特許第6804476号(P6804476)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6804476流体分配サブアッセンブリを有する蒸発器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6804476
(24)【登録日】2020年12月4日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】流体分配サブアッセンブリを有する蒸発器
(51)【国際特許分類】
   F28D 5/02 20060101AFI20201214BHJP
   F28F 21/06 20060101ALI20201214BHJP
   F28F 21/04 20060101ALI20201214BHJP
   F28F 21/08 20060101ALI20201214BHJP
   F01K 25/10 20060101ALI20201214BHJP
   F03G 7/05 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   F28D5/02
   F28F21/06
   F28F21/04
   F28F21/08 G
   F28F21/08 F
   F01K25/10 F
   F01K25/10 R
   F03G7/05
   F03G7/05 531
【請求項の数】19
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-564041(P2017-564041)
(86)(22)【出願日】2016年6月10日
(65)【公表番号】特表2018-524537(P2018-524537A)
(43)【公表日】2018年8月30日
(86)【国際出願番号】US2016036900
(87)【国際公開番号】WO2016201233
(87)【国際公開日】20161215
【審査請求日】2019年3月19日
(31)【優先権主張番号】62/173,658
(32)【優先日】2015年6月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501265331
【氏名又は名称】ロッキード・マーチン・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】LOCKHEED MARTIN CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マウラー、スコット、エム.
(72)【発明者】
【氏名】ベックナー、デレク、エム.
(72)【発明者】
【氏名】ナガーニー、ニコラス、ジェイ.
【審査官】 久島 弘太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−006188(JP,A)
【文献】 特開2011−202928(JP,A)
【文献】 特開平05−340342(JP,A)
【文献】 特表2011−510249(JP,A)
【文献】 特開2004−028364(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0199330(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 5/02
F01K 25/10
F03G 7/05
F28F 21/04
F28F 21/06
F28F 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェル内部を形成している蒸発器シェルと、
熱流体を搬送するように構成され前記シェル内部に配置された複数の熱素子であって、各熱素子は、前記シェル内部と流体的に連通された外面を含む、複数の熱素子と、
前記内部に配置された第1の一次供給ラインであって、前記第1の一次供給ラインは作動流体を搬送するように構成されている、第1の一次供給ラインと、
前記第1の一次供給ラインに流体的に結合された複数の第1の管セットであって、各第1の管セットは、前記第1の一次供給ラインに沿って、隣接する第1の管セットから離れている、複数の第1の管セットと、
を含み、
少なくとも1つの第1の管セットは複数の第1の管を含み、少なくとも2つの第1の管は前記複数の熱素子のうち少なくとも2対の熱素子の間に延び、上方に配置され、前記少なくとも2つの第1の管の各第1の管は複数の第1の流体分配ポイントを含み、前記複数の第1の流体分配ポイントは前記第1の管の長さに沿って互いから離れており、前記複数の熱素子の前記少なくとも2対の前記外面に近接して前記作動流体を分配するように構成されている、
蒸発器。
【請求項2】
前記第1の一次供給ラインは第1の方向に延びており、前記複数の熱素子は前記第1の方向に延びており、前記複数の第1の管セットの前記複数の第1の管は前記第1の方向に直交する第2の方向に延びている、請求項1に記載の蒸発器。
【請求項3】
前記内部に配置された第2の一次供給ラインであって、前記第2の一次供給ラインは前記作動流体を搬送するように構成されている、第2の一次供給ラインと、
前記第2の一次供給ラインに流体的に結合された複数の第2の管セットであって、各第2の管セットは、前記第1の一次供給ラインに沿って、隣接する第2の管セットから離れている、複数の第2の管セットと、
を更に含み、
各第2の管セットは複数の第2の管を含み、少なくとも2つの前記第2の管は前記複数の熱素子のうち少なくとも2つの熱素子の外面にそれぞれ隣接しており、各第2の管は複数の第2の流体分配ポイントを含み、前記複数の第2の流体分配ポイントは前記作動流体を前記シェル内部に分配するように構成されている、
請求項1に記載の蒸発器。
【請求項4】
前記第1の一次供給ラインは第1の方向に延びており、前記第2の一次供給ラインは前記第1の方向に延びており、前記複数の熱素子は前記第1の方向に延びており、前記複数の第1の管セットの前記複数の第1の管は前記第1の方向に直交する第2の方向に延びており、前記複数の第2の管セットの前記複数の第2の管は前記第1の方向に直交する第3の方向に延びており、前記第3の方向は前記第2の方向とは異なる、請求項3に記載の蒸発器。
【請求項5】
前記第2の方向は前記第3の方向に直交する、請求項4に記載の蒸発器。
【請求項6】
前記熱流体は海水である、請求項1に記載の蒸発器。
【請求項7】
前記作動流体はアンモニアである、請求項6に記載の蒸発器。
【請求項8】
各熱素子において、前記熱素子の前記外面は不均一である、請求項7に記載の蒸発器。
【請求項9】
前記複数の熱素子は方形配列形状で配列されている、請求項1に記載の蒸発器。
【請求項10】
前記複数の熱素子は三角形配列形状で配列されている、請求項1に記載の蒸発器。
【請求項11】
前記複数の熱素子は約2,500個の熱素子〜約20,000個の熱素子を含み、前記蒸発器シェルは約2メートル〜約5メートルの径を有する、請求項1に記載の蒸発器。
【請求項12】
前記第1の管は約6mm〜約10mmの内径を有する、請求項11に記載の蒸発器。
【請求項13】
複数の第1のマニホールド管を更に含み、前記複数の第1のマニホールド管の各第1のマニホールド管は前記第1の一次供給ラインに流体的に結合され、各第1の管セットの前記複数の第1の管に流体的に結合されている、請求項1に記載の蒸発器。
【請求項14】
各マニホールド管は前記複数の熱素子の外周部の周りに配置されている、請求項13に記載の蒸発器。
【請求項15】
作動流体を搬送するように構成された第1の一次供給ラインと、
前記第1の一次供給ラインに流体的に結合された複数の第1の管セットであって、前記複数の第1の管セットは、熱流体を搬送する複数の熱素子間に配置されるように構成されており、各第1の管セットは、前記第1の一次供給ラインに沿って、隣接する第1の管セットから第1の距離離れている、複数の第1の管セットと、
を含み、
少なくとも1つの第1の管セットは複数の第1の管を含み、少なくとも2つの第1の管は、前記複数の熱素子のうち少なくとも2対の熱素子の間に延び、上方に配置され、前記少なくとも2つの第1の管の各第1の管は複数の第1の流体分配ポイントを含み、前記複数の第1の流体分配ポイントは前記第1の管の長さに沿って互いから離れており、前記複数の熱素子の前記少なくとも2対の外面に近接して前記作動流体を分配するように構成されている、
流体分配アッセンブリ。
【請求項16】
シェル内部を形成している蒸発器シェルと、
熱流体を搬送するように構成され前記シェル内部に配置された複数の熱素子であって、各熱素子は、前記シェル内部と流体的に連通された外面を含む、複数の熱素子と、
前記内部に配置された第1の一次供給ラインであって、前記第1の一次供給ラインは作動流体を搬送するように構成されている、第1の一次供給ラインと、
前記第1の一次供給ラインに流体的に結合された複数の第1の管セットであって、各第1の管セットは、前記第1の一次供給ラインに沿って、隣接する第1の管セットから離れている、複数の第1の管セットと、
を含み、
少なくとも1つの第1の管セットは複数の第1の管を含み、少なくとも2つの前記第1の管は前記複数の熱素子のうち少なくとも2対の熱素子の間に延び、上方に配置され、前記少なくとも2つの第1の管の各第1の管は複数の第1の流体分配ポイントを含み、前記複数の第1の流体分配ポイントは前記第1の管の長さに沿って互いから離れており、前記複数の熱素子の前記少なくとも2対の前記外面に近接して前記作動流体を分配するように構成されており、前記熱素子は、前記作動流体を気化するように構成されている、蒸発器と、
作動流体入口と、作動流体出口と、タービンと、を含むタービン発電機であって、前記作動流体入口は前記シェル内部に流体的に結合されており、前記気化した作動流体を受け入れるように構成されており、前記タービンは前記作動流体入口と前記作動流体出口との間に流体的に結合されており、前記タービン内を通過する前記気化した作動流体に応じて電気エネルギーを発生するように構成されている、タービン発電機と、
前記作動流体出口と前記第1の一次供給ラインとの間に流体的に結合された凝縮器であって、前記凝縮器は、前記作動流体を凝縮し、前記凝縮した作動流体を前記第1の一次供給ラインに供給するように構成されている、凝縮器と、
を含む、熱交換システム。
【請求項17】
前記熱交換システムは海洋熱エネルギー変換(OTEC)システムである、請求項16に記載の熱交換システム。
【請求項18】
蒸発器を組み立てる方法であって、
複数の熱素子を蒸発器フレーム内に配置するステップであって、各熱素子は熱流体を搬送するように構成される、ステップと、
