特許第6804511号(P6804511)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6804511n−ブタンを無水マレイン酸へ酸化するための改良された触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6804511
(24)【登録日】2020年12月4日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】n−ブタンを無水マレイン酸へ酸化するための改良された触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 37/02 20060101AFI20201214BHJP
   B01J 27/198 20060101ALI20201214BHJP
   C07D 307/60 20060101ALI20201214BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20201214BHJP
【FI】
   B01J37/02 101C
   B01J27/198 Z
   C07D307/60 B
   !C07B61/00 300
【請求項の数】27
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2018-501862(P2018-501862)
(86)(22)【出願日】2016年6月22日
(65)【公表番号】特表2018-530417(P2018-530417A)
(43)【公表日】2018年10月18日
(86)【国際出願番号】US2016038696
(87)【国際公開番号】WO2017011162
(87)【国際公開日】20170119
【審査請求日】2019年6月18日
(31)【優先権主張番号】14/801,085
(32)【優先日】2015年7月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513099153
【氏名又は名称】イネオス ユーロープ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ハダード ムイン エス
(72)【発明者】
【氏名】ブラズディル ジェームズ エフ
(72)【発明者】
【氏名】ガスタフェロー ロバート エイ
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−501214(JP,A)
【文献】 特表平09−511177(JP,A)
【文献】 特表2007−505730(JP,A)
【文献】 特表2005−527346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
C07D 307/60
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
促進VPO触媒を調製する方法であって、触媒がバナジウムとリンとの混合酸化物を含み、触媒がニオブ、ならびにアンチモンおよびビスマスのうちの少なくとも1つで促進されており、前記方法が、
(i)ピロリン酸バナジルを主成分として含み、5質量%未満のリン酸バナジルを含有するVPO触媒を調製する工程と、
(ii)前記VPO触媒に、ニオブの金属源化合物、ならびにアンチモンおよびビスマスのうちの少なくとも1つの金属源化合物を含浸し、金属含浸VPO触媒を形成する工程と、
(iii)前記金属含浸VPO触媒を乾燥させて、促進VPO触媒を形成する工程と
を含む、前記方法。
【請求項2】
工程(ii)におけるVPO触媒の含浸が、VPO触媒を、ニオブの金属源化合物、ならびにアンチモンおよびビスマスのうちの少なくとも1つの金属源化合物を含む、単一の液体混合物と接触させて、金属含浸VPO触媒を形成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(ii)におけるVPO触媒の含浸が、VPO触媒を、ニオブの金属源化合物を含む液体混合物、ならびにアンチモンおよびビスマスのうちの少なくとも1つの金属源化合物を含む液体混合物と接触させて、金属含浸VPO触媒を形成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
触媒が、最初の液体混合物と接触した後であって、次の液体混合物と接触する前に乾燥される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
VPO触媒が、80質量%を超えるピロリン酸バナジル、および5質量%未満のリン酸バナジルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
VPO触媒が、90質量%を超えるピロリン酸バナジル、および3質量%未満のリン酸バナジルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
VPO触媒が微小球状粒子に形成された、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ニオブの金属源化合物がシュウ酸ニオブアンモニウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
アンチモンおよびビスマスのうちの少なくとも1つの金属源化合物が、酢酸アンチモンおよび酸化アンチモンからなる群から選択される、アンチモンの金属源化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
アンチモンの金属源化合物が、Sb(CH3COO)3、Sb25、およびSb23からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
アンチモンの金属源化合物が、10nm未満の平均粒径を有するナノ粒子Sb25である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
アンチモンおよびビスマスのうちの少なくとも1つの金属源化合物が、酢酸ビスマス、酸化ビスマス、炭酸ビスマスおよび水酸化ビスマスからなる群から選択される、ビスマスの金属源化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
液体混合物が、それぞれ約0.5質量%〜約10質量%の金属を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項14】
金属含浸VPO触媒が、不活性雰囲気中100℃〜300℃で2〜5時間乾燥される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
金属含浸VPO触媒が、不活性雰囲気中約200℃で約3時間乾燥される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
促進VPO触媒を調製する方法であって、触媒が、バナジウムとリンとの混合酸化物を含み、触媒がニオブ、ならびにアンチモンおよびビスマスのうちの少なくとも1つで促進されており、前記方法が、ニオブ促進VPO触媒にアンチモンおよびビスマスのうちの少なくとも1つの金属源化合物を含浸させて、金属含浸VPO触媒を形成する工程と、次いで、金属含浸VPO触媒を乾燥させて、ニオブ、ならびにアンチモンおよびビスマスのうちの少なくとも1つで促進されたVPO触媒を形成する工程とを含む、前記方法。
【請求項17】
ニオブ促進VPO触媒の含浸が、ニオブ促進VPO触媒を、アンチモンおよびビスマスのうちの少なくとも1つの金属源化合物を含む液体混合物と接触させて、金属含浸VPO触媒を形成することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ニオブ促進VPO触媒が、80質量%超えるピロリン酸バナジルおよび5質量%未満のリン酸バナジルを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
