(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6804490
(24)【登録日】2020年12月4日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス、該ワイヤハーネスを備えた給電装置
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20201214BHJP
H02G 11/00 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
B60R16/02 620C
B60R16/02 623U
H02G11/00
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-121813(P2018-121813)
(22)【出願日】2018年6月27日
(65)【公開番号】特開2020-1521(P2020-1521A)
(43)【公開日】2020年1月9日
【審査請求日】2019年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】加藤 光伸
(72)【発明者】
【氏名】横山 真樹
(72)【発明者】
【氏名】関野 司
【審査官】
菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2017−192259(JP,A)
【文献】
特開2009−183013(JP,A)
【文献】
特開2016−086552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
H02G 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線と、湾曲規制部材と、を備え、自動車の車両本体からスライドドアに配索されるワイヤハーネスであって、
前記湾曲規制部材は、前記電線の長手方向に帯状に延びた連結部と、該連結部の幅方向の一端又は両端から立設し、前記連結部の長手方向に並んだ複数の駒部と、を備え、
前記湾曲規制部材は、前記連結部が内側かつ前記駒部が外側となる向きで湾曲可能であり、逆向きには、隣接した前記駒部同士が当接することで湾曲が制限されており、
前記連結部は、柔軟性が高い部分と低い部分とがあり、前記スライドドアの近傍は、柔軟性が高い
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項2】
前記連結部の柔軟性が高い部分は、柔軟性が低い部分よりも厚みが薄い
ことを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記電線及び前記湾曲規制部材を覆った外装部材を備えている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載のワイヤハーネスと、
前記ワイヤハーネスを前記車両本体側で回動可能に支持する本体側ユニットと、
前記ワイヤハーネスを前記スライドドア側で回動可能に支持するドア側ユニットと、を備えている
ことを特徴とする給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に搭載されて車両本体からスライドドアの電装品に電源供給や信号伝送を行うワイヤハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、スライドドアを備えた自動車には、車両本体からスライドドアの電装品に電源供給や信号伝送を行う給電装置が搭載されている。
図6は、従来の給電装置(例えば特許文献1,2を参照。)におけるワイヤハーネスの軌跡を説明する説明図である。
【0003】
図6に示す給電装置401は、車両本体からスライドドアに配索されるワイヤハーネス404と、本体側ユニット402と、ドア側ユニット403と、を備えている。本体側ユニット402は、ワイヤハーネス404の外装部材であるコルゲートチューブ51を車両本体側で軸線P1を中心に回動可能に支持するものである。ドア側ユニット403は、前記コルゲートチューブ51をスライドドア側で軸線P2を中心に回動可能に支持するものである。
図6中の矢印Xは車両の幅方向と平行であり、矢印Yは車両の前後方向と平行であり、矢印Zは車両の上下方向と平行である。
【0004】
なお、
