分岐形成剤の含量は、特定の使用したジフェノールのモル数に対して、好ましくは0.05モル%〜2.00モル%の範囲である。
【0031】
分岐形成剤は、ジフェノールおよび停止剤と一緒に最初に充填した水性アルカリ性相に含めても、またはホスゲン化の前に有機溶媒中に混合、溶解させてもどちらでもよい。エステル交換反応法の場合、分岐形成剤はジフェノールと一緒に使用する。
【0032】
特に好ましいポリカーボネートは、ビスフェノールAに基づいたホモポリカーボネート、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンに基づいたホモポリカーボネートおよび2つのモノマー、ビスフェノール Aおよび1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンに基づいたコポリカーボネートである。
【0033】
添加剤を合わせるために、成分Aは粉末、顆粒または粉末と顆粒の混合物で使用することが好ましい。
【0034】
ガラス繊維充填組成物の場合、例えば、以下の特性を有する芳香族ポリカーボネートA1とA2の混合物を使用することが好ましい。:
ポリカーボネートの全体量に対する、芳香族ポリカーボネートA1の含量は、25.0〜85.0重量%、好ましくは28.0〜84.0重量%およびより好ましくは30.0〜83.0重量%であり、この芳香族ポリカーボネートはビスフェノールAを主成分とし、ISO 1133(試験温度300℃、質量1.2kg)に従い測定される、好ましくは7〜15cm/10分のメルトボリュームフローレートMVR、より好ましくは8〜12 cm/10分のメルトボリュームフローレートMVRおよび一層より好ましくは8〜11cm/10分のメルトボリュームフローレートMVRを有する。
【0035】
ポリカーボネートの全体量に相対する、紛体芳香族ポリカーボネートA2の含量は、3.0〜12.0重量%、好ましくは4.0〜11.0重量%およびより好ましくは3.0〜10.0重量%であり、この芳香族ポリカーボネートはビスフェノールAを主成分とし、ISO 1133(試験温度300℃、質量1.2kg)に従い測定される、好ましくは3〜8cm/10分のメルトボリュームフローレートMVR、より好ましくは4〜7cm/10分のメルトボリュームフローレートMVRおよび一層より好ましくは6cm/10分のメルトボリュームフローレートMVRを有する。
【0036】
成分B
本発明の組成物中の難燃剤の含量は、好ましくは0.001〜1.0重量%の範囲、より好ましくは0.05〜0.80重量%の範囲、一層より好ましくは0.10〜0.60重量%の範囲、および最も好ましくは0.10〜0.40重量%の範囲である。
【0037】
本発明の目的に好適な難燃剤には、脂肪族/芳香族スルホン酸およびスルホンアミド誘導体のアルカリおよび/またはアルカリ土類金属塩である。
【0038】
本発明の組成物中に含まれる可能性のある塩は: ペルフルオロブタンスルホン酸ナトリウム、ペルフルオロブタンスルホン酸カリウム、ペルフルオロメタンスルホン酸ナトリウム、ペルフルオロメタンスルホン酸カリウム、ペルフルオロオクタン硫酸ナトリウム、ペルフルオロオクタン硫酸カリウム、2,5−ジクロロベンゼン硫酸ナトリウム、2,5−ジクロロベンゼン硫酸カリウム、2,4,5−トリクロロベンゼン硫酸ナトリウム、2,4,5−トリクロロベンゼン硫酸カリウム、メチルホスホン酸ナトリウム、メチルホスホン酸カリウム、(2−フェニルエチレン)ホスホン酸ナトリウム、(2−フェニルエチレン)ホスホン酸カリウム、ペンタクロロ安息香酸ナトリウム、ペンタクロロ安息香酸カリウム、2,4,6−トリクロロ安息香酸ナトリウム、2,4,6−トリクロロ安息香酸カリウム、2,4−ジクロロ安息香酸ナトリウム、2,4−ジクロロ安息香酸カリウム、フェニルホスホン酸リチウム、ジフェニルスルホンスルホン酸ナトリウム、ジフェニルスルホンスルホン酸カリウム、2−ホルミルベンゼンスルホン酸ナトリウム、2−ホルミルベンゼンスルホン酸カリウム、(N−ベンゼンスルホニル)ベンゼンスルホンアミドナトリウム、(N−ベンゼンスルホニル)ベンゼンスルホンアミドカリウム、ヘキサフルオロアルミン酸三ナトリウム、ヘキサフルオロアルミン酸三カリウム、ヘキサフルオロチタン酸二ナトリウム、ヘキサフルオロチタン酸二カリウム、ヘキサフルオロケイ酸二ナトリウム、ヘキサフルオロケイ酸二カリウム、ヘキサフルオロジルコン酸二ナトリウム、ヘキサフルオロジルコン酸二カリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、テトラフルオロホウ酸ナトリウム,テトラフルオロホウ酸 カリウム、ヘキサフルオロリン酸ナトリウム、ヘキサフルオロリン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸リチウム、ノナフルオロ−1−ブタンスルホン酸ナトリウム、ノナフルオロ−1−ブタンスルホン酸カリウムまたはそれらの混合物である。
【0039】
使用に好ましいのは、ペルフルオロブタン硫酸ナトリウム、ペルフルオロブタン硫酸カリウム,ペルフルオロオクタン硫酸ナトリウム、ペルフルオロオクタン硫酸カリウム、ジフェニルスルホンスルホン酸ナトリウム、ジフェニルスルホンスルホン酸カリウム、2,4,6−トリクロロ安息香酸ナトリウム、2,4,6−トリクロロ安息香酸カリウムである。非常に好ましいのは、ノナフルオロ−1−ブタンスルホン酸カリウム またはジフェニルスルホンスルホン酸ナトリウム または ジフェニルスルホンスルホン酸カリウムである。ノナフルオロ−1−ブタンスルホン酸カリウムは、とりわけ Bayowet(商標)C4 (ドイツ、レーバークーゼン、LanxessよりCAS番号.29420−49−3)、RM64 (イタリア、Miteniより) として、または3MTM ペルフルオロブタンスルホニルフルオリドFC−51(アメリカ合衆国、3Mより)として市販されている。記載した塩の混合物も同様に好適である。