ニオブ促進VPO触媒が、90質量%超えるピロリン酸バナジルおよび3質量%未満のリン酸バナジルを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
ニオブ促進VPO触媒が微小球状粒子に形成された、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
アンチモンおよびビスマスのうちの少なくとも1つの金属源化合物が、酢酸アンチモンおよび酸化アンチモンからなる群から選択される、アンチモンの金属源化合物である、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
アンチモンの金属源化合物が、Sb(CH3COO)3、Sb25、およびSb23からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
アンチモンの金属源化合物が、10nm未満の平均粒径を有するナノ粒子Sb25である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
アンチモンおよびビスマスのうちの少なくとも1つの金属源化合物が、酢酸ビスマス、酸化ビスマス、炭酸ビスマス、および水酸化ビスマスからなる群から選択される、ビスマスの金属源化合物である、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
液体混合物が、約0.5質量%〜約10質量%の金属を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項26】
金属含浸VPO触媒が、不活性雰囲気中100℃〜300℃で2〜5時間乾燥される、請求項16に記載の方法。
【請求項27】
金属含浸VPO触媒が、不活性雰囲気中約200℃で約3時間乾燥される、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、n−ブタンの無水マレイン酸への酸化で使用する、改良された触媒に関する。特に、本発明は、バナジウムとリンとの混合酸化物を含む金属促進(promoted)酸化触媒を作製する方法であって、触媒がニオブ、ならびにアンチモンおよびビスマスのうちの少なくとも1つで促進されている、方法を対象とする。この調製方法は、n−ブタンを無水マレイン酸へ酸化するための改良された触媒組成物をもたらす。
【背景技術】
【0002】
無水マレイン酸は、不飽和ポリエステル樹脂、ブタンジオールおよびテトラヒドロフランなどの化学中間体、医薬品ならびに農業用化学物質製造用の周知で汎用性のある中間体である。無水マレイン酸は、芳香族(例えば、ベンゼン)または非芳香族(例えば、n−ブタン)炭化水素の部分酸化によって製造される。酸化は不均一系触媒の存在下、気相中で行われる。酸化反応は固定床、流動床、または上昇管床(riser bed)反応器で実施することができる。
無水マレイン酸を製造するために、n−ブタン、n−ブテン、1,3−ブタジエンまたはこれらの混合物などの4−炭素原子炭化水素の、分子状酸素または酸素含有ガスによる酸化に、バナジウムおよびリンの酸化物を含有する触媒が使用されてきた。これらの触媒を調製する従来の方法は、5価のバナジウム化合物を還元し、これをリン化合物と組み合わせ、所望の場合はバナジウムに+5未満の原子価状態を提供する条件下で、助触媒(promoter)元素化合物を組み合わせ、バナジウム−リン酸化物に転化されうる触媒前駆体を形成することを含む。次いで、触媒酸化物前駆体は回収され、固定床または流動床に適当な触媒粒子が形成される前または後に、活性触媒材料に転化される。
【0003】
従来技術は、この調製のための多くの異なる手順を記述しており、一般にバナジウムの源として五酸化バナジウム(V25)の使用を含んでいる(例えば米国特許第5,137,860号および欧州特許出願公開第0804963号を参照されたい)。塩化水素水溶液は、V+5をV+4へ還元すると言われる還元剤の1つである。イソブチルアルコールおよびベンジルアルコールなどの、第一級または第二級の脂肪族アルコールまたは芳香族アルコールのような、有機還元媒体も使用される。最も使用される有機還元剤はイソブチルアルコールであり、その理由は最適な溶解特性および酸化還元特性を兼ね備え、したがって4価バナジウムの形成を伴う完全な酸化還元反応に有利なためである。これはリン酸と反応してバナジル酸オルトリン酸塩半水和物、(VO)HPO4・0.5H2Oを生成し、次いでそれをさらに熱処理にかけて最終触媒をもたらす。
【0004】
米国特許第3,888,886号、第3,905,914号、第3,931,046号、第3,932,305号、および第3,975,300号は、直径1インチの流動床反応器でブタンから無水マレイン酸を製造するための、促進バナジウム−リン酸化物触媒の試験を開示している。ほとんどの実例では、触媒は、水媒体中でバナジル酸オルトリン酸塩半水和物触媒前駆体を形成し(米国特許第3,975,300号では、前駆体を、バナジウム化合物、リン化合物および有機還元剤のペースト中で形成する)、乾燥させ、その後前駆体を約74〜250μmの大きさの粉末に粉砕し、ふるうことによって調製される。
米国特許第4,647,673号は、バナジウムとリンとの混合酸化物を含む耐摩耗性微小球状(microspheroidal)流動床触媒を調製する方法であって、バナジウム−リン混合酸化物触媒前駆体が高密度化され、微粉砕され、流動化可能な粒子に形成され、流動化タイプの条件下で焼成される、方法を開示している。
バナジウムとリンとの混合酸化物を含む触媒の性能を、元素周期表のIA、IB、IIA、IIB、IIIA、IIIB、IVA、IVB、VA、VB、VIA、VIB、およびVIIIA族から選択される助触媒元素、またはこうした元素の混合物を添加することによって、修飾してもよく実質的に改良することができる。特許文献は、これらの元素の添加によって、こうした触媒の触媒性能が実質的に改良できると主張している。文献で報告された助触媒およびそれらの役割についての総説は、G.J.HutchingsによるAppl.Catal., 1991, 72, 1-32、およびStud.Surf.Sci.Catal."Preparation of Catalysts VI",(G.Poncelet et al., Eds.), Vol.91, Elsevier Science, Amsterdam, 1995, p.1に報告されている。バナジウムとリンとの混合酸化物を含む触媒の性能を改良する助触媒の他の記述としては、以下が挙げられる:V.Guliants et al.(Catalyst Letters 62(1999), 87-9)、こうした触媒をNb、Si、Ti、およびZrにより促進する;I.Mastuura, et al.(Catal.Today, 1996, 28, 133-138)、共沈物VおよびNbを水溶液に共沈させ、次いで沈殿物をベンジルアルコールで還流下で処理する;P.G.Pries de Oliveira, et al.(Catal.Today, 2000, 57, 177-186)、VPO前駆体をイソブチルアルコール中で調製し、NbPO4をバナジル酸オルトリン酸塩半水和物の核生成の直前に導入する;A.M.Duarte de Farias et al.(J.Catal.2002, 208, 238-246)、Nbエトキシドをイソブチルアルコールに可溶化し、それを還元剤として使用してNb修飾触媒前駆体を調製し、次いで前駆体を反応条件下で活性化する;米国特許第4,147,661号(Higginsら)、還元剤として塩化水素ガスを使用してイソブチルアルコール中でNb促進触媒を調製する;米国特許第7,638,457号(Ghelfiら)、少量のNb化合物またはその塩が、バナジウム源、リン源、溶媒および還元剤として作用することができる有機媒体、ならびにベンジルアルコールおよびポリオールからなる群から選択される添加剤を含む触媒前駆体混合物の調製において添加され、続いて蒸気存在下で前駆体の熱処理が実施される。
