(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6804461
(24)【登録日】2020年12月4日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】大気圧未満の圧力でドライアイスからエネルギーを回収する方法
(51)【国際特許分類】
F17C 9/04 20060101AFI20201214BHJP
【FI】
F17C9/04
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-548468(P2017-548468)
(86)(22)【出願日】2016年4月7日
(65)【公表番号】特表2018-514713(P2018-514713A)
(43)【公表日】2018年6月7日
(86)【国際出願番号】FR2016050807
(87)【国際公開番号】WO2016162643
(87)【国際公開日】20161013
【審査請求日】2018年5月18日
(31)【優先権主張番号】1553020
(32)【優先日】2015年4月8日
(33)【優先権主張国】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517319606
【氏名又は名称】クライオ ピュール
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】クロディック,ドニ
(72)【発明者】
【氏名】トゥバッシ,ヨーゼフ
【審査官】
武内 大志
(56)【参考文献】
【文献】
特開平8−269469(JP,A)
【文献】
特開2002−325565(JP,A)
【文献】
特開2010−267707(JP,A)
【文献】
特開2007−232329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/00−13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライアイスの状態変化に由来する冷却エネルギーの回収方法において、
−大気圧未満の圧力でドライアイスを格納する容器(2)と;
−内部に熱伝導流体が循環し容器(2)を横断する一次エネルギー回収回路(3)と;
−容器(2)から気体CO2を抽出するための吸込み導管(7)と;
−吸込み導管(7)が横断する熱交換器(9)と;
−内部に熱伝導流体が循環し熱交換器(9)を横断する二次回路(14)と;
を含む装置(1)を用いて実施される方法であって、
−一次エネルギー回収回路(3)内に熱電導流体を通過させることにより、ドライアイスの加熱及び気体CO2への状態変化、ならびに熱伝導流体の冷却を誘発するステップと;
−容器(2)内に格納された気体CO2を抽出するステップと;
−大気圧未満まで容器(2)内の圧力を連続的に減圧するステップと;
−容器(2)から抽出された気体CO2が、熱交換器(9)内に入るステップと;を含み、
熱交換器(9)内で気体CO2が自らの冷却エネルギーの一部を、二次回路(14)内を循環する熱伝導流体に伝達することを特徴とする、方法。
【請求項2】
圧力センサ(8)を用いて吸込み導管(7)内の圧力を連続的に測定するステップを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
圧力センサ(8)によって測定された圧力を中央ユニットに伝送するステップを含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
吸込み導管(7)の一端部に位置する真空ポンプ(11)を用いて、容器(2)内及び吸込み導管(7)内の圧力を調節するステップを含むことを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
容器(2)内の圧力が、0.00055絶対バールであることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
請求項1に記載の冷却エネルギー回収方法を実施することができる、冷却エネルギー回収装置(1)であって、
−大気圧未満の圧力、及び大気圧未満の圧力に対応する固化温度でドライアイスを格納することのできる容器(2)と;
−内部に熱伝導流体が循環し容器(2)を横断する一次エネルギー回収回路(3)と;
