特許第6804466号(P6804466)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6804466
(24)【登録日】2020年12月4日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】医療用溶液の調製のための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/16 20060101AFI20201214BHJP
【FI】
   A61M1/16 161
   A61M1/16 163
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-555299(P2017-555299)
(86)(22)【出願日】2016年4月15日
(65)【公表番号】特表2018-516632(P2018-516632A)
(43)【公表日】2018年6月28日
(86)【国際出願番号】EP2016000625
(87)【国際公開番号】WO2016169642
(87)【国際公開日】20161027
【審査請求日】2019年4月12日
(31)【優先権主張番号】102015005142.3
(32)【優先日】2015年4月22日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597075904
【氏名又は名称】フレゼニウス メディカル ケア ドイッチェランド ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】コペルシュミット パスカル
【審査官】 安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−092402(JP,A)
【文献】 特開2001−218837(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0000990(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/14− 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの第1の成分及び少なくとも1つの第2の成分から医療用溶液を調製するための方法であって、前記第1の成分及び前記第2の成分は、液体として存在し、それぞれの輸送手段によって輸送されて混合溶液を得る方法において、
前記輸送手段は、前記第1及び第2の成分の濃度の変調が行われるように作動し、
前記混合溶液の電導度又は電導度と相関するパラメータが測定点において測定され、
前記成分の前記濃度の変調は、前記混合溶液の測定電導度又は電導度と相関するパラメータの特定の所望の変調が生じるか又は変調が生じないような所望の状態で行われ、
前記第1及び第2の成分の濃度の変調は、連続な正弦波形態で行われる、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記混合溶液の前記測定電導度又は電導度と相関する前記パラメータの測定値の評価が実行され、変調の発生、又は所望の変調からの差異に基づいて、エラー状態に対する結論が導き出される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
エラー状態の種類から、その濃度がこの成分についての期待値と異なる成分に対する結論が導き出される、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記医療用溶液が透析溶液であること、及び/又は、前記第1の成分が塩基濃縮物であり、前記第2の成分が酸濃縮物である、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1又は第2の成分の電導度又は電導度と相関するパラメータの測定は実行されない、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記測定点を通過する前記成分の逐次的な輸送は行われない、
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