【0040】
成分C
本発明による組成物は、0.50〜50.0重量%、好ましくは0.50〜 45.0重量%、より好ましくは1.0〜38.0重量%、および一層より好ましくは1.0〜35.0重量%のガラス繊維、炭素繊維および/またはカーボン・ナノチューブを含んでなる。
【0041】
ガラス繊維:
ガラス繊維は、M−、E−、A−、S−、R−、AR−、ECR−、D−、Q−またはC−ガラスの群から選択されるガラス組成物からなり、中でもE−、S−またはC−ガラスが好ましい。
【0042】
ガラス組成物は、固形ガラス球、中空ガラス球、ガラスビーズ、ガラスフレーク、カレット、同様にガラス繊維の形態で使用することが好ましく、中でもガラス繊維がさらに好ましい。
【0043】
ガラス繊維は、連続的フィラメント繊維(粗紡)、細断ガラス繊維、粉末繊維、ガラス繊維織物またはそれらの混合物の形態で使用し得、その場合、細断ガラス繊維および同様に粉末繊維が好ましく使用される。
【0044】
特に好ましくは、細断ガラス繊維(Schnittglasfasern)が使用される。
【0045】
細断ガラス繊維の配合前(vor der Compoundierung)の長さは、好ましくは0.5〜10mmの範囲、より好ましくは1.0〜8mmの範囲、かつ最も好ましくは1.5〜6mmの範囲である。
【0046】
使用した細断ガラス繊維は、様々な断面を有していてもよい。好ましくは、円形、楕円形、長円形、八角形および扁平な断面を使用し、円形、長円形および同様に扁平な断面が特に好ましい。
【0047】
円形繊維の直径は、好ましくは5〜25μmの範囲、より好ましくは6〜20μmの範囲、および一層より好ましくは7〜17μmの範囲である。
【0048】
好ましい扁平および長円形ガラス繊維は、約1.0:1.2〜1.0:8.0、好ましくは1.0:1.5〜1.0:6.0、より好ましくは1.0:2.0〜1.0:4.0の縦対横の断面比を有する。
【0049】
扁平および長円形ガラス繊維は、好ましくは4μm〜17μm、より好ましくは6μm〜12μmおよび一層より好ましくは6μm〜8μmの平均繊維高さ、および同様に12μm〜30μm、より好ましくは14μm〜28μmおよび一層より好ましくは16μm〜26μmの平均繊維幅を有する。
【0050】
ガラス繊維は、ガラス繊維の表面がガラスサイズに変性されていてもよい。好ましいガラスサイズは、エポキシ変性、ポリウレタン変性および非変性シラン化合物ならびにそれらの混合物である。
【0051】
ガラス繊維は、ガラスサイズに変性していなくてもよい。
【0052】
使用したガラス繊維の特徴は、繊維の選択が、繊維がポリカーボネートマトリックスと相互作用する様式による制約を受けないことである。
【0053】
本発明による組成物の特性の改善は、ポリマーマトリックスへの強力な結合のためだけでなく非結合繊維のためにも得られる。
【0054】
ガラス繊維のポリマーマトリックスへの任意の結合は、破壊されたほとんどのガラス繊維がマトリックスと同一の高さで破壊されているであろう、そして分離したガラス繊維のみがマトリックスから突き出ているであろう走査型電子顕微鏡写真の低温破断面から明白であろう。非結合特性と反対の場合において、走査型電子顕微鏡写真が示すのは、低温破断にてガラス繊維がマトリックスから顕著に突き出ているか、またはそれらから完全に滑り出ているところである。
【0055】
ガラス繊維が存在している場合、組成物のガラス繊維含有量は、より好ましくは10〜35重量%の範囲、および一層より好ましくは10〜30重量%の範囲である。
【0056】
炭素繊維:
炭素繊維は、例えば、アクリル繊維等の前駆体から、熱分解(炭化)によって工業的に製造される。フィラメント糸と短繊維は区別される。
【0057】
本発明の組成物には、好ましくは短繊維を利用する。
【0058】
細断繊維長さは、好ましくは3mm〜125mmである。特に好ましくは長さ3mm〜25 mmの繊維が使用される。
【0059】
円形断片の繊維と同様に、立方の寸法(血小板形)を使用してもよい。好適な寸法は、例えば2mm×4mm×6mmである。
【0060】
細断繊維と同様に、粉末炭素繊維を使用することができる。粉末炭素繊維は、好ましくは長さ50μm〜150μmである。
【0061】
炭素繊維は、ポリマーマトリックスへの特別な結合を可能にするため、場合により有機的サイズのコーティングを有している。
【0062】
典型的には、配合によって短く切断した繊維および粉末炭素繊維をポリマー母材に添加する。
【0063】
特定の技術的方法を使用して炭素を非常に細い糸の形態に配置する。これらフィラメントは、典型的には直径3〜10μmである。粗紡、織物、不織物、バンド、テープ、ひも、ホース等を製造するためにもフィラメントを使用することができる。
【0064】
組成物に炭素繊維が含まれてなる場合、その炭素繊維含有量は、好ましくは10〜30重量%の範囲、より好ましくは10〜20重量%の範囲、および一層より好ましくは12〜20重量%の範囲である。
【0065】
カーボン・ナノチューブ
本発明の目的のための、CNTとしても知られている、カーボン・ナノチューブは、任意のシリンダー型、スクロール型または玉ねぎ状構造の単一壁または多壁カーボン・ナノチューブである。シリンダー型、スクロール型またはそれらの混合物の多壁カーボン・ナノチューブを用いることが好ましい。