【0005】
米国特許第8,658,557号(Haddadら)は、促進VPO触媒を調製する方法であって、触媒が、バナジウムとリンとの混合酸化物を含み、触媒がニオブ、コバルト、鉄、亜鉛、モリブデンまたはチタンの少なくとも1つで促進されており、前記方法が、(i)ピロリン酸バナジルを主成分として含み、5質量%未満のリン酸バナジルを含有するVPO触媒を調製する工程と、(ii)VPO触媒を、ニオブ、コバルト、鉄、亜鉛、モリブデンまたはチタンからなる群から選択される少なくとも1種の金属の金属源化合物を含む溶液と接触させて、金属含浸VPO触媒を形成する工程と、(iii)金属含浸VPO触媒を乾燥させて、促進VPO触媒を形成する工程とを含む、方法を教示している。米国特許第8,658,557号では、ニオブが好ましい助触媒であった。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、n−ブタンを無水マレイン酸へ酸化するための改良された触媒であって、バナジウムとリンとの混合酸化物を含み、ニオブ、ならびにアンチモンおよびビスマスのうちの少なくとも1つで促進されている、触媒を対象とする。本明細書に記述のように調製されたこれらの改良された触媒は、従来技術の調製によって調製された促進触媒より、n−ブタンの無水マレイン酸への大きな全転化を提供する。
【0007】
一実施形態では、本発明は促進VPO触媒を調製する方法であって、触媒が、バナジウムとリンとの混合酸化物を含み、触媒がニオブ、ならびにアンチモンおよびビスマスのうちの少なくとも1つで促進されており、前記方法が、
(i)ピロリン酸バナジルを主成分として含み、5質量%未満のリン酸バナジルを含有するVPO触媒を調製する工程と、
(ii)VPO触媒に、ニオブの金属源化合物、ならびにアンチモンおよびビスマスのうちの少なくとも1つの金属源化合物を含浸し、金属含浸VPO触媒を形成する工程と、
(iii)金属含浸VPO触媒を乾燥させて、促進VPO触媒を形成する工程と
を含む、前記方法である。
【0008】
一実施形態では、本発明は促進VPO触媒を調製する方法であって、触媒がバナジウムとリンとの混合酸化物を含み、触媒がニオブ、ならびにアンチモンおよびビスマスのうちの少なくとも1つで促進されており、前記方法が、ニオブ促進VPO触媒にアンチモンおよびビスマスのうちの少なくとも1つの金属源化合物を含浸させて、金属含浸VPO触媒を形成する工程と、次いで、金属含浸VPO触媒を乾燥させて、ニオブ、ならびにアンチモンおよびビスマスのうちの少なくとも1つで促進されたVPO触媒を形成する工程とを含む、方法である。
一実施形態では、本発明は促進VPO触媒を調製する方法であって、触媒がバナジウムとリンとの混合酸化物を含み、触媒がニオブ、ならびにアンチモンおよびビスマスのうちの少なくとも1つで促進されており、ニオブ促進触媒を、アンチモンおよびビスマスのうちの少なくとも1つの金属源化合物を含む液体混合物と接触させて、金属含浸ニオブ促進VPO触媒を形成する工程と、次いで金属含浸VPO触媒を乾燥させて、ニオブ、ならびにアンチモンおよびビスマスのうちの少なくとも1つで促進されたVPO触媒を形成する工程とを含む、前記方法である。
【0009】
一実施形態では、本発明は促進VPO触媒を調製する方法であって、触媒がバナジウムとリンとの混合酸化物を含み、触媒がニオブ、ならびにアンチモンおよびビスマスのうちの少なくとも1つで促進されており、
(i)ピロリン酸バナジルを主成分として含み、5質量%未満のリン酸バナジルを含有するVPO触媒を調製する工程と、
(ii)VPO触媒を、ニオブの金属源化合物を含む液体混合物、ならびにアンチモンおよびビスマスのうちの少なくとも1つの金属源化合物を含む液体混合物と接触させて、金属含浸VPO触媒を形成する工程と、
(iii)金属含浸VPO触媒を乾燥させて、促進VPO触媒を形成する工程と
を含む、前記方法である。
上記の調製の一実施形態では、VPO触媒を、ニオブの金属源化合物、ならびにアンチモンおよびビスマスのうちの少なくとも1つの金属源化合物を含む、単一の液体混合物と接触させて、金属含浸VPO触媒を形成する。
【0010】
別の実施形態では、本発明は促進VPO触媒を調製する方法であって、触媒がバナジウムとリンとの混合酸化物を含み、触媒がニオブ、ならびにアンチモンおよびビスマスのうちの少なくとも1つで促進されており、
(i)ピロリン酸バナジルを主成分として含み、5質量%未満のリン酸バナジルを含有するVPO触媒を調製する工程と、
(ii)VPO触媒を、ニオブの源化合物を含む液体混合物と接触させて、ニオブ含浸VPO触媒を形成する工程と、
(iii)ニオブ含浸VPO触媒を乾燥させて、ニオブ促進触媒を形成する工程と、
(iv)ニオブ促進VPO触媒を、アンチモンおよびビスマスのうちの少なくとも1つの金属源化合物を含む液体混合物と接触させて、金属含浸ニオブ促進VPO触媒を形成する工程と、
(iv)金属含浸ニオブ促進触媒を乾燥させて、ニオブ、ならびにアンチモンおよびビスマスのうちの少なくとも1つで促進されたVPO触媒を形成する工程と
を含む、前記方法である。
一実施形態では、本発明は、バナジウムとリンとの混合酸化物を含み、5質量%未満のリン酸バナジルを含有し、ニオブ、ならびにアンチモンおよびビスマスのうちの少なくとも1つをさらに含む、n−ブタンを無水マレイン酸へ酸化するための触媒組成物である。
【0011】
本文書中で使用する場合、「含浸」(および「含浸させる」などのその変形)は、材料を充填する、浸み込ませる、浸透させる、飽和させる、または被覆することを意味し、「液体混合物」は、有機溶媒または水と、少なくとも1つの他の化合物との混合物であり、その意味の中に、溶液、スラリーおよび懸濁液を含む。一実施形態では、液体混合物は、水と少なくとも1つの他の化合物との混合物である「水性混合物」であり、その意味の中に、溶液、スラリーおよび懸濁液を含む。本明細書で使用する場合、「wt%」は「質量パーセント」または「質量による百分率」を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、触媒およびその調製方法である。触媒は、バナジウムとリンとの混合酸化物を含み、ニオブ、ならびにアンチモンおよびビスマスのうちの少なくとも1つで促進されている。触媒は、n−ブタンを無水マレイン酸へ酸化するために有用である。
【0013】
触媒:
本発明の触媒は、バナジウムとリンとの酸化物を含み、ニオブ、ならびにアンチモンおよびビスマスのうちの少なくとも1つで促進されている。さらにこれらの触媒は、5質量%未満のリン酸バナジルを含有している。一実施形態では、VPO触媒はニオブおよびアンチモンで促進されている。別の実施形態では、VPO触媒はニオブおよびビスマスで促進されている。
【0014】
バナジウム、リンおよび酸素を含む触媒(以下「VPO触媒」)は、n−ブタンを無水マレイン酸へ酸化するために有用である。こうした触媒は、典型的には以下の相の混合物:ピロリン酸バナジル、(VO)227;メタリン酸バナジル、VO(PO32およびリン酸バナジル、VOPO4を含む。
こうした多相VPO触媒は、式(VO)HPO4・0.5H2Oのバナジル酸オルトリン酸塩半水和物の熱処理によって典型的には誘導され、本明細書で記述のように調製することができる。
ニオブ、ならびにアンチモンおよびビスマスのうちの少なくとも1つで促進されている本発明の改良された促進VPO触媒は、様々な調製方法によって実現することができる。
【0015】
一実施形態では、本触媒は、ニオブ促進VPO触媒を、アンチモンおよびビスマスのうちの少なくとも1つの金属源化合物を含む液体混合物と接触させて、金属含浸ニオブ促進VPO触媒を形成し、次いで金属含浸VPO触媒を乾燥させて、ニオブ、ならびにアンチモンおよびビスマスのうちの少なくとも1つで促進されたVPO触媒を形成することによって、製造される。この実施形態では、VPO触媒を乾燥させて焼成する前に、触媒スラリー調製の一部としてニオブをVPO触媒に添加する、または、米国特許第8,658,557号で記述のように、乾燥させたVPO触媒への含浸によってニオブを添加してもよい。