図6においては、スライドドア全閉時におけるドア側ユニットに符号403Aを付し、スライドドア全閉時におけるワイヤハーネスに符号404Aを付している。また、スライドドア開き始め時におけるドア側ユニットに符号403Bを付し、スライドドア開き始め時におけるワイヤハーネスに符号404Bを付している。また、スライドドア半開時におけるドア側ユニットに符号403Cを付し、スライドドア半開時におけるワイヤハーネスに符号404Cを付している。また、スライドドア全開時におけるドア側ユニットに符号403Dを付し、スライドドア全開時におけるワイヤハーネスに符号404Dを付している。
【0005】
このような給電装置401においては、スライドドアの開閉により湾曲したワイヤハーネス404が車両本体側に膨らむことを抑制するという課題があった。これは、ワイヤハーネス404が車両本体側に膨らむと、車両本体と干渉し易くなったり、見栄えがよくないためである。そして、この課題を解決するため、給電装置401においては、コルゲートチューブ51内に湾曲規制部材を挿入したり、本体側ユニット402及びドア側ユニット403にばねを組み込んだりしている。これらのことにより、
図6に示すように、スライドドア半開時におけるワイヤハーネス404Cは、本体側ユニット402近傍部分が車両前後方向に延びており、車両本体側への膨らみが抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017−192258号公報
【特許文献2】特開2017−192259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、従来の給電装置401においては、スライドドア半開時におけるワイヤハーネス404Cの車両本体側への膨らみは抑制できている。しかしながら、スライドドア開き始め時におけるワイヤハーネス404Bの膨らみ(
図6中のG部分)までは抑制しきれておらず、改善の余地があった。
【0008】
そこで、本発明は、スライドドアの開き始め時にワイヤハーネスが車両本体側に膨らむことを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明のワイヤハーネスは、電線と、湾曲規制部材と、を備え、自動車の車両本体からスライドドアに配索されるワイヤハーネスであって、前記湾曲規制部材は、前記電線の長手方向に帯状に延びた連結部と、該連結部の幅方向の一端又は両端から立設し、前記連結部の長手方向に並んだ複数の駒部と、を備え、前記湾曲規制部材は、前記連結部が内側かつ前記駒部が外側となる向きで湾曲可能であり、逆向きには、隣接した前記駒部同士が当接することで湾曲が制限されており、前記連結部は、柔軟性が高い部分と低い部分とがあり、前記スライドドアの近傍は、柔軟性が高いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、前記連結部は、柔軟性が高い部分と低い部分とがあり、前記スライドドアの近傍は、柔軟性が高いので、ワイヤハーネスにおけるスライドドア近傍部分の剛性を他の部分よりも低くすることができ、スライドドアの開き始め時にワイヤハーネスが車両本体側に膨らむことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる給電装置の平面図である。
【
図2】
図1のワイヤハーネスを構成する湾曲規制部材の斜視図である。
【
図6】従来の給電装置におけるワイヤハーネスの軌跡を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態にかかる「ワイヤハーネス」及び「給電装置」について、
図1〜5を参照して説明する。
【0013】
図1に示す給電装置1は、自動車に搭載されて車両本体からスライドドアの電装品に電源供給や信号伝送を行うものである。給電装置1は、車両本体からスライドドアに配索されるワイヤハーネス4と、ワイヤハーネス4の外装部材5を車両本体側で回動可能に支持する本体側ユニット2と、外装部材5をスライドドア側で回動可能に支持するドア側ユニット3と、を備えている。
【0014】
また、
図1は、スライドドアの開き始め時における給電装置1の態様を示しており、
図1中の本体側ユニット2とドア側ユニット3との相対位置は、
図6中の従来の給電装置401の本体側ユニット402とドア側ユニット403Bとの相対位置に対応している。スライドドアの全閉時から全開時に至るドア側ユニット3の軌跡は、
図6の従来例と同じである。また、スライドドアの全閉時から全開時に至るワイヤハーネス4の軌跡は、
図1の開き始め時を除いて
図6の従来例とほぼ同じである。
図1中の矢印Xは車両の幅方向と平行であり、矢印Yは車両の前後方向と平行であり、矢印Zは車両の上下方向と平行である。スライドドアは、車両の前後方向にスライドする。
【0015】
ワイヤハーネス4は、複数本の電線7と、