【0066】
カーボン・ナノチューブは、好ましくは0.1〜10重量%の含量、より好ましくは0.5〜8 重量%の含量、一層より好ましくは0.75〜6 重量%の含量、および最も好ましくは1〜5重量%の含量(成分A、B、CおよびDの全体重量に対して)で使用される。マスターバッチにおいて、カーボン・ナノチューブの濃度はより多くてもよく、最大80重量%でもよい。
【0067】
5を超える、好ましくは40を超える長さ対外径比を有するカーボン・ナノチューブ を用いることが特に好ましい。
【0068】
カーボン・ナノチューブは、凝集体の形態で用いることが特に好ましく、当該凝集体の平均直径は、具体的には、0.01〜5mm、好ましくは0.05〜2mm、およびより好ましくは0.1〜1mmの範囲である。
【0069】
使用するカーボン・ナノチューブが、3〜100nm、好ましくは5〜80nm、より好ましくは6 〜60 nmの平均直径を必須的に有することが特に好まれる。
【0070】
成分D
使用する流動助剤Dは、ジグリセロールを有するカルボン酸のエステル類である。種々のカルボン酸に基づくジグリセロールエステル類が好適である。エステル類はジグリセロールの異なる異性体に基づいていてもよい。モノエステルと同様に、ジグリセロールのポリエステルも使用可能である。純粋化合物と同様に、混合物も使用可能である。
【0071】
以下のジグリセロールの異性体が、本発明により使用するジグリセロールエステルのもととなる(die Basis fur):
【化1】
本発明により使用するジグリセロールエステルには、モノまたはポリエステル化したこれら式の異性体を利用してもよい。流動助剤として使用可能な混合物は、出発ジグリセロール材料、同様に、例えば、348g/モル(モノラウリルエステル)または530 g/モル(ジラウリルエステル)の分子量を有する、それらに由来するエステル最終生成物からなる。
【0072】
本発明の様式における組成物に存在しているジグリセロールエステル類は、好ましくは6〜60個の炭素原子の鎖長を有する飽和または不飽和モノカルボン酸に由来する。好ましいモノカルボン酸には、例えば、カプリル酸(C15COOH、オクタン酸)、カプリン酸(C19COOH、デカン酸)、ラウリン酸(C1123COOH、ドデカン酸)、ミリスチン酸(C1327COOH、テトラデカン酸)、パルミチン酸(C1531COOH、ヘキサデカン酸)、マルガリン酸(C1633COOH、ヘプタデカン酸)、ステアリン酸(C1735COOH、オクタデカン酸)、アラキジン酸(C1939COOH、エイコサン酸)、ベヘン酸(C2143COOH、ドコサン酸)、リグノセリン酸(C2347COOH、テトラコサン酸)、パルミトレイン酸(C1529COOH、(9Z)−ヘキサデカ−9−エン酸)、ペトロセリン酸(C1733COOH、(6Z)−オクタデカ−6−エン酸)、エライジン酸(C1733COOH、(9E)−オクタデカ−9−エン酸)、リノール酸(C1731COOH、(9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン酸)、アルファ−またはガンマ−リノレン酸(C1729COOH、(9Z,12Z,15Z)−オクタデカ−9,12,15−トリエン酸および(6Z,9Z,12Z)−オクタデカ−6,9,12−トリエン酸)、アラキドン酸(C1931COOH、(5Z,8Z,11Z,14Z)−エイコサ−5,8,11,14−テトラエン酸)、ティムノドン酸(C1929COOH、(5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)−エイコサ−5,8,11,14,17−ペンタエン酸)およびセルボン酸(C2131COOH、(4Z,7Z,10Z,13Z,16Z,19Z)−ドコサ−4,7,10,13,16,19−ヘキサエン酸)が挙げられる。ラウリン酸、パルミチン酸および/またはステアリン酸が特に好ましい。
【0073】
ジグリセロールエステルの内容物は、より好ましくは、式(I)の少なくとも1種のエステルである:
【化2】
[式中、
R=COC2n+1および/またはR=COR’であり、
ここで、nは、整数であり、R’は、分岐鎖状アルキル部分または分岐鎖状または非分岐鎖状アルケニル部分であり、およびC2n+1は、脂肪族飽和直鎖状アルキル部分である]。
【0074】
ここでnは、好ましくは6−24の整数であり、そのためC2n+1は、例えば、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシルまたはn−オクタデシルである。さらに、nは好ましくは8〜18、より好ましくは10〜16および最も好ましくは12(348g/モルの分子量のモノラウリン酸ジグリセロール異性体が混合物中で主要生成物として特に好ましい)。前述のエステル基は、本発明の目的のために、ジグリセロールのその他の異性体においても存在していることが好ましい。
【0075】
従って、種々のジグリセロールエステルの混合物を考慮してもよい。
【0076】
好ましくは使用したジグリセロールエステルは、少なくとも6、より好ましくは 6〜12のHLB値を有し、HLB値とは、「親水−親油バランス」を指し、以下のとおりのグリフィン(Griffin)方式によって計算される:

HLB=20×(1−M親油性/M)、
[式中、
親油性 は、ジグリセロールエステルの親油性部分のモル質量であり、かつ
Mは、ジグリセロールエステルのモル質量である。]
【0077】