−容器(2)から気体CO2を抽出できるようにする吸込み導管(7)と;
−吸込み導管(7)が横断する熱交換器(9)と;
−内部に熱伝導流体が循環し熱交換器(9)を横断する二次回路(14)と;
を含む装置であって、
吸込み導管(7)が、気体CO2を抽出し容器(2)を連続的に大気圧未満の圧力まで減圧できるようにすることのできる手段を備えていることを特徴とする装置(1)。
【請求項7】
請求項4に記載の冷却エネルギー回収方法を実施することができる、冷却エネルギー回収装置(1)であって、
−大気圧未満の圧力、及び大気圧未満の圧力に対応する固化温度でドライアイスを格納することのできる容器(2)と;
−内部に熱伝導流体が循環し容器(2)を横断する一次エネルギー回収回路(3)と;
−容器(2)から気体CO2を抽出できるようにする吸込み導管(7)と;
−吸込み導管(7)に取り付けられた吸込み用圧力センサ(8)と;
−吸込み導管(7)が横断する熱交換器(9)と;
−熱伝導流体が循環し熱交換器(9)を横断する二次回路(14)と;
を含む装置であって、
気体CO2を抽出することのできる手段が真空ポンプ(11)であることを特徴とする装置(1)。
【請求項8】
請求項4に記載の冷却エネルギー回収方法を実施することができる、冷却エネルギー回収装置(1)であって、
−大気圧未満の圧力、及び大気圧未満の圧力に対応する固化温度でドライアイスを格納することのできる容器(2)と;
−内部に熱伝導流体が循環し容器(2)を横断する一次エネルギー回収回路(3)と;
−容器(2)から気体CO2を抽出できるようにする吸込み導管(7)と;
−吸込み導管(7)に取り付けられた吸込み用圧力センサ(8)と;
−吸込み導管(7)が横断する熱交換器(9)と;
−内部に熱伝導流体が循環し熱交換器(9)を横断する二次回路(14)と;
を含む装置であって、
圧力センサ(8)に由来する情報を処理し真空ポンプ(11)の抽出力を調節することのできる中央ユニットを含むことを特徴とする装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気圧未満の圧力でのドライアイスを用いた冷熱回収方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
「大気圧未満の(infra−atmospherique)」という表現は、ここでは大気圧より低い圧力を意味する。
【0003】
二酸化炭素(CO
2)は、料理の分野から重工業に至るまでの多くのさまざまな利用分野において使用されている。
【0004】
例えば、ガス産業において、化石由来または生物由来のメタンガスはCO
2を含有しており、特にメタンの輸送前にこのCO
2を抽出することが適切である。実際、その輸送前に、メタンガスは、大気圧で−160℃に近い液化温度で液化される。ところが、同じ圧力条件下で、CO
2は、−80℃に近い温度で固化する。したがって、液化メタンはドライアイスが飽和した状態にあり、このことは工業施設にとって問題である。
【0005】
したがって、CO
2は、論理的に、公知の異なる手段により、特に清浄技術を用いて、抽出される。抽出されたCO
2は、次に大気に向かって廃棄されるかまたは、他の利用分野のために再生利用される。
【0006】
本発明は、特に工業施設内でのCO
2の再生利用に関する。
【0007】
仏国特許発明第2820052号明細書(ARMINES)として公開された仏国特許出願は、固体凝縮という表現でも知られている大気圧下での逆昇華による二酸化炭素の抽出(捕捉)を可能にする方法及びシステムを提示している。CO
2は、逆昇華蒸発器中で0.89絶対バールの圧力下で約−80℃の温度で、逆昇華によって捕捉される。冷却流体は、逆昇華蒸発器内を通り、この蒸発器はひとたびドライアイスで満たされた時点で、除霜段階に移る。固体CO
2は液化し、冷却流体は液化エネルギーを回収する。エンタルピーの総変動は228kJ/kgである。交換器の伝達効率は90%である。したがって、冷却流体によって回収されるエネルギーは、205kJ/kgである。その上、CO
2は、固体状態での0.89絶対バールという初期圧力から、液体状態での5.2バール超の圧力まで移行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】仏国特許発明第2820052号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この先行技術には大きな欠陥がある。CO
