【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、低圧で、需要に応じて水素を生成する装置(通常、携帯装置)を提供する。たとえば、通常、燃料電池に要求される圧力は、いくつかの実施形態では、10バール(10×10
5Pa)未満、たとえば3〜5バール(3〜5×10
5Pa)以下とし、別の実施形態では、0.3〜3バール(0.3〜3×10
5Pa)とすることができる。低圧で需要に応じて水素を供給することによって、加圧水素保管能力の必要性が回避されるために、より使用時に安全な装置が提供される。
【0014】
第1の態様によると、本発明は水素生成装置を提供し、該装置は以下を備える。
【0015】
(a)反応器槽、
(b)反応器槽に連結される第1及び第2の反応物容器であって、混合されたときに反応して水素ガスを生成する第1及び第2の反応物を含む第1及び第2の反応物容器、
(c)反応器槽へ第1及び第2の反応物を圧送し、該反応物が混合されて反応し水素ガスを生成する1以上のポンプ、
(d)反応器槽から水素ガスを受け取るバッファタンク、
(e)装置内の水素ガスの圧力を測定する圧力センサ、
(f)装置の動作を制御する電子制御手段であって、1以上のポンプ及び圧力センサと通信し、装置内の水素ガスの圧力を10バール(10×10
5Pa)以下の値に維持するように反応器槽への反応物の流を制御すべくプログラムされる電子制御手段。
【0016】
別の態様によると、本発明は水素生成装置を提供し、該装置は、
(a)1以上の反応物入口を有する反応器槽であって、第1及び第2の反応物が入口を通って反応器槽に入ることができ、第1及び第2の反応物が混合されたときに反応して水素ガスを生成する反応器槽、
(c)上記第1及び第2の反応物を含む反応物容器から反応器槽へ第1及び第2の反応物を圧送する1以上のポンプ、
(d)反応器槽から水素ガスを受け取るバッファタンク、
(e)該装置内の水素ガスの圧力を測定する任意の圧力センサ、
(f)該装置の動作を制御する電子制御手段であって、1以上のポンプ及び圧力センサと通信し、反応器槽への反応物の流を制御するようにプログラムされる電子制御手段、を備え、
水素ガスの圧力が所定値に達すると、前記反応器への前記第1及び第2の反応物の一方又は両方の圧送が防止されるように前記装置が設定され、
所定値が、0.1バール〜10バール(10×10
3Pa〜10×10
5Pa)の範囲の圧力である。
【0017】
反応物容器は該装置の一部を成すことができる、又は所要に応じて別個に設けられて、装置に接続することができる。
【0018】
バッファタンク(d)は、該装置内の水素圧力の変動を調整する役目を果たす。このバッファタンクは、十分一定の所望の水素圧力を確実に維持させるという、既知の水素生成装置を超える利点を提供する。該装置の動作中、バッファタンクは通常、反応器槽内部と開放連通する。すなわち、反応器槽とバッファタンクとの間に一方向弁は存在せず、存在する弁はどれも開放位置に設定される。よって、反応器槽内で生成される水素は、反応器槽とバッファタンク間を自由に流れることができる。このように、反応物の導入に続く反応器槽内の水素ガスの圧力変動は、バッファタンクによって吸収することができる。
【0019】
バッファタンクは通常、少なくとも反応器槽の容積と同程度の容積を有する。「容積」という文言は、適宜、バッファタンク又は反応器槽の内容積を指す。より一般的には、バッファタンクの容積は、反応器槽の容積の1.5倍以上、1.75倍以上又は2倍以上である。たとえば、バッファタンクと反応器槽との容積比は、1:1〜4:1、1:1〜3:1、1.5:1〜2.5:1又は1.75:1〜2.25:1の範囲に納めることができる。
【0020】
圧力センサ(e)には通常、該装置内の水素ガスの圧力を監視(たとえば、測定)するモニタが設けられる。圧力センサは、たとえば、バッファタンク又は反応器槽とバッファタンクとの間の配管に配置することができる。圧力センサは、(有線又は無線で)電子制御手段(f)と通信し、次いで、1又は複数のポンプ(c)と通信する。電子制御手段(f)を用いて所望の水素圧力が選択され、ポンプ(c)は所望の水素圧力を与えるのに十分な反応器槽への反応物の流れを提供するように動作する。センサが、圧力が所望値を下回ることを示す場合、より多くの反応物が反応器槽内へ圧送される。逆に、水素圧力が所望値を超過する場合、圧力が所望値に戻るまで、反応器槽への反応物の流れを遮断させることができる。