【0016】
一実施形態では、本触媒は、
(i)主成分としてピロリン酸バナジルを含み、5質量%未満のリン酸バナジルを含有する、VPO触媒を調製する工程と、
(ii)VPO触媒を、ニオブの金属源化合物を含む液体混合物、ならびにアンチモンおよびビスマスのうちの少なくとも1つの金属源化合物を含む液体混合物と接触させて、金属含浸VPO触媒を形成する工程と、
(iii)金属含浸VPO触媒を乾燥させて、促進VPO触媒を形成する工程と
を含む方法で、製造される。上記の方法の一実施形態では、VPO触媒を、ニオブの金属源化合物、ならびにアンチモンおよびビスマスのうちの少なくとも1つの金属源化合物を含む単一の液体混合物と接触させて、金属含浸VPO触媒を形成する。
別の実施形態では、促進VPO触媒を調製する方法であって、触媒が、バナジウムとリンとの混合酸化物を含み、触媒が、ニオブ、ならびにアンチモンおよびビスマスのうちの少なくとも1つで促進されており、
(i)主成分としてピロリン酸バナジルを含み、5質量%未満のリン酸バナジルを含有するVPO触媒を調製する工程と、
(ii)VPO触媒を、ニオブの源化合物を含む液体混合物と接触させて、ニオブ含浸VPO触媒を形成する工程と、
(iii)ニオブ含浸VPO触媒を乾燥させて、ニオブ促進VPO触媒を形成する工程と、
(iv)ニオブ促進VPO触媒を、アンチモンおよびビスマスのうちの少なくとも1つの金属源化合物を含む液体混合物と接触させて、金属含浸ニオブ促進VPO触媒を形成する工程と、
(iv)金属含浸ニオブ促進触媒を乾燥させて、ニオブ、ならびにアンチモンおよびビスマスのうちの少なくとも1つで促進されたVPO触媒を形成する工程と、
を含む、前記方法。
【0017】
典型的には、得られた触媒中の各金属助触媒(ニオブ、アンチモンまたはビスマス)の量は、0.1〜1.0質量%の間にある。一実施形態では、各金属助触媒のバナジウムに対するモル比は、0.0015対1と0.015対1との間にある。別の実施形態では、各金属助触媒のバナジウムに対するモル比は、0.003対1と0.01対1との間にある。
VPO触媒の調製:
バナジウムとリンとの混合酸化物を含有するVPO触媒は、当該技術分野において既知の任意の方法によって調製することができる。
【0018】
バナジウムとリンとの混合酸化物を含有する酸化触媒を調製するための1つの方法では、バナジウム化合物、特に5価のバナジウム化合物を、有機液体媒体中で少なくとも部分的に可溶化する。5価のバナジウムを含有する適当なバナジウム化合物としては、五酸化バナジウム、またはメタバナジン酸アンモニウムおよびオキシ三ハロゲン化バナジウムなどのバナジウム塩が挙げられる。五酸化バナジウムが好ましい。バナジウムの可溶化を助けるために、液体媒体へ導入するバナジウム含有化合物は、小さな粒径を有することが好ましく、液体媒体中にありながらバナジウム化合物の粒径をさらに低減する方法、例えば、液体媒体中のバナジウム初期懸濁液のボールミル粉砕によるなど、を使用してもよい。
【0019】
使用する液体媒体は、添加および溶媒和の際、または混合および加熱の際に、少なくともバナジウムの一部を+4原子価状態にすることができる必要がある。さらに、液体媒体はリン酸の溶媒であって、リン酸に対して比較的非反応性であるべきである。しかしながら、液体媒体は、バナジウムとリンとの混合酸化物の溶媒であってはならない。本発明で使用する適当な液体媒体は、アルコール、アルデヒド、ケトン、エーテルおよび上記の混合物などの有機化合物である。本発明で使用する有機液体媒体は、好ましくは無水である。本発明での液体媒体としての使用に適当な好ましい有機液体は、アルコール、特にイソブタノールである。
【0020】
5価のバナジウム化合物が液体媒体へ導入された後、好ましくは得られた反応媒体を、所望の場合は撹拌しながら加熱することによって、バナジウムの還元がもたらされる。4−炭素原子炭化水素を無水マレイン酸へ酸化するための好ましいバナジウムおよびリン酸化物触媒は、約+3.9〜約+4.6の平均原子価段階(valence stage)にあるバナジウムを含有している。この平均原子価状態は、反応混合物に導入される5価のバナジウムの少なくとも一部が、+4状態、好ましくは約+4.1に還元された時に達成される。
【0021】
バナジウムの少なくとも部分的な還元の後、5価のリン含有化合物を反応媒体に添加する。5価のリンを含有する適当なリン化合物としては、リン酸、五酸化リン、または五塩化リンなどのリンペルハライド(phosphorus perhalide)が挙げられる。リン酸と五酸化リンが好ましい。5価のリン含有化合物は、好ましくは、液体反応媒体の成分において、または液体の反応媒体にリン含有化合物をもたらすことができる液体において、リン含有化合物溶液の形態で、反応媒体に添加される。液体反応媒体へリン含有化合物を添加した後、必要であれば撹拌しながら、液体反応媒体を加熱することが好ましい。
バナジウムとリンとの混合酸化物を含有する酸化触媒を調製するための、代わりの別の方法では、リン含有化合物を液体媒体に添加し、続いて五酸化バナジウムをこの混合物に添加して反応媒体を形成し、次いでこれを撹拌しながら加熱する。
上述のように、使用する液体媒体は、バナジウム−リン混合酸化物の溶媒であってはならない。そのため、バナジウム−リン酸化物触媒前駆体が形成されるとともに、それは液体反応媒体から沈殿する。媒体の全H2O含量は、特にこの時点で、典型的には約5%未満である。
【0022】
触媒前駆体は、蒸発、濾過、遠心分離、デカント等などの従来の方法によって調製され、液体反応媒体から回収することができる。一実施形態では、前駆体を加熱によって乾燥させる。あるいは、まだ部分的に有機液体で濡れている回収された前駆体を、石油エーテルなどの低沸点溶媒で処理してもよい。別の実施形態では、過剰の調製反応媒体は、真空濾過によってしっかりと除去してもよい。さらに別の実施形態では、過剰の水を、前駆体を含有する有機液体反応媒体へ導入して、有機層の水層からの分離を可能にし、続いて、乾燥によって触媒前駆体を回収することができる。
上述のように、触媒前駆体を液体の反応媒体から回収する前、または後に、ニオブに対する源化合物を触媒前駆体の調製中に添加し、最終的にニオブ促進VPO触媒を製造してもよい。
【0023】
回収後、触媒前駆体は高密度化および微粉砕にかけられる。触媒前駆体を高密度化し微粉砕する順序は、これらの目的遂行に使用する方法に依存する。例えば、触媒前駆体を錠剤化またはペレット化することによって、触媒前駆体を高密度化し、その後、高密度化した材料を砕くまたは挽き、微小球状粒子形成のために調製してもよい。あるいは、前駆体材料を高密度化し、かつ直径約1μm未満の平均粒径へ触媒前駆体を微粉砕するために、触媒前駆体を、乾燥または噴霧乾燥によって回収し、その後、乾燥ボールミル粉砕にかけてもよい。最終的な流動化可能な触媒粒子が、1立方センチメートル当たり約0.75グラム以上、好ましくは1立方センチメートル当たり1グラム以上のかさ密度を有するように、触媒前駆体を高密度化および微粉砕する工程を繰り返してもよい。
【0024】
次いで、高密度化され微粉砕された触媒前駆体は、微小球状の流動化可能な粒子を形成する。油滴下法(oil drop method)によって形成を達成することができ、その際、触媒前駆体水溶液を高温の油浴に滴下して、球状粒子の形成をもたらす。別の実施形態では、触媒前駆体の水スラリーを噴霧乾燥することによって、微小球状の流動化可能な粒子を形成する。
流動化可能なフラクションを形成するために、破砕およびふるい分けによって流動化可能な粒子を形成することは、主として粒子の不規則な表面特性のために、粒子が流動床運転中に容易に剥離するので、耐摩耗性触媒を形成するのに適当ではない。
噴霧乾燥を利用する場合、触媒前駆体は、水スラリーを形成するために水中へ導入する時、好ましくは未焼成であるべきである。焼成したバナジウム−リン混合酸化物触媒は、特に空気中で焼成した場合、(100℃未満で)水にしっかり接触させると、触媒の活性を低下させる。