流体分配サブアッセンブリの複数の流体分配管を前記熱素子間に配置するステップであって、前記流体分配サブアッセンブリは作動流体を搬送するように構成され、前記複数の流体分配管に流体的に結合された第1の一次供給ラインを含み、少なくとも2つの前記流体分配管は前記複数の熱素子のうち少なくとも2対の熱素子の間に延び、上方に配置され、前記少なくとも2つの流体分配管の各流体分配管は複数の第1の流体分配ポイントを含み、前記複数の第1の流体分配ポイントは前記流体分配管の長さに沿って互いから離れており、前記複数の熱素子のうちの前記少なくとも2対の外面に近接して前記作動流体を分配するように構成されている、ステップと、
前記蒸発器フレーム及び前記流体分配サブアッセンブリを蒸発器シェル内に収めるステップと、
を含む、方法。
【請求項19】
海洋熱エネルギー変換(OTEC)システム内に前記蒸発器を配置するステップを更に含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2015年6月10日に出願された、「流体分配システム及び流下液膜式蒸発器(FLUID DISTRIBUTION SYSTEM AND FALLING FILM EVAPORATOR)」という名称の米国特許仮出願第62/173,658号明細書の利益を主張する。同開示の全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
実施形態は蒸発器に関し、特に、流体分配サブアッセンブリを有する蒸発器に関する。
【背景技術】
【0003】
蒸発器は、例えば熱交換器を含む多くの異なる用途に使用され得る。熱交換器用途では、1つ以上の熱素子と熱的に連通された蒸発器シェル内に作動流体を導入してもよく、これにより作動流体を蒸発させる。液満式蒸発器及びケトル式蒸発器では、熱素子は作動流体中に完全に又は部分的に浸される。この構成は、熱素子が比較的大量の作動流体に熱を伝達しなければならないことから比較的非効率である。その一方で、流下液膜式蒸発器は、作動流体を熱素子の上方で分配して、熱素子を溢れさせることなく作動流体が熱素子上に流れ落ちるようにする。このため、小規模用途において、流下液膜式蒸発器は熱素子の表面積全体を作動流体で濡れた状態に維持することが比較的容易であるため、液満式蒸発器及びケトル式蒸発器よりも効率的であり得る。しかしながら、より大規模な用途においては、加熱素子はより大型及び/又はより多数でなければならず、このことは従来の流下液膜式構成を用いて全熱素子の表面積を作動流体で濡れた状態に維持するのをより難しくする。その代わり、これらより大規模な用途における熱素子の多くの部分はドライアウトを生じる傾向があり、蒸発器の効率を低下させる。
【0004】
より大規模の熱交換器の一例は海洋熱エネルギー変換(OTEC)用途で使用され得る。従来のOTEC用途では、蒸発器は、例えばアンモニアなどの低沸点を持つ作動流体が導入されるシェルアンドチューブ設計レイアウトを有してもよい。蒸発器の内部を通る管は比較的温暖な海面位の海水を搬送し、管と接触したアンモニアを蒸発させて、蒸発器と直列に設けたタービン発電機に動力を供給する。しかしながら、従来のOTEC用途の大規模流下液膜蒸発器は3メートルを超える径を有することがあり、蒸発器の底部近辺の管の多くはドライアウトすることとなり得る。したがって、当該技術では、効率を向上させた大規模流下液膜式蒸発器に対する需要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態では、蒸発器が開示される。蒸発器は、例えば、蒸発器シェルのシェル内部に配置された、温暖海水を搬送する管などの複数の熱素子を含む。アンモニアなどの作動流体を搬送するように構成された一次供給ラインは、例えば、シェル内部に配置されている。複数の管セットは一次供給ラインに流体的に結合されており、各管セットは、一次供給ラインに沿って、隣接する管セットから離れている。各管セットは複数の個々の管を含み、各管はシェル内部内の異なるサブセットの熱素子に近接している。各管は、複数の熱素子の少なくとも1つの外面に近接して作動流体を分配するように構成された複数の第1の流体分配ポイントを含む。この構成の利点の1つは、流体分配ポイントを蒸発器シェル全体にわたり3次元で分配することができ、それにより、熱素子の総外部表面積の濡れる割合が大きくなることである。その結果、熱素子による熱エネルギーのうち、蒸発器内の作動流体に伝達される割合が大きくなり、蒸発器の総合効率は増加する。
【0006】
一実施形態では、蒸発器が開示される。蒸発器は、シェル内部を形成している蒸発器シェルを含む。蒸発器はシェル内部に配置された複数の熱素子を更に含み、各熱素子は、シェル内部と流体的に連通された外面を含む。蒸発器は、内部に配置された第1の一次供給ラインを更に含み、第1の一次供給ラインは作動流体を搬送するように構成されている。蒸発器は、第1の一次供給ラインに流体的に結合された複数の第1の管セットを更に含み、各第1の管セットは、第1の一次供給ラインに沿って、隣接する第1の管セットから離れている。各第1の管セットは複数の第1の管を含み、各第1の管は複数の熱素子のうち異なるサブセットの熱素子に近接する。各第1の管は複数の第1の流体分配ポイントを含み、各第1の流体分配ポイントは、複数の熱素子の少なくとも1つの外面に近接して作動流体を分配するように構成されている。