どの成分の濃度がこの成分についての期待値と異なるかについての判定が、前記混合溶液の測定電導度若しくは前記混合溶液の電導度と相関するパラメータの変調の振幅から、及び/又は、前記混合溶液の平均測定電導度若しくは電導度と相関する混合溶液のパラメータの平均値から、及び/又は、前記輸送手段の刺激に対する、前記混合溶液の測定電導度若しくは電導度と相関する前記混合溶液のパラメータの変調の位相シフトから、下される、
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
第1の成分を輸送するための第1の輸送手段と、第2の成分を輸送するための第2の輸送手段とを有するとともに、前記輸送手段と連通する少なくとも1つの主ラインを有し、前記成分が前記輸送手段によって前記主ライン内へ輸送されて主ライン内で混合溶液が作り出されるように構成された医療用溶液を調製するための装置において、
前記混合溶液の電導度又は電導度と相関するパラメータを測定するためのセンサが前記主ライン内に設けられ、前記輸送手段が、前記混合溶液の測定電導度又は電導度と相関する測定パラメータの変調が生じないか又は特定の所望の変調が生じるような所望の状態で、前記成分の濃度の変調が行われるように構成されており、
前記輸送手段は、前記第1及び第2の成分の濃度の変調が連続な正弦波形態で行われるように構成されている、
ことを特徴とする装置。
【請求項9】
前記装置は、前記センサによって検出された信号が供給される評価ユニットを有し、前記評価ユニットは、変調、又は、所望の変調と異なる、前記混合溶液の測定電導度若しくは電導度と相関するパラメータの変調が見いだされたときに、エラー状態に対する結論を導き出すことができるように構成されたことを特徴とする、
請求項に記載の装置。
【請求項10】
前記評価ユニットは、エラー状態の種類から、どの成分の濃度がこの成分についての期待値と異なるかを判定することができるように構成されている、
請求項に記載の装置。
【請求項11】
前記混合溶液の電導度又は電導度と相関するパラメータを測定するために厳密に1つのセンサを設けられている、
請求項ないし10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記第1又は第2の成分の電導度又は電導度と相関するパラメータの測定のためのセンサ設けられていない
請求項ないし11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記評価ユニットは、どの成分の濃度がこの成分についての期待値と異なるかについての判定が、前記混合溶液の測定電導度若しくは電導度と相関する前記混合溶液のパラメータの変調の振幅から、及び/又は、前記混合溶液の平均測定電導度、若しくは電導度と相関する前記混合溶液のパラメータの平均値から、及び/又は、前記輸送手段の刺激に対する、前記混合溶液の測定電導度若しくは電導度と相関する前記混合溶液のパラメータの変調の位相シフトから、下されるように構成されている、
請求項ないし12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
請求項ないし13のいずれかに記載の装置を有することを特徴とする、血液処理デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの第1の液体成分及び少なくとも1つの第2の液体成分から医療用溶液を調製するための方法及び装置に関し、ここで第1の成分及び第2の成分は、少なくとも1つの輸送手段を用いて各々輸送されて少なくとも1つの混合溶液を得る。
【背景技術】
【0002】
一方が酸濃縮物及び他方が塩基濃縮物である2つの成分から透析溶液を調製することは従来技術から公知である。両成分の濃度を監視しなければならない。これは、温度測定と共に電導度センサが設けられた公知のデバイスにおいて行われ、成分の各々について電導度の温度依存性が考慮される。
【0003】
濃縮物である成分の輸送は、濃縮ポンプによって行われる。判定された電導度の値が所望の値と異なる場合、デバイスの警報が生じる。
【0004】
上述のように、以下で「部分成分」とも呼ばれる成分の濃度は、典型的には個別の電導度センサによって検出され、それぞれの所望の値との差異を、総濃度、すなわち成分を含有する混合溶液の濃度とは独立に検出することができるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この公知の手順の短所は、成分ごとにセンサセルが必要とされることである。随意に、混合溶液の電導度を測定するための更なるセンサセルが更なる保護システムとして用いられるので、全体として比較的複雑な構造になる。