ジグリセロールエステルの含量は、0.01〜3.0重量%、好ましくは0.10〜2.0重量%、より好ましくは0.15〜1.50重量%、および最も好ましくは0.20〜1.0重量%である。
【0078】
成分E
本発明の組成物は、好ましくは抗滴下剤を含んでなる。抗滴下剤の含有量は、好ましくは0.05〜5.0重量%、より好ましくは0.10重量%〜2.0重量%および一層より好ましくは0.10重量%〜1.0重量%の少なくとも1種の抗滴下剤である。
【0079】
抗滴下剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を組成物に添加することが好ましい。PTFEは、種々の製品等級において市販されている。これらには、Hostaflon(商標)TF2021またはさもなければMetablen(商標)A-3800 (Mitsubishi-Rayonからの、約40重量%のPTFE CAS 9002−84−0と約60重量%のメタクリル酸メチル/アクリル酸ブチルコポリマー CAS 25852−37−3)またはChemtura からのBlendex(商標)B449 (約50重量%のPTFEおよび約50重量%のSAN[80重量%のスチレンおよび20重量%のアクリロニトリルより])等のPTFEブレンド物が含まれる。Blendex(商標)B449の使用が好ましい。
【0080】
成分F
使用する熱安定剤は、好ましくはトリフェニルホスフィン、亜リン酸トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)(Irgafos(商標)168)、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスフィナイト、リン酸トリイソオクチル、プロピオン酸オクタデシル3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル) (Irgafos(商標)1076)、ジホスホン酸ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリトリトール(Doverphos(商標)S-9228)、ジホスホン酸ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリトリトー(ADK STAB PEP-36)から選択される。それらは単独または混合して使用する (例えば、Irganox(商標)B900 (1:3の比でのIrgafos(商標)168とIrganox(商標)1076 の混合物)またはIrganox(商標)B900 および/または Irganox(商標)1076 とのDoverphos(商標)S-9228)。熱安定剤は、0.003〜0.2 重量%の含量で使用することが好ましい。
【0081】
成分G
加えて、場合により最大10.0重量%、好ましくは0.10〜8.0重量%およびより好ましくは0.2〜3.0重量%のその他の通常の添加剤(「さらなる添加剤」)が存在している。さらなる添加剤の群には難燃剤、抗滴下剤および熱安定剤が含まれず、その理由は、これらは既に成分B、EおよびFとして記載されているからである。さらなる添加剤の群にはガラス繊維、炭素繊維、カーボン・ナノチューブは含まれず、その理由は、これらは既に群Cにおいて取り込まれているからである。同様に、「さらなる添加剤」は、ジグリセロールエステルの群からの流動助剤ではなく、その理由は、これらは既に成分Dとして取り込まれているからである。
【0082】
ポリカーボネートの場合に典型的に添加されるような当該添加剤は、特に、EP−A 0 839 623、WO−A 96/15102、EP−A 0 500 496または“Plastics Additives Handbook”, Hans Zweifel, 5th Edition 2000, Hanser Verlag, Munichにおいて記載されているような、ポリカーボネートに慣例的な量での、酸化防止剤、紫外線吸収剤、IR吸収剤、静電気防止剤、蛍光増白剤、光散乱剤、無機顔料、カーボンブラックおよび/または染料を含む顔料等の着色料、二酸化チタンまたは硫酸バリウム等の無機充填剤である。これら添加剤は、単独またはさもなければ混合して添加してもよい。
【0083】
好ましい添加剤は、400nm未満の非常に低い透過率および400nmを超える非常に高い透過率を有する、特定の紫外線安定剤である。本発明の組成物に使用するための特に好適な紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール、トリアジン類、ベンゾフェノンおよび/または アリール化シアノアクリレートである。
【0084】
特に好適な紫外線吸収剤は、2−(3’,5’−ビス(1,1−ジメチルベンジル)−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール(Tinuvin(商標)234、ルートウィヒスハーフェン、BASF)、2−(2’−ヒドロキシ−5’−(tert−オクチル)フェニル)ベンゾトリアゾール (Tinuvin(商標)329、ルートウィヒスハーフェン、BASF))、ビス(3−(2H−ベンゾトリアゾールイル)−2−ヒドロキシ−5−tert−オクチル)メタン(Tinuvin(商標)360、ルートウィヒスハーフェン、BASF)、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシルオキシ)フェノール(Tinuvin(商標)1577、ルートウィヒスハーフェン、BASF)等のヒドロキシベンゾトリアゾール類、同様に2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン(Chimasorb(商標)22 