【0007】
別の実施形態では、流体分配アッセンブリが開示される。流体分配アッセンブリは、作動流体を搬送するように構成された第1の一次供給ラインを含む。流体分配アッセンブリは、第1の一次供給ラインに流体的に結合された複数の第1の管セットを更に含み、複数の第1の管セットは、複数の熱素子間に配置されるように構成されている。各第1の管セットは、第1の一次供給ラインに沿って、隣接する第1の管セットから第1の距離離れている。各第1の管セットは複数の第1の管を含み、各第1の管は、複数の熱素子のうち異なるサブセットの熱素子に近接して配置されるように構成されている。各第1の管は複数の第1の流体分配ポイントを含み、各第1の流体分配ポイントは、複数の熱素子の少なくとも1つの外面に近接して作動流体を分配するように構成されている。
【0008】
別の実施形態では、熱交換システムが開示される。熱交換システムは蒸発器を含む。蒸発器は、シェル内部を形成している蒸発器シェルを含む。蒸発器は、シェル内部に配置された複数の熱素子を更に含み、各熱素子は、シェル内部と流体的に連通された外面を含む。蒸発器は、内部に配置された第1の一次供給ラインを更に含み、第1の一次供給ラインは作動流体を搬送するように構成されている。蒸発器は、第1の一次供給ラインに流体的に結合された複数の第1の管セットを更に含み、各第1の管セットは、第1の一次供給ラインに沿って、隣接する第1の管セットから離れている。各第1の管セットは複数の第1の管を含み、各第1の管は複数の熱素子のうち異なるサブセットの熱素子に近接する。各第1の管は複数の第1の流体分配ポイントを含み、各第1の流体分配ポイントは、複数の熱素子の少なくとも1つの外面に近接して作動流体を分配するように構成されている。熱素子は、作動流体を気化するように構成されている。熱交換システムは、作動流体入口と、作動流体出口と、タービンと、を含むタービン発電機を更に含み、作動流体入口はシェル内部に流体的に結合されており、気化した作動流体を受け入れるように構成されており、タービンは作動流体入口と作動流体出口との間に流体的に結合されており、タービン内を通過する気化した作動流体に応じて電気エネルギーを発生するように構成されている。熱交換システムは、作動流体出口と第1の一次供給ラインとの間に流体的に結合された凝縮器を更に含み、凝縮器は、作動流体を凝縮し、凝縮した作動流体を第1の一次供給ラインに供給するように構成されている。
【0009】
別の実施形態では、蒸発器を組み立てる方法が開示される。当該方法は、複数の熱素子を蒸発器フレーム内に配置するステップを含む。当該方法は、流体分配サブアッセンブリの複数の流体分配管を熱素子間に配置するステップであって、各第1の管は複数の熱素子のうち異なるサブセットの熱素子に近接する、ステップを更に含む。当該方法は、蒸発器フレーム及び流体分配サブアッセンブリを蒸発器シェル内に収めるステップを更に含む。
【0010】
当業者であれば、添付図面に関連する以下の実施形態の詳細な説明を読むと本開示の範囲を理解し、その更なる態様を実現するであろう。
【0011】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を成す添付図面は、本開示のいくつかの態様を示し、明細書と共に、本開示の原理を説明する役割を果たす。
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】一実施形態による、蒸発器フレーム及び第1の流体分配サブアッセンブリを含む蒸発器の構成要素の図である。
図2】組み立てられた形態における図1の蒸発器の構成要素の図である。
図3】組み立てられた形態における、第2の流体分配サブアッセンブリを更に含む図1の蒸発器の構成要素の図である。
図4A】一実施形態による、蒸発器の組み立て及び動作を示す図1図3の蒸発器の断面図である。
図4B】一実施形態による、蒸発器の組み立て及び動作を示す図1図3の蒸発器の断面図である。
図4C】一実施形態による、蒸発器の組み立て及び動作を示す図1図3の蒸発器の断面図である。
図5】別の実施形態による、一体型流体分配サブアッセンブリを有する蒸発器フレームを含む蒸発器の構成要素の図である。
図6】一実施形態による、蒸発器の動作を示す図5の蒸発器の断面図である。
図7】一実施形態による、蒸発器を含むOTEC発電システムの概略図である。
図8】一実施形態による、蒸発器フレーム及び流体分配サブアッセンブリを含む蒸発器を組み立てる方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に記載する実施形態は、当業者による実施形態の実施を可能にする情報を示すと共に、実施形態の実施の最良の態様を示す。当業者であれば、以下の説明を添付図面の観点から読むと、本開示の概念を理解し、本明細書中で特に扱われないこれら概念の用途を認識するであろう。これら概念及び用途は本開示及び添付の特許請求の範囲の範囲内であると解釈すべきである。
【0021】
