(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6804475
(24)【登録日】2020年12月4日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】出力制御手段付きの空気圧インパルスレンチ
(51)【国際特許分類】
B25B 21/00 20060101AFI20201214BHJP
【FI】
B25B21/00 J
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-563994(P2017-563994)
(86)(22)【出願日】2016年6月3日
(65)【公表番号】特表2018-516768(P2018-516768A)
(43)【公表日】2018年6月28日
(86)【国際出願番号】EP2016062633
(87)【国際公開番号】WO2016198330
(87)【国際公開日】20161215
【審査請求日】2019年5月24日
(31)【優先権主張番号】1550757-7
(32)【優先日】2015年6月9日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】502212604
【氏名又は名称】アトラス・コプコ・インダストリアル・テクニーク・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】セーデルルンド ペール トーマス
【審査官】
亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2014/072174(WO,A1)
【文献】
特開平11−156742(JP,A)
【文献】
特開平10−034550(JP,A)
【文献】
特開平08−039458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 21/00 − 23/18
B25F 5/00 − 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気圧インパルスレンチであって、モータ動力式インパルスユニットを備えたハウジング(10)と、前記ハウジング(10)内に設けられた状態で前記モータに接続されている圧力空気入口通路(14)及び排出空気出口通路(15)と、前記排出空気出口通路(15)内に配置されていて前記モータからの排出空気流を自動制御するモータ出力制御弁機構体(20)とを有し、実際の空気入口圧力を前記弁機構体(20)に伝える制御圧力通路(29)が前記通気入口通路(14)と、前記弁機構体(20)との間に延びている、インパルスレンチにおいて、
作動モードシフティング弁(38)が前記ハウジング(10)内に設けられており、該作動モードシフティング弁は、前記モータ出力制御弁機構体(20)の自動弁機構体作動モードにおいて前記制御圧力通路(29)を通る伝達が許容される開き位置と、前記モータ出力制御弁機構体(20)の手動弁機構体作動モードにおいて前記制御圧力通路(29)を通る伝達が遮断される閉じ位置との間でシフト可能である、インパルスレンチ。
【請求項2】
前記作動モードシフティング弁(38)は、前記ハウジング(10)内に設けられていて前記制御圧力通路(29)と交差する横方向ボア(39)内に支持された弁スピンドル(40)を有し、前記弁スピンドル(40)は、前記開き位置と前記閉じ位置との間で長手方向に変位可能である、請求項1記載のインパルスレンチ。
【請求項3】
前記作動モードシフティング弁(38)の前記弁スピンドル(40)は、前記開き位置において前記制御通路(29)と位置合わせされ、前記閉じ位置においては前記制御通路(29)との位置合わせ状態から外れるよう構成されたウエスト部分(41)を有する、請求項2記載のインパルスレンチ。
【請求項4】
前記弁機構体(20)は、弁要素(22)を含み、前記インパルスレンチは、ピストン(25)を受け入れるシリンダチャンバ(24)を有し、前記シリンダチャンバは、前記弁要素(22)と関連するとともに前記制御圧力通路(29)を経て伝えられる前記実際の空気入口圧力によって加圧され、それにより前記弁要素(22)を前記自動作動モードで作動させるよう構成されている、請求項1〜3のうちいずれか一に記載のインパルスレンチ。
【請求項5】
前記弁機構体(20)は、前記弁要素(22)を前記手動作動モードにおいて所望の排出流制限位置に動かすよう設けられた弁設定ねじ(33)を含む、請求項4記載のインパルスレンチ。
【請求項6】
前記弁設定ねじ(33)は、押圧力を前記弁要素(22)に及ぼすよう配置されている、請求項5記載のインパルスレンチ。
【請求項7】
前記弁機構体(20)は、前記ハウジング(10)内に配置されている、請求項1〜6のうちいずれか一に記載のインパルスレンチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータからの排出空気流をモータに加わる実際のトルク負荷に応答して制御するモータ出力制御手段を備えた空気圧インパルスレンチ(衝撃レンチとも呼ばれる)に関する。特に、本発明は、前記モータへの空気入口内の実際の圧力によって作動される排出空気流決定弁機構体を含むモータ出力制御手段を備えた空気圧インパルスレンチに関する。
【0002】