【0006】
本発明の基礎をなす目的は、医療用溶液、特に血液透析に用いられるような透析溶液を調製するための方法及び装置を従来技術と比べて簡素化することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1の特徴を有する方法並びに請求項9の特徴を有する装置によって達成される。
【0008】
本発明によれば、輸送手段は、第1及び第2の成分の濃度の変調が行われるように操作され、混合溶液の電導度、又は電導度と相関する混合溶液のパラメータは、少なくとも1つの測定点、好ましくは厳密に1つの測定点において測定されることが規定され、ここで、濃度の変調は、混合溶液の又は電導度と相関する混合溶液のパラメータの特定の変調(所望の変調)が生じるか又は変調が生じないような所望の状態で行われる。
【0009】
それゆえ本発明の基礎をなす思想は、塩基濃縮物及び酸濃縮物のような成分を、混合溶液中の第1の成分及び第2の成分の濃度が経時的に可変であるように輸送することである。
【0010】
少なくとも2つの成分のこの変調は、総電導度又はそれと相関する総濃度、すなわち混合溶液の電導度又は濃度が、いかなる変調も有さないように、すなわち経時的に一定であるように、又は、全く特定の所望の変調を有するように、実行することができる。
【0011】
混合溶液の測定電導度、又はそれと相関する、混合溶液の総濃度などのパラメータの評価の過程で、それが変調されているか又はその変調が所定の所望の変調と異なることが見いだされた場合、エラー状態に対する結論を導き出すことができる。これは、例えば、両成分のうちの一方が混合溶液中に高すぎる又は低すぎる濃度で存在することを含み得る。
【0012】
第1及び第2の溶液の濃度の変調は、混合溶液中で電導度若しくは濃度又はそれらと相関するパラメータの時間的変動が生じないように実行されることが特に有利である。このとき、この所望の状態とは異なり、電導度又はそれと相関するパラメータが変調されていること、すなわち時間的に一定ではないことが見いだされた場合、エラー状態に対する結論を導き出すことができる。
【0013】
したがって、混合溶液の測定値の評価を、この値の変調が存在するか否かに関して実行することができる。存在する場合、エラー状態に対する結論を下すことができる。
【0014】
同様のことが、所望の状態を表す、混合溶液の総濃度、電導度等の全く特定の所望の変調が設定され、このとき実際の変調が所定の所望の変調とは異なることが見いだされた場合にも、それに応じて適用される。この場合にも、エラー状態に対する結論を下すことができる。
【0015】
本発明の有利な実施形態において、エラー状態の種類から、その濃度が期待値と異なる成分に対する結論を導き出すことができる。それゆえ結論は、一般的にエラー状態に対して、すなわち所望の状態と異なる状態に対して導き出されるのみならず、複数の成分のうちのどれが所望の値と異なる濃度で存在するかを判定することができる。
【0016】
本発明は、混合溶液を調製するための厳密に2つの溶液の使用に限定されず、2つより多くの溶液も使用することができることを、この時点で指摘しておく。
【0017】
混合溶液は、投与可能な完成した医療用溶液、特に透析溶液であり得るが、1つ又はそれより多くの更なる物質を添加してはじめて完成した医療用溶液、特に透析溶液になる溶液であってもよい。
【0018】
本発明による方法は、溶液を調製するための装置に患者が繋がれていない間に実行することができる。患者が装置に繋がれている間の溶液のオンライン調製の意味で方法が実行される場合も、本発明によって包含される。
【0019】
第1の成分は、塩基濃縮物であり得、第2の濃縮物は、酸濃縮物であり得る。塩基濃縮物は、pH>7及びバッファーを有し、酸濃縮物は、pH<7及び生理学的に適合性の酸を有する。一方又は両方の成分が、電解質及び随意に浸透剤を含むことができる。
【0020】
本発明は、単一の電導度測定セルを用いて、又は、濃度、若しくは濃度若しくは電導度と相関するパラメータの測定に適した唯一の単独のセンサのみを用いて、部分成分の生理学的性質の監視を可能にする。加えて、このセル又はセンサは、混合溶液の電導度又は濃度を監視するために使用することができる。
【0021】