触媒前駆体を含有する水スラリーの固形分は、約25〜約60質量%に調節されるべきである。一実施形態では、固形分は約40質量%を超える。次いで、触媒前駆体を含有する水スラリーを噴霧乾燥させ、約20〜約300μm、通常は20〜約240μmの粒径範囲を有する、均一な微小球状粒子を形成する。噴霧乾燥は、当該技術分野において既知の方法によって達成することができる。
【0025】
触媒は、不活性な希釈剤または担体を添加することなく、100%活性な相を含んでもよい。他の実施形態では、高密度化、微粉砕、および微小球状の流動化可能粒子形成のいずれかの工程の前または最中に、希釈剤または担体の添加によって、不活性な希釈剤または担体を流動床触媒に添加してもよい。こうした不活性な希釈剤または担体としては、シリカ、アルミナ、アルミナシリカ、チタニア、ニオビア、炭化ケイ素等が挙げられる。一実施形態では、触媒は少なくとも70%の活性物質を含む。別の実施形態では、触媒は少なくとも80%の活性物質を含む。さらに別の実施形態では、触媒は少なくとも90%の活性物質を含む。
【0026】
上で調製した流動化可能な粒子は、流動化型条件下で焼成にかけられる。流動化条件は、当業者よって容易に決定することができ、触媒含有流動床容器の中へ、触媒床を「浮揚させる(raise)」のに十分なガス流を導入し、実質的に全ての触媒粒子をガス状の供給原料と接触させ、等温の温度制御を維持することを含む。カスケーディング(cascading)焼成などの他の焼成技法(これは、流動化焼成に類似しており、触媒粒子の均一なガス接触および比較的等温の温度制御を提供する)を、本発明によって利用して、焼成された触媒に耐摩耗性を付与するのに十分な、流動化型条件をもたらしてもよい。しかしながら、流動床焼成が好ましい。
触媒を、空気中または酸素含有ガス中で、流動化型条件下約300℃〜約450℃の温度範囲で焼成する。触媒を、炭化水素、不活性ガスまたは蒸気存在下でさらに焼成してもよい。一実施形態では、焼成温度を約300℃から約325℃まで増加させ、次いで、約400℃から約500℃まで徐々に増加させる。一実施形態では、温度増加は毎分約0.5℃〜約5℃の速度である。焼成時間は、調製方法、触媒組成および触媒の量に依存して変化するが、通常、焼成は1時間を超える時間で行われる。
【0027】
触媒前駆体は助触媒元素を含有してもよく、助触媒元素としては、これらに限定はされないが、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Ti、Cr、W、Ta、U、Co、Mo、Fe、Zn、Hf、Zr、Mn、As、Sb、Te、Bi、Sn、Ge、Nb、Ni、Cu、Cd、Ce、希土類またはこれらの混合物が挙げられる。これらを、当該技術分野において既知であるいずれかの方法、例えば、バナジウムの還元前もしくは後、または流動化可能な触媒調製の1つまたは複数の工程中の、液体反応媒体を介する包含(inclusion)などで、触媒前駆体に組み入れてもよい。助触媒元素を、金属、酸化物、水酸化物、炭酸塩、または塩、例えば、ハロゲン化物、硝酸塩、酢酸塩、蟻酸塩、酪酸塩、ベンジル酸塩等として触媒に添加してもよい。一実施形態では、助触媒元素のバナジウムに対するモル比は、0.001:1〜1:1である。別の実施形態では、助触媒元素のバナジウムに対するモル比は、0.003:1〜0.5:1である。
4−炭素原子炭化水素からの無水マレイン酸の製造に適した触媒は、約2:1〜約0.5:1、好ましくは約0.8:1〜約1.3:1の、リンのバナジウムに対する比を通常有する。最も好ましいのは、約1.2:1のP/V比である。これらの触媒は、+3.5〜+4.6の範囲内、好ましくは+4のバナジウムに対する平均原子価を示すことが好ましい。
【0028】
ピロリン酸バナジル含量
上述の調製を含む、従来技術の方法によって調製されたVPO触媒は、典型的には、以下の相の混合物:ピロリン酸バナジル、(VO)227;メタリン酸バナジル、VO(PO32およびリン酸バナジル、VOPO4を含有する。本発明の方法の重要な特徴は、VPO触媒は主成分としてピロリン酸バナジルを含み、5質量%未満のリン酸バナジル(VOPO4)を含有することである。
【0029】
VPO触媒のリン酸バナジル含量が、所望の範囲より大きい(すなわち、5質量%以上のリン酸バナジル)場合、リン酸バナジル相の所望のレベルを達成するのに十分な時間だけ、無水マレイン酸を製造するためのブタン酸化条件下で触媒を作用させることによって、VPO触媒中のリン酸バナジルの量を減少させることが可能である。一実施形態では、ブタン酸化条件下で約4時間〜約80時間VPO触媒を作用させることによって、VPO触媒のリン酸バナジル相含量は許容レベルに低減される、または完全に除去される。別の実施形態では、水でVPO触媒を「洗う」ことによって、リン酸バナジル相をVPO触媒から減少させる、または取り除くことができる。一実施形態では、「洗う」手順は、固体のVPO触媒を水と組み合わせる工程と、水を除去し濾過によって固体を収集する工程と、次いで、濾液固体を乾燥させて、(もしあれば)より少量または少量のリン酸バナジル相を含有するVPO触媒を実現する工程とを含む。
【0030】
Nb、Sbおよび/またはBiの含浸
一実施形態では、本発明の方法は、主成分としてピロリン酸バナジルを含み、5質量%未満のリン酸バナジルを含有するVPO触媒に、ニオブ、ならびにアンチモンおよびビスマスのうちの少なくとも1つを含浸することによって、促進させることを含む。一実施形態では、VPO触媒はニオブおよびアンチモンで促進される。別の実施形態では、VPO触媒はニオブおよびビスマスで促進される。
【0031】
一実施形態では、源化合物を含む液体混合物で触媒表面を被覆するまたは含浸すために、ニオブ、ならびにアンチモンおよびビスマスのうちの少なくとも1つによるVPO触媒の含浸は、VPO触媒を、ニオブの源化合物を含む液体混合物、ならびにアンチモンおよびビスマスのうちの少なくとも1つの源化合物を含む液体混合物と接触させることを含む。含浸または接触の順序は重要ではない。本明細書で使用する場合、「源化合物」は、権利を主張する助触媒元素の少なくとも1つを含有する任意の化合物である。
【0032】
ニオブ、アンチモンおよびビスマスに対する多くの源化合物は、本発明で使用するのに適している。ニオブに対する源化合物の一例は、シュウ酸ニオブアンモニウムである。疑念を回避するために、式NH4[NbO(C242(H2O))2]・2(H2O)によって通常表わされるシュウ酸ニオブアンモニウムは、さらに以下の相、NH4(HC24)(H224)・2(H2O)、NH4[NbO(C242(H2O)2]・3(H2O)および(NH43[NbO(C243]・(H2O)を含んでもよい。アンチモンの源化合物の例は、Sb(CH3COO)3、Sb25およびSb23などの任意の酢酸アンチモンまたは酸化アンチモンである。一実施形態では、アンチモンの源化合物は、10nm未満の平均粒径を備えたSb25ナノ粒子である。ビスマスの源化合物の例は、酢酸ビスマス、酸化ビスマス、ビスマスカルボキシド(bismuth carboxides)および水酸化ビスマスである。一実施形態では、ニオブの源化合物を含む液体混合物は、水溶液中の10質量%シュウ酸ニオブアンモニウムである。一実施形態では、ニオブの源化合物を含む液体混合物は、約0.5質量%〜約10質量%のニオブを含む。一実施形態では、アンチモンおよびビスマスのうちの少なくとも1つの源化合物を含む液体混合物は、約0.5質量%〜約10質量%のアンチモンおよびビスマスのうちの少なくとも1つを含む。
一実施形態では、触媒の表面に源化合物を含む液体混合物を被覆または含浸させるために、ニオブ、ならびにアンチモンおよびビスマスのうちの少なくとも1つに対する源化合物を、VPO触媒を接触させるのに使用する単一の液体混合物に、組み合わせるまたは配置してもよい。
別の実施形態では、触媒の表面に源化合物を含む液体混合物を被覆または含浸させるために、ニオブ促進VPO触媒を、アンチモンおよびビスマスのうちの少なくとも1つの源化合物を含む液体混合物と接触させる。