本明細書中に記載される任意の流れ図は説明のため必然的にある順序で記載されるが、特に明示されない限り、実施形態は任意の特定のステップの順序に限定されない。本明細書中における、順序の、要素との併用は、「第1の管セット」及び「第2の管セット」など、類似又は同一の符号となる可能性のあるものを単に区別するためのものであり、本明細書で特に明示されない限り、優先順位、種類、重要度、又は他の属性を意味するものではない。本明細書中で数値と共に使用される用語「約(about)」は、同数値よりも10パーセント大きい又は同数値の10パーセント未満の範囲内の任意の値を意味する。
【0022】
一実施形態では、蒸発器が開示される。蒸発器は、例えば、蒸発器シェルのシェル内部に配置された、温暖海水を搬送する管などの複数の熱素子を含む。アンモニアなどの作動流体を搬送するように構成された一次供給ラインは、例えば、シェル内部に配置されている。複数の管セットは一次供給ラインに流体的に結合されており、各管セットは、第1の一次供給ラインに沿って、隣接する管セットから離れている。各管セットは複数の個々の管を含み、各管はシェル内部内の異なるサブセットの熱素子に近接している。各管は、複数の熱素子の少なくとも1つの外面に近接して作動流体を分配するように構成された複数の第1の流体分配ポイントを含む。この構成の利点の1つは、流体分配ポイントを蒸発器シェル全体にわたり3次元で分配することができ、それにより、熱素子の総表面積の濡れる割合が大きくなることである。その結果,熱素子による熱エネルギーのうち、蒸発器内の作動流体に伝達される割合が大きくなり、蒸発器の総合効率が増加する。
【0023】
これに関連し、図1は、一実施形態による蒸発器10の構成要素を示す。この実施形態では、蒸発器10は、蒸発器シェル内部に配置された複数の熱素子12を有する蒸発器シェル(図示せず)を含む。この実施形態では、熱素子12は、熱流体14を搬送するように構成されたパイプであるが、他の種類の熱素子12を使用してもよいと理解すべきである。各熱素子12は、蒸発器シェル内部と流体的に連通された外面16を有する。熱素子12は剛性円筒状蒸発器フレーム18内に積み重ねられている。剛性円筒状蒸発器フレーム18は、熱素子12を既定のパターンで保持し、蒸発器10の構造的支持を与えるように構成されている。図1の図では、蒸発器10の内部要素をより明確に示すために熱素子12は蒸発器フレーム18の左上4分の1に配置されているが、使用時、熱素子12は蒸発器フレーム18の全体にわたり配置されると理解すべきである。
【0024】
この実施形態では、蒸発器フレーム18は、蒸発器フレーム18の外周部に配列された複数の縦部材20と、蒸発器10の長さに沿って規則的な間隔を開けて縦部材20に結合された複数の円形部材22と、を有する。複数の交互に配された水平支持部材24のセット及び垂直支持部材26のセットは円形部材22内で結合され、熱素子12を所定の場所に保持し、蒸発器10の剛性を高める。
【0025】
従来の蒸発器(図示せず)では、作動流体は、作動流体が熱素子12上を流れ落ちるように蒸発器フレーム18の頂部において噴霧され得る又はそれ以外の手法で分配され得る。しかしながら、作動流体は最上部の熱素子12と接触すると即座に蒸発し始める。したがって、多数の熱素子12及び/又はより大型の熱素子12を収容するより大規模な用途では、作動流体は蒸発器フレーム18内の最下部の熱素子12に到達する前に完全に気化する場合がある。他方では、蒸発器フレーム18の頂部においてより多量の作動流体が導入される場合、最上部の熱素子12は作動流体で事実上溢れる場合があり、それにより、最上部の熱素子12が、液満式蒸発器及び/又はケトル式蒸発器に通常は関連付けられる非効率性を呈する原因となる。
【0026】
これら及びその他の欠点に対処するために、本実施形態では、蒸発器10は、蒸発器10内に作動流体29を分配するための流体分配サブアッセンブリ28(1)を含む。流体分配サブアッセンブリ28(1)は、作動流体29を搬送するように構成された第1の一次供給ライン30(1)を含む。この実施形態では、複数の第1のマニホールド管32(1)は、第1の一次供給ライン30(1)に沿って、規則的な間隔を開けて離れており、複数の管セット34(1)は第1のマニホールド管32(1)のそれぞれから延びている。このようにして、管セット34(1)の個々の第1の管36(1)のそれぞれは、マニホールド管32(1)を介して第1の一次供給ライン30(1)に流体的に結合されている。
【0027】
第1の流体分配サブアッセンブリ28(1)は蒸発器フレーム18と組み合わせられ、各第1の管36(1)は複数の熱素子のうち異なるサブセットの熱素子12に近接して配置されている。これに関連し、図2は、第1の流体分配サブアッセンブリ28(1)と組み合わせられた蒸発器フレーム18を示す。各第1の管36(1)は、複数の第1の流体分配ポイント38(1)を含み、各第1の流体分配ポイント38(1)は複数の熱素子12の少なくとも1つの外面16に近接して作動流体29を分配するように構成されている。
【0028】
上述の通り、第1の流体分配サブアッセンブリ28(1)の流体分配ポイント38(1)は熱素子12間に3次元で比較的均一に分配されていることから、第1の流体分配サブアッセンブリ28(1)によって熱素子12の総表面積の濡れる割合が大きくなる。これによりまた、一番上の熱素子を溢れさせることなく一番下の熱素子12を濡らすことを可能とし、蒸発器10の総合効率は増加する。
【0029】