このモータ出力制御手段の目的は、ねじ継手の弛みシーケンス中に生じる低負荷作動シーケンスの際においてインパルスレンチのところでのモータ出力及び速度の減少を達成することにある。ねじ継手の弛みシーケンスが全モータ出力で行われる場合、極めて高い速度及びその結果としての大きな運動エネルギーがレンチの回転部品に生じ、このことは、ねじ継手に送り出されるまさに最初に送り出されるインパルスが極めて高いエネルギーを持っていることを意味している。いわゆる堅いねじ継手、すなわち、回転角度に対して急峻なトルク増大率を有するねじ継手では、過剰締め付け、すなわちまさに最初の送り出されたインパルスによって既に所望の標的トルクレベルを超えるというかなりのリスクが生じる。これは、本発明のモータ出力制御手段を採用することによって回避される。
【0003】
上述した形式の動力制御手段を備えた空気圧インパルスレンチは、既に特許文献1(米国特許第6135213号明細書)に記載されている。この公知のインパルスは、モータ出力制御手段を有し、このモータ出力制御手段は、工具ハウジングに取り付けられるとともにモータへの空気入口通路内の実際の圧力によって自動的に制御される外部排出空気出口ユニットに組み込まれている排出空気制御弁機構体を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6135213号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した形式のインパルスレンチと関連した問題は、このインパルスレンチが排出空気制御弁機構体を調節する択一的な作動モードの手段を備えていないということ、すなわち、自動弁制御モードを省くとともに排出空気出口面積の手動設定を可能にし、それにより幾つかのねじ継手締め付け用途において望ましいレンチモータの不変の速度制限を得るための手段が設けられていないということにある。
【0006】
上述のこの動力制御手段の別の欠点は、別個の外部出口ユニットが物理的損傷にさらされるということにある。この弁機構体が損傷の場合に容易に交換可能である別個のユニット内に設けられているが、出口ユニットの損傷により、依然として、オペレータに多くの不便及び工具の使用のコスト高の中断を招く。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、2つの択一的なモード、すなわち弁機構体がモータに加わる実際のトルク負荷に応答して排出空気出口流を制御するよう構成される自動作動モード及び弁機構体が一定の排出空気出口流れ面積を提供するよう手動で調節して固定位置に設定されるよう構成される手動作動モードで作動するようになった排出空気流決定弁機構体の形態をした動力制御手段を備える空気圧インパルスレンチを提供することにある。
【0008】
本発明の別の目的は、外部からの損傷から十分に保護されるレンチハウジング内に配置された排出空気流決定弁機構体の形態をした動力制御手段を備える空気圧インパルスレンチを提供することにある。
【0009】
本発明の別の目的及び別の利点は、以下の説明及び特許請求の範囲の記載から明らかになろう。
以下において、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のインパルスレンチの部分断面側面図である。
【
図2】
図1のインパルスレンチの部分断面後側端面図である。
【
図3】
図2に示されたインパルスレンチの出口流決定弁機構体の拡大図である。
【
図4】開き位置で示されたモードシフティング又はモード切り換え弁の拡大図である。
【
図5】
図3と同様の図であるが、モードシフティング弁を閉じ位置で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図示のインパルスレンチは、ピストル形ハンドル11を備えたハウジング10、図示されていない空気圧モータ及びこの種の動力工具に関しては従来どおりにハウジング10内に配置されたインパルス又は衝撃ユニットを有する。インパルスユニットは、断面が正方形の出力シャフト12を経てトルクインパルスを送り出すよう構成されている。
【0012】
ハンドル11内には、圧力空気入口通路14及び排出空気出口通路15が設けられ、絞り弁16が入口通路14内に配置されており、この絞り弁は、モータへの圧力空気供給量を制御するようトリガ17によって作動される。以下に説明する制御圧力開口部13とは別に、制御圧力絞り弁は、従来型のものであり、この絞り弁は、本発明の要部をなさない。したがって、これについてはこれ以上詳細には説明しない。制御圧力開口部13は、絞り弁16の弁座の下流側に配置されていて絞り弁16が開いているときだけ加圧される。
【0013】
ハンドル11は、その下端部のところに、入口通路14を経て圧力空気をモータに供給する圧力空気導管の連結のための迅速カップリング取り付け部18及びハンドル11内の出口通路に連結された空気出口デフレクタ19を備えている。
【0014】