一実施形態では、触媒の微小球状粒子を、金属源化合物を含む液体混合物または複数の液体混合物と接触させる。金属源化合物を含む液体混合物は、水溶媒もしくは非水溶媒、またはこれらの混合物を含んでもよい。一実施形態では、金属源化合物を含む液体混合物は、5体積%〜20体積%の源化合物であり、残余は水である。
【0033】
接触は、任意の初期湿潤含浸技法(incipient wetness impregnation technique)、または、金属源化合物を含む液体混合物への触媒の浸漬、もしくは金属源化合物を含む液体混合物の触媒上への噴霧を含む、当該技術分野において既知の方法によって、行うことができる。触媒が金属源化合物を含む液体混合物と接触すると、液体混合物は触媒の気孔に吸収される。接触後、触媒は、金属源化合物を含む液体混合物で「濡れている」、または「湿っている」。
【0034】
金属源化合物を含む液体混合物で接触または含浸した後、濡れた触媒を乾燥させ、金属源化合物を含む液体混合物で使用した、有機または水溶媒を除去する。含浸された触媒を、空気または不活性な雰囲気(例えば窒素)中で乾燥させる。一実施形態では、含浸された触媒を室温にて空気中で乾燥させてもよい。一実施形態では、溶媒を除去するのに十分な時間高温で加熱することによって、濡れた触媒を乾燥させる。別の実施形態では、濡れた触媒を室温にて空気中で乾燥させて溶媒の一部を除去し、次いで高温にて不活性雰囲気中で乾燥させて乾燥を完了させ、触媒中の任意の残留有機物を分解する。典型的には、濡れた触媒を、100℃〜300℃で2時間〜5時間乾燥させる。一実施形態では、濡れた触媒を約200℃で約3時間乾燥させる。
n−ブタンの無水マレイン酸への酸化:
本発明で使用する触媒は、当該技術分野において既知の任意の種類の酸化反応器中で利用することができる。触媒は錠剤、ペレット等に形成し、固定床反応器で使用することができ、または、触媒は約100μm未満の小粒径に製造し、流動床反応器で使用することができる。
【0035】
反応して無水マレイン酸を形成する炭化水素は、n−ブタン、n−ブテン、1,3−ブタジエンまたはこれらの混合物でありうる。n−ブタン、または精製所ストリーム中で製造される炭化水素混合物を使用することが好ましい。分子状酸素は、空気として最も便利に添加されるが、分子状酸素を含有する合成ストリームも適当である。炭化水素および分子状酸素に加えて、他のガスを反応物供給原料に添加してもよい。例えば、反応物に蒸気または窒素を添加しうる。
【0036】
反応物の比は大きく変化してもよく、重要ではない。反応器供給原料中の好ましい酸素/炭化水素比は、炭化水素1モル当たり、約4〜約20モルの酸素である。反応温度は大きく変化してもよく、使用する特定の炭化水素および触媒に依存する。通常、約325℃〜500℃の温度が好ましく、約360℃〜約460℃の温度がより好ましい。反応は加圧での運転が好ましいが、大気圧、加圧、または減圧で行いうる。通常、供給原料は約0.2〜約5.0モルパーセントのブタン、好ましくは約1.0〜約4.0モルパーセントのブタンを含有し、ブタンの毎時質量空間速度(weight hourly space velocity)(wwh)は、毎時、触媒のポンド当たり約0.005〜約0.2ポンドのブタンであり、好ましくは毎時触媒のポンド当たり約0.01〜約0.1ポンドのブタンである。本明細書の他で使用する場合、「無水マレイン酸を製造するブタンの酸化条件」は、この段落で規定するパラメーターの範囲を意味する。
さらに、VPO触媒にオルトリン酸のアルキルエステルを含浸させ、含浸された触媒を流動床VPO触媒に周期的に添加することによって、リンをVPO流動床触媒に添加して、より低い運転温度で無水マレイン酸の収率の増加を達成することが可能であることが、明確化された。
好ましいリン酸アルキル化合物は、式(RO)3P=Oを有するオルトリン酸のアルキルエステルであり、式中、各Rは独立して水素またはC1−C4アルキルであり、少なくとも1つのRは、C1−C4である。より好ましいリン化合物は、リン酸トリエチルまたはリン酸トリメチルである。
【0037】
通常、オルトリン酸のアルキルエステルは、100質量部の未濃縮(unenriched)触媒当たり、約1〜約25質量部のオルトリン酸のアルキルエステル、好ましくは100質量部の触媒当たり、約7〜約23質量部のオルトリン酸のアルキルエステル、より好ましくは100質量部の触媒当たり、約8〜約21質量部のオルトリン酸のアルキルエステル、より好ましくは100質量部の触媒当たり、約16〜約19質量部のオルトリン酸のアルキルエステルの量で、流動床触媒に添加される。
【0038】
特定の実施形態
本発明を説明するために、本発明に従って調製した触媒を評価し、本発明の範囲外の従来技術の方法によって調製した同様の触媒と、同様の反応条件下で比較した。多くの例は、ピロリン酸バナジル((VO)227)の主な相とともに、バナジウム、リンおよび酸素を含有し、5質量%未満のリン酸バナジル(VOPO4)を含有し、また助触媒元素を含有しない、流動床反応器触媒を利用している。使用するこうしたVPO触媒は、INEOS USA LLCから市販されている。他の例は、米国特許第8,658,557号の実施例16で規定するように調製した、ニオブ促進VPO触媒を利用している。触媒の全ての反応器試験は、370グラムの触媒を含有する1.5インチパイロットプラント反応器中で行い、試験条件は、30/1の空気/ブタン比率、0.05のブタン毎時質量空間速度(wwh)、および10ゲージpsiであった。各例の反応器温度は、表1に列挙した通りである。全ての例は、説明の目的だけに提供されている。比較例は例番号の前に「C」で明示されている。
【0039】
(例C1)
Nbで促進されたVPO触媒
米国特許第8,658,557号の実施例16で規定するように、ニオブ促進VPO触媒を調製した。これらのニオブ促進VPO触媒は、ニオブを含浸する前に、VPO触媒中に、1質量%未満のリン酸バナジル(VOPO4)を含有した。次いで、触媒をn−ブタン酸化条件下で試験した。反応温度、ブタン転化率および収率は表1に列挙した通りである。
(例C2)
Sb(無Nb)で促進されたVPO触媒
水中に公称2.67質量%酢酸アンチモン(III)を含有する、酢酸アンチモン、Sb(CH3COO)3水性混合物88グラムを、5質量%未満のVOPO4を含有するニオブ不含VPO触媒400グラムに、撹拌しながら添加した。水性混合物添加の後、触媒を実験室の換気フード中、開放された皿の中で終夜空気乾燥させた。乾燥の後、試料の一部を直径1.5インチの鋼製流動床反応器に装填した。触媒を窒素で流動化し、約200℃まで加熱し、次いで約390℃までさらに加熱した。次いで、触媒をn−ブタン酸化条件下で試験した。反応温度、ブタン転化率および収率は、表1に列挙した通りである。
【0040】
(例C3)
Sb(無Nb)で促進されたVPO触媒
この例は、アンチモン源としてCampine Company(ベルギー)製Sb25ゾル(30.89質量%Sb25)からのSb25を使用した点を除いて、例C2に類似する。3.13質量%Sb25を含有するスラリーを、このゾルから水で希釈して調製した。88グラムのこのスラリーを、5質量%未満のVOPO4を含有するニオブ不含VPO触媒400グラムに含浸するのに使用した。したがってこの例C3の触媒は、例C2の場合の酸化状態が+3であるSb(III)ではなく、+5酸化状態が+5であるSb(V)で促進される。乾燥の後、直径1.5インチの鋼製流動床反応器に試料の一部を装填した。触媒を窒素で流動化し、約200℃まで加熱し、次いで約390℃までさらに加熱した。次いで、触媒をn−ブタン酸化条件下で試験した。反応温度、ブタン転化率および収率は表1に列挙した通りである。
【0041】
(例4)
NbおよびSbで促進されたVPO触媒