2の熱力学特性が、最適な形で活用されていないのである。異なる方法を用いて、ドライアイスから、より高い冷熱を回収する目的で、より大量のエネルギーを再生利用することができると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このため、第1に、ドライアイスの状態変化に由来するエネルギーの回収方法が提案されている。この方法は:
− 大気圧未満の圧力でドライアイスを格納する容器(2)と;
− 容器(2)を横断するエネルギー回収用一次回路(3)と;
を含む装置(1)を用いて実施される
【0011】
この方法は、
− 一次回路内に冷却流体を通過させるステップであって、ドライアイスの加熱及びCO
2への状態変化、ならびに冷却流体の冷却を誘発するステップと;
− 容器に格納されたCO
2を抽出するステップと;
を含む。
【0012】
この方法は、大気圧未満の圧力まで容器をほぼ連続的に減圧するステップを含む。
【0013】
以下のようなさまざまな補足的特徴を、単独でまたは組合せた形で想定することができる:
− 容器から抽出されるCO
2は気体である;
− 方法は、容器から抽出されたCO
2が熱交換器内を通過するステップを含み、この熱交換器内でCO
2は自らの熱の一部を二次回路内で循環する冷却流体に放出する;
− 方法は、圧力センサを用いて吸込み用導管内の圧力をほぼ連続的に測定するステップを含む;
− 方法は、圧力センサによって測定された圧力を中央ユニットに伝送するステップを含む;
− 方法は、吸込み導管の一端部に位置する真空ポンプを用いて、容器内及び吸込み導管内の圧力を調節するステップを含む;
− 容器内の圧力は、約0.00055絶対バールである。
【0014】
第2に、上述の通りのエネルギー回収方法を実施することのできるエネルギー回収装置において、
− 大気圧未満の圧力及び大気圧未満の圧力に対応する固化温度でドライアイスを格納することのできる容器と;
− 容器を横断し、内部に冷却流体が循環するエネルギー回収用一次回路と;
− 容器からCO
2を抽出できるようにする吸込み導管と;
を含む装置が提案されている。
【0015】
吸込み導管は、CO
2を抽出し、容器を連続的に大気圧未満の圧力まで減圧できるようにすることのできる手段を備えている。
【0016】
以下のようなさまざまな補足的特徴を、単独でまたは組合せた形で想定することができる:
− 装置は、吸込み導管が横断する熱交換器を含み、熱交換器には同様に二次回路が横断しており、吸込み導管はさらに圧力センサを含み、CO
2を抽出することのできる手段は真空ポンプである。
− 装置は、圧力センサに由来する情報を処理し真空ポンプの抽出力を調節することのできる中央ユニットを含む。
【0017】
本発明の他の目的及び利点は、ドライアイスからのエネルギー回収用の装置の概略図を表わす図を参照しながら以下でなされている一実施形態についての説明に照らして、明らかになるものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】エネルギー回収用一次回路3が横断する容器2を含む装置1を表わす。
【発明を実施するための形態】
【0019】
一次回路3は、一次ポンプ4を含む。一次ポンプ4は、一次出力変更装置6によりそれ自体制御されている一次可変速度電動機5によって運転される。
【0020】
冷却流体が一次回路3内を循環する。冷却流体は液体または気体であり得る。冷却流体が気体である場合、一次ポンプ4は圧縮機である。
【0021】
装置1は、吸込み用圧力センサ8を備えた吸込み導管7を含む。
【0022】
吸込み導管7は、熱交換器9を横断した後、一端部10から再び出ていく。端部10には、制御機構13によって制御される周波数変更装置12によって運転される真空ポンプ11が備わっている。
【0023】
熱交換器9にはさらに、熱回収用二次回路14が横断している。冷却流体が二次回路14内を循環する。二次回路14は、二次ポンプ15を含む。二次ポンプ15は、それ自体二次出力変更装置17により制御されている二次可変速度電動機16によって運転される。
【0024】
ここで以下の表1を参照しながら、エネルギー回収方法について説明する:
【0026】
表中に提供されているデータは、CO