ハンドル11内には、出口流決定弁機構体20が収納され、この出口流決定弁機構体により、モータ出力及び低負荷速度が排出空気出口流及びそれゆえにモータに加わる背圧の調節によって制限される。この弁機構体20は、流れ制限位置と出口流非制限開き位置との間で動くことができる弁要素22及びハンドル11内に設けられた不動の弁座23を含む。弁要素22は、形状が管状であり、この弁要素は、ピストン25が受け入れられたシリンダチャンバ24を有する。このピストンは、ハウジング10にしっかりと取り付けられた管状ピストンロッド26にしっかりと連結されている。管状ピストンロッド26は、制御開口部13に結合され、この管状ピストンロッドは、制御開口部13と一緒になって、弁要素22のシリンダチャンバ24中に延びる制御圧力通路29を形成している。弁要素22は、ばね27によってその閉じ位置に向かって付勢され、このばねは、弁要素22内に配置されていてピストン25に対して支持作用をもたらしている。制御開口部13は、絞り弁16の下流側端部のところに配置されているので、制御圧力通路29を経てシリンダチャンバ24に伝えられる制御圧力は、絞り弁16が開いているときにのみ加圧され、作動中にモータからのモータ供給圧力及び背圧とまさに同一の圧力を受ける。モータからの背圧は、モータに加わる実際のトルク負荷に直接に対応して弁機構体20を作動させる制御圧力に変わる。
【0015】
ピストン25は、ピストン25の下端部にねじ込まれたテーパ付き止めねじ30を含む調節可能なニードル弁28を備えている。このニードル弁28は、ピストンロッド26に設けられた2つの側方開口部31を経てシリンダチャンバ24に入る制御空気流を調節するようになっている。これについては
図3を参照されたい。ニードル弁28を調節することによって、モータからの変化している背圧に対する弁要素22の応答を調節することができる。
【0016】
出口デフレクタ19のねじ山付き内側スリーブ部分32内には弁設定ねじ33が支持されている。この弁設定ねじ33は、外部から接近可能でありかつ弁機構体20の流れ制限開きを手動設定するようになっている。この目的のため、弁設定ねじ33は、出口デフレクタ19を通って上方に延びて弁要素22との端を先に向けた当接係合関係をなしている。弁要素22は、中空であり、弁設定ねじ33の端部分34は、弁要素22に対する弁設定ねじ33の適正な向きを得るために弁要素22内に受け入れている。弁設定ねじ33に設けられているカラー35が弁要素22の下端部に当接し、それにより弁要素22の上方押圧力及び上方運動の実現を可能にするよう配置されている。これにより、弁機構体20の所望の制限開放及び低負荷作動時におけるモータの適当な速度制限を手動で得ることができる。
【0017】
弁設定ねじ33は、弁要素22にしっかりとは連結されていないが、その代わりに、弁要素22と当接協働関係を有しているので、出口デフレクタ19に生じる損傷によっては、出口流決定弁機構体20には何ら損傷が生じないことになる。
【0018】
絞り弁16の圧力制御開口部13とピストンロッド26との間でハウジング10内には、作動モードシフティング弁38が設けられている。この弁38は、ハウジング10に設けられていて制御圧力通路29と交差した横方向ボア39内に支持されている弁スピンドル40を有する。弁スピンドル40は、開き位置と閉じ位置との間でボア39内の手動力によって長手方向に変位可能である。弁スピンドル40は、弁の開き位置で制御通路29と位置合わせされるよう構成されたウエスト部分41を有する。
図4に示されたこの位置では、ウエスト部分41は、入口通路14内の圧力が弁機構体20のシリンダチャンバ24に伝えられるよう制御通路29を開く。それにより、弁機構体20は、圧力空気入口通路14内のモータからの実際の背圧に応答して自動的に作動することができる。
【0019】
図5に示されたモードシフティング弁38の閉じ位置では、弁スピンドル40のウエスト分41は、制御通路29との位置合わせ状態から外れ、このことは、制御通路29は遮断され、制御圧力が弁機構体20に伝えられないことを意味している。したがって、弁機構体20は、モータからの背圧によって自動的に制御されるのが阻止されることになる。その代わりに、弁要素22と弁座23との間の出口流れ面積を手動で設定することによって所望の固定出口流れ絞り作用を得ることができる。これは、上方に差し向けられた押圧力を弁要素25に加えるよう構成された弁設定ねじ33の調節によって達成され、それにより、弁要素25は、ばね27の作用に抗して上方に動かされ、ついには、適当な出口流れ制限開放が得られるようになる。
【0020】
弁機構体20の自動作動モードでは、ねじ継手の弛みシーケンス中にモータに加わるトルク負荷が小さいということは、入口通路14内のモータからの背圧が低いことを意味し、その結果、低い制御圧力が制御圧力通路29を経て弁機構体20に伝えられる。この低い制御圧力は、弁要素22をばね27に抗して上方に動かして弁要素22と弁座23との間の流れ開口部を開くほど強くはない。したがって、モータに加わる背圧を増大させてモータ出力及びそれゆえにモータ速度を低く保つ排出空気出口流のかなりの制限が生じることになる。これは、インパルスユニットが望ましくないほど高すぎる初期トルクインパルスをねじ継手に送り出すのを阻止する。
【0021】
モータに加わるトルク負荷がねじ継手のプレテンション(pre-tensioning)シーケンス中に増大すると、圧力空気入口通路内のモータの背圧並びに制御圧力が増大する。このことは、シリンダチャンバ24内の圧力が弁要素22をばね27の付勢力に抗して上方に動かして弁座23に対する大きな流れ開口部を開き、それにより制限度の小さな出口流及びその結果としての増大したモータ出力動力を提供するのに足るほど高いことを意味している。したがって、大きなトルク負荷のもとでの最終のねじ継手締め付けシーケンス中、モータは、今や、全出力を自由に送り出すことができる。