水中に公称2.67質量%酢酸アンチモン(III)を含有する、酢酸アンチモンSb(CH3COO)3水性混合物88グラムを、例C1からのニオブ促進VPO触媒400グラムに、撹拌しながら添加した。水性混合物添加の後、触媒を実験室の換気フード中、開放された皿の中で終夜空気乾燥させた。乾燥の後、試料の一部を直径1.5インチの鋼製流動床反応器に装填した。触媒を窒素で流動化し、約200℃まで加熱し、次いで約390℃までさらに加熱した。次いで、触媒をn−ブタン酸化条件下で試験した。反応温度、ブタン転化率および収率は、表1に列挙した通りである。
【0042】
(例5)
NbおよびSbで促進されたVPO触媒
この例は、公称5.34質量%酢酸アンチモン(III)スラリー88グラムを、例C1からのニオブ促進VPO触媒に添加した点を除いて、例4に類似する。スラリー添加の後、触媒を実験室の換気フード中、開放された皿の中で終夜空気乾燥させた。乾燥の後、試料の一部を直径1.5インチの鋼製流動床反応器に装填した。触媒を窒素で流動化し、約200℃まで加熱し、次いで約390℃までさらに加熱した。次いで、触媒をn−ブタン酸化条件下で試験した。反応温度、ブタン転化率および収率は、表1に列挙した通りである。
【0043】
(例6)
NbおよびSbで促進されたVPO触媒
2.67質量%酢酸アンチモン(III)および9.06質量%シュウ酸ニオブアンモニウムからなる水スラリー88グラムを、5質量%未満のVOPO4を含有するニオブ不含VPO触媒400グラムに、撹拌しながら添加した。スラリー添加の後、触媒を実験室の換気フード中、開放された皿の中で終夜空気乾燥させた。乾燥の後、試料の一部を直径1.5インチの鋼製流動床反応器に装填した。触媒を窒素で流動化し、約200℃まで加熱し、次いで約390℃までさらに加熱した。次いで、触媒をn−ブタン酸化条件下で試験した。反応温度、ブタン転化率および収率は、表1に列挙した通りである。
【0044】
(例7)
NbおよびSbで促進されたVPO触媒
この例は、シュウ酸ニオブアンモニウムを、約4.3質量%の濃度でSb25スラリーに添加した点を除いて、例C3に類似する。88グラムのこのスラリーを、5質量%未満のVOPO4を含有するニオブ不含VPO触媒400グラムに、撹拌しながら添加した。スラリー添加の後、触媒を実験室の換気フード中、開放された皿の中で終夜空気乾燥させた。乾燥の後、試料の一部を直径1.5インチの鋼製流動床反応器に装填した。触媒を窒素で流動化し、約200℃まで加熱し、次いで約390℃までさらに加熱した。次いで、触媒をn−ブタン酸化条件下で試験した。反応温度、ブタン転化率および収率は、表1に列挙した通りである。
(例8)
NbおよびBiで促進されたVPO触媒
6.9グラムのBi(アセテート)3を100グラムの水に添加することにより調製した88グラムのスラリーを、例C1からのNb促進VPO触媒400グラムに撹拌しながら添加した。スラリー添加の後、触媒を実験室の換気フード中、開放された皿の中で終夜空気乾燥させた。乾燥の後、試料の一部を直径1.5インチの鋼製流動床反応器に装填した。触媒を窒素で流動化し、約200℃まで加熱し、次いで約390℃までさらに加熱した。次いで、触媒をn−ブタン酸化条件下で試験した。反応温度、ブタン転化率および収率は、表1に列挙した通りである。
【0045】
(例9)
NbおよびSbで促進されたVPO触媒
1.32グラムのSb23、および100グラムの水に溶解したシュウ酸ニオブアンモニウム11グラムを添加して調製したスラリー88グラムを、5質量%未満のVOPO4を含有するニオブ不含VPO触媒400グラムに、撹拌しながら添加した。スラリー添加の後、触媒を実験室の換気フード中、開放された皿の中で終夜空気乾燥させた。乾燥の後、試料の一部を直径1.5インチの鋼製流動床反応器に装填した。触媒を窒素で流動化し、約200℃まで加熱し、次いで約390℃までさらに加熱した。次いで、触媒をn−ブタン酸化条件下で試験した。反応温度、ブタン転化率および収率は、表1に列挙した通りである。
【0046】
(例10)
NbおよびSb(2回Nb含浸)で促進されたVPO触媒
まず、5.34グラムのSb(CH3COO)3および10.5グラムのシュウ酸ニオブアンモニウムを100グラムの水に添加して調製した貯蔵水性混合物からの88グラムを、5質量%未満のVOPO4を含有するニオブ不含触媒400グラムに含浸した。この触媒を換気されたフード中で空気乾燥させた後、10.5グラムのシュウ酸ニオブアンモニウムを100グラムの水に添加して調製した貯蔵水性混合物からの88グラムを、触媒に再含浸した。乾燥の後、試料の一部を直径1.5インチの鋼製流動床反応器に装填した。触媒を窒素で流動化し、約200℃まで加熱し、次いで約390℃までさらに加熱した。次いで、触媒をn−ブタン酸化条件下で試験した。反応温度、ブタン転化率および収率は、表1に列挙した通りである。
【0047】
(例11)
NbおよびBiで促進されたVPO触媒
4グラムの酸化ビスマス(Bi23)および10.5グラムのシュウ酸ニオブアンモニウムを100グラムの水に添加して調製した貯蔵溶液からの88グラムを、5質量%未満のVOPO4を含有するニオブ不含触媒400グラムに含浸した。次いで、触媒を換気されたフード中で終夜空気乾燥させた。乾燥の後、試料の一部を直径1.5インチの鋼製流動床反応器に装填した。触媒を窒素で流動化し、約200℃まで加熱し、次いで約390℃までさらに加熱した。次いで、触媒をn−ブタン酸化条件下で試験した。反応温度、ブタン転化率および収率は、表1に列挙した通りである。
【0048】
(例12)
NbおよびBiで促進されたVPO触媒
まず、3.8グラムのBi(CH3COO)3および10.8グラムのシュウ酸ニオブアンモニウムを100グラムの水に添加して調製した貯蔵水性混合物からの88グラムを、5質量%未満のVOPO4を含有するニオブ不含触媒400グラムに含浸した。乾燥の後、試料の一部を直径1.5インチの鋼製流動床反応器に装填した。触媒を窒素で流動化し、約200℃まで加熱し、次いで約390℃までさらに加熱した。次いで、触媒をn−ブタン酸化条件下で試験した。反応温度、ブタン転化率および収率は、表1に列挙した通りである。
(例13)
NbおよびSbで促進されたVPO触媒
0.67グラムのSb23および11グラムのシュウ酸ニオブアンモニウムを100グラムの水に溶解した水性混合物からの88グラムを、5質量%未満のVOPO4を含有するニオブ不含触媒400グラムに含浸した。乾燥の後、試料の一部を直径1.5インチの鋼製流動床反応器に装填した。触媒を窒素で流動化し、約200℃まで加熱し、次いで約390℃までさらに加熱した。次いで、触媒をn−ブタン酸化条件下で試験した。反応温度、ブタン転化率および収率は、表1に列挙した通りである。
(例14)
NbおよびSbで促進されたVPO触媒
この例は、1グラムのSb23を使用した点を除いて、例13と同じである。触媒をn−ブタン酸化条件下で試験した。反応温度、ブタン転化率および収率は、表1に列挙した通りである。
(例15)
NbおよびSbで促進されたVPO触媒
この例は、2.76グラムのSb23を使用した点を除いて、例13と同じである。触媒をn−ブタン酸化条件下で試験した。反応温度、ブタン転化率および収率は、表1に列挙した通りである。
【0049】
(例16)
NbおよびSbで促進されたVPO触媒
この例は、6グラムのNyacolナノ粒子Sb25ゾルJL6275を使用した点を除いて、例13と同じである。次いで含浸した触媒を、換気されたフード中で終夜空気乾燥させた。乾燥の後、試料の一部を直径1.5インチの鋼製流動床反応器に装填した。触媒を窒素で流動化し、約200℃まで加熱し、次いで約390℃までさらに加熱した。次いで、触媒をn−ブタン酸化条件下で試験した。反応温度、ブタン転化率および収率は、表1に列挙した通りである。
(例17)
NbおよびSbで促進されたVPO触媒
この例は、12グラムのNyacolゾルを使用した点を除いて、例16と同じである。触媒をn−ブタン酸化条件下で試験した。反応温度、ブタン転化率および収率は、表1に列挙した通りである。
【0050】
(例18)
NbおよびSbで促進されたVPO触媒