、ルートウィヒスハーフェン、BASF)および2−ヒドロキシ−4−(オクチルオキシ)ベンゾフェノン(Chimassorb(商標)81、ルートウィヒスハーフェン、BASF) 等のベンゾフェノン類、2,2−ビス[[(2−シアノ−1−オキソ−3,3−ジフェニル−2−プロペニル)オキシ]メチル]−1,3−プロパンジイルエステル(9CI)(Uvinul(商標)3030、BASF AG ルートウィヒスハーフェン)、2−[2−ヒドロキシ−4−(2−エチルヘキシル)オキシ]フェニル−4,6−ジ(4−フェニル)フェニル−1,3,5−トリアジン (Tinuvin(商標)1600、ルートウィヒスハーフェン、BASF)、2,2'-(1,4-フェニレンジメチリデン)ビスマロン酸テトラエチル (Hostavin(商標)B-Cap、Clariant AG)またはN−(2−エトキシフェニル)−N’−(2−エチルフェニル)エタンジアミド(Tinuvin(商標)312、CAS番号.23949−66−8、ルートウィヒスハーフェン、BASF)である。
【0085】
特に好ましい特定の紫外線安定剤は、Tinuvin(商標)360、Tinuvin(商標)329 および/または Tinuvin(商標)312であり、非常に特に好ましいのは、Tinuvin(商標)329およびTinuvin(商標)312である。
【0086】
これら紫外線吸収剤の混合物も使用可能である。
【0087】
組成物は、組成物全体に対して、好ましくは最大0.8 重量%、好ましくは0.05重量%〜0.5重量%およびより好ましくは0.1 重量%〜0.4 重量%で紫外線吸収剤を含んでなる。
【0088】
好ましくは、組成物に追加の離型剤は含まれない。
【0089】
ガラス繊維を充填剤として使用する場合、少なくとも1種の熱安定剤(成分F)および場合により、さらなる添加剤として、紫外線吸収剤が存在していることが特に好ましい。
【0090】
成分A〜Dを含んでなり、場合によりBは含んでならず、かつ場合によりE〜Gを含んでなる本発明のポリマー組成物は、個々の成分を組み合わせること、混合することおよび均一化することによる、混和の一般的方法を用いて製造され、特に均一化は、好ましくは剪断力の適用によりメルト中で実施される。プレメルト均一化、組み合わせおよび混合は、場合により紛体プレミックスを用いることにより達成される。
【0091】
顆粒または顆粒および粉末と成分B〜Gとのプレミックスも使用可能である。同様に、好適な溶媒中の混合成分の溶液から生成されるプレミックスも使用可能であり、その場合、場合により、溶液中で均一化し、その後溶媒を除去することが可能である。
【0092】
より具体的には、本発明による組成物の成分B〜Gは、通常の方法によりまたはマスターバッチとしてポリカーボネート中に混和可能である。
【0093】
成分B〜Gを、単独または混合して、混和するためにマスターバッチを用いることが好ましい。
【0094】
本文脈において、本発明による組成物は、組み合わせ、混合し、均一化し、続けてスクリュー押出機(例えば、ZSK双軸押出機)、混和機あるいはBrabenderまたはBanburyミル等の従来の装置で押し出すことができる。押出後、押出物を冷却し粉末状にしてもよい。同様に、個々の成分をプレミックスし、次いで残留出発材料を単独および/または同様に混合して添加することも可能である。
【0095】
メルト中でプレミックスを組み合わせ、混合することは、射出成型機の可塑化装置においても達成することができる。この場合、メルトは後続の工程において成形品に直接変形される。
【0096】
成形プラスチック品は、射出成形によって製造されることが好ましい。
【0097】
ポリカーボネート組成物の形態である本発明による組成物は、多層システムの製造において有用である。これには、本発明のポリカーボネート組成物が、プラスチック品の上の1つ以上の層に適用されることを含む。例えば、ホイルインサート成形、共押出または多成分射出成形による適用は、成形品の成形と同時または直後に実施してもよい。しかしながら、成形済みの本体に適用してもよい(例えば、フィルムでの積層、既存の成形品の被覆的なオーバー成形または溶液での被覆による)。
【0098】
本発明による組成物は、電気/電子(EE)部門およびIT部門におけるフレーム部品の製造、具体的には、厳しい難燃性条件を有する用途に有用である。当該用途の例として、スクリーンまたはハウジング、例えば、ウルトラブックまたはLEDディスプレイ技術用フレーム(例えば、OLEDディスプレイまたはLCDディスプレイ、その他に電子インク装置用)が挙げられる。さらなる用途は、スマートフォン、タブレット、ウルトラブック、ノートブックまたはノート型パソコン等の携帯通信端末のハウジング部品だけでなく、衛星ナビゲーション、スマートウォッチまたは心拍計、同様に薄肉設計の電気的用途、例えば家庭用および業務用ネットワークシステムおよびスマートメーターハウジング部品である。
本発明による組成物はウルトラブックを製造するために使用することが好ましい。
本発明による組成物は、1.5mm壁厚で可燃性評価UL−94 V−0を有する、電気/電子部門およびIT部門のための厚さ0.1〜3mmの薄肉成形品の製造に特に有用である。
【0099】
本発明による特に好ましい組成物は、以下からなる:
A)20重量%〜99.0重量%の芳香族ポリカーボネート、