図2,3に示す湾曲規制部材6と、これら電線7及び湾曲規制部材6を覆った外装部材5と、を有している。外装部材5及び湾曲規制部材6は、本体側ユニット2からドア側ユニット3までの範囲に設けられている。電線7は、外装部材5よりも長く形成され、その両端が外装部材5から引き出されて露出している。また、外装部材5は、蛇腹筒状に形成された周知のコルゲートチューブが用いられている。
【0016】
湾曲規制部材6は、電線7の長手方向に帯状に延びた連結部65と、連結部65の幅方向の両端から立設し、連結部65の長手方向に並んだ複数の駒部61と、を備えている。これら連結部65及び複数の駒部61は、合成樹脂によって一体成形されている。湾曲規制部材6の長手方向の一端には、本体側ユニット2に保持されるフランジ69が設けられている。湾曲規制部材6の長手方向の他端は、ドア側ユニット3に保持されず、自由端となっている。
【0017】
各駒部61は、長方形板状の板部62と、板部62の外縁部から突出した首部63と、を有している。板部62の外表面には補強用のリブ64が設けられている。首部63は、駒部における連結部65と繋がった部位であり、板部62よりも幅が小さく形成されている。
【0018】
湾曲規制部材6は、
図2,3に示すように、隣り合う駒部61同士が離隔しつつ連結部65が弾性変形することで、連結部65が内側かつ駒部61が外側となる向きで湾曲可能であり、逆向きには、隣接した駒部61の板部62同士が当接することで湾曲が制限されている。また、湾曲規制部材6の一端側(本体側ユニット2側)は、連結部65が直線状態にあるときに隣接した板部62間に隙間が生じるように設けられており、その余の部分は、連結部65が直線状態にあるときに隣接した板部62同士が当接するように設けられている。このため、湾曲規制部材6の一端側は、連結部65が外側かつ駒部61が内側となる向きで、若干、湾曲可能となっている。
【0019】
このような湾曲規制部材6は、連結部65の幅方向が
図1のZ方向となる向き、かつ、スライドドアの全閉時に連結部65が駒部61よりも車幅方向外側に位置する向きとなるように配置される。電線7は、連結部65の幅方向に対向した駒部61同士の間に位置付けられる。
【0020】
さらに、上記連結部65は、柔軟性が高い部分と低い部分とがあり、スライドドアの近傍は、柔軟性が高くなっている。具体的には、連結部65は、湾曲規制部材6の長手方向の他端側に位置する
図3中のD部分の柔軟性が、一端側に位置するC部分よりも高くなっている。また、本例では、
図4,5に示すように、D部分の連結部65の厚みT2を、C部分の連結部65の厚みT1よりも薄くすることで、D部分の連結部65の柔軟性をC部分の連結部65よりも高くしている。また、本例のD部分の連結部65の長さは、湾曲規制部材6の全長の2割である。
【0021】
本体側ユニット2は、外装部材5の一端に取り付けられるボデーロータ21と、車両本体に固定され、ボデーロータ21を軸線P1を中心に回動可能に取り付けたボデープロテクタ22と、を備えている。
【0022】
ドア側ユニット3は、外装部材5の他端に取り付けられるドアロータ31と、スライドドアに固定され、ドアロータ31を軸線P2を中心に回動可能に取り付けたドアプロテクタ32と、ドアロータ31を
図1の上面視において反時計回り方向に付勢したばねと、を備えている。
【0023】
給電装置1は、ワイヤハーネス4が上述した湾曲規制部材6を有しているので、ワイヤハーネス4におけるドア側ユニット3近傍部分の剛性を他の部分よりも低くすることができ、スライドドアの開き始め時にワイヤハーネス4が車両本体側に膨らむことを抑制することができる。これにより、ワイヤハーネス4と車両本体との干渉を防止でき、また、ワイヤハーネス4が膨らむことによる見栄えの低下を回避できる。
【0024】
なお、
図1中の点線は、比較例のワイヤハーネスを表している。この比較例のワイヤハーネスは、連結部65の柔軟性がその全長にわたって均一に形成された湾曲規制部材が用いられている。
図1より、本例の湾曲規制部材6を用いることでスライドドア開き始め時におけるワイヤハーネス4の膨らみを小さくできていることがわかる。
【0025】
上述した実施形態のワイヤハーネス4は、外装部材5を備えていたが、本発明において、ワイヤハーネスは、外装部材を必ずしも備えていなくてもよい。また、上述した実施形態の湾曲規制部材6は、駒部61が連結部65の幅方向の両端から立設していたが、本発明において、湾曲規制部材は、駒部61が連結部65の幅方向の一端のみから立設している構成であってもよい。
【0026】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0027】
1 給電装置
2 本体側ユニット
3 ドア側ユニット
4 ワイヤハーネス
5 外装部材
6 湾曲規制部材
7 電線
61 駒部
65 連結部