【0021】
これに代え又は加えて、ポンプは、該装置内の水素ガスの圧力に関して、所定値に相当する最大圧送圧力を供給するように選択又は設定することができる。このような構成では、いったん該装置内の水素ガスの圧力が所定値に到達すると、ポンプは反応器へ反応物をそれ以上圧送できない。本発明によると、最大圧送圧力は、0.1バール〜10バール(10×10
3Pa〜10×10
5Pa)の範囲に収まる。この構成では、圧力センサ(e)は所望に応じて省略することができる。
【0022】
該装置は、需要に応じて水素を生成するように設計される。すなわち、生成された水素は、該装置に接続される、又は該装置の一部を成す水素消費装置に配送される。本発明の装置は、大量の水素を保管することを目的としておらず、一部の水素は通常、使用間はバッファタンクに保持される。この残留水素は、該装置を始動するのに必要なエネルギーを生成するように使用することができる。たとえば、バッファタンクは、内蔵燃料電池(たとえば、PEM電池)又は発電機に接続して発電し、ポンプ(c)、電子制御手段(f)及びモータ攪拌装置などのその他の内蔵電力消費コンポーネントに動力を供給することができる。
【0023】
電子制御手段は、該装置内の水素ガスの圧力が10バール(10×10
5Pa)を超過しないように、反応器槽への反応物の流れを制御すべくプログラムされる。より一般的には、電子制御手段は、該装置内の水素ガスの圧力が5バール(5×10
5Pa)を超えないようにプログラムされる。
【0024】
各種実施形態では(該装置の一部を成す、又は該装置に接続される水素消費装置の動作圧力に応じて)、電子制御手段は、該装置内の水素ガスの圧力が以下の範囲に収まるようにプログラムされる。
【0025】
(i)0.5バール〜5バール(0.3×10
5Pa〜 3×10
5Pa)又は、
(ii)2バール(2×10
5Pa)〜4バール(4×10
5Pa)又は、
(v)2.5バール(2.5×10
5Pa)〜3.5バール(3.5×10
5Pa)。
【0026】
水素消費装置がPEM燃料電池であるとき、PEM電池に入る水素の圧力を、該装置内の圧力から約0.5バールの値まで低減させる減圧弁を設けることができる。
【0027】
該装置には通常、少なくとも1つの温度センサ(g)と圧力センサ(e)(存在するとき)が設けられる。また、温度センサは、(有線又は無線で)電子制御手段(g)と通信する。
【0028】
温度センサが設けられる場合、電子制御手段(g)は、該装置の規定温度パラメータが所定値を超えないように、反応器槽への反応物の流を制御すべくプログラムすることができる。
【0029】
規定温度パラメータは、たとえば、反応器槽内の温度とすることができる。あるいは、規定温度パラメータは反応器槽の外面温度とすることができる。
【0030】
反応器槽は、化学反応物及び反応生成物に耐性がある材料から形成され、実質上腐食せず、水素ガスをほぼ透過させない。反応器槽は、反応器槽内で生成される水素ガスの圧力に耐え得るように構成される。
【0031】
通常、反応器槽は、ステンレス鋼又は別の鉄合金、好ましくは耐食性鉄合金などの金属材料から形成される。腐食抵抗を高めるため、反応器槽は、PTFEなどの不活性材料で裏打ちすることができる。
【0032】
好ましくは、反応器槽はステンレス鋼から形成される。
【0033】
反応器槽が金属材料から形成されるとき、化学反応によって生成される熱は、反応器槽の外面に伝達される。したがって、反応器槽の外面に搭載される温度センサは、反応器槽内の温度を良好に表示する。
【0034】
反応器槽には通常、反応物の混合を確保する攪拌装置又はその他の手段が設けられる。たとえば、モータ攪拌装置を設けることができる。攪拌装置は、反応器槽の上部に搭載することができる。一実施形態では、攪拌装置は反応器槽の上部に搭載され、脱着可能に装着されるモータを有し、モータは取り外して、攪拌装置を手動で動作させる手段(たとえば、クランクハンドル)と置き換えることができる。
【0035】
反応器槽には通常、反応生成物又は反応しなかった若しくは部分的に反応した反応物を回収するサンプセクションが設けられる。
【0036】
