特許第6804544号(P6804544)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6804544
(24)【登録日】2020年12月4日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】部品実装機
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/34 20060101AFI20201214BHJP
   H05K 13/00 20060101ALN20201214BHJP
【FI】
   H05K3/34 505E
   !H05K13/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-540513(P2018-540513)
(86)(22)【出願日】2016年9月20日
(86)【国際出願番号】JP2016077671
(87)【国際公開番号】WO2018055669
(87)【国際公開日】20180329
【審査請求日】2019年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊奈 弘昭
【審査官】 鹿野 博司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−185117(JP,A)
【文献】 特開2014−078581(JP,A)
【文献】 特開2005−329274(JP,A)
【文献】 特開2000−340933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/34
H05K 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面に接続端子を備えた部品を保持可能な部品保持部を備えたヘッドと、
前記ヘッドを移動させるヘッド移動装置と、
底面と該底面とは異なる所定の測定箇所とが所定の高さ関係を有する容器を有し、前記部品の接続端子に転写させるペーストを前記容器の底面に所定厚さの塗膜として提供する転写装置と、
前記ヘッドに設けられ、前記容器の測定箇所の高度を測定可能な高度センサと、
前記転写装置によって提供された前記塗膜が前記部品保持部に保持された前記部品の接続端子に転写されるよう前記ヘッド及び前記ヘッド移動装置を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記高度センサによって測定された前記容器の測定箇所の高度から前記容器の底面の高度又は前記塗膜の表面の高度を認識するものであり、
前記容器の測定箇所は、多角形の頂点となるように3箇所以上に設定されている、
部品実装機。
【請求項2】
前記制御装置は、前記容器の測定箇所の高度から前記容器の底面の高度を認識し、前記容器の底面の高度に基づいて前記容器が適正に配置されているか否かを判定し、前記容器が適正でなかったならばオペレータに警告を報知する、
請求項1に記載の部品実装機。
【請求項3】
前記制御装置は、前記容器の測定箇所の高度から前記塗膜の表面の高度を認識し、前記塗膜の表面の高度に基づいて前記部品保持部に保持された前記部品の接続端子を前記塗膜にディップする高度を設定する、
請求項1又は2に記載の部品実装機。
【請求項4】
前記容器の測定箇所は、前記容器の底面を囲う側壁の上面に設定されている、
請求項1〜のいずれか1項に記載の部品実装機。
【請求項5】
前記高度センサは、光学センサである、
請求項1〜のいずれか1項に記載の部品実装機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品実装機に関する。
【背景技術】
【0002】
部品供給装置から供給される部品をヘッドに設けられたノズルに吸着し、その後ヘッドを基板の上方へ運んでその部品を基板に実装する部品実装機が知られている。その場合、基板の部品実装位置に予めはんだペーストを印刷しておくことがある。近年、部品サイズの極小化に伴い基板に印刷されるペーストも少量になってきたため、設計通りにペーストを印刷することが難しくなっている。こうしたことから、基板の部品実装位置にペーストを印刷する代わりに、部品の下面に設けられた接続端子(BGAなど)にペーストの塗膜を転写させることが行われている。このように部品の接続端子にペーストの塗膜を転写させるにあたり、容器の底面に形成される塗膜の膜厚を算出する部品実装機も開示されている(特許文献1参照)。この部品実装機では、容器に塗膜が存在しない空の状態でその容器の底面の高度を予め計測し、その後、容器の底面に塗膜を形成してその塗膜の表面の高度を計測し、それらの高度の差を膜厚として算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−78581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した部品実装機では、容器に塗膜が存在しない空の状態でその容器の底面の高度を予め計測する必要があるため、容器の底面に塗膜が形成された後に容器の底面の高度を知ることはできなかった。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みなされたものであり、容器の底面に塗膜が形成されているか否かにかかわらず、容器の底面の高度又は塗膜の表面の高度を認識できるようにすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の部品実装機は、
下面に接続端子を備えた部品を保持可能な部品保持部を備えたヘッドと、
前記ヘッドを移動させるヘッド移動装置と、
底面と該底面とは異なる所定の測定箇所とが所定の高さ関係を有する容器を有し、前記部品の接続端子に転写させるペーストを前記容器の底面に所定厚さの塗膜として提供する転写装置と、
前記ヘッドに設けられ、前記容器の測定箇所の高度を測定可能な高度センサと、
前記転写装置によって提供された前記塗膜が前記部品保持部に保持された前記部品の接続端子に転写されるよう前記ヘッド及び前記ヘッド移動装置を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記高度センサによって測定された前記容器の測定箇所の高度から前記容器の底面の高度又は前記塗膜の表面の高度を認識する、
ものである。
【0007】
この部品実装機では、高度センサによって測定された容器の測定箇所の高度から容器の底面の高度又は塗膜の表面の高度を認識する。容器の測定箇所の高度がわかれば、容器の底面と容器の測定箇所とが有する所定の高さ関係に基づいて、容器の底面の高度を求めることができる。あるいは、容器の測定箇所の高度がわかれば、容器の底面と容器の測定箇所とが有する所定の高さ関係及び塗膜の予め定められた所定厚さに基づいて、塗膜の表面の高度を求めることができる。したがって、容器の底面に塗膜が形成されているか否かにかかわらず、容器の底面の高度又は塗膜の表面の高度を認識することができる。
【0008】
本発明の部品実装機において、前記制御装置は、前記容器の測定箇所の高度から前記容器の底面の高度を認識し、前記容器の底面の高度に基づいて前記容器が適正に配置されているか否かを判定し、前記容器が適正でなかったならばオペレータに警告を報知してもよい。警告が報知された場合、オペレータは容器が適正に配置されていないことに気づくため、その容器の配置を正すことができる。
【0009】
本発明の部品実装機において、前記制御装置は、前記容器の測定箇所の高度から前記塗膜の表面の高度を認識し、前記塗膜の表面の高度に基づいて前記部品保持部に保持された前記部品の接続端子を前記塗膜にディップする高度を設定してもよい。こうすれば、容器の底面の高度が変化するのに伴って塗膜の表面の高度が変化したとしても、部品の接続端子にペーストの塗膜を確実に転写することができる。
【0010】
本発明の部品実装機において、前記容器の測定箇所は、多角形の頂点となるように3箇所以上に設定されていてもよい。こうすれば、容器の底面が傾斜している場合にはその傾斜を認識することができる。
【0011】
本発明の部品実装機において、前記容器の測定箇所は、前記容器の底面を囲う側壁の上面に設定されていてもよい。容器の底面を囲う側壁の上面はペーストが付着するおそれが少ないため、高度センサによって精度よく容器の測定箇所の高度を測定することができる。
【0012】
本発明の部品実装機において、前記高度センサは光学センサであってもよい。こうすれば、容器の測定箇所に接触することなくその測定箇所の高度を測定できるため、測定精度が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】部品実装機10の斜視図。
図2】丸皿51及びその周辺部材の断面図。
図3】丸皿51の平面図。
図4】部品実装機10の電気的接続を示す説明図。
図5】部品実装処理ルーチンのフローチャート。
図6】前処理ルーチンのフローチャート。
図7】部品Pの説明図。
図8】高度センサ35で側壁512の上面512aの高度を測定する際の説明図。
図9】部品Pのリード端子Lに塗膜55を転写する際の説明図で、(a)は丸皿51が設計位置にあるとき、(b)は丸皿51が設計位置より低い位置にあるときを示す。
図10】部品Pのリード端子Lに塗膜55を転写する際の説明図で、(a)は丸皿51が設計位置にあるとき、(b)は丸皿51が設計位置から傾斜しているときを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の好適な実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。図1は部品実装機10の斜視図、図2は丸皿51及びその周辺部材の断面図、図3は丸皿51の平面図、図4は部品実装機10の電気的接続を示す説明図である。なお、本実施形態において、左右方向(X軸)、前後方向(Y軸)及び上下方向(Z軸)は、図1に示した通りとする。また、図2ではスキージ52の図示を省略した。
【0015】
部品実装機10は、図1に示すように、基板搬送装置12と、ヘッド18と、ノズル28と、高度センサ35と、パーツカメラ36と、テープフィーダ40と、転写ユニット50と、各種制御を実行する実装コントローラ60(図2参照)とを備えている。
【0016】
基板搬送装置12は、左右一対のコンベアレール14,14にそれぞれ取り付けられたコンベアベルト16,16(図1では片方のみ図示)により基板Sを左から右へと搬送する。また、基板搬送装置12は、基板Sの下方に配置された支持ピン17により基板Sを下から持ち上げてコンベアレール14,14のガイド部に押し当てることで基板Sを固定し、支持ピン17を下降させることで基板Sの固定を解除する。
【0017】
ヘッド18は、下面にノズル28を有している。また、ヘッド18は、X軸スライダ20の前面に着脱可能に取り付けられている。X軸スライダ20は、Y軸スライダ24の前面に設けられた左右方向に延びる上下一対のガイドレール22,22にスライド可能に取り付けられている。Y軸スライダ24は、Y軸ボールネジ25に螺合されたナット23と一体化され、前後方向に延びる左右一対のガイドレール26,26にスライド可能に取り付けられている。Y軸ボールネジ25は一端がY軸モータ24aに取り付けられ、他端が自由端となっている。Y軸スライダ24は、こうしたボールネジ機構によってガイドレール26,26に沿ってスライドする。すなわち、Y軸モータ24aが回転すると、Y軸ボールネジ25が回転し、それに伴ってナット23がY軸スライダ24と共にガイドレール26,26に沿ってスライドする。X軸スライダ20は、図示しないが、Y軸スライダ24と同様、X軸モータ20a(図2参照)を備えたボールネジ機構によってガイドレール22,22に沿ってスライドする。ヘッド18は、X軸スライダ20が左右方向に移動するのに伴って左右方向に移動し、Y軸スライダ24が前後方向に移動するのに伴って前後方向に移動する。
【0018】
ノズル28は、圧力を利用して、ノズル先端に部品を吸着したり、ノズル先端に吸着している部品を離したりするものである。ノズル28は、ヘッド18に内蔵されたZ軸モータ30とZ軸に沿って延びるボールネジ32によって高さが調整される。
【0019】
高度センサ35は、ヘッド18の下面に取り付けられている。高度センサ35は、ここでは発光素子と受光素子とを備えた光学センサである。この高度センサ35は、発光素子から測定対象物に光を出射し、その測定対象物で反射した光を受光素子で入射することにより、高度センサ35から測定対象物までの距離を測定する。
【0020】
パーツカメラ36は、デバイスパレット42と基板搬送装置12との間であって左右方向の長さの略中央にて、撮像方向が上向きとなるように設置されている。このパーツカメラ36は、その上方を通過するノズル28に吸着された部品を撮像する。
【0021】
テープフィーダ40は、部品供給装置の一種であり、部品実装機10の前方のデバイスパレット42に取り付けられている。デバイスパレット42は、上面に多数のスロット(図示せず)を有しており、テープフィーダ40は、そのスロットに差し込まれている。 テープフィーダ40は、テープが巻回されたリール48を回転可能に保持している。テープには、図示しない複数の凹部がテープの長手方向に沿って並ぶように形成されている。各凹部には、部品が収容されている。これらの部品は、テープの表面を覆う図示しないフィルムによって保護されている。テープフィーダ40には、部品吸着位置が定められている。部品吸着位置は、ノズル28が部品を吸着する設計上定められた位置である。テープがテープフィーダ40によって所定量後方へ送られるごとに、テープに収容された部品が順次、部品吸着位置へ配置されるようになっている。部品吸着位置に至った部品は、フィルムが剥がされた状態になっており、ノズル28によって吸着される。
【0022】
転写ユニット50は、デバイスパレット42のうちテープフィーダ40によって占有されていない複数のスロットに着脱自在に差し込まれている。転写ユニット50は、丸皿51とスキージ52とを備えている。丸皿51は、図2に示すように、ブロック状のベース53に設けられた回転テーブル54の上面に回転テーブル54と一体となって回転するよう固定されている。図3の矢印は丸皿51の回転方向を示す。丸皿51は、円形の底面511とその底面511を囲う側壁512とを備えている。底面511と側壁512の上面512aとは所定の高さ関係を有している。ここでは、側壁512の上面512aは、平坦な底面511と平行で且つ底面511から高さhとなるように設けられている。また、側壁512の上面512aは光が反射しやすいように研磨加工が施されている。スキージ52は、図示しないペースト供給ラインから丸皿51内に供給されたフラックスペーストをならして所定の厚みtの塗膜55を形成するものである。スキージ52は、図3に示すように丸皿51の半径方向に延び出した状態でベース53に固定されている。そのため、回転テーブル54が回転するとそれに伴って丸皿51が回転し、その丸皿51内のフラックスペーストがスキージ52によってならされて所定の厚みtの塗膜55が形成される。この塗膜55の表面は底面511に平行になる。
【0023】
実装コントローラ60は、図4に示すように、CPU60aを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、処理プログラムを記憶するROM60b、各種データを記憶するHDD60c、作業領域として用いられるRAM60dなどを備えている。また、実装コントローラ60には、マウスやキーボードなどの入力装置60e、液晶ディスプレイなどの表示装置60fが接続されている。この実装コントローラ60は、テープフィーダ40に内蔵されたフィーダコントローラ47、転写ユニット50に内蔵された転写コントローラ57及び管理コンピュータ90と、双方向通信可能なように接続されている。また、実装コントローラ60は、基板搬送装置12、ヘッド18、X軸モータ20a、Y軸モータ24a、Z軸モータ30、高度センサ35及びパーツカメラ36へ制御信号を出力可能なように接続されている。また、実装コントローラ60は、高度センサ35及びパーツカメラ36から信号を受信可能に接続されている。
【0024】
管理コンピュータ90は、図4に示すように、パソコン本体92と入力デバイス94とディスプレイ96とを備えており、オペレータによって操作される入力デバイス94からの信号を入力可能であり、ディスプレイ96に種々の画像を出力可能である。パソコン本体92のメモリには、生産ジョブデータが記憶されている。生産ジョブデータには、部品実装機10においてどの部品をどういう順番で基板Sへ実装するか、また、そのように実装した基板Sを何枚作製するかなどが定められている。
【0025】
次に、部品実装機10の実装コントローラ60が生産ジョブに基づいて基板Sへ部品を実装する動作(部品実装処理ルーチン)について説明する。部品実装処理ルーチンのプログラムは実装コントローラ60のROM60bに記憶されている。実装コントローラ60のCPU60aは、部品実装処理の開始が指示されると、ROM60bからこのプログラムを読み出して実行する。図5は部品実装処理ルーチンのフローチャートである。
【0026】
まず、CPU60aは、ヘッド18のノズル28にテープフィーダ40から供給される部品Pを吸着させる(ステップS100)。具体的には、CPU60aは、X軸スライダ20のX軸モータ20a及びY軸スライダ24のY軸モータ24aを制御してヘッド18のノズル28を所望の部品の部品吸着位置の真上に移動させる。その後、CPU60aは、Z軸モータ30を制御してノズル28を下降させると共にそのノズル28へ負圧が供給されるようにする。これにより、ノズル28の先端に所望の部品が吸着される。その後、CPU60aは、ノズル28を通常位置まで上昇させる。通常位置は、部品を吸着したノズル28がXY方向に移動したとしても部品が部品実装機10を構成する部材と接触しない高さに設定されている。
【0027】
次に、CPU60aは、部品の下面に設けられた接続端子へ塗膜55を転写させる(ステップS110)。具体的には、CPU60aは、X軸スライダ20及びY軸スライダ24を制御して、先端に部品を吸着したノズル28を丸皿51の所定のディップ位置の上方へ移動させる。そして、CPU60aは、そのディップ位置でノズル28を下降させ、ノズル28に吸着された部品の下面に設けられた接続端子に塗膜55を転写させる。このときのノズル28の下降量は、塗膜55の表面の高度に基づいて接続端子の先端に塗膜55が付着するように設定される。塗膜55の表面の高度は後述する前処理ルーチンで算出される。その後、CPU60aは、ノズル28を通常位置まで上昇させる。また、塗膜55のディップ位置は転写によって凹んでいるため、CPU60aは次回の転写に備えてスキージ52に塗膜55を再形成させる。
【0028】
次に、CPU60aは、ノズル28の先端に吸着された部品をパーツカメラ36に撮像させる(ステップS120)。具体的には、CPU60aは、X軸スライダ20及びY軸スライダ24を制御して、先端に部品を吸着したノズル28をパーツカメラ36の上方へ移動させ、パーツカメラ36に部品を撮像させる。そして、CPU60aは、撮像された画像に基づいてノズル28の先端に部品が吸着されていることを確認する。なお、CPU60aは、ノズル28の先端に部品が吸着されていることを確認できなかったならば、ステップS100に戻る。
【0029】
次に、CPU60aは、ノズル28の先端に吸着された部品が基板Sの所定の位置に装着されるよう制御する(ステップS130)。具体的には、CPU60aは、X軸スライダ20及びY軸スライダ24を制御して、ノズル28に吸着された部品を基板Sの所定の位置の上方へ移動させる。そして、CPU60aは、その所定の位置でノズル28を下降させ、そのノズル28へ大気圧が供給されるように制御する。これにより、ノズル28に吸着されていた部品が離間して基板Sの所定の位置に装着される。
【0030】
次に、CPU60aは、基板Sに装着すべき全部品について装着が完了したか否かを判定する(ステップS140)。ステップS140でまだ基板Sに装着すべき部品が残っていたならば、CPU60aは再びステップS100以降の処理を繰り返す。一方、ステップS140で全部品について装着が完了したならば、CPU60aは本ルーチンを終了する。
【0031】
次に、部品実装機10の実装コントローラ60が実行する前処理ルーチンについて説明する。前処理ルーチンのプログラムは実装コントローラ60のROM60bに記憶されている。実装コントローラ60のCPU60aは、上述した部品実装処理ルーチンを実行する前に、ROM60bからこの前処理ルーチンのプログラムを読み出して実行する。図6は部品実装処理ルーチンのフローチャートである。以下には、下面に接続端子を有する部品として、図7に示す部品Pを例示して説明する。部品Pは、直方体形状の本体部材の下面に複数(4本)のリード端子Lが直線状に設けられているものである。
【0032】
まず、CPU60aは、高度センサ35を丸皿51の側壁512の上方へ移動させる(ステップS200)。具体的には、CPU60aは、X軸スライダ20及びY軸スライダ24を制御して、ヘッド18の下面に設けられた高度センサ35を丸皿51の側壁512の上方へ移動させる。このときの様子を図8に示す。なお、ヘッド18の下面の高さは変動することなく一定である。そのため、高度センサ35の高さも一定である。
【0033】
次に、CPU60aは、高度センサ35の信号を入力し(ステップS210)、丸皿51の底面511の高度を認識する(ステップS220)。具体的には、CPU60aは、高度センサ35の信号に基づいて高度センサ35の位置から側壁512の上面512aまでの距離dを認識し、その距離dと底面511から上面512aまでの高さhとを用いて底面511の高度(例えば高度センサ35から底面511までの距離)を認識する。
【0034】
次に、CPU60aは、底面511の高度が許容範囲内か否かを判定する(ステップS230)。ここでは、許容範囲は、転写ユニット50がデバイスパレット42に適切に装着されている場合に丸皿51の底面511が取り得る高度の数値範囲に設定されている。例えば、転写ユニット50がデバイスパレット42のスロットから外れた状態で装着されている場合には、底面511の高度は許容範囲外になる。
【0035】
ステップS230で底面511の高度が許容範囲外だったならば、CPU60aは警告を報知し(ステップS240)、本ルーチンを終了する。警告の報知は、例えば表示装置60fに「転写ユニットが適切に装着されていません」と文字表示したり部品実装機10の内蔵スピーカから音声で警告音を発生したりすることにより行う。
【0036】
一方、ステップS230で底面511の高度が許容範囲内だったならば、CPU60aは塗膜55の表面の高度を認識し、それをRAM60dに保存し(ステップS240)、本ルーチンを終了する。具体的には、CPU60aは、上述の距離d及び高さhのほかに塗膜55の所定の厚みtを用いて、塗膜55の高度(例えば高度センサ35から塗膜55の表面までの距離)を認識し、それをRAM60dに保存する。
【0037】
CPU60aは、この後に実行される部品実装処理ルーチンのステップS110で転写を行う際に、ノズル28の下降量をRAM60dに保存した塗膜55の表面の高度に基づいて設定する。その具体例を図9を用いて説明する。ノズル28が丸皿51の所定のディップ位置の上方に配置されたとき、部品Pは、点線で示すように、ヘッド18がXY方向に移動したとしても部品実装機10を構成する各種部材に干渉しない高さに位置決めされている。CPU60aは、塗膜55の表面の高度に基づいて、部品Pを点線の位置からリード端子Lの先端が塗膜55にディップされてその先端に塗膜55が転写される位置(実線の部品Pを参照)までノズル28を下降させる。図9(a)は丸皿51が設計位置に精度よく配置されている例であり、図9(b)は丸皿51が設計位置より低い位置に配置されている例である。図9(b)では、図9(a)に比べて塗膜55の表面が低い位置にあるため、ノズル28の下降量は図9(a)よりも大きくなる。
【0038】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係について説明する。本実施形態のX軸スライダ20、X軸モータ20a、Y軸スライダ24及びY軸モータ24aが本発明のヘッド移動装置に相当し、転写ユニット50が転写装置に相当し、実装コントローラ60が制御装置に相当する。また、ノズル28が部品保持部に相当し、丸皿51が容器に相当し、側壁512の上面512aが測定箇所に相当する。
【0039】
以上説明した部品実装機10では、高度センサ35によって測定された丸皿51の側壁512の上面512aの高度から、丸皿51の底面511の高度や塗膜55の表面の高度を認識する。そのため、丸皿51の底面511に塗膜55が形成されているか否かにかかわらず、丸皿51の底面511の高度や塗膜55の表面の高度を認識することができる。
【0040】
また、丸皿51の底面511の高度に基づいて丸皿51(ひいては転写ユニット50)が適正に配置されているか否かを判定し、適正でなかったならばオペレータに警告を報知する。警告が報知された場合、オペレータは丸皿51が適正に配置されていないことに気づくため、転写ユニット50の配置を正すことができる。
【0041】
更に、塗膜55の表面の高度に基づいてノズル28に吸着された部品Pのリード端子Lを塗膜55にディップする高度を設定する。そのため、丸皿51の底面511の高度が変化するのに伴って塗膜55の表面の高度が変化したとしても、部品Pのリード端子Lにペーストの塗膜55を確実に転写することができる。
【0042】
更にまた、丸皿51の測定箇所は、底面511を囲う側壁512の上面512aに設定されている。この側壁512の上面512aはペーストが付着するおそれが少ないため、高度センサ35によって精度よく側壁512の上面512aの高度を測定することができる。
【0043】
そしてまた、高度センサ35として光学センサを用いているため、丸皿51の測定箇所に接触することなくその測定箇所の高度を測定できる。そのため、測定精度が高くなる。
【0044】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0045】
例えば、上述した実施形態では、前処理ルーチンにおいて、丸皿51の側壁512の上面512aの1箇所を高度センサ35で測定したが、上面512aのうち三角形を形成する所定の3箇所を高度センサ35で測定してもよい。こうすれば、その3箇所の高度から上面512aの高度や上面512aの水平面に対する傾斜角を認識することができ、ひいては底面511及び塗膜55の表面の高度や水平面に対する傾斜角を認識することができる。また、CPU60aは、底面511の高度や傾斜角が予め定めた許容範囲を超えていたならば、警告を報知するようにしてもよい。一方、CPU60aは、傾斜角が許容範囲内だったならば、部品実装処理ルーチンのステップS110で転写を行う際に、ノズル28の下降量を塗膜55の表面の高度や傾斜角に応じて設定するようにしてもよい。その具体例を図10を用いて説明する。CPU60aは、塗膜55の表面の傾斜角に基づいて、部品Pを点線の位置からリード端子Lの先端が塗膜55にディップされてその先端に塗膜55が転写される位置(実線の部品Pを参照)までノズル28を下降させる。図10(a)は丸皿51が設計位置に精度よく配置されている例であり、図10(b)は丸皿51(転写ユニット50)が設計位置より傾いて配置されている例である。図10(b)において、塗膜55は粘度が高いため底面511に平行になっている。なお、測定箇所は多角形を形成する所定の複数箇所としてもよい。
【0046】
上述した実施形態では、高度センサ35として光学センサを例示したが、特にこれに限定されるものではなく、例えば超音波センサでもよいし、接触式変位センサでもよい。但し、接触式変位センサの場合には測定対象物である皿の側壁に接触させる必要があるのに対して、光学センサや超音波センサなどの非接触式変位センサの場合には皿の側壁に接触させる必要がないため、非接触式変位センサの方が精度よく高度を測定することができる。
【0047】
上述した実施形態では、測定箇所を丸皿51の側壁512の上面512aとしたが、特にこれに限定されるものではなく、例えば丸皿51の側壁512の外周面に沿ってツバを設け、そのツバの上面を測定箇所としてもよい。
【0048】
上述した実施形態では、前処理ルーチンのステップS220で丸皿51の底面511の高度を認識し、ステップS250で塗膜55の表面の高度を認識したが、特にこれに限定されるものではなく、底面511の高度のみを認識するようにしてもよいし、塗膜55の表面の高度のみを認識するようにしてもよい。
【0049】
上述した実施形態では、転写ユニット50はフラックスペーストの塗膜55を部品Pのリード端子Lに転写するものとしたが、特にこれに限定されるものではなく、例えばはんだペーストの塗膜を部品Pのリード端子Lに転写するものとしてもよい。
【0050】
上述した実施形態では、部品Pの下面に複数設けれたリード端子Lに塗膜55を転写する場合を例示したが、特にこれに限定されるものではなく、例えばリード端子Lの代わりに半球状のバンプに塗膜55を転写するようにしてもよい。
【0051】
上述した実施形態では、部品供給装置としてテープフィーダ40を例示したが、特にこれに限定されるものではなく、例えば部品供給装置として多数のトレイが上下方向に積層されたマガジンを備えたトレイユニットを用いてもよい。
【0052】
上述した実施形態では、ヘッド18は1つのノズル28を有するものとしたが、複数のノズルを有するものとしてもよい。
【0053】
上述した実施形態では、部品保持部として部品を吸着可能なノズル28を例示したが、特にこれに限定されるものではなく、例えば部品を把持可能なアームを用いてもよい。
【0054】
上述した実施形態では、転写ユニット50の容器として丸皿51を例示したが、特にこれに限定されるものではなく、平面視が多角形状(例えば四角形状)の皿を採用してもよい。
【0055】
上述した実施形態では、スキージ52を固定して丸皿51を回転させる構成としたが、丸皿51を固定してスキージ52を回転させる構成としてもよい。
【0056】
上述した実施形態では、ノズル28の下降量を塗膜55の表面の高度に基づいて設定したが、ノズル28の下降量を丸皿51の底面511の高度に基づいて設定してもよい。例えば、底面511の高度をディップ高さ(つまり部品Pのリード端子Lの下端高さ)となるようにしてもよい。その場合、部品Pへのペーストの転写量は塗膜55の厚みtによって管理することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の部品実装機は、基板に電子部品を実装する際に利用可能である。
【符号の説明】
【0058】
10 部品実装機、12 基板搬送装置、14 コンベアレール、16 コンベアベルト、17 支持ピン、18 ヘッド、20 X軸スライダ、20a X軸モータ、22 ガイドレール、23 ナット、24 Y軸スライダ、24a Y軸モータ、25 Y軸ボールネジ、26 ガイドレール、28 ノズル、30 Z軸モータ、32 ボールネジ、35 高度センサ、36 パーツカメラ、40 テープフィーダ、42 デバイスパレット、47 フィーダコントローラ、48 リール、50 転写ユニット、51 丸皿、511 底面、512 側壁、512a 上面、52 スキージ、53 ベース、54 回転テーブル、55 塗膜、57 転写コントローラ、60 実装コントローラ、60a CPU、60b ROM、60c HDD、60d RAM、60e 入力装置、60f 表示装置、90 管理コンピュータ、92 パソコン本体、94 入力デバイス、96 ディスプレイ。
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図10