B)0.0重量%〜1.0重量%の、ペルフルオロブタン硫酸ナトリウム、ペルフルオロブタン硫酸カリウム、ペルフルオロタンスルホン酸ナトリウム、ペルフルオロメタンスルホン酸カリウム、ペルフルオロオクタン硫酸ナトリウム、ペルフルオロオクタン硫酸カリウム、2,5−ジクロロベンゼン硫酸ナトリウム、2,5−ジクロロベンゼン硫酸カリウム、2,4,5−トリクロロベンゼン硫酸ナトリウム、2,4,5−トリクロロベンゼン硫酸カリウム、メチルホスホン酸ナトリウム、メチルホスホン酸カリウム、(2−フェニルエチレン)ホスホン酸ナトリウム、(2−フェニルエチレン)ホスホン酸カリウム,ペンタクロロ安息香酸ナトリウム、ペンタクロロ安息香酸カリウム、2,4,6−トリクロロ安息香酸ナトリウム、2,4,6−トリクロロ安息香酸カリウム、2,4−ジクロロ安息香酸ナトリウム、2,4−ジクロロ安息香酸カリウム、フェニルホスホン酸リチウム、ジフェニルスルホンスルホン酸ナトリウム、ジフェニルスルホンスルホン酸カリウム、2−ホルミルベンゼンスルホン酸ナトリウム、2−ホルミルベンゼンスルホン酸カリウム、(N−ベンゼンスルホニル)ベンゼンスルホンアミドナトリウム、(N−ベンゼンスルホニル)ベンゼンスルホンアミドカリウム、ヘキサフルオロアルミン酸 三ナトリウム、ヘキサフルオロアルミン酸三カリウム、ヘキサフルオロチタン酸二ナトリウム、ヘキサフルオロチタン酸二カリウム、ヘキサフルオロケイ酸二ナトリウム、ヘキサフルオロケイ酸二カリウム、ヘキサフルオロジルコン酸二ナトリウム、ヘキサフルオロジルコン酸二カリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、テトラフルオロホウ酸ナトリウム、テトラフルオロホウ酸カリウム、ヘキサフルオロリン酸ナトリウム、ヘキサフルオロリン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸リチウム、ノナフルオロ−1−ブタンスルホン酸ナトリウム、ノナフルオロ−1−ブタンスルホン酸カリウムまたはそれらの混合物の群からの少なくとも1種の難燃剤、
C)0.5重量%〜50.0重量%の、少なくとも1種のガラス繊維、1種の炭素繊維および/またはカーボン・ナノチューブ、
D)0.01重量%〜3.0重量%のジグリセロールエステル、好ましくは式(I)の1種、最も好ましくはジグリセロールモノラウリルエステル、
E)0.0重量%〜5.0重量%の少なくとも1種の抗滴下剤、
F)0.0重量%〜1.0重量%の少なくとも1種の熱安定剤、
G)0.0重量%〜10.0重量%の、紫外線吸収剤、IR吸収剤、着色料、カーボンブラックおよび/または無機充填剤の群から選択される、さらなる添加剤。
【0100】
これら組成物は、少なくとも1種のガラス繊維を含んでなることが好ましく、かつガラス繊維が強化繊維としてのみ存在していることがなおさら好ましい。
【0101】
代替として、これら組成物が炭素繊維を含んでなることが非常に特に好ましく、かつ炭素繊維が強化繊維としてのみ存在していることが一層さらに好ましい。
【実施例】
【0102】
実施例
1.原料および試験方法の説明
本発明のポリカーボネート組成物は、280℃〜360℃の温度にて、従来のな機械(例えば、多軸押出機)で、添加剤とその他の添加物質との混合を伴い、または伴わずに、配合することにより製造した。
【0103】
以下の実施例に関係する本発明の化合物は、10kg/hのスループットにてBerstorff ZE 25押出機で製造した。溶融温度は275℃であった。
【0104】
基本ポリカーボネートAには、成分A−1、A−2、A−3、A−4、A−6および/またはA−7の混合物を利用した。
【0105】
成分A−1:9.5cm/10分のメルトボリュームフローレートMVR(ISO 1133による、300℃の試験温度および負荷1.2kgにて)を有する、ビスフェノールAに基づいた直鎖状ポリカーボネート。
成分A−2:6cm/10分のメルトボリュームフローレートMVR(ISO 1133による、300℃の試験温度および負荷1.2kgにて)を有する、ビスフェノールAに基づいた直鎖状ポリカーボネート粉末。
成分A−3:12.5cm/10分のメルトボリュームフローレートMVR(ISO 1133による、300℃の試験温度および負荷1.2kgにて)を有する、ビスフェノールAに基づいた直鎖状ポリカーボネート。
成分A−4:6cm/10分のメルトボリュームフローレートMVR(ISO 1133による、300℃の試験温度および負荷1.2kgにて)を有する、ビスフェノールAに基づいた直鎖状ポリカーボネート。
成分A−6:19cm/10分のメルトボリュームフローレートMVR(ISO 1133による、300℃の試験温度および負荷1.2kgにて)を有する、ビスフェノールAに基づいた直鎖状ポリカーボネートの粉末。
成分A−7:19cm/10分のメルトボリュームフローレートMVR(ISO 1133による、300℃の試験温度および負荷1.2kgにて)を有する、ビスフェノールAに基づいた直鎖状ポリカーボネート。
成分B:ドイツ、レーバークーゼン、LanxessよりBayowet(商標)C4、CAS番号29420−49−3として市販されている、ペルフルオロ-1-ブタンスルホン酸カリウム。
成分C−1:配合前に14μmの平均繊維直径および4.0mmの平均繊維長を有する、3BからのCS108F−14P 細断ガラス短繊維(非結合)。
成分C−2:配合前に14μmの平均繊維直径および4.5mmの平均繊維長を有する、Lanxess AGからのCS 7942 細断ガラス短繊維(結合)。
成分C−3:配合前に熱可塑性サイジングを有し、かつ6mmの平均細断長さを有する、ドイツ、Toho Tenax Europe GmbHからのCF Tenax A HT C493細断炭素繊維。