サンプセクションは、清掃及び保全目的で、反応器槽の内部にアクセスできるように、反応器槽の上側本体セクションから分離して構成することができる。これに代え又は加えて、サンプセクションには、反応生成物及び/又は反応しなかった又は部分的に反応した反応物を除去するため、(たとえば、下端又は下端近傍に)サンプ出口を設けることができる。
【0037】
あるいは、反応器槽には、反応生成物及び/又は反応しなかった又は部分的に反応した反応物を除去するための廃棄物出口を設けることができる。
【0038】
サンプ又は廃棄物出口は、反応混合物及び反応生成物をサンプから(たとえば、廃棄物出口よりも高位にある開口を通じて)反応器槽に戻すリサイクル用のリサイクル導管に連結することができる。あるいは、廃棄物出口は、廃棄物容器に連結することができ、容器がユーザによって空にされるまで廃棄物材料を容器内に保管することができる。
【0039】
リサイクル導管に沿って反応混合物を移動させるために、追加のポンプ(たとえば、蠕動ポンプ)を設けることができる。上記の追加ポンプは通常、電子制御手段(g)に(有線又は無線で)接続される。
【0040】
リサイクル導管を用いることで、反応混合物をサンプ又は廃棄物容器から反応器槽へリサイクルすることによって、廃棄物流中の反応しなかった又は部分的に反応した反応物を反応させることができる。リサイクル導管には、反応器槽内の反応の進捗を示すパラメータを測定する1以上の反応パラメータセンサ(たとえば、pH計)を設けることができる。反応パラメータセンサは、存在するとき、通常(たとえば、有線又は無線で)電子制御手段(f)と通信する。弁(たとえば、モータ弁)は、反応混合物を廃棄物出口に誘導することができる。電子制御手段(f)は、反応パラメータ(たとえば、pH)が特定値に達する又は特定値を超える場合、ポンプ(c)の1つ以上を始動して追加の反応物を反応器槽に導入するようにプログラムすることができる。
【0041】
電子制御手段(f)は、反応パラメータセンサによって測定される反応パラメータ(たとえば、pH)が、反応の完了を示すとき、又は完了に近い限り、許容可能と判断されるとき、サンプ又は廃棄物出口が開放されて反応生成物を廃棄させることができるようにプログラムすることができる。また、電子制御手段は、便宜上、本明細書では「電子コントローラ(f)」と称する場合がある。
【0042】
反応器槽は、上側反応器本体セクション及びサンプセクションを備えることができ、上側反応器本体セクション及びサンプセクションは(たとえば、両セクション間の封止ガスケットを用いて)封止接続される。上側反応器本体セクション及びサンプセクションはそれぞれ、フランジボルト又はフランジクランプ(たとえば、Klein(登録商標)フランジクランプ)によって接続することができる嵌合フランジを設けることができる。
【0043】
該装置はケーシング(h)を備えることができ、反応器槽(a)、第1及び第2の反応物容器(b)、1以上のポンプ(c)、圧力センサ(e)、電子制御手段(f)及び任意でバッファタンク(d)はすべてケーシング(h)内に収容される。
【0044】
ケーシング(h)は、該装置の作業コンポーネントを隠すように全体を不透明にすることができる。あるいは、ケーシングは、作業コンポーネントの少なくともいくつかを見ることができるように1以上の窓又は透明セクションを有することができる。
【0045】
ケーシングは、たとえば現場環境下で、使用中に該装置がさらされる可能性がある埃、汚れ、湿気及びその他の成分の侵入を防止又は制限する。
【0046】
該装置は好ましくは携帯可能である。
【0047】
本明細書で使用されるとき、「携帯」という文言は、平均的筋力の1人又は2人によって楽に移動させることができる(たとえば、転動又は上昇させ及び搬送することができる)重量及び大きさを備える装置を指す。よって、たとえば、本発明の携帯装置は、反応物を含んでいないとき最大約150kgの重量を有することができる。より一般的には、携帯装置は、最大140kg、たとえば、最大135kg又は最大130kgの空虚重量を有する。一実施形態では、該装置は、25kg〜30kgの空虚重量を有する。別の実施形態では、該装置は最大25kg、最大20kg又は最大15kgの空虚重量を有する。
【0048】
本発明の携帯装置の大きさは、最大1.5メートルの最大幅、最大1.5メートルの最大長及び最大1.5メートルの最大高を有することができる。より一般的には、本発明の携帯装置の大きさは、1メートルの最大幅、最大1メートルの最大長及び最大1メートルの最大高を有することができる。