この例は、3グラムのNyacolゾルおよび5.5グラムのシュウ酸ニオブアンモニウムを使用した点を除いて、例16と同じである。触媒をn−ブタン酸化条件下で試験した。反応温度、ブタン転化率および収率は、表1に列挙した通りである。
【0051】
(例C19)
Nb(触媒調製で添加された)で促進されたVPO触媒
ニオブ促進VPO触媒(触媒調製中かつ乾燥前に、シュウ酸ニオブアンモニウムを触媒スラリーに添加する以外は、例C1のVPO触媒と類似して調製した)の未使用試料を、直径1.5インチの鋼製流動床反応器中で試験して、無水マレイン酸の収率を決定した。試料は、n−ブタン酸化条件下で試験した。ブタン転化率および無水マレイン酸収率は、表1に列挙した通りである。これは米国特許第8,658,557号の比較例6である。
【0052】
(例20)
NbおよびSbで促進されたVPO触媒
公称の2.67質量%の酢酸アンチモン(III)を含有する、水溶液中の酢酸アンチモンSb(CH3COO)3のスラリー88グラムを、例C19によって調製したニオブ含有触媒400グラムに、撹拌しながら添加した。乾燥の後、試料の一部を直径1.5インチの鋼製流動床反応器に装填した。触媒を窒素で流動化し、約200℃まで加熱し、次いで約390℃までさらに加熱した。次いで、触媒をn−ブタン酸化条件下で試験した。反応温度、ブタン転化率および収率は、表1に列挙した通りである。収率が例C10における触媒の収率より高いことに注意されたい。
【0053】
(例C21)
NbおよびTiで促進されたVPO触媒
39グラムの水中にある、5グラムのチタンビス(アンモニウムラクテート)ジヒドロキシド(titanium bis(ammonium lactate)di-hydroxide)(50質量%溶液)の溶液を、例C1のニオブ含有触媒400グラムに、撹拌しながら添加した。乾燥の後、試料の一部を直径1.5インチの鋼製流動床反応器に装填した。触媒を窒素で流動化し、約200℃まで加熱し、次いで約390℃までさらに加熱した。次いで、触媒をn−ブタン酸化条件下で試験した。反応温度、ブタン転化率および収率は、表1に列挙した通りである。
【0054】
(例C22)
Nb、PおよびMoで促進されたVPO触媒
1.5グラムのリンモリブデン酸および2.5グラムのシュウ酸ニオブアンモニウムを、100グラムの水に溶解した溶液を、5質量%未満のVOPO4を含有するニオブ不含VPO触媒400グラムに、撹拌しながら添加した。スラリー添加の後、触媒を実験室の換気フード中、開放された皿の中で終夜空気乾燥させた。乾燥の後、試料の一部を直径1.5インチの鋼製流動床反応器に装填した。触媒を窒素で流動化し、約200℃まで加熱し、次いで約390℃までさらに加熱した。次いで、触媒をn−ブタン酸化条件下で試験した。反応温度、ブタン転化率および収率は、表1に列挙した通りである。
【0055】
(例C23)
NbおよびFeで促進されたVPO触媒
5グラムのシュウ酸ニオブアンモニウムおよび3.3グラムのクエン酸鉄アンモニウム(Fe、16質量%)を、100グラムの水に溶解した溶液を、5質量%未満のVOPO4を含有するニオブ不含VPO触媒400グラムに、撹拌しながら添加した。スラリー添加の後、触媒を実験室の換気フード中、開放された皿の中で終夜空気乾燥させた。乾燥の後、試料の一部を直径1.5インチの鋼製流動床反応器に装填した。触媒を窒素で流動化し、約200℃まで加熱し、次いで約390℃までさらに加熱した。次いで、触媒をn−ブタン酸化条件下で試験した。反応温度、ブタン転化率および収率は、表1に列挙した通りである。
【0056】
(例C24)
NbおよびCoで促進されたVPO触媒
50グラムの水に、5グラムの酢酸コバルト四水和物、Co(II)(CH3COO)2・4H2Oを溶解した溶液を、5質量%未満のVOPO4を含有するニオブ不含VPO触媒400グラムに、撹拌しながら添加した。乾燥の後、コバルトを含浸した粉末VPO触媒を、50グラムの水に溶解した5グラムのシュウ酸ニオブアンモニウムに接触させた。乾燥の後、試料の一部を直径1.5インチの鋼製流動床反応器に装填した。触媒を窒素で流動化し、約200℃まで加熱し、次いで約390℃までさらに加熱した。次いで、触媒をn−ブタン酸化条件下で試験した。反応温度、ブタン転化率および収率は、表1に列挙した通りである。
(例C25)
NbおよびCoで促進されたVPO触媒
100グラムの水に、0.5グラムのアセチルアセトン酸コバルトを溶解した溶液を、例C1のニオブ含有触媒400グラムに、撹拌しながら添加した。乾燥の後、試料の一部を直径1.5インチの鋼製流動床反応器に装填した。触媒を窒素で流動化し、約200℃まで加熱し、次いで約390℃までさらに加熱した。次いで、触媒をn−ブタン酸化条件下で試験した。反応温度、ブタン転化率および収率は、表1に列挙した通りである。
【0057】
(例C26)
NbおよびZnで促進されたVPO触媒
88グラムの水に、2.5グラムの酢酸亜鉛二水和物Zn(CH3COO)2・2H2Oを溶解した溶液を、例C1のニオブ含有触媒400グラムに、撹拌しながら添加した。乾燥の後、試料の一部を直径1.5インチの鋼製流動床反応器に装填した。触媒を窒素で流動化し、約200℃まで加熱し、次いで約390℃までさらに加熱した。次いで、触媒をn−ブタン酸化条件下で試験した。反応温度、ブタン転化率および収率は、表1に列挙した通りである。
【0058】
(例C27)
NbおよびCuで促進されたVPO触媒
100グラムの水に、1.3グラムの酢酸銅一水和物、Cu(CH3COO)2・H2Oを溶解した溶液を、例C1のニオブ含有触媒400グラムに、撹拌しながら添加した。乾燥の後、試料の一部を直径1.5インチの鋼製流動床反応器に装填した。触媒を窒素で流動化し、約200℃まで加熱し、次いで約390℃までさらに加熱した。次いで、触媒をn−ブタン酸化条件下で試験した。反応温度、ブタン転化率および収率は、表1に列挙した通りである。
【0059】
(例C28)
NbおよびCrで促進されたVPO触媒
100グラムの水に、1.75グラムの酢酸二−水酸化クロム、Cr3(CH3COO)7(OH)2を溶解した溶液を、例C1のニオブ含有触媒400グラムに、撹拌しながら添加した。乾燥の後、試料の一部を直径1.5インチの鋼製流動床反応器に装填した。触媒を窒素で流動化し、約200℃まで加熱し、次いで約390℃までさらに加熱した。次いで、触媒をn−ブタン酸化条件下で試験した。反応温度、ブタン転化率および収率は、表1に列挙した通りである。
(例C29)
NbおよびRbで促進されたVPO触媒
50グラムの水に、1.3グラムの硝酸ルビジウムを溶解した溶液を、例C1のニオブ含有触媒400グラムに、撹拌しながら添加した。乾燥の後、試料の一部を直径1.5インチの鋼製流動床反応器に装填した。触媒を窒素で流動化し、約200℃まで加熱し、次いで約390℃までさらに加熱した。次いで、触媒をn−ブタン酸化条件下で試験した。反応温度、ブタン転化率および収率は、表1に列挙した通りである。
【0060】
【表1】
【0061】
【表1】
【0062】
ニオブ促進VPO触媒は、当該技術分野において既知である。表1のデータは、ブタン転化率および無水マレイン酸の収率によって測定されるように(例4〜18および20を、例C1〜C3およびC19と比較されたい)、追加の助触媒としてアンチモンまたはビスマスを、ニオブ促進VPO触媒に添加することによって、ブタンおよび酸素を無水マレイン酸へ転化するための改良された触媒を調製することができることを説明している。表1のデータは、この同じ効果(すなわち、ブタン転化率および無水マレイン酸の収率によって測定されるような、改良された触媒)は、ニオブ促進VPO触媒に添加した時、他の助触媒金属では得られないことも、説明している(例4〜18および20を、例C21〜31と比較されたい)。
【0063】
前の記述および上記実施形態は本発明の実施にとって典型的ではあるが、この記述に照らせば、当業者には多くの代替案、改良および変化は明白となるであろうことは、明らかである。したがって、全てのこうした代替案、改良および変化は、添付された特許請求の範囲の精神、および広い範囲に包含され、中に入ることが意図されている。