成分C−4:小さい外径、狭い直径分布および極めて高い長さ対直径比を有する多壁カーボン・ナノチューブの凝集体Baytubes C150 HP。壁数:3〜15/外径:13〜16nm/外径分布:5〜20nm/長さ:1〜>10μm/内径:4nm/内径分布:2〜6nm。
成分C−5:配合前に6mmの平均長を有する、Dow Aksa (トルコ)からのAC 3101 細断炭素繊維。
成分C−6:配合前に6mmの平均長を有する、台湾、Formosa Plastic CorporationからのTairyfil CS2516 細断炭素繊維。
成分C−7:配合前に11μmの平均繊維直径および4.5mmの平均繊維長を有する、Lanxess AG からのCS Special 7968 細断ガラス繊維。
成分C−8:1:4の厚さ/長さ比を有する、Nittobo からのCSG 3PA-830 細断平面ガラス繊維。
成分C−9: LanxessからのMF7980 粉末ガラス繊維。14μmの繊維厚さおよび190μmの繊維長さを有する不揃いのE−ガラス。
成分D:流動助剤としてRiken VitaminからのPoem DL-100 (モノラウリン酸ジグリセロール)。
成分E:ポリテトラフルオロエチレン(Blendex(商標)B449 (Chemturaからの、約50重量%のPTFEと約50重量%のSAN[80重量%のスチレンと20重量%のアクリロニトリルから])。
成分F:Lanxess AGからのトリイソオクチルリン酸(TOF)。
成分G−1:Emery Oleochemicalsからのグリセロールモノステアレート(GMS)。
成分G−2:Emery Oleochemicalsからのペンタエリトリトールテトラステアレート(PETS)。
成分G−3:Elvaloy 1820 AC; Dupontからのエチレン−アクリル酸メチルコポリマー。
【0106】
シャルピー衝撃強さを、80×10×4mmの片面ゲート射出成形試験バーで室温にてISO 7391/179eUにより測定した。
【0107】
シャルピーノッチ付き衝撃強さを、80×10×3mmの片面ゲート射出成形試験バーで室温にてISO 7391/179Aにより測定した。
【0108】
耐熱性の測定として、Coesfeld Materialtest からのCoesfeld Eco 2920機器を用いて、80×10×4mm試験試料に対して50Nのニードル負荷および50℃/時の加熱率で、ISO 306によるビカット軟化温度VST/B50を測定した。
【0109】
UL94 V可燃性を、127×12.7×1.0mm、127×12.7×1.5 mmおよび127×12.7×3 mmのバーで測定した。5回の試験、各場合において、最初は23℃で48時間保存した後、次いで70℃で7日間保存した後に、行うことにより耐火等級を測定した。
【0110】
UL94−5V可燃性を、127×12.7×1.5mm、127×12.7×2.0mmおよび127×12.7×3.0mmのバーおよび150×105×1,5mm、150×105×2.0mm、150×105×3.0mmのシートでも測定した。
【0111】
弾性係数を80×10×4mmのコアを有する片面ゲート射出成形ショルダーバーでISO 527により測定した。
【0112】
溶融粘度をISO 11443により測定した(コーンプレート配置)。
【0113】
Zwick RoellからのZwick 4106機器を用いて、メルトボリュームフローレート(MVR)をISO 1133(300℃の試験温度、質量1.2kgにて)により測定した。
【0114】
2.組成物
【表1】
【0115】
表1には、本発明の組成物 2、3、5および6の重要な特性が報告されている。 比較例1Vおよび4Vは、並列して提示されている。表から、ジグリセロールエステルを一切含有しない比較例による組成物は、際立ってより劣ったメルトボリュームフローレートMVRを有することが明らかとなっている。
【0116】
驚くべきことに、本発明の組成物は、メルトボリュームフローレートの大幅な改善および溶融粘度の改善のみならず、弾性係数(剛性)の増加も示している。
【0117】
表1b:ガラス繊維およびFR添加剤を含んでなる本発明の組成物ならびに比較例7Vおよび10V
以下の表において、[1/秒]での剪断速度と一緒に、溶融粘度値をそれぞれ報告する。
【表2】
【0118】
表1bには、本発明の組成物 8、9、11および12に関する重要な特性が報告されている。比較例7Vおよび10Vは、並列して提示されている。表から、ジグリセロールエステルを一切含有しない比較例による組成物は、際立ってより劣ったメルトボリュームフローレートMVRを有することが明らかとなっている。本発明の組成物の流動曲線は、全ての剪断範囲にわたって、種々の測定温度のそれぞれにおいて際立って低減した溶融粘度を示し、改善した流動性を示している。
【0119】
驚くべきことに、本発明の組成物は、レオロジー特性の大幅な改善のみならず、良好な可燃特性を保持しながら、弾性係数(剛性)の増加も示している。
【0120】
表1c:ガラス繊維およびFR添加剤を含んでなる本発明の組成物ならびに比較例13Vおよび16V
以下の表において、[1/秒]での剪断速度と一緒に、溶融粘度値をそれぞれ報告する。
【表3】
【0121】
表1cには、本発明の組成物14、15、17および18に関する重要な特性が報告されている。比較例13Vおよび16Vは、並列して提示されている。表から、ジグリセロールエステルを一切含有しない比較例による組成物は、際立ってより劣ったメルトボリュームフローレートMVRを有することが明らかとなっている。本発明の組成物の流動曲線は、全ての剪断範囲にわたって、種々の測定温度のそれぞれにおいて際立って低減した溶融粘度を示し、改善した流動性を示している。