【0049】
該装置は、該装置を転動させることができる形状の外部ケーシングを有することができる。たとえば、ケーシングは、略球状又は円柱状とすることができる。
【0050】
反応器槽(a)、第1及び第2の反応物容器(b)は、バッファタンク(d)に搭載することができる。たとえば、それらの槽と容器はそれぞれバッファタンクの上に搭載することができ、「上」という文言は、該装置が使用中であるときの配向を指す。よって、バッファタンクは、該装置用のベースとしての役割を果たすことができる。
【0051】
該装置は、第1及び第2の反応物容器(b)を備えることができ、該容器はそれぞれ第1及び第2の反応物を含み、混合させたときにそれらの反応物が反応して水素ガスを生成する。任意で、反応物を含む1以上の追加容器を設けてもよい。
【0052】
第1及び第2の反応物は通常、反応器槽への圧送を簡易化するように液状で提供される。たとえば、第1及び第2の反応物は、溶液及び/又は懸濁液として供給することができる。
【0053】
第1及び第2の反応物は、相互に反応して水素を生成する任意の物質とすることができる。
【0054】
たとえば、第1の反応物は、酸又はアルカリと反応して水素を生成する金属(たとえば、金属微粒子又は金属粉末などの精細に細断された金属)の形状をとることができる。
【0055】
金属は、たとえば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属、アルミニウムなどのIII族金属、亜鉛などの非遷移金属又は遷移金属とすることができる。
【0056】
金属は通常、典型的には懸濁化剤又は懸濁安定化剤によって担体液体(たとえば、水)中に懸濁させることができるように十分細かく細断される。
【0057】
懸濁化剤又は懸濁安定化剤は、金属が懸濁液に沈降するのを防止する(又は沈降する可能性を低減する)。安定した懸濁を維持することによって、より正確に計測された量の反応物を反応器槽に供給することができる。
【0058】
懸濁化剤は、たとえば、セルロース又は澱粉系懸濁化剤又は多糖類樹脂とすることができる。このような懸濁化剤及び安定化剤は、製薬及び塗料技術の分野において周知である。懸濁液は、高分子ビグアニドやN−ブチル−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンなどの1以上の殺菌性成分を含有することができる。
【0059】
第2の反応物は、たとえば、酸又はアルカリとすることができる。
【0060】
酸の例としては、クエン酸や酒石酸などのカルボン酸類又は硫酸や塩酸などの鉱酸類などがある。
【0061】
アルカリの例としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液がある。
【0062】
特定の一実施形態では、第1の反応物は亜鉛又はアルミニウムなどの金属粉末の懸濁液であり、第2の反応物は水性アルカリ金属水酸化物である。
【0063】
水素を生成するのに使用可能な具体的な反応物の対は、第1の反応物である微細アルミニウムの懸濁液と、第2の反応物である水性水酸化ナトリウムの対である。
【0064】
該装置は、計量された量の第1及び第2の反応物を反応器槽まで誘導する1以上のポンプ(c)を備える。通常、各反応物容器(b)は自身のポンプを有する。
【0065】
ポンプは、反応器内の圧力が所定値を超過した場合、ポンプがもはや反応器内へ反応物を圧送しないように構成することができる。したがって、仮に装置用の電子コントローラが故障した場合、ポンプは反応器への追加の反応物の圧送を停止される(停止値の必要性が省かれる)。ポンプは、たとえば蠕動ポンプとすることができる。
【0066】
よって、一実施形態では、ポンプ(c)は、本明細書に定義される水素の所要圧力以下の最大圧送圧力を有するように構成される。特定の実施形態では、ポンプは、3バール以下の最大圧送圧力を有するように構成される。
【0067】
第1及び第2の反応物間の反応は通常、発熱反応であり、典型的には、反応によって生成される熱は、反応混合物内の水を蒸発させる。したがって、反応器槽を出る水素ガスの流は、水蒸気だけでなく燃焼材料の微粒子も含む。
【0068】