それゆえ本発明の有利な実施形態は、第1又は第2の成分の電導度又は電導度と相関するパラメータの測定を実行せず、混合溶液のパラメータ、特に電導度の検出のみを実行することである。
【0022】
測定点を通過する成分の逐次的な輸送は好ましくは規定されず、なぜなら本発明の好ましい実施形態において、混合溶液の測定された性質から、エラー状態にある成分に対する結論を導き出すことができるからである。
【0023】
どの成分の濃度がこの成分についての期待値と異なるかについての判定を、以下のパラメータの1つ又はそれより多くから、下すことができる。
・混合溶液の測定電導度又は電導度と相関する混合溶液の測定パラメータの変調の振幅;
・混合溶液の平均測定電導度、又は電導度と相関する混合溶液のパラメータの平均値;
・輸送手段の刺激に対する、混合溶液の測定電導度又は電導度と相関する混合溶液の測定パラメータの変調の位相シフト。
【0024】
最後に述べた選択肢に関して、成分に対する、好ましくはポンプとして構成される、アクチュエータ又は輸送手段の刺激が検出される。
【0025】
本発明の好ましい実施形態において、第1及び第2の成分の濃度の変調は、正弦波様式で行われる。
【0026】
本発明は、さらに、医療用溶液を調製するための装置に関し、上記装置は、第1の成分を輸送するための少なくとも1つの第1の輸送手段と、第2の成分を輸送するための少なくとも1つの第2の輸送手段とを有するとともに、輸送手段と連通する少なくとも1つの主ラインを有し、上記成分が輸送手段によって主ライン内へ輸送されて主ライン内で少なくとも1つの混合溶液が作り出されるようになっており、混合溶液の電導度又は電導度と相関するパラメータを測定するための、少なくとも1つの、好ましくは厳密に1つのセンサが主ラインに設けられ、輸送手段は、混合溶液の測定電導度又は電導度と相関する混合溶液の測定パラメータの特定の所望の変調が生じるか又は変調が生じないような装置の所望の状態で、濃度の変調が行われるように構成される。
【0027】
装置は、好ましくは少なくとも1つの評価ユニットを有し、これはセンサに接続され、センサによって検出された信号を評価し、評価ユニットは、変調、又は、所望の変調と異なる、混合溶液の測定電導度若しくは電導度と相関する混合溶液の測定パラメータの変調が見いだされたときに、エラー状態に対する結論が導き出されるように構成される。
【0028】
評価ユニットは、エラー状態の種類から、どの成分の濃度が期待値と異なるかを判定することができるように構成することができる。
【0029】
上述のように、混合溶液の電導度又は電導度と相関するパラメータを測定するために、厳密に1つのセンサを設けることが好ましい。
【0030】
第1若しくは第2の成分の個々の電導度又は電導度に相関する個々のパラメータを測定するためのセンサは、省かれることが好ましい。
【0031】
評価ユニットは、どの成分の濃度がこの成分についての期待値と異なるかについての判定が、測定電導度若しくは電導度と相関するパラメータの変調の振幅から、及び/又は、平均測定電導度、若しくは電導度と相関する混合溶液のパラメータの平均値から、及び/又は、輸送手段の刺激に対する、測定電導度若しくは電導度と相関する混合溶液のパラメータの変調の位相シフトから、下されるように構成されることが好ましい。
【0032】
輸送手段の変調との比較のために、対応するセンサ又はその他の検出手段が設けられ、この変調、すなわちポンプなどの刺激を検出する。
【0033】
好ましい実施形態において、第1及び第2の成分の濃度の変調は、正弦波様式で行われる。
【0034】
本発明は、さらに、好ましくは血液透析処理を実行するための、血液処理装置、特に透析器に関し、ここで血液処理装置は、医療用溶液を調製するために少なくとも1つの本発明による装置を有する。
【0035】
本発明の更なる詳細及び利点は、図面に示された実施形態を参照して、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】成分A及びBの総電導度、並びに総電導度に対する成分A及びBの個別の電導度の寄与である。
図2】4つの異なる状態A〜Cについての、成分A及びBの総電導度、並びに総電導度に対する成分A及びBの個別の電導度の寄与である。