この実施形態では、図1及び図2の蒸発器10は海洋熱エネルギー変換(OTEC)用途での使用に適しており、以下、OTEC用途の文脈において説明する。しかしながら、本明細書中の実施形態はこのようには限定されず、多くの他の種類の蒸発器用途に適用できることは理解すべきである。OTECシステムにおいて、例えば、OTECシステムで使用される熱蒸発器10は熱流体14として温暖海水を用いてもよく、熱素子12(即ち、この実施形態では、温暖海水用パイプ)の数及び大きさはOTECシステムの要件に基づき異なり得る。例えば、100メガワットOTECシステムなどの大規模OTECシステムでは、蒸発器10は、例えば、約13mm〜約25.4mmのパイプ内径を有する18,000個〜20,000個の熱素子12を含んでもよく、蒸発器10は約5メートルの総径を有する。より小電力のOTECシステムでも、蒸発器10は、例えば約5,000個〜約10,000個の熱素子を含んでもよく、蒸発器10は約3メートル〜約4メートルの総径を有する。この実施形態では、熱素子12は正方形配列形状で配列されているが、熱素子12は所望の通り、例えば、三角形又はダイヤモンド型配列形状などの他の形状で配列することができると理解すべきである。第1の管36(1)及び第2の管36(2)はまた、互いに非直交角度で方向付けられる。例えば、熱素子12が三角形又はダイヤモンド型配列形状(図示せず)で方向付けられる場合、第1の管36(1)及び第2の管36(2)は互いに30度又は60度の角度であってもよい。例えば、供給ライン30、水平支持部材24、垂直支持部材26、及び/又は熱素子12を含む他の要素もまた、互いに異なる角度で配列されてもよい。
【0030】
図1及び図2には2つの第1の管セット34(1)のみを示すが、第1の一次供給ライン30(1)は任意の数の第1の管セット34(1)に結合してもよい。例えば、別の実施形態では、第3の流体分配サブアッセンブリ(図示せず)に、第1の管36(1)及び第2の管36(2)の両方に対し30度である第3の角度で、複数の第3の管セット(図示せず)を配置することができる。
【0031】
熱素子12はまた、伝熱を促進するための種々の性質を有してもよい。例えば、熱素子12は、熱素子12の表面積を拡張するように加工された促進管であってもよい。例えば、いくつかの実施形態では、熱素子12は、波形が付けられてもよく、溝が付けられてもよく、巻かれてもよく、機械加工されてもよく、刻みを付けられてもよく、粗面加工されても(例えば、サンドブラスト加工されても)よく、エッチングされても(例えば、プラズマエッチングされても)よく、焼結されてもよく、及び/又は多孔質材料などの異なる材料で被覆されてもよい。このように、各熱素子12の外面16は、所望の通り、均一であっても不均一であってもよい。動作時、蒸発器10はまた、特定の用途に応じて水平に又は垂直に位置してもよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、第1の管セット34(1)は互いから約0.6メートル〜約1.2メートル離れてもよい。いくつかの実施形態では、蒸発器10は長さ8〜10メートルであってもよい。いくつかの実施形態では、スペーシングは、Tubular Exchanger Manufactureres Association,Inc.(TEMA)のバッフルスペーシングの基準に準拠してもよい。第1の流体分配サブアッセンブリ28(1)は、非限定的な例として、金属、プラスチック、複合物、セラミック、ステンレス(SS)、又はチタン(Ti)金属、熱可塑性樹脂、フッ素重合体等を含む任意の適切な材料を含んでもよい。
【0033】
この例では、第1のマニホールド管32(1)は、図1及び図2に示される熱素子12の外周部に合致する、実質的に円弧に湾曲している。いくつかの実施形態では、第1の流体分配ポイント38(1)は、非汚損及び/又は自己洗浄ノズルであってもよい。金属、プラスチック、複合物及び/又はセラミックノズルを含む任意の適切なノズルを用いてもよいと理解すべきである。他の実施形態では、第1の流体分配ポイント38(1)は、第1の管36(1)に加工される特徴を含んでもよい。第1の流体分配ポイント38(1)は、パイプ全てに確実に到達するために十分に実証された噴射パターンを有してもよい。
【0034】
蒸発器10内における作動流体29のより均一な分配を促進するために、複数の流体分配サブアッセンブリ28を用いてもよい。これに関連し、図3は、蒸発器10の一部として、第1の流体分配サブアッセンブリ28(1)の向きに対して横断方向の向きで組み立てられた第2の流体分配サブアッセンブリ28(2)を示す。第2の流体分配サブアッセンブリ28(2)は、第2の一次供給ライン30(2)及び複数の第2のマニホールド管32(2)を含む、第1の流体分配サブアッセンブリ28(1)に類似する特徴を含み、複数の第2の管セット34(2)は第2の一次供給ライン30(2)と流体的に連通されている。
【0035】