したがって、水蒸気及びおそらくは、懸濁した固体の燃料微粒子を、バッファタンクに入る前に水素流から除去する1以上の乾燥器ユニット(脱水ユニット)(i)を設けることができる。
【0069】
一実施形態では、2以上の乾燥器ユニット(i)を設けてもよい。たとえば、該装置は、反応器槽とバッファタンク(d)との間の管内に直列して搭載される2つの乾燥器ユニット(i)を備えることができる。第1の乾燥器ユニット(すなわち、反応器槽に最も近い)は、水素ガス流内の水の大部分を除去するように配置し、第2の乾燥器ユニット(すなわち、バッファタンクに最も近い)は、水素ガス流内の残留物(又は残留物の大半)を除去するように配置することができる。第1及び第2の乾燥器ユニットは、様々なタイプとすることができる。たとえば、第1の乾燥器ユニットは、冷却水素ガスから湿気を捕捉する単段階水分捕捉装置とし、第2の乾燥器ユニットは、より精細な湿粒子を水素ガスから吸着する除湿剤を含むことができる。
【0070】
別の実施形態では、乾燥器ユニット(i)が1つのみ設けられる。
【0071】
乾燥器ユニットは、特定の状況では、たとえば、該装置が高湿水素ガスの使用に耐える又は高湿水素ガスの使用から恩恵を得る燃料電池又はその他の発電機と併せて使用されるときは省略してもよい。
【0072】
また、該装置は、反応器槽と直列に(たとえば、1以上の乾燥器ユニットの上流に)搭載される熱交換器/分離器ユニットも備えることができ、熱交換器/分離器は、反応器槽から発生する水素ガスを冷却し、ガスに捕捉された固体燃料粒子を乾燥機に入る前に沈降させる役割を果たす。
【0073】
該装置は、1以上の圧力解放弁を備えることができる。たとえば、圧力解放弁は、反応器槽と乾燥器ユニットとの間に配置することができる。圧力解放弁は通常、配管内に生成される水素圧力が所定値を超過する場合、水素を大気中に逃がすように設定される。通常使用時、圧力解放弁は必須ではなく、特に、ポンプの圧送圧力が3バール以下の最大値に設定されるときは無用である。しかしながら、圧力を制御する圧力センサ(e)及び/又は電子制御手段(f)が故障した場合、圧力解放弁が存在すれば、安全度が高まる。しかし、概して、該装置は、比較的低圧(好ましくは、最大3バール)の水素を生成するように構成されるため、圧力解放弁は省略してもよい。
【0074】
本発明の概略的な一実施形態では、ポンプの圧送圧力が3バール以下の最大値に設定されるとき、該装置は圧力解放弁を持たない。
【0075】
電子制御手段(電子コントローラ)は、該装置の動作を制御及び/又は監視するために設けられる。電子制御手段は、反応器槽への反応物の流を制御する。電子制御手段は、存在するときには圧力センサ(e)、存在するときには温度センサ(g)及び1以上のポンプ(c)に連結される。
【0076】
電子制御手段は、制御手段によって収集されるデータへのアクセスを可能にする出力装置に連結する、又は該出力装置を含むことができる。たとえば、出力装置は、ケーシング(h)に簡便に搭載可能な視覚ディスプレイ(たとえば、視覚表示ユニット)とすることができる。
【0077】
好ましくは、電子制御手段を用いて、ユーザは該装置の1以上の動作パラメータを選択及び/又は変更することができる。たとえば、電子制御手段を用いて、該装置によって送達される水素の圧力及び/又は水素が生成される期間を選択することができる。したがって、電子制御手段は通常、データ及び/又は指示を入力する手段を備える。入力手段は、キーボード若しくはキーパッド又はタッチスクリーン型視覚表示ユニット上の視覚キーボード若しくはキーパッドを備えることができる。
【0078】
本発明の装置には通常、1以上のポンプに電力を供給する内蔵電源又は電源入口(j)、存在するときはモータ攪拌装置、電子制御手段(f)、及び該装置の一部を成すその他任意の電力消費装置を設けることができる。電源は、たとえば、燃料電池又は水素消費発電機及び/又は1以上のバッテリの形状をとってもよい。燃料電池又は発電機は、バッファタンク内の残留水素を用いて、該装置を始動する電力を生成することができる。これに代え又は加えて、該装置を始動するのに必要な電力は、バッテリから供給することができる。内蔵バッテリは、運転中、燃料電池又は内蔵発電機を通じて該装置によって生成される水素の一部を流用することによって充電することができる。
【0079】