図3】成分1からNまでを含み、混合溶液の総電導度を測定するための電導度測定セルを備えた、多成分システムの略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1から、総電導度100、すなわち成分A及びBで構成された混合溶液の電導度の時間展開を経時的に見ることができる。さらに、成分A及びBの電導度(LF[=電導度]成分A、LF成分B)の時間展開は、成分Bの電導度の値(ダッシュ線において示す)が成分Aの電導度の値に加算されて、時間的に一定の総電導度100が得られるように示されている。
【0038】
実施形態は、電導度の測定に関連し、また、他のあらゆるパラメータの測定についても考えられる。それゆえ本発明は、成分A及び/若しくはBの濃度に対する又はそれらの構成要素に対する結論を導き出すことができるように、電導度と又は濃度と相関する、混合溶液の他のあらゆるパラメータの測定も包含する。
【0039】
図1から、成分A及びBのポンプ輸送は、混合物の総電導度100が変調を有さないように、すなわち時間的に一定になるように変調されることが分かる。それゆえ、総電導度と相関する総濃度は時間的に一定であるのに対して、両成分の混合溶液中の成分A及びBの濃度は時間的に変化する。
【0040】
部分成分A及びBの輸送は、図1に示す実施形態において、経時的に総濃度が一定になるか又は総電導度が変動を有さないように、位相をπだけシフトして一定の位相で変調して行われる。
【0041】
図1に示される濃度変動又は電導度変動の振幅は、両成分A及びBについて同一である。
【0042】
混合溶液を形成するか又は随意に特に水などの溶媒中に存在する、部分成分、すなわち成分A及びBは、濃度CA及びCBを有するものとし、混合溶液中の成分A及びBの個々の電導度又は電導度寄与は、LFA(t)及びLFB(Tt)であるとすると、電導度の時間展開について、相対振幅fA及びfB並びにω変調を用いて
LFA(t)=CA(1+fAsin(ωt)) (1)
LFB(t)=CB(1+fBsin(ωt)) (2)
が得られる。
【0043】
相対振幅は、濃縮変動の絶対振幅と、混合溶液中の成分A及びBそれぞれの濃度の平均値とから得られる、商である。
【0044】
目指すことが好ましい、総濃度又は総電導度の経時的に変調しないことから、
AA=−CBB (3)
が得られ、fAについて解くと、
A=−fB(CB/CA) (4)
である。
【0045】
成分Bの変調の相対振幅を例えば値0.5に固定すると、
A=−0.5(CB/CA)=−0.5fAB (5)
がさらに得られ、ここでfAB=CB/CAである。
【0046】
成分Aの相対振幅fAは、このようにして、混合溶液中の成分BとAとの標的濃度比、及び成分Bの相対振幅fBから、直接得られる。
【0047】
測定される総電導度、すなわち個々の成分A及びBから構成される混合溶液の電導度は、所望の状態の所望の期待される生理学的値を有することになるか、又は、期待される総濃度、すなわち個々の成分A及びBの濃度の合計と相関することになる。このとき、式(1)、(2)及び(5)から、上記のfB=0.5の例について、
LFA(t)+LFB(t)=CA(1−0.5(CB/CA)sin(ωt))+CB(1+0.5sin(ωt))=CA+CB (6)
が得られる。
【0048】
混合溶液中の期待値CA及びCBは時間的に一定であるので、総電導度LFA(t)+LFB(t)に関しても時間的な一貫性(time consistency)が得られる。
【0049】
成分A又はBの寄与がそれぞれの添加値と異なる場合、総電導度の変調が生じる。どの成分の濃度が期待値と異なるかに応じて、総電導度の特定の変調が発生し、すなわち総電導度の測定値は特徴的なフィンガープリントを発生させる。それゆえ、総電導度の測定値を参照して、どの成分が期待値と異なるかを判定することができる。
【0050】
成分Bの混合溶液中の濃度が期待値CBに対応せず、値CB’を有すると仮定し、これが期待値CBの特定の分率1/αを表すとすると、
B’=1/αCB (7)
となる。
【0051】
したがって、この場合の総電導度は、式(6)から得られる値を有するのではなく、式(5)及び(7)を考慮して、
LFA(t)+LFB(t)=CA(1−0.5(CB/CA)sin(ωt))+CB’(1+0.5sin(ωt)) (8)
=CA+1/αCB+(1/α−1)CB/2sin(ωt) (9)
となる。
【0052】
それゆえ、成分Bの成分寄与が期待値から係数1/αだけ異なる場合、この実施形態における総濃度の、すなわち2つの成分A及びBの混合溶液の電導度は、このように振幅