第1の管36(1)を第2の管36(2)に対して実質的に垂直に方向付けることによって、流体分配ポイント38(1)、38(2)は熱素子12の全体にわたり異なる規則的なパターンで位置し、作動流体29は熱素子12の全体に広がり、熱素子12の可能な限り多くの総表面積16に到達するようになる。この実施形態では、第1の管セット34(1)は第2の管セット34(2)と互い違いの配列で位置し、各第1の管セット34(1)は蒸発器10の長手方向の軸線に沿って、隣り合う第2の管セット34(2)から既定の距離(例えば、1フィート以上)に位置している。このようにして、第1の管36(1)及び横断方向に方向付けられた第2の管36(2)は、熱素子12の長さに沿って蒸発器10の全長の範囲内に規則的な交互のパターンで分配されている。
【0036】
この実施形態では、第1の流体分配サブアッセンブリ28(1)の第1の管36(1)は実質的に垂直な向きを有し、第2の流体分配サブアッセンブリ28(2)の第2の管36(2)は実質的に水平の向きを有するが、流体分配サブアッセンブリ28の第1の管36は、例えば、熱素子12の配列形状又は他の態様に基づき、所望の通り任意の数の異なる向きで配列してもよいと理解すべきである。
【0037】
これに関連し、図4A図4Cは、蒸発器10の組み立て及び動作を示す図1図3の蒸発器10の断面図であり、第1の流体分配サブアッセンブリ28(1)及び第2の流体分配サブアッセンブリ28(2)は垂直に対して実質的に45度に方向付けられている。図4Aを参照すると、蒸発器フレーム18は、熱素子12の正方形配列形状も45度の角度で方向付けられるように、蒸発器シェル40内に45度の角度で方向付けられている。第1の流体分配サブアッセンブリ28(1)は、どの熱素子12にもその上方に少なくとも1つ第1の管36(1)が配置され、また、どの熱素子12も少なくとも1つの流体分配ポイント38(1)に近接して配置されるように、蒸発器フレーム18に沿って取り付けられている。図4Bによって示されるように、第2の流体分配サブアッセンブリ28(2)は同様に、どの熱素子12にもその上方に少なくとも1つの第2の管36(2)が配置され、また、どの熱素子12も少なくとも1つの第2の流体分配ポイント38(2)に近接して配置されるように、蒸発器フレーム18に沿って取り付けられている。図4Cは、完全に組み立てられた蒸発器10の断面図を示し、蒸発器フレーム18と、第1の流体分配サブアッセンブリ28(1)と、第2の流体分配サブアッセンブリ28(2)とは蒸発器シェル40内で共に組み立てられている。このようにして、全ての熱素子12を、蒸発器10の全長に沿って、第1の流体分配サブアッセンブリ28(1)及び第2の流体分配サブアッセンブリ28(2)の両方により比較的均一に濡らしてもよい。
【0038】
蒸発器フレーム18の機能と流体分配サブアッセンブリ28の機能を一体構造にまとめることも可能である。これに関連し、図5は、熱素子12及び蒸発器シェル40(図示せず)の構造的支持及び剛性を同時に与えると共に、蒸発器42の全長に沿って、全ての熱素子12間における作動流体29の均一分配を促進するように構成された一体型流体分配フレーム44を有する蒸発器42を示す。この実施形態では、複数の一次供給ライン46は複数の円形マニホールド管48の周りに配列されている。交互する複数の第1の管50及び第2の管52は、熱素子12の長さに沿って、円形マニホールド管48の端から端に渡されている。この実施形態では、第1の管50は水平に配列されており、第2の管52は垂直に配列されているが、他の形状を所望の通りに使用してもよいと理解すべきである。この実施形態では、交互する複数の第1の管50及び第2の管52は熱素子12の構造的支持を与え、蒸発器42に剛性を与える。
【0039】
一次供給ライン46は、また、円形マニホールド管48を介して第1の管50及び第2の管52に作動流体29を供給するように構成されている。これにより、蒸発器42の長さに沿って、第1の管50及び第2の管52それぞれの複数の流体分配ポイント54を通じて熱素子12間に作動流体29を均一に分配することを可能にする。
【0040】
図6は、蒸発器シェル40内に配置された流体分配フレーム44を含む図5の蒸発器42の断面図を示す。この実施形態において円形マニホールド管48の周りに複数の一次供給ライン46を用いる利点の1つは、第1の管50及び第2の管52の異なる部分における圧力差が減少することである。これは、作動流体29が第1の管50及び第2の管52の両端から実質的に同等の圧力で第1の管50及び第2の管52に供給され、各第1の管50及び第2の管52の長さに沿ってより小さな圧力差をもたらすことが理由である。この圧力差の減少によって、流体分配ポイント54は作動流体29をより狭い範囲の圧力で提供することを可能にし、それにより、蒸発器42全体にわたる各流体分配ポイント54からより均一な量の作動流体29を提供する。
【0041】
上述の通り、開示される実施形態は、例えば、OTEC発電用途などの大規模熱交換器用途に好適であってもよい。これに関連し、図7は、実施形態が実施され得る発電用OTECシステム56の概略図である。この実施形態のOTECシステム56は、作動流体64を搬送する閉ループ導水管62に流体的に結合された1つ以上のタービン発電機60を有する海上プラットフォーム58を含む。作動流体64は上述の作動流体29と同一であっても類似してもよい。
【0042】
閉ループ導水管62はまた、上に開示した蒸発器10、42の1つであってもよい蒸発器66と、タービン発電機60と直列に配置された凝縮器67と、を含む。この実施形態では、タービン発電機60は浮遊船体68によって支持されており、蒸発器66及び凝縮器67は海水面より下に配置してもよい。