【0122】
驚くべきことに、本発明の組成物は、レオロジー特性の大幅な改善のみならず、良好な可燃特性も示している。
【0123】
表1d:ガラス繊維およびFR添加剤を含んでなる本発明の組成物ならびに較例19Vおよび22V
以下の表において、[1/秒]での剪断速度と一緒に、溶融粘度値をそれぞれ報告する。
【表4】
【0124】
表1dには、本発明の組成物20、21、23および24に関する重要な特性が報告されている。比較例19Vおよび22Vは、並列して提示されている。表から、ジグリセロールエステルを一切含有しない比較例による組成物は、際立ってより劣ったメルトボリュームフローレートMVRを有することが明らかとなっている。本発明の組成物の流動曲線は、全ての剪断範囲にわたって、種々の測定温度のそれぞれにおいて際立って低減した溶融粘度を示し、改善した流動性を示している。
【0125】
表1e:ガラス繊維を含んでなる本発明の組成物ならびに比較例25Vおよび28V
以下の表において、[1/秒]での剪断速度と一緒に、溶融粘度値をそれぞれ報告する。
【表5】
【0126】
表1eには、本発明の組成物26、27、29および30に関する重要な特性が報告されている。比較例25Vおよび28Vは、並列して提示されている。表から、ジグリセロールエステルを一切含有しない比較例による組成物は、際立ってより劣ったメルトボリュームフローレートMVRを有することが明らかとなっている。本発明の組成物の流動曲線は、全ての剪断範囲にわたって、種々の測定温度のそれぞれにおいて際立って低減した溶融粘度を示し、改善した流動性を示している。
【0127】
表1f:ガラス繊維を含んでなる本発明の組成物ならびに比較例31Vおよび 34V
以下の表において、[1/秒]での剪断速度と一緒に、溶融粘度値をそれぞれ報告する。
【表6】
【0128】
表1fには、本発明の組成物32、33、35および36に関する重要な特性が報告されている。比較例31Vおよび34Vは、並列して提示されている。表から、ジグリセロールエステルを一切含有しない比較例による組成物は、際立ってより劣ったメルトボリュームフローレートMVRを有することが明らかとなっている。本発明の組成物の流動曲線は、全ての剪断範囲にわたって、種々の測定温度のそれぞれにおいて際立って低減した溶融粘度を示し、改善した流動性を示している。
【0129】
【表7】
【0130】
表1gには、本発明の組成物38〜43に関する重要な特性が報告されている。比較例37Vは、並列して提示されている。表から、ジグリセロールエステルを一切含有しない比較例による組成物は、際立ってより劣ったメルトボリュームフローレートMVRを有することが明らかとなっている。
【0131】
例41は、燃焼試験において、改善した流動速度にもかかわらず、UL 94−5V等級が保持されていることを示している。例42は、94−5V試験において、およそ変化していないMVRについてはより高い等級を達成可能であることを示している(1.5mmで5VB〜5VA)。
【0132】
表2a:炭素繊維を含んでなる本発明の組成物および比較例44V
以下の表において、[1/秒]での剪断速度と一緒に、溶融粘度値をそれぞれ報告する。
【表8】
【0133】
表2には、本発明の組成物45〜47に関する重要な特性が報告されている。比較例44Vは、並列して提示されている。表から、ジグリセロールエステルを一切含有しない比較例による組成物は、際立ってより劣ったメルトボリュームフローレートMVRを有することが明らかとなっている。本発明の組成物の流動曲線は、全ての剪断範囲にわたって、種々の測定温度のそれぞれにおいて際立って低減した溶融粘度を示し、改善した流動性を示している。
【0134】
表2b:炭素繊維を含んでなる本発明の組成物ならびに比較例48Vおよび52V
以下の表において、[1/秒]での剪断速度と一緒に、溶融粘度値をそれぞれ報告する。
【表9】
【0135】
本発明の組成物49〜51および53〜55に関する重要な特性が報告されている。比較例48Vおよび52Vは、並列して提示されている。表から、ジグリセロールエステルを一切含有しない比較例による組成物は、際立ってより劣ったメルトボリュームフローレートMVRを有することが明らかとなっている。本発明の組成物の流動曲線は、全ての剪断範囲にわたって、種々の測定温度のそれぞれにおいて際立って低減した溶融粘度を示し、改善した流動性を示している。
【0136】
【表10】
【0137】
表3aには、本発明の組成物64〜66に関する重要な特性が報告されている。比較例56V〜63Vは、並列して提示されている。表から、ジグリセロールエステルを一切含有しない比較例による組成物は、際立ってより劣ったメルトボリュームフローレートMVRを有することが明らかとなっている。
【0138】
【表11】
【0139】
表3bには、本発明の組成物75〜77に関する重要な特性が報告されている。比較例67V〜74Vは、並列して提示されている。表から、ジグリセロールエステルを一切含有しない比較例による組成物は、際立ってより劣ったメルトボリュームフローレートMVRを有することが明らかとなっている。
【0140】
【表12】
【0141】
表3cには、本発明の組成物84に関する重要な特性が報告されている。比較例78V〜83V、具体的には80Vおよび83Vは、並列して提示されている。表から、ジグリセロールエステルを一切含有しない比較例による組成物は、際立ってより劣ったメルトボリュームフローレートMVRを有することが明らかとなっている。