(1/α−1)CB/2で変調する。
【0053】
この場合の平均総電導度は、CA+1/αCBに対応するか又は相関する。
【0054】
成分Aの濃度が期待値CAに対応せず、値CA’を有すると仮定し、これが期待値CAの特定の分率1/βを表すとすると、
A’=1/βCA (10)
となる。
【0055】
したがって、この場合の総電導度は、式(6)から得られる値を有するのではなく、式(5)及び(10)を考慮して、
LFA(t)+LFB(t)=1/βCA(1−0.5(CB/CA)sin(ωt))+CB(1+0.5sin(ωt)) (11)
=1/βCA+CB+(1−1/β)CB/2sin(ωt) (12)
となる。
【0056】
それゆえ、成分Aの成分寄与が期待値から係数1/βだけ異なる場合、この実施形態における総濃度の、すなわち2つの成分A及びBの混合溶液の電導度は、このように振幅
(1−1/β)CB/2で変調する。
【0057】
この場合の平均総電導度は、1/βCA+CBに対応するか又は相関する。
【0058】
平均電導度、その振幅、及び成分輸送のアクチュエータ刺激に対する位相は、その濃度が期待値とは異なる成分を識別する。
【0059】
成分同士が総濃度に対して異なる寄与を成す場合、成分間で自己補償的な差異(self−compensating difference)を識別することもできる。
【0060】
図2は、状態Aにおいて、寄与A及びBの期待値に達している場合を示す。この場合、混合溶液の総電導度100又は総濃度は、変調を示さず、すなわち時間的に一定である。符号10及び20は、混合溶液の電導度100又は濃度に対する、部分成分A(符号10)及びB(符号20)の電導度又は濃度の寄与の時間展開を特徴づける。
【0061】
状態Bにおいて、成分Bの期待値20には達しているが、成分Aの濃度10の実際値は期待値を下回る。総電導度100又は総濃度は、期待値を下回るとともに、異なっている成分Aの位相シフトで変調されている。
【0062】
状態Cにおいて、成分Aの期待値10には達しているが、成分Bの濃度20の実際値は期待値を下回る。総電導度100又は総濃度は、期待値を下回るとともに、異なっている成分Bの位相シフトで変調されている。
【0063】
状態Dにおいて、成分A及びBの両方の期待値に達していない。しかしながら、差異は補償的であり、すなわち総寄与は、期待値に対応しており、すなわち総電導度100又は総濃度の平均値は、期待値に対応している。
【0064】
しかしながら、この場合でも、総電導度100又は総濃度は変調されており、すなわち時間的に一定ではない。
【0065】
成分A及びBの濃度寄与の差は、このようにして、変調された総濃度又は総電導度の解析から実施されることができる。
【0066】
濃縮輸送ポンプの位相に対する総濃度又は総電導度の変調の位相シフトが、この解析から得られる。
【0067】
総濃度又は総電導度の平均期待値は、異なっている成分の過剰輸送又は過少輸送を示し、すなわち、総電導度又は総濃度の平均測定値は、異なっている成分の過剰輸送又は過少輸送を示す。
【0068】
それゆえ、例えば図2の状態Bから、成分Aが期待値とは異なる濃度で存在することが分かるのみならず、この成分に関して過少輸送が存在することも分かる。
【0069】
図3は、成分1からNまでの濃度の変調された輸送を伴う多成分システムを示す。すべての成分は、唯一の電導度測定セル(LFセル)が配置された主ラインHにおいて輸送される。それぞれの変調は、周波数及び位相に関して成分ごとに特徴的である。この特徴は、期待値と異なる成分の寄与の識別を可能にする。
【0070】
平均総電導度又は総濃度の変化をもたらさない、成分の補償的な差異であっても、濃縮輸送ポンプの位相に対する総電導度又は総濃度の振幅の位相シフトの判定によって判定することができる。
【0071】
本発明によれば、個々の成分、すなわち部分成分の寄与を監視するのに必要とされるのは、唯一の単独の電導度センサ若しくは単独の濃度センサ又はそれに類したもののみである。成分は、変調を伴って輸送する濃縮ポンプを介して、センサが配置されている主ラインに添加される。
【0072】
電導度センサ又は濃度センサに代えて、成分の濃度若しくは電導度に対する、又は総濃度若しくは総電導度に対する結論を可能にする、任意の他のセンサを使用することもできる。
図1
図2
図3