【0043】
この実施形態では、OTECシステム56の動作中、熱交換ポンプ70は作動流体64を蒸発器66内に送る。温暖海水用ポンプ72は、温暖海面領域74内に配置された温暖海水入口76を通じて海洋の温暖海面領域74から温暖海水を送る。典型的なOTEC配備では、海面領域74内の水は摂氏約25度の実質的に一定の温度である(天候及び日光条件に従う)。例えば、蒸発器10、42に関して上述した通り、温暖海水は蒸発器66内の作動流体64を気化するほど十分に加熱する。
【0044】
現時点でわずかに冷却されている使用済みの温暖海水は、その後、温暖海水出口78を通じて蒸発器66から排出される。気化した作動流体64はタービン発電機60の両側における閉ループ導水管62の圧力差を生じさせ、それにより、気化した作動流体64をタービン発電機60内に強制的に送り出し、タービン発電機60内の作動流体64の流れに応じてタービン発電機60に電気エネルギーを発生させる。
【0045】
気化した作動流体64は、タービン発電機60を出た後、凝縮器67に入る。低温海水ポンプ80は、海洋の低温深海領域82から、低温深海領域82内に配置された低温海水入口84を通じて低温海水を送る。通常、低温深海領域82は海洋の表面より約1,000メートル下であり、この深さにおいて、水は摂氏2、3度の実質的に一定の温度である。低温海水は凝縮器67内の作動流体64を冷却して作動流体64を液相に凝縮する。気化した作動流体64は熱交換ポンプ70によって蒸発器66へと戻され、このサイクルは無期限に継続する。
【0046】
一方、現時点でわずかに加温されている使用済みの低温海水は、低温海水出口86を通じて凝縮器67から排出される。この実施形態では、使用済みの温暖海水及び使用済みの低温海水の両方は、温暖海面領域74及び低温深海領域82の両方から離れた海洋の中間位領域88に排出されるが、使用済みの海水は異なる位置に排出することができる。これは、使用済みの海水が、温暖海水入口76又は低温海水入口84に近接して排出されないことを前提とする。温暖海水入口76又は低温海水入口84において、使用済みの海水は、入来する暖水の平均温度を低下させ、又は入来する低温海水の平均温度を上昇させ、蒸発器66及び/又は凝縮器67の効率を低下させる可能性がある。
【0047】
この実施形態では、海上プラットフォーム58は緊張係留式海上プラットフォームであり、浮遊船体68は、デッキ、ケーソン、及び浮体(図示せず)を含む。浮遊船体68は、剛性緊張係留部(tension leg)(図示せず)によって海底92の上方の配備位置90に固定されている。
【0048】
いくつかの実施形態では、海上プラットフォーム58は海洋以外の水域(例えば、湖、海等)内の別の配備位置90に配備してもよい。いくつかの実施形態では、海上プラットフォーム58は、半潜水型プラットフォーム、スパー型プラットフォーム、掘削船型プラットフォーム、ジャッキアップ型海上プラットフォーム、グレージングプラント(grazing plant)等など、別の種類の海上プラットフォームであってもよい。
【0049】
この実施形態では、タービン発電機60はタービン駆動式発電機である。上述の通り、この実施形態では、タービン発電機60は流体の流れに応じて電気エネルギーを生成し、生成した電気エネルギーを1つ以上の出力ケーブル94で供給する。このように、タービン発電機60は、海面領域74内の水の温度と深海領域82内の水の温度の差を基に電気エネルギーを生成するランキンサイクル機関の一部である。
【0050】
上述の通り、蒸発器66は例えば、上述した蒸発器10、42などのシェルアンドチューブ型熱交換器であってもよく、凝縮器67もまた、類似の特徴を有するシェルアンドチューブ型熱交換器であってもよい。
【0051】
OTECシステム56における作動流体64としてアンモニアを使用することが多い。しかしながら、海面領域74内の水の温度で蒸発し、深海領域82内の水の温度で凝縮する任意の流体であれば、作動流体64として使用するのに適している(材料適合性を条件とする)ことは当業者には明白であろう。
【0052】
ここで図8を参照すると、図1図3の蒸発器10を組み立てる方法100が開示される。この実施形態では、方法100は、複数の熱素子、例えば熱素子12を蒸発器フレーム内に配置するステップ(ブロック102)を含む。方法100は、複数の流体分配管、例えば、流体分配サブアッセンブリの管36を熱素子間に配置するステップであって、各管は複数の熱素子のうち異なるサブセットの熱素子に近接する、ステップ(ブロック104)を更に含む。方法100は、蒸発器フレーム及び流体分配サブアッセンブリを蒸発器シェル、例えば、蒸発器シェル40内に収めるステップを更に含む。
【0053】
これら実施形態は、数ある利点の中でも、低コスト、大規模、高効率の蒸発器を容易なものにする。これら実施形態によって、均一な流れの分配及び蒸発器コア体積全体を噴霧蒸発に使用することにつながる。
【0054】
当業者であれば、本開示の好適な実施形態の改良形態及び修正形態を理解するであろう。このようなあらゆる改良形態及び修正形態は本明細書中及び以下の特許請求の範囲に開示される概念の範囲内であるとみなされる。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8