本発明の装置は、水素を消費する外部装置(たとえば、携帯又はハンドヘルド装置)に接続することができる。あるいは、該装置は、装置用ケーシング内に位置する水素消費装置に接続することができる。たとえば、該装置は、燃料電池又は水素動力内燃機関を備える発電機に接続することができる。燃料電池は通常、イオン交換膜(PEM)燃料電池などの携帯燃料電池である。
【0080】
よって、別の態様では、本発明は、水素を消費する装置、たとえば、PEM燃料電池などの燃料電池又は発電機などの水素を消費する水素消費装置と組み合わされた、本明細書で定義される装置を提供する。
【0081】
該装置は、該装置の過熱を防止するファンなどの冷却装置を更に備えることができる。したがって、ケーシングには、ケーシング内の空気を循環させて、効率的な冷却を可能にする空気逃がし穴を設けることができる。
【0082】
電子コントローラは、該装置内の水素ガスの圧力が10バール(10×10
5Pa)を超過せず、通常は上で規定した範囲内に収まるように、反応器槽への反応物の流を制御すべくプログラムされる。一実施形態では、本発明の装置は、燃料電池に特に適する水素ガス圧力(たとえば、最大5バール(3×10
5Pa)、0.5バール〜3バール(0.2×10
5〜3×10
5Pa)又は1.5〜2.5バール(1.5×10
5〜2.5×10
5Pa)又は1.75〜2.25バール(1.75×105〜2.25×10
5Pa))を供給するように構成する及び/又はプログラムすることができる。PEM燃料電池が使用されるとき、減圧装置を設けて、約0.5バール以下の値まで水素圧力を低減させることができる。
【0083】
該装置は、燃料電池、たとえば、PEM燃料電池などの連結装置において所望の圧力入力要件を合致させるため、所定の又は選択された略一定の圧力で水素を供給するように構成する及び/又はプログラムすることができる。
【0084】
また、本発明は水素生成装置を提供し、該装置は以下を備える。
【0085】
(a)反応器槽、
(b)反応器槽に連結される第1及び第2の反応物容器であって、混合されたときに反応して水素ガスを生成する第1及び第2の反応物を含む第1及び第2の反応物容器、
(c)前記反応物容器から前記反応器槽に前記第1及び第2の反応物を圧送し、前記反応物が混合されて反応し水素ガスを生成する1以上のポンプであって、0.1バール〜10バールの範囲の最大圧送圧力を供給するように選択又は設定されるポンプと、
(d)反応器槽から水素ガスを受け取るバッファタンク、
(e)装置内の水素ガスの圧力を測定する圧力センサ、
(f)装置の動作を制御する電子制御手段であって、1以上のポンプ及び圧力センサと通信し、装置内の水素ガスの圧力を10バール(10×10
5Pa)以下の値に維持するように反応器槽への反応物の流を制御すべくプログラムされる電子制御手段。
【0086】
また、本発明は水素生成装置を提供し、該装置は、
(a)1以上の反応物入口を有する反応器槽であって、第1及び第2の反応物が入口を通って反応器槽に入ることができ、第1及び第2の反応物が混合されたときに反応して水素ガスを生成する反応器槽、
(c)圧前記第1及び第2の反応物を含む反応物容器から前記反応器槽へ前記第1及び第2の反応物を圧送する1以上のポンプであって、0.1バール〜10バールの範囲の最大圧送圧力を供給するように選択又は設定されるポンプ、
(d)反応器槽から水素ガスを受け取るバッファタンク、
任意で、(e)装置内の水素ガスの圧力を監視する圧力センサ、
(f)装置の動作を制御する電子コントローラであって、1以上のポンプ及び存在するときに圧力センサ通信し、反応器槽への反応物の流を制御するようにプログラムされる電子コントローラ、を備え、
水素ガスの圧力が所定値に達すると、前記反応器への前記第1及び第2の反応物の一方又は両方の圧送が防止されるように前記装置が設定され、
所定値が、0.1バール〜10バール(10×10
3Pa〜10×10
5Pa)の範囲の圧力である。
【0087】
該装置と燃料電池との組み合わせは、電気を直接入手できない状況で特に有効である。たとえば、この組み合わせを利用して、現場環境下で、コンピュータ、携帯電話及びその他の携帯電子装置などの装置を充電したり、発電機に燃料を供給したりすることができる。
【0088】
添付図面に示す具体的な実施形態を参照して、本発明を以下より詳細に(限定ではなく)説明する。