2に関するものである。この表は、左から右へ、昇華温度、飽和絶対圧力、密度及び昇華潜熱を示す。
【0027】
これらのデータは、スタンフォード大学機械工学部のW.C.ReynoldsのSI中で「Thermodynamic properties」という題の著書に記載の式に基づいて、昇華潜熱についての補足的計算と共にソフトウェアRefprop9によって提供されたものである。
【0028】
簡略化すると、エネルギーは2つの部分に分解される。一方の部分は、力学エネルギーに変換可能であり、もう一方は変換不能である。力学エネルギーに変換可能な部分は、エクセルギーと呼ばれる。したがって、エクセルギーによって1つのエネルギーの量を測定することが可能になる。
【0029】
CO
2に関しては、その温度が低くなればなるほど、潜熱のエクセルギー値は高くなる。
【0030】
固体状態にあるCO
2は、ドライアイスと呼ばれる。初期の瞬間において、容器2は、所与の質量のドライアイスを含む。容器2内の圧力は大気圧未満である。すなわち、容器の圧力は、1バールである大気圧よりも低い。
【0031】
この大気圧未満の圧力は、真空ポンプ11によって恒常に保たれる。この実施形態において、容器内の圧力は0.00055絶対バール、つまり−140℃の昇華温度である。容器2は、外部環境との熱交換を削減するため、効率の高い断熱材で被覆されている。
【0032】
一次回路3内を循環する冷却流体は、容器2を横断し、ドライアイスとの熱交換によって冷却される。
【0033】
ドライアイスは、冷却流体の作用下で加熱され、その温度が0.00055絶対バールの圧力で−140℃を超えた場合に瞬間的に昇華する。
【0034】
このとき、圧力及び温度は、ドライアイスの昇華の作用下で自然に上昇する傾向を有する。それを回避するために、真空ポンプ11はより多くの気体CO
2を抽出して、0.00055絶対バールの圧力が恒常にとどまるようにし、こうして昇華温度は−140℃に維持されることになる。実際、先に説明した通り、潜熱のエクセルギー値は、昇華温度が低くなればなるほど高くなる。
【0035】
エネルギー回収は、ドライアイスの完全昇華まで行なわれる。ひとたびドライアイスが完全に消失したならば、容器2にドライアイスが再充填される。
【0036】
容器2内の圧力の調節は、吸込み圧力センサ8を用いて、吸込み導管7内の圧力を測定することによって行なわれる。
【0037】
吸込み導管7内の圧力の値は、図に表現されていない中央ユニットに連続的に送信される。
【0038】
吸込み導管7内の圧力が目標圧力、この場合0.00055絶対バールを超えた場合、中央ユニットは、制御機構13及び周波数変更装置12を介して、真空ポンプ11に対して、より多くの気体CO
2を抽出して目標圧力が達成され、それが吸込み導管7内で恒常にとどまるようにするように命令する。容器2内及び吸込み導管7内の圧力は、ほぼ同一である。
【0039】
容器2から出る気体CO
2は、熱交換器9を横断し、その顕熱の一部分を二次回路14内で循環する冷却流体に放出する。
【0040】
一次回路3内及び二次回路14内の冷却流体の流量は、一次回路3についてはドライアイスとそして二次回路14については気体CO
2との熱交換が可能な限り高い効率のものとなるように適応させることができる。
【0041】
こうして、顕熱の一部分は二次回路14によって回収される。潜熱に対比して、顕熱は、CO
2の状態変化無く、放出されたエネルギーに対応する。
【0042】
二次回路14内の冷却流体及び吸込み導管7内のCO
2は、逆流で循環することが有利である。
【0043】
冷却流体は、−140℃に近いこれらの低温で固化せずにいることのできるものでなければならない。このような理由から、有利にはプロパンを冷却流体として使用することができる。
【0044】
熱交換器9内の熱伝達は、大きい温度差にわたり行なわれる。典型的には、この温度差は−140℃から20℃まで広がっている。顕熱は約120kJ/kgである。
【0045】
容器2内では、表を参照すると、昇華潜熱は約594kJ/kgである。
【0046】
したがって、回収可能な合計熱は、約714kJ/kgである。90%の効力での熱交換を可能にする機器を用いると、実際に回収される合計熱は約643kJ/kgである。
【0047】
このように説明してきた方法及び装置は、二酸化炭素の熱力学特性を有利に活用することにより、はるかに効力の高いドライアイスのエネルギー回収を可能にする。