(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6804537
(24)【登録日】2020年12月4日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】ギヤボックスのオイル液位を制御する方法と、この方法を実施するためのギヤボックス
(51)【国際特許分類】
F16H 57/04 20100101AFI20201214BHJP
F16K 11/00 20060101ALI20201214BHJP
F16N 29/00 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
F16H57/04 P
F16H57/04 B
F16K11/00 C
F16N29/00 Z
【請求項の数】18
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-528364(P2018-528364)
(86)(22)【出願日】2016年8月16日
(65)【公表番号】特表2018-532965(P2018-532965A)
(43)【公表日】2018年11月8日
(86)【国際出願番号】AT2016050253
(87)【国際公開番号】WO2017027894
(87)【国際公開日】20170223
【審査請求日】2019年8月14日
(31)【優先権主張番号】A548/2015
(32)【優先日】2015年8月19日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】518056391
【氏名又は名称】アー・ファウ・エル・コマーシャル・ドライヴライン・ウント・トラクター・エンジニアリング・ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】AVL COMMERCIAL DRIVELINE & TRACTOR ENGINEERING GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】トホターマン,ユルゲン
【審査官】
岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特表2007−514905(JP,A)
【文献】
特開2011−002101(JP,A)
【文献】
特開平03−041250(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
F16K 11/00
F16N 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルサンプ(3)と、当該オイルサンプ(3)から空気的に分離されたオイルリザーバ(4)と、を備える車両用デファレンシャルギヤ(1)におけるオイル液位(h3)を制御する方法であって、前記オイルリザーバ(4)は、少なくとも1つの油路(34)を介して前記オイルサンプ(3)に接続され、前記オイルサンプ(3)は、少なくとも1つの制御バルブ(7)と空気流路(5)とを介して空気圧源(8)に接続され、前記制御バルブ(7)の少なくとも一つの位置(B)において、前記空気圧源(8)は前記オイルサンプ(3)に空気接続される方法において、
前記車両の少なくとも一つの第一特性作動パラメータが検出され、前記制御バルブ(7)は、当該少なくとも1つの第一特性作動パラメータに依存して作動され、前記第一特性作動パラメータとして車両速度(v)が選択され、
第二特性作動パラメータが測定され、前記制御バルブ(7)が前記第二特性作動パラメータに応じて操作されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記制御バルブ(7)は、前記第一特性作動パラメータが所定の閾値に到達したとき、および/または、その値を超えたときに、前記オイルサンプ(3)の標準オイル液位(h30)に割り当てられた第一位置(A)から、前記オイルサンプ(3)が前記空気圧源(8)に空気接続される第二位置(B)へと切り替えられる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記制御バルブ(7)が前記第二位置(B)にあるとき、前記オイルリザーバ(4)は圧力シンクに流体接続される請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記制御バルブ(7)が前記第二位置(B)にあるとき、前記オイルリザーバ(4)は大気圧開放系に流体接続される請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記制御バルブ(7)は、前記第一特性作動パラメータが所定の閾値未満のときに第一位置(A)に切り替えられ、そこで、前記オイルサンプ(3)は前記空気圧源(8)から空気的に分離されるとともに、圧力シンクに空気接続される請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記制御バルブ(7)が前記第一位置(A)にあるとき、前記オイルサンプ(3)は大気圧開放系に空気接続される請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記制御バルブ(7)は、前記第二特性作動パラメータが所定の閾値に到達したとき、または、その値を超えたときに、第三位置(C)に切り替えられ、この位置では、前記オイルサンプ(3)は前記空気圧源(8)および大気圧開放系から空気的に分離される請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記オイルサンプ(3)の前記オイル液位(h3)が第二特性作動パラメータとして選択される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記制御バルブ(7)は、少なくとも1つの第三特性作動パラメータに応じて第四位置(D)へと切り替えられ、この位置では、前記オイルリザーバ(4)は前記空気圧源(8)に空気的に接続される請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記制御バルブ(7)が前記第四位置(D)にあるとき、前記オイルサンプ(3)は大気圧開放系に接続される請求項9に記載の方法。
【請求項11】
オイルサンプ(3)と、当該オイルサンプ(3)から空気的に分離されたオイルリザーバ(4)と、を備える車両用のデファレンシャルギヤ(1)であって、前記オイルリザーバ(4)は、少なくとも1つの油路(34)を介して前記オイルサンプ(3)と油圧的に接続され、前記オイルサンプ(3)は、少なくとも1つの制御バルブ(7)と空気路(5)と介して空気圧源(8)に空気的に接続され、請求項1〜10のいずれかの方法を実行するために、前記制御バルブ(7)の少なくとも一つの位置において、前記空気圧源(8)は前記オイルサンプ(3)に空気接続される車両用のデファレンシャルギヤ(1)において、
前記制御バルブ(7)は、車両速度によって生成される車両の少なくとも1つの第一特性作動パラメータに応じて作動可能であり、前記制御バルブ(7)は、前記第一特性作動パラメータが所定の閾値に到達したとき、および/または、その値を超えたときに、前記オイルサンプ(3)の標準オイル液位(h30)に割り当てられた第一位置(A)から第二位置(B)へと切り替え可能であり、そして、前記第一特性作動パラメータが前記所定の閾値未満のとき、前記制御バルブ(7)は、前記オイルサンプ(3)が前記空気圧源(8)から空気的に分離されるとともに、圧力シンクに流れ接続される前記第一位置(A)に切り替え可能である車両用のデファレンシャルギヤ(1)。
【請求項12】
前記制御バルブ(7)が前記第一位置(A)にあるとき、前記オイルサンプ(3)は大気圧開放系に流れ接続される請求項11に記載のデファレンシャルギヤ(1)。
【請求項13】
第二特性作動パラメータが所定の閾値に到達したとき、または、その値を超えたときに、前記制御バルブ(7)は第三位置(C)に切り替え可能であり、この位置では、前記オイルサンプ(3)は前記空気圧源(8)および大気圧開放系から空気的に分離される請求項11又は12に記載のデファレンシャルギヤ(1)。
【請求項14】
前記制御バルブ(7)は、少なくとも1つの特性作動パラメータに応じて第四位置(D)へと切り替え可能であり、この位置では、前記オイルリザーバ(4)は前記空気圧源(8)に空気的に接続される請求項11から13のいずれか一項に記載のデファレンシャルギヤ(1)。
【請求項15】
前記制御バルブ(7)が前記第四位置(D)にあるとき、前記オイルサンプ(3)は大気圧開放系に空気的に接続される請求項14に記載のデファレンシャルギヤ(1)。
【請求項16】
前記制御バルブ(7)は4/2ウェイバルブとして構成される請求項11又は12に記載のデファレンシャルギヤ(1)。
【請求項17】
前記制御バルブ(7)は4/3ウェイバルブとして構成される請求項13に記載のデファレンシャルギヤ(1)。
【請求項18】
前記制御バルブ(7)は4/4ウェイバルブとして構成される請求項14又は15に記載のデファレンシャルギヤ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルサンプと、当該オイルサンプから分離されたオイルリザーバと、を備える車両用デファレンシャルギヤにおけるオイル液位を制御する方法に関し、ここで、前記オイルリザーバは少なくとも1つの油路を介して前記オイルサンプに接続され、前記オイルサンプは少なくとも1つの制御バルブと空気流路とを介して空気圧源に接続され、前記制御バルブの少なくとも一つの位置において、前記圧力源は前記オイルサンプに空気接続される。さらに、本発明は、前記方法を実施するためのデファレンシャルギヤにも関する。
【背景技術】
【0002】
独国特許出願公開第102009045426号(特許文献1)は、車両のトランスミッションの異なるハウジング部分における圧力および/または冷却液液位を、圧縮空気源によってつり合わせるための構成を記載している。オイル液位の低いハウジング部分において少なくとも1つの油路を通してオイルを移動させるための圧縮空気を、前記圧縮空気源を介してオイル液位の高いハウジング部分内に導くことができる。前記圧縮空気源は、ハウジングの外側に配置され、かつ、少なくとも1つの空気流路を介してハウジング部分の一つに接続されている。
【0003】
さらに、欧州特許出願公開第406649号明細書(特許文献2)によって、トランスミッションにおけるオイル液位を調節するための装置が知られており、これは、少なくとも2つの別々のトランスミッションハウジングチャンバを有し、これらは、一部が空気、一部がオイルによって満たされ、また、これらチャンバ間においてオイル交換が可能とされている。空気ポンプによって、空気がオイル蓄積の傾向がある一つのオイルチャンバ内に押し込まれ、それによって、オイルが第一トランスミッションハウジングチャンバから移動されて、第二トランスミッションハウジングチャンバ内に押し込まれる。
【0004】
国際公開第2008/108720号(特許文献3)は、車両のマニュアルトランスミッション用の潤滑装置を開示し、そのギヤボックスは、各ケースにおいて、一対の互いに噛合うギヤ毎に別体のオイルコンパートメントを備えている。各オイルコンパートメントのオイル液位は、他のオイルコンパートメントから独立して低下または上昇させることができる。この場合、そのギヤ対がトルクを伝動するオイルコンパートメントのオイル液位が上昇するのに対して、そのギヤが作動していないオイルコンパートメントにおいてはオイル液位が低下する。オイル液位の制御は、負荷または伝動トルクに応じて行われる。
【0005】
特に車両速度が速い場合は、オイル液位が高すぎると大きな流動損失が生じる。この場合、高速での適切な潤滑のためには低いオイル液位でも十分であり、その結果、発生するオイルミストによって、トランスミッション部分で低トルクとなる。他方、車両速度が遅い場合、あるいは、回転速度が遅い場合は、より高いオイル液位が必要であって、それによってトランスミッション部分で高いトルクが得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第102009045426号
【特許文献2】欧州特許出願公開第406649号明細書
【特許文献3】国際公開第2008/108720号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、駆動系の全体効率を高め、それと同時に適切な潤滑を確保できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、この課題は、少なくとも1つの第一特性作動パラメータを測定し、車両の当該少なくとも1つの第一特性作動パラメータに応じて制御バルブを作動させ、前記第一特性作動パラメータとして車両速度が選択されることによって達成される。
【0009】
好ましくは、前記制御バルブは、前記第一特性作動パラメータが所定の第一最小値に到達したとき、または、その値を超えたときに、前記第一位置に切り替えられる。前記第一特性作動パラメータが前記所定の閾値未満のときは、前記制御バルブは第二位置に切り替えられ、この位置では、前記オイルサンプは前記圧力源から空気的に分離されるとともに、圧力シンクに接続され、好ましくは、大気圧開放系に流体接続される。
【0010】
第二の特性作動パラメータ(たとえば、前記オイルサンプ内のオイル液位)が測定され、前記制御バルブが前記第二特性作動パラメータに応じて操作されることが特に有利であって、ここで、好ましくは、前記制御バルブは、前記第二特性作動パラメータが閾値に到達したとき、または、その値を超えたときに、第三位置に切り替えられ、この位置では、前記オイルサンプは前記圧力源および大気圧開放系から空気的に分離される。
【0011】
本発明の特に好適な態様において、前記制御バルブは、少なくとも1つの第三特性作動パラメータ(たとえば、車両の傾斜)に応じて第四位置へと切り替えられ、この位置では、前記オイルリザーバは圧力源に空気的に接続され、好ましくは、オイルサンプが大気圧開放系に接続される。
【0012】
したがって、前記オイルサンプのオイル液位は、前記第一特性作動パラメータ(たとえば、車両速度または特性トランスミッション軸の回転速度)に依存して制御され、たとえば、車両速度または回転速度が速い場合においては低下するように制御され、車両速度または回転速度が遅い場合においては上昇するように制御される。前記オイル液位の制御は、たとえば、入力変数として少なくとも1つの特性作動パラメータが供給される電子制御ユニットを介して行われる。この場合、前記制御ユニットの入力側を、車両速度またはデファレンシャルギヤの特性軸の回転速度を検出するためのセンサに接続することができる。さらに、前記オイルサンプのオイル液位を別のセンサによって検出し、入力変数として前記制御ユニットに送ることができる。
【0013】
本発明の全ての態様は、車両速度またはデファレンシャルギヤの特性軸の速度に関する所定の閾値以上においてデファレンシャルギヤのオイルサンプのオイル液位を低下させ、この閾値未満においてそれを上昇させる、という主たる作用を有する。
【0014】
流動損失が小さい低車速においては、ギヤおよびベアリングの適切な潤滑を確保するべく高いオイル液位が設定される。他方、高車速においては、流動損失を回避するために低いオイル液位が設定される。高車速においては、生じる最大トラクション力は低くなり、それによって低いトルクがもたらされる。これによって、潤滑に対する要件が低減される。さらに、ギヤパーツが高速であるときハウジング内ではオイルミストが形成される。しかし、その場合でも、ギヤおよびベアリングの適切な潤滑が達成される。
【0015】
前記オイル液位の制御は、車両の傾斜、オイル温度、特殊な運転条件、などのその他のパラメータに応じて実行することも可能である。これを可能にするために、前記制御ユニットの入力側を、傾斜センサ、温度センサ、などの他のセンサに接続することができる。
【0016】
本発明の単純で安価な他の態様において、前記制御バルブは、3/2ウェイバルブ、または、4/2ウェイバルブ、として構成される。この場合、前記バルブは、3つまたは4つの接続部を有し、一つの接続部は前記圧力源に対して、一つの接続部は前記オイルサンプに対して、一つの接続部はオイルリザーバに対して、接続される。3/2ウェイバルブを使用する場合、エアー抜きが追加的に必要となり、前記オイルリザーバを大気圧開放系に常時接続することになる。オイルサンプの標準オイル液位に対して割り当てられる第一位置(休止位置)においては、双方のオイル容器が大気圧開放系に接続されるとともに、圧力源からは切り離される。前記第二位置においては、圧力源がオイルサンプに接続され、リザーバが大気圧開放系に接続される。
【0017】
この態様は、最小数の構成要素で前記基本機能を実現する。オイル液位センサは不要である。ただし、オイル液位の中間位置は実現が困難である。さらに、オイル液位を維持するために圧縮空気を恒久的に供給する必要がある。また、この態様においては、かかる圧縮空気の供給によってオイルの発泡が生じるおそれがある。しかし、オイル液位センサ無しでは、標準オイル液位が達成された際のフィードバック情報が無い。
【0018】
前記制御バルブが4/3ウェイバルブとして構成される場合は、より良好なオイル液位の制御性、および、高い機能性、を達成することができる。4/2ウェイバルブの場合と同様に、4/3ウェイバルブは4つの接続部を有し、ここで、一つの接続部は圧力源に対して、一つの接続部はオイルサンプに対して、一つの接続部はオイルリザーバに対して、一つの接続部は大気圧開放系に対して、接続される。オルイサンプ中の標準オイル液位に関連する第一位置(休止位置)においては、両方のリザーバが大気圧開放系に接続され、圧力源からは分離される。低車速において第一位置を採ることによって、標準液位においてオイルサンプ内のオイルを比較的高い液位にすることが可能となる。前記第二位置においては、圧力源はオイルサンプに接続され、リザーバは大気圧開放系に接続される。この位置は、オイルサンプ内のオイル液位を低下させるために高車速において活用される。さらに、前記制御バルブの第三位置が提供され、ここでは、オイルサンプが圧力源および大気圧開放系から空気的に分離されるが、ただし加圧状態に維持される。この場合、オイルリザーバを大気圧開放系に接続することができる。
【0019】
これによって、さらに、オイルサンプのオイル液位における中間位置を調節することも可能となる。この場合、常時能動的に圧縮空気を再調節してデファレンシャルギヤのハウジング内に吹き込むことなく、オイル液位を任意のオイル液位に一定に維持することが可能となる。オイル液位センサを設けた場合には、オイルサンプ内のオイル液位を監視することが可能となる。
【0020】
前記バルブを4/4ウェイバルブとして構成する場合には、さらに高い機能性を達成することが可能となる。4/3ウェイバルブの機能性に加えて、オイルサンプ内のオイル液位を、非加圧状態で標準液位との関連において能動的に低下させることが可能となるのみならず、バルブの一つの位置でオイルリザーバに圧縮空気を注入することによってオイル液位を上昇させることも可能となる。この目的のために、前記4/3ウェイバルブとの関連において説明した第一位置、第二位置、および、第三位置、に加えて、第四位置が提供され、ここでは、オイルリザーバが圧力源に空気接続され、オイルサンプは大気圧開放系に接続される。これにより、オイルリザーバ内の圧力を上昇させ、その内部に含まれるオイルをオイルサンプに圧入させて、その結果、極端な運転条件下においても、十分な潤滑を確保するべく、オイルサンプ内のオイル液位を、標準液位を超えてさらに上昇させることが可能となる。デファレンシャルギヤのハウジング内の構成においても、オイルリザーバを完全に空にすることが可能となる。必要なオイル液位に達すると、制御バルブを第三位置に移動させてオイル液位を維持する。第四位置への切り替えは、さらなる作動パラメータ(たとえば、車両の傾斜)によって起こるものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
以下、非限定的な図面を参照しながら本発明についてさらに詳細に説明する。これらの図は、以下を概略図示するものである。
【0022】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るデファレンシャルギヤの制御バルブが第一位置にある状態。
【
図2】本発明の第一実施形態に係るデファレンシャルギヤの制御バルブが第二位置にある状態。
【
図3】本発明の第二実施形態に係るデファレンシャルギヤの制御バルブが第一位置にある状態。
【
図4】本発明の第二実施形態に係るデファレンシャルギヤの制御バルブが第二位置にある状態。
【
図5】本発明の第二実施形態に係るデファレンシャルギヤの制御バルブが第三位置にある状態。
【
図6】本発明の第三実施形態に係るデファレンシャルギヤの制御バルブが第一位置にある状態。
【
図7】本発明の第三実施形態に係るデファレンシャルギヤの制御バルブが第二位置にある状態。
【
図8】本発明の第三実施形態に係るデファレンシャルギヤの制御バルブが第三位置にある状態。
【
図9】本発明の第三実施形態に係るデファレンシャルギヤの制御バルブが第四位置にある状態。
【発明を実施するための形態】
【0023】
これらの図面はそれぞれ、車両のデファレンシャルギヤ1を図示し、ここで、2つの空気的に分離されたコンパートメント(すなわち、少なくとも1つの油路34を介して互いに油圧接続されたオイルサンプ3およびオイルリザーバ4)が、デファレンシャルギヤ1のハウジング2内に配設されている。第一空気流路5が前記オイルサンプ3内に開口し、第二空気流路6が前記オイルリザーバ4内に開口し、ここで、これら空気流路5、6を通る流れを制御バルブ7によって制御することができる。前記制御バルブ7による制御は、少なくとも1つの特性作動パラメータ(たとえば車両速度v)を入力変数として受け取る電子制御ユニットECUを介して行われる。各実施形態において、前記制御バルブ7はマルチウェイバルブとして構成され、その第一接続部aは前記第一空気流路5に接続され、第二接続部bは前記第二空気流路6に接続され、第三接続部cは圧力源8へとつながる圧力路9に接続され、第四接続部dは大気圧開放系へとつながるリリーフ路10に接続されている。前記圧力源は、たとえば、空気ポンプによって形成することができる。前記オイルサンプ3内のオイル液位は、符号h3によって示され、前記オイルリザーバ4内のオイル液位は符号h4によって示されている。
【0024】
本発明の全てのバリーエーションは、車両速度v、または、デファレンシャルギヤ1の特性軸の速度、に関する所定の閾値以上においてデファレンシャルギヤ1のオイルサンプ3のオイル液位を低下させ、この閾値未満においてオイル液位を上昇させる、という主たる作用を有する。低い流動損失しか起こらない低車速vでは、デファレンシャルギヤ1のギヤおよびベアリングの適切な潤滑を確保するべくオイルサンプ3において高いオイル液位h3が設定される。他方、高車速vでは、流動損失を回避するためにオイルサンプにおいて低いオイル液位h3が設定される。高車速においては、生じる最大トラクション力が低くなり、それによって低いトルクがもたらされる。これによって、潤滑に対する要件が低減される。さらに、ギヤパーツが高速であるとき、ハウジング内ではオイルミストが形成される。しかし、その場合でも、ギヤおよびベアリングの適切な潤滑が達成される。
【0025】
前記オイルサンプ3内のオイル液位h3の制御は、車両速度vに加えて、車両の傾斜、オイル温度、特殊な運転条件、などの、その他のパラメータに応じて実行することも可能である。そのような影響は、とりわけ、第二および第三変形実施形態との関連で考慮され、そこでは、前記制御ユニットECUの入力側を、傾斜センサ、温度センサ、などの、他のセンサに接続することができる。
【0026】
図1および
図2は本発明の単純な第一実施形態を図示し、ここでは、前記切替バルブ7は4/2ウェイバルブとして構成される。
【0027】
図1に図示されている前記制御バルブ7の第一位置A(静止位置)においては、両コンパートメント(すなわち、オイルサンプ3およびオイルリザーバ4の両方)が、大気圧開放系に接続され、かつ、圧力源8から分離される。前記第一位置は、オイルサンプ3における標準オイル液位h3
0に割り当てられている。
図2に図示の第二位置Bにおいては、圧力源8はオイルサンプ3に接続され、オイルリザーバ4は大気圧開放系に接続される。
【0028】
図1および
図2に図示される実施形態は、最小数の構成要素での前記基本構成を実現する。オイル液位センサは必須ではない。
【0029】
以下に記載する第二および第三実施形態ではより高い機能性を達成することが可能である。
【0030】
図3〜5は本発明の第二実施形態を図示し、ここで前記制御バルブ7は4/3ウェイバルブとして構成されている。前記第一実施形態と同様に第一位置Aおよび第二位置Bを制御することができ、ここで、
図3に図示される制御バルブ7の第一位置(休止位置)においては、前記2つコンパートメント(すなわち、オイルサンプ3およびオイルリザーバ4の両方)が、大気圧開放系に接続されるとともに圧力源8から分離される。
図4に図示されている第二位置では、圧力源8はオイルサンプ3に接続され、オイルリザーバ4は大気圧開放系に接続される。前記第一位置Aおよび前記第二位置Bに加えて、
図5に図示されているように第三位置Cを設定することが可能である。制御バルブ7の当該第三位置Cにおいて、オイルサンプ3は圧力源8および大気圧開放系から空気分離されるが、加圧状態に維持される。オイルリザーバ4は大気圧開放系に接続される必要がある。これによって、オイルサンプ3のオイル液位h3において中間位置を設定することが可能となる。この場合、常時能動的に圧縮空気を再調節してデファレンシャルギヤ1のハウジング3内に吹き込むことなく、オイルサンプ3の各調節可能オイル液位h3を一定に維持することができる。オイル液位センサ11を設ける場合には、オイルサンプ3内のオイル液位h3を監視することが可能となる。そして、オイル液位h3の各中間位置をオイル液位h3に応じて設定することができる。
【0031】
図6〜9は、本発明の第三実施形態を図示し、ここでは、前記制御バルブ7は4/4ウェイバルブとして構成されている。第二実施形態と同様に、第一位置A、第二位置B、および、第三位置C、を制御することができ、ここで、
図6に図示される制御バルブ7の第一位置A(休止位置)においては、前記2つコンパートメント(すなわち、オイルサンプ3およびオイルリザーバ4の両方)が、大気圧開放系に接続されるとともに圧力源8から分離される。
図7に図示されている第二位置Bでは、オイルサンプ3は圧力源8に接続され、オイルリザーバ4は大気圧開放系に接続される。
図8に図示されている第三位置Cでは、オイルサンプ3は圧力源8および大気圧開放系から空気分離されるが、オイルサンプ3内の設定圧力h3を維持するために加圧状態に維持される。前記4/3ウェイバルブに関して説明した第一位置A、第二位置B、および、第三位置C、に加えて、さらに第四位置Dが設けられ、ここでは、オイルリザーバ4は圧力源8に空気接続され、オイルサンプ3は大気圧開放系に接続される。これにより、オイルリザーバ4内の圧力を上昇させ、その内部に含まれるオイルをオイルサンプ3に圧入させて、その結果、極端な運転条件下においても、十分な潤滑を確保するべく、オイルサンプ内のオイル液位を、標準液位h3
0を超えてさらに上昇させることが可能となる。極端な運転条件は、前記制御ユニットECUに供給される第三作動パラメータ(たとえば、傾斜センサによって検出される車両の傾斜情報β)に基づいて判定することができる。前記制御バルブ7の第四位置Dにおいて、オイルリザーバ7を完全に空にすることができる。オイルサンプ3の必要なオイル液位h3が達成されるとすぐに、当該オイル液位h3を維持するために、制御バルブ7は再び第三位置Dへと移動される。
【0032】
上述した実施形態のそれぞれにより、駆動系の損失を低減することができ、デファレンシャルギヤ1の適切な潤